台本概要
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タイトル | みらいTakt〜第2話・黒潮女学園#2 |
---|---|
作者名 | 風緑ラピス (@Lapis_019) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 6人用台本(女5、不問1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
シリーズ3作目。 新国際防衛軍こと、黒潮女学園SLG研究部に訪れたピンチ。 105 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
美紅 |
女 ![]() |
66 | 美章園美紅(びしょうえん・みく)2年生。部員にして、戦闘機の操縦も熟す。 |
柚子奈 |
女 ![]() |
53 | 河堀柚子奈(こぼれ・ゆずな)2年生。部長であり、司令官でもある。 |
明日香 |
女 ![]() |
56 | 羽倉崎明日香(はぐらざき・あすか)2年生。部員であり、ボードゲームが得意。 |
円華 |
女 ![]() |
34 | 萱島円華(かやしま・まどか)1年生。新人部員とは思えない、ブレーンの役割。 |
優香 |
女 ![]() |
8 | 西院優香(さいいん・ゆうか)2年生。生徒会長として、理事長の代行をも務める。 |
ナレーション | 不問 | 31 | ナレーター。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ナレーション:謎の能力を秘めた反乱軍から、地球を守る為に結成された、新国際防衛軍。その黒潮支部を担当するのが、黒潮女学園の生徒である。
ナレーション:今日も、日本に侵攻してきた反乱軍と対峙した、その最中(さなか)……国内に配備されている防衛隊の出撃が、報じられた。それがもたらす、重要な意味とは……?
円華:……部長?
柚子奈:解ってる……皆に指示する。
明日香:(小声で)美紅、柚子奈が何か考え込んじゃったよ?
美紅:そういう時は、何か重大な事が、あったんだ。少し経てば、またタクトを揮う(ふるう)さ。
明日香:ヤバ……そろそろコッチも攻撃しないと、保たないよ!?
美紅:この上空で撃ち落とせば、市街地直撃だな……よし、いったん海上まで誘導するぞ!
明日香:待ってた……了解!
ナレーション:副部長でもある美紅は、戦闘時でも、ある程度の権限が与えられている。
美紅:策がバレないように、威嚇しながら誘うんだ。私もサポートする!
明日香:助かる!
ナレーション:美紅と明日香は、巧みな連携で、敵を太平洋上へと追い出し始めた。
円華:部長、戦陣は太平洋上に移りつつあります。
柚子奈:そう……なら、好都合ね。
円華:……
柚子奈:円華、“レイムγ(ガンマ)”の許可を取って……大至急!
円華:了解!
柚子奈:美紅、明日香、よく聴いて……今、防衛隊がコチラに向かっているわ。
明日香:えぇ〜っ、それって、つまり……?
美紅:明らかな“条約違反”だね?
ナレーション:新国際防衛軍の誕生に際し、世界全土に条約が結ばれた。それは、新防衛軍の攻撃時、いかなる理由でも他国の軍隊、及び防衛軍は、介入しないこと。偵察さえも許されない、まさに隠密行動の強制認可である。
ナレーション:当初は反発が相次いだが、新防衛軍の桁外れな実力に、各国が苦虫を噛み潰したように、サインする結果となった。
柚子奈:そう……でも、今さら理由を尋ねても時間のムダだから……
明日香:……ゴクリ
美紅:……
柚子奈:許可が下り次第、レイムγを発射します!
明日香:えぇ〜っ、それって……!?
美紅:(苦笑しながら)明日香……さっきから、“えぇ〜っ”ばっかりだぞ?
明日香:だって、アレって……まだ試運転すら出来てないのでしょ!?
柚子奈:予算と規模が派手すぎて、試運転できないのよ。部分的なテストはバッチリだと、耳にしている。
明日香:まっ、マジですか……?
美紅:防衛隊が接近しているんだ。私達の行動が隠密である以上……時間的には止むを得ないのでは、ないかな?
柚子奈:流石は美紅……その通り。
円華:……部長!
柚子奈:あっ……取れた?
円華:はい……イースラー島の基地から発射されるので……約10分で到達予定です。
柚子奈:それで、防衛隊の方は?
円華:約15分……ギリギリです。
美紅:円華……多分、“航空防衛隊”だと思うけど……機体の種類は探れるかい?
円華:……やってみます!
ナレーション:円華は、神速の如くキーボードを打ち続けた。
円華:判明しました!
明日香:はやっ!!
円華:黙って……美紅先輩、“JM(ジェイエム)17”です。
美紅:現在地は?
円華:マップ標準で……5D(ファイブ・ディー)です。
美紅:……だったら、15分から20分ぐらいだ。味方の飛翔体が故障しなければ、間に合う!
明日香:そんなの、判るの!?
美紅:戦闘機のお勉強は、好きだからね……ちなみに、円華に、これらの機体を競り落とさせたのは、私だよ。
明日香:いや……アンタら、凄すぎやわ!
柚子奈:ハイハイ、雑談は、この辺で……それで、美紅と明日香は、ボクが指示を出したら、早急に回避行動をとる!
美紅:了解!
明日香:ラジャー!
柚子奈:円華は、レイムγの攻撃範囲、及び威力をレポートして、セーブ……それを本部に送信!
円華:承知しました。
柚子奈:恐らくだけど、直ぐに理事長にも報告されるわ。
美紅:まあ……終了時に反省会だね?
柚子奈:それは、終わってからの話……さあ、緊急に備えて、各自、気を引き締めて!
美紅:了解!
明日香:了解!
ナレーション:そして、クライマックスは、やって来た。
美紅:相手も、装甲が厚くなって、その割に瞬発力がある。
明日香:私は、もう両手が疲れてきたよ……
美紅:頑張れ、あと少しだ!
円華:美紅先輩、明日香先輩……間もなく、レイムγが到達します。早急に回避行動を!
美紅:了解!
明日香:ラジャー!
美紅:私は殿(しんがり)でいい。明日香の分を先に退ける(どける)んだ!
明日香:了解……って、美紅は!?
美紅:ギリギリ間に合うはず……聴いたなら、サッサと手を動かす!
明日香:りょ、了解!
柚子奈:美紅も、迅速に行動してね。シンクロだから、命までは奪われないと思うけど……心身に、ある程度のダメージが残るからね。
美紅:うん、解ってる。だからこそ、この機体を購入してもらったんだ。
柚子奈:解った……美紅を信じるよ?
美紅:うん、失敗は犯さない!
ナレーション:美紅のサポートを得て、明日香は絶妙なタッチで、次々と機体を安全な範囲まで移動させた。
美紅:後は私だけだな……よしっ、頼むよ、777(トリプル・セブン)!
ナレーション:そして美紅も、機敏な動作で、機体を一瞬にして危険なエリアからは脱出した。そして間もなく……巨大な漆黒の球体・レイムγが姿を顕に(あらわに)した。
明日香:デカっ……何よ、アレっ!?
美紅:この世のモノでは、ないね。亜空間から来たみたい……そんな感じかな?
明日香:うん……異世界モノの逆だね。
柚子奈:あれが、レイムγ……!
円華:……
ナレーション:敵は、規格外の物体にミサイルを次々と撃ち込んだ。しかし、相手はビクともしなかった。そして、次の瞬間……敵の軍勢を、一気に包み込んだのである。
明日香:すごっ……あっという間だよ!?
美紅:うん、この世の兵器では、なさそうだな……そう感じても、誰も異論を唱えないだろう。
柚子奈:アレだけ美紅と明日香が手を焼いた軍勢を……いともアッサリと。
円華:……少し、分析してみます。
ナレーション:間もなく、円華はそっと両手をデッキに置いた。視線をやや下げたことで、柚子奈は悲観的に予想した。
ナレーション:円華は、常にポーカー・フェイスであるが、柚子奈はそこから滲み(にじみ)出る、細かな感情の変化を読み取れるように、なっていた。
柚子奈:ダメだったようね……?
円華:……申し訳ありません。
柚子奈:謝る必要は無いよ。ボクにだって解る……これは、“通常の世界”のモノでは無いって。
円華:部長、それって……!?
柚子奈:間もなく、それが証明されるかもね……?
美紅:徐々に拡大し始めている。もう少し移動しないと……あれ、どうなってるんだ!?
明日香:どうしたの、美紅?
柚子奈:何があったの!?
美紅:レーダーが目茶苦茶になってる!
ナレーション:美紅は、そう言いながら、操縦桿(そうじゅうかん)や変速レバーを動かした。
美紅:機体が、言うことを聞かなくなった!
柚子奈:何ですって!?
明日香:マジそれっ!?……えっと……
円華:あっ、明日香センパイ……いま動かしたらダメです!
明日香:えっ、どうして……美紅をサポートしないと!
柚子奈:円華の言う通りよ!……恐らく、あのレイムγには、周辺の機体を“麻痺させる”能力があるのよ!
明日香:だったら、私は大丈夫だけど……美紅が!?
美紅:私も大丈夫。ピンチになったら、緊急に電源を切る!
柚子奈:待ちなさい!!
美紅:……柚子奈?
柚子奈:そんなことをしたら、貴女の心身に多大なダメージが残るわよ!?
美紅:解ってる!あのレイムγが暴走し、巻き添えを喰らって、莫大なダメージを受けて、廃人になってしまうよりは、マシだろう?
柚子奈:でも……
美紅:どのみち動けない……だったら、“絶体絶命の寸前”まで待つしかないだろ?
明日香:……美紅を信じよ?
柚子奈:……明日香?
明日香:美紅は、スーパーヒロインだよ……大丈夫、きっと一瞬にして脱出しちゃうよ!
柚子奈:……
明日香:……信じようよ、美紅を?
美紅:私なら、大丈夫。こう見えて、幼い頃のスパルタで、身体は頑丈だし……何よりも、大男相手でも打たれ強いからね!
柚子奈:ウフフッ……解ったわ。その代わり、ボクはタイミングが解らないから、美紅の判断で、お願い!
美紅:了解!!
ナレーション:美紅は早速、計器類を調べ始めた。
美紅:(N)相変わらず、乱れたまま……んっ?
美紅:一瞬だけ、計器が正常に戻っている!
美紅:(N)これを活かすしか、手はないな……よしっ!
美紅:柚子奈、明日香……これから脱出を試みる!
柚子奈:解った……でも、大丈夫!?
美紅:方法が1つだけ見付かった。それと……円華?
円華:美紅センパイ、とうぞ?
美紅:私の脱出したタイミングで、周波数を調整してくれ。一瞬のタイミングになるから、集中するんだ!
円華:了解……今から専念します。
美紅:頼む……明日香の方は、手間ひまが懸かるから。
明日香:ありがとう、美紅……私もタイミングを見計らって、距離をとるよ!
柚子奈:私のチャンネルを切り替えて、今はレイムγの状況をチェックする……って、なにこれっ!?
明日香:どうしたの、部長!?
柚子奈:エネルギーが、急速どころじゃない……爆発的に増しているわ……これじゃ、放射能爆弾よ!
美紅:包み込んで拡大しているのは、それが理由か……そうなると、チャンスは1回だけだ……みんな、集中していくぞ!
明日香:うん、解った!
円華:了解……周波数変更、いつでもOKです。
ナレーション:美紅は、“一瞬の賭け”に備え、無心に転じた……その時だった!
美紅:うっ、これは……っ!?
ナレーション:突然、美紅の周辺が暗くなり、視野に映る(うつる)のは、レイムγと、包み込まれている敵の戦闘機だけである。
美紅:レイムγが、光ってる。これって、まさか……やはり、何らかの方法で、エネルギーを取り込んでいるのか!?
ナレーション:美紅は、レイムγの光が弱まったタイミングを計り、計器類を覗いた。
美紅:(N)やはりそうか……乱していたのは、エネルギーを取り込んでいたからか!
美紅:これなら、いけるっ!!
ナレーション:そして、チャンスの時は訪れた。レイムγの輝きが、弱まり始めた。
美紅:今だ!!
ナレーション:美紅は、右手の操縦桿(そうじゅうかん)を右下に動かし、更に左手の加速レバーを押し出した。その瞬間、美紅の視界は元に戻った。
円華:うん!
ナレーション:円華も、美紅の脱出のタイミングと同時に、周波数を調節した。一瞬の狂いもない、完璧に同時のタイミングだった。
明日香:あっ、乱れが収まった……よし、私も脱出する!
ナレーション:明日香も、素早い動作で、次々と機体のパネルにタッチして、適度な場所へと移動させた。
美紅:ここまで脱出できたら、大丈夫だな……?
ナレーション:脱出の作業が済んだ直後……レイムγが破裂した。その直後、大気が“口を開ける”ように広がり、漆黒の空間が顕わ(あらわ)となった。
柚子奈:何よ、アレっ……まるでブラックホール!?
明日香:まるで、口を開けたみたい……マジで気持ち悪いよ!
ナレーション:ホラー映画の苦手な明日香は、顔面蒼白(そうはく)で見ていた。そして、次の瞬間……その空間は急速に渦を巻き、次々と敵の戦闘機を“飲み込んで”いった。
美紅:恐れ入った……まさに、ブラックホールだね?
柚子奈:私も初めて見るけど……想像を絶するわよ。
明日香:一瞬でも遅れてたら、これって……?
円華:間違いなく、アレに飲み込まれている可能性も、ゼロでは有りません。
明日香:いや、何でチミは、そんなに冷静に見ていられるの?
円華:率直、かつ冷静に分析しただけです。
明日香:アンタのその精密機械のような冷静さ、私にも欲しいわ。
円華:……
ナレーション:アッサリと飲み込まれるモノ。引力にコントロールを失い、他の機体と接触し、爆発するモノ。あっという間に、敵は枠外に避けた3機を除き、壊滅した。そして、暗黒の空間も、消滅した。
明日香:終わった……のかな?
柚子奈:まだよ!
明日香:ヒィ〜ッ!?
円華:まだ、3機残っています。
美紅:いや、恐らく来ないよ。
柚子奈:美紅……?
美紅:状況から見て、多勢に無勢だ。しかも、防衛隊も接近中だ。ダメ押しの状況に陥るかも、しれないからさ。
明日香:ちょっ、私達も防衛隊が来る前に、引き上げないとダメでしょ!?
円華:その必要は、無さそうです。
柚子奈:えっ?
明日香:えっ?
円華:防衛隊、退却を始めています……敵も、ほぼ同時に退却を始めたようです。
美紅:これでは、防衛隊が何の為に出動したのか……これでは、判りかねるね?
柚子奈:うん……まあ、その点については、おいおい樟葉先生などと相談するよ。
明日香:ねえ……美紅は、もう“解除”して、いいんじゃないの……このままだと、流石の美紅もバテちゃうよ?
美紅:私なら、あと6時間は大丈夫だが?
明日香:いや……アンタら、心身が超人すぎるのよ!
柚子奈:と言っても、もう任務は完了だからね……美紅、こちらでシンクロを解除するから、自動モードに切り替えて?
美紅:了解、後は任せた!
ナレーション:こうして、スクランブルは解除となり、新防衛軍も退却した。
明日香:ふぅ、ビックリな展開になったけど……あのレイム何とか?……アレ、かなりヤバくない?
柚子奈:うん……アレでは、“暴走”した時が怖い。樟葉先生が帰ってきたら、相談する。
ナレーション:2人が話し合っている内に、美紅がカプセルから出てきた。
柚子奈:お疲れ様、美紅!
美紅:うん、部長も!
ナレーション:お互いにハイタッチで、健闘を称え合った。
明日香:ねえ、美紅は、どう思ったの……
あのレイム……?
美紅:レイムγな。
明日香:うん、それそれ!
美紅:威力は、申し分ない。ただ、味方さえも操縦不能にするのは、解せないね。
柚子奈:それも踏まえて、先生がたと相談する。
美紅:私も残ろうか……至近距離で目撃した1人だからね?
柚子奈:ううん、いい……ボクひとりで充分。
美紅:そうか、解った。
柚子奈:それよりも、みんな解っていると思うけど……今回の件は、口外厳禁(こうがいげんきん)で。
明日香:いやあ、流石にアレは喋りづらいよ。誰も信用してくれないよ。
円華:明日香先輩は以前、新作ゲームのネタバレを……
明日香:(遮るように)いやいや……あれはアレ、これはコレ!
美紅:やれやれ、心配せずとも、明日香なら誰にもバラさないって……信じてあげなよ?
柚子奈:それなら良いけど……
ナレーション:そこに、ドアのブザーが鳴った。
明日香:あれ……こんな時間に、誰が?
美紅:ここの存在を知っている者は、ごく一部にすぎないよ。
円華:雰囲気からして……会長ですね。
明日香:よく判るね、そんなこと?
円華:美紅先輩の仰っしゃる通り……そこからのデータで、予測しました。
明日香:あんたは、ファイティング・コンピューターかいっ!?
美紅:何だよ、その喩え(たとえ)は?
優香:西院です……お目通り願えますでしょうか?
柚子奈:ええ、良いよ!
明日香:ドンピシャだわ!
円華:……
ナレーション:柚子奈が、自動ボタンでドアを開けた。
優香:失礼します
明日香:おぉ〜っ、深い御辞儀……本当に教養が出来てるよね、優香は?
美紅:そうでなければ、“1年”から会長なんて、やってないさ。
優香:そんな……“理事長の娘様”に言われるほど、教養は成っておりません。
美紅:私は、只の美章園美紅……ごく普通の女子だよ。
優香:ウフフ……そうでした。ゆず……失礼、河堀さん……
柚子奈:(遮るように)ここでは、名前で良いわよ。いつもの部活と同じように……ね?
優香:そうですね……それで、話は戻りますが……間もなく、樟葉先生と理事長が揃って、お戻りになられます。
柚子奈:そう……なら、好都合ね!
優香:フフッ、どうやら、私と柚子奈さんとは、同じ思惑のようで……?
柚子奈:ええ、ここは理事長の意見も、お訊きしたいところよ。優香も、お願いできる?
優香:承知しました。それでしたら……?
柚子奈:ううん、今回は4人だけで……3人とも、実技で疲れたでしょうから。
美紅:解った……じゃあ、私達は先に帰ろう!
明日香:そうだね……反省会は、また今度で。
円華:異議なしです。
明日香:あ〜あ……反省会、楽しみにしてたのに。
美紅:明日香は、ただコーヒーを飲んで、喋りたいだけだろ?
明日香:テヘヘッ……バレちゃったか!?
柚子奈:今日は、特別に疲れたでしょうから、ゆっくりと休みなさい。
明日香:は〜い……じゃあ、お疲れっス♪
美紅:それじゃ、お疲れ様でした!
円華:お疲れ様です
柚子奈:ええ、お疲れ様……次回については、メールで連絡するわ!
優香:皆さん、お疲れ様でした!
ナレーション:こうして、今回の部活は解散となった。そして、ここからは、各エリアで重要なひと時を過ごすこととなる。まず次回は、柚子奈と優香にスポットを充てる。
※この物語は、フィクションです。
©2023 Lapis.Kazamidori
ナレーション:謎の能力を秘めた反乱軍から、地球を守る為に結成された、新国際防衛軍。その黒潮支部を担当するのが、黒潮女学園の生徒である。
ナレーション:今日も、日本に侵攻してきた反乱軍と対峙した、その最中(さなか)……国内に配備されている防衛隊の出撃が、報じられた。それがもたらす、重要な意味とは……?
円華:……部長?
柚子奈:解ってる……皆に指示する。
明日香:(小声で)美紅、柚子奈が何か考え込んじゃったよ?
美紅:そういう時は、何か重大な事が、あったんだ。少し経てば、またタクトを揮う(ふるう)さ。
明日香:ヤバ……そろそろコッチも攻撃しないと、保たないよ!?
美紅:この上空で撃ち落とせば、市街地直撃だな……よし、いったん海上まで誘導するぞ!
明日香:待ってた……了解!
ナレーション:副部長でもある美紅は、戦闘時でも、ある程度の権限が与えられている。
美紅:策がバレないように、威嚇しながら誘うんだ。私もサポートする!
明日香:助かる!
ナレーション:美紅と明日香は、巧みな連携で、敵を太平洋上へと追い出し始めた。
円華:部長、戦陣は太平洋上に移りつつあります。
柚子奈:そう……なら、好都合ね。
円華:……
柚子奈:円華、“レイムγ(ガンマ)”の許可を取って……大至急!
円華:了解!
柚子奈:美紅、明日香、よく聴いて……今、防衛隊がコチラに向かっているわ。
明日香:えぇ〜っ、それって、つまり……?
美紅:明らかな“条約違反”だね?
ナレーション:新国際防衛軍の誕生に際し、世界全土に条約が結ばれた。それは、新防衛軍の攻撃時、いかなる理由でも他国の軍隊、及び防衛軍は、介入しないこと。偵察さえも許されない、まさに隠密行動の強制認可である。
ナレーション:当初は反発が相次いだが、新防衛軍の桁外れな実力に、各国が苦虫を噛み潰したように、サインする結果となった。
柚子奈:そう……でも、今さら理由を尋ねても時間のムダだから……
明日香:……ゴクリ
美紅:……
柚子奈:許可が下り次第、レイムγを発射します!
明日香:えぇ〜っ、それって……!?
美紅:(苦笑しながら)明日香……さっきから、“えぇ〜っ”ばっかりだぞ?
明日香:だって、アレって……まだ試運転すら出来てないのでしょ!?
柚子奈:予算と規模が派手すぎて、試運転できないのよ。部分的なテストはバッチリだと、耳にしている。
明日香:まっ、マジですか……?
美紅:防衛隊が接近しているんだ。私達の行動が隠密である以上……時間的には止むを得ないのでは、ないかな?
柚子奈:流石は美紅……その通り。
円華:……部長!
柚子奈:あっ……取れた?
円華:はい……イースラー島の基地から発射されるので……約10分で到達予定です。
柚子奈:それで、防衛隊の方は?
円華:約15分……ギリギリです。
美紅:円華……多分、“航空防衛隊”だと思うけど……機体の種類は探れるかい?
円華:……やってみます!
ナレーション:円華は、神速の如くキーボードを打ち続けた。
円華:判明しました!
明日香:はやっ!!
円華:黙って……美紅先輩、“JM(ジェイエム)17”です。
美紅:現在地は?
円華:マップ標準で……5D(ファイブ・ディー)です。
美紅:……だったら、15分から20分ぐらいだ。味方の飛翔体が故障しなければ、間に合う!
明日香:そんなの、判るの!?
美紅:戦闘機のお勉強は、好きだからね……ちなみに、円華に、これらの機体を競り落とさせたのは、私だよ。
明日香:いや……アンタら、凄すぎやわ!
柚子奈:ハイハイ、雑談は、この辺で……それで、美紅と明日香は、ボクが指示を出したら、早急に回避行動をとる!
美紅:了解!
明日香:ラジャー!
柚子奈:円華は、レイムγの攻撃範囲、及び威力をレポートして、セーブ……それを本部に送信!
円華:承知しました。
柚子奈:恐らくだけど、直ぐに理事長にも報告されるわ。
美紅:まあ……終了時に反省会だね?
柚子奈:それは、終わってからの話……さあ、緊急に備えて、各自、気を引き締めて!
美紅:了解!
明日香:了解!
ナレーション:そして、クライマックスは、やって来た。
美紅:相手も、装甲が厚くなって、その割に瞬発力がある。
明日香:私は、もう両手が疲れてきたよ……
美紅:頑張れ、あと少しだ!
円華:美紅先輩、明日香先輩……間もなく、レイムγが到達します。早急に回避行動を!
美紅:了解!
明日香:ラジャー!
美紅:私は殿(しんがり)でいい。明日香の分を先に退ける(どける)んだ!
明日香:了解……って、美紅は!?
美紅:ギリギリ間に合うはず……聴いたなら、サッサと手を動かす!
明日香:りょ、了解!
柚子奈:美紅も、迅速に行動してね。シンクロだから、命までは奪われないと思うけど……心身に、ある程度のダメージが残るからね。
美紅:うん、解ってる。だからこそ、この機体を購入してもらったんだ。
柚子奈:解った……美紅を信じるよ?
美紅:うん、失敗は犯さない!
ナレーション:美紅のサポートを得て、明日香は絶妙なタッチで、次々と機体を安全な範囲まで移動させた。
美紅:後は私だけだな……よしっ、頼むよ、777(トリプル・セブン)!
ナレーション:そして美紅も、機敏な動作で、機体を一瞬にして危険なエリアからは脱出した。そして間もなく……巨大な漆黒の球体・レイムγが姿を顕に(あらわに)した。
明日香:デカっ……何よ、アレっ!?
美紅:この世のモノでは、ないね。亜空間から来たみたい……そんな感じかな?
明日香:うん……異世界モノの逆だね。
柚子奈:あれが、レイムγ……!
円華:……
ナレーション:敵は、規格外の物体にミサイルを次々と撃ち込んだ。しかし、相手はビクともしなかった。そして、次の瞬間……敵の軍勢を、一気に包み込んだのである。
明日香:すごっ……あっという間だよ!?
美紅:うん、この世の兵器では、なさそうだな……そう感じても、誰も異論を唱えないだろう。
柚子奈:アレだけ美紅と明日香が手を焼いた軍勢を……いともアッサリと。
円華:……少し、分析してみます。
ナレーション:間もなく、円華はそっと両手をデッキに置いた。視線をやや下げたことで、柚子奈は悲観的に予想した。
ナレーション:円華は、常にポーカー・フェイスであるが、柚子奈はそこから滲み(にじみ)出る、細かな感情の変化を読み取れるように、なっていた。
柚子奈:ダメだったようね……?
円華:……申し訳ありません。
柚子奈:謝る必要は無いよ。ボクにだって解る……これは、“通常の世界”のモノでは無いって。
円華:部長、それって……!?
柚子奈:間もなく、それが証明されるかもね……?
美紅:徐々に拡大し始めている。もう少し移動しないと……あれ、どうなってるんだ!?
明日香:どうしたの、美紅?
柚子奈:何があったの!?
美紅:レーダーが目茶苦茶になってる!
ナレーション:美紅は、そう言いながら、操縦桿(そうじゅうかん)や変速レバーを動かした。
美紅:機体が、言うことを聞かなくなった!
柚子奈:何ですって!?
明日香:マジそれっ!?……えっと……
円華:あっ、明日香センパイ……いま動かしたらダメです!
明日香:えっ、どうして……美紅をサポートしないと!
柚子奈:円華の言う通りよ!……恐らく、あのレイムγには、周辺の機体を“麻痺させる”能力があるのよ!
明日香:だったら、私は大丈夫だけど……美紅が!?
美紅:私も大丈夫。ピンチになったら、緊急に電源を切る!
柚子奈:待ちなさい!!
美紅:……柚子奈?
柚子奈:そんなことをしたら、貴女の心身に多大なダメージが残るわよ!?
美紅:解ってる!あのレイムγが暴走し、巻き添えを喰らって、莫大なダメージを受けて、廃人になってしまうよりは、マシだろう?
柚子奈:でも……
美紅:どのみち動けない……だったら、“絶体絶命の寸前”まで待つしかないだろ?
明日香:……美紅を信じよ?
柚子奈:……明日香?
明日香:美紅は、スーパーヒロインだよ……大丈夫、きっと一瞬にして脱出しちゃうよ!
柚子奈:……
明日香:……信じようよ、美紅を?
美紅:私なら、大丈夫。こう見えて、幼い頃のスパルタで、身体は頑丈だし……何よりも、大男相手でも打たれ強いからね!
柚子奈:ウフフッ……解ったわ。その代わり、ボクはタイミングが解らないから、美紅の判断で、お願い!
美紅:了解!!
ナレーション:美紅は早速、計器類を調べ始めた。
美紅:(N)相変わらず、乱れたまま……んっ?
美紅:一瞬だけ、計器が正常に戻っている!
美紅:(N)これを活かすしか、手はないな……よしっ!
美紅:柚子奈、明日香……これから脱出を試みる!
柚子奈:解った……でも、大丈夫!?
美紅:方法が1つだけ見付かった。それと……円華?
円華:美紅センパイ、とうぞ?
美紅:私の脱出したタイミングで、周波数を調整してくれ。一瞬のタイミングになるから、集中するんだ!
円華:了解……今から専念します。
美紅:頼む……明日香の方は、手間ひまが懸かるから。
明日香:ありがとう、美紅……私もタイミングを見計らって、距離をとるよ!
柚子奈:私のチャンネルを切り替えて、今はレイムγの状況をチェックする……って、なにこれっ!?
明日香:どうしたの、部長!?
柚子奈:エネルギーが、急速どころじゃない……爆発的に増しているわ……これじゃ、放射能爆弾よ!
美紅:包み込んで拡大しているのは、それが理由か……そうなると、チャンスは1回だけだ……みんな、集中していくぞ!
明日香:うん、解った!
円華:了解……周波数変更、いつでもOKです。
ナレーション:美紅は、“一瞬の賭け”に備え、無心に転じた……その時だった!
美紅:うっ、これは……っ!?
ナレーション:突然、美紅の周辺が暗くなり、視野に映る(うつる)のは、レイムγと、包み込まれている敵の戦闘機だけである。
美紅:レイムγが、光ってる。これって、まさか……やはり、何らかの方法で、エネルギーを取り込んでいるのか!?
ナレーション:美紅は、レイムγの光が弱まったタイミングを計り、計器類を覗いた。
美紅:(N)やはりそうか……乱していたのは、エネルギーを取り込んでいたからか!
美紅:これなら、いけるっ!!
ナレーション:そして、チャンスの時は訪れた。レイムγの輝きが、弱まり始めた。
美紅:今だ!!
ナレーション:美紅は、右手の操縦桿(そうじゅうかん)を右下に動かし、更に左手の加速レバーを押し出した。その瞬間、美紅の視界は元に戻った。
円華:うん!
ナレーション:円華も、美紅の脱出のタイミングと同時に、周波数を調節した。一瞬の狂いもない、完璧に同時のタイミングだった。
明日香:あっ、乱れが収まった……よし、私も脱出する!
ナレーション:明日香も、素早い動作で、次々と機体のパネルにタッチして、適度な場所へと移動させた。
美紅:ここまで脱出できたら、大丈夫だな……?
ナレーション:脱出の作業が済んだ直後……レイムγが破裂した。その直後、大気が“口を開ける”ように広がり、漆黒の空間が顕わ(あらわ)となった。
柚子奈:何よ、アレっ……まるでブラックホール!?
明日香:まるで、口を開けたみたい……マジで気持ち悪いよ!
ナレーション:ホラー映画の苦手な明日香は、顔面蒼白(そうはく)で見ていた。そして、次の瞬間……その空間は急速に渦を巻き、次々と敵の戦闘機を“飲み込んで”いった。
美紅:恐れ入った……まさに、ブラックホールだね?
柚子奈:私も初めて見るけど……想像を絶するわよ。
明日香:一瞬でも遅れてたら、これって……?
円華:間違いなく、アレに飲み込まれている可能性も、ゼロでは有りません。
明日香:いや、何でチミは、そんなに冷静に見ていられるの?
円華:率直、かつ冷静に分析しただけです。
明日香:アンタのその精密機械のような冷静さ、私にも欲しいわ。
円華:……
ナレーション:アッサリと飲み込まれるモノ。引力にコントロールを失い、他の機体と接触し、爆発するモノ。あっという間に、敵は枠外に避けた3機を除き、壊滅した。そして、暗黒の空間も、消滅した。
明日香:終わった……のかな?
柚子奈:まだよ!
明日香:ヒィ〜ッ!?
円華:まだ、3機残っています。
美紅:いや、恐らく来ないよ。
柚子奈:美紅……?
美紅:状況から見て、多勢に無勢だ。しかも、防衛隊も接近中だ。ダメ押しの状況に陥るかも、しれないからさ。
明日香:ちょっ、私達も防衛隊が来る前に、引き上げないとダメでしょ!?
円華:その必要は、無さそうです。
柚子奈:えっ?
明日香:えっ?
円華:防衛隊、退却を始めています……敵も、ほぼ同時に退却を始めたようです。
美紅:これでは、防衛隊が何の為に出動したのか……これでは、判りかねるね?
柚子奈:うん……まあ、その点については、おいおい樟葉先生などと相談するよ。
明日香:ねえ……美紅は、もう“解除”して、いいんじゃないの……このままだと、流石の美紅もバテちゃうよ?
美紅:私なら、あと6時間は大丈夫だが?
明日香:いや……アンタら、心身が超人すぎるのよ!
柚子奈:と言っても、もう任務は完了だからね……美紅、こちらでシンクロを解除するから、自動モードに切り替えて?
美紅:了解、後は任せた!
ナレーション:こうして、スクランブルは解除となり、新防衛軍も退却した。
明日香:ふぅ、ビックリな展開になったけど……あのレイム何とか?……アレ、かなりヤバくない?
柚子奈:うん……アレでは、“暴走”した時が怖い。樟葉先生が帰ってきたら、相談する。
ナレーション:2人が話し合っている内に、美紅がカプセルから出てきた。
柚子奈:お疲れ様、美紅!
美紅:うん、部長も!
ナレーション:お互いにハイタッチで、健闘を称え合った。
明日香:ねえ、美紅は、どう思ったの……
あのレイム……?
美紅:レイムγな。
明日香:うん、それそれ!
美紅:威力は、申し分ない。ただ、味方さえも操縦不能にするのは、解せないね。
柚子奈:それも踏まえて、先生がたと相談する。
美紅:私も残ろうか……至近距離で目撃した1人だからね?
柚子奈:ううん、いい……ボクひとりで充分。
美紅:そうか、解った。
柚子奈:それよりも、みんな解っていると思うけど……今回の件は、口外厳禁(こうがいげんきん)で。
明日香:いやあ、流石にアレは喋りづらいよ。誰も信用してくれないよ。
円華:明日香先輩は以前、新作ゲームのネタバレを……
明日香:(遮るように)いやいや……あれはアレ、これはコレ!
美紅:やれやれ、心配せずとも、明日香なら誰にもバラさないって……信じてあげなよ?
柚子奈:それなら良いけど……
ナレーション:そこに、ドアのブザーが鳴った。
明日香:あれ……こんな時間に、誰が?
美紅:ここの存在を知っている者は、ごく一部にすぎないよ。
円華:雰囲気からして……会長ですね。
明日香:よく判るね、そんなこと?
円華:美紅先輩の仰っしゃる通り……そこからのデータで、予測しました。
明日香:あんたは、ファイティング・コンピューターかいっ!?
美紅:何だよ、その喩え(たとえ)は?
優香:西院です……お目通り願えますでしょうか?
柚子奈:ええ、良いよ!
明日香:ドンピシャだわ!
円華:……
ナレーション:柚子奈が、自動ボタンでドアを開けた。
優香:失礼します
明日香:おぉ〜っ、深い御辞儀……本当に教養が出来てるよね、優香は?
美紅:そうでなければ、“1年”から会長なんて、やってないさ。
優香:そんな……“理事長の娘様”に言われるほど、教養は成っておりません。
美紅:私は、只の美章園美紅……ごく普通の女子だよ。
優香:ウフフ……そうでした。ゆず……失礼、河堀さん……
柚子奈:(遮るように)ここでは、名前で良いわよ。いつもの部活と同じように……ね?
優香:そうですね……それで、話は戻りますが……間もなく、樟葉先生と理事長が揃って、お戻りになられます。
柚子奈:そう……なら、好都合ね!
優香:フフッ、どうやら、私と柚子奈さんとは、同じ思惑のようで……?
柚子奈:ええ、ここは理事長の意見も、お訊きしたいところよ。優香も、お願いできる?
優香:承知しました。それでしたら……?
柚子奈:ううん、今回は4人だけで……3人とも、実技で疲れたでしょうから。
美紅:解った……じゃあ、私達は先に帰ろう!
明日香:そうだね……反省会は、また今度で。
円華:異議なしです。
明日香:あ〜あ……反省会、楽しみにしてたのに。
美紅:明日香は、ただコーヒーを飲んで、喋りたいだけだろ?
明日香:テヘヘッ……バレちゃったか!?
柚子奈:今日は、特別に疲れたでしょうから、ゆっくりと休みなさい。
明日香:は〜い……じゃあ、お疲れっス♪
美紅:それじゃ、お疲れ様でした!
円華:お疲れ様です
柚子奈:ええ、お疲れ様……次回については、メールで連絡するわ!
優香:皆さん、お疲れ様でした!
ナレーション:こうして、今回の部活は解散となった。そして、ここからは、各エリアで重要なひと時を過ごすこととなる。まず次回は、柚子奈と優香にスポットを充てる。
※この物語は、フィクションです。
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