台本概要

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タイトル 薄暮に暮れなずむ
作者名 雪見印  (@Ippann_Listener)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男1、女2、不問1)
時間 50 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 何の変哲も無い街で起こる不可解な事件。それは一夏の思い出。
紫陽花さん企画「声劇台本発掘企画」に投稿させていただいた作品になります。

投稿の関係上4人台本とさせていただいておりますが、兼ね役ありで3人で行っていただいても問題ありません。
演出の関係上文字化けしている箇所がございますが、翻訳したシナリオもあります。
ご入り用の方はご連絡ください。
ご連絡は不要ですが、告知やご感想等頂けると死ぬほど喜びます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
千春 127 主人公の高校生。 夏休みに事件に巻き込まれていく。
128 千春の親友。 自称平凡な高校生。
ジン 122 ちょっと怪しめのお兄さん。 尚、社畜。
不問 26 ニュース読む人だったり文字化けだったり。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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?:「こんにちは。お昼のニュースです。本日、薄暮市にて解体作業員が全員行方不明になる事件が…」 楓:「ねーねー夏休みの自由研究どうしよ~」 千春:「薄暮市に関することだったらなんでもいいらしいけど…」 楓:「高校生になって自由研究っていうのもウチの学校も変わってるよね~」 千春:「んー定番と言えば街の歴史…とか?」 楓:「真面目だねぇ…私ならグルメマップとかにしちゃうかな~」 千春:「相変わらず食べる事に目が無いね。」 楓:「そりゃあ育ち盛りですから?」 千春:「それ、中学生の時も言ってなかった?」 楓:「あちゃ~ばれちゃった?」 :(笑い合う二人) :-ジン、電話をかける ジン:「あ、もしもし俺です。そうです。例の場所です。様子ですか?見た感じ作業服の切れ端と血痕がありますね。」 ジン:「あー、後やたらと血なまぐさいです。」 :-ジンの目の前には人間の腕が転がっている ジン:「ん?これは...あ、そうです、そうです。マズいですね。コレ。」 ジン:「え?至急退避ですか?ですよねー。はーい。じゃあすぐに戻りまーす。」 :-ジン、電話を切る ジン:「なんなんだこれ...ったく面倒臭いことしてくれたな。」 千春: 現在・過去・未来が交差すると言われる街、薄暮市。うだるような暑さの7月下旬。この物語は始まった。 楓:「んー、とりあえず明日は図書館行ってみる?」 :-千春、ため息をつきながら 千春:「どうせ漫画読みたいだけでしょ?宿題もちゃんとしなきゃだめだよ?」 楓:「うっ。鋭い。痛いことつかれた。」 千春:「(ため息)...でも私も家だと集中できないしな~、ちょうどいいかも。いこっか。」 楓:「やったー!じゃあ明日10時に集合ね!」 :-同時刻、某所にて ジン:「...以上の点から社が解体されたことによって鬼門が解放され、怪異が出入りしていると考えられます。」 ジン:「またこの土地固有の怪異である「鬼」の活性化しており、今後このような事件が増える可能性が予測できます。」 ジン:「特に警戒すべき地点は...」 :-数時間後、図書館にて 千春:「うーん...自由研究のテーマって言っても図書館ってどの資料見たら良いかわかんないよ。ね?」 :-楓、独り言のように呟きながら 楓:「...これにも載ってない。さっきのやつにも載ってなかったし...どこにあるんだろ。」 千春:「珍しく真剣だね。どうしたの?」 楓:「うわ。びっくりした~。」 千春:「ごめん。驚かせちゃって...それって新聞?」 楓:「そう。見た?昨日ニュースでやってたやつ。」 千春:「えーっと。あ。作業してた人が全員いなくなっちゃったやつ?」 楓:「そうそう。どーしてもその神社のこと気になっちゃってさ。」 千春:「そもそもそんな所に神社あったんだ~って感じだよね。」 楓:「あ~。やっぱそこからだよね~。」 千春:「...そもそもなんで壊しちゃったのかな?」 楓:「元々管理してた人が亡くなって管理できる人がいなくなったらしいよ。」 千春:「ふーん。...壊しちゃったから神様が怒った...とか...かな?」 楓:「千春って神様とか信じるタイプ?」 千春:「一...応?」 楓:「まぁ...そんなもんだよね。」 :-同時刻某所にて ジン:「で、俺に渡す物って何ですか?え、これって...え?これ俺が借りて良いんですか?」 ジン:「も~ダメですよ。こんなちゃらんぽらんに~冗談はちゃんと休んでからにしてくだ...」 ジン:「え?お前しか扱えないって?...おだてても何もでな...も~しょうがないですね~。」 ジン:「...任せてください。期待には応えてみせます。」 :-数時間後、図書館にて 楓:「あ~すっかり暗くなっちゃたね~。」 千春:「結局、テーマ決まらなかったんだけど...」 楓:「いいじゃん。いいじゃん。今日の分の宿題は終わったし。」 千春:「そうだけど...私はそのポジティブさがうらやましいよ。」 楓:「そう?それより明日どうする?またここで勉強する?」 千春:「夏休みだからどこかに行きたいけど...宿題終わるまでは勉強かな。」 楓:「え?マジ?きっつ~」 千春:「大丈夫だって。夏祭りまでに頑張って進めちゃお。私たちならできるよ。」 楓:「それなら頑張りますか~...あ。」 千春:「どうしたの?」 楓:「お祭りにしてみる?自由研究。」 千春:「...ナイスアイデア。じゃあ早速調べ...」 :-椅子を引きながら 楓:「千春。もう閉館時間だよ。帰ろ。」 千春:「え...あ、ほんとだ。」 楓:薄暮、日没後の黄昏時を指す言葉。 楓:古くからこのような時間帯には妖怪や幽霊に会うと言われている。 楓:そんな言葉が付けられたこの街は、昔から事件や災害が絶えなかったらしい。 楓:きっと、昔の人はみんな人では無い何かのせいにしていたのだろう。 千春:「夏だからって油断した...明日はもうちょっと早く帰ろ。」 千春:沈んだ夕日が照らす中、一人家に向かっていた。 ?:「縺翫>縲√↓繧薙£繧薙′縺?◆縺。」 千春:「?...何か声が聞こえる?」 千春:数メートル離れた茂みの影から聞こえた気がした。 :-「?」は驚いた様子 ?:「縺ー縺!縺昴s縺ェ縺ォ縺。縺九▼縺?◆繧峨?繧後k縺?繧!」 千春:「...何あれ。」 千春:目の前にいたのは明らかに人間ではなかった。手足はまるで木の枝のように細いのに腹部は異常に膨れていた。 千春:額には角...だろうか何かしらが二本生えていた。 千春:いつの間にかもう一匹後ろから出てきた。 :-「?」達は何かを相談している ?:「縺、縺ー繧後◆。」 ?:「縺ェ繧、縺薙m縺吶@縺九↑縺?↑。」 千春:何かを話していたと思ったら、二匹(?)の何かは私に向かってきた。しかし何故か足は動かなかった。 千春:そういえば人間や動物は恐怖を感じると体が動かなくなるとどこかで聞いたことがある。 千春:あ、死ぬんだな。直感的にそう思った。 ジン:「こちらジン。二匹発見しました。至急討伐します。」 千春:誰かの声が聞こえた瞬間、自分の下に影ができた。 千春:何だろうと思い自分の前を見てみたら二匹の何かは真っ二つになっていた。 千春:目の前には自分より背の高い人物が立っていた。...が、フードをかぶっているせいで顔はよく分からなかった。 ジン:「民間人一名保護しました。はい。了解です。」 千春:声から男性だとは分かったが、彼が手に持っている物は日本刀だろうか。しかしその刃は血に染まってはいなかった。 ジン:「ふー。危なかったねー。怪我してない?大丈夫?」 千春:「えっと...その...あの...」 ジン:「あ。お兄さんの自己紹介まだだったでしょ。ごめんね。」 千春:「え...あっ、はい。」 ジン:「俺の名前はジン。よろしく。」 :-ジン、千春を見つめながら ジン:「怪我は...無いみたいだね。とりあえず良かった。」 千春:「あの...その...ありがとうございまし...た?」 ジン:「いや~それにしても危なかったね~。危機一髪って感じ?」 ジン:「俺も久々に冷や汗かいたよ。」 千春:「あ...あの...そのさっきのヤツって何ですか?」 ジン:「あーアイツね。んー、説明しろって言われると難しいな。」 ジン:「良くないモノの集合体?みたいな?とりあえず人間には悪いものかな。」 :-千春、よくわかっていなさそうに 千春:「そうなんですか...」 ジン:「どう?もう暗いけど。家まで帰れそう?良かったらお兄さんが送っていこうか?」 千春:「だだだ大丈夫です!!!!すぐそばに見えてるので!!!!!」 ジン:「あーそこのマンションね。そこなら大丈夫そうだね。」 千春:「はい!ありがとうございました!」 :-数秒おいて呟くように ジン:「一般人にも見えるようになったのか...マズいな。」 ジン:人と人ならざる者。その境界線は明確に分かれている。そして決して交わることはない。 ジン:その境界線が曖昧になってしまった時、果たして世界はどうなってしまうのだろうか。 ジン:答えはまだ誰も知らなかった。 :-翌日、図書館にて 千春:昨晩の光景が頭から離れなかった。 千春:きっと非現実過ぎる体験をしたせいだろう。 千春:きっと信じてくれないだろうと思うと、誰にも話すことはできなかった。 千春:そのせいだろうか。夜もよく眠れず、頭がぼんやりしていた。 楓:「...はる?千春ー?大丈夫?」 千春:「あっ。ごめん。何か言った?」 楓:「ひょっとして寝不足?今日は休んだ方がいいんじゃ...」 千春:「最近、蒸し暑いじゃん?中々眠れなくてさ~。あはは~。」 楓:「そう?なら良いんだけど...」 千春:「えっと...どこだっけ?」 楓:「ここの問題なんだけど...分かる?」 千春:「あ~そこね。それならこの公式が...」 :-同時刻、某所にて ジン:「そうですね。ここ数日、『鬼』の出現が頻発しています。」 ジン:「はい。順次対処しておりますのでご心配なく。」 ジン:「それより懸念すべきは『鬼』を視認できる者が増えていることです。」 ジン:「これ以上、街に増えれば...この街の均衡が崩れるかもしれません。」 :-数時間後、図書館にて 楓:「...千春最近何かあった?」 千春:「え?何もないよ?」 楓:「むむむ...怪しいな。さては...こ」 千春:「も~何もないって。それより何か見つかった?」 楓:「んーどうかな...あ、これ良いんじゃない?」 千春:「薄暮市...歴史資料集?」 楓:「重いから借りてくのは難しいけど何かあるかもしれないよ?」 千春:記録、薄暮市の祭りについて。通称「神降ろし祭り」。薄暮市の守り神に感謝を表すために始まったもの。 千春:この日は誰も彼もが夜通し踊り明かし、あちこちに屋台が立ち並び、町は賑わう。 千春:資料によると最古の記録は300年前まで遡るらしい。 千春:しかし、それ以上の詳しい記録は分からなかった。 :-同時刻、某所にて ジン:「なるほど...先日壊された社がその守り神の社だったってことですね?」 ジン:「変わった場所にあると思ったら...そんな事が...」 ジン:「これって...俺らでどうにかしなきゃいけないやつですよねー。」 ジン:「...うわー!めんどくせー!やりたくないー!」 :-数時間後、町外れにて ?:「縺翫∪縺...縺ォ繧薙£繧薙§繧?↑縺?↑?」 楓:「...なんだお前。気安く話かけてくるとは礼儀知らずだな。」 ?:「縺ェ縺、縺ォ繧薙£繧薙↓縺九◆縺?l縺吶k繧薙□?」 楓:「それは違うからだ。人間の負の感情しか知らないお前達とはな。」 ?:「縺翫∪縺医?縺ゅo繧後□縺ェ。」 楓:「...は?」 ?:「縺ォ繧薙£繧薙↓縺吶″縺九▲縺ヲ縺ォ繧翫h縺?&繧、縺昴?縺?∴縺吶※繧峨l繧九→縺ッ。」 楓:「黙れ。お前の勝手な考えで私のことを決めつけるな。」 ?:「縺九o縺?◎縺?↓...」 楓:「消えろ。時間の無駄だ。お前の相手をしている暇は無い。」 :-楓、手を叩く。 ?:「縺九i縺?縺...縺阪∴縺ヲ縺?¥!?」 :-「?」は消えてしまう 楓:「身の程知らずが...」 :-数日後、某所にて ジン:「なんですか~?朝っぱらから呼び出し...」 ジン:「え?最近変な反応が見られるから調査してこい...ですか。」 ジン:「んー...あーこの辺りですか。住宅街ですか。場所が悪いですね。はぁ...すぐ向かいます。」 ジン:「え?せめてシャワーは浴びてけ?」 ジン:「うぃーっす。」 :-とある喫茶店にて 千春:「蔵書の入れ替えで数日お休みかぁ...」 楓:「ちょっとした息抜きには良いじゃん。たまにはゆっくりしようよ。」 千春:「あのね...それにしても、よくこんなお店知ってたね。」 楓:「んー。マスターとは小さい頃からのつきあい?みたいな。」 千春:「へーそんなことが...」 楓:「そうだ!マスターはこの街のこと詳しいから色々聞いてみたら?」 :-数時間後、某所にて ジン:「あー。反応はすれど見当たらず...ってか」 ジン:「多分発生源の『力』が強すぎるやつだよなぁ...はぁ...」 ジン:「それにしてもこんな炎天下の中歩いても収穫ゼロとか...死ぬ。干からびる。」 :-ジン、何かを見つける ジン:「お...ここか...」 :ー喫茶店のドアが開く ジン:「マスター。アイスコーヒー1つ。あ、ブラックで。はい。お願いします。」 ジン:「お嬢さん、隣失礼しますよ。」 楓:「どうぞ。」 ジン:「あ、すみません。ありがとうございます。」 :-ジン、水を飲む。 ジン:「ふー。今日は1人?」 楓:「いえ。友達と来ました。」 ジン:「こんな平日に?さてはサボ...」 楓:「いえ、夏休みです。」 :-ジン、カレンダーを見つける ジン:「あー。そっか。」 :-数秒の沈黙 ジン:「そうだ、ちょっと君に聞きたいことがあるんだけど...いいかな?」 楓:「何ですか?答えられる範囲でなら良いですよ。」 ジン:「それでは単刀直入に聞こうか。...君は何者だ。答えろ。」 楓:「何者って...やだなー、ただの女子高校生ですよ?見て分かりませんか?」 ジン:「いーや。違うね。君からは『力』が見える。隠しても無駄だ。」 楓:「...あー。貴方『見える』人ですか。めんどくさいですね。」 ジン:「しかも君の『力』、かなり変わっているな。どこで身につけた。そもそも君は人間か?」 楓:「あらあら。狐か狸だと思われてます?私。」 ジン:「違うな。君はそんなにかわいいものじゃない。もっと強力な『何か』だ。」 楓:「はぁ...『見た』だけでそこまでバレます?変態じゃないですか?」 ジン:「ふざけるのはやめておけ。俺の目はごまかせない。知ってることがあったら吐くんだな。」 楓:「吐くものなんてありませんよ~。あ。さっき食べたお昼ご飯か。」 ジン:「じゃあ...質問を変えよう。最近おかしな事件が起こり始めたのも君の仕業かな?」 楓:「え?」 ジン:「人々が毎日、何者かに襲われている。それは君が元凶かな?」 楓:「は?」 ジン:「数日前、とある社を解体していた作業員が全員死んでいた。お前が殺ったのか。」 楓:「...」 ジン:「俺が調査してる時にさ、腕が目の前に落ちてたんだよ。薬指にはめてるやつ。あーあ可哀想に。」 楓:「...黙れ。それ以上喋るな。」 ジン:「...っ。」 楓:「私はアイツらとは違う。そんなことも分からんのかこの唐変木。」 楓:「今この場で、礼儀というものを叩き込んでやっても良いんだぞ?...小童。」 :-数秒間の沈黙 ジン:「お~怖い怖い。ならお兄さんはさっさと退散しますかね。は~くわばら、くわばら。」 :-ジン、席を離れる 千春:「ごめーん!待たせちゃった?」 楓:「ううん。そんなことないよ~。それよりさー、午後買い物行かない?」 千春:「...まだ今日の分終わってないからダーメ。」 楓:「え~?勉強道具だってば~、ね?ちょっとならいいでしょ?」 :-千春、楓退店 ジン:「あの子...前に見た子だな。あの二人、どういう関係なんだ...?」 ジン:「とりあえず...報告が先か。」 :-ジン、電話をかける ジン:「あ、お疲れ様です。ジンです。はい。対象区域の調査終わりました。」 ジン:「...あ、そうなんですよ~俺だけじゃ無理です。え?いやいや。いつもとは訳が違いますって。」 ジン:「あっ、俺の式神ですか?全滅です。全滅。」 ジン:「も~やばいですよね~。補充に何日かかるか分かりま...ですよねー。はい。」 ジン:「レイさんにまた怒られるな~。やだな~。あの人怖いんだよな~。」 ジン:「あ、そうだ。話は変わるんですけど、ちょっと調べてほしい事があって...はい。お願いします。」 :-数日後 ジン:「調査お願いしてたやつですか?ありがとうございます。」 ジン:「ほー。柱井楓(はしらい かえで)...年齢16歳。薄暮市立東(ひがし)高校1年3組在籍。」 ジン:「両親共に市内の企業勤め、現住所は...はーん。ここね。」 ジン:(人間に化けてるタイプかと思ったらアテが外れたな...それならあの『力』は血筋によるものか?) ジン:(だとしてもアレは桁違い過ぎる...憑きものの類いか?なら意思疎通ができていたことはどう説明する?) ジン:「なるほど...全く分からん。」 :-同時刻、郷土史資料館 千春:「小学生以来だな~ここに来るの。」 楓:「社会科見学...だっけ?確か。」 千春:「そうそう。あの時は自分が見たいものじっくり見れなかったんだよね~。」 楓:「千春、調べ物とかほんとに好きだよね。私は絶対に無理だわ。」 千春:「つい夢中になっちゃうんだよね~。えへへ。」 楓:記録、薄暮市の起源について。 楓:薄暮市の元となる町が確認されたのは約500年前の文献からである。 楓:宿場町として賑わっていたが、数百年前の大火で町の7割が焼け野原になり、それ以前の記録はほとんど消失している。 千春:「それにしてももったいないよね~。資料がほとんど残ってないなんて。」 楓:「ねー。そしてここのケースが奇跡的に助かった資料の一部...」 千春:「でも...半分くらい焦げてる。」 楓:「水がかかったせいで文字も滲んでるし...コレじゃ読めないね。」 千春:「火事の原因は未だ不明...冬場での火の不始末が原因とされている...か。」 楓:「ふーん...ねぇ千春、この地図見てよ。」 千春:「これって...焼け残った場所?」 楓:「そう。北の地区はほとんど燃えなかったみたい。」 千春:「そもそも北は他より土地の高さが高いからって事...か。」 千春:「それと...ここは?何があったっけ?」 楓:「ほら、ニュースでやってた神社の辺。あそこも残ってる。」 千春:「へー。文献から風向きの影響と考えられる...なるほど。」 :-同時刻、某所にて ジン:「はい。神社に保存されていた物品は、担当の者が全て回収しております。」 ジン:「御神体が残っていますので神社に祭られていた『神』はまだこの地に存在していると思われます。」 ジン:「...はい。ですがその信仰が廃れてる以上、力を失っているでしょう。」 ジン:「最悪の場合、忘れられた恨みや悲しみで人間を襲う存在になっている可能性もあります。」 ジン:「信仰している人間が多いほど『神』は力を増します。ですがその逆も然りです。」 ジン:「伝承や記録が無い以上、ひょっとしたら社が壊される前から...ギリギリだったかもしれませんね。」 :-千春、楓帰り道にて 千春:「自由研究、順調に進みそうだね。」 楓:「千春のおかげだよ~ありがとね!」 千春:「それはさておき、明日からまた図書館が開きますね?」 楓:「と...言うことは...」 千春:「残ってる数学と英語の課題、終わらせよっか!」 楓:「ですよねぇ...きついな~。」 :-数時間後、某所にて ジン:「で、コレが例の神社に保管されてた物品ですか。」 ジン:「祭具に、参拝者の名前が記帳されたノート...で、御神体の鏡っと。」 ジン:「まぁ、こんなもんだよな。...んでこっちが神社の記録ですか~っと。」 ジン:「50年前に改修工事をした時の記録に、出資した人と請け負った会社の名前...」 ジン:「あとは月々のお賽銭の金額...これ途中から書かれてねぇな。」 ジン:「...ん?こっちは...なんだ?...あー。俺、古文書とか読ねぇからなぁ...わかる人に頼むしかねぇか...」 ジン:「この鏡なんか彫ってあるな...何々?」 ジン:「これは...」 ?:「おはようございます。朝のニュースです。」 ?:「はじめに、薄暮市で発生している連続失踪事件についてです。」 千春:夏休み中盤、薄暮市では奇妙な事件が続いていた。 千春:誰も彼もがある日突然姿を消してしまうという事件だった。 千春:「それにしても怖いよねー。そっちは平気?」 楓:「うーん。外に出られない分ちょっとしんどいかも...」 千春:「あー。わかるー。」 千春:事件が収まるまで外出は控えろと親に言われ、1週間ほど経つ。 千春:どうやら楓の家も同じらしく、通話アプリを使いながらお互い勉強をしていた。 ?:「未だ手がかりが掴めていない本事件ですが...」 楓:「千春も気を付けなよ。同じ部屋にいたのに振り向いたらいなかった...って事もあるらしいからさ。」 千春:「またまた~ただの噂でしょ?」 千春:連続失踪事件、人々は『神隠し』と呼んだ。 楓:「今年はお祭りも無理そうだね~。楽しみにしてたんだけど、まぁしょうが無いか。」 千春:「そうだよね。残念だな~。」 :-同時刻、某所 ジン:「つまり、今起こっている『神隠し』は『鬼』の仕業って事ですか。」 ジン:「そして『鬼』は相手を食らうことでその能力を身につける...か」 ジン:「まだ完璧に人間を取り込めたヤツはいないにしろ...コレはマズくないですかね...」 ジン:「とりあえず俺は目につくヤツを切ってけば良いんですよね。」 ジン:「それと...先日の件ですが...」 :-半日後 楓:「今日の分おわった~!」 千春:「あと3日くらいでなんとか終わりそうだね。」 楓:「私、生まれて初めて最終日前に宿題終わるかも。」 楓:「ありがたや~神様仏様千春様~」 千春:「も~。」 千春:こうして今日の勉強会は終わった。 千春:「さてと、これからなにしようかな。」 ?:「こんにちはー。集金ですー。」 千春:「...そういや今日って集金の日だったっけ。」 千春:「はーい。」 :-同時刻、楓視点 ?:「繧医≧...やく...縺ソ縺、縺代◆...」 楓:「...。」 ?:「縺薙→縺ー縺ィ縺ッ...むず...縺九@...な。」 楓:「お前...まさか。」 楓:「今すぐ私の前から消えろ。消えなければ殺す。」 ?:「そう...縺九▲縺九☆繧九↑...よ」 ?:「おれは...縺翫∪、えとはな、縺励′、したい、繧薙□。」 楓:「...」 ?:「縺ォ繧..げんって...う...うまいな...それに」 ?:「おもしろい...縺溘∋...られ...だな。」 ?:「『痛い』って『助けて』って、俺、覚えたんだ。どんな意味なんだ?教えてくれよ。」 楓:「死ね。」 :-?、体が徐々に消えていく ?:「むな...縺励>縺ェ。か...縺ソ縺輔∪、ってのも...」 :?、完全に消える。 楓:「ふー。私もそろそろ限界かな。」 楓:「あーあ。この街好きだったんだけどなぁ...」 :-千春宅にて 千春:「すみません。お待たせしま...」 千春:「え...?」 :-ジン、息を切らしながら ジン:「やぁ...お嬢さん久しぶりだね。」 千春:「ど...どうも...」 千春:少し前、親から預かっていた封筒を集金の人に渡そうと玄関のドアを開けた。 千春:しかしそこにいたのはいつもの人では無かった。 千春:それはあの時見てしまった『何か』だった。 千春:『何か』は大きな口を開け、私に飛びかかってきた... 千春:死ぬ。そう思った。...そう思ったのだが 千春:『何か』は真っ二つにされて玄関先に転がっていた。 千春:「ヒッ...」 ジン:「あー。後片付けはしとくから心配しないで。」 千春:「え...あっ、はい。」 千春:『ジン』と以前名乗っていた人物はあの時とは違い、全身が真っ赤に染まっていた。 ジン:「あ、これ貼っといてね。後、ご家族さんが帰ってくるまで開けちゃダメだよ。」 千春:「あの...これは...」 ジン:「虫除けだよ。人間は触っても問題ないヤツだから扉に貼っといて鍵かけてね。」 千春:そう言って彼は夕日が照らす街へと消えていった。 :-ジン、通話しながら ジン:「聞いてた数よりだいぶ多いんですけど!?どうなってるんですかコレ!」 ジン:「こんなん『神様』見つけるよりも前に俺が死にますって!」 ジン:「え!?廃神社の方に反応が!?しかもデカいヤツ!?」 ジン:「一番近いのが俺ですか...あー。了解。すぐに向かいます。」 :-千春、自宅にて 千春:「...そうだ!楓にもこの状況知らせなきゃ!」 千春:「えっと...番号は...あった!」 :-千春、電話をかける 千春:「お願い...出て...」 ?:「この電話番号は、電源が入っていないか」 千春:「うそ...」 ?:「電波の届かない場所にあるため」 ?:「繋がりません。」 千春:「楓...」 :-某所、楓視点 楓:「思えば、長いようで短かったなぁ。」 楓:「形あるものはいずれ滅び、形無きものは忘れられる。」 楓:「今思えばこんな当たり前の事も、あの時は全然考えて無かったしなー。」 楓:「はー!私ってほんとバカ!」 楓:「もー、若気の至りってヤツ?めっちゃ恥ずかしいんだけどー!」 :-ジン、廃神社に到着 ジン:「ようやく見つけた。」 ジン:「まさかとは思ってたんだけどね。君が...」 楓:「お。流石にバレちゃいましたか。」 楓:「そう。私がこの街を守る『神様』なんだよね。」 ジン:「...」 楓:「隠してたのは謝るよ。ごめんね。」 楓:「私さー今時JKの生活ってやつ?してみたかったんだよねー。」 楓:「プリクラ撮って、タピオカ飲んでさー。放課後にちょっと寄り道する的な?」 楓:「まぁ...今こんな状況だけど。」 :-ジン、言いにくそうに ジン:「君には悪いんだが...神社の記録を見させてもらった。」 楓:「...そっか。壊されたときに一緒に処分されたかと思ってたんだけどね。残ってたんだ。」 ジン:「『人』を『柱』として見立てる...か。君の時代の人は何を考えていたんだ?」 楓:「しょうが無いよ。信じる者達が多いほど力を増すのはアイツらも...そして神も一緒。 楓:「世の中そういう決まりにできてるんだ。」 楓:「それに、自分たちのために犠牲になってくれた。...その事実が大事だったんだよ。」 ジン:「それで人々の信仰を集めようと?」 楓:「しょうがないよ。昔は今と違ってアイツらと私たちとの世界が近かったんだ。」 楓:「それを分けるために私は『柱』になった。要するに塀の役割と一緒。」 ジン:「だとしても、君みたいな...!」 楓:「未来ある若者にって?...一応見返りはあったんだよ。」 ジン:「見返り?」 楓:「そう。妹の病気を治して貰ったの。」 楓:「妹は私よりずっといい子だった。頭も良いし、可愛いし。私が命をかけるには十分だった。」 ジン:「...」 楓:「そりゃあ両親は反対したよ?だけど...子どもを二人も育てる余裕は...家には無かった。」 楓:「それに...」 千春:「楓!!」 楓:「え?」 ジン:「君、どうしてここに!?」 千春:「楓...嘘だよね?楓が神様だって...」 楓:「あちゃー。聞かれてましたか。」 楓:「ほんとだよ。私はこの街を守る神様。」 千春:「『神隠し』って楓が起こしてるの?」 楓:「違うよ。アレは...千春にも見えてるアイツらのせい。」 千春:「どうして私には変なのが見えるの?」 楓:「見えてるのは千春だけじゃないよ。でも千春は見えやすい体質なのかもね。」 千春:「何で...」 楓:「原因としては二つかな。一つ。それぞれの世界が近づきすぎていること。」 楓:「コレは私の社が壊されたことが原因だから直せば元通りになるよ。」 楓:「そして二つ目。千春はね、私の妹の子孫なんだ。」 千春:「え?」 ジン:「え!?」 楓:「血縁者から神が出てるんだ。不思議なことの一つや二つ起こってもおかしくないよ。」 千春:「そんな理由で...」 楓:「そう。そんな理由で友人兼大事な血縁者を巻き込んじゃったからなぁ...」 楓:「私がなんとかしないとね。」 千春:「待って...どうする気...?」 ジン:「彼女なりの考えがあるんだろう。それにかけるしか無い。」 楓:「千春、今まで騙しててごめんね。」 楓:「千春はさ...こんな私でも...神様でも信じてくれる?」 千春:「私は...」 千春:記録、『神隠し』事件のその後。 千春:薄暮市の守り神『柱井楓』の力により平和を取り戻した。 千春:彼女を『信じる者』が現れた結果、神としての力を少し取り戻せたらしい。 千春:事を終えた後、人間としての彼女の記録はこの街から消えてしまった。 千春:そうした方が都合が良いとのことだ。 千春:私以外が例え彼女の事を忘れてしまったとしても 千春:私はきっと... ジン:「なぁ...聞いていいか?」 楓:「いいよ。」 ジン:「『神』になったこと後悔してないか?」 楓:「後悔...どうだろ。きっとならなくてもしたと思うよ。」 ジン:「その...痛かったり苦しかったりしたのか?」 楓:「全然そんなこと無かったよ。気がついたらこうなってたし。」 楓:「でもさ。今の私が納得してればいいんじゃない?私はそう思うよ。」 ジン:「そうか...それなら良いのかもな。」 ジン:「さてさて。俺らは後始末をしないとな。」 楓:「はー。骨が折れますなぁ...」 ジン:「頼むぜ神様。俺が今日家で寝れるかどうかが掛かってるんだ。」 楓:「うわ...社会人っていつもそうなの?」

?:「こんにちは。お昼のニュースです。本日、薄暮市にて解体作業員が全員行方不明になる事件が…」 楓:「ねーねー夏休みの自由研究どうしよ~」 千春:「薄暮市に関することだったらなんでもいいらしいけど…」 楓:「高校生になって自由研究っていうのもウチの学校も変わってるよね~」 千春:「んー定番と言えば街の歴史…とか?」 楓:「真面目だねぇ…私ならグルメマップとかにしちゃうかな~」 千春:「相変わらず食べる事に目が無いね。」 楓:「そりゃあ育ち盛りですから?」 千春:「それ、中学生の時も言ってなかった?」 楓:「あちゃ~ばれちゃった?」 :(笑い合う二人) :-ジン、電話をかける ジン:「あ、もしもし俺です。そうです。例の場所です。様子ですか?見た感じ作業服の切れ端と血痕がありますね。」 ジン:「あー、後やたらと血なまぐさいです。」 :-ジンの目の前には人間の腕が転がっている ジン:「ん?これは...あ、そうです、そうです。マズいですね。コレ。」 ジン:「え?至急退避ですか?ですよねー。はーい。じゃあすぐに戻りまーす。」 :-ジン、電話を切る ジン:「なんなんだこれ...ったく面倒臭いことしてくれたな。」 千春: 現在・過去・未来が交差すると言われる街、薄暮市。うだるような暑さの7月下旬。この物語は始まった。 楓:「んー、とりあえず明日は図書館行ってみる?」 :-千春、ため息をつきながら 千春:「どうせ漫画読みたいだけでしょ?宿題もちゃんとしなきゃだめだよ?」 楓:「うっ。鋭い。痛いことつかれた。」 千春:「(ため息)...でも私も家だと集中できないしな~、ちょうどいいかも。いこっか。」 楓:「やったー!じゃあ明日10時に集合ね!」 :-同時刻、某所にて ジン:「...以上の点から社が解体されたことによって鬼門が解放され、怪異が出入りしていると考えられます。」 ジン:「またこの土地固有の怪異である「鬼」の活性化しており、今後このような事件が増える可能性が予測できます。」 ジン:「特に警戒すべき地点は...」 :-数時間後、図書館にて 千春:「うーん...自由研究のテーマって言っても図書館ってどの資料見たら良いかわかんないよ。ね?」 :-楓、独り言のように呟きながら 楓:「...これにも載ってない。さっきのやつにも載ってなかったし...どこにあるんだろ。」 千春:「珍しく真剣だね。どうしたの?」 楓:「うわ。びっくりした~。」 千春:「ごめん。驚かせちゃって...それって新聞?」 楓:「そう。見た?昨日ニュースでやってたやつ。」 千春:「えーっと。あ。作業してた人が全員いなくなっちゃったやつ?」 楓:「そうそう。どーしてもその神社のこと気になっちゃってさ。」 千春:「そもそもそんな所に神社あったんだ~って感じだよね。」 楓:「あ~。やっぱそこからだよね~。」 千春:「...そもそもなんで壊しちゃったのかな?」 楓:「元々管理してた人が亡くなって管理できる人がいなくなったらしいよ。」 千春:「ふーん。...壊しちゃったから神様が怒った...とか...かな?」 楓:「千春って神様とか信じるタイプ?」 千春:「一...応?」 楓:「まぁ...そんなもんだよね。」 :-同時刻某所にて ジン:「で、俺に渡す物って何ですか?え、これって...え?これ俺が借りて良いんですか?」 ジン:「も~ダメですよ。こんなちゃらんぽらんに~冗談はちゃんと休んでからにしてくだ...」 ジン:「え?お前しか扱えないって?...おだてても何もでな...も~しょうがないですね~。」 ジン:「...任せてください。期待には応えてみせます。」 :-数時間後、図書館にて 楓:「あ~すっかり暗くなっちゃたね~。」 千春:「結局、テーマ決まらなかったんだけど...」 楓:「いいじゃん。いいじゃん。今日の分の宿題は終わったし。」 千春:「そうだけど...私はそのポジティブさがうらやましいよ。」 楓:「そう?それより明日どうする?またここで勉強する?」 千春:「夏休みだからどこかに行きたいけど...宿題終わるまでは勉強かな。」 楓:「え?マジ?きっつ~」 千春:「大丈夫だって。夏祭りまでに頑張って進めちゃお。私たちならできるよ。」 楓:「それなら頑張りますか~...あ。」 千春:「どうしたの?」 楓:「お祭りにしてみる?自由研究。」 千春:「...ナイスアイデア。じゃあ早速調べ...」 :-椅子を引きながら 楓:「千春。もう閉館時間だよ。帰ろ。」 千春:「え...あ、ほんとだ。」 楓:薄暮、日没後の黄昏時を指す言葉。 楓:古くからこのような時間帯には妖怪や幽霊に会うと言われている。 楓:そんな言葉が付けられたこの街は、昔から事件や災害が絶えなかったらしい。 楓:きっと、昔の人はみんな人では無い何かのせいにしていたのだろう。 千春:「夏だからって油断した...明日はもうちょっと早く帰ろ。」 千春:沈んだ夕日が照らす中、一人家に向かっていた。 ?:「縺翫>縲√↓繧薙£繧薙′縺?◆縺。」 千春:「?...何か声が聞こえる?」 千春:数メートル離れた茂みの影から聞こえた気がした。 :-「?」は驚いた様子 ?:「縺ー縺!縺昴s縺ェ縺ォ縺。縺九▼縺?◆繧峨?繧後k縺?繧!」 千春:「...何あれ。」 千春:目の前にいたのは明らかに人間ではなかった。手足はまるで木の枝のように細いのに腹部は異常に膨れていた。 千春:額には角...だろうか何かしらが二本生えていた。 千春:いつの間にかもう一匹後ろから出てきた。 :-「?」達は何かを相談している ?:「縺、縺ー繧後◆。」 ?:「縺ェ繧、縺薙m縺吶@縺九↑縺?↑。」 千春:何かを話していたと思ったら、二匹(?)の何かは私に向かってきた。しかし何故か足は動かなかった。 千春:そういえば人間や動物は恐怖を感じると体が動かなくなるとどこかで聞いたことがある。 千春:あ、死ぬんだな。直感的にそう思った。 ジン:「こちらジン。二匹発見しました。至急討伐します。」 千春:誰かの声が聞こえた瞬間、自分の下に影ができた。 千春:何だろうと思い自分の前を見てみたら二匹の何かは真っ二つになっていた。 千春:目の前には自分より背の高い人物が立っていた。...が、フードをかぶっているせいで顔はよく分からなかった。 ジン:「民間人一名保護しました。はい。了解です。」 千春:声から男性だとは分かったが、彼が手に持っている物は日本刀だろうか。しかしその刃は血に染まってはいなかった。 ジン:「ふー。危なかったねー。怪我してない?大丈夫?」 千春:「えっと...その...あの...」 ジン:「あ。お兄さんの自己紹介まだだったでしょ。ごめんね。」 千春:「え...あっ、はい。」 ジン:「俺の名前はジン。よろしく。」 :-ジン、千春を見つめながら ジン:「怪我は...無いみたいだね。とりあえず良かった。」 千春:「あの...その...ありがとうございまし...た?」 ジン:「いや~それにしても危なかったね~。危機一髪って感じ?」 ジン:「俺も久々に冷や汗かいたよ。」 千春:「あ...あの...そのさっきのヤツって何ですか?」 ジン:「あーアイツね。んー、説明しろって言われると難しいな。」 ジン:「良くないモノの集合体?みたいな?とりあえず人間には悪いものかな。」 :-千春、よくわかっていなさそうに 千春:「そうなんですか...」 ジン:「どう?もう暗いけど。家まで帰れそう?良かったらお兄さんが送っていこうか?」 千春:「だだだ大丈夫です!!!!すぐそばに見えてるので!!!!!」 ジン:「あーそこのマンションね。そこなら大丈夫そうだね。」 千春:「はい!ありがとうございました!」 :-数秒おいて呟くように ジン:「一般人にも見えるようになったのか...マズいな。」 ジン:人と人ならざる者。その境界線は明確に分かれている。そして決して交わることはない。 ジン:その境界線が曖昧になってしまった時、果たして世界はどうなってしまうのだろうか。 ジン:答えはまだ誰も知らなかった。 :-翌日、図書館にて 千春:昨晩の光景が頭から離れなかった。 千春:きっと非現実過ぎる体験をしたせいだろう。 千春:きっと信じてくれないだろうと思うと、誰にも話すことはできなかった。 千春:そのせいだろうか。夜もよく眠れず、頭がぼんやりしていた。 楓:「...はる?千春ー?大丈夫?」 千春:「あっ。ごめん。何か言った?」 楓:「ひょっとして寝不足?今日は休んだ方がいいんじゃ...」 千春:「最近、蒸し暑いじゃん?中々眠れなくてさ~。あはは~。」 楓:「そう?なら良いんだけど...」 千春:「えっと...どこだっけ?」 楓:「ここの問題なんだけど...分かる?」 千春:「あ~そこね。それならこの公式が...」 :-同時刻、某所にて ジン:「そうですね。ここ数日、『鬼』の出現が頻発しています。」 ジン:「はい。順次対処しておりますのでご心配なく。」 ジン:「それより懸念すべきは『鬼』を視認できる者が増えていることです。」 ジン:「これ以上、街に増えれば...この街の均衡が崩れるかもしれません。」 :-数時間後、図書館にて 楓:「...千春最近何かあった?」 千春:「え?何もないよ?」 楓:「むむむ...怪しいな。さては...こ」 千春:「も~何もないって。それより何か見つかった?」 楓:「んーどうかな...あ、これ良いんじゃない?」 千春:「薄暮市...歴史資料集?」 楓:「重いから借りてくのは難しいけど何かあるかもしれないよ?」 千春:記録、薄暮市の祭りについて。通称「神降ろし祭り」。薄暮市の守り神に感謝を表すために始まったもの。 千春:この日は誰も彼もが夜通し踊り明かし、あちこちに屋台が立ち並び、町は賑わう。 千春:資料によると最古の記録は300年前まで遡るらしい。 千春:しかし、それ以上の詳しい記録は分からなかった。 :-同時刻、某所にて ジン:「なるほど...先日壊された社がその守り神の社だったってことですね?」 ジン:「変わった場所にあると思ったら...そんな事が...」 ジン:「これって...俺らでどうにかしなきゃいけないやつですよねー。」 ジン:「...うわー!めんどくせー!やりたくないー!」 :-数時間後、町外れにて ?:「縺翫∪縺...縺ォ繧薙£繧薙§繧?↑縺?↑?」 楓:「...なんだお前。気安く話かけてくるとは礼儀知らずだな。」 ?:「縺ェ縺、縺ォ繧薙£繧薙↓縺九◆縺?l縺吶k繧薙□?」 楓:「それは違うからだ。人間の負の感情しか知らないお前達とはな。」 ?:「縺翫∪縺医?縺ゅo繧後□縺ェ。」 楓:「...は?」 ?:「縺ォ繧薙£繧薙↓縺吶″縺九▲縺ヲ縺ォ繧翫h縺?&繧、縺昴?縺?∴縺吶※繧峨l繧九→縺ッ。」 楓:「黙れ。お前の勝手な考えで私のことを決めつけるな。」 ?:「縺九o縺?◎縺?↓...」 楓:「消えろ。時間の無駄だ。お前の相手をしている暇は無い。」 :-楓、手を叩く。 ?:「縺九i縺?縺...縺阪∴縺ヲ縺?¥!?」 :-「?」は消えてしまう 楓:「身の程知らずが...」 :-数日後、某所にて ジン:「なんですか~?朝っぱらから呼び出し...」 ジン:「え?最近変な反応が見られるから調査してこい...ですか。」 ジン:「んー...あーこの辺りですか。住宅街ですか。場所が悪いですね。はぁ...すぐ向かいます。」 ジン:「え?せめてシャワーは浴びてけ?」 ジン:「うぃーっす。」 :-とある喫茶店にて 千春:「蔵書の入れ替えで数日お休みかぁ...」 楓:「ちょっとした息抜きには良いじゃん。たまにはゆっくりしようよ。」 千春:「あのね...それにしても、よくこんなお店知ってたね。」 楓:「んー。マスターとは小さい頃からのつきあい?みたいな。」 千春:「へーそんなことが...」 楓:「そうだ!マスターはこの街のこと詳しいから色々聞いてみたら?」 :-数時間後、某所にて ジン:「あー。反応はすれど見当たらず...ってか」 ジン:「多分発生源の『力』が強すぎるやつだよなぁ...はぁ...」 ジン:「それにしてもこんな炎天下の中歩いても収穫ゼロとか...死ぬ。干からびる。」 :-ジン、何かを見つける ジン:「お...ここか...」 :ー喫茶店のドアが開く ジン:「マスター。アイスコーヒー1つ。あ、ブラックで。はい。お願いします。」 ジン:「お嬢さん、隣失礼しますよ。」 楓:「どうぞ。」 ジン:「あ、すみません。ありがとうございます。」 :-ジン、水を飲む。 ジン:「ふー。今日は1人?」 楓:「いえ。友達と来ました。」 ジン:「こんな平日に?さてはサボ...」 楓:「いえ、夏休みです。」 :-ジン、カレンダーを見つける ジン:「あー。そっか。」 :-数秒の沈黙 ジン:「そうだ、ちょっと君に聞きたいことがあるんだけど...いいかな?」 楓:「何ですか?答えられる範囲でなら良いですよ。」 ジン:「それでは単刀直入に聞こうか。...君は何者だ。答えろ。」 楓:「何者って...やだなー、ただの女子高校生ですよ?見て分かりませんか?」 ジン:「いーや。違うね。君からは『力』が見える。隠しても無駄だ。」 楓:「...あー。貴方『見える』人ですか。めんどくさいですね。」 ジン:「しかも君の『力』、かなり変わっているな。どこで身につけた。そもそも君は人間か?」 楓:「あらあら。狐か狸だと思われてます?私。」 ジン:「違うな。君はそんなにかわいいものじゃない。もっと強力な『何か』だ。」 楓:「はぁ...『見た』だけでそこまでバレます?変態じゃないですか?」 ジン:「ふざけるのはやめておけ。俺の目はごまかせない。知ってることがあったら吐くんだな。」 楓:「吐くものなんてありませんよ~。あ。さっき食べたお昼ご飯か。」 ジン:「じゃあ...質問を変えよう。最近おかしな事件が起こり始めたのも君の仕業かな?」 楓:「え?」 ジン:「人々が毎日、何者かに襲われている。それは君が元凶かな?」 楓:「は?」 ジン:「数日前、とある社を解体していた作業員が全員死んでいた。お前が殺ったのか。」 楓:「...」 ジン:「俺が調査してる時にさ、腕が目の前に落ちてたんだよ。薬指にはめてるやつ。あーあ可哀想に。」 楓:「...黙れ。それ以上喋るな。」 ジン:「...っ。」 楓:「私はアイツらとは違う。そんなことも分からんのかこの唐変木。」 楓:「今この場で、礼儀というものを叩き込んでやっても良いんだぞ?...小童。」 :-数秒間の沈黙 ジン:「お~怖い怖い。ならお兄さんはさっさと退散しますかね。は~くわばら、くわばら。」 :-ジン、席を離れる 千春:「ごめーん!待たせちゃった?」 楓:「ううん。そんなことないよ~。それよりさー、午後買い物行かない?」 千春:「...まだ今日の分終わってないからダーメ。」 楓:「え~?勉強道具だってば~、ね?ちょっとならいいでしょ?」 :-千春、楓退店 ジン:「あの子...前に見た子だな。あの二人、どういう関係なんだ...?」 ジン:「とりあえず...報告が先か。」 :-ジン、電話をかける ジン:「あ、お疲れ様です。ジンです。はい。対象区域の調査終わりました。」 ジン:「...あ、そうなんですよ~俺だけじゃ無理です。え?いやいや。いつもとは訳が違いますって。」 ジン:「あっ、俺の式神ですか?全滅です。全滅。」 ジン:「も~やばいですよね~。補充に何日かかるか分かりま...ですよねー。はい。」 ジン:「レイさんにまた怒られるな~。やだな~。あの人怖いんだよな~。」 ジン:「あ、そうだ。話は変わるんですけど、ちょっと調べてほしい事があって...はい。お願いします。」 :-数日後 ジン:「調査お願いしてたやつですか?ありがとうございます。」 ジン:「ほー。柱井楓(はしらい かえで)...年齢16歳。薄暮市立東(ひがし)高校1年3組在籍。」 ジン:「両親共に市内の企業勤め、現住所は...はーん。ここね。」 ジン:(人間に化けてるタイプかと思ったらアテが外れたな...それならあの『力』は血筋によるものか?) ジン:(だとしてもアレは桁違い過ぎる...憑きものの類いか?なら意思疎通ができていたことはどう説明する?) ジン:「なるほど...全く分からん。」 :-同時刻、郷土史資料館 千春:「小学生以来だな~ここに来るの。」 楓:「社会科見学...だっけ?確か。」 千春:「そうそう。あの時は自分が見たいものじっくり見れなかったんだよね~。」 楓:「千春、調べ物とかほんとに好きだよね。私は絶対に無理だわ。」 千春:「つい夢中になっちゃうんだよね~。えへへ。」 楓:記録、薄暮市の起源について。 楓:薄暮市の元となる町が確認されたのは約500年前の文献からである。 楓:宿場町として賑わっていたが、数百年前の大火で町の7割が焼け野原になり、それ以前の記録はほとんど消失している。 千春:「それにしてももったいないよね~。資料がほとんど残ってないなんて。」 楓:「ねー。そしてここのケースが奇跡的に助かった資料の一部...」 千春:「でも...半分くらい焦げてる。」 楓:「水がかかったせいで文字も滲んでるし...コレじゃ読めないね。」 千春:「火事の原因は未だ不明...冬場での火の不始末が原因とされている...か。」 楓:「ふーん...ねぇ千春、この地図見てよ。」 千春:「これって...焼け残った場所?」 楓:「そう。北の地区はほとんど燃えなかったみたい。」 千春:「そもそも北は他より土地の高さが高いからって事...か。」 千春:「それと...ここは?何があったっけ?」 楓:「ほら、ニュースでやってた神社の辺。あそこも残ってる。」 千春:「へー。文献から風向きの影響と考えられる...なるほど。」 :-同時刻、某所にて ジン:「はい。神社に保存されていた物品は、担当の者が全て回収しております。」 ジン:「御神体が残っていますので神社に祭られていた『神』はまだこの地に存在していると思われます。」 ジン:「...はい。ですがその信仰が廃れてる以上、力を失っているでしょう。」 ジン:「最悪の場合、忘れられた恨みや悲しみで人間を襲う存在になっている可能性もあります。」 ジン:「信仰している人間が多いほど『神』は力を増します。ですがその逆も然りです。」 ジン:「伝承や記録が無い以上、ひょっとしたら社が壊される前から...ギリギリだったかもしれませんね。」 :-千春、楓帰り道にて 千春:「自由研究、順調に進みそうだね。」 楓:「千春のおかげだよ~ありがとね!」 千春:「それはさておき、明日からまた図書館が開きますね?」 楓:「と...言うことは...」 千春:「残ってる数学と英語の課題、終わらせよっか!」 楓:「ですよねぇ...きついな~。」 :-数時間後、某所にて ジン:「で、コレが例の神社に保管されてた物品ですか。」 ジン:「祭具に、参拝者の名前が記帳されたノート...で、御神体の鏡っと。」 ジン:「まぁ、こんなもんだよな。...んでこっちが神社の記録ですか~っと。」 ジン:「50年前に改修工事をした時の記録に、出資した人と請け負った会社の名前...」 ジン:「あとは月々のお賽銭の金額...これ途中から書かれてねぇな。」 ジン:「...ん?こっちは...なんだ?...あー。俺、古文書とか読ねぇからなぁ...わかる人に頼むしかねぇか...」 ジン:「この鏡なんか彫ってあるな...何々?」 ジン:「これは...」 ?:「おはようございます。朝のニュースです。」 ?:「はじめに、薄暮市で発生している連続失踪事件についてです。」 千春:夏休み中盤、薄暮市では奇妙な事件が続いていた。 千春:誰も彼もがある日突然姿を消してしまうという事件だった。 千春:「それにしても怖いよねー。そっちは平気?」 楓:「うーん。外に出られない分ちょっとしんどいかも...」 千春:「あー。わかるー。」 千春:事件が収まるまで外出は控えろと親に言われ、1週間ほど経つ。 千春:どうやら楓の家も同じらしく、通話アプリを使いながらお互い勉強をしていた。 ?:「未だ手がかりが掴めていない本事件ですが...」 楓:「千春も気を付けなよ。同じ部屋にいたのに振り向いたらいなかった...って事もあるらしいからさ。」 千春:「またまた~ただの噂でしょ?」 千春:連続失踪事件、人々は『神隠し』と呼んだ。 楓:「今年はお祭りも無理そうだね~。楽しみにしてたんだけど、まぁしょうが無いか。」 千春:「そうだよね。残念だな~。」 :-同時刻、某所 ジン:「つまり、今起こっている『神隠し』は『鬼』の仕業って事ですか。」 ジン:「そして『鬼』は相手を食らうことでその能力を身につける...か」 ジン:「まだ完璧に人間を取り込めたヤツはいないにしろ...コレはマズくないですかね...」 ジン:「とりあえず俺は目につくヤツを切ってけば良いんですよね。」 ジン:「それと...先日の件ですが...」 :-半日後 楓:「今日の分おわった~!」 千春:「あと3日くらいでなんとか終わりそうだね。」 楓:「私、生まれて初めて最終日前に宿題終わるかも。」 楓:「ありがたや~神様仏様千春様~」 千春:「も~。」 千春:こうして今日の勉強会は終わった。 千春:「さてと、これからなにしようかな。」 ?:「こんにちはー。集金ですー。」 千春:「...そういや今日って集金の日だったっけ。」 千春:「はーい。」 :-同時刻、楓視点 ?:「繧医≧...やく...縺ソ縺、縺代◆...」 楓:「...。」 ?:「縺薙→縺ー縺ィ縺ッ...むず...縺九@...な。」 楓:「お前...まさか。」 楓:「今すぐ私の前から消えろ。消えなければ殺す。」 ?:「そう...縺九▲縺九☆繧九↑...よ」 ?:「おれは...縺翫∪、えとはな、縺励′、したい、繧薙□。」 楓:「...」 ?:「縺ォ繧..げんって...う...うまいな...それに」 ?:「おもしろい...縺溘∋...られ...だな。」 ?:「『痛い』って『助けて』って、俺、覚えたんだ。どんな意味なんだ?教えてくれよ。」 楓:「死ね。」 :-?、体が徐々に消えていく ?:「むな...縺励>縺ェ。か...縺ソ縺輔∪、ってのも...」 :?、完全に消える。 楓:「ふー。私もそろそろ限界かな。」 楓:「あーあ。この街好きだったんだけどなぁ...」 :-千春宅にて 千春:「すみません。お待たせしま...」 千春:「え...?」 :-ジン、息を切らしながら ジン:「やぁ...お嬢さん久しぶりだね。」 千春:「ど...どうも...」 千春:少し前、親から預かっていた封筒を集金の人に渡そうと玄関のドアを開けた。 千春:しかしそこにいたのはいつもの人では無かった。 千春:それはあの時見てしまった『何か』だった。 千春:『何か』は大きな口を開け、私に飛びかかってきた... 千春:死ぬ。そう思った。...そう思ったのだが 千春:『何か』は真っ二つにされて玄関先に転がっていた。 千春:「ヒッ...」 ジン:「あー。後片付けはしとくから心配しないで。」 千春:「え...あっ、はい。」 千春:『ジン』と以前名乗っていた人物はあの時とは違い、全身が真っ赤に染まっていた。 ジン:「あ、これ貼っといてね。後、ご家族さんが帰ってくるまで開けちゃダメだよ。」 千春:「あの...これは...」 ジン:「虫除けだよ。人間は触っても問題ないヤツだから扉に貼っといて鍵かけてね。」 千春:そう言って彼は夕日が照らす街へと消えていった。 :-ジン、通話しながら ジン:「聞いてた数よりだいぶ多いんですけど!?どうなってるんですかコレ!」 ジン:「こんなん『神様』見つけるよりも前に俺が死にますって!」 ジン:「え!?廃神社の方に反応が!?しかもデカいヤツ!?」 ジン:「一番近いのが俺ですか...あー。了解。すぐに向かいます。」 :-千春、自宅にて 千春:「...そうだ!楓にもこの状況知らせなきゃ!」 千春:「えっと...番号は...あった!」 :-千春、電話をかける 千春:「お願い...出て...」 ?:「この電話番号は、電源が入っていないか」 千春:「うそ...」 ?:「電波の届かない場所にあるため」 ?:「繋がりません。」 千春:「楓...」 :-某所、楓視点 楓:「思えば、長いようで短かったなぁ。」 楓:「形あるものはいずれ滅び、形無きものは忘れられる。」 楓:「今思えばこんな当たり前の事も、あの時は全然考えて無かったしなー。」 楓:「はー!私ってほんとバカ!」 楓:「もー、若気の至りってヤツ?めっちゃ恥ずかしいんだけどー!」 :-ジン、廃神社に到着 ジン:「ようやく見つけた。」 ジン:「まさかとは思ってたんだけどね。君が...」 楓:「お。流石にバレちゃいましたか。」 楓:「そう。私がこの街を守る『神様』なんだよね。」 ジン:「...」 楓:「隠してたのは謝るよ。ごめんね。」 楓:「私さー今時JKの生活ってやつ?してみたかったんだよねー。」 楓:「プリクラ撮って、タピオカ飲んでさー。放課後にちょっと寄り道する的な?」 楓:「まぁ...今こんな状況だけど。」 :-ジン、言いにくそうに ジン:「君には悪いんだが...神社の記録を見させてもらった。」 楓:「...そっか。壊されたときに一緒に処分されたかと思ってたんだけどね。残ってたんだ。」 ジン:「『人』を『柱』として見立てる...か。君の時代の人は何を考えていたんだ?」 楓:「しょうが無いよ。信じる者達が多いほど力を増すのはアイツらも...そして神も一緒。 楓:「世の中そういう決まりにできてるんだ。」 楓:「それに、自分たちのために犠牲になってくれた。...その事実が大事だったんだよ。」 ジン:「それで人々の信仰を集めようと?」 楓:「しょうがないよ。昔は今と違ってアイツらと私たちとの世界が近かったんだ。」 楓:「それを分けるために私は『柱』になった。要するに塀の役割と一緒。」 ジン:「だとしても、君みたいな...!」 楓:「未来ある若者にって?...一応見返りはあったんだよ。」 ジン:「見返り?」 楓:「そう。妹の病気を治して貰ったの。」 楓:「妹は私よりずっといい子だった。頭も良いし、可愛いし。私が命をかけるには十分だった。」 ジン:「...」 楓:「そりゃあ両親は反対したよ?だけど...子どもを二人も育てる余裕は...家には無かった。」 楓:「それに...」 千春:「楓!!」 楓:「え?」 ジン:「君、どうしてここに!?」 千春:「楓...嘘だよね?楓が神様だって...」 楓:「あちゃー。聞かれてましたか。」 楓:「ほんとだよ。私はこの街を守る神様。」 千春:「『神隠し』って楓が起こしてるの?」 楓:「違うよ。アレは...千春にも見えてるアイツらのせい。」 千春:「どうして私には変なのが見えるの?」 楓:「見えてるのは千春だけじゃないよ。でも千春は見えやすい体質なのかもね。」 千春:「何で...」 楓:「原因としては二つかな。一つ。それぞれの世界が近づきすぎていること。」 楓:「コレは私の社が壊されたことが原因だから直せば元通りになるよ。」 楓:「そして二つ目。千春はね、私の妹の子孫なんだ。」 千春:「え?」 ジン:「え!?」 楓:「血縁者から神が出てるんだ。不思議なことの一つや二つ起こってもおかしくないよ。」 千春:「そんな理由で...」 楓:「そう。そんな理由で友人兼大事な血縁者を巻き込んじゃったからなぁ...」 楓:「私がなんとかしないとね。」 千春:「待って...どうする気...?」 ジン:「彼女なりの考えがあるんだろう。それにかけるしか無い。」 楓:「千春、今まで騙しててごめんね。」 楓:「千春はさ...こんな私でも...神様でも信じてくれる?」 千春:「私は...」 千春:記録、『神隠し』事件のその後。 千春:薄暮市の守り神『柱井楓』の力により平和を取り戻した。 千春:彼女を『信じる者』が現れた結果、神としての力を少し取り戻せたらしい。 千春:事を終えた後、人間としての彼女の記録はこの街から消えてしまった。 千春:そうした方が都合が良いとのことだ。 千春:私以外が例え彼女の事を忘れてしまったとしても 千春:私はきっと... ジン:「なぁ...聞いていいか?」 楓:「いいよ。」 ジン:「『神』になったこと後悔してないか?」 楓:「後悔...どうだろ。きっとならなくてもしたと思うよ。」 ジン:「その...痛かったり苦しかったりしたのか?」 楓:「全然そんなこと無かったよ。気がついたらこうなってたし。」 楓:「でもさ。今の私が納得してればいいんじゃない?私はそう思うよ。」 ジン:「そうか...それなら良いのかもな。」 ジン:「さてさて。俺らは後始末をしないとな。」 楓:「はー。骨が折れますなぁ...」 ジン:「頼むぜ神様。俺が今日家で寝れるかどうかが掛かってるんだ。」 楓:「うわ...社会人っていつもそうなの?」