台本概要
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タイトル | アンドロイドに、さよならを。 |
---|---|
作者名 | レンga (@renganovel) |
ジャンル | ミステリー |
演者人数 | 2人用台本(女1、不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
◆◆あらすじ◆◆ 人類が滅亡してしまった地球で たった一体だけ残った、生き残りのアンドロイド。 そんな彼に声をかけたのは 太陽系の外から来たという、1人の宇宙人だった。 次の自分の体を作るアンドロイドと 『人間』を訪ねにきた宇宙人の 奇妙な、友情の物語。 『アンドロイドに、さよならを。』 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 宇宙人は女性 アンドロイドは、男女不問です。 集まった人で、楽しんでいただければ嬉しいです。 ◆◆許可範囲◆◆ ①アドリブ可 ②男女比率変更可 ③語尾などの軽微な台詞変更可 635 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
宇宙人 |
女 ![]() |
172 | 滅びた地球を訪れた、宇宙人のお姉さん |
アンドロイド | 不問 | 169 | 滅びた地球にただ一体残った、アンドロイド |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
0:間
:
宇宙人:ねえ、そこの君
宇宙人:ねえ、ねえってば、ほら、聞こえてる?
宇宙人:おーい
宇宙人:おーい!
:
アンドロイド:ん?
宇宙人:あ、気がついた?
アンドロイド:……あ……え?
宇宙人:あのさ、えっと、『人間』ってどこにいるか知ってる?
アンドロイド:え、あ、えええ?!
宇宙人:わ、びっくりした。
宇宙人:何さ、いきなり、大きな声だして。
アンドロイド:びっくりしたのはこっちだよ
アンドロイド:だれ、きみ。
アンドロイド:なんでここにいるの?
宇宙人:もう、先に質問したのは私なんだけど。
アンドロイド:あ、ごめん。
:
アンドロイド:もう、何百年も、誰かに話しかけられるなんて事なかったから
宇宙人:え、なにそれ。
アンドロイド:そのまんまの意味だよ
アンドロイド:それくらい前に、君の探してるらしい、人間は滅んだの。
アンドロイド:僕以外のアンドロイドも、その時一気にシステム異常で壊れちゃって
宇宙人:わお
アンドロイド:それから、ずっと1人。
アンドロイド:驚いた理由は分かった?
宇宙人:それにしては、ずいぶんとわざとらしい驚き方だったね。
アンドロイド:驚き方も、忘れてたんだよ。
宇宙人:なるほどー。
宇宙人:でも、そうか
宇宙人:なーんだ、人間、滅んじゃったのか
宇宙人:それは残念。
:
アンドロイド:で、君はどこの誰で、何しに来たのさ。
宇宙人:んーと、どこの誰って言われると難しいな。
宇宙人:簡単に言うと……太陽系の外から来ました?
アンドロイド:宇宙人さん?
宇宙人:私から見たら君も宇宙人だけどね。
アンドロイド:僕は人間じゃないから。
宇宙人:それを言うなら、私もこの星の言葉で言う、人間とは違うよ。
宇宙人:そんな私が宇宙人なら、君も宇宙人さ。
アンドロイド:なるほどね。
:
宇宙人:せっかく、やっと会いに来たのに
宇宙人:そうか、滅んじゃったのか。
アンドロイド:って訳だから、ほら、さっさと帰った帰った。
宇宙人:え? なんで。
アンドロイド:何でって
アンドロイド:用事があるから訪ねてきたけど、用事のある人はいませんでした。
アンドロイド:そうなったら、帰るでしょ、普通。
宇宙人:いや、そうなんだけどね。
宇宙人:君、ここでずっと1人だったんでしょ?
アンドロイド:そうだよ。
宇宙人:こういうときって、ほら、話し相手になってくれー、とか
宇宙人:ずっと寂しかったんだー、とかじゃないの?
アンドロイド:ほら、僕、アンドロイドだから。
アンドロイド:寂しいとかないから。
宇宙人:あー、そっか。
宇宙人:そんじゃ、私帰るわ。
アンドロイド:じゃあねー。
:
0:間
:
宇宙人:よっす
アンドロイド:え、なに。
宇宙人:何してんのー?
アンドロイド:帰ったんじゃないの?
宇宙人:1度帰ったけど、遊びに来ちゃった。
宇宙人:別に良いでしょ、他に誰もいないんだし
アンドロイド:太陽系の外、そんなに近いの?
宇宙人:地球外の技術ってやつよ
:
宇宙人:で、何してたのさ?
宇宙人:人間がいなくなって何百年も。
アンドロイド:はぁ。
アンドロイド:次の僕を作ってたんだ。
アンドロイド:僕はずっと、次の自分を作り続けてる。
宇宙人:次の自分?
アンドロイド:ああ、そうだよ。
アンドロイド:同じ一つの体で、何百年も動き続けるなんて出来ないからね
アンドロイド:パーツが壊れちゃったり、機能しなくなったりするから。
宇宙人:なるほど
アンドロイド:だから、地球に残ってる部品を探して
アンドロイド:次の自分の体を作って
アンドロイド:今の体の耐久度が落ちてきたら、データを引き継ぐんだ。
:
宇宙人:便利な体ね。
アンドロイド:そうおもう?
宇宙人:次の体さえ用意出来れば
宇宙人:一生死なないじゃない?
アンドロイド:死なないことは、便利なことなの?
宇宙人:少なくとも、滅びない。
アンドロイド:まあ、そういえばそうなんだけど。
アンドロイド:僕は君と違って、生き物じゃないから。
アンドロイド:最初から、生きてはいないよ。
宇宙人:じゃあ、君はもう滅びてる?
アンドロイド:僕はここに居るだけ。
アンドロイド:居続けてるだけだよ。
宇宙人:なるほど。
:
宇宙人:――私、気がついちゃったな。
アンドロイド:何にさ?
宇宙人:君がおもしろい人だって事。
アンドロイド:人じゃないけどね。
宇宙人:ほら、君は宇宙人だから。
宇宙人:宇宙人は人でしょう?
アンドロイド:君はこのセカイの言葉を知っているの?
宇宙人:少しだけね。
アンドロイド:へえ。
宇宙人:また、遊びに来ても良い?
アンドロイド:好きにしたら良いよ。
宇宙人:やった。
宇宙人:じゃ、帰るね。
アンドロイド:ばいばい。
:
0:間
:
宇宙人:来ちゃった。
アンドロイド:太陽系の外って、もっと遠いと思ってたよ
宇宙人:技術は宇宙を狭くするのよ
アンドロイド:ありがと、おかげで見識が広がったよ。
宇宙人:そういえば
宇宙人:アンドロイドくんさ、名前とかないの?
アンドロイド:名前?
宇宙人:呼び方に困るって言うか
宇宙人:もし他のアンドロイドの生き残りとかが登場したらさ
宇宙人:なんて呼んだらいいか、分からないーってならない?
アンドロイド:現れないよ、生き残りなんて
宇宙人:ほら、万が一さ。
アンドロイド:それに、僕はずっとここに1人だったから
アンドロイド:名前なんて必要なかったんだよ
アンドロイド:だから、名前なんてとうに忘れた。
アンドロイド:データを引き継ぐときに、記憶が薄らぐんだ。
宇宙人:なるほどね。
宇宙人:確かに、他に誰も居なかったら、名前なんて必要ないね。
宇宙人:でも、ほら、今は私が居るから。
アンドロイド:2人だけなら、それでも名前は必要ないよ。
宇宙人:ああそうか、私と君で済んじゃうもんね。
アンドロイド:そう。
宇宙人:つまんないのー
アンドロイド:悪かったね、つまんなくて。
:
宇宙人:……
アンドロイド:……
宇宙人:ほら、私の名前とか聞かなくて良いの?
アンドロイド:2人なら名前なんか知らなくても良いって、言わなかった?
宇宙人:ほらでも、せっかくだしさ。
アンドロイド:いいよ、べつに。
アンドロイド:宇宙人のおねーさんでしょ?
アンドロイド:それで十分。
宇宙人:アンドロイドくんにはおねーさんに見えるのね。
アンドロイド:なんとなくね
宇宙人:なんとなくかー
宇宙人:まあ良いか、それもそれでよし!
:
アンドロイド:そういえばさ
宇宙人:ん? なになに? おねーさんに何か聞きたいことでもあるのかなー?
アンドロイド:……あったけど、聞く気がなくなった。
宇宙人:えー! なんでよー。
アンドロイド:圧がすごいから?
宇宙人:もー
アンドロイド:今日は、まだ帰らないの?
宇宙人:もう帰った方が良い?
アンドロイド:いや、べつに……
宇宙人:じゃあ、もうちょっとここにいよーっと
アンドロイド:好きにしたらいいよ。
宇宙人:やったー
:
0:間
:
宇宙人:やっほー
宇宙人:元気かい、アンドロイド少年。
アンドロイド:おねーさんさ
宇宙人:ん? なになに?
アンドロイド:もうずっと、帰ってないでしょ、自分の星に。
宇宙人:なんでそう思うのー?
アンドロイド:部品を探しに歩いてたら
アンドロイド:あそこのがれきの向こうで、おねーさん見つけたし。
宇宙人:あー、みつかっちゃったかー
アンドロイド:あの乗ってきた乗り物、壊れたの?
宇宙人:あはは、そりゃ見事にね、ぶっ壊れた!
宇宙人:直してるんだけどさ、難しくってね。
アンドロイド:直してあげようか?
宇宙人:え、いいの?
アンドロイド:僕の体も、もうすぐ完成するし。
アンドロイド:今の体は、まだ大丈夫だから、少しくらいなら平気だよ
宇宙人:わーい
アンドロイド:おねーさんうるさいし
アンドロイド:乗り物が直ったら、帰ってくれるんでしょう?
宇宙人:いけずー
アンドロイド:じゃ、連れてってよ。
宇宙人:私の星に?
アンドロイド:壊れた乗り物の場所に
宇宙人:なーんだ。
宇宙人:ほら、こっち。
:
0:間
:
アンドロイド:見事にぶっ壊れてるね。
宇宙人:でしょー
アンドロイド:なんでそんな誇らしげなのさ
宇宙人:無理に直そうとしたら悪化した。
アンドロイド:おねーさんはへっぽこだね
宇宙人:なにをー!
アンドロイド:でもこれなら、きっと直せるよ。
アンドロイド:すこし、時間がかかるかもしれないけど。
宇宙人:時間かかるかー
アンドロイド:しばらくここにいてもいい?
宇宙人:え?
アンドロイド:いちいち向こうまで戻るの、めんどうだし。
宇宙人:いいけど。
宇宙人:逆に、いいの?
アンドロイド:なんで?
宇宙人:いや、べつに。
宇宙人:いいなら、いいのよ♪
アンドロイド:じゃ、ちょっと、作りかけの体と、部品もこっちに持ってくるから
アンドロイド:手伝ってよ。
宇宙人:まかせてー!
:
0:間
:
宇宙人:アンドロイドくんさ
アンドロイド:なに?
宇宙人:私に何か出来ることある?
アンドロイド:ないよ
宇宙人:ないかー
アンドロイド:暇なら散歩でもしてきたら?
宇宙人:いいね、散歩。
宇宙人:一緒に行かない?
アンドロイド:僕は忙しいから。
宇宙人:忙しいかー
宇宙人:私の宇宙船、直してくれてるもんねー
アンドロイド:まあでも
アンドロイド:そろそろ部品も減ってきたし
アンドロイド:拾うついでならいいよ
宇宙人:やったー
アンドロイド:おねーさんはついでね
宇宙人:おねーさんは、ついででもいいのです。
アンドロイド:準備するから、ちょっと待ってて
宇宙人:はーい
:
0:間
:
宇宙人:ねえ、アンドロイドくん
アンドロイド:なに?
宇宙人:そのワゴン、私が引こうか?
アンドロイド:部品が入ると重くなるよ?
宇宙人:力には自信があるから。
アンドロイド:じゃあ任せた。
宇宙人:まかせて!
アンドロイド:……
宇宙人:……よっと。
:
アンドロイド:……おねーさんさ
宇宙人:ん? どした?
アンドロイド:人間に、何の用事があったの?
宇宙人:あ、それ聞いちゃう?
アンドロイド:別に言いたくないなら良いけど
宇宙人:あー、えっとね
宇宙人:アンドロイドくんだから話すんだよ?
アンドロイド:重い話ならパスね。
宇宙人:内緒だよ?
アンドロイド:誰に
宇宙人:お友達に。
アンドロイド:ここにはおねーさんしかいないよ
宇宙人:そうだったね。
:
宇宙人:あー、えっと、何から話すかな。
宇宙人:通信がね、あったんだ。
宇宙人:この星から。
アンドロイド:通信?
宇宙人:うん、通信。
アンドロイド:どんな
宇宙人:「宇宙人いますかー」ってやつ
アンドロイド:雑だね
宇宙人:おもしろいよね
アンドロイド:それだけで、来たの?
宇宙人:まさか。
宇宙人:でも、おもしろそうだったから、返信したんだ。
宇宙人:「いるよー」って
アンドロイド:雑だね
宇宙人:相手のリズムにあわせたのよ。
宇宙人:そしたらね、すごい長文の文章が来たの。
アンドロイド:うわっ
宇宙人:自分は地球に住む、人間という種族だと言うこと
宇宙人:地球外に知的生命体が居てくれて、嬉しいと言うこと
宇宙人:そちらのセカイの事を、教えて欲しいと言うこと。
宇宙人:要約するとそんな感じね。
:
アンドロイド:圧がすごいね。
アンドロイド:僕なら無視する。
宇宙人:私はおもしろがってね、地球の人間って種族に興味を持ったの
宇宙人:だから、こっちの事を教える代わりに、地球のことも教えて?
宇宙人:って、返信したのよ。
アンドロイド:なるほどね
アンドロイド:なんかおねーさんらしいや
宇宙人:でしょ。
宇宙人:それからどのくらいだったかな
宇宙人:忘れたけど、結構長いこと、やりとりをしたんだ。
宇宙人:私は、自分の知っていることの中で、相手のリアクションが良さそうな話題を提供した。
宇宙人:で、私は地球のことと、人間の事、言葉とか、聞いたんだ
宇宙人:楽しかったな。
アンドロイド:だから、おねーさん
アンドロイド:このセカイの言葉を少し知ってるんだ
宇宙人:そゆこと
宇宙人:でもね、ある時を境に、返信が帰ってこなくなったの。
宇宙人:それまでは、寝て起きたら10件とか来てたのに
宇宙人:ぱったり。
アンドロイド:最後の連絡は、どんな内容だったの?
宇宙人:「君から教わった技術で、地球はより豊かになった。君がもし良ければ、地球に招待したい。追ってまた連絡する」
宇宙人:みたいな感じ
:
アンドロイド:……
アンドロイド:……なるほどね
宇宙人:ワクワクするじゃない? よその星に招待してもらえるなんて!
宇宙人:でも、それから、どんなに返信をしても、連絡が無くなっちゃったの。
アンドロイド:連絡していた相手の名前、覚えてる?
宇宙人:それがね。
宇宙人:私バカだから、相手の名前を聞きそびれちゃって。
宇宙人:アンドロイドくんが言ってたように、2人だけの会話に、名前なんて必要なかったから
宇宙人:うっかり聞くの忘れちゃって。
アンドロイド:そうなんだ。
宇宙人:だから、アンドロイドくんにも名前を聞いたのよ。
宇宙人:同じ過ちはしないの、私。
アンドロイド:僕も、忘れちゃってるけどね。
宇宙人:そうなのよねー。
:
宇宙人:……それで、居ても立っても居られなくなって。
宇宙人:招待されてないけどサプライズで行っちゃえーって、来たの。
宇宙人:場所も曖昧で、遠いし、すごく時間がかかっちゃったみたいだけど。
宇宙人:宇宙船の中の通信機でもね、なんども連絡したんだよ?
アンドロイド:それで、たどり着いたら
アンドロイド:僕しか居なかったって訳ね。
宇宙人:そゆこと。
宇宙人:アンドロイドくんに会えて、良かったけどね。
アンドロイド:そう。
アンドロイド:それならよかったよ。
宇宙人:……結構、部品、集まったんじゃない?
アンドロイド:そうだね、これだけあったらしばらくは大丈夫そう。
アンドロイド:もどろうか。
宇宙人:うん、そだね。
アンドロイド:おねーさん。
宇宙人:なに?
アンドロイド:話してくれてありがとうね。
宇宙人:なによ、改まっちゃって。
宇宙人:気にしないで、減るもんじゃないし。
アンドロイド:それなら良いんだけど。
宇宙人:いいのよ
:
0:間
:
アンドロイド:おねーさん、起きて。
宇宙人:ん……ん……
アンドロイド:おねーさん、ほら、起きて。
宇宙人:んぅ……あと5年……
アンドロイド:それは寝過ぎ。
宇宙人:あぅ……あ、アンドロイドくん? おはよー
アンドロイド:おはよう。
宇宙人:どしたの? なんかあった?
宇宙人:まだおねーさん、眠いんだけど……ふあぁ
:
アンドロイド:直ったよ、おねーさんの宇宙船。
:
宇宙人:ん……?
アンドロイド:直ったよ。
宇宙人:え……ほんと?
アンドロイド:ほんと。
宇宙人:わ! すごい! アンドロイドくん! 天才!
アンドロイド:まあね。
宇宙人:よ! 大将! 太っ腹!
アンドロイド:どこで覚えたのそれ
宇宙人:通信で教わったのよ。
アンドロイド:なるほどね。
アンドロイド:……で、これでおねーさんは自分の星に帰れるわけだけど
宇宙人:そうなるね。
アンドロイド:なにかやり残したことは?
宇宙人:んー、特にないかな。
宇宙人:人間も滅びちゃったなら仕方ないし……
宇宙人:探しても本当に、他のアンドロイドすら居なかったしね。
アンドロイド:じゃあ、これでお別れだね。
:
宇宙人:ん? なんで?
アンドロイド:ん? なんでってなんで?
宇宙人:ついてこれば良いじゃん、私の星に。
宇宙人:アンドロイドくん、暇なんでしょう?
宇宙人:なら別に、良いじゃない。
アンドロイド:うーん、そうだなあ。
アンドロイド:嬉しい誘いだけど、やめておくよ。
宇宙人:えーーー!?
アンドロイド:うるさいっ
アンドロイド:いきなり大きい声出さないで。
宇宙人:なんでよー! さみしいー!
宇宙人:絶対そう言う流れじゃん! いけず!
アンドロイド:僕は、もうすぐ、メモリーを引き継がないといけないから。
アンドロイド:次の体を、早く完成させなきゃいけないんだ。
宇宙人:あっ、そうなんだね。
宇宙人:ごめん、私のせいで。
宇宙人:それなら、アンドロイドくんが新しい体作り終えて
宇宙人:メモリーを引き継ぐまで、待ってるよ。
宇宙人:それなら良いでしょう?
:
アンドロイド:ダメ
宇宙人:なんで!
アンドロイド:ダメったらダメ
宇宙人:何でったら何で!
アンドロイド:……はぁ。
宇宙人:なんで!
アンドロイド:話したら、帰ってくれる?
宇宙人:内容によるよ! おねーさん頑固だからね!
アンドロイド:わかったよ、話すから、ちょっと落ち着いて。
宇宙人:(ふんすー!(鼻息))
:
0:間
:
アンドロイド:僕はね、きっと、兵器だったんだ。
宇宙人:兵器?
アンドロイド:うん。たぶんね。
宇宙人:それと、付いてこないのに何の因果関係があるのさー!(ふんす)
アンドロイド:落ち着いてって。
アンドロイド:えっと、僕は、自分の体を新しく作って
アンドロイド:データを移行して、動き続けてるって、話をしたね?
宇宙人:覚えてるよ。
宇宙人:私は便利な体だねって言った。
アンドロイド:そう。
アンドロイド:でも、一つ欠陥があってね。
アンドロイド:自分の初期のプログラムしか引き継げないんだ。
宇宙人:……? つまり?
アンドロイド:前の体で経験したこと、全てを忘れてしまうって事。
宇宙人:要するに……?
:
アンドロイド:察しが、悪いね。
アンドロイド:僕が、新しい体にデータを移し替えたら、おねーさんとの記憶も、無くなっちゃうって事。
アンドロイド:僕はね、今のこの体で、最初に目が覚めたとき
アンドロイド:周りにあるモノを全部こわしてしまったんだ。生き物なんてどこにも居ないのに。
アンドロイド:しばらくの間、本当に、長い間。
アンドロイド:きっと、戦闘用のプログラムがショートするまで
アンドロイド:ずっと、暴れ続けた。
:
宇宙人:なるほど。
アンドロイド:もし、僕がおねーさんの側で、データを移し替えたら
アンドロイド:僕は、おねーさんに襲いかかる。
アンドロイド:おねーさんとの思い出も、全部忘れてね。
宇宙人:そう、だったんだね。
アンドロイド:僕は……そんなの、耐えられないから!
アンドロイド:だから、僕がおねーさんのことを覚えているうちに
アンドロイド:さよなら……しよう。
:
宇宙人:……
アンドロイド:……
宇宙人:アンドロイドくん。
アンドロイド:なに
宇宙人:君はかわいい子だねえ。よしよし。
アンドロイド:僕が、しんみり話してるのに!
宇宙人:でも、そうかー
宇宙人:だから、宇宙船を直すのを手伝ってくれたんだね。
宇宙人:だから、私に早く帰るように言ってくれてたんだね。
アンドロイド:……そうだよ。
アンドロイド:絶対にさよならしないと行けないから、仲良くなんてなりたくなかったのに
アンドロイド:おねーさん、ぐいぐいくるから。
宇宙人:アンドロイドくんが、かわいいのがいけないのよ。
アンドロイド:うるさい!
宇宙人:うーん、難しいなあ。
宇宙人:アンドロイドくんが暴れ出して、私が殺されちゃうとかはないと思うけど。
宇宙人:宇宙船が粉々になっちゃったら大変だからなあ。
アンドロイド:でしょう?
アンドロイド:だから、ばいばいだよ、おねーさん。
宇宙人:うーん。
宇宙人:……
宇宙人:……わかった。
宇宙人:でも、おねーさんね、頑固だから。
アンドロイド:まだなにかあるの?
宇宙人:うーん、そうだなあ。
宇宙人:……内緒。
アンドロイド:……誰に。
宇宙人:君に。
アンドロイド:そーですかい。
:
宇宙人:……
宇宙人:最後に、君の新しい体の完成だけ見届けても良い?
アンドロイド:いいけど、ちゃんと帰ってよ。
宇宙人:ちゃんと帰るからさ。
宇宙人:ほら、部品集めに行こう?
アンドロイド:信用出来ないなー
宇宙人:ほらほら、先行っちゃうよー
:
0:間
:
アンドロイド:せっかく完成した体に……なんて事を……
宇宙人:名前、忘れちゃうのかわいそうだからさ!
宇宙人:おなかにこれだけ大きく書いてあれば嫌でも気付くでしょう!
アンドロイド:書くって言うか、これは削るって言うんだよ。
アンドロイド:名前もセンスないし。
宇宙人:センスないって言うなー!
:
アンドロイド:あ、そういえば
アンドロイド:僕が体を作ってる間、宇宙船の中で何かしてたけど
アンドロイド:何をしてたのさ?
宇宙人:それはねー!
宇宙人:……な・い・しょ!
アンドロイド:不愉快
宇宙人:つめたい! つめたいよ!
アンドロイド:……ふっ……あはは、変なの。
宇宙人:ふふ、変だね。
:
アンドロイド:おねーさんバカだから、帰る途中で迷子とかにならないでよ?
アンドロイド:途中で戻ってきたりもしないでね。
宇宙人:またそんな、バカにしてー! ひどいなー!
宇宙人:戻ってきてーって泣いて言っても、戻ってきてあげないぞ!
アンドロイド:うん。
アンドロイド:おねーさんと会うのは、これが最後だよ。
宇宙人:……うん。そうだね。
アンドロイド:……
宇宙人:……
:
アンドロイド:あのさ、おねーさん。
宇宙人:なあに、アンドロイドくん。
宇宙人:私、しめっぽいお別れは苦手なんだけど。
アンドロイド:僕に、寂しいって感情をくれて、ありがとう。
宇宙人:――しめっぽ!
アンドロイド:うるさい!
宇宙人:……
宇宙人:いいよ。
宇宙人:覚えてるかぎり、好きなだけ、寂しがってるといいわ!
宇宙人:アンドロイドくんは、忘れれるけどね!
宇宙人:私は! 私は……ずっと覚えてるんだから。
宇宙人:私は、ずーーっと寂しいんだから! バカ!
アンドロイド:……うん。
アンドロイド:ありがとう。
:
0:間
:
宇宙人:それじゃあね、アンドロイドくん。
アンドロイド:おねーさんさ……
アンドロイド:せっかく僕に名前をくれたのに、呼んでくれないの?
:
宇宙人:……えっと、それは。
宇宙人:……恥ずかしいなあ。
アンドロイド:いいから、呼んでよ。
:
宇宙人:――君は、私の大切な友達。
宇宙人:だから、君の名前は『フレンド』
アンドロイド:ふれんど……
宇宙人:センスないけど、許してね、フレンド。
アンドロイド:いいよ。
アンドロイド:それくらいは、許してあげる。
宇宙人:忘れないでね。
アンドロイド:それは、どうだろう。
アンドロイド:でも、そうだね……覚えててあげるよ。
宇宙人:ありがと
宇宙人:……じゃあ、行くね。
アンドロイド:うん。
:
宇宙人:――ばいばい、フレンド。
アンドロイド:――
アンドロイド:……ばいばい、おねーさん。
:
0:間
:
アンドロイド:それから、どれほどの時が経ったんだろう。
アンドロイド:僕は僕を失って、新しい僕が動き始めた。
アンドロイド:全てを忘れた僕は、長い一暴れが終わった後
アンドロイド:また、次の僕を作り始めていた。
アンドロイド:そんな時……土の中から、けたたましいサイレンが聞こえてきたのだ。
:
0:間
:
アンドロイド:な、何、この音……!!!
アンドロイド:うるさっ! 土の中!?
アンドロイド:……
アンドロイド:……!! なんだ? これ。
アンドロイド:通信機? メッセージが届いてる。
アンドロイド:……えっと……なになに?
:
宇宙人:『おーい、宇宙人いますかー?』
:
アンドロイド:……ざ、雑だなー。
アンドロイド:でも……まあ、おもしろそうだし。
:
アンドロイド:『ここにいるよ』
:
0:(おしまい)
:
0:間
:
宇宙人:ねえ、そこの君
宇宙人:ねえ、ねえってば、ほら、聞こえてる?
宇宙人:おーい
宇宙人:おーい!
:
アンドロイド:ん?
宇宙人:あ、気がついた?
アンドロイド:……あ……え?
宇宙人:あのさ、えっと、『人間』ってどこにいるか知ってる?
アンドロイド:え、あ、えええ?!
宇宙人:わ、びっくりした。
宇宙人:何さ、いきなり、大きな声だして。
アンドロイド:びっくりしたのはこっちだよ
アンドロイド:だれ、きみ。
アンドロイド:なんでここにいるの?
宇宙人:もう、先に質問したのは私なんだけど。
アンドロイド:あ、ごめん。
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アンドロイド:もう、何百年も、誰かに話しかけられるなんて事なかったから
宇宙人:え、なにそれ。
アンドロイド:そのまんまの意味だよ
アンドロイド:それくらい前に、君の探してるらしい、人間は滅んだの。
アンドロイド:僕以外のアンドロイドも、その時一気にシステム異常で壊れちゃって
宇宙人:わお
アンドロイド:それから、ずっと1人。
アンドロイド:驚いた理由は分かった?
宇宙人:それにしては、ずいぶんとわざとらしい驚き方だったね。
アンドロイド:驚き方も、忘れてたんだよ。
宇宙人:なるほどー。
宇宙人:でも、そうか
宇宙人:なーんだ、人間、滅んじゃったのか
宇宙人:それは残念。
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アンドロイド:で、君はどこの誰で、何しに来たのさ。
宇宙人:んーと、どこの誰って言われると難しいな。
宇宙人:簡単に言うと……太陽系の外から来ました?
アンドロイド:宇宙人さん?
宇宙人:私から見たら君も宇宙人だけどね。
アンドロイド:僕は人間じゃないから。
宇宙人:それを言うなら、私もこの星の言葉で言う、人間とは違うよ。
宇宙人:そんな私が宇宙人なら、君も宇宙人さ。
アンドロイド:なるほどね。
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宇宙人:せっかく、やっと会いに来たのに
宇宙人:そうか、滅んじゃったのか。
アンドロイド:って訳だから、ほら、さっさと帰った帰った。
宇宙人:え? なんで。
アンドロイド:何でって
アンドロイド:用事があるから訪ねてきたけど、用事のある人はいませんでした。
アンドロイド:そうなったら、帰るでしょ、普通。
宇宙人:いや、そうなんだけどね。
宇宙人:君、ここでずっと1人だったんでしょ?
アンドロイド:そうだよ。
宇宙人:こういうときって、ほら、話し相手になってくれー、とか
宇宙人:ずっと寂しかったんだー、とかじゃないの?
アンドロイド:ほら、僕、アンドロイドだから。
アンドロイド:寂しいとかないから。
宇宙人:あー、そっか。
宇宙人:そんじゃ、私帰るわ。
アンドロイド:じゃあねー。
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0:間
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宇宙人:よっす
アンドロイド:え、なに。
宇宙人:何してんのー?
アンドロイド:帰ったんじゃないの?
宇宙人:1度帰ったけど、遊びに来ちゃった。
宇宙人:別に良いでしょ、他に誰もいないんだし
アンドロイド:太陽系の外、そんなに近いの?
宇宙人:地球外の技術ってやつよ
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宇宙人:で、何してたのさ?
宇宙人:人間がいなくなって何百年も。
アンドロイド:はぁ。
アンドロイド:次の僕を作ってたんだ。
アンドロイド:僕はずっと、次の自分を作り続けてる。
宇宙人:次の自分?
アンドロイド:ああ、そうだよ。
アンドロイド:同じ一つの体で、何百年も動き続けるなんて出来ないからね
アンドロイド:パーツが壊れちゃったり、機能しなくなったりするから。
宇宙人:なるほど
アンドロイド:だから、地球に残ってる部品を探して
アンドロイド:次の自分の体を作って
アンドロイド:今の体の耐久度が落ちてきたら、データを引き継ぐんだ。
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宇宙人:便利な体ね。
アンドロイド:そうおもう?
宇宙人:次の体さえ用意出来れば
宇宙人:一生死なないじゃない?
アンドロイド:死なないことは、便利なことなの?
宇宙人:少なくとも、滅びない。
アンドロイド:まあ、そういえばそうなんだけど。
アンドロイド:僕は君と違って、生き物じゃないから。
アンドロイド:最初から、生きてはいないよ。
宇宙人:じゃあ、君はもう滅びてる?
アンドロイド:僕はここに居るだけ。
アンドロイド:居続けてるだけだよ。
宇宙人:なるほど。
:
宇宙人:――私、気がついちゃったな。
アンドロイド:何にさ?
宇宙人:君がおもしろい人だって事。
アンドロイド:人じゃないけどね。
宇宙人:ほら、君は宇宙人だから。
宇宙人:宇宙人は人でしょう?
アンドロイド:君はこのセカイの言葉を知っているの?
宇宙人:少しだけね。
アンドロイド:へえ。
宇宙人:また、遊びに来ても良い?
アンドロイド:好きにしたら良いよ。
宇宙人:やった。
宇宙人:じゃ、帰るね。
アンドロイド:ばいばい。
:
0:間
:
宇宙人:来ちゃった。
アンドロイド:太陽系の外って、もっと遠いと思ってたよ
宇宙人:技術は宇宙を狭くするのよ
アンドロイド:ありがと、おかげで見識が広がったよ。
宇宙人:そういえば
宇宙人:アンドロイドくんさ、名前とかないの?
アンドロイド:名前?
宇宙人:呼び方に困るって言うか
宇宙人:もし他のアンドロイドの生き残りとかが登場したらさ
宇宙人:なんて呼んだらいいか、分からないーってならない?
アンドロイド:現れないよ、生き残りなんて
宇宙人:ほら、万が一さ。
アンドロイド:それに、僕はずっとここに1人だったから
アンドロイド:名前なんて必要なかったんだよ
アンドロイド:だから、名前なんてとうに忘れた。
アンドロイド:データを引き継ぐときに、記憶が薄らぐんだ。
宇宙人:なるほどね。
宇宙人:確かに、他に誰も居なかったら、名前なんて必要ないね。
宇宙人:でも、ほら、今は私が居るから。
アンドロイド:2人だけなら、それでも名前は必要ないよ。
宇宙人:ああそうか、私と君で済んじゃうもんね。
アンドロイド:そう。
宇宙人:つまんないのー
アンドロイド:悪かったね、つまんなくて。
:
宇宙人:……
アンドロイド:……
宇宙人:ほら、私の名前とか聞かなくて良いの?
アンドロイド:2人なら名前なんか知らなくても良いって、言わなかった?
宇宙人:ほらでも、せっかくだしさ。
アンドロイド:いいよ、べつに。
アンドロイド:宇宙人のおねーさんでしょ?
アンドロイド:それで十分。
宇宙人:アンドロイドくんにはおねーさんに見えるのね。
アンドロイド:なんとなくね
宇宙人:なんとなくかー
宇宙人:まあ良いか、それもそれでよし!
:
アンドロイド:そういえばさ
宇宙人:ん? なになに? おねーさんに何か聞きたいことでもあるのかなー?
アンドロイド:……あったけど、聞く気がなくなった。
宇宙人:えー! なんでよー。
アンドロイド:圧がすごいから?
宇宙人:もー
アンドロイド:今日は、まだ帰らないの?
宇宙人:もう帰った方が良い?
アンドロイド:いや、べつに……
宇宙人:じゃあ、もうちょっとここにいよーっと
アンドロイド:好きにしたらいいよ。
宇宙人:やったー
:
0:間
:
宇宙人:やっほー
宇宙人:元気かい、アンドロイド少年。
アンドロイド:おねーさんさ
宇宙人:ん? なになに?
アンドロイド:もうずっと、帰ってないでしょ、自分の星に。
宇宙人:なんでそう思うのー?
アンドロイド:部品を探しに歩いてたら
アンドロイド:あそこのがれきの向こうで、おねーさん見つけたし。
宇宙人:あー、みつかっちゃったかー
アンドロイド:あの乗ってきた乗り物、壊れたの?
宇宙人:あはは、そりゃ見事にね、ぶっ壊れた!
宇宙人:直してるんだけどさ、難しくってね。
アンドロイド:直してあげようか?
宇宙人:え、いいの?
アンドロイド:僕の体も、もうすぐ完成するし。
アンドロイド:今の体は、まだ大丈夫だから、少しくらいなら平気だよ
宇宙人:わーい
アンドロイド:おねーさんうるさいし
アンドロイド:乗り物が直ったら、帰ってくれるんでしょう?
宇宙人:いけずー
アンドロイド:じゃ、連れてってよ。
宇宙人:私の星に?
アンドロイド:壊れた乗り物の場所に
宇宙人:なーんだ。
宇宙人:ほら、こっち。
:
0:間
:
アンドロイド:見事にぶっ壊れてるね。
宇宙人:でしょー
アンドロイド:なんでそんな誇らしげなのさ
宇宙人:無理に直そうとしたら悪化した。
アンドロイド:おねーさんはへっぽこだね
宇宙人:なにをー!
アンドロイド:でもこれなら、きっと直せるよ。
アンドロイド:すこし、時間がかかるかもしれないけど。
宇宙人:時間かかるかー
アンドロイド:しばらくここにいてもいい?
宇宙人:え?
アンドロイド:いちいち向こうまで戻るの、めんどうだし。
宇宙人:いいけど。
宇宙人:逆に、いいの?
アンドロイド:なんで?
宇宙人:いや、べつに。
宇宙人:いいなら、いいのよ♪
アンドロイド:じゃ、ちょっと、作りかけの体と、部品もこっちに持ってくるから
アンドロイド:手伝ってよ。
宇宙人:まかせてー!
:
0:間
:
宇宙人:アンドロイドくんさ
アンドロイド:なに?
宇宙人:私に何か出来ることある?
アンドロイド:ないよ
宇宙人:ないかー
アンドロイド:暇なら散歩でもしてきたら?
宇宙人:いいね、散歩。
宇宙人:一緒に行かない?
アンドロイド:僕は忙しいから。
宇宙人:忙しいかー
宇宙人:私の宇宙船、直してくれてるもんねー
アンドロイド:まあでも
アンドロイド:そろそろ部品も減ってきたし
アンドロイド:拾うついでならいいよ
宇宙人:やったー
アンドロイド:おねーさんはついでね
宇宙人:おねーさんは、ついででもいいのです。
アンドロイド:準備するから、ちょっと待ってて
宇宙人:はーい
:
0:間
:
宇宙人:ねえ、アンドロイドくん
アンドロイド:なに?
宇宙人:そのワゴン、私が引こうか?
アンドロイド:部品が入ると重くなるよ?
宇宙人:力には自信があるから。
アンドロイド:じゃあ任せた。
宇宙人:まかせて!
アンドロイド:……
宇宙人:……よっと。
:
アンドロイド:……おねーさんさ
宇宙人:ん? どした?
アンドロイド:人間に、何の用事があったの?
宇宙人:あ、それ聞いちゃう?
アンドロイド:別に言いたくないなら良いけど
宇宙人:あー、えっとね
宇宙人:アンドロイドくんだから話すんだよ?
アンドロイド:重い話ならパスね。
宇宙人:内緒だよ?
アンドロイド:誰に
宇宙人:お友達に。
アンドロイド:ここにはおねーさんしかいないよ
宇宙人:そうだったね。
:
宇宙人:あー、えっと、何から話すかな。
宇宙人:通信がね、あったんだ。
宇宙人:この星から。
アンドロイド:通信?
宇宙人:うん、通信。
アンドロイド:どんな
宇宙人:「宇宙人いますかー」ってやつ
アンドロイド:雑だね
宇宙人:おもしろいよね
アンドロイド:それだけで、来たの?
宇宙人:まさか。
宇宙人:でも、おもしろそうだったから、返信したんだ。
宇宙人:「いるよー」って
アンドロイド:雑だね
宇宙人:相手のリズムにあわせたのよ。
宇宙人:そしたらね、すごい長文の文章が来たの。
アンドロイド:うわっ
宇宙人:自分は地球に住む、人間という種族だと言うこと
宇宙人:地球外に知的生命体が居てくれて、嬉しいと言うこと
宇宙人:そちらのセカイの事を、教えて欲しいと言うこと。
宇宙人:要約するとそんな感じね。
:
アンドロイド:圧がすごいね。
アンドロイド:僕なら無視する。
宇宙人:私はおもしろがってね、地球の人間って種族に興味を持ったの
宇宙人:だから、こっちの事を教える代わりに、地球のことも教えて?
宇宙人:って、返信したのよ。
アンドロイド:なるほどね
アンドロイド:なんかおねーさんらしいや
宇宙人:でしょ。
宇宙人:それからどのくらいだったかな
宇宙人:忘れたけど、結構長いこと、やりとりをしたんだ。
宇宙人:私は、自分の知っていることの中で、相手のリアクションが良さそうな話題を提供した。
宇宙人:で、私は地球のことと、人間の事、言葉とか、聞いたんだ
宇宙人:楽しかったな。
アンドロイド:だから、おねーさん
アンドロイド:このセカイの言葉を少し知ってるんだ
宇宙人:そゆこと
宇宙人:でもね、ある時を境に、返信が帰ってこなくなったの。
宇宙人:それまでは、寝て起きたら10件とか来てたのに
宇宙人:ぱったり。
アンドロイド:最後の連絡は、どんな内容だったの?
宇宙人:「君から教わった技術で、地球はより豊かになった。君がもし良ければ、地球に招待したい。追ってまた連絡する」
宇宙人:みたいな感じ
:
アンドロイド:……
アンドロイド:……なるほどね
宇宙人:ワクワクするじゃない? よその星に招待してもらえるなんて!
宇宙人:でも、それから、どんなに返信をしても、連絡が無くなっちゃったの。
アンドロイド:連絡していた相手の名前、覚えてる?
宇宙人:それがね。
宇宙人:私バカだから、相手の名前を聞きそびれちゃって。
宇宙人:アンドロイドくんが言ってたように、2人だけの会話に、名前なんて必要なかったから
宇宙人:うっかり聞くの忘れちゃって。
アンドロイド:そうなんだ。
宇宙人:だから、アンドロイドくんにも名前を聞いたのよ。
宇宙人:同じ過ちはしないの、私。
アンドロイド:僕も、忘れちゃってるけどね。
宇宙人:そうなのよねー。
:
宇宙人:……それで、居ても立っても居られなくなって。
宇宙人:招待されてないけどサプライズで行っちゃえーって、来たの。
宇宙人:場所も曖昧で、遠いし、すごく時間がかかっちゃったみたいだけど。
宇宙人:宇宙船の中の通信機でもね、なんども連絡したんだよ?
アンドロイド:それで、たどり着いたら
アンドロイド:僕しか居なかったって訳ね。
宇宙人:そゆこと。
宇宙人:アンドロイドくんに会えて、良かったけどね。
アンドロイド:そう。
アンドロイド:それならよかったよ。
宇宙人:……結構、部品、集まったんじゃない?
アンドロイド:そうだね、これだけあったらしばらくは大丈夫そう。
アンドロイド:もどろうか。
宇宙人:うん、そだね。
アンドロイド:おねーさん。
宇宙人:なに?
アンドロイド:話してくれてありがとうね。
宇宙人:なによ、改まっちゃって。
宇宙人:気にしないで、減るもんじゃないし。
アンドロイド:それなら良いんだけど。
宇宙人:いいのよ
:
0:間
:
アンドロイド:おねーさん、起きて。
宇宙人:ん……ん……
アンドロイド:おねーさん、ほら、起きて。
宇宙人:んぅ……あと5年……
アンドロイド:それは寝過ぎ。
宇宙人:あぅ……あ、アンドロイドくん? おはよー
アンドロイド:おはよう。
宇宙人:どしたの? なんかあった?
宇宙人:まだおねーさん、眠いんだけど……ふあぁ
:
アンドロイド:直ったよ、おねーさんの宇宙船。
:
宇宙人:ん……?
アンドロイド:直ったよ。
宇宙人:え……ほんと?
アンドロイド:ほんと。
宇宙人:わ! すごい! アンドロイドくん! 天才!
アンドロイド:まあね。
宇宙人:よ! 大将! 太っ腹!
アンドロイド:どこで覚えたのそれ
宇宙人:通信で教わったのよ。
アンドロイド:なるほどね。
アンドロイド:……で、これでおねーさんは自分の星に帰れるわけだけど
宇宙人:そうなるね。
アンドロイド:なにかやり残したことは?
宇宙人:んー、特にないかな。
宇宙人:人間も滅びちゃったなら仕方ないし……
宇宙人:探しても本当に、他のアンドロイドすら居なかったしね。
アンドロイド:じゃあ、これでお別れだね。
:
宇宙人:ん? なんで?
アンドロイド:ん? なんでってなんで?
宇宙人:ついてこれば良いじゃん、私の星に。
宇宙人:アンドロイドくん、暇なんでしょう?
宇宙人:なら別に、良いじゃない。
アンドロイド:うーん、そうだなあ。
アンドロイド:嬉しい誘いだけど、やめておくよ。
宇宙人:えーーー!?
アンドロイド:うるさいっ
アンドロイド:いきなり大きい声出さないで。
宇宙人:なんでよー! さみしいー!
宇宙人:絶対そう言う流れじゃん! いけず!
アンドロイド:僕は、もうすぐ、メモリーを引き継がないといけないから。
アンドロイド:次の体を、早く完成させなきゃいけないんだ。
宇宙人:あっ、そうなんだね。
宇宙人:ごめん、私のせいで。
宇宙人:それなら、アンドロイドくんが新しい体作り終えて
宇宙人:メモリーを引き継ぐまで、待ってるよ。
宇宙人:それなら良いでしょう?
:
アンドロイド:ダメ
宇宙人:なんで!
アンドロイド:ダメったらダメ
宇宙人:何でったら何で!
アンドロイド:……はぁ。
宇宙人:なんで!
アンドロイド:話したら、帰ってくれる?
宇宙人:内容によるよ! おねーさん頑固だからね!
アンドロイド:わかったよ、話すから、ちょっと落ち着いて。
宇宙人:(ふんすー!(鼻息))
:
0:間
:
アンドロイド:僕はね、きっと、兵器だったんだ。
宇宙人:兵器?
アンドロイド:うん。たぶんね。
宇宙人:それと、付いてこないのに何の因果関係があるのさー!(ふんす)
アンドロイド:落ち着いてって。
アンドロイド:えっと、僕は、自分の体を新しく作って
アンドロイド:データを移行して、動き続けてるって、話をしたね?
宇宙人:覚えてるよ。
宇宙人:私は便利な体だねって言った。
アンドロイド:そう。
アンドロイド:でも、一つ欠陥があってね。
アンドロイド:自分の初期のプログラムしか引き継げないんだ。
宇宙人:……? つまり?
アンドロイド:前の体で経験したこと、全てを忘れてしまうって事。
宇宙人:要するに……?
:
アンドロイド:察しが、悪いね。
アンドロイド:僕が、新しい体にデータを移し替えたら、おねーさんとの記憶も、無くなっちゃうって事。
アンドロイド:僕はね、今のこの体で、最初に目が覚めたとき
アンドロイド:周りにあるモノを全部こわしてしまったんだ。生き物なんてどこにも居ないのに。
アンドロイド:しばらくの間、本当に、長い間。
アンドロイド:きっと、戦闘用のプログラムがショートするまで
アンドロイド:ずっと、暴れ続けた。
:
宇宙人:なるほど。
アンドロイド:もし、僕がおねーさんの側で、データを移し替えたら
アンドロイド:僕は、おねーさんに襲いかかる。
アンドロイド:おねーさんとの思い出も、全部忘れてね。
宇宙人:そう、だったんだね。
アンドロイド:僕は……そんなの、耐えられないから!
アンドロイド:だから、僕がおねーさんのことを覚えているうちに
アンドロイド:さよなら……しよう。
:
宇宙人:……
アンドロイド:……
宇宙人:アンドロイドくん。
アンドロイド:なに
宇宙人:君はかわいい子だねえ。よしよし。
アンドロイド:僕が、しんみり話してるのに!
宇宙人:でも、そうかー
宇宙人:だから、宇宙船を直すのを手伝ってくれたんだね。
宇宙人:だから、私に早く帰るように言ってくれてたんだね。
アンドロイド:……そうだよ。
アンドロイド:絶対にさよならしないと行けないから、仲良くなんてなりたくなかったのに
アンドロイド:おねーさん、ぐいぐいくるから。
宇宙人:アンドロイドくんが、かわいいのがいけないのよ。
アンドロイド:うるさい!
宇宙人:うーん、難しいなあ。
宇宙人:アンドロイドくんが暴れ出して、私が殺されちゃうとかはないと思うけど。
宇宙人:宇宙船が粉々になっちゃったら大変だからなあ。
アンドロイド:でしょう?
アンドロイド:だから、ばいばいだよ、おねーさん。
宇宙人:うーん。
宇宙人:……
宇宙人:……わかった。
宇宙人:でも、おねーさんね、頑固だから。
アンドロイド:まだなにかあるの?
宇宙人:うーん、そうだなあ。
宇宙人:……内緒。
アンドロイド:……誰に。
宇宙人:君に。
アンドロイド:そーですかい。
:
宇宙人:……
宇宙人:最後に、君の新しい体の完成だけ見届けても良い?
アンドロイド:いいけど、ちゃんと帰ってよ。
宇宙人:ちゃんと帰るからさ。
宇宙人:ほら、部品集めに行こう?
アンドロイド:信用出来ないなー
宇宙人:ほらほら、先行っちゃうよー
:
0:間
:
アンドロイド:せっかく完成した体に……なんて事を……
宇宙人:名前、忘れちゃうのかわいそうだからさ!
宇宙人:おなかにこれだけ大きく書いてあれば嫌でも気付くでしょう!
アンドロイド:書くって言うか、これは削るって言うんだよ。
アンドロイド:名前もセンスないし。
宇宙人:センスないって言うなー!
:
アンドロイド:あ、そういえば
アンドロイド:僕が体を作ってる間、宇宙船の中で何かしてたけど
アンドロイド:何をしてたのさ?
宇宙人:それはねー!
宇宙人:……な・い・しょ!
アンドロイド:不愉快
宇宙人:つめたい! つめたいよ!
アンドロイド:……ふっ……あはは、変なの。
宇宙人:ふふ、変だね。
:
アンドロイド:おねーさんバカだから、帰る途中で迷子とかにならないでよ?
アンドロイド:途中で戻ってきたりもしないでね。
宇宙人:またそんな、バカにしてー! ひどいなー!
宇宙人:戻ってきてーって泣いて言っても、戻ってきてあげないぞ!
アンドロイド:うん。
アンドロイド:おねーさんと会うのは、これが最後だよ。
宇宙人:……うん。そうだね。
アンドロイド:……
宇宙人:……
:
アンドロイド:あのさ、おねーさん。
宇宙人:なあに、アンドロイドくん。
宇宙人:私、しめっぽいお別れは苦手なんだけど。
アンドロイド:僕に、寂しいって感情をくれて、ありがとう。
宇宙人:――しめっぽ!
アンドロイド:うるさい!
宇宙人:……
宇宙人:いいよ。
宇宙人:覚えてるかぎり、好きなだけ、寂しがってるといいわ!
宇宙人:アンドロイドくんは、忘れれるけどね!
宇宙人:私は! 私は……ずっと覚えてるんだから。
宇宙人:私は、ずーーっと寂しいんだから! バカ!
アンドロイド:……うん。
アンドロイド:ありがとう。
:
0:間
:
宇宙人:それじゃあね、アンドロイドくん。
アンドロイド:おねーさんさ……
アンドロイド:せっかく僕に名前をくれたのに、呼んでくれないの?
:
宇宙人:……えっと、それは。
宇宙人:……恥ずかしいなあ。
アンドロイド:いいから、呼んでよ。
:
宇宙人:――君は、私の大切な友達。
宇宙人:だから、君の名前は『フレンド』
アンドロイド:ふれんど……
宇宙人:センスないけど、許してね、フレンド。
アンドロイド:いいよ。
アンドロイド:それくらいは、許してあげる。
宇宙人:忘れないでね。
アンドロイド:それは、どうだろう。
アンドロイド:でも、そうだね……覚えててあげるよ。
宇宙人:ありがと
宇宙人:……じゃあ、行くね。
アンドロイド:うん。
:
宇宙人:――ばいばい、フレンド。
アンドロイド:――
アンドロイド:……ばいばい、おねーさん。
:
0:間
:
アンドロイド:それから、どれほどの時が経ったんだろう。
アンドロイド:僕は僕を失って、新しい僕が動き始めた。
アンドロイド:全てを忘れた僕は、長い一暴れが終わった後
アンドロイド:また、次の僕を作り始めていた。
アンドロイド:そんな時……土の中から、けたたましいサイレンが聞こえてきたのだ。
:
0:間
:
アンドロイド:な、何、この音……!!!
アンドロイド:うるさっ! 土の中!?
アンドロイド:……
アンドロイド:……!! なんだ? これ。
アンドロイド:通信機? メッセージが届いてる。
アンドロイド:……えっと……なになに?
:
宇宙人:『おーい、宇宙人いますかー?』
:
アンドロイド:……ざ、雑だなー。
アンドロイド:でも……まあ、おもしろそうだし。
:
アンドロイド:『ここにいるよ』
:
0:(おしまい)