台本概要

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タイトル To move on 【BL台本】
作者名 桜蛇あねり(おうじゃあねり)  (@aneri_writer)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 4人用台本(男4)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 大学のロック部で繰り広げられる、男子4人による青春の物語。

※BL表現が含まれます。
※センシティブなシーンはありませんが、軽いキスシーンがあります。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
リュウタロウ 197 桜の蛇大学4年生。ロック部で”storia”というバンドグループを組んでいた。ギターボーカル。
シュウ 180 桜の蛇大学2年生。ロック部でシン・ケイゴとともに"クリムゾン"というグループで活動中。ベース。
シン 107 桜の蛇大学2年生。ロック部でケイゴ・シュウとともに"クリムゾン"というグループで活動中。ギターボーカル。
ケイゴ 96 桜の蛇大学2年生。ロック部でシュウ・シンとともに"クリムゾン"というグループで活動中。ドラム。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:『To move on』 リュウタロウ:(M)初めはただ、憧れだった。 シン:おめぇら!今日は来てくれてありがとうな!!さぁ、盛り上げて行くぞっ!! リュウタロウ:(M)いつしかそれは、 シン:聞いてくれ、1曲目!”To move on” リュウタロウ:(M)恋情(れんじょう)に変わっていた。 0:間 : 0:大学構内食堂にて シン:あー!最高だったなぁ!やっぱ俺たちが1番だったよなぁ!? ケイゴ:あったり前だろ!春の桜の蛇大学ロックフェス!俺ら”クリムゾン”がいちばん盛り上がってたな! シュウ:たぶんそれ、どのグループも思ってる事だぞ。自分のとこが1番だったってな。 シン:んだよシュウ、ノリ悪いなぁ。んなことわかってんだよ!だからこそ!俺らは俺らが1番だったって思うべきなんだよ!それともなに?今回の演奏、不服だったのか? シュウ:................俺は満足したくないだけだ。 ケイゴ:でたでた、シュウの意識の高さ。わかってるよ、井戸の中の蛙(かわず)だってこと。だけどさぁ。ひとつのイベントが終わったあとくらい、有頂天でいようぜ? シン:そーだぜ、シュウ。そういう自信過剰なくらいがバンドマンにはちょうどいいって。 シュウ:.........”storia(ストライア)”のロックはもっともっと凄かった。 シン:............うっ! ケイゴ:おいおい、シュウ、そこと比べちゃダメだろ。あれは伝説とも言われるバンドなんだから、次元が違うんだよ。 シュウ:だが、俺らの先輩だ。 シン:............桜の蛇大学ロック部の伝説と言われているバンド、”storia”。学生のレベルとは思えない、最高のクオリティとパフォーマンス。さらに........ : リュウタロウ:おっ、なになに?オレ、ウワサされてる? : シュウ:あっ.....! ケイゴ:ウワサをすれば!”storia”のギターボーカル、リュウタロウ先輩じゃないっすか! シン:リュウタロウ先輩!お疲れ様っす! リュウタロウ:大学の食堂で打ち上げ?もっと居酒屋とかでぱぁっとやれよ! ケイゴ:俺らにはここがちょうどいいんすよ。 リュウタロウ:そだ、ロックフェスおつかれ!お前らのステージ、アツかったぜ! シン:あざっす!リュウタロウ先輩、シュウのやつ、ステージ後の余韻に浸ればいいのに、ずっとstoriaには勝てないって全然浮かれてくれないんすよ!何か言ってやってください! シュウ:お、おい、シン! リュウタロウ:おー!シュウわかってんなぁ!そうだ、オレらstoriaに勝てるヤツらはいねぇよな! シュウ:ちょ、あ、頭なでないでくださいって! ケイゴ:いやいや、でもstoriaは去年までのグループじゃないですか! リュウタロウ:まぁ、そうだな。アキラもレオもツバサも、皆卒業したからなぁ。 シン:だったら!今のこの桜の蛇大学の1番は俺らクリムゾンだって思いません!? リュウタロウ:へへっ、そうだな。オレはお前らを1番応援してる。お前らのパフォーマンスは好きだぜ! シュウ:........リュウタロウ先輩は、もうやらないんですか?ロック。 ケイゴ:そーですよ!まだ1年あるんですから、やりましょーよ! リュウタロウ:やんねーよ。オレはアイツら以外とロックやる気はねぇからな。 シン:皆、就職しちゃったんすよねぇ........。................あれ?リュウタロウ先輩は留年したんでしたっけ? リュウタロウ:ちげーよ!オレだけ1個下なんだってば!オレは今年4年生。就活真っ最中だ! シュウ:........就活、聞きたくない言葉だな。 ケイゴ:まぁ俺らはまだ2年生なんだから、まだ考えなくていいっしょ。今はロックのことだけ考えてよーぜ! シン:そーそー!シュウはいつもいろいろ考えすぎなんだってば!もっと気楽にいけよ! シュウ:お前らが楽観的すぎなだけだ! リュウタロウ:まーまー!ケイゴとシンの言う通り、まだ今年は学生を楽しんどけ、シュウ。あー、そだ、今日のステージさ、オレらの曲やってくれたよな。”To move on”。すげぇカッコよかった。 シン:へへっ!あの曲、俺大好きなんすよ!”storia”の名曲っすもんね!”storia”は最高のクオリティとパフォーマンス、さらに作曲もできてオリジナルの曲でロックフェスを盛り上げてた伝説のバンド、っすからね! リュウタロウ:まぁな!........つっても、凄かったのはアキラだけどな。オレらと組んでるときはドラムだったけど、他の楽器もできるし、絶対音感と作曲センスを持ち合わせてたまさに音楽の才能のかたまり........。 ケイゴ:つくづく思うんすけど、なんでアキラ先輩は音楽の道じゃなく一般企業に行っちゃったんすか?絶対音楽の世界でもやっていけたと思うんだよなぁ。 リュウタロウ:アキラいわく、音楽は嫌いになりたくないんだってさ。仕事にして、義務にしてしまうと、どこかで音楽が嫌になるときがくる、ってな。だから、趣味の範囲を越えず、好きなままでいたいんだと。 シン:なるほど。もったいないけど、それが一番いいかもしれないっすね。 リュウタロウ:アイツらと一緒にロックやってた時はマジで楽しかったなぁ。ドラムのアキラ、ギターのレオ、ベースのツバサ。オレの大学生活はマジでロック一色だったなぁ。 シュウ:リュウタロウ先輩たちの演奏が聞けなくて寂しいです。 ケイゴ:ほんっとうにシュウはリュウタロウ先輩たちのこと大好きだよな!口を開けばstoria、storiaってさ! シュウ:だって…。 リュウタロウ:世代交代ってやつだよ、シュウ。今度はお前らがこの桜の蛇大学を盛り上げていく番だ。さっきも言ったけど、オレはお前らのことを一番に推してる。だから、シュウ。シンとケイゴも。憧れるのもいいが、オレらを超えるロックバンドになってやる、くらいの野心でやれよ。いいな。 シュウ:リュウタロウ…先輩…。 ケイゴ:うおお、リュウタロウ先輩からそんなお言葉がきけるなんて…! シン:くーっ!リュウタロウ先輩にそんなこと言われたら勘違いするじゃないっすか!俺らが一番だって、勘違いするじゃないっすか!有頂天になるっすよ! リュウタロウ:勘違いじゃねぇって。オレは好きだぜ。 シン:あああ!リュウタロウ先輩のその声で言われたら男の俺でも惚れちゃいますよ! リュウタロウ:おっ、なに?オレに惚れた?じゃあもっと惚れろよ、シン…好きだぜ…。 ケイゴ:さらりとそんなキザなセリフを言ってのけるリュウタロウ先輩!そこに痺れる憧れ…。 シュウ:リュ、リュウタロウ先輩っ!! リュウタロウ:おぉう、なんだ、シュウ。そんな大声出して。 シン:ビックリした。 シュウ:あ、いや、その…。 ケイゴ:どうしたんだよ、シュウ。リュウタロウ先輩が来てからおかしいぞ、お前。 リュウタロウ:なーに?シュウ、オレがいるから緊張してんのかー? シュウ:…っ!俺は帰るっ!また明日なっ! 0:(シュウ去っていく) リュウタロウ:どうしたんだ、シュウのやつ。 ケイゴ:んー、シュウのやつ、この頃なんか悩みがあるみたいで。練習してるときも何か悩んでる感じなんすよね。 シン:アイツ、自分に厳しすぎるところあるからなぁ。自分のパフォーマンスが満足いかないってずっと悩んでんだよ。そりゃ、俺らもまだまだなところはあるけど、アイツのパフォーマンス、そんな悪くねぇんだけどな。 リュウタロウ:なるほど。スランプの時期ってやつだな。オレらにもあった。 ケイゴ:スランプ、っすか? リュウタロウ:何事もうまくいかねぇな、って思う時期があるんだよ。本気でやってる奴ほど特にな。楽しくてやっているはずのロックが、楽しくなくなったり、悩みの種になったりな。 シン:ロックを楽しめなくなるのは嫌、だな…。シュウ、やめたりしないよな…? リュウタロウ:大丈夫だ、心配すんな。明日は練習? ケイゴ:練習っす。 リュウタロウ:じゃ、明日も顔出すわ。 シン:リュウタロウ先輩、めちゃくちゃ練習に顔出してくれるっすけど、就活は大丈夫なんすか? リュウタロウ:余裕。今はお前らの方が大事。んじゃ、また明日な。 ケイゴ:はい!お疲れ様っす! シン:お疲れ様です! 0:間 : 0:翌日、大学ロック部練習場 リュウタロウ:桜の蛇大学ロック部。去年までは"storia"というバンドを中心に、音楽系イベントを盛り上げていた。"storia"ハイクオリティの演奏とパフォーマンス、そして彼らのオリジナル曲はどれも名曲ばかり。その数々の名曲は、ドラムのアキラによる作曲・そしてギターボーカルであるリュウタロウの作詞によって創り上げられていた。また、ハイルックスとアクティブなパフォーマンスのギターのレオ、爽やかな甘いマスクに王子様キャラ、そのキャラからは想像もつかないような激しいベースのツバサも多くの人気があった。…というか、見た目とキャラ的な意味ではレオとツバサは多大な人気を博していた。結局なんだかんだ見た目がいいやつがモテるのだ。たとえ良い作曲をしようと、良い歌声を持っていようと、ルックスの良いやつがモテるのだ。世の中の女の子はみんな面食いなのだ許せない…。 シン:あの、リュウタロウ先輩?何してるんすか…。 ケイゴ:練習中なんすけど…。 リュウタロウ:あーおい、今はまだ入ってくるタイミングじゃねーだろ!もう少しでお前らの紹介に入るから、そしたら入ってきて。 シュウ:いやだから、何してるんですかって。 リュウタロウ:えー?見てわかんねぇ?動画撮ってんだよ、ロック部のグループ紹介動画。 シン:いや、自分たちの"storia"の紹介じゃないすか。しかも最後リュウタロウ先輩の私情入ってるし。 リュウタロウ:"storia"の紹介は絶対いるだろ!いいから、もう少し黙って聞いてろ。 ケイゴ:練習邪魔しに来たのか、この人…。 リュウタロウ:そんな"storia"も去年で引退。そして!ロック部は世代交代!今を輝くグループを紹介していくぜ!まずは狼のような噛みつかんばかりの激しいパフォーマンスが特徴の"クリムゾン"だ!ばばんっ! シュウ:……。 ケイゴ:え、ここで!? シン:い、いえーい!クリムゾン、ここに参上っ! リュウタロウ:おいおい、ステージ上の勢いはどうした!もっとあげていけよな!じゃあメンバー紹介だ!まずはドラムのケイゴ! ケイゴ:え…、あ、ドラムのケイゴだっ!俺の激しいセッションについてきやがれ! リュウタロウ:いいねいいね~!そしてお次は!ベースのシュウ! シュウ:よ、よろしく…。べ、ベースのシュウだ。 リュウタロウ:そんな緊張すんなって!そして!最後は迫力のボイス!ギターボーカル、シン! シン:うえ~いっ!いいか!よーく聞け!俺は!この桜の蛇大学ロック部の頂点に立つ男、シンだ!よーく覚えとけよ! リュウタロウ:ひゅー!牙を見せてきたね~!ってなわけで、これからの活躍に期待!”クリムゾン”でした~!………よし、とりあえずこれでいいかな。 ケイゴ:急にふらないでくださいよ、びっくりするじゃないっすか。 リュウタロウ:へへ、いいじゃん、自然体って感じでさ。 シュウ:……なにも言えなかった。 シン:ってかリュウタロウ先輩!俺ら練習中なんすけど! リュウタロウ:ごめんって。今からはちゃーんと練習付き合うからさ! ケイゴ:頼みますよ!じゃあ、最初からいくか。 シン:おっけ。 シュウ:わかった。 0:間 リュウタロウ:やっぱ何度聞いてもお前らの演奏は最高だな。 シン:ですよね!俺らやっぱ、最高っすよね! リュウタロウ:まぁでもまだまだ伸びしろはある。まずケイゴ。 ケイゴ:っす。 リュウタロウ:迫力のあるドラムはいいんだが、たまに雑になるとこがあるな。自覚あるだろ? ケイゴ:……やっぱわかりますか。 リュウタロウ:そこをもう少し丁寧に。で、シン。 シン:は、はい。 リュウタロウ:ちょいちょい音外してる。ギターはいい感じだから、ボーカルの練習に注力しろ。 シン:あ~…やっぱ目立つっすよね…。わかりました! リュウタロウ:で、シュウ。 シュウ:あ、あぁ…。 リュウタロウ:お前はもっと自信を持て。シンとケイゴの勢いに押されてるぞ。 シュウ:……自信、ですか。 リュウタロウ:そ。もっと、オレは最高のベーシストだー!っていう勢いを出せ。 シュウ:……わかり、ました。 リュウタロウ:よし、じゃあ今のとこ意識して、次の曲やってみてくれ。 シン:うす! 0:間 リュウタロウ:だいぶ良くなってきたな。よし、今日はこの辺で解散にすっか。 ケイゴ:お疲れっす!リュウタロウ先輩、アドバイスあざました!うまくなれた気がします! シン:だな!感謝っす!よーし!俺はこのままの勢いで帰って自主練だぁ!お先に失礼しやす!お疲れっすー! リュウタロウ:おう、お疲れ。 シュウ:お疲れ。 ケイゴ:お疲れー!んじゃ、俺も今からバイトだから行くわ。それじゃ、お疲れっす! リュウタロウ:お疲れ、またな。 シュウ:お疲れ。 リュウタロウ:さーて、シュウ、お前は今から時間、ある? シュウ:えっ? リュウタロウ:ちょっと話そうぜ。いい場所があるんだ。 シュウ:は、はい…。 0:間 : 0:学校近くの河川敷 シュウ:河川敷…。 リュウタロウ:静かでいいだろ、ここ。大学近いけど、駅とかとは逆方向にあるから、あんま人来ないんだよね。 シュウ:いいところですね。 リュウタロウ:だろだろ~。よく悩み事とかあると、ここに来て考え事してたんだよな。 シュウ:悩み事、ですか? リュウタロウ:ロックしてたとき、結構悩むことは多くてな。アキラのつくったメロディーに、どういう歌詞をのせようか、とか、どう歌えば魂のこもった歌にできるだろう、とかな。 シュウ:リュウタロウ先輩もいろいろ悩んでたんですね。 リュウタロウ:本気でやってたからな。……お前もだろ、シュウ。 シュウ:……。 リュウタロウ:何に悩んでんの?ロックのことか?それとも他のこと? シュウ:……。……ロックのこと、です。 リュウタロウ:シンとケイゴが心配してたぞ。シュウが元気ないってな。 シュウ:あいつらには話せない…。心配かけたくない。 リュウタロウ:どーしたんだよ。あいつらには言わないから、話してみ。 シュウ:……なんていうか、俺はあいつらと、他のロック部のメンバーと比べて、平凡だな、と思ってて。 リュウタロウ:平凡? シュウ:みんな、自分に自信を持っていたり、派手なパフォーマンスや勢いがあって。俺にはそういうのがないな、と。 リュウタロウ:なーるほどね!つまりあれか、キャラがたってない、ってことだな。 シュウ:キャラ…そう、ですね。シンは自信があって誰もがついていきたくなるようなカリスマ性があるし、ケイゴはバカみたいにポジティブなところがあって、みんなに愛されるキャラだ。それに比べて俺は……人見知りで、面白いトークもできない、平凡な人間だ。 リュウタロウ:ふーん、なるほどね。じゃあさ、シュウ。自分のことを平凡だと思うのなら、キャラを作って演じてみればいいんじゃないか。ステージ上では。 シュウ:キャラを…演じる…? リュウタロウ:そ。オレ、前から思ってるんだけど、シュウって真面目でクールなとこあるじゃん? シュウ:そう、か…? リュウタロウ:ほら、シンとケイゴが浮かれてても、シュウは満足せずにずっと上を見て努力しようとしてるし、言葉遣いだって、かなり丁寧だろ?あいつらはくだけた敬語だけど、お前はちゃんとした敬語で接してる。そういうとこ、いいなって思うぜ。 シュウ:……そう、か。 リュウタロウ:そーだ!シュウさ、クールキャラ極めてみればいいんじゃないか?シンもケイゴも明るくてにぎやかな性格なんだから、お前はその逆をいけば引き立つぜ! シュウ:クールキャラ…クールキャラって…どんなキャラですかね…。 リュウタロウ:んー…侍、みたいな? シュウ:さ、さむらい…? リュウタロウ:さすがに「拙者」とか「~でござる」までキャラづけるのは違うから…そうだ、一人称を「私」にして、あと「御意」とか言ってみたりしてさ!ほら、なんかクールキャラっぽくね? シュウ:そうかな…。まぁでも、他と類をみないキャラではある気がします。 リュウタロウ:最初は慣れないかもしれねぇけど、板についてくれば自信もついてくるさ。 シュウ:は、はい、頑張ってみます…! リュウタロウ:違う違う、そこは「御意」だろ? シュウ:ぎょ、御意…。 リュウタロウ:へへっ、なんつーかクールっていうか可愛いよな、シュウって。ほーらよしよし。 シュウ:あ、頭なでないでくださいっ! リュウタロウ:でも、お前のそういう、好きなものに対して真っすぐで一生懸命なとこ、オレは好きだぜ。 シュウ:…っ。リュウ、タロウ先輩…。 リュウタロウ:大丈夫、自信持って。お前はロックの才能ある。オレが保証するから。 シュウ:……!リュ、リュウタロウ先輩、あの、まだ時間あるなら俺と…。 リュウタロウ:(リュウタロウのスマホが鳴る)おっと、こんな時に電話…お、シンじゃん。わりぃ、ちょっと出るわ。…はいはーい、シン、どしたー? シン:リュウタロウせんぱぁぁぁい……助けてくださぁい……。 リュウタロウ:おーおー、どーしたよ。何かの組織に追われてるのか? シン:違うっす!そんなヤバイ世界で生きてないって!今、曲の難しいとこでつまずいてて、何回やっても弾けないんすよぉ。教えてくださいせんぱぁい…。 リュウタロウ:あ、もしかして次のステージでやるって言ってた曲か?確かに、あれムズイとこかなりあるよなー。仕方ねぇな、この最強ギタリストのリュウタロウ様が直々に教えてやろう! シン:助かるっす!リュウタロウ先輩、今どこっすか?迎えに行くんで、うち来てくださいよ。 リュウタロウ:まだ学校の近く。いいよ、今日オレ、バイクで来てるからそのままお前ん家行くわ。 シン:お!さすが先輩!じゃあ先輩来るまで、晩飯の準備しときまーす! リュウタロウ:了解、すぐ行く。(電話を切る)へへっ……。あ、悪いな、シュウ。なんかシンに呼ばれたからオレ行くわ。 シュウ:あ、あぁ……。 リュウタロウ:んじゃ、またいつでも相談乗るから、あんま悩みすぎんなよ!じゃあな! シュウ:お、お疲れ様です…。(ボソッと)……俺、じゃないか…。 0:間 : 0:大学構内ライブ会場 シン:この声、世界中にとどろかせるぜ!俺の歌に痺れろ!ギターボーカル、シンっ! ケイゴ:この会場は俺が支配するっ!脳髄(のうずい)まで響かせるからな!覚悟しろ!ドラムのケイゴだ! シュウ:私がいるからこそバランスが保たれていることを忘れるなよ。クールに決めてやる。ベースのシュウだ。 シン:今日は俺らが全部のみこんでやるからお前ら全力でついてこいよ! ケイゴ:我ら最強の"クリムゾン"! シュウ:まずは一曲目。"BigBang" 0:間 シン:ライブお疲れ様ぁ! シュウ:お疲れ。 ケイゴ:いやぁ、今回も最高だな! シン:だな!大きなミスもなかったし、みんなノってたし! ケイゴ:シュウもだいぶノれるようになってきたよな。 シュウ:まあな。前は無理にお前らのキャラに合わせていたのだが、そうじゃなくて、自分のやりやすいように振舞うようにしたらノれるようになった。 シン:あぁ、シュウらしさが出てていいと思うぜ。 ケイゴ:"クリムゾン"もしっかり形になってきたよなぁ。……さて、今夜はどうする?飲みに行く? シュウ:行こう。私はそのつもりだ。 ケイゴ:おっけー!じゃあいつもの居酒屋で、 シン:わり、俺今日はダメなんだ。 ケイゴ:なんだシン、珍しいな。お?もしかして女か? シン:ちげーよ。残念ながら男だ。 シュウ:リュウタロウ先輩、か…? シン:シュウ、よくわかったな!いやぁ、今夜リュウタロウ先輩からギターテク教えてもらえることになってな! ケイゴ:なんだよ、ライブ終わったのに練習か?お前も真面目だな。 シン:リュウタロウ先輩、就活忙しくなってきたみたいで、なかなかスケジュール合わねぇんだよ。んで、今日は夜なら時間あいてるからって。 ケイゴ:けっ!あのリュウタロウ先輩からギターテク教えてもらうなんて贅沢な奴!じゃ、3人での打ち上げはまた後日にするか。 シン:わりぃな!それじゃ、俺はここで!お疲れ! ケイゴ:お疲れー! シュウ:…お疲れ。 ケイゴ:さて、シュウ、行くかぁ。俺らはライブ後の余韻に浸りながらぱーっと飲もうぜ。 シュウ:あぁ、そうだな…。 0:間 : 0:シンの自宅 : リュウタロウ:っつーわけで!今日のライブとリュウタロウ特別レッスン、お疲れ様ー!かんぱーい! シン:あと、リュウタロウ先輩、内定おめでとうございま―す!かんぱーい! リュウタロウ:んぐ、んぐ、っはー!ありがとうなー!今日の酒はいつにも増してうまいな! シン:ホント、お疲れ様っす! リュウタロウ:あー、今日のライブ見に行きたかった…。いろいろ内定の手続きとか懇親会とかで間に合わなかった。 シン:仕方ねぇっすよ。でも、次は来てくださいね!…これでもう就活終わりっすか? リュウタロウ:おう。これで残りの学生生活、好きにすごせるわ。シンのこと、付きっきりで面倒見れるぜ。 シン:保護者ですか。でも、リュウタロウ先輩にいろいろ教えてもらえるのは嬉しいっす!まだまだ教えてもらいたいテクニックいろいろあるっすからね! リュウタロウ:……シン、あのさ。内定祝いってことでオレのお願い一つ聞いて欲しいんだけどさ。 シン:いいっすよ!なんすか、先輩! リュウタロウ:敬語使うのやめにしねぇ? シン:へっ? リュウタロウ:オレ、堅苦しいの好きじゃねぇしさ。お前ら、特にシンとはさ、もっと対等にコミュニケーションとりたいんだよ。…今更ってとこはあるけどさ。 シン:でもリュウタロウ先輩は、俺の尊敬する先輩で、対等なんて…。 リュウタロウ:いいじゃん。お前との壁を作りたくないんだよ。上下関係っていう。シンは嫌?オレとタメで話すの。 シン:全然嫌じゃないっす!……いや、嫌じゃない! リュウタロウ:へへっ、先輩後輩じゃなくてさ、ダチでいようぜ。 シン:おう!わかった、先輩がそういうなら! リュウタロウ:先輩、じゃなくて"リュウタロウ"。"リュウ"でもいいぜ。 シン:なんか、それだけでリュウタロウせんぱ…リュウタロウと距離が近くなった気がする! リュウタロウ:おう!こっちのがオレも心地いいや。 シン:嬉しいなぁ。去年までは遠い存在だと思ってたリュウタロウと、こうしてダチとしてお酒飲んでるなんて。去年の俺に自慢してやりてぇ。 リュウタロウ:なになに、そんなにオレのこと好きだったの? シン:当たり前じゃないっすか!"storia"のグループとしてはもちろんだけど、その中でもやっぱリュウタロウのギターボーカルが一番カッコいいって思ってたから。憧れてたんだよ。 リュウタロウ:…オレは、シン、お前に憧れてるけどな。 シン:え、リュウタロウが?俺に? リュウタロウ:シンの自信に満ちた歌い方、目を引き付けるような輝かしいパフォーマンス。そして、ケイゴとシュウを導いていくカリスマ。すげぇよ、シンは。 シン:……っ。ちょ、急に照れること言わないでくださ… リュウタロウ:動揺してんの?また敬語戻ってるけど。 シン:リュウ、タロウ先輩…っ、近いって…! リュウタロウ:顔、真っ赤だな。そういうかわいいとこも、好きだぜ、シン。 シン:~~~っ!恥ずかしいから、見んな…っ! リュウタロウ:あー、そういう反応されるとさ、もっといじめたくなっちゃうんだけど? シン:……っ! 0:間 : 0:いつもの居酒屋 シュウ:おい、顔が気持ち悪いぞ、ケイゴ。 ケイゴ:はぁ?顔が気持ち悪いってなんだよ! シュウ:スマホをにやにやしながら見ているお前は今、最高に気持ち悪い。 ケイゴ:ひでぇ! シュウ:なんだ、良い事でもあったのか? ケイゴ:いやぁ、そーなんだよ!さっきのライブ、同じゼミの子が見てくれてたんだけど!カッコよかったって言ってくれて…ふへへへ。 シュウ:それでにやついてんのか。 ケイゴ:この子かわいくてさぁ。気配りもできるいい子で、授業一緒になったときはよく話しかけてくれるんだけどさぁ。趣味も合うし、話も面白いし……。 シュウ:なるほど、その子に惚れてるってことか。 ケイゴ:惚れてる…そーだなぁ。そうなんだろうなぁ…。 シュウ:なんだ、煮え切らないな。 ケイゴ:初めてなんだよね、こういう感情。 シュウ:嘘つけ、お前結構いろんな女の子と付き合ってきただろう。 ケイゴ:今までは、あっちから告白してきたから、OKしてただけだよ。付き合ってみたけど、お互いなんか違うなってすぐわかれることがほとんどだったし。 シュウ:おーおー、モテる男は違うねぇ。 ケイゴ:でも長続きしなかったんだよ。なんていうか、彼女よりも音楽やっていたいし、お前らと過ごす方が楽しかったからさ。 シュウ:なるほど。 ケイゴ:だけどさー、あの子と話すようになってからはさ、あの子のこと考えてることが多くなってさ。今日のライブだって、無意識に姿を探してたり、カッコいいって思われるように頑張ろうって思ったりさ。そんで、こうやってかっこよかったよって言われてすげぇ嬉しいしさ。 シュウ:……それは好き、ってことだな。 ケイゴ:だよなぁ。俺の中で、あの子だけが特別なんだよ。……好きなんだなぁ、あの子のこと。 シュウ:その子に恋人はいるのか? ケイゴ:いない。でも、男女問わず友達多いから、早くしないと……。 シュウ:チャンスがあるならいいじゃないか。告白しろよ。 ケイゴ:そうだよな!よし、俺は覚悟決めたよ。来週、あの子の誕生日あるから、プレゼントと一緒に告白しよう…! シュウ:……すごいな、ケイゴは。そんなすぐに覚悟決めてさ。 ケイゴ:好きって自覚しちゃったからな!と、なるとあとは当たって砕けるのみ! シュウ:うらやましいよ。……応援、してるぞ。 ケイゴ:おうっ!……シュウはどうなんだ?なんかそういう悩み、ありそうだけど。 シュウ:…っ。べ、別に私は…! ケイゴ:お前本当にわかりやすいよな。 シュウ:……気になっている人は、いる。 ケイゴ:ほーお!聞かせろよ。どんな人なんだ? シュウ:まぁ、その、年上、だな。 ケイゴ:年上かぁ。で?で?好きになったきっかけは?出会いは?告白はいつするんだ? シュウ:一気に聞くな!……告白はしない、と思う。 ケイゴ:は?なんで?あ、もしかして彼氏持ちってことか? シュウ:………私はあの人の眼中にない。あの人が好きなのは私じゃない、から。 ケイゴ:……シュウ? シュウ:ずっと見てるから、わかってしまった…。あの人が好きな人と話しているときの表情が…とても嬉しそうで、私には見せてくれないから…。 ケイゴ:うん。 シュウ:だから、振り向いてもらおうって、今日のライブでカッコいいとこ見せようって、頑張ってきたけど、今日ライブにあの人はいなかった…。事情があったってことはわかってるけど、それでもショックを受けてる自分がいて……っ! ケイゴ:シュウ、落ち着け。 シュウ:っ。……すまない、取り乱した。 ケイゴ:本気で好きなんだな、その人のこと。 シュウ:そう、だな。好きなんだと思う…どうしようもないくらい。 ケイゴ:じゃあもっと積極的になれって。 シュウ:……でも、 ケイゴ:『To move on』 シュウ:……っ! 0:間 : 0:シンの自宅 リュウタロウ:そういう反応されるとさ、もっといじめたくなっちゃうんだけど? シン:……っ! リュウタロウ:シンのそのカッコよさ、オレはずっとずっといいなって思ってた。ずっと憧れてた。憧れて、それでオレは…… シン:『To move on』 リュウタロウ:……? シン:リュウタロウ、俺、この大学に来る前はすげぇ根暗だったんす。しゃべる声も小さくて、うまく人とコミュニケーションとれなくて、何事にも消極的で、やる前からあきらめてしまうような、そんな奴だった。 リュウタロウ:シンが? シン:でも、高校3年のとき、この大学の大学祭にきて、なんとなくでロック部のステージを見に行ったんだ。そこで聞いたのがstoriaのライブだった。 リュウタロウ:……。 シン:そこで聞いたのが『To move on』。あの曲が、俺を変えてくれた。 リュウタロウ:『To move on』か…。 シン:俺、あの曲の一番好きなのが歌詞なんだ。確か、リュウタロウが作詞したんだよな。 リュウタロウ:あぁ、オレだ。 シン:「To move on、前に進め 自分の殻を破って、失敗なんて蹴とばして」ってフレーズ。ここを歌ってるときのリュウタロウがかっこよくて、輝いて見えて、俺もこうなりたいって思ったんだ。 リュウタロウ:へへ、あの時はオレもまだ未熟だったけどな。 シン:だから!さっきリュウタロウが褒めてくれた俺があるのは、リュウタロウのおかげなんだ。俺に変わるきっかけをくれた人、俺が憧れた人、目標になってくれる人、一番尊敬している人…。 リュウタロウ:あぁ。 シン:リュウタロウは、俺の…… 0:間 : 0:いつもの居酒屋 ケイゴ:『To move on』 シュウ:……っ! ケイゴ:storiaの最高の名曲であり、俺らがこうあろうと決めた言葉でもある。 シュウ:「To move on、恐れず進め」……。 ケイゴ:俺らが一番演奏してきたのもこの曲だよな。俺もシュウもシンも、この曲を聞いて、ロックに憧れて、こうしてバンドを組んだ。 シュウ:あぁ。 ケイゴ:もともと俺らはバンドなんかやる柄じゃなかっただろ?シンは高校時代までは根暗だったらしいし、シュウも人見知りで無口だったし、俺もネガティブで奥手な性格だった。そんな俺らが、あの曲で変われたんだ。「自分の殻を破り、失敗を恐れず、常に前を向いて生きていけ」って。 シュウ:あぁ、そうだ…。 ケイゴ:じゃあ、恋に対しても、積極的になろうぜ。失敗を恐れんなって。 シュウ:ケイゴ…。 ケイゴ:その人に、惚れてんだろ?どうしようもないくらい。 シュウ:……あぁっ!好きなんだ!最初はただの憧れだったのに!見ているだけでよかったのに!いつの間にかあの人を手に入れたいって思う自分がいる、自分のものになって欲しいって貪欲な自分がいるっ! ケイゴ:たぶん恋ってのはそういうもんなんだと思うぜ。俺も同じこと思ってるからな。あの子が欲しいって。だからシュウ。俺もお前も、全力で前に進もう。悔いのないように。 シュウ:ありがとう、ケイゴ。自分の気持ちを整理できた気がする。 ケイゴ:俺もだよ、シュウ。決心がついた。じゃ、景気づけに。俺たちの恋愛が成功しますように!乾杯! シュウ:乾杯! ケイゴ:よーし!じゃあ今夜はガッツリ恋バナするぞー!ってことで聞いてくれ、シュウ!あの子のすばらしさを! シュウ:付き合ってもないのに惚気るのか…。いいぞ、聞かせろ。 0:間 : 0:シンの自宅 シン:リュウタロウは、俺の、一番の憧れの存在……だ……。 リュウタロウ:あ、おい、シン? シン:ん……。 リュウタロウ:……寝てる。こいつ、酒はいると急に電池切れるよなぁ…。ま、ライブもあったし、疲れたよな。よっと、ベッドに寝かせて、と。 シン:んん……。 リュウタロウ:憧れ、ね…。なぁ、シン…。お前がオレに抱いてくれている"憧れ"に、恋情ははいってるのか…?シン、オレがお前に抱いてるのは憧れだけじゃない。……好きだよ、シン。また近いうちにちゃんと気持ち伝えるから、その時にお前の気持ちも聞かせてくれ。……おやすみ。 0:間 : 0:数日後、ロック部練習場 リュウタロウ:お疲れー!あの伝説のリュウタロウ様が、降臨したぞー!ばばーんっ! シュウ:リュウタロウ先輩、お疲れ様です。 シン:おお!リュウタロウ、お疲れ! リュウタロウ:よーう!あれ、今日はケイゴいないのか。 シン:ケイゴは今日は大切なイベントを進行中だ。 リュウタロウ:大切なイベント? シュウ:おい、シン!先輩に向かってそんなタメ口使うな! リュウタロウ:あー、いいのいいの。オレがシンに使うなって頼んだんだ。 シュウ:え…? シン:おうよ!俺とリュウタロウはもう先輩後輩じゃない…そう、ダチなのさ! リュウタロウ:いえい、いえーい!……ま、お前らとはフランクにやっていきたいってことよ。シュウとケイゴも、もっと馴れ馴れしくしていいからな! シュウ:……(ボソッと)ちゃんとした敬語を使うのがいいって褒めてくれたのに。 リュウタロウ:ん?シュウ、どしたー? シュウ:い、いえ、何でもないです。 リュウタロウ:そう固くなるなって。んで、ケイゴの大切なイベントってなんだ? シン:今日あいつ、好きな子に告白するんだってさ! リュウタロウ:おおー!それは一大イベントだな!うまくいきそうなの? シン:手ごたえあり!って自信満々に言ってたから、明日にはリア充になってるんじゃないかな。 リュウタロウ:いいねいいね!じゃあお祝いの準備しとかないとな! シン:あーあ!うらやましいなー!俺も彼女ほしー! リュウタロウ:だーめ。シン、お前は彼女つくっちゃダメだ。 シン:なんでだよー! リュウタロウ:なんでも、だ! シュウ:シン、いつまで休憩している。そろそろ練習しろ。 シン:固い事いうなよ、シュウ。せっかくリュウタロウが来たんだから、もうちょっとしゃべろうぜ。 シュウ:リュウタロウ先輩が来てくれたからこそ、練習を見てもらうべきだろう。 シン:ちぇー。ホント、真面目だな、シュウは。 シュウ:いいからやるぞ。…リュウタロウ先輩、見てもらえますか。 リュウタロウ:もちろん!そのために来たんだからな! シン:っし、じゃあやりますか! 0:間 リュウタロウ:おー!すげぇうまくなってる! シン:だろだろ!これでも、かなり練習してんだぜ! リュウタロウ:あの難しいコード、綺麗に弾きこなしてるな!さすがシンだ! シン:リュウタロウのアドバイスのおかげ!へへん! リュウタロウ:あとシュウ、お前かなり上達したな! シュウ:そう…ですか…? リュウタロウ:あぁ!迫力が増して、かっこよくなってる。自信、ついてきた? シュウ:リュウタロウ先輩のおかげ、です。 シン:そー!こいつさ、最近ライブのときの雰囲気よくなってさ!この間のライブもかなりいい感じになったし! リュウタロウ:うわー!やっぱ見たかった…!じゃあ、次のライブは期待しておくからな!シュウ! シュウ:あ、あぁ…! リュウタロウ:さーて、じゃ、今日の練習はこの辺にしてさ、今から飯食いに… 0:練習場のドアが開き、ケイゴが勢いよく入ってくる ケイゴ:シュウ~! シュウ:え、ケイゴ?ど、どうした急に!ってかお前、今日…! ケイゴ:フラれた。 シュウ:……え? ケイゴ:フラ…っ、フラれた…っ!う、うぅ~っ! シン:おい、ケイゴ!マジ、かよ。 ケイゴ:シン~!リュウタロウ先輩~!俺、俺、イケると思ったんすよ~!う、うわあああ! リュウタロウ:落ち着け、ケイゴ。話聞くから。 ケイゴ:うわあああん!聞いてくださいよぉ…。 シュウ:とりあえず、いつものとこへ行こうか。 シン:そうだな、そこで慰め会するか…。 0:間 ケイゴ:正直、あの子も俺のこと好きなんだろなって思ってたんだよ。ラインのやりとりも毎日してるし、授業一緒の時は近い席で一緒に受けてたし、二人で遊びに行くこともあったし!でもさ、今日告白したらさぁ、「ケイゴ君とは友達でいたいんだ」って言われちゃってさぁ!友達以上にはなれなくてさぁ! シン:友達止まりってやつかぁ。 ケイゴ:そうなんだよ!あの子の中では、俺は特別じゃなかったんだよ!それがショックでショックで…う、うぅ~。 シュウ:そうか、ツラかったな、ケイゴ。 ケイゴ:シュウ~!俺ダメだったよ~!シュウ、ダメだった俺の分まで、お前、幸せになってくれよ~! シュウ:ば…っ!ケイゴ! リュウタロウ:お、なんだなんだ、シュウも好きな奴いんのか? シン:へぇ?それは初耳だな、シュウ。 シュウ:違う!そうじゃなくて! ケイゴ:お前はいつ告白するんだ、シュウ~。あの日俺ら誓っただろ~! シュウ:お前もうしゃべんな!ケイゴ! リュウタロウ:それは、詳しく聞きてぇなぁ?なあ、シン! シン:そうだな!シュウ、お前あんまそういう話しないから興味ないもんだと思ってたんだけど、好きな人がいるなんて……(シンのスマホが鳴る)っと、電話?あ、レイナちゃんから…。わり、ちょっと電話出てくる! リュウタロウ:おう、いってらっしゃい。……んで?シュウ、詳しく聞かせろよ。 ケイゴ:俺も聞きた~い! シュウ:ケイゴ、酔いすぎだ!もう飲むな!そして帰れ! ケイゴ:なんでそんなこと言うんだよ~!いいじゃんか~!俺はお前の幸せが聞きたいんだよ~!お前の幸せで俺を満たしてくれよ~! シュウ:だーまーれー! リュウタロウ:堪忍しろ、シュウ。ここまで聞いておいて、聞かないっていう選択肢はないからな!相手は?同じ大学? シュウ:う…っ!お、同じ大学、ですけど!これ以上は言いません! リュウタロウ:ほーお!じゃあオレらの知ってる奴かもしれねぇな。学年は?同じ? シュウ:もうこれ以上は言わないですから! ケイゴ:年上らしいっすよ。 シュウ:ケイゴ! リュウタロウ:年上かぁ!確かに、シュウかわいいとこあるもんな!かわいがりたい欲が出るんだよな、シュウ見てると。 シュウ:か、からかわないでください! リュウタロウ:3年?4年?もしかしたらオレ知ってるかもしれねぇからさ、名前教えてよ。 シュウ:言わない! ケイゴ:シュウ、『To move on』だ。次、その人と会うことがあったら、押し倒せ。全力で前に押し倒せ。押し倒してキスして、蹂躙しろ。 シュウ:あほか!っていうか、その曲名をそこで出すな!そういう意味で使うな! リュウタロウ:そうだぞ、シュウ。とにかく前に進むんだ。強引に押し倒すんだ。『To move on』だ。 シュウ:リュウタロウ先輩まで何言ってるんですか!2人とも酔いすぎ!もう飲むな! ケイゴ:結局は強引さが大事なんだよ。もっと俺も強引にいけばよかった…。壁ドンでもして、迫ればよかった。断らせないような雰囲気でいけばよかった…っ! リュウタロウ:そうだよなぁ。確かに、強引に迫られたら、のせられるよな。 ケイゴ:リベンジするときはもっと迫ってやる!俺はあきらめないぞー! リュウタロウ:ケイゴ、その意気だ!ほら、今日はもう飲め!飲んで切り替えよ! ケイゴ:はいっ!ケイゴ、いっきまーす! シュウ:行くなっ!お前はもう飲むな!リュウタロウ先輩も、飲ませないでください!これ以上はこいつ面倒なことになるんで! リュウタロウ:はは、わりぃわりぃ。はい、ケイゴ、こっちの水飲んどけ。 ケイゴ:うっす!ケイゴ、いっきまーす! リュウタロウ:ってか、シン遅いな。 シュウ:ですね。レイナちゃんって確か…。 シン:ただいま、わり、かなり長くなった…。 ケイゴ:なげーよ、シン。なんの用だったんだ……ってか、シン、顔、赤くね? シン:あ…えと、いや、その…。 リュウタロウ:どーしたー?酔いが回ってんのかー? シン:……告白、された。 リュウタロウ:……っ!? シュウ:え? ケイゴ:告白!? シン:あぁ。レイナちゃんに。 シュウ:レイナちゃんって、お前とよく一緒にいるあの女の子だよな。 シン:友達、だと思ってたんだけど、レイナちゃんは俺のこと、好きでいてくれてたみたいでさ。 ケイゴ:おぉ!んで、電話で告白された、と。 シン:はは、なんか彼女今、友達に相談乗ってもらってたら、その友達に「もう告白しなさい」って強引に電話かけられたらしくてさ。本当は会っていうべきだけど、もうこの勢いで言っちゃうねー、って。告白されました。 リュウタロウ:……告白の返事はしたの? シン:うん。付き合うことになった。 リュウタロウ:っ! シュウ:……。 ケイゴ:マジか!おめでとう!うおおおお!よくやった、シン!俺の分まで、いっぱい幸せになってくれ~!! シン:タイミング悪くてごめん、言うか言わないか迷ったんだけど…。 ケイゴ:いいんだよ!それとこれとは別だ!ってか言わずに隠してたら逆にキレてた。 シン:ありがとう、ケイゴ。俺、幸せになるよ…! リュウタロウ:……よかったじゃねぇか!おめでとう、シン! シン:リュウタロウもありがとう!えへへ、なんか照れるな。 シュウ:おめでとう、シン。 シン:シュウも、ありがとうな! リュウタロウ:シン、その彼女に会いに行ってこいよ。 シン:え? リュウタロウ:せっかく恋人になれたんだ。今夜は一緒に過ごすべきなんじゃないのか? シン:あ…そう、だよな。そうだよな!なんか、急にレイナちゃんに会いたくなってきた…! ケイゴ:行って来いよ、シン! シュウ:幸せに、な。 シン:みんな、ありがとう!じゃあ俺、行ってくる! ケイゴ:いってらっしゃーい!………さーて、俺はそろそろ帰ろうかな……ちょっと飲みすぎた。 シュウ:ちょっとどころじゃないだろう。帰れるか? ケイゴ:おう、タクシー使うわ。じゃあ、また明日な。リュウタロウ先輩、お疲れっす。 リュウタロウ:気を付けて帰れよ。 シュウ:ケイゴ、お疲れ様。 リュウタロウ:じゃ、今夜はこれでお開きにしようか。シュウは帰れる?って、大丈夫そうだな。 シュウ:はい、帰れます。……リュウタロウ先輩は、ちゃんと帰れますか? リュウタロウ:はは、大丈夫だって。だいぶ飲んだけど、帰れるよ。まだ終電の時間でもねーし。 シュウ:大丈夫、ですか? リュウタロウ:心配しすぎ。じゃ、シュウ、気を付けて帰れよ。おつかれ。 シュウ:お疲れ、様です…。 0:間 : 0:河川敷 リュウタロウ:はは、なんだよ、付き合うことになったって…。オレへの憧れは、そういうのじゃなかったってこと、だよな。……あの日にオレが告白してたら、違ったのかな。いい雰囲気だったし、もっと強引に迫ってれば……。くそ、なんなんだよ。オレ、こんなにシンのことが好きだったのかよ…。……っ。 シュウ:リュウタロウ先輩、ここにいたんですね。 リュウタロウ:っ!シュウ!?な、なんでお前がここに? シュウ:悩み事があるとき、考え事をしたいとき、この河川敷に来るって言ってましたからね。きっと、今のリュウタロウ先輩なら、ここで考え事してるのか、と。 リュウタロウ:悪いな、シュウ。今は一人にさせてくれないか。誰かと話す気分じゃねぇんだよ。 シュウ:今度は私がリュウタロウ先輩の悩みを聞く番です。 リュウタロウ:一人にさせてくれ。誰かに話して楽になるようなことじゃない。 シュウ:嫌です。 リュウタロウ:…っ!一人にさせろって言ってんだよ!どっか行け! シュウ:嫌だっ!落ち込んでいるあなたを一人にできない! リュウタロウ:なんだよ、落ち込んでるって…。 シュウ:シンのこと、好きだったんだよな、先輩は。 リュウタロウ:なんで……。だったらなんだよ!そーだよ、オレは失恋したんだよ!だからどうにもできねぇだろ!悩みを聞いたところで、なにも解決できねぇだろ!いいから、一人にさせてくれよ…。こうやってイライラして、お前にぶつけたくないんだよ…。お願いだ…。 シュウ:悪いが、それはできない。 リュウタロウ:シュウ、いい加減に…! : シュウ:私はリュウタロウのことが好きだ! : リュウタロウ:……っ!?え…っ!? シュウ:だから、このチャンスを逃すわけにはいかない。 リュウタロウ:シュ、シュウ…? シュウ:正直、今が一番私にとってチャンスだと思っている。自分がこんなにも卑怯な奴だ、なんて思っていなかった。シンに彼女ができたと聞いたとき、私は心のどこかでは喜んでいた。一番のライバルがいなくなった、と。 リュウタロウ:……。 シュウ:リュウタロウ、私はあなたのことが好きだ。私と付き合ってほしい。 リュウタロウ:なんだよ、それ…。失恋したばかりのオレにそんなこと言うのかよ。 シュウ:代わりでいい。 リュウタロウ:は…? シュウ:シンの代わり、になれるとは思っていないが、失恋した傷をうめるのにはちょうどいいだろう。 リュウタロウ:何言ってんだよ。シンに失恋したから、代わりにシュウで我慢する。そういうことか? シュウ:そうだ。それでいい。 リュウタロウ:それでいいわけねぇだろ!好きな人の代わりにされるなんて、辛いだろ…。 シュウ:私は、何をしてでも手に入れたいと思ってしまった。だから、私のことを嫌いでないのならば、私と付き合おう。 リュウタロウ:ダメだ。そんな代替品みたいなこと、オレはしたくない。 シュウ:私のこと、嫌いなのか? リュウタロウ:そうじゃねぇよ。シュウのことを利用したくないってこと。オレが一番好きなのはシンだから。 シュウ:そうか、じゃあこうしよう。 リュウタロウ:シュウ?何を…ん!?(シュウにキスされる) シュウ:ん…っ。 リュウタロウ:ん、んん!? シュウ:(口を離す)はぁ…。 リュウタロウ:な、なにして…! シュウ:嫌だったか? リュウタロウ:え…? シュウ:私とのキスは嫌だったか? リュウタロウ:い、嫌じゃ…なかった、けど…。 シュウ:じゃあ、気持ちよかったか? リュウタロウ:な、なんでそんなこと聞くんだよ…。 シュウ:答えろ、リュウタロウ。私とのキスは、気持ちよかったか? リュウタロウ:……っ。気持ち、よかったよ…。 シュウ:よかった。だったら私とリュウタロウの相性はいいはずだ。 リュウタロウ:基準がおかしいだろ…。 シュウ:キスの相性が良ければ、たいていの相性はいいって聞いたからな。 リュウタロウ:誰の入れ知恵だよ…。 シュウ:ケイゴだ。 リュウタロウ:あいつ、今度なぐっとこう…。 シュウ:リュウタロウ。今はまだ、シンのことが一番なのはわかっている。だが、いつか必ずリュウタロウの気持ちを私に向けてみせる。 リュウタロウ:シュウ…。 シュウ:シンへの気持ちを忘れるほど、私に夢中にさせてみせる。 リュウタロウ:……シュウ、お前そんな強引な性格だったっけ。 シュウ:いいや。でも、強引な性格になるほどに、リュウタロウのことが好きだってこと。 リュウタロウ:敬語もいつの間にかなくなってるし。 シュウ:敬語じゃなくていいって言ってたから。 リュウタロウ:……いいの?いつになるかわかんないけど、シンのことしばらく引きずるよ。思ってた以上にあいつのこと好きだったからさ。 シュウ:それでもそばにいたいって思うほど、私はリュウタロウのことが好きだ。 リュウタロウ:オレのどこがそんなに好きなの。 シュウ:それはたくさんありすぎて語ると時間がかかるから、これからたくさん伝えていく。 リュウタロウ:へへ、そうかい。 シュウ:あぁ。 リュウタロウ:シュウ。 シュウ:なんだ、リュウタロウ。 リュウタロウ:もう一回、キスして。 シュウ:あぁ。……ん。 リュウタロウ:ん……。 シュウ:好きだ、リュウタロウ。 リュウタロウ:ありがとう、シュウ。これからよろしくな。 0:間 シュウ:(M)初めはただ、憧れだった。 リュウタロウ:アゲていくぜっ!いいか、しっかりついて来いよ!『To move on』! シュウ:(M)いつしかそれは、 リュウタロウ:お前のそういう、好きなものに対して真っすぐで一生懸命なとこ、オレは好きだぜ。 シュウ:(M)恋情に変わっていた。……じゃあ、その先は? 0:2年後、河川敷 リュウタロウ:シュウ!卒業、おめでとう。 シュウ:リュウタロウ。来てくれたのか。 リュウタロウ:あったり前だろ!仕事も休み勝ち取ったからな! シュウ:ありがとう、リュウタロウ。 リュウタロウ:へへ、この河川敷、いろいろあったよな。 シュウ:あぁ。ここで私はリュウタロウのことを好きになって、 リュウタロウ:そんで、オレはここでシュウを好きになるきっかけをもらった。 シュウ:私のこと、好きになったか? リュウタロウ:それはお前が一番わかってんだろ。 シュウ:そうだな。 リュウタロウ:さて、これからロック部の飲みだったよな。アキラもレオもツバサも来るって言ってた。 シュウ:お、それは楽しみだな。 リュウタロウ:大騒ぎになるだろうな。……行くか。 シュウ:あぁ。そうだ、リュウタロウ。 リュウタロウ:なに、シュウ。 シュウ:愛してる。 リュウタロウ:へへっ。なんだよ、急に。 シュウ:好きの次は、愛してる、かなって。 リュウタロウ:そうだな。じゃあオレも。愛してるよ、シュウ。 0:完

0:『To move on』 リュウタロウ:(M)初めはただ、憧れだった。 シン:おめぇら!今日は来てくれてありがとうな!!さぁ、盛り上げて行くぞっ!! リュウタロウ:(M)いつしかそれは、 シン:聞いてくれ、1曲目!”To move on” リュウタロウ:(M)恋情(れんじょう)に変わっていた。 0:間 : 0:大学構内食堂にて シン:あー!最高だったなぁ!やっぱ俺たちが1番だったよなぁ!? ケイゴ:あったり前だろ!春の桜の蛇大学ロックフェス!俺ら”クリムゾン”がいちばん盛り上がってたな! シュウ:たぶんそれ、どのグループも思ってる事だぞ。自分のとこが1番だったってな。 シン:んだよシュウ、ノリ悪いなぁ。んなことわかってんだよ!だからこそ!俺らは俺らが1番だったって思うべきなんだよ!それともなに?今回の演奏、不服だったのか? シュウ:................俺は満足したくないだけだ。 ケイゴ:でたでた、シュウの意識の高さ。わかってるよ、井戸の中の蛙(かわず)だってこと。だけどさぁ。ひとつのイベントが終わったあとくらい、有頂天でいようぜ? シン:そーだぜ、シュウ。そういう自信過剰なくらいがバンドマンにはちょうどいいって。 シュウ:.........”storia(ストライア)”のロックはもっともっと凄かった。 シン:............うっ! ケイゴ:おいおい、シュウ、そこと比べちゃダメだろ。あれは伝説とも言われるバンドなんだから、次元が違うんだよ。 シュウ:だが、俺らの先輩だ。 シン:............桜の蛇大学ロック部の伝説と言われているバンド、”storia”。学生のレベルとは思えない、最高のクオリティとパフォーマンス。さらに........ : リュウタロウ:おっ、なになに?オレ、ウワサされてる? : シュウ:あっ.....! ケイゴ:ウワサをすれば!”storia”のギターボーカル、リュウタロウ先輩じゃないっすか! シン:リュウタロウ先輩!お疲れ様っす! リュウタロウ:大学の食堂で打ち上げ?もっと居酒屋とかでぱぁっとやれよ! ケイゴ:俺らにはここがちょうどいいんすよ。 リュウタロウ:そだ、ロックフェスおつかれ!お前らのステージ、アツかったぜ! シン:あざっす!リュウタロウ先輩、シュウのやつ、ステージ後の余韻に浸ればいいのに、ずっとstoriaには勝てないって全然浮かれてくれないんすよ!何か言ってやってください! シュウ:お、おい、シン! リュウタロウ:おー!シュウわかってんなぁ!そうだ、オレらstoriaに勝てるヤツらはいねぇよな! シュウ:ちょ、あ、頭なでないでくださいって! ケイゴ:いやいや、でもstoriaは去年までのグループじゃないですか! リュウタロウ:まぁ、そうだな。アキラもレオもツバサも、皆卒業したからなぁ。 シン:だったら!今のこの桜の蛇大学の1番は俺らクリムゾンだって思いません!? リュウタロウ:へへっ、そうだな。オレはお前らを1番応援してる。お前らのパフォーマンスは好きだぜ! シュウ:........リュウタロウ先輩は、もうやらないんですか?ロック。 ケイゴ:そーですよ!まだ1年あるんですから、やりましょーよ! リュウタロウ:やんねーよ。オレはアイツら以外とロックやる気はねぇからな。 シン:皆、就職しちゃったんすよねぇ........。................あれ?リュウタロウ先輩は留年したんでしたっけ? リュウタロウ:ちげーよ!オレだけ1個下なんだってば!オレは今年4年生。就活真っ最中だ! シュウ:........就活、聞きたくない言葉だな。 ケイゴ:まぁ俺らはまだ2年生なんだから、まだ考えなくていいっしょ。今はロックのことだけ考えてよーぜ! シン:そーそー!シュウはいつもいろいろ考えすぎなんだってば!もっと気楽にいけよ! シュウ:お前らが楽観的すぎなだけだ! リュウタロウ:まーまー!ケイゴとシンの言う通り、まだ今年は学生を楽しんどけ、シュウ。あー、そだ、今日のステージさ、オレらの曲やってくれたよな。”To move on”。すげぇカッコよかった。 シン:へへっ!あの曲、俺大好きなんすよ!”storia”の名曲っすもんね!”storia”は最高のクオリティとパフォーマンス、さらに作曲もできてオリジナルの曲でロックフェスを盛り上げてた伝説のバンド、っすからね! リュウタロウ:まぁな!........つっても、凄かったのはアキラだけどな。オレらと組んでるときはドラムだったけど、他の楽器もできるし、絶対音感と作曲センスを持ち合わせてたまさに音楽の才能のかたまり........。 ケイゴ:つくづく思うんすけど、なんでアキラ先輩は音楽の道じゃなく一般企業に行っちゃったんすか?絶対音楽の世界でもやっていけたと思うんだよなぁ。 リュウタロウ:アキラいわく、音楽は嫌いになりたくないんだってさ。仕事にして、義務にしてしまうと、どこかで音楽が嫌になるときがくる、ってな。だから、趣味の範囲を越えず、好きなままでいたいんだと。 シン:なるほど。もったいないけど、それが一番いいかもしれないっすね。 リュウタロウ:アイツらと一緒にロックやってた時はマジで楽しかったなぁ。ドラムのアキラ、ギターのレオ、ベースのツバサ。オレの大学生活はマジでロック一色だったなぁ。 シュウ:リュウタロウ先輩たちの演奏が聞けなくて寂しいです。 ケイゴ:ほんっとうにシュウはリュウタロウ先輩たちのこと大好きだよな!口を開けばstoria、storiaってさ! シュウ:だって…。 リュウタロウ:世代交代ってやつだよ、シュウ。今度はお前らがこの桜の蛇大学を盛り上げていく番だ。さっきも言ったけど、オレはお前らのことを一番に推してる。だから、シュウ。シンとケイゴも。憧れるのもいいが、オレらを超えるロックバンドになってやる、くらいの野心でやれよ。いいな。 シュウ:リュウタロウ…先輩…。 ケイゴ:うおお、リュウタロウ先輩からそんなお言葉がきけるなんて…! シン:くーっ!リュウタロウ先輩にそんなこと言われたら勘違いするじゃないっすか!俺らが一番だって、勘違いするじゃないっすか!有頂天になるっすよ! リュウタロウ:勘違いじゃねぇって。オレは好きだぜ。 シン:あああ!リュウタロウ先輩のその声で言われたら男の俺でも惚れちゃいますよ! リュウタロウ:おっ、なに?オレに惚れた?じゃあもっと惚れろよ、シン…好きだぜ…。 ケイゴ:さらりとそんなキザなセリフを言ってのけるリュウタロウ先輩!そこに痺れる憧れ…。 シュウ:リュ、リュウタロウ先輩っ!! リュウタロウ:おぉう、なんだ、シュウ。そんな大声出して。 シン:ビックリした。 シュウ:あ、いや、その…。 ケイゴ:どうしたんだよ、シュウ。リュウタロウ先輩が来てからおかしいぞ、お前。 リュウタロウ:なーに?シュウ、オレがいるから緊張してんのかー? シュウ:…っ!俺は帰るっ!また明日なっ! 0:(シュウ去っていく) リュウタロウ:どうしたんだ、シュウのやつ。 ケイゴ:んー、シュウのやつ、この頃なんか悩みがあるみたいで。練習してるときも何か悩んでる感じなんすよね。 シン:アイツ、自分に厳しすぎるところあるからなぁ。自分のパフォーマンスが満足いかないってずっと悩んでんだよ。そりゃ、俺らもまだまだなところはあるけど、アイツのパフォーマンス、そんな悪くねぇんだけどな。 リュウタロウ:なるほど。スランプの時期ってやつだな。オレらにもあった。 ケイゴ:スランプ、っすか? リュウタロウ:何事もうまくいかねぇな、って思う時期があるんだよ。本気でやってる奴ほど特にな。楽しくてやっているはずのロックが、楽しくなくなったり、悩みの種になったりな。 シン:ロックを楽しめなくなるのは嫌、だな…。シュウ、やめたりしないよな…? リュウタロウ:大丈夫だ、心配すんな。明日は練習? ケイゴ:練習っす。 リュウタロウ:じゃ、明日も顔出すわ。 シン:リュウタロウ先輩、めちゃくちゃ練習に顔出してくれるっすけど、就活は大丈夫なんすか? リュウタロウ:余裕。今はお前らの方が大事。んじゃ、また明日な。 ケイゴ:はい!お疲れ様っす! シン:お疲れ様です! 0:間 : 0:翌日、大学ロック部練習場 リュウタロウ:桜の蛇大学ロック部。去年までは"storia"というバンドを中心に、音楽系イベントを盛り上げていた。"storia"ハイクオリティの演奏とパフォーマンス、そして彼らのオリジナル曲はどれも名曲ばかり。その数々の名曲は、ドラムのアキラによる作曲・そしてギターボーカルであるリュウタロウの作詞によって創り上げられていた。また、ハイルックスとアクティブなパフォーマンスのギターのレオ、爽やかな甘いマスクに王子様キャラ、そのキャラからは想像もつかないような激しいベースのツバサも多くの人気があった。…というか、見た目とキャラ的な意味ではレオとツバサは多大な人気を博していた。結局なんだかんだ見た目がいいやつがモテるのだ。たとえ良い作曲をしようと、良い歌声を持っていようと、ルックスの良いやつがモテるのだ。世の中の女の子はみんな面食いなのだ許せない…。 シン:あの、リュウタロウ先輩?何してるんすか…。 ケイゴ:練習中なんすけど…。 リュウタロウ:あーおい、今はまだ入ってくるタイミングじゃねーだろ!もう少しでお前らの紹介に入るから、そしたら入ってきて。 シュウ:いやだから、何してるんですかって。 リュウタロウ:えー?見てわかんねぇ?動画撮ってんだよ、ロック部のグループ紹介動画。 シン:いや、自分たちの"storia"の紹介じゃないすか。しかも最後リュウタロウ先輩の私情入ってるし。 リュウタロウ:"storia"の紹介は絶対いるだろ!いいから、もう少し黙って聞いてろ。 ケイゴ:練習邪魔しに来たのか、この人…。 リュウタロウ:そんな"storia"も去年で引退。そして!ロック部は世代交代!今を輝くグループを紹介していくぜ!まずは狼のような噛みつかんばかりの激しいパフォーマンスが特徴の"クリムゾン"だ!ばばんっ! シュウ:……。 ケイゴ:え、ここで!? シン:い、いえーい!クリムゾン、ここに参上っ! リュウタロウ:おいおい、ステージ上の勢いはどうした!もっとあげていけよな!じゃあメンバー紹介だ!まずはドラムのケイゴ! ケイゴ:え…、あ、ドラムのケイゴだっ!俺の激しいセッションについてきやがれ! リュウタロウ:いいねいいね~!そしてお次は!ベースのシュウ! シュウ:よ、よろしく…。べ、ベースのシュウだ。 リュウタロウ:そんな緊張すんなって!そして!最後は迫力のボイス!ギターボーカル、シン! シン:うえ~いっ!いいか!よーく聞け!俺は!この桜の蛇大学ロック部の頂点に立つ男、シンだ!よーく覚えとけよ! リュウタロウ:ひゅー!牙を見せてきたね~!ってなわけで、これからの活躍に期待!”クリムゾン”でした~!………よし、とりあえずこれでいいかな。 ケイゴ:急にふらないでくださいよ、びっくりするじゃないっすか。 リュウタロウ:へへ、いいじゃん、自然体って感じでさ。 シュウ:……なにも言えなかった。 シン:ってかリュウタロウ先輩!俺ら練習中なんすけど! リュウタロウ:ごめんって。今からはちゃーんと練習付き合うからさ! ケイゴ:頼みますよ!じゃあ、最初からいくか。 シン:おっけ。 シュウ:わかった。 0:間 リュウタロウ:やっぱ何度聞いてもお前らの演奏は最高だな。 シン:ですよね!俺らやっぱ、最高っすよね! リュウタロウ:まぁでもまだまだ伸びしろはある。まずケイゴ。 ケイゴ:っす。 リュウタロウ:迫力のあるドラムはいいんだが、たまに雑になるとこがあるな。自覚あるだろ? ケイゴ:……やっぱわかりますか。 リュウタロウ:そこをもう少し丁寧に。で、シン。 シン:は、はい。 リュウタロウ:ちょいちょい音外してる。ギターはいい感じだから、ボーカルの練習に注力しろ。 シン:あ~…やっぱ目立つっすよね…。わかりました! リュウタロウ:で、シュウ。 シュウ:あ、あぁ…。 リュウタロウ:お前はもっと自信を持て。シンとケイゴの勢いに押されてるぞ。 シュウ:……自信、ですか。 リュウタロウ:そ。もっと、オレは最高のベーシストだー!っていう勢いを出せ。 シュウ:……わかり、ました。 リュウタロウ:よし、じゃあ今のとこ意識して、次の曲やってみてくれ。 シン:うす! 0:間 リュウタロウ:だいぶ良くなってきたな。よし、今日はこの辺で解散にすっか。 ケイゴ:お疲れっす!リュウタロウ先輩、アドバイスあざました!うまくなれた気がします! シン:だな!感謝っす!よーし!俺はこのままの勢いで帰って自主練だぁ!お先に失礼しやす!お疲れっすー! リュウタロウ:おう、お疲れ。 シュウ:お疲れ。 ケイゴ:お疲れー!んじゃ、俺も今からバイトだから行くわ。それじゃ、お疲れっす! リュウタロウ:お疲れ、またな。 シュウ:お疲れ。 リュウタロウ:さーて、シュウ、お前は今から時間、ある? シュウ:えっ? リュウタロウ:ちょっと話そうぜ。いい場所があるんだ。 シュウ:は、はい…。 0:間 : 0:学校近くの河川敷 シュウ:河川敷…。 リュウタロウ:静かでいいだろ、ここ。大学近いけど、駅とかとは逆方向にあるから、あんま人来ないんだよね。 シュウ:いいところですね。 リュウタロウ:だろだろ~。よく悩み事とかあると、ここに来て考え事してたんだよな。 シュウ:悩み事、ですか? リュウタロウ:ロックしてたとき、結構悩むことは多くてな。アキラのつくったメロディーに、どういう歌詞をのせようか、とか、どう歌えば魂のこもった歌にできるだろう、とかな。 シュウ:リュウタロウ先輩もいろいろ悩んでたんですね。 リュウタロウ:本気でやってたからな。……お前もだろ、シュウ。 シュウ:……。 リュウタロウ:何に悩んでんの?ロックのことか?それとも他のこと? シュウ:……。……ロックのこと、です。 リュウタロウ:シンとケイゴが心配してたぞ。シュウが元気ないってな。 シュウ:あいつらには話せない…。心配かけたくない。 リュウタロウ:どーしたんだよ。あいつらには言わないから、話してみ。 シュウ:……なんていうか、俺はあいつらと、他のロック部のメンバーと比べて、平凡だな、と思ってて。 リュウタロウ:平凡? シュウ:みんな、自分に自信を持っていたり、派手なパフォーマンスや勢いがあって。俺にはそういうのがないな、と。 リュウタロウ:なーるほどね!つまりあれか、キャラがたってない、ってことだな。 シュウ:キャラ…そう、ですね。シンは自信があって誰もがついていきたくなるようなカリスマ性があるし、ケイゴはバカみたいにポジティブなところがあって、みんなに愛されるキャラだ。それに比べて俺は……人見知りで、面白いトークもできない、平凡な人間だ。 リュウタロウ:ふーん、なるほどね。じゃあさ、シュウ。自分のことを平凡だと思うのなら、キャラを作って演じてみればいいんじゃないか。ステージ上では。 シュウ:キャラを…演じる…? リュウタロウ:そ。オレ、前から思ってるんだけど、シュウって真面目でクールなとこあるじゃん? シュウ:そう、か…? リュウタロウ:ほら、シンとケイゴが浮かれてても、シュウは満足せずにずっと上を見て努力しようとしてるし、言葉遣いだって、かなり丁寧だろ?あいつらはくだけた敬語だけど、お前はちゃんとした敬語で接してる。そういうとこ、いいなって思うぜ。 シュウ:……そう、か。 リュウタロウ:そーだ!シュウさ、クールキャラ極めてみればいいんじゃないか?シンもケイゴも明るくてにぎやかな性格なんだから、お前はその逆をいけば引き立つぜ! シュウ:クールキャラ…クールキャラって…どんなキャラですかね…。 リュウタロウ:んー…侍、みたいな? シュウ:さ、さむらい…? リュウタロウ:さすがに「拙者」とか「~でござる」までキャラづけるのは違うから…そうだ、一人称を「私」にして、あと「御意」とか言ってみたりしてさ!ほら、なんかクールキャラっぽくね? シュウ:そうかな…。まぁでも、他と類をみないキャラではある気がします。 リュウタロウ:最初は慣れないかもしれねぇけど、板についてくれば自信もついてくるさ。 シュウ:は、はい、頑張ってみます…! リュウタロウ:違う違う、そこは「御意」だろ? シュウ:ぎょ、御意…。 リュウタロウ:へへっ、なんつーかクールっていうか可愛いよな、シュウって。ほーらよしよし。 シュウ:あ、頭なでないでくださいっ! リュウタロウ:でも、お前のそういう、好きなものに対して真っすぐで一生懸命なとこ、オレは好きだぜ。 シュウ:…っ。リュウ、タロウ先輩…。 リュウタロウ:大丈夫、自信持って。お前はロックの才能ある。オレが保証するから。 シュウ:……!リュ、リュウタロウ先輩、あの、まだ時間あるなら俺と…。 リュウタロウ:(リュウタロウのスマホが鳴る)おっと、こんな時に電話…お、シンじゃん。わりぃ、ちょっと出るわ。…はいはーい、シン、どしたー? シン:リュウタロウせんぱぁぁぁい……助けてくださぁい……。 リュウタロウ:おーおー、どーしたよ。何かの組織に追われてるのか? シン:違うっす!そんなヤバイ世界で生きてないって!今、曲の難しいとこでつまずいてて、何回やっても弾けないんすよぉ。教えてくださいせんぱぁい…。 リュウタロウ:あ、もしかして次のステージでやるって言ってた曲か?確かに、あれムズイとこかなりあるよなー。仕方ねぇな、この最強ギタリストのリュウタロウ様が直々に教えてやろう! シン:助かるっす!リュウタロウ先輩、今どこっすか?迎えに行くんで、うち来てくださいよ。 リュウタロウ:まだ学校の近く。いいよ、今日オレ、バイクで来てるからそのままお前ん家行くわ。 シン:お!さすが先輩!じゃあ先輩来るまで、晩飯の準備しときまーす! リュウタロウ:了解、すぐ行く。(電話を切る)へへっ……。あ、悪いな、シュウ。なんかシンに呼ばれたからオレ行くわ。 シュウ:あ、あぁ……。 リュウタロウ:んじゃ、またいつでも相談乗るから、あんま悩みすぎんなよ!じゃあな! シュウ:お、お疲れ様です…。(ボソッと)……俺、じゃないか…。 0:間 : 0:大学構内ライブ会場 シン:この声、世界中にとどろかせるぜ!俺の歌に痺れろ!ギターボーカル、シンっ! ケイゴ:この会場は俺が支配するっ!脳髄(のうずい)まで響かせるからな!覚悟しろ!ドラムのケイゴだ! シュウ:私がいるからこそバランスが保たれていることを忘れるなよ。クールに決めてやる。ベースのシュウだ。 シン:今日は俺らが全部のみこんでやるからお前ら全力でついてこいよ! ケイゴ:我ら最強の"クリムゾン"! シュウ:まずは一曲目。"BigBang" 0:間 シン:ライブお疲れ様ぁ! シュウ:お疲れ。 ケイゴ:いやぁ、今回も最高だな! シン:だな!大きなミスもなかったし、みんなノってたし! ケイゴ:シュウもだいぶノれるようになってきたよな。 シュウ:まあな。前は無理にお前らのキャラに合わせていたのだが、そうじゃなくて、自分のやりやすいように振舞うようにしたらノれるようになった。 シン:あぁ、シュウらしさが出てていいと思うぜ。 ケイゴ:"クリムゾン"もしっかり形になってきたよなぁ。……さて、今夜はどうする?飲みに行く? シュウ:行こう。私はそのつもりだ。 ケイゴ:おっけー!じゃあいつもの居酒屋で、 シン:わり、俺今日はダメなんだ。 ケイゴ:なんだシン、珍しいな。お?もしかして女か? シン:ちげーよ。残念ながら男だ。 シュウ:リュウタロウ先輩、か…? シン:シュウ、よくわかったな!いやぁ、今夜リュウタロウ先輩からギターテク教えてもらえることになってな! ケイゴ:なんだよ、ライブ終わったのに練習か?お前も真面目だな。 シン:リュウタロウ先輩、就活忙しくなってきたみたいで、なかなかスケジュール合わねぇんだよ。んで、今日は夜なら時間あいてるからって。 ケイゴ:けっ!あのリュウタロウ先輩からギターテク教えてもらうなんて贅沢な奴!じゃ、3人での打ち上げはまた後日にするか。 シン:わりぃな!それじゃ、俺はここで!お疲れ! ケイゴ:お疲れー! シュウ:…お疲れ。 ケイゴ:さて、シュウ、行くかぁ。俺らはライブ後の余韻に浸りながらぱーっと飲もうぜ。 シュウ:あぁ、そうだな…。 0:間 : 0:シンの自宅 : リュウタロウ:っつーわけで!今日のライブとリュウタロウ特別レッスン、お疲れ様ー!かんぱーい! シン:あと、リュウタロウ先輩、内定おめでとうございま―す!かんぱーい! リュウタロウ:んぐ、んぐ、っはー!ありがとうなー!今日の酒はいつにも増してうまいな! シン:ホント、お疲れ様っす! リュウタロウ:あー、今日のライブ見に行きたかった…。いろいろ内定の手続きとか懇親会とかで間に合わなかった。 シン:仕方ねぇっすよ。でも、次は来てくださいね!…これでもう就活終わりっすか? リュウタロウ:おう。これで残りの学生生活、好きにすごせるわ。シンのこと、付きっきりで面倒見れるぜ。 シン:保護者ですか。でも、リュウタロウ先輩にいろいろ教えてもらえるのは嬉しいっす!まだまだ教えてもらいたいテクニックいろいろあるっすからね! リュウタロウ:……シン、あのさ。内定祝いってことでオレのお願い一つ聞いて欲しいんだけどさ。 シン:いいっすよ!なんすか、先輩! リュウタロウ:敬語使うのやめにしねぇ? シン:へっ? リュウタロウ:オレ、堅苦しいの好きじゃねぇしさ。お前ら、特にシンとはさ、もっと対等にコミュニケーションとりたいんだよ。…今更ってとこはあるけどさ。 シン:でもリュウタロウ先輩は、俺の尊敬する先輩で、対等なんて…。 リュウタロウ:いいじゃん。お前との壁を作りたくないんだよ。上下関係っていう。シンは嫌?オレとタメで話すの。 シン:全然嫌じゃないっす!……いや、嫌じゃない! リュウタロウ:へへっ、先輩後輩じゃなくてさ、ダチでいようぜ。 シン:おう!わかった、先輩がそういうなら! リュウタロウ:先輩、じゃなくて"リュウタロウ"。"リュウ"でもいいぜ。 シン:なんか、それだけでリュウタロウせんぱ…リュウタロウと距離が近くなった気がする! リュウタロウ:おう!こっちのがオレも心地いいや。 シン:嬉しいなぁ。去年までは遠い存在だと思ってたリュウタロウと、こうしてダチとしてお酒飲んでるなんて。去年の俺に自慢してやりてぇ。 リュウタロウ:なになに、そんなにオレのこと好きだったの? シン:当たり前じゃないっすか!"storia"のグループとしてはもちろんだけど、その中でもやっぱリュウタロウのギターボーカルが一番カッコいいって思ってたから。憧れてたんだよ。 リュウタロウ:…オレは、シン、お前に憧れてるけどな。 シン:え、リュウタロウが?俺に? リュウタロウ:シンの自信に満ちた歌い方、目を引き付けるような輝かしいパフォーマンス。そして、ケイゴとシュウを導いていくカリスマ。すげぇよ、シンは。 シン:……っ。ちょ、急に照れること言わないでくださ… リュウタロウ:動揺してんの?また敬語戻ってるけど。 シン:リュウ、タロウ先輩…っ、近いって…! リュウタロウ:顔、真っ赤だな。そういうかわいいとこも、好きだぜ、シン。 シン:~~~っ!恥ずかしいから、見んな…っ! リュウタロウ:あー、そういう反応されるとさ、もっといじめたくなっちゃうんだけど? シン:……っ! 0:間 : 0:いつもの居酒屋 シュウ:おい、顔が気持ち悪いぞ、ケイゴ。 ケイゴ:はぁ?顔が気持ち悪いってなんだよ! シュウ:スマホをにやにやしながら見ているお前は今、最高に気持ち悪い。 ケイゴ:ひでぇ! シュウ:なんだ、良い事でもあったのか? ケイゴ:いやぁ、そーなんだよ!さっきのライブ、同じゼミの子が見てくれてたんだけど!カッコよかったって言ってくれて…ふへへへ。 シュウ:それでにやついてんのか。 ケイゴ:この子かわいくてさぁ。気配りもできるいい子で、授業一緒になったときはよく話しかけてくれるんだけどさぁ。趣味も合うし、話も面白いし……。 シュウ:なるほど、その子に惚れてるってことか。 ケイゴ:惚れてる…そーだなぁ。そうなんだろうなぁ…。 シュウ:なんだ、煮え切らないな。 ケイゴ:初めてなんだよね、こういう感情。 シュウ:嘘つけ、お前結構いろんな女の子と付き合ってきただろう。 ケイゴ:今までは、あっちから告白してきたから、OKしてただけだよ。付き合ってみたけど、お互いなんか違うなってすぐわかれることがほとんどだったし。 シュウ:おーおー、モテる男は違うねぇ。 ケイゴ:でも長続きしなかったんだよ。なんていうか、彼女よりも音楽やっていたいし、お前らと過ごす方が楽しかったからさ。 シュウ:なるほど。 ケイゴ:だけどさー、あの子と話すようになってからはさ、あの子のこと考えてることが多くなってさ。今日のライブだって、無意識に姿を探してたり、カッコいいって思われるように頑張ろうって思ったりさ。そんで、こうやってかっこよかったよって言われてすげぇ嬉しいしさ。 シュウ:……それは好き、ってことだな。 ケイゴ:だよなぁ。俺の中で、あの子だけが特別なんだよ。……好きなんだなぁ、あの子のこと。 シュウ:その子に恋人はいるのか? ケイゴ:いない。でも、男女問わず友達多いから、早くしないと……。 シュウ:チャンスがあるならいいじゃないか。告白しろよ。 ケイゴ:そうだよな!よし、俺は覚悟決めたよ。来週、あの子の誕生日あるから、プレゼントと一緒に告白しよう…! シュウ:……すごいな、ケイゴは。そんなすぐに覚悟決めてさ。 ケイゴ:好きって自覚しちゃったからな!と、なるとあとは当たって砕けるのみ! シュウ:うらやましいよ。……応援、してるぞ。 ケイゴ:おうっ!……シュウはどうなんだ?なんかそういう悩み、ありそうだけど。 シュウ:…っ。べ、別に私は…! ケイゴ:お前本当にわかりやすいよな。 シュウ:……気になっている人は、いる。 ケイゴ:ほーお!聞かせろよ。どんな人なんだ? シュウ:まぁ、その、年上、だな。 ケイゴ:年上かぁ。で?で?好きになったきっかけは?出会いは?告白はいつするんだ? シュウ:一気に聞くな!……告白はしない、と思う。 ケイゴ:は?なんで?あ、もしかして彼氏持ちってことか? シュウ:………私はあの人の眼中にない。あの人が好きなのは私じゃない、から。 ケイゴ:……シュウ? シュウ:ずっと見てるから、わかってしまった…。あの人が好きな人と話しているときの表情が…とても嬉しそうで、私には見せてくれないから…。 ケイゴ:うん。 シュウ:だから、振り向いてもらおうって、今日のライブでカッコいいとこ見せようって、頑張ってきたけど、今日ライブにあの人はいなかった…。事情があったってことはわかってるけど、それでもショックを受けてる自分がいて……っ! ケイゴ:シュウ、落ち着け。 シュウ:っ。……すまない、取り乱した。 ケイゴ:本気で好きなんだな、その人のこと。 シュウ:そう、だな。好きなんだと思う…どうしようもないくらい。 ケイゴ:じゃあもっと積極的になれって。 シュウ:……でも、 ケイゴ:『To move on』 シュウ:……っ! 0:間 : 0:シンの自宅 リュウタロウ:そういう反応されるとさ、もっといじめたくなっちゃうんだけど? シン:……っ! リュウタロウ:シンのそのカッコよさ、オレはずっとずっといいなって思ってた。ずっと憧れてた。憧れて、それでオレは…… シン:『To move on』 リュウタロウ:……? シン:リュウタロウ、俺、この大学に来る前はすげぇ根暗だったんす。しゃべる声も小さくて、うまく人とコミュニケーションとれなくて、何事にも消極的で、やる前からあきらめてしまうような、そんな奴だった。 リュウタロウ:シンが? シン:でも、高校3年のとき、この大学の大学祭にきて、なんとなくでロック部のステージを見に行ったんだ。そこで聞いたのがstoriaのライブだった。 リュウタロウ:……。 シン:そこで聞いたのが『To move on』。あの曲が、俺を変えてくれた。 リュウタロウ:『To move on』か…。 シン:俺、あの曲の一番好きなのが歌詞なんだ。確か、リュウタロウが作詞したんだよな。 リュウタロウ:あぁ、オレだ。 シン:「To move on、前に進め 自分の殻を破って、失敗なんて蹴とばして」ってフレーズ。ここを歌ってるときのリュウタロウがかっこよくて、輝いて見えて、俺もこうなりたいって思ったんだ。 リュウタロウ:へへ、あの時はオレもまだ未熟だったけどな。 シン:だから!さっきリュウタロウが褒めてくれた俺があるのは、リュウタロウのおかげなんだ。俺に変わるきっかけをくれた人、俺が憧れた人、目標になってくれる人、一番尊敬している人…。 リュウタロウ:あぁ。 シン:リュウタロウは、俺の…… 0:間 : 0:いつもの居酒屋 ケイゴ:『To move on』 シュウ:……っ! ケイゴ:storiaの最高の名曲であり、俺らがこうあろうと決めた言葉でもある。 シュウ:「To move on、恐れず進め」……。 ケイゴ:俺らが一番演奏してきたのもこの曲だよな。俺もシュウもシンも、この曲を聞いて、ロックに憧れて、こうしてバンドを組んだ。 シュウ:あぁ。 ケイゴ:もともと俺らはバンドなんかやる柄じゃなかっただろ?シンは高校時代までは根暗だったらしいし、シュウも人見知りで無口だったし、俺もネガティブで奥手な性格だった。そんな俺らが、あの曲で変われたんだ。「自分の殻を破り、失敗を恐れず、常に前を向いて生きていけ」って。 シュウ:あぁ、そうだ…。 ケイゴ:じゃあ、恋に対しても、積極的になろうぜ。失敗を恐れんなって。 シュウ:ケイゴ…。 ケイゴ:その人に、惚れてんだろ?どうしようもないくらい。 シュウ:……あぁっ!好きなんだ!最初はただの憧れだったのに!見ているだけでよかったのに!いつの間にかあの人を手に入れたいって思う自分がいる、自分のものになって欲しいって貪欲な自分がいるっ! ケイゴ:たぶん恋ってのはそういうもんなんだと思うぜ。俺も同じこと思ってるからな。あの子が欲しいって。だからシュウ。俺もお前も、全力で前に進もう。悔いのないように。 シュウ:ありがとう、ケイゴ。自分の気持ちを整理できた気がする。 ケイゴ:俺もだよ、シュウ。決心がついた。じゃ、景気づけに。俺たちの恋愛が成功しますように!乾杯! シュウ:乾杯! ケイゴ:よーし!じゃあ今夜はガッツリ恋バナするぞー!ってことで聞いてくれ、シュウ!あの子のすばらしさを! シュウ:付き合ってもないのに惚気るのか…。いいぞ、聞かせろ。 0:間 : 0:シンの自宅 シン:リュウタロウは、俺の、一番の憧れの存在……だ……。 リュウタロウ:あ、おい、シン? シン:ん……。 リュウタロウ:……寝てる。こいつ、酒はいると急に電池切れるよなぁ…。ま、ライブもあったし、疲れたよな。よっと、ベッドに寝かせて、と。 シン:んん……。 リュウタロウ:憧れ、ね…。なぁ、シン…。お前がオレに抱いてくれている"憧れ"に、恋情ははいってるのか…?シン、オレがお前に抱いてるのは憧れだけじゃない。……好きだよ、シン。また近いうちにちゃんと気持ち伝えるから、その時にお前の気持ちも聞かせてくれ。……おやすみ。 0:間 : 0:数日後、ロック部練習場 リュウタロウ:お疲れー!あの伝説のリュウタロウ様が、降臨したぞー!ばばーんっ! シュウ:リュウタロウ先輩、お疲れ様です。 シン:おお!リュウタロウ、お疲れ! リュウタロウ:よーう!あれ、今日はケイゴいないのか。 シン:ケイゴは今日は大切なイベントを進行中だ。 リュウタロウ:大切なイベント? シュウ:おい、シン!先輩に向かってそんなタメ口使うな! リュウタロウ:あー、いいのいいの。オレがシンに使うなって頼んだんだ。 シュウ:え…? シン:おうよ!俺とリュウタロウはもう先輩後輩じゃない…そう、ダチなのさ! リュウタロウ:いえい、いえーい!……ま、お前らとはフランクにやっていきたいってことよ。シュウとケイゴも、もっと馴れ馴れしくしていいからな! シュウ:……(ボソッと)ちゃんとした敬語を使うのがいいって褒めてくれたのに。 リュウタロウ:ん?シュウ、どしたー? シュウ:い、いえ、何でもないです。 リュウタロウ:そう固くなるなって。んで、ケイゴの大切なイベントってなんだ? シン:今日あいつ、好きな子に告白するんだってさ! リュウタロウ:おおー!それは一大イベントだな!うまくいきそうなの? シン:手ごたえあり!って自信満々に言ってたから、明日にはリア充になってるんじゃないかな。 リュウタロウ:いいねいいね!じゃあお祝いの準備しとかないとな! シン:あーあ!うらやましいなー!俺も彼女ほしー! リュウタロウ:だーめ。シン、お前は彼女つくっちゃダメだ。 シン:なんでだよー! リュウタロウ:なんでも、だ! シュウ:シン、いつまで休憩している。そろそろ練習しろ。 シン:固い事いうなよ、シュウ。せっかくリュウタロウが来たんだから、もうちょっとしゃべろうぜ。 シュウ:リュウタロウ先輩が来てくれたからこそ、練習を見てもらうべきだろう。 シン:ちぇー。ホント、真面目だな、シュウは。 シュウ:いいからやるぞ。…リュウタロウ先輩、見てもらえますか。 リュウタロウ:もちろん!そのために来たんだからな! シン:っし、じゃあやりますか! 0:間 リュウタロウ:おー!すげぇうまくなってる! シン:だろだろ!これでも、かなり練習してんだぜ! リュウタロウ:あの難しいコード、綺麗に弾きこなしてるな!さすがシンだ! シン:リュウタロウのアドバイスのおかげ!へへん! リュウタロウ:あとシュウ、お前かなり上達したな! シュウ:そう…ですか…? リュウタロウ:あぁ!迫力が増して、かっこよくなってる。自信、ついてきた? シュウ:リュウタロウ先輩のおかげ、です。 シン:そー!こいつさ、最近ライブのときの雰囲気よくなってさ!この間のライブもかなりいい感じになったし! リュウタロウ:うわー!やっぱ見たかった…!じゃあ、次のライブは期待しておくからな!シュウ! シュウ:あ、あぁ…! リュウタロウ:さーて、じゃ、今日の練習はこの辺にしてさ、今から飯食いに… 0:練習場のドアが開き、ケイゴが勢いよく入ってくる ケイゴ:シュウ~! シュウ:え、ケイゴ?ど、どうした急に!ってかお前、今日…! ケイゴ:フラれた。 シュウ:……え? ケイゴ:フラ…っ、フラれた…っ!う、うぅ~っ! シン:おい、ケイゴ!マジ、かよ。 ケイゴ:シン~!リュウタロウ先輩~!俺、俺、イケると思ったんすよ~!う、うわあああ! リュウタロウ:落ち着け、ケイゴ。話聞くから。 ケイゴ:うわあああん!聞いてくださいよぉ…。 シュウ:とりあえず、いつものとこへ行こうか。 シン:そうだな、そこで慰め会するか…。 0:間 ケイゴ:正直、あの子も俺のこと好きなんだろなって思ってたんだよ。ラインのやりとりも毎日してるし、授業一緒の時は近い席で一緒に受けてたし、二人で遊びに行くこともあったし!でもさ、今日告白したらさぁ、「ケイゴ君とは友達でいたいんだ」って言われちゃってさぁ!友達以上にはなれなくてさぁ! シン:友達止まりってやつかぁ。 ケイゴ:そうなんだよ!あの子の中では、俺は特別じゃなかったんだよ!それがショックでショックで…う、うぅ~。 シュウ:そうか、ツラかったな、ケイゴ。 ケイゴ:シュウ~!俺ダメだったよ~!シュウ、ダメだった俺の分まで、お前、幸せになってくれよ~! シュウ:ば…っ!ケイゴ! リュウタロウ:お、なんだなんだ、シュウも好きな奴いんのか? シン:へぇ?それは初耳だな、シュウ。 シュウ:違う!そうじゃなくて! ケイゴ:お前はいつ告白するんだ、シュウ~。あの日俺ら誓っただろ~! シュウ:お前もうしゃべんな!ケイゴ! リュウタロウ:それは、詳しく聞きてぇなぁ?なあ、シン! シン:そうだな!シュウ、お前あんまそういう話しないから興味ないもんだと思ってたんだけど、好きな人がいるなんて……(シンのスマホが鳴る)っと、電話?あ、レイナちゃんから…。わり、ちょっと電話出てくる! リュウタロウ:おう、いってらっしゃい。……んで?シュウ、詳しく聞かせろよ。 ケイゴ:俺も聞きた~い! シュウ:ケイゴ、酔いすぎだ!もう飲むな!そして帰れ! ケイゴ:なんでそんなこと言うんだよ~!いいじゃんか~!俺はお前の幸せが聞きたいんだよ~!お前の幸せで俺を満たしてくれよ~! シュウ:だーまーれー! リュウタロウ:堪忍しろ、シュウ。ここまで聞いておいて、聞かないっていう選択肢はないからな!相手は?同じ大学? シュウ:う…っ!お、同じ大学、ですけど!これ以上は言いません! リュウタロウ:ほーお!じゃあオレらの知ってる奴かもしれねぇな。学年は?同じ? シュウ:もうこれ以上は言わないですから! ケイゴ:年上らしいっすよ。 シュウ:ケイゴ! リュウタロウ:年上かぁ!確かに、シュウかわいいとこあるもんな!かわいがりたい欲が出るんだよな、シュウ見てると。 シュウ:か、からかわないでください! リュウタロウ:3年?4年?もしかしたらオレ知ってるかもしれねぇからさ、名前教えてよ。 シュウ:言わない! ケイゴ:シュウ、『To move on』だ。次、その人と会うことがあったら、押し倒せ。全力で前に押し倒せ。押し倒してキスして、蹂躙しろ。 シュウ:あほか!っていうか、その曲名をそこで出すな!そういう意味で使うな! リュウタロウ:そうだぞ、シュウ。とにかく前に進むんだ。強引に押し倒すんだ。『To move on』だ。 シュウ:リュウタロウ先輩まで何言ってるんですか!2人とも酔いすぎ!もう飲むな! ケイゴ:結局は強引さが大事なんだよ。もっと俺も強引にいけばよかった…。壁ドンでもして、迫ればよかった。断らせないような雰囲気でいけばよかった…っ! リュウタロウ:そうだよなぁ。確かに、強引に迫られたら、のせられるよな。 ケイゴ:リベンジするときはもっと迫ってやる!俺はあきらめないぞー! リュウタロウ:ケイゴ、その意気だ!ほら、今日はもう飲め!飲んで切り替えよ! ケイゴ:はいっ!ケイゴ、いっきまーす! シュウ:行くなっ!お前はもう飲むな!リュウタロウ先輩も、飲ませないでください!これ以上はこいつ面倒なことになるんで! リュウタロウ:はは、わりぃわりぃ。はい、ケイゴ、こっちの水飲んどけ。 ケイゴ:うっす!ケイゴ、いっきまーす! リュウタロウ:ってか、シン遅いな。 シュウ:ですね。レイナちゃんって確か…。 シン:ただいま、わり、かなり長くなった…。 ケイゴ:なげーよ、シン。なんの用だったんだ……ってか、シン、顔、赤くね? シン:あ…えと、いや、その…。 リュウタロウ:どーしたー?酔いが回ってんのかー? シン:……告白、された。 リュウタロウ:……っ!? シュウ:え? ケイゴ:告白!? シン:あぁ。レイナちゃんに。 シュウ:レイナちゃんって、お前とよく一緒にいるあの女の子だよな。 シン:友達、だと思ってたんだけど、レイナちゃんは俺のこと、好きでいてくれてたみたいでさ。 ケイゴ:おぉ!んで、電話で告白された、と。 シン:はは、なんか彼女今、友達に相談乗ってもらってたら、その友達に「もう告白しなさい」って強引に電話かけられたらしくてさ。本当は会っていうべきだけど、もうこの勢いで言っちゃうねー、って。告白されました。 リュウタロウ:……告白の返事はしたの? シン:うん。付き合うことになった。 リュウタロウ:っ! シュウ:……。 ケイゴ:マジか!おめでとう!うおおおお!よくやった、シン!俺の分まで、いっぱい幸せになってくれ~!! シン:タイミング悪くてごめん、言うか言わないか迷ったんだけど…。 ケイゴ:いいんだよ!それとこれとは別だ!ってか言わずに隠してたら逆にキレてた。 シン:ありがとう、ケイゴ。俺、幸せになるよ…! リュウタロウ:……よかったじゃねぇか!おめでとう、シン! シン:リュウタロウもありがとう!えへへ、なんか照れるな。 シュウ:おめでとう、シン。 シン:シュウも、ありがとうな! リュウタロウ:シン、その彼女に会いに行ってこいよ。 シン:え? リュウタロウ:せっかく恋人になれたんだ。今夜は一緒に過ごすべきなんじゃないのか? シン:あ…そう、だよな。そうだよな!なんか、急にレイナちゃんに会いたくなってきた…! ケイゴ:行って来いよ、シン! シュウ:幸せに、な。 シン:みんな、ありがとう!じゃあ俺、行ってくる! ケイゴ:いってらっしゃーい!………さーて、俺はそろそろ帰ろうかな……ちょっと飲みすぎた。 シュウ:ちょっとどころじゃないだろう。帰れるか? ケイゴ:おう、タクシー使うわ。じゃあ、また明日な。リュウタロウ先輩、お疲れっす。 リュウタロウ:気を付けて帰れよ。 シュウ:ケイゴ、お疲れ様。 リュウタロウ:じゃ、今夜はこれでお開きにしようか。シュウは帰れる?って、大丈夫そうだな。 シュウ:はい、帰れます。……リュウタロウ先輩は、ちゃんと帰れますか? リュウタロウ:はは、大丈夫だって。だいぶ飲んだけど、帰れるよ。まだ終電の時間でもねーし。 シュウ:大丈夫、ですか? リュウタロウ:心配しすぎ。じゃ、シュウ、気を付けて帰れよ。おつかれ。 シュウ:お疲れ、様です…。 0:間 : 0:河川敷 リュウタロウ:はは、なんだよ、付き合うことになったって…。オレへの憧れは、そういうのじゃなかったってこと、だよな。……あの日にオレが告白してたら、違ったのかな。いい雰囲気だったし、もっと強引に迫ってれば……。くそ、なんなんだよ。オレ、こんなにシンのことが好きだったのかよ…。……っ。 シュウ:リュウタロウ先輩、ここにいたんですね。 リュウタロウ:っ!シュウ!?な、なんでお前がここに? シュウ:悩み事があるとき、考え事をしたいとき、この河川敷に来るって言ってましたからね。きっと、今のリュウタロウ先輩なら、ここで考え事してるのか、と。 リュウタロウ:悪いな、シュウ。今は一人にさせてくれないか。誰かと話す気分じゃねぇんだよ。 シュウ:今度は私がリュウタロウ先輩の悩みを聞く番です。 リュウタロウ:一人にさせてくれ。誰かに話して楽になるようなことじゃない。 シュウ:嫌です。 リュウタロウ:…っ!一人にさせろって言ってんだよ!どっか行け! シュウ:嫌だっ!落ち込んでいるあなたを一人にできない! リュウタロウ:なんだよ、落ち込んでるって…。 シュウ:シンのこと、好きだったんだよな、先輩は。 リュウタロウ:なんで……。だったらなんだよ!そーだよ、オレは失恋したんだよ!だからどうにもできねぇだろ!悩みを聞いたところで、なにも解決できねぇだろ!いいから、一人にさせてくれよ…。こうやってイライラして、お前にぶつけたくないんだよ…。お願いだ…。 シュウ:悪いが、それはできない。 リュウタロウ:シュウ、いい加減に…! : シュウ:私はリュウタロウのことが好きだ! : リュウタロウ:……っ!?え…っ!? シュウ:だから、このチャンスを逃すわけにはいかない。 リュウタロウ:シュ、シュウ…? シュウ:正直、今が一番私にとってチャンスだと思っている。自分がこんなにも卑怯な奴だ、なんて思っていなかった。シンに彼女ができたと聞いたとき、私は心のどこかでは喜んでいた。一番のライバルがいなくなった、と。 リュウタロウ:……。 シュウ:リュウタロウ、私はあなたのことが好きだ。私と付き合ってほしい。 リュウタロウ:なんだよ、それ…。失恋したばかりのオレにそんなこと言うのかよ。 シュウ:代わりでいい。 リュウタロウ:は…? シュウ:シンの代わり、になれるとは思っていないが、失恋した傷をうめるのにはちょうどいいだろう。 リュウタロウ:何言ってんだよ。シンに失恋したから、代わりにシュウで我慢する。そういうことか? シュウ:そうだ。それでいい。 リュウタロウ:それでいいわけねぇだろ!好きな人の代わりにされるなんて、辛いだろ…。 シュウ:私は、何をしてでも手に入れたいと思ってしまった。だから、私のことを嫌いでないのならば、私と付き合おう。 リュウタロウ:ダメだ。そんな代替品みたいなこと、オレはしたくない。 シュウ:私のこと、嫌いなのか? リュウタロウ:そうじゃねぇよ。シュウのことを利用したくないってこと。オレが一番好きなのはシンだから。 シュウ:そうか、じゃあこうしよう。 リュウタロウ:シュウ?何を…ん!?(シュウにキスされる) シュウ:ん…っ。 リュウタロウ:ん、んん!? シュウ:(口を離す)はぁ…。 リュウタロウ:な、なにして…! シュウ:嫌だったか? リュウタロウ:え…? シュウ:私とのキスは嫌だったか? リュウタロウ:い、嫌じゃ…なかった、けど…。 シュウ:じゃあ、気持ちよかったか? リュウタロウ:な、なんでそんなこと聞くんだよ…。 シュウ:答えろ、リュウタロウ。私とのキスは、気持ちよかったか? リュウタロウ:……っ。気持ち、よかったよ…。 シュウ:よかった。だったら私とリュウタロウの相性はいいはずだ。 リュウタロウ:基準がおかしいだろ…。 シュウ:キスの相性が良ければ、たいていの相性はいいって聞いたからな。 リュウタロウ:誰の入れ知恵だよ…。 シュウ:ケイゴだ。 リュウタロウ:あいつ、今度なぐっとこう…。 シュウ:リュウタロウ。今はまだ、シンのことが一番なのはわかっている。だが、いつか必ずリュウタロウの気持ちを私に向けてみせる。 リュウタロウ:シュウ…。 シュウ:シンへの気持ちを忘れるほど、私に夢中にさせてみせる。 リュウタロウ:……シュウ、お前そんな強引な性格だったっけ。 シュウ:いいや。でも、強引な性格になるほどに、リュウタロウのことが好きだってこと。 リュウタロウ:敬語もいつの間にかなくなってるし。 シュウ:敬語じゃなくていいって言ってたから。 リュウタロウ:……いいの?いつになるかわかんないけど、シンのことしばらく引きずるよ。思ってた以上にあいつのこと好きだったからさ。 シュウ:それでもそばにいたいって思うほど、私はリュウタロウのことが好きだ。 リュウタロウ:オレのどこがそんなに好きなの。 シュウ:それはたくさんありすぎて語ると時間がかかるから、これからたくさん伝えていく。 リュウタロウ:へへ、そうかい。 シュウ:あぁ。 リュウタロウ:シュウ。 シュウ:なんだ、リュウタロウ。 リュウタロウ:もう一回、キスして。 シュウ:あぁ。……ん。 リュウタロウ:ん……。 シュウ:好きだ、リュウタロウ。 リュウタロウ:ありがとう、シュウ。これからよろしくな。 0:間 シュウ:(M)初めはただ、憧れだった。 リュウタロウ:アゲていくぜっ!いいか、しっかりついて来いよ!『To move on』! シュウ:(M)いつしかそれは、 リュウタロウ:お前のそういう、好きなものに対して真っすぐで一生懸命なとこ、オレは好きだぜ。 シュウ:(M)恋情に変わっていた。……じゃあ、その先は? 0:2年後、河川敷 リュウタロウ:シュウ!卒業、おめでとう。 シュウ:リュウタロウ。来てくれたのか。 リュウタロウ:あったり前だろ!仕事も休み勝ち取ったからな! シュウ:ありがとう、リュウタロウ。 リュウタロウ:へへ、この河川敷、いろいろあったよな。 シュウ:あぁ。ここで私はリュウタロウのことを好きになって、 リュウタロウ:そんで、オレはここでシュウを好きになるきっかけをもらった。 シュウ:私のこと、好きになったか? リュウタロウ:それはお前が一番わかってんだろ。 シュウ:そうだな。 リュウタロウ:さて、これからロック部の飲みだったよな。アキラもレオもツバサも来るって言ってた。 シュウ:お、それは楽しみだな。 リュウタロウ:大騒ぎになるだろうな。……行くか。 シュウ:あぁ。そうだ、リュウタロウ。 リュウタロウ:なに、シュウ。 シュウ:愛してる。 リュウタロウ:へへっ。なんだよ、急に。 シュウ:好きの次は、愛してる、かなって。 リュウタロウ:そうだな。じゃあオレも。愛してるよ、シュウ。 0:完