台本概要
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タイトル | ジャスティス |
---|---|
作者名 | ハスキ (@e8E3z1ze9Yecxs2) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
極寒の地にある国、バーナム王国。そこで暮らす青年セシルは幼なじみのリリーと共に討伐隊という国を守る組織に入隊をする事にした。なぜ「討伐隊」なのか、それはバーナム王国には先代の王の時代から度々あった「盗賊団」の襲撃に備える部隊だからだ。後に起こる国の裏の秘密にまつわる事件にセシル達は巻き込まれていくのだった⋯。「正義」とは、がテーマのヒューマンファンタジー 男女不問。世界観を壊さない程度のアドリブOK。 157 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
セシル |
男 ![]() |
124 | 討伐隊の隊員。元討伐隊で憧れの存在だった父ジルの後を追い討伐隊に入る夢を叶えた。それともう一つ、父の死の真相を探る為にも討伐隊に入る目的があった。正義感が強い。 |
リリー |
女 ![]() |
85 | 討伐隊の隊員。セシルの幼なじみで昔からセシルの後をついて回っていた。セシルに恋心を秘めており、セシルが討伐隊に入ると言った時に無理やり付いて行く事にした。一途なところがある。 |
テト |
女 ![]() |
74 | 謎の盗賊団の団員。古い文献に載っているエルフと言われる不思議な力「魔法」を使う謎の種族と酷似した見た目をしている。ある目的で執拗にバーナム王国を襲撃している。小柄で可愛い見た目に反して口が悪い。 |
ドリスコル |
男 ![]() |
54 | 討伐隊の隊長。バーナム王国の国王の国を思う考えに胸を打たれ国王の為に汚れ役をやる覚悟で討伐隊の隊長に上り詰めた。圧倒的強さで討伐隊の中でも恐れられている。 |
バラク |
男 ![]() |
51 | バーナム王国の国王。極寒の地にあるバーナム王国を先祖の国王の代から受け継ぎ永続的な繁栄をさせるという大義のもと国を納めている。国のためなら時に非情になることも。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
セシル:はぁ⋯やっぱり何度観ても綺麗だな。マナマテリアルに感謝だな
リリー:あー、やっぱりここに居たのねセシル。また夜の街を見てたの?
セシル:よーリリー、リリーもこの素晴らしい夜景を見に来たのか?
リリー:あのね~、私達明日は王様の前での入隊式を控えてるのよ?
セシル:知ってるさ。でも、なんか興奮しちゃってさ
リリー:⋯分かるわよ。セシルのお父さんが居た討伐隊に入るんだものね
セシル:⋯そうだな
リリー:まだ⋯気持ちの整理、ついてないんでしょ?
セシル:そう⋯かもな。でも、俺も討伐隊に入れば少しは父さんが消えた理由が分かるんじゃないかと思うんだ
リリー:そうね。私も一緒に入隊するんだから、何か困った事があったら言ってよ、幼なじみなんだから
セシル:はは、確かに。リリーが居てくれたら安心だ
リリー:はいはい、明日早いんだからさっさと寝なさいよー
セシル:わかったよ
セシル:⋯父さん、俺が絶対に真実を明らかにして見せるから
:間
ドリスコル:よし、全員揃ったな
ドリスコル:俺の名はドリスコル、討伐隊の隊長をしている者だ。これから王がおいでになられて入隊式をとりおこなう予定だ、失礼が無いようにしろよ
リリー:あの人ってたしか
セシル:あー、父さんの部下だった人だ
リリー:セシルのお父さんの代わりに隊長になってたのね
セシル:そう、みたいだな⋯
ドリスコル:バラク王が来られた、ひざまずいて話を聞くように
バラク:よく来てくれた皆の者。私がこのバーナム王国の王、バラクだ。今日はそういう堅苦しいのはやめて立ったまま聞いて良いぞ
ドリスコル:バ、バラク様、よいのですか?
バラク:よい、討伐隊を希望する前途ある若者達だ、彼らを歓迎しようじゃないか
ドリスコル:分かりました。全員、立て!
バラク:皆も知っている通りこのバーナム王国は極寒の土地を切り開いて作られた国だ
バラク:元々人が住める環境では無かったこの場所を先代の王の手によって人が暮らしやすい場所へと変えたのだ。そう、すべてのエネルギーを生み出すマナマテリアルによって
バラク:しかし、ここ数年その国の重要な宝であるマナマテリアルを狙ってくる不届きな輩が現れたのだ
リリー:それって北の森にいるっていう「盗賊団」ですよね?
ドリスコル:きさま!勝手な発言をするな!
バラク:かまわん。その通りだ、そしてその盗賊団から国の宝を守る為、引いては奴らの組織を壊滅させる為に討伐隊はとても重要な存在となる
バラク:君達の活躍は国を守る為、ひいては君達の大事な家族や友人を守る事にも繋がる。これからよろしく頼むぞ
セシル:盗賊団⋯か
:間
バラク:ふー、今回も無事に終わったか
ドリスコル:お疲れ様です、バラク様
バラク:ドリスコル、お主もジルが居なくなった隊をよく引っ張ってくれている。感謝するぞ
ドリスコル:もったいないお言葉です
バラク:もう、一年になるか⋯
ドリスコル:そうですね⋯。ジルの意思を継ぎ私が彼らをしっかり導きます
バラク:頼んだぞ。そう言えば今回はジルの息子も居たようだな?
ドリスコル:はい。ジルに似て、目の奥に揺るぎない信念を感じさせるそんなやつです。きっと良き働きをするでしょう
バラク:うむ。なんとしても賊からマナマテリアルを守らねばならないからな。皆の働きに期待しよう
:間
リリー:はーやっと終わったね。疲れたー
セシル:あのな、こっちはリリーがまた余計な事を言わないか心配だったんだぞ
リリー:だって、話長いんだもん
セシル:そういうとこ、変わらないよなー
リリー:だいたいあの決まりも変じゃない?
セシル:え?
リリー:盗賊団は見つけしだい生け捕りにして決して殺すなって
セシル:確かに、ちょっと変だとは思うけど⋯
リリー:だいたい盗賊団に襲われて街の人が何人死んでると思ってるのよね、セシルのお父さんだってもしかしたら⋯
セシル:⋯
リリー:あ⋯ごめん
セシル:いいよ。まあ、生け捕りにする意味は情報を引き出す意味もあるからそこまで変な話じゃないよ
リリー:私はブッ倒す方が得意なのにー
セシル:はは、リリーらしいね
リリー:それよりお腹減ったから宿舎に戻る前にあそこでご飯にしよう
セシル:あー、分かったよ⋯
リリー:っ!セシル危ない!
セシル:え?うわっ!
テト:っ!?チッ、避けられたか!
セシル:あっぶなー⋯、リリー、サンキュ!
リリー:そんなんどうでもいいわ。あんた、いきなりどういうつもり?
テト:お前ら、討伐隊のやつらだろ?
セシル:だったらなんなんだよフード野郎?
テト:やっぱりね⋯なら、敵だぁ~!うらっ!
セシル:くっ!ぐく、なんて、力だ⋯
リリー:セシル!私も加勢するわ!
テト:チッ、くらえ!ウインド!
セシル:ハッ、リリー!避けろ!
リリー:え?うわぁー!!
セシル:リリー!くそ、なんだ今の風の刃は!?
テト:殺してやる⋯
セシル:くそ、スラッシュ!
テト:っ!く、危なかった⋯
セシル:そ、そのフードの下の顔⋯盗賊団!?
リリー:う⋯
セシル:リリー!大丈夫か!?
テト:チッ、生きてたか
リリー:はぁ、はぁ、私は大丈夫、致命傷は避けたから。それより、あれが隊長が言ってた盗賊なの?
セシル:ああ、間違いない。あの尖った耳、緑の髪、そして青い瞳、隊長が言ってた特徴と完全に一致する
リリー:まだ入隊したばかりなのにいきなり遭遇するってどんな奇跡よ
セシル:俺は早く会えて良かったよ
リリー:え?ちょっ、セシル!?
セシル:おいお前!盗賊団の仲間だな?
テト:だれが盗賊団だ!
セシル:国の宝であるマナマテリアルを狙うお前達の事だよ!
テト:ハッ、それはお前らが勝手に呼んでるだけだろ!
セシル:は?どういう事だ
テト:敵のお前らと会話するつもりはない。死ね!
セシル:く!話にならん!
リリー:セシル!応援が来たみたいよ!
テト:チッ、分が悪いか⋯クラウド!
セシル:くっ、リリー!俺の後ろに隠れろ!
リリー:セシル!
セシル:うぅ⋯あれ?痛く⋯ない?
リリー:セシル、あいつが!
セシル:消えた⋯だと?
リリー:はあ、とりあえずセシルが無事で良かったわ
セシル:なんだったんだ⋯あの変な力は?
:間
ドリスコル:なるほど、それがお前達が見たと言う襲撃者の姿か
セシル:はい、隊長が言っていた通りの姿でした
ドリスコル:バラク様、これは⋯
バラク:うむ、間違いなく盗賊団の一味だな。まさかこんな明るいうちから堂々と街に現るとは
ドリスコル:それだけやつらも必死になってきているという事でしょうか?
バラク:⋯かもしれんな。警戒を怠らないように全隊員に告げておいてくれ
リリー:ちょっといいですか?
ドリスコル:うん、なんだ?
リリー:私とセシルが敵と交戦した時に相手が変な力を使ってました。そんな話聞いてませんでしたけど?
バラク:なんと!!
ドリスコル:お前達!それはホントか!?
セシル:はい。賊は最初から変な力を使っていたと思います。細身の身体からは信じられないようなパワーを感じましたし、どこからか風の刃のような物を飛ばしたりしてきました
ドリスコル:バラク様、ついに見つかりましたね
バラク:⋯そのようだな。
リリー:ちょっと待って下さい、私達が戦ったのは普通の賊ではないんですか?
バラク:それは私から説明しよう
バラク:実は、長きに渡って我々を苦しめてきた盗賊団だが、その中に特別な力を持つものがいると言われていたのだ
セシル:特別な力⋯?
バラク:さよう。それはかつて「魔法」と呼ばれていた力で、火を起こし、風を吹かせ、大地をも揺るがしたと言う危険な力と言う話だ。
セシル:そんな力を持つやつが盗賊団に!
バラク:文献によるとそれこそが盗賊団の象徴的存在しか使えない未知の力と書かれていた。
リリー:リーダーみたいなやつなのね
ドリスコル:だから我々がずっと探していたのだ。そいつを捕らえさえすればもう盗賊団も怖くはなかろう
バラク:セシル、お主は父が消えた理由を知りたいであろう?
セシル:っ!⋯はい、どうしても納得がいかないので⋯
ドリスコル:セシル⋯分かるぞ。彼が消えた事は本当に残念だったよ。君の父には私もお世話になったんだ
バラク:文献によるとその特別な力は人の身体を一瞬で消滅させるものもあったという。ジルも恐らくは⋯
セシル:く、父さん⋯
ドリスコル:早まるなよセシル、悔しい気持ちは分かるが必ず生け捕りにするんだ。それが隊の決まりであり王のお言葉だ
バラク:辛い思いをさせるがくれぐれもよろしく頼むぞ
セシル:⋯わかりました
:間
リリー:⋯セシル、大丈夫?
セシル:ああ⋯少し落ち着いたところだ
リリー:でもまさかセシルのお父さんの情報がこんなに早く分かっちゃうなんて
セシル:俺もまだ考えがまとまらないけど⋯あいつが父さんの事を知ってる可能性は多いにある
リリー:また見つかるといいけど⋯
セシル:っ!?
リリー:ん?セシル、どうしたの?固まって⋯
セシル:呼んでる⋯あっちだ!
リリー:ちょっ、セシル!待ちなさいよ!
セシル:はあ、はあ、⋯近い!
リリー:はあ、はあ、ど、どうしたっていうのよ!こんな森まで来ちゃって!
テト:ん?余計なのまで着いて来たか
リリー:あ、あれは!?
セシル:⋯やっぱり、お前だったんだな。どういうつもりだ?
テト:お前らに一つだけ聞きたい事があったんだよ
セシル:奇遇だな。俺もお前には聞く事があるんだよ
リリー:セシル!近づいちゃ駄目、またなんか変な力使ってくるかもしれないから!
テト:うるさいよお前、バインド
リリー:く!な、何!?う、動けない⋯
セシル:リリー!
テト:安心していいよ、ただ動けなくしただけだから。そこで黙っておけば今は殺さないでいてあげる
セシル:分かった。リリー、すまないが従ってくれ
リリー:わ、分かったわよ
テト:じゃあさっさと本題に入るけど⋯ある人物の居場所を探している
セシル:ある人物?誰だ?
テト:お前達と同じ見た目をした種族のジルという人物だ
セシル:っ!!ど、どういう事なんだ⋯?
テト:ん?なんでそんなに驚いてるんだ?
セシル:ジルは⋯俺の父だ
テト:な、なんだって!?お前、ジルの息子なのか!
セシル:あ、ああ、そうだ
リリー:こらー!近すぎ!離れなさ~い、って身体動かないんだった~
テト:お前ならジルの居場所を知ってるんだろ?ジルは今どこに居るんだよ!!
セシル:こいつ⋯ほんとに知らない、のか?
テト:何言ってるんだ?で、どうなんだ!
セシル:⋯消えたんだ
テト:消えた?どういう事だ?
セシル:それはお前の方が知ってるんじゃないのかよ!?
テト:それはどういう⋯
ドリスコル:ハーーッ!!
テト:しまっ!うぐっ!あ⋯
セシル:隊長!?どうしてここに!?
リリー:ぷは!やっと動けるようになった。って隊長さん、まさかつけてたの?
ドリスコル:人聞きが悪いぞ。お前達に盗賊についてもう一度詳しく話を聞くために探してたんだ。そうしてたらお前達が森に向かったと聞いたんでな
セシル:そいつ⋯どうするんですか?
ドリスコル:もちろん生け捕りにして王の前に連れていく。事情を詳しく説明する為にお前達にも立ち会ってもらうぞ
リリー:えー、面倒~
セシル:⋯分かりました
:間
ドリスコル:バラク様、命令の通り連れてまいりました
バラク:こ、この者が、君が言っていた賊なのか?
セシル:はい⋯今は気絶しておりますが、たしかに自分と交戦した賊で間違いありません
リリー:私もこいつにぶっ飛ばされたんで間違いないです
バラク:なるほど⋯よくやったぞ君達。後でしっかりと褒美を送らせてもらう。今日はご苦労だったな、戻って休んでよいぞ
セシル:あ、あの!
バラク:ん?まだ何かあるかな?
セシル:ほんとに⋯こいつは危険な奴なんでしょうか?
ドリスコル:おい!セシルお前、王を疑う気か!?
バラク:⋯仇かも知れない相手に出会って混乱しているのだな。間違いなく盗賊団を率いる危険なやつだ。私を信じてくれ
セシル:そう⋯ですか
ドリスコル:バラク様、この者はいかが致しますか?
バラク:そうだな。とりあえず地下の牢屋にしばらく入れて置いてくれ。その後は私に任せてもらう
ドリスコル:バラク様だけで危なくはないでしょうか?
バラク:そこは心配いらん、文献にこの者の対処の仕方も記されてあったからな
ドリスコル:分かりました、何かあればお手伝い致しますのでなんなりと
バラク:うむ
セシル:⋯
リリー:セシル?
:間
テト:⋯う⋯ここは⋯ハッ!
テト:く!開かない!くそ!出せー!出しやがれー!!
テト:くそ、捕まっちまったのか⋯
テト:ジル⋯どこにいるんだよ⋯
リリー:ちょっと、セシル本気なの?
セシル:あー、だから静かにしていてくれ
テト:ん?あの声は、まさか!?
セシル:お、居たな
リリー:はー、私知らないからねー
テト:お前ら!さっきはよくもやってくれたな!?
リリー:なーんか勘違いしてるようだけど、あれ私達じゃないからね
テト:じゃあ誰がやったって言うんだよ!
セシル:さっきは話の途中ですまなかったな。だが、君達盗賊団と呼ばれてる存在が我々から危険視されているというのも自覚して欲しい
テト:ふん!で、何しに来たんだ?危険だから殺しに来たのか?
セシル:違う、俺は話の続きをしに来たんだ
テト:話の続きだって?
セシル:お前、父さん⋯ジルの事を探していたな?
テト:⋯ああ。それがどうしたんだ
セシル:どうしてだ?お前達の種族がなぜ俺の父さんを探す必要があるんだ?
リリー:あ、それ私も聞きたかったやつ
テト:お前、父親から何も聞いてないのか?
セシル:っ!⋯ああ。
テト:⋯そうか。なら教えてやるよ、なぜ私がジルを探しているか
セシル:⋯
:間
テト:私達はここより北の森の奥深くに住んでいる、精霊人だ。
セシル:精霊人⋯?
テト:森の神を崇め、森と共に生きる者、それが精霊人だ。その中でも私の一族は特別な力を神から授かったエルフ族だ
セシル:精霊人にエルフ族⋯どれも初めて聞く名ばかりだ⋯リリーは?
リリー:いや、私も初耳なんだけど。あ、でもあなたが使ってる力ってまさか
テト:神の奇跡をお借りする力「魔法」だ。
リリー:ふえ~あれ魔法って言うんだ⋯
セシル:その北の森の奥に住んでたエルフ族の君がなんで俺達を襲うんだ?
テト:はー?その言い方だとこっちが攻めてきたみたいに聞こえるんだけど!
セシル:いや、聞こえるも何もその通りだろ?
テト:何を言ってる!元々静かに暮らしていた私達を襲ってさらったのはお前達の方じゃないか!
セシル:え!?
リリー:ちょっと、それどういう事なの?私達があなた達精霊人を襲ったって言うの??
テト:はあ⋯知らなかっとはいえ、君らの国はいったいどうなってるんだよ。ま、ジルはそんな中でも一人だけエルフ族を理解してくれてたけど
セシル:父さんが?
テト:そうだよ。それから、私は君のお父さん、ジルに命を救われたんだ。
:間
バラク:よし。ドリスコル、準備が出来たので例の族を私が引き取るからここへ連れてきてくれ
ドリスコル:は、承知いたしました
:間
ドリスコル:命令とはいえ、あんな子供を⋯
ドリスコル:いや、あれは我々の民を殺してきた危険な存在だ。そう⋯バラク様のお考えが正しいのだ⋯。
ドリスコル:おい、移動だ、起きろ。
ドリスコル:ん⋯ま、まさか!
:間
セシル:はあ、はあ、ちゃんと着いて来てるか?
テト:はあ、はあ、な、なんだよ、この城広すぎないか?
リリー:はあ、はあ、ちょっと、二人とも、私を置いてかないでよ~
セシル:あの、父さんが言ってたって話、本当なんだよなテト?
テト:ああ、ジルは信頼出来るやつだったからな。その息子の君に嘘なんてつかないよ
セシル:(N)テトの話では討伐隊の隊長として森に向かった父さんだったが、元々野蛮で危険な種族と国王から聞かされていた話とは実際は真逆で彼らは穏やかで優しい種族だったそうだ
セシル:(N)命令と目の当たりにした事実とに板挟みに合う中、父さんはまだ幼かったテトを捕らえる振りをして逃がした。そして必ず仲間を救い出して戻ってくると約束をして去っていったと言う話だ
テト:国に私くらいの息子が居るから、って言ってたけどまさか君だったとはね
リリー:え?てことはテトって私達と同い年くらいなの?嘘ー
テト:それは私がチビだって言いたいのかな?
セシル:今は急いでるからふざけるのはまた今度にしてくれる?で、父さんが言ってた話にはまだ続きがあるんだよな?
テト:うん、たしかお城のどこかに秘密の部屋があってそこに捕らえられた仲間達がいるはずだって言ってたんだ
リリー:秘密の部屋って、どこにあるって言うのよ~
セシル:分かりやすい場所なら今頃見つけれてるだろ。あの感じならドリスコル隊長もこの事実を知らなかったみたいだし、きっと王様なら知ってるはずだ
リリー:そうだとして真実を簡単に話してくれるかなー?
セシル:⋯それは、分からないけど
テト:あ!ちょっと待って二人とも!
リリー:え!な、何よ!急いでる時に⋯
テト:感じる⋯
セシル:え?何を感じたんだ?
テト:微かにだけど仲間のオーラを感じるんだ!こっちだ!
セシル:ほんとか!よし行こう!
リリー:あ、ちょっと待なさいって~!私、こんなんばっかりじゃ~ん
:間
テト:あった、ここから感じるよ!
リリー:はあ、はあ、ほ、ほんとなの?何にも無いじゃない?
セシル:いや、待て⋯よく見るとここだけ壁の色が少し変だ、壁の向こうがあるのかもしれない⋯
リリー:はあ?確かに変だけど⋯でもこんな分厚い壁どうにもならないって⋯
テト:⋯いけ、ファイアーアロー!
リリー:ええーー!!うっそ、あの分厚い壁が一瞬で
テト:よし!開いたよセシル!
セシル:わ、分かった、何があるか分からないけど、見つかる前に急ごう!
リリー:⋯あの子は絶対に怒らせないようにしよう
:間
テト:⋯長い通路だね
セシル:⋯どんどん地下に降りてってるようだ
リリー:暗くて気味が悪いんだけどーまだ~?
テト:あ、扉だ⋯
セシル:よし、早く君の仲間を助けてやらないとな、開けるぞ?準備はいいか?
リリー:そんなんいいから暗いし早く開けなって、よいしょっと、ほら、中は明るい⋯ってコレ⋯何なの⋯?
テト:っ!?ど、どういう事なの?
セシル:なんなんだ?この⋯バカでかいクリスタルの塊(かたまり)は⋯?
バラク:やれやれ、この場所が見つかってしまうとはね⋯
セシル:こ、国王様!?国王様、これはいったいなんなんですか!
バラク:あれですか⋯?もうだいたい察しはついてると思ってたんですが。無知な君達に教えてあげよう
リリー:はー?なんなのよ!
バラク:あれが、マナマテリアルだよ
セシル:え!こ、これが⋯マナマテリアル⋯?ちょっと待って下さい、ここには、テトの仲間達が居るはずじゃ!?
テト:セシル⋯感じるんだ⋯
セシル:テト!どういう事だ!仲間達はどこだ!?
テト:あの⋯クリスタルの中から仲間や⋯私のお母さんのオーラを感じるんだ!!
リリー:あれがテトの仲間達っていったいどうなってるのよ!
バラク:まだ分からんのかね?そこにいる精霊人を使って作ったエネルギー装置だよ
テト:っ!?
セシル:嘘⋯でしょ⋯?だって、これは国の宝で、人が住む事が出来なかったこの土地を変えたすべてのエネルギーの源で⋯
バラク:そうだ、火を灯し、光を生み、我々が生きていく為に必要な全てのエネルギーを生み出している無くてはならない装置だ
テト:あんたが⋯あんたが皆を殺した張本人かー!この悪魔め!
セシル:テト!く、知らなかったとはいえ、俺は今までなんてのうのうと生きてたんだ⋯
バラク:悪魔とは心外ですねー。私は国の為に、国民全員を守る為にやっている事なんですよ
リリー:だからって⋯テト達が犠牲になっていい事にはならないでしょ!
バラク:それはあなた個人の浅はかな考えであり国を任された私から言わすと必要な犠牲と言うやつです
セシル:何が、何が必要な犠牲なんですか!静かに平和に暮らしていた彼らの命を奪っておいて!
テト:なんで、私達だったの⋯?私達が何をしたっていうの?
バラク:あー、それは簡単ですよ。君達精霊人には特別な力が身体に流れていたからです。エネルギーの源になる、マナがね
リリー:マナ⋯それがねらいだったと言うわけね?
バラク:そうです、いやー良かったですよ。そろそろこのマナマテリアル装置のマナが足りなくなって来てたのでエルフ族のあなたが来てくれて
セシル:エルフ族⋯特別な力⋯まさか!
バラク:そう、精霊人の中でもとくにこちらのエルフ族は膨大な量のマナを身体の中に保有してるんですよ
テト:それで私達エルフ族の事を狙ってたのか⋯
バラク:とっても助かりましたよー。とくにあなたのお母様には感謝しないといけません
テト:き、きさまー!
バラク:ドリスコル
ドリスコル:は、むん!!
テト:く、なんだお前は!
ドリスコル:覚えて無いだろうが会うのは二回目だ。
セシル:た、隊長!?
リリー:あっちゃーやばい人に見つかっちゃったじゃん
バラク:ドリスコル、君も先程の話は聞いていたね?
ドリスコル:⋯はい。少々驚きましたが
バラク:なら、どうするかは分かってるね?
ドリスコル:⋯さあ、そいつをこちらに渡すんだ
セシル:隊長!?さっき俺達と一緒で真実を知ったんですよね!
ドリスコル:⋯ああそうだ
セシル:ならどうして、まだテトを狙おうとするんですか!?
リリー:そうよ!こんな酷い話ないじゃない!
ドリスコル:お前達は、分かってない⋯いいからそこをどくんだ
テト:捕まってやらないよ!ファイアーアロー!
セシル:ま、待てテト!
ドリスコル:ふぅっ!!
リリー:嘘⋯あの壁を破壊した炎を防いだの!?
ドリスコル:なるほど⋯
バラク:討伐隊に支給されている鎧は全部マナマテリアルから作ってるから魔法は効かないよ
テト:く、仲間を、仲間達をなんだと思ってるんだ!
ドリスコル:セシル、退かないとお前ごと叩き潰さないといけなくなるぞ
セシル:どうして⋯父さんの部下だったあなたがそんなに非道になれるんですか!
ドリスコル:ジルか⋯あいつはほんとに良い先輩だったよ。討伐隊の中でも憧れだったよ
セシル:ならなんで⋯
ドリスコル:誰よりも腕が立ち、誰よりも勇敢だった、しかし同時に甘い男だった
セシル:え⋯まさか⋯
ドリスコル:ああ、王の命令で君の父を殺したのは⋯私だ
リリー:嘘⋯そんなのって⋯
セシル:なぜ、なぜ父さんを殺したんだ!?
ドリスコル:それが私の任務だった、ただそれだけだ。私は国の事を誰よりも考えてるバラク様を信じている
バラク:いやー、私も君のお父さんを殺さないといけなくなったのは残念だったんだよ
セシル:何を白々しい事を⋯
バラク:なぜなら討伐隊の中でも一番腕が立ったからね。残念だよ⋯マナマテリアルの秘密を知ってしまったんだからね
セシル:そうか、父さんはこの事実を知ってて言わなかったのか⋯俺を巻き込まない為に!
バラク:まさかまた事実を知ったのがジルの息子とはね⋯偶然とはいえ、びっくりしたよ。ドリスコル、終わりにしてあげろ
ドリスコル:了解しました。セシル、悪く思うなよ、これも国の為だ
リリー:も、もう私達ここで終わりなの~?
テト:っ!呼んでる⋯
セシル:テ、テト⋯?
テト:そこに、そこにいるんだね、お母さん!
ドリスコル:ふん、今更何をしても無駄だ
テト:うん⋯分かったよお母さん、力を借りるよ⋯
ドリスコル:させんぞ⋯っ!お前ら、なんのつもりだ?
セシル:ここは通さないぜ隊長
リリー:テトの邪魔はさせないんだから!
セシル:行くぞ、リリー!
リリー:まっかせてー!
ドリスコル:⋯来い
セシル:スラッシュアタック!!
リリー:バックスタブ!!
ドリスコル:ふんっ!甘いわ!
セシル:く!なんて力だ⋯
リリー:駄目!まったく効いてないわ!
セシル:諦めるな!テトの時間を稼ぐんだ!
リリー:わ、分かってる!もう当たって砕けろよ~!
ドリスコル:その諦めの悪さはあいつも同じだったな⋯親子揃ってあの世に送ってやるわ!
テト:⋯よし!いけるよ!二人ともそこから離れて!
セシル:っ!リリー!
リリー:ラジャー!
ドリスコル:な、なんだあの光は!?
テト:お母さん、さよなら。フレアバーストー!!
バラク:マナマテリアルに、ヒビが!?
ドリスコル:ぐ、ぐおお~~~!!
:間
リリー:や、やったの⋯?
セシル:終わったみたいだ⋯マナマテリアルも粉々だ
テト:⋯ありがとう、お母さん、仲間達⋯
バラク:は、はは⋯お、終わりだ⋯何もかも終わりだ⋯
ドリスコル:バ、バラク様⋯お前達⋯いずれ後悔する時がくる⋯ぞ⋯
:間
テト:ありがとう⋯セシル、リリー。これで今まで死んでいったみんなが救われるよ⋯
リリー:うん⋯そう、だね。
セシル:どうしたんだ、リリー?
リリー:うん⋯。これで、良かったのかなって⋯。
セシル:⋯それは、分からない。王様やドリスコルの話を聞いて、正義がなんなのか、自分でも分からなくなってる⋯。でも、誰かの犠牲の上に成り立ってる平和なんて、けして許しちゃいけないと思うんだ。⋯そうだよね、父さん。
∶おわり
セシル:はぁ⋯やっぱり何度観ても綺麗だな。マナマテリアルに感謝だな
リリー:あー、やっぱりここに居たのねセシル。また夜の街を見てたの?
セシル:よーリリー、リリーもこの素晴らしい夜景を見に来たのか?
リリー:あのね~、私達明日は王様の前での入隊式を控えてるのよ?
セシル:知ってるさ。でも、なんか興奮しちゃってさ
リリー:⋯分かるわよ。セシルのお父さんが居た討伐隊に入るんだものね
セシル:⋯そうだな
リリー:まだ⋯気持ちの整理、ついてないんでしょ?
セシル:そう⋯かもな。でも、俺も討伐隊に入れば少しは父さんが消えた理由が分かるんじゃないかと思うんだ
リリー:そうね。私も一緒に入隊するんだから、何か困った事があったら言ってよ、幼なじみなんだから
セシル:はは、確かに。リリーが居てくれたら安心だ
リリー:はいはい、明日早いんだからさっさと寝なさいよー
セシル:わかったよ
セシル:⋯父さん、俺が絶対に真実を明らかにして見せるから
:間
ドリスコル:よし、全員揃ったな
ドリスコル:俺の名はドリスコル、討伐隊の隊長をしている者だ。これから王がおいでになられて入隊式をとりおこなう予定だ、失礼が無いようにしろよ
リリー:あの人ってたしか
セシル:あー、父さんの部下だった人だ
リリー:セシルのお父さんの代わりに隊長になってたのね
セシル:そう、みたいだな⋯
ドリスコル:バラク王が来られた、ひざまずいて話を聞くように
バラク:よく来てくれた皆の者。私がこのバーナム王国の王、バラクだ。今日はそういう堅苦しいのはやめて立ったまま聞いて良いぞ
ドリスコル:バ、バラク様、よいのですか?
バラク:よい、討伐隊を希望する前途ある若者達だ、彼らを歓迎しようじゃないか
ドリスコル:分かりました。全員、立て!
バラク:皆も知っている通りこのバーナム王国は極寒の土地を切り開いて作られた国だ
バラク:元々人が住める環境では無かったこの場所を先代の王の手によって人が暮らしやすい場所へと変えたのだ。そう、すべてのエネルギーを生み出すマナマテリアルによって
バラク:しかし、ここ数年その国の重要な宝であるマナマテリアルを狙ってくる不届きな輩が現れたのだ
リリー:それって北の森にいるっていう「盗賊団」ですよね?
ドリスコル:きさま!勝手な発言をするな!
バラク:かまわん。その通りだ、そしてその盗賊団から国の宝を守る為、引いては奴らの組織を壊滅させる為に討伐隊はとても重要な存在となる
バラク:君達の活躍は国を守る為、ひいては君達の大事な家族や友人を守る事にも繋がる。これからよろしく頼むぞ
セシル:盗賊団⋯か
:間
バラク:ふー、今回も無事に終わったか
ドリスコル:お疲れ様です、バラク様
バラク:ドリスコル、お主もジルが居なくなった隊をよく引っ張ってくれている。感謝するぞ
ドリスコル:もったいないお言葉です
バラク:もう、一年になるか⋯
ドリスコル:そうですね⋯。ジルの意思を継ぎ私が彼らをしっかり導きます
バラク:頼んだぞ。そう言えば今回はジルの息子も居たようだな?
ドリスコル:はい。ジルに似て、目の奥に揺るぎない信念を感じさせるそんなやつです。きっと良き働きをするでしょう
バラク:うむ。なんとしても賊からマナマテリアルを守らねばならないからな。皆の働きに期待しよう
:間
リリー:はーやっと終わったね。疲れたー
セシル:あのな、こっちはリリーがまた余計な事を言わないか心配だったんだぞ
リリー:だって、話長いんだもん
セシル:そういうとこ、変わらないよなー
リリー:だいたいあの決まりも変じゃない?
セシル:え?
リリー:盗賊団は見つけしだい生け捕りにして決して殺すなって
セシル:確かに、ちょっと変だとは思うけど⋯
リリー:だいたい盗賊団に襲われて街の人が何人死んでると思ってるのよね、セシルのお父さんだってもしかしたら⋯
セシル:⋯
リリー:あ⋯ごめん
セシル:いいよ。まあ、生け捕りにする意味は情報を引き出す意味もあるからそこまで変な話じゃないよ
リリー:私はブッ倒す方が得意なのにー
セシル:はは、リリーらしいね
リリー:それよりお腹減ったから宿舎に戻る前にあそこでご飯にしよう
セシル:あー、分かったよ⋯
リリー:っ!セシル危ない!
セシル:え?うわっ!
テト:っ!?チッ、避けられたか!
セシル:あっぶなー⋯、リリー、サンキュ!
リリー:そんなんどうでもいいわ。あんた、いきなりどういうつもり?
テト:お前ら、討伐隊のやつらだろ?
セシル:だったらなんなんだよフード野郎?
テト:やっぱりね⋯なら、敵だぁ~!うらっ!
セシル:くっ!ぐく、なんて、力だ⋯
リリー:セシル!私も加勢するわ!
テト:チッ、くらえ!ウインド!
セシル:ハッ、リリー!避けろ!
リリー:え?うわぁー!!
セシル:リリー!くそ、なんだ今の風の刃は!?
テト:殺してやる⋯
セシル:くそ、スラッシュ!
テト:っ!く、危なかった⋯
セシル:そ、そのフードの下の顔⋯盗賊団!?
リリー:う⋯
セシル:リリー!大丈夫か!?
テト:チッ、生きてたか
リリー:はぁ、はぁ、私は大丈夫、致命傷は避けたから。それより、あれが隊長が言ってた盗賊なの?
セシル:ああ、間違いない。あの尖った耳、緑の髪、そして青い瞳、隊長が言ってた特徴と完全に一致する
リリー:まだ入隊したばかりなのにいきなり遭遇するってどんな奇跡よ
セシル:俺は早く会えて良かったよ
リリー:え?ちょっ、セシル!?
セシル:おいお前!盗賊団の仲間だな?
テト:だれが盗賊団だ!
セシル:国の宝であるマナマテリアルを狙うお前達の事だよ!
テト:ハッ、それはお前らが勝手に呼んでるだけだろ!
セシル:は?どういう事だ
テト:敵のお前らと会話するつもりはない。死ね!
セシル:く!話にならん!
リリー:セシル!応援が来たみたいよ!
テト:チッ、分が悪いか⋯クラウド!
セシル:くっ、リリー!俺の後ろに隠れろ!
リリー:セシル!
セシル:うぅ⋯あれ?痛く⋯ない?
リリー:セシル、あいつが!
セシル:消えた⋯だと?
リリー:はあ、とりあえずセシルが無事で良かったわ
セシル:なんだったんだ⋯あの変な力は?
:間
ドリスコル:なるほど、それがお前達が見たと言う襲撃者の姿か
セシル:はい、隊長が言っていた通りの姿でした
ドリスコル:バラク様、これは⋯
バラク:うむ、間違いなく盗賊団の一味だな。まさかこんな明るいうちから堂々と街に現るとは
ドリスコル:それだけやつらも必死になってきているという事でしょうか?
バラク:⋯かもしれんな。警戒を怠らないように全隊員に告げておいてくれ
リリー:ちょっといいですか?
ドリスコル:うん、なんだ?
リリー:私とセシルが敵と交戦した時に相手が変な力を使ってました。そんな話聞いてませんでしたけど?
バラク:なんと!!
ドリスコル:お前達!それはホントか!?
セシル:はい。賊は最初から変な力を使っていたと思います。細身の身体からは信じられないようなパワーを感じましたし、どこからか風の刃のような物を飛ばしたりしてきました
ドリスコル:バラク様、ついに見つかりましたね
バラク:⋯そのようだな。
リリー:ちょっと待って下さい、私達が戦ったのは普通の賊ではないんですか?
バラク:それは私から説明しよう
バラク:実は、長きに渡って我々を苦しめてきた盗賊団だが、その中に特別な力を持つものがいると言われていたのだ
セシル:特別な力⋯?
バラク:さよう。それはかつて「魔法」と呼ばれていた力で、火を起こし、風を吹かせ、大地をも揺るがしたと言う危険な力と言う話だ。
セシル:そんな力を持つやつが盗賊団に!
バラク:文献によるとそれこそが盗賊団の象徴的存在しか使えない未知の力と書かれていた。
リリー:リーダーみたいなやつなのね
ドリスコル:だから我々がずっと探していたのだ。そいつを捕らえさえすればもう盗賊団も怖くはなかろう
バラク:セシル、お主は父が消えた理由を知りたいであろう?
セシル:っ!⋯はい、どうしても納得がいかないので⋯
ドリスコル:セシル⋯分かるぞ。彼が消えた事は本当に残念だったよ。君の父には私もお世話になったんだ
バラク:文献によるとその特別な力は人の身体を一瞬で消滅させるものもあったという。ジルも恐らくは⋯
セシル:く、父さん⋯
ドリスコル:早まるなよセシル、悔しい気持ちは分かるが必ず生け捕りにするんだ。それが隊の決まりであり王のお言葉だ
バラク:辛い思いをさせるがくれぐれもよろしく頼むぞ
セシル:⋯わかりました
:間
リリー:⋯セシル、大丈夫?
セシル:ああ⋯少し落ち着いたところだ
リリー:でもまさかセシルのお父さんの情報がこんなに早く分かっちゃうなんて
セシル:俺もまだ考えがまとまらないけど⋯あいつが父さんの事を知ってる可能性は多いにある
リリー:また見つかるといいけど⋯
セシル:っ!?
リリー:ん?セシル、どうしたの?固まって⋯
セシル:呼んでる⋯あっちだ!
リリー:ちょっ、セシル!待ちなさいよ!
セシル:はあ、はあ、⋯近い!
リリー:はあ、はあ、ど、どうしたっていうのよ!こんな森まで来ちゃって!
テト:ん?余計なのまで着いて来たか
リリー:あ、あれは!?
セシル:⋯やっぱり、お前だったんだな。どういうつもりだ?
テト:お前らに一つだけ聞きたい事があったんだよ
セシル:奇遇だな。俺もお前には聞く事があるんだよ
リリー:セシル!近づいちゃ駄目、またなんか変な力使ってくるかもしれないから!
テト:うるさいよお前、バインド
リリー:く!な、何!?う、動けない⋯
セシル:リリー!
テト:安心していいよ、ただ動けなくしただけだから。そこで黙っておけば今は殺さないでいてあげる
セシル:分かった。リリー、すまないが従ってくれ
リリー:わ、分かったわよ
テト:じゃあさっさと本題に入るけど⋯ある人物の居場所を探している
セシル:ある人物?誰だ?
テト:お前達と同じ見た目をした種族のジルという人物だ
セシル:っ!!ど、どういう事なんだ⋯?
テト:ん?なんでそんなに驚いてるんだ?
セシル:ジルは⋯俺の父だ
テト:な、なんだって!?お前、ジルの息子なのか!
セシル:あ、ああ、そうだ
リリー:こらー!近すぎ!離れなさ~い、って身体動かないんだった~
テト:お前ならジルの居場所を知ってるんだろ?ジルは今どこに居るんだよ!!
セシル:こいつ⋯ほんとに知らない、のか?
テト:何言ってるんだ?で、どうなんだ!
セシル:⋯消えたんだ
テト:消えた?どういう事だ?
セシル:それはお前の方が知ってるんじゃないのかよ!?
テト:それはどういう⋯
ドリスコル:ハーーッ!!
テト:しまっ!うぐっ!あ⋯
セシル:隊長!?どうしてここに!?
リリー:ぷは!やっと動けるようになった。って隊長さん、まさかつけてたの?
ドリスコル:人聞きが悪いぞ。お前達に盗賊についてもう一度詳しく話を聞くために探してたんだ。そうしてたらお前達が森に向かったと聞いたんでな
セシル:そいつ⋯どうするんですか?
ドリスコル:もちろん生け捕りにして王の前に連れていく。事情を詳しく説明する為にお前達にも立ち会ってもらうぞ
リリー:えー、面倒~
セシル:⋯分かりました
:間
ドリスコル:バラク様、命令の通り連れてまいりました
バラク:こ、この者が、君が言っていた賊なのか?
セシル:はい⋯今は気絶しておりますが、たしかに自分と交戦した賊で間違いありません
リリー:私もこいつにぶっ飛ばされたんで間違いないです
バラク:なるほど⋯よくやったぞ君達。後でしっかりと褒美を送らせてもらう。今日はご苦労だったな、戻って休んでよいぞ
セシル:あ、あの!
バラク:ん?まだ何かあるかな?
セシル:ほんとに⋯こいつは危険な奴なんでしょうか?
ドリスコル:おい!セシルお前、王を疑う気か!?
バラク:⋯仇かも知れない相手に出会って混乱しているのだな。間違いなく盗賊団を率いる危険なやつだ。私を信じてくれ
セシル:そう⋯ですか
ドリスコル:バラク様、この者はいかが致しますか?
バラク:そうだな。とりあえず地下の牢屋にしばらく入れて置いてくれ。その後は私に任せてもらう
ドリスコル:バラク様だけで危なくはないでしょうか?
バラク:そこは心配いらん、文献にこの者の対処の仕方も記されてあったからな
ドリスコル:分かりました、何かあればお手伝い致しますのでなんなりと
バラク:うむ
セシル:⋯
リリー:セシル?
:間
テト:⋯う⋯ここは⋯ハッ!
テト:く!開かない!くそ!出せー!出しやがれー!!
テト:くそ、捕まっちまったのか⋯
テト:ジル⋯どこにいるんだよ⋯
リリー:ちょっと、セシル本気なの?
セシル:あー、だから静かにしていてくれ
テト:ん?あの声は、まさか!?
セシル:お、居たな
リリー:はー、私知らないからねー
テト:お前ら!さっきはよくもやってくれたな!?
リリー:なーんか勘違いしてるようだけど、あれ私達じゃないからね
テト:じゃあ誰がやったって言うんだよ!
セシル:さっきは話の途中ですまなかったな。だが、君達盗賊団と呼ばれてる存在が我々から危険視されているというのも自覚して欲しい
テト:ふん!で、何しに来たんだ?危険だから殺しに来たのか?
セシル:違う、俺は話の続きをしに来たんだ
テト:話の続きだって?
セシル:お前、父さん⋯ジルの事を探していたな?
テト:⋯ああ。それがどうしたんだ
セシル:どうしてだ?お前達の種族がなぜ俺の父さんを探す必要があるんだ?
リリー:あ、それ私も聞きたかったやつ
テト:お前、父親から何も聞いてないのか?
セシル:っ!⋯ああ。
テト:⋯そうか。なら教えてやるよ、なぜ私がジルを探しているか
セシル:⋯
:間
テト:私達はここより北の森の奥深くに住んでいる、精霊人だ。
セシル:精霊人⋯?
テト:森の神を崇め、森と共に生きる者、それが精霊人だ。その中でも私の一族は特別な力を神から授かったエルフ族だ
セシル:精霊人にエルフ族⋯どれも初めて聞く名ばかりだ⋯リリーは?
リリー:いや、私も初耳なんだけど。あ、でもあなたが使ってる力ってまさか
テト:神の奇跡をお借りする力「魔法」だ。
リリー:ふえ~あれ魔法って言うんだ⋯
セシル:その北の森の奥に住んでたエルフ族の君がなんで俺達を襲うんだ?
テト:はー?その言い方だとこっちが攻めてきたみたいに聞こえるんだけど!
セシル:いや、聞こえるも何もその通りだろ?
テト:何を言ってる!元々静かに暮らしていた私達を襲ってさらったのはお前達の方じゃないか!
セシル:え!?
リリー:ちょっと、それどういう事なの?私達があなた達精霊人を襲ったって言うの??
テト:はあ⋯知らなかっとはいえ、君らの国はいったいどうなってるんだよ。ま、ジルはそんな中でも一人だけエルフ族を理解してくれてたけど
セシル:父さんが?
テト:そうだよ。それから、私は君のお父さん、ジルに命を救われたんだ。
:間
バラク:よし。ドリスコル、準備が出来たので例の族を私が引き取るからここへ連れてきてくれ
ドリスコル:は、承知いたしました
:間
ドリスコル:命令とはいえ、あんな子供を⋯
ドリスコル:いや、あれは我々の民を殺してきた危険な存在だ。そう⋯バラク様のお考えが正しいのだ⋯。
ドリスコル:おい、移動だ、起きろ。
ドリスコル:ん⋯ま、まさか!
:間
セシル:はあ、はあ、ちゃんと着いて来てるか?
テト:はあ、はあ、な、なんだよ、この城広すぎないか?
リリー:はあ、はあ、ちょっと、二人とも、私を置いてかないでよ~
セシル:あの、父さんが言ってたって話、本当なんだよなテト?
テト:ああ、ジルは信頼出来るやつだったからな。その息子の君に嘘なんてつかないよ
セシル:(N)テトの話では討伐隊の隊長として森に向かった父さんだったが、元々野蛮で危険な種族と国王から聞かされていた話とは実際は真逆で彼らは穏やかで優しい種族だったそうだ
セシル:(N)命令と目の当たりにした事実とに板挟みに合う中、父さんはまだ幼かったテトを捕らえる振りをして逃がした。そして必ず仲間を救い出して戻ってくると約束をして去っていったと言う話だ
テト:国に私くらいの息子が居るから、って言ってたけどまさか君だったとはね
リリー:え?てことはテトって私達と同い年くらいなの?嘘ー
テト:それは私がチビだって言いたいのかな?
セシル:今は急いでるからふざけるのはまた今度にしてくれる?で、父さんが言ってた話にはまだ続きがあるんだよな?
テト:うん、たしかお城のどこかに秘密の部屋があってそこに捕らえられた仲間達がいるはずだって言ってたんだ
リリー:秘密の部屋って、どこにあるって言うのよ~
セシル:分かりやすい場所なら今頃見つけれてるだろ。あの感じならドリスコル隊長もこの事実を知らなかったみたいだし、きっと王様なら知ってるはずだ
リリー:そうだとして真実を簡単に話してくれるかなー?
セシル:⋯それは、分からないけど
テト:あ!ちょっと待って二人とも!
リリー:え!な、何よ!急いでる時に⋯
テト:感じる⋯
セシル:え?何を感じたんだ?
テト:微かにだけど仲間のオーラを感じるんだ!こっちだ!
セシル:ほんとか!よし行こう!
リリー:あ、ちょっと待なさいって~!私、こんなんばっかりじゃ~ん
:間
テト:あった、ここから感じるよ!
リリー:はあ、はあ、ほ、ほんとなの?何にも無いじゃない?
セシル:いや、待て⋯よく見るとここだけ壁の色が少し変だ、壁の向こうがあるのかもしれない⋯
リリー:はあ?確かに変だけど⋯でもこんな分厚い壁どうにもならないって⋯
テト:⋯いけ、ファイアーアロー!
リリー:ええーー!!うっそ、あの分厚い壁が一瞬で
テト:よし!開いたよセシル!
セシル:わ、分かった、何があるか分からないけど、見つかる前に急ごう!
リリー:⋯あの子は絶対に怒らせないようにしよう
:間
テト:⋯長い通路だね
セシル:⋯どんどん地下に降りてってるようだ
リリー:暗くて気味が悪いんだけどーまだ~?
テト:あ、扉だ⋯
セシル:よし、早く君の仲間を助けてやらないとな、開けるぞ?準備はいいか?
リリー:そんなんいいから暗いし早く開けなって、よいしょっと、ほら、中は明るい⋯ってコレ⋯何なの⋯?
テト:っ!?ど、どういう事なの?
セシル:なんなんだ?この⋯バカでかいクリスタルの塊(かたまり)は⋯?
バラク:やれやれ、この場所が見つかってしまうとはね⋯
セシル:こ、国王様!?国王様、これはいったいなんなんですか!
バラク:あれですか⋯?もうだいたい察しはついてると思ってたんですが。無知な君達に教えてあげよう
リリー:はー?なんなのよ!
バラク:あれが、マナマテリアルだよ
セシル:え!こ、これが⋯マナマテリアル⋯?ちょっと待って下さい、ここには、テトの仲間達が居るはずじゃ!?
テト:セシル⋯感じるんだ⋯
セシル:テト!どういう事だ!仲間達はどこだ!?
テト:あの⋯クリスタルの中から仲間や⋯私のお母さんのオーラを感じるんだ!!
リリー:あれがテトの仲間達っていったいどうなってるのよ!
バラク:まだ分からんのかね?そこにいる精霊人を使って作ったエネルギー装置だよ
テト:っ!?
セシル:嘘⋯でしょ⋯?だって、これは国の宝で、人が住む事が出来なかったこの土地を変えたすべてのエネルギーの源で⋯
バラク:そうだ、火を灯し、光を生み、我々が生きていく為に必要な全てのエネルギーを生み出している無くてはならない装置だ
テト:あんたが⋯あんたが皆を殺した張本人かー!この悪魔め!
セシル:テト!く、知らなかったとはいえ、俺は今までなんてのうのうと生きてたんだ⋯
バラク:悪魔とは心外ですねー。私は国の為に、国民全員を守る為にやっている事なんですよ
リリー:だからって⋯テト達が犠牲になっていい事にはならないでしょ!
バラク:それはあなた個人の浅はかな考えであり国を任された私から言わすと必要な犠牲と言うやつです
セシル:何が、何が必要な犠牲なんですか!静かに平和に暮らしていた彼らの命を奪っておいて!
テト:なんで、私達だったの⋯?私達が何をしたっていうの?
バラク:あー、それは簡単ですよ。君達精霊人には特別な力が身体に流れていたからです。エネルギーの源になる、マナがね
リリー:マナ⋯それがねらいだったと言うわけね?
バラク:そうです、いやー良かったですよ。そろそろこのマナマテリアル装置のマナが足りなくなって来てたのでエルフ族のあなたが来てくれて
セシル:エルフ族⋯特別な力⋯まさか!
バラク:そう、精霊人の中でもとくにこちらのエルフ族は膨大な量のマナを身体の中に保有してるんですよ
テト:それで私達エルフ族の事を狙ってたのか⋯
バラク:とっても助かりましたよー。とくにあなたのお母様には感謝しないといけません
テト:き、きさまー!
バラク:ドリスコル
ドリスコル:は、むん!!
テト:く、なんだお前は!
ドリスコル:覚えて無いだろうが会うのは二回目だ。
セシル:た、隊長!?
リリー:あっちゃーやばい人に見つかっちゃったじゃん
バラク:ドリスコル、君も先程の話は聞いていたね?
ドリスコル:⋯はい。少々驚きましたが
バラク:なら、どうするかは分かってるね?
ドリスコル:⋯さあ、そいつをこちらに渡すんだ
セシル:隊長!?さっき俺達と一緒で真実を知ったんですよね!
ドリスコル:⋯ああそうだ
セシル:ならどうして、まだテトを狙おうとするんですか!?
リリー:そうよ!こんな酷い話ないじゃない!
ドリスコル:お前達は、分かってない⋯いいからそこをどくんだ
テト:捕まってやらないよ!ファイアーアロー!
セシル:ま、待てテト!
ドリスコル:ふぅっ!!
リリー:嘘⋯あの壁を破壊した炎を防いだの!?
ドリスコル:なるほど⋯
バラク:討伐隊に支給されている鎧は全部マナマテリアルから作ってるから魔法は効かないよ
テト:く、仲間を、仲間達をなんだと思ってるんだ!
ドリスコル:セシル、退かないとお前ごと叩き潰さないといけなくなるぞ
セシル:どうして⋯父さんの部下だったあなたがそんなに非道になれるんですか!
ドリスコル:ジルか⋯あいつはほんとに良い先輩だったよ。討伐隊の中でも憧れだったよ
セシル:ならなんで⋯
ドリスコル:誰よりも腕が立ち、誰よりも勇敢だった、しかし同時に甘い男だった
セシル:え⋯まさか⋯
ドリスコル:ああ、王の命令で君の父を殺したのは⋯私だ
リリー:嘘⋯そんなのって⋯
セシル:なぜ、なぜ父さんを殺したんだ!?
ドリスコル:それが私の任務だった、ただそれだけだ。私は国の事を誰よりも考えてるバラク様を信じている
バラク:いやー、私も君のお父さんを殺さないといけなくなったのは残念だったんだよ
セシル:何を白々しい事を⋯
バラク:なぜなら討伐隊の中でも一番腕が立ったからね。残念だよ⋯マナマテリアルの秘密を知ってしまったんだからね
セシル:そうか、父さんはこの事実を知ってて言わなかったのか⋯俺を巻き込まない為に!
バラク:まさかまた事実を知ったのがジルの息子とはね⋯偶然とはいえ、びっくりしたよ。ドリスコル、終わりにしてあげろ
ドリスコル:了解しました。セシル、悪く思うなよ、これも国の為だ
リリー:も、もう私達ここで終わりなの~?
テト:っ!呼んでる⋯
セシル:テ、テト⋯?
テト:そこに、そこにいるんだね、お母さん!
ドリスコル:ふん、今更何をしても無駄だ
テト:うん⋯分かったよお母さん、力を借りるよ⋯
ドリスコル:させんぞ⋯っ!お前ら、なんのつもりだ?
セシル:ここは通さないぜ隊長
リリー:テトの邪魔はさせないんだから!
セシル:行くぞ、リリー!
リリー:まっかせてー!
ドリスコル:⋯来い
セシル:スラッシュアタック!!
リリー:バックスタブ!!
ドリスコル:ふんっ!甘いわ!
セシル:く!なんて力だ⋯
リリー:駄目!まったく効いてないわ!
セシル:諦めるな!テトの時間を稼ぐんだ!
リリー:わ、分かってる!もう当たって砕けろよ~!
ドリスコル:その諦めの悪さはあいつも同じだったな⋯親子揃ってあの世に送ってやるわ!
テト:⋯よし!いけるよ!二人ともそこから離れて!
セシル:っ!リリー!
リリー:ラジャー!
ドリスコル:な、なんだあの光は!?
テト:お母さん、さよなら。フレアバーストー!!
バラク:マナマテリアルに、ヒビが!?
ドリスコル:ぐ、ぐおお~~~!!
:間
リリー:や、やったの⋯?
セシル:終わったみたいだ⋯マナマテリアルも粉々だ
テト:⋯ありがとう、お母さん、仲間達⋯
バラク:は、はは⋯お、終わりだ⋯何もかも終わりだ⋯
ドリスコル:バ、バラク様⋯お前達⋯いずれ後悔する時がくる⋯ぞ⋯
:間
テト:ありがとう⋯セシル、リリー。これで今まで死んでいったみんなが救われるよ⋯
リリー:うん⋯そう、だね。
セシル:どうしたんだ、リリー?
リリー:うん⋯。これで、良かったのかなって⋯。
セシル:⋯それは、分からない。王様やドリスコルの話を聞いて、正義がなんなのか、自分でも分からなくなってる⋯。でも、誰かの犠牲の上に成り立ってる平和なんて、けして許しちゃいけないと思うんだ。⋯そうだよね、父さん。
∶おわり