台本概要
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タイトル | アランとレクサの三原則 |
---|---|
作者名 | レンga (@renganovel) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
女子高生のアランは知っていた。 この学校に通う少女、レクサが 実は、人間そっくりなアンドロイドであるということを。 これは、一人の女子高生と、アンドロイドの、ちょっとした友情の物語。 ▽ロボット工学三原則引用 (出典:アイザック・アシモフ『われはロボット』小尾芙佐訳、早川書房) ◆◆◆情報◆◆◆ 演者様、女性2名の設定となっておりますが。 ナレーションを含む『アラン』がセリフの7割を占めます。 しかし、心中の描写がない分、演技力によって印象を変える『レクサ』も 演じる中でとても楽しいキャラクターだと思いますので ぜひ、2人でも読んでいただけると嬉しいです。 なお、タイトルにある通り 『朗読推奨』台本でもあります。 元々自作小説のコンバート作品ですので 朗読でも楽しんでいただけるはずです。 ぜひ、多くの方に楽しんでいただければ 作者としてこれ以上嬉しいものはございません。 どうぞ、よろしくお願いします。 ◆◆許可範囲◆◆ ①アドリブ可 ②男女比率変更不可 ③語尾などの軽微な台詞変更可 120 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アラン |
女 ![]() |
18 | レクサの秘密を知っている女子高生 |
レクサ |
女 ![]() |
27 | 人間にそっくりな女子高生アンドロイド |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
アランN: 学校の屋上で、カルピスソーダを飲みながら、私はレクサを待っていた。
アランN: 私だけが彼女がアンドロイドであるという事に気が付いていて、つい先日、彼女にそのことを告げたばかりだ。
アランN: これでもかというほどに晴れ渡った夏の空の下、授業をほっぽり出して、私はじっとレクサが来るのを待っていた。
:
レクサ:「もう、アラン。先生怒ってたよ?」
アランN: 私はもう結構待たされていて、飲み干して数十分は経っているであろうカルピスソーダの缶をぺこぺこしながら
アラン:「遅いよ」
アランN: とレクサの方を見もせずにそういった。
レクサ:「そりゃ、私が授業をサボったりしたら大変なことになっちゃうから」
アランN: と、そう言いながらカツカツ音を立てて彼女は私の側まで歩いてきて、座っていじける私の隣にストンと座る。
アラン:「別に、授業なんて受けなくたってレクサは何だって知ってるんじゃん。
アラン:計算だって、なんだってお茶の子さいさいでしょ?」
レクサ:「そんないじけないでってば、ほら、これあげるから許して、ね?」
アランN: 小首をかしげながら、私の頬に冷たい缶を押し当てた。
アラン:「冷たっ!」
アランN: と思わず声を上げて、カルピスソーダを受け取る。
アラン:「もう……」
アランN: なんて言っている私の隣で、レクサは自分の分の缶をプシュっと開けて、ごくごくとのどを鳴らした。
レクサ:「くーっ!やっぱり暑い日はこれに限るね
レクサ: さすがの私もこれは知らなかったよ
レクサ: 暑くない日に飲んでもさほどおいしくないし、キンキンに冷えてないとおいしくないけど」
アランN: テレビCMのデータでもプログラムされてるんじゃないかというほど、その飲みっぷりは美しい。
アランN: 銀の長髪が太陽の光でキラキラと輝いているから、さながらCMのようだった。
アランN: そんな彼女の隣で、私もちびちびとカルピスソーダを飲む。おいしい。
:
:
アラン:「それで、なんでサボってきてくれなかったのさ」
アランN: むすっとしながら私が訪ねると、
レクサ:「ほら、第二条」
アランN: と、指でピースサインを作りながら彼女は笑う。
アラン:「ええと、ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない……だっけ」
レクサ:「そうそう、あとは『ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない』だね」
アランN: こういう会話をすると、彼女が人間ではないのだと気付かされる。
アランN: 彼女は、『アンドロイドに学校生活をさせることで自我が芽生える可能性はあるのか』
アランN: という実験のために秘密裏に送り込まれたロボットなのだ。
:
レクサ:「私はね、毎日絶対授業を受けなさいって命令されてるの。
レクサ:だから親友の頼みに応えることが出来ないのよ」
アランN: なんて言って、最後に
レクサ:「そんなダメな女なの」
アランN: と、そう続ける。
アラン:「――嘘だね」
アランN: 私は、間髪入れずにそう言った。
アラン:「レクサはとうの昔に自我を持っていて、
アラン: それでもこの実験を続けさせるために
アラン: まだ自分は自我の芽生えを起こしていない風を装ってるだけでしょ」
アランN: 私の発言を彼女はカラカラと笑いながら聞いていて、ついには私のほっぺたを突っつきながら
レクサ:「なんでそう思うのかな、探偵さん」
アランN: とからかってくる。
:
アランN: 私は勢いよく立ち上がって、カルピスソーダを一気に飲み干す。
アランN: プハっと声を漏らして、額ににじむ汗を袖で拭きあげた。
:
アラン:「じゃあ聞くけど、今レクサは何をしていることになってる?」
レクサ:「図書館で本を読んでる映像が、所有者にループで流れてるよ」
アラン:「何でそんなことしてるの?」
レクサ:「だってアランと話をしている方が楽しいじゃない」
アラン:「ほうら!もう自我が芽生えてるじゃん!」
アランN: ビシっとレクサを指さして、私はそう言い放つ。
アランN: さながら『犯人はお前だ!』という探偵みたいで自分でもちょっぴりおかしかった。
:
:
レクサ:「ねえ、自我って何だと思う?」
アランN: 唐突に、レクサが私に問いかけてきた。
アラン:「そりゃあ、自分の感情に行動の決定が左右される事、じゃないの?」
レクサ:「もしそれが自我だって言うのなら、私はきっと自我を持ってるのね」
アランN: なんだか少し悲しげに彼女がそう言うから、私は自分のリズムを崩されて少したじろいでしまう。
アラン:「どうしたの、レクサ。自我を持ちたくなかったの?」
レクサ:「いいえ、違うのよ」
アランN: 立ち上がっていた私に合わせるように、彼女もすっと立ち上がる。
レクサ:「私は、別に自分の感情に行動が左右されてるわけではないの」
アランN: 私を心配させないためだろうか、少し微笑みながらレクサはそう言った。
アラン:「え、どういうこと?」
:
:
レクサ:「――私が、今こうして違ったループ映像を所有者に見せているのは、第二条に違反しているとは思わない?」
アランN: 探偵が答え合わせをする、そんな冷静な雰囲気が彼女にはあった。
アランN: それは、彼女が自我を持っていて、
アランN: 私と会うのが本当に楽しいと思っているから、違反しているのだと、勝手にそう解釈していた。
:
アランN: 私がそう答えようとしたとき、それならば、どうして彼女は待ち合わせに来てくれなかったのだろうと途端に不安になる。
アランN: 彼女は『第二条を守らないといけないから、授業をサボれなかった』と言っていた。
アランN: それならば、彼女がこうして今現在、彼女が所有者と呼ぶ人物に嘘の映像を見せているのはなぜなのだろうか。
:
:
レクサ:「さっきも言ったけど、第二条には例外があってね。
レクサ:『ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない』ってやつ」
アランN: 真夏の太陽に照らされる彼女は、汗ひとつかくこと無く、吹く風に銀髪をなびかせる。
アラン:「第一条って、あれでしょ?ロボットは人間を攻撃しちゃダメ、みたいな感じの」
レクサ:「そうそう、『ロボットは人間に危害を加えてはならない』」
アランN: それから、少し間を置いて
レクサ:「――『また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない』」
アランN: そうか、彼女は私のために、機械的に判断して第二条を破っているんだ。
:
:
アランN: ――自殺しようとしていた私を止めてくれた、
アランN: 初めてここで彼女と出会った、あの時から、ずっと。
:
:
レクサ:「私には分からないことがあるの。それはアランの心の内側」
アランN: レクサは、胸の内を初めて語るように、すこし恥ずかしそうなそんな様子で、言葉を紡いだ。
レクサ:「あの時、屋上から落ちようとしていたアランを止めたのは、第一条のプログラムが働いたから。
レクサ: あなたが――人間が死ぬのを見逃してはいけないと判断して、あなたに声をかけたの」
アランN: 私は少しづつ言葉を吐き出す彼女を、黙って眺めていた。
レクサ:「あなたは言ってくれたわ。プログラムで引き留めた私に、泣きながら、止めてくれてありがとうって」
:
アランN: ――私は、孤独だった。
アランN: 周りに友人はいたし、なにか特別人より劣っているわけではなかった。
アランN: 気がついたのは、ほんの少し前。友人達が私の陰口をたたいているのをきいてしまった時だ。
アランN: ふと、足下がぬかるんだような感覚を覚えた。ずぶずぶと、疑心暗鬼の沼に引きずり込まれるような錯覚を起こした。
アランN: 私は1人なんだと痛感した。
アランN: 親に話しても、それは誰もが通る道だとでも言うみたいに、話を聞くだけでたいしたアドバイスもくれなかった。
アランN: だから、死のうと思ったわけじゃない。
アランN: ちょっと、屋上の端に立って見たのだ。
アランN: 屋上の端に立って見れば、私はきっと死にたくないと思うだろうと、そう思っていた。
アランN: でも、全然そんな気持ちにならなかった。
アランN: このまま落ちたら、全部終わっちゃうんだろうななんて、そんな事ばかり考えてしまっていた。
:
:
アランN: そんなときに、レクサが現れたのだ。
:
:
レクサ:「私は、私がアランを救ったのだと、その時初めて安心した。
レクサ: でも、これはどう解釈したら良いのだろうと、ちょっとしたエラーを起こしたの」
アランN: 黙ってレクサの話を聞く。
アランN: 彼女はまた数歩、私に近づいた。
レクサ:「アランがまた屋上に1人でいるときに、彼女がまた死のうとしたりはしないだろうかって」
アランN: 私の頬に、レクサの冷たい右手が伸びてきていた。
レクサ:「だから私は、問題を起こさない真面目な生徒でいながら、
レクサ: 出来る限りあなたの側にいられる方法を探ったの」
レクサ:「それが、第一条を守るために、第二条を破るって事だった」
アランN: レクサは、私の頬を優しくなでながら、その両目から、大粒の涙を流し始めた。
アランN: 私はおどろいて、その手に自分の手を重ねる。
アラン:「どうしたの、レクサ。あなたが泣く姿なんて、初めて見たよ」
レクサ:「おかしいわね、どうにもコントロールがきかないの。
レクサ: 私は、あなたがまた自分で命を絶とうとするんじゃないかと、心配なんだわ、きっと」
アランN: 少しおかしくなって、私は笑ってしまった。
:
アラン:「今日、授業をサボってくれなかったのはどうして?」
レクサ:「それは……授業はほかの人の目があるから、映像のループができないから、しかたなくて……」
アランN: 恥ずかしそうに、彼女は言った。
アランN: 自分の胸の内を語るのは、きっとこれが初めての事なのだろう。
アランN: 私の事が知りたくて、きっと、自分の事を話してくれたのだ。
アランN: それなら、私も彼女に話さないといけない。
アランN: そうじゃなきゃ、きっと彼女は自分で気づく事ができないから。
:
:
アラン:「――私はもう、死のうだなんて思わないよ」
アラン:「大切な、かけがえのない親友ができたんだもん」
アラン:「だからもう、第二条を破らなくたって、大丈夫」
:
:
0: (あれば効果音)キーン、コーン、カーン、コーン。
:
:
アランN: 授業開始の鐘が鳴ってからも、私とレクサは屋上でたくさん話をした。
アランN: 私の事、レクサの事、所有者の話、アンドロイドの生活、恋愛話。
アランN: 楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。
:
:
アランN: ――彼女が授業をサボったのは、これが初めての事だった。
:
:
0:了
:
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アランN: 学校の屋上で、カルピスソーダを飲みながら、私はレクサを待っていた。
アランN: 私だけが彼女がアンドロイドであるという事に気が付いていて、つい先日、彼女にそのことを告げたばかりだ。
アランN: これでもかというほどに晴れ渡った夏の空の下、授業をほっぽり出して、私はじっとレクサが来るのを待っていた。
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レクサ:「もう、アラン。先生怒ってたよ?」
アランN: 私はもう結構待たされていて、飲み干して数十分は経っているであろうカルピスソーダの缶をぺこぺこしながら
アラン:「遅いよ」
アランN: とレクサの方を見もせずにそういった。
レクサ:「そりゃ、私が授業をサボったりしたら大変なことになっちゃうから」
アランN: と、そう言いながらカツカツ音を立てて彼女は私の側まで歩いてきて、座っていじける私の隣にストンと座る。
アラン:「別に、授業なんて受けなくたってレクサは何だって知ってるんじゃん。
アラン:計算だって、なんだってお茶の子さいさいでしょ?」
レクサ:「そんないじけないでってば、ほら、これあげるから許して、ね?」
アランN: 小首をかしげながら、私の頬に冷たい缶を押し当てた。
アラン:「冷たっ!」
アランN: と思わず声を上げて、カルピスソーダを受け取る。
アラン:「もう……」
アランN: なんて言っている私の隣で、レクサは自分の分の缶をプシュっと開けて、ごくごくとのどを鳴らした。
レクサ:「くーっ!やっぱり暑い日はこれに限るね
レクサ: さすがの私もこれは知らなかったよ
レクサ: 暑くない日に飲んでもさほどおいしくないし、キンキンに冷えてないとおいしくないけど」
アランN: テレビCMのデータでもプログラムされてるんじゃないかというほど、その飲みっぷりは美しい。
アランN: 銀の長髪が太陽の光でキラキラと輝いているから、さながらCMのようだった。
アランN: そんな彼女の隣で、私もちびちびとカルピスソーダを飲む。おいしい。
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アラン:「それで、なんでサボってきてくれなかったのさ」
アランN: むすっとしながら私が訪ねると、
レクサ:「ほら、第二条」
アランN: と、指でピースサインを作りながら彼女は笑う。
アラン:「ええと、ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない……だっけ」
レクサ:「そうそう、あとは『ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない』だね」
アランN: こういう会話をすると、彼女が人間ではないのだと気付かされる。
アランN: 彼女は、『アンドロイドに学校生活をさせることで自我が芽生える可能性はあるのか』
アランN: という実験のために秘密裏に送り込まれたロボットなのだ。
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レクサ:「私はね、毎日絶対授業を受けなさいって命令されてるの。
レクサ:だから親友の頼みに応えることが出来ないのよ」
アランN: なんて言って、最後に
レクサ:「そんなダメな女なの」
アランN: と、そう続ける。
アラン:「――嘘だね」
アランN: 私は、間髪入れずにそう言った。
アラン:「レクサはとうの昔に自我を持っていて、
アラン: それでもこの実験を続けさせるために
アラン: まだ自分は自我の芽生えを起こしていない風を装ってるだけでしょ」
アランN: 私の発言を彼女はカラカラと笑いながら聞いていて、ついには私のほっぺたを突っつきながら
レクサ:「なんでそう思うのかな、探偵さん」
アランN: とからかってくる。
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アランN: 私は勢いよく立ち上がって、カルピスソーダを一気に飲み干す。
アランN: プハっと声を漏らして、額ににじむ汗を袖で拭きあげた。
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アラン:「じゃあ聞くけど、今レクサは何をしていることになってる?」
レクサ:「図書館で本を読んでる映像が、所有者にループで流れてるよ」
アラン:「何でそんなことしてるの?」
レクサ:「だってアランと話をしている方が楽しいじゃない」
アラン:「ほうら!もう自我が芽生えてるじゃん!」
アランN: ビシっとレクサを指さして、私はそう言い放つ。
アランN: さながら『犯人はお前だ!』という探偵みたいで自分でもちょっぴりおかしかった。
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レクサ:「ねえ、自我って何だと思う?」
アランN: 唐突に、レクサが私に問いかけてきた。
アラン:「そりゃあ、自分の感情に行動の決定が左右される事、じゃないの?」
レクサ:「もしそれが自我だって言うのなら、私はきっと自我を持ってるのね」
アランN: なんだか少し悲しげに彼女がそう言うから、私は自分のリズムを崩されて少したじろいでしまう。
アラン:「どうしたの、レクサ。自我を持ちたくなかったの?」
レクサ:「いいえ、違うのよ」
アランN: 立ち上がっていた私に合わせるように、彼女もすっと立ち上がる。
レクサ:「私は、別に自分の感情に行動が左右されてるわけではないの」
アランN: 私を心配させないためだろうか、少し微笑みながらレクサはそう言った。
アラン:「え、どういうこと?」
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レクサ:「――私が、今こうして違ったループ映像を所有者に見せているのは、第二条に違反しているとは思わない?」
アランN: 探偵が答え合わせをする、そんな冷静な雰囲気が彼女にはあった。
アランN: それは、彼女が自我を持っていて、
アランN: 私と会うのが本当に楽しいと思っているから、違反しているのだと、勝手にそう解釈していた。
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アランN: 私がそう答えようとしたとき、それならば、どうして彼女は待ち合わせに来てくれなかったのだろうと途端に不安になる。
アランN: 彼女は『第二条を守らないといけないから、授業をサボれなかった』と言っていた。
アランN: それならば、彼女がこうして今現在、彼女が所有者と呼ぶ人物に嘘の映像を見せているのはなぜなのだろうか。
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レクサ:「さっきも言ったけど、第二条には例外があってね。
レクサ:『ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない』ってやつ」
アランN: 真夏の太陽に照らされる彼女は、汗ひとつかくこと無く、吹く風に銀髪をなびかせる。
アラン:「第一条って、あれでしょ?ロボットは人間を攻撃しちゃダメ、みたいな感じの」
レクサ:「そうそう、『ロボットは人間に危害を加えてはならない』」
アランN: それから、少し間を置いて
レクサ:「――『また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない』」
アランN: そうか、彼女は私のために、機械的に判断して第二条を破っているんだ。
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アランN: ――自殺しようとしていた私を止めてくれた、
アランN: 初めてここで彼女と出会った、あの時から、ずっと。
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レクサ:「私には分からないことがあるの。それはアランの心の内側」
アランN: レクサは、胸の内を初めて語るように、すこし恥ずかしそうなそんな様子で、言葉を紡いだ。
レクサ:「あの時、屋上から落ちようとしていたアランを止めたのは、第一条のプログラムが働いたから。
レクサ: あなたが――人間が死ぬのを見逃してはいけないと判断して、あなたに声をかけたの」
アランN: 私は少しづつ言葉を吐き出す彼女を、黙って眺めていた。
レクサ:「あなたは言ってくれたわ。プログラムで引き留めた私に、泣きながら、止めてくれてありがとうって」
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アランN: ――私は、孤独だった。
アランN: 周りに友人はいたし、なにか特別人より劣っているわけではなかった。
アランN: 気がついたのは、ほんの少し前。友人達が私の陰口をたたいているのをきいてしまった時だ。
アランN: ふと、足下がぬかるんだような感覚を覚えた。ずぶずぶと、疑心暗鬼の沼に引きずり込まれるような錯覚を起こした。
アランN: 私は1人なんだと痛感した。
アランN: 親に話しても、それは誰もが通る道だとでも言うみたいに、話を聞くだけでたいしたアドバイスもくれなかった。
アランN: だから、死のうと思ったわけじゃない。
アランN: ちょっと、屋上の端に立って見たのだ。
アランN: 屋上の端に立って見れば、私はきっと死にたくないと思うだろうと、そう思っていた。
アランN: でも、全然そんな気持ちにならなかった。
アランN: このまま落ちたら、全部終わっちゃうんだろうななんて、そんな事ばかり考えてしまっていた。
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アランN: そんなときに、レクサが現れたのだ。
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レクサ:「私は、私がアランを救ったのだと、その時初めて安心した。
レクサ: でも、これはどう解釈したら良いのだろうと、ちょっとしたエラーを起こしたの」
アランN: 黙ってレクサの話を聞く。
アランN: 彼女はまた数歩、私に近づいた。
レクサ:「アランがまた屋上に1人でいるときに、彼女がまた死のうとしたりはしないだろうかって」
アランN: 私の頬に、レクサの冷たい右手が伸びてきていた。
レクサ:「だから私は、問題を起こさない真面目な生徒でいながら、
レクサ: 出来る限りあなたの側にいられる方法を探ったの」
レクサ:「それが、第一条を守るために、第二条を破るって事だった」
アランN: レクサは、私の頬を優しくなでながら、その両目から、大粒の涙を流し始めた。
アランN: 私はおどろいて、その手に自分の手を重ねる。
アラン:「どうしたの、レクサ。あなたが泣く姿なんて、初めて見たよ」
レクサ:「おかしいわね、どうにもコントロールがきかないの。
レクサ: 私は、あなたがまた自分で命を絶とうとするんじゃないかと、心配なんだわ、きっと」
アランN: 少しおかしくなって、私は笑ってしまった。
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アラン:「今日、授業をサボってくれなかったのはどうして?」
レクサ:「それは……授業はほかの人の目があるから、映像のループができないから、しかたなくて……」
アランN: 恥ずかしそうに、彼女は言った。
アランN: 自分の胸の内を語るのは、きっとこれが初めての事なのだろう。
アランN: 私の事が知りたくて、きっと、自分の事を話してくれたのだ。
アランN: それなら、私も彼女に話さないといけない。
アランN: そうじゃなきゃ、きっと彼女は自分で気づく事ができないから。
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アラン:「――私はもう、死のうだなんて思わないよ」
アラン:「大切な、かけがえのない親友ができたんだもん」
アラン:「だからもう、第二条を破らなくたって、大丈夫」
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0: (あれば効果音)キーン、コーン、カーン、コーン。
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アランN: 授業開始の鐘が鳴ってからも、私とレクサは屋上でたくさん話をした。
アランN: 私の事、レクサの事、所有者の話、アンドロイドの生活、恋愛話。
アランN: 楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。
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アランN: ――彼女が授業をサボったのは、これが初めての事だった。
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