台本概要

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タイトル ソクラテスの思考実験-caseエリーゼ-
作者名 レンga  (@renganovel)
ジャンル ミステリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 『――君の記憶を巡る、旅に出かけよう。』

【アドリブ:〇 性別変更:× 人数変更:× 重大な改変×】

◆◆あらすじ◆◆
ソクラテスに拾われた、記憶を失った女性「エリーゼ」は
記憶を取り戻すため、ソクラテスの話す「思考実験」に耳を傾ける。
自分の思考、自分の考えと向き合ううちに
彼女は、ソクラテスとの「ある関係」を思い出していく……。

『始まりのテセウスの船から、すべての部品が取り換えられてしまったとき、その船は同じテセウスの船と言えるのだろうか』

――彼女は、どんな答えを導くのだろうか。

◆◆合作情報◆◆

▼猫One~様
代表作:「ラルクド物語」「池田屋襲撃」……etc

【コメント】
初めての方も、そうでない方も、お世話になります♪
猫One〜と言います。
今回レンga。さんとこの合同企画でご一緒させてもらい…
とても素敵なお話となったと自負しています!
手に取ってくださった皆様がこの世界でどんな答えを導くのか
とても楽しみで仕方ありません♪
どうか、この世界を楽しんでいただけたら、幸いです!┏○ペコッ

◆◆執筆方法◆◆
TSW「テーブルトークシナリオライティング」
と言う手法を用い、レンgaと猫One~様で執筆しました。
執筆の際、レンgaが「ソクラテス」のセリフを
猫One~様が「エリーゼ」のセリフを担当しています。

◆◆シナリオ情報◆◆
「ソクラテスの思考実験」[case.エリーゼ]

ソクラテス:レンga執筆担当
エリーゼ:猫One〜様執筆担当

◆◆シリーズ補足◆◆

「ソクラテスの思考実験」シリーズは、合作台本シリーズになっています。
ボイコネで活躍されている、様々なライター様と、僕、レンgaが思考実験をテーマに物語を紡ぐシリーズです。

どのお話も
「謎の青年ソクラテス」:レンga担当
「記憶を失ったキャラクター」:ゲストライター様担当
で、物語を紡いでいきます。

各話のソクラテスは、すべてお相手様のキャラクターに応じて別の性格、人生、考え方をする全く違う人物となっています。
絶対同じ話になることのない、素敵な様々な世界を
ぜひ、お楽しみくださいませ。


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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ソクラテス 101 エリーゼを助けた、不思議な雰囲気の男性
エリーゼ 96 記憶を失っている女性
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:タイトル『ソクラテスの思考実験-case.エリーゼ』  :   :  エリーゼ:ん…、ここは?…ぇっ…待って…私は…誰…。 エリーゼ:怖い…、誰か…いないの?…  :  ソクラテス:よかった、目が覚めたようだね。 ソクラテス:珈琲は、飲めるかな? エリーゼ:…はっ、あ…なたは…誰?  :  ソクラテス:僕は、そうだな。ソクラテスと呼んでくれ。 ソクラテス:屋敷の側で、君が倒れていたものだから、部屋で休んでもらっていた。 ソクラテス:どこか痛いところはないかい? ソクラテス:君はどうして、あんなところで倒れていたんだい?  :  エリーゼ:ソクラ…テスさん…。初めまして… エリーゼ:私…珈琲…というものが何か…さえ、分からない…のだけれど… エリーゼ:それに…一度にたくさん問われても…答えられないわ?  :  ソクラテス:すまない、事を急いてしまうのが僕の悪い癖でね。順番に話をしていこう。  :  エリーゼ:ソクラテスさん…私…は倒れていたの? エリーゼ:どうして、私は倒れていたのか… エリーゼ:それすら…わからない…  :  ソクラテス:なるほど……なにも、覚えていないと。  :  エリーゼ:えぇ…考えても…頭に靄がかかってるみたいで… エリーゼ:思い出せないわ…ごめんなさい… ソクラテス:そう……か。 ソクラテス:君は昨晩 ソクラテス:僕の屋敷の前で倒れていたんだ。 ソクラテス:近くに病院もないもので、そのままにしておくわけにもいかず、 ソクラテス:先ほども言ったように、屋敷で休んでもらっていた。  :  エリーゼ:…そう、なのね… エリーゼ:助けてくださり…ありがとうございます… エリーゼ:それなのに、何も覚えていなくて…ごめんなさい…  :  エリーゼ:ところであの、ソクラテスさん… エリーゼ:さっきおっしゃっていた珈琲とは、飲み物か何かかしら? ソクラテス:ああ、そうだ。飲み物だよ。 エリーゼ:私、とても喉が渇いてて… エリーゼ:もし良ければ、珈琲をいただけるかしら?  :  ソクラテス:もちろん、飲むといい。  ソクラテス:熱いから気を付けてくれ。 ソクラテス:苦ければ、砂糖もある。 ソクラテス:心を落ち着かせるのに、珈琲は最適だろう。 ソクラテス:……口に合えばいいが。  :  エリーゼ:いただきます… エリーゼ:えっ!?何、なんだかとても苦い… エリーゼ:お砂糖…、それ以外は何も入れないのかしら… エリーゼ:…だけど、この香り…、どこかで嗅いだことがある、ような…  :  ソクラテス:……これを。 ソクラテス:ミルクも入れれば、だいぶ苦みも薄まるだろう。 エリーゼ:…ありがとうございます。 エリーゼ:あ、とても優しい色になった… エリーゼ:うん、甘くて素敵… エリーゼ:とても美味しいわ…! エリーゼ:でも…香りは…薄まってしまった… エリーゼ:なんだろう…この感じ… ソクラテス:消えてしまった記憶が、珈琲の香りで呼び出されているのかもしれない。 ソクラテス:何かきっかけがあれば ソクラテス:存外、簡単に思い出すかもしれないね。 エリーゼ:…そう、ね… エリーゼ:だといいのだけれど… エリーゼ:貴方にとっても、気味が悪いでしょう… エリーゼ:自分が誰かもわからない者を、側に置いておくなんて…  :  ソクラテス:そんなことはないさ。 ソクラテス:気にする必要はない。 エリーゼ:早く、記憶を取り戻せたらいいのだけど… エリーゼ:それから、私…この珈琲の香り…とても好きみたい… エリーゼ:この香りから…誰かの姿が記憶の後ろに思い浮かぶ様な…? エリーゼ:だけどそれが誰だか…、思い出せない… エリーゼ:でもそれは…大切な記憶なんだと… エリーゼ:そう思うの… エリーゼ:早く…、その誰かを思いだしてあげたい…!  :  ソクラテス:……! ソクラテス:そ……そうか。 ソクラテス:君の記憶の中のその人が、君にとってどういう人なのか、僕も少し気になるな。 ソクラテス:少し待っていてくれ、ゆっくり話をしよう ソクラテス:僕の分の珈琲も、持ってくることにする。 エリーゼ:…えぇ、私は私がわからない、だから貴方の言葉から… エリーゼ:私の中の記憶を巡る旅をするわ… エリーゼ:いってらっしゃい。  :  ソクラテス:…………待たせたね。 エリーゼ:お帰りなさい、とても素敵な香り… エリーゼ:貴方は、そのままでその珈琲を飲むの? ソクラテス:心を落ち着かせるには ソクラテス:この香りでないと、僕はダメみたいでね。 ソクラテス:あと、甘いものはあまり好きではないんだ。 エリーゼ:そう、なのね… エリーゼ:褐色な飲み物なのに…どこか優しく包みこむ香り… エリーゼ:苦いのがいいんだって…貴方はいつもはにかんで笑っていたわ… エリーゼ:え? エリーゼ:これは…一体誰…のことなの?  :  ソクラテス:僕が、君の記憶の中の誰かと重なっているのかな エリーゼ:…ごめんなさい。 エリーゼ:貴方の言葉から…自然と…想い出?が… エリーゼ:溢れてきたみたい… エリーゼ:貴方の声…とても、聞き覚えがあるような… エリーゼ:気がするからかしら… エリーゼ:貴方の言葉が、記憶の紐に結び付いていく… エリーゼ:そんな気がする ソクラテス:僕は…… エリーゼ:…どうして、そんな…悲しい色を、瞳に浮かべるの? ソクラテス:なに、なんでもないさ ソクラテス:君が、僕の顔をそんなにまじまじと見るから ソクラテス:少し照れてしまっただけだよ。  :  ソクラテス:ささ、話をしよう。話だ。 ソクラテス:僕ならきっと、君の思い出を取り戻す手助けができる。 エリーゼ:えぇ、わかったわ ソクラテス:どうにも、そうだな。 ソクラテス:まずは ソクラテス:君の名前がどうにか思い出せれば、よいのだけれど。 エリーゼ:名前… エリーゼ:私の名前… エリーゼ:思い出せない… エリーゼ:頭の中で…音色が聞こえるような気がするのだけど… エリーゼ:それが何なのかわからない…  :  エリーゼ:ねぇ、ソクラテスさん? エリーゼ:もし、嫌じゃなければ、私に記憶が戻るまで… エリーゼ:なにか名前を…付けていただけないかしら? エリーゼ:ダメ…かしら…  :  ソクラテス:……エリーゼ。  :  ソクラテス:君のことは、エリーゼと呼ぶことにするよ。 エリーゼ:エリーゼ…とても素敵な名前ね! エリーゼ:嬉しいわ、ありがとう! ソクラテス:じゃあ……エリーゼ。 ソクラテス:――君の記憶を巡る、旅に出かけよう。 ソクラテス:少し難しい問いを、君に投げかける。 ソクラテス:それに対する君の答えを、僕は聞きたい。 ソクラテス:……いいかい? エリーゼ:…わかったわ。 エリーゼ:記憶がないままの答えになっても、怒らないでもらえるかしら…? ソクラテス:もちろんさ ソクラテス:記憶がないからこそ、君本来の答えが導き出されるだろう。 ソクラテス:そうすれば、思い出も戻ってくるはずさ。 エリーゼ:そうね… エリーゼ:貴方ならきっと導いてくれる… エリーゼ:何故だかそう思うから… エリーゼ:よろしくお願いします。  :   :  ソクラテス:エリーゼ、君は『テセウスの船』と言う話を知っているかな? エリーゼ:…いいえ、わからないわ? エリーゼ:それは一体どんな船、なの? ソクラテス:テセウスという人物が乗っていた船さ。 ソクラテス:それは長い長い航海をしていた船でね、いつしか所々の部品が、壊れていってしまったんだ。 エリーゼ:…部品が壊れる。 エリーゼ:そうなると、交換しなければ…旅は続けられない… ソクラテス:……そう、エリーゼ。君の言う通り、壊れてしまったら、別の部品に取り換えていく。旅を続けるには、そうするしかないんだ。 ソクラテス:いつしか、すべての船の部品が取り換えられてしまって……もともとのテセウスの船についていた部品は、すべて外されてしまったんだ。 ソクラテス:そこでふと、 ソクラテス:テセウスは疑問に思う。  :  ソクラテス:『すべての部品が取り換えられてしまったとき、その船は同じテセウスの船と言えるのだろうか』 ソクラテス:とね。  :  ソクラテス:これが、『テセウスの船』という問いだ。 ソクラテス:――エリーゼ、君はどう考える?  :  エリーゼ:… エリーゼ:とても、難しい問いね… ソクラテス:……難しいだろうとも、答えのない問いだからね。 ソクラテス:だから、ゆっくり考えてくれてかまわない。 ソクラテス:思考の中で、君は自分を見つけるんだ。  :  エリーゼ:もし、全ての部品が変わっても… エリーゼ:そのテセウスが旅をする為に乗り込んだ船なのだと… エリーゼ:そう思えば、目的として、選んだその船は母体として変わらない意味を持っている… エリーゼ:だけど、時を共にしたものが… エリーゼ:一つずつ新しい部品に全てが変わった船を見て、テセウスが… エリーゼ:どこか違う気持ちを…本人が感じてしまえば… エリーゼ:それは違うものとなるのではないかしら… エリーゼ:物としての感情は、物からは発する事はない… エリーゼ:だからこそ…そこに必要なのは… エリーゼ:人の気持ち、かしら?  :  ソクラテス:君は『その持ち主がどう思うか』で、変わってくると言いたいんだね。 ソクラテス:テセウスの船そのものがどうか、ではなく。それを持つものが、それを元の船と違うと思えば、それはもう、別のものになってしまっていると。 エリーゼ:えぇ。 エリーゼ:だって…物に気持ちなどありえない… エリーゼ:だからこそ、人の気持ちが…愛着という思いに変えて、記憶として紐づける… エリーゼ:そう思うの  :  ソクラテス:……そうか。 ソクラテス:人の気持ち……記憶、思い出が、それが何か、どういうものかを決定づけると。 ソクラテス:だからこそ、たとえ見た目が全く同じテセウスの船でも、テセウス自身が、今までの旅の思い出の中にいた船と、違うものだと思ってしまえば、それは違う船だと言う事だね。 エリーゼ:えぇ、そうね。 エリーゼ:だって不思議だと思わない? エリーゼ:目を覚ましたばかりの私は… エリーゼ:名前がなかった… エリーゼ:でも、今、エリーゼという名前をあなたにつけてもらったの… エリーゼ:私が、船ならば、新しい部品と交換したのよ…? エリーゼ:そこにすでに…違いがあると感じるの。  :  ソクラテス:確かに、エリーゼ、君の言うとおりだ。 ソクラテス:僕は君に名前を付けた。 ソクラテス:『名前』と言う部品を取り替えた……ことになる。 ソクラテス:それじゃあ……もう一つ。 ソクラテス:少し意地悪な質問をしてもいいかな?  :  エリーゼ:えぇ、構わないわ…? ソクラテス:ありがとう。 ソクラテス:一つ、思いついてしまってね。 ソクラテス:その答えを君に聞いてみたくなったんだ。 エリーゼ:…何かしら。 エリーゼ:ソクラテスさんはとても、人の心の真髄を奥底から引っ張り出してしまいそうで… エリーゼ:とても答えに迷ってしまいそう… ソクラテス:君の考えは……とても、温かい。 ソクラテス:だからこそ、この問いを思いついてしまったんだろう。君の考えが、知りたくなった。  :  エリーゼ:ねぇ、その前に… エリーゼ:もう一杯、珈琲をいただけるかしら? エリーゼ:今度は、砂糖もミルクもいらないわ。 エリーゼ:構わない? ソクラテス:あ、ああ。 ソクラテス:……構わないよ、待っていてくれ。 エリーゼ:ありがとう…  :  ソクラテス:……待たせてしまって悪いね。 ソクラテス:挽いた豆を切らしていたんだ。 ソクラテス:これを。 ソクラテス:熱いから気を付けて。 エリーゼ:あぁ、この香り… エリーゼ:私は…、貴方を知りたくて… エリーゼ:ミルクも砂糖も…入れなくなった… エリーゼ:だけど、それは… エリーゼ:貴方には告げる事はなかった… エリーゼ:なぜなのかしら…でも…えぇ… エリーゼ:私なりの貴方への問いであり、答えだったのだと思う… エリーゼ:あ、ごめんなさい… エリーゼ:どうしても…今の気持ちのまま、このブラックの珈琲を飲みたかったの… エリーゼ:ありがとう… エリーゼ:お話を続けて…?  :  ソクラテス:…… ソクラテス:……ああ。 ソクラテス:つづけよう。  :  ソクラテス:……もし、テセウス自身が、今の船は今までの船とは違うと感じていたとしよう。 ソクラテス:君が言っていた通り、その場合、その船はテセウスの船ではなくなってしまっている。 ソクラテス:しかし、だ。 ソクラテス:テセウス以外のすべての乗組員が ソクラテス:『あの船は変わらず、部品が変わっても自分たちが旅をしたテセウスの船だ』 ソクラテス:と、言ったら。 ソクラテス:その船は『テセウスの船』か『別の新しい船』か。 ソクラテス:――君は、どう考える?  :  エリーゼ:…それは、とても難しい問題ね…。 エリーゼ:でも単純に考えて答えてしまえば… エリーゼ:テセウスにとって、その船は、テセウスの船ではない。 エリーゼ:大切なのは、その船が同じか エリーゼ:ではなくて… エリーゼ:旅が終わった時、その目の前の船を見て、この船で良かったと…思えるか、じゃないかしら?  :  ソクラテス:旅をし終わったときに、どう思うか……か。  :  エリーゼ:テセウスが最初の船じゃなきゃダメと感じるなら、旅自体の意味を無くすわ? エリーゼ:だけど、旅はしたい。 エリーゼ:でも部品を変えなければ、旅は続けられなかった。 エリーゼ:だからテセウスは部品を変えながら、旅を続けたのでしょう? エリーゼ:そのせいで船そのものは変貌を遂げ、最初とは全く違う姿となった。 エリーゼ:でもそれに対して、お前は違う船だ!と言うなら、旅をしなければ良かっただけ。 エリーゼ:結局、たどり着いた旅の終わりに感じる気持ち… エリーゼ:それが本心で、答えじゃないかしら? エリーゼ:他の船員達は、きっと。 エリーゼ:旅の終わりに、この船自体の意味を理解して、テセウスの船だと…言ったのだと思う。 エリーゼ:姿は全く別のものになった船…。 エリーゼ:だけど、その船に乗せた最初の想いは旅の中で積み重なり、たどり着いた答えは、愛着… エリーゼ:だから「テセウスの船」と言わしめたのではないかしら… エリーゼ:結局… エリーゼ:どの答えも間違えではなくて… エリーゼ:導く答えそのものは… エリーゼ:人の想い…なんだと私は思う。  :  エリーゼ:私が珈琲は甘いのが好きだったのに… エリーゼ:たどり着いた答えは… エリーゼ:ブラックで…飲む事…そういう事なのね…  :  ソクラテス:エリーゼ。 ソクラテス:僕は君に、とても酷な質問をしてしまったのかもしれない。  :  ソクラテス:僕は、君に『名前』と言う部品を与えたと比喩をしたね。 ソクラテス:名前を忘れていた、甘い珈琲を飲んでいた君も。 ソクラテス:エリーゼと言う名前を与えられた、今、苦い珈琲を飲んでいる君も…… ソクラテス:僕から見たら、同じ女性だ。  :  エリーゼ:そう…ね…確かにそうかも知れない… エリーゼ:でも、同じ女性だという視点には エリーゼ:愛着がないから…じゃないかしら。 エリーゼ:それがもし、あなたにとって。 エリーゼ:愛している女性なら。 エリーゼ:名前、仕草、飲み方、普段なら気にも留めないことが… エリーゼ:特別なものに映るかもしれない。 エリーゼ:それが、違いに見えるのではないかしら…? エリーゼ:知らなくても、気に留めなかったものが… エリーゼ:感情が入れば…違いさえ…許せなくなったりする… エリーゼ:それが…思いなのかも知れない。  :  ソクラテス:……僕は、 ソクラテス:……まだ、君のことを理解していないから ソクラテス:名前のない君も、今の君も、同じだと感じていると。 ソクラテス:つまりは君は、そう言っているんだね。  :  ソクラテス:…… ソクラテス:なるほど、これは痛いところを突かれたかもしれない。  :  エリーゼ:それは…私も同じかも知れないわ…? エリーゼ:ソクラテスさんの事、私もよく分かっていないもの… エリーゼ:だから、どこか、本当の自分とは違うままで、答えているかも知れない…  :  ソクラテス:……いいや、君は変わらないさ。  :  エリーゼ:…? エリーゼ:そうかしら…? エリーゼ:もしこの先にあなたをたくさん知れた時… エリーゼ:同じ質問の答えを…あなたに聞いてみたいわ? エリーゼ:ねえ、堅苦しいお話は少し休憩して、…お散歩でもご一緒しない? ソクラテス:……ああ、構わないよ。 ソクラテス:もう、体は動けるのかい? エリーゼ:えぇ、怪我はあるみたいだけれど… エリーゼ:あなたが処置してくださったのがとても適切だったのね… エリーゼ:ありがとう ソクラテス:よかった、安心したよ。  :  エリーゼ:どうしてか、わからないのだけど… エリーゼ:じっとしていると… エリーゼ:何かをし忘れている…そんな気持ちが込み上げてくるの… エリーゼ:何かをしていなければいけなかった… エリーゼ:どこかそれは…強迫観念にも似ていて… エリーゼ:とても不安な気持ちに襲われるわ… エリーゼ:だから少しだけでいい、気分転換したいの… エリーゼ:わがままかしら…?  :  ソクラテス:大丈夫かい? ソクラテス:顔色が、あまりよくないみたいだけれど。 ソクラテス:……君が、そうしたいというのであれば ソクラテス:僕は、付き合うよ。 ソクラテス:立てるかい?  :  エリーゼ:嬉しい…ありがとう! エリーゼ:私、少し風にあたりたい! エリーゼ:歩き回るのは…無理そうだから… エリーゼ:何か補助するものがあれば…、なんてあるわけないわね… ソクラテス:それなら、車いすの用意がある。 ソクラテス:昔……知り合いが使っていたものでね。 ソクラテス:彼女は少し前に亡くなってしまったから、若干埃をかぶってしまっているが。 ソクラテス:……それでも、よければ。  :  エリーゼ:まぁ、とてもありがたい…! エリーゼ:あなたに押させてしまうけれど、よかったら案内も兼ねて、お願い出来るかしら? ソクラテス:ああ……任せて。 ソクラテス:この辺りは、緑が豊かだからね。 ソクラテス:良い気分転換になるだろう。 エリーゼ:嬉しい! エリーゼ:とても楽しみだわ! エリーゼ:じゃあ…いきましょう!  :  0:間  :  ソクラテス:『――後悔があった ソクラテス:君は、どうだろう ソクラテス:後悔は、あっただろうか。 ソクラテス:けれども、もうそれを知るすべはない。 ソクラテス:僕は、自分の後悔を消し去るために ソクラテス:ただただ、未だ動かない、君に向き合う。 ソクラテス:「君」が目を覚ます、その瞬間まで。  :  ソクラテス:――心が、そこにあると信じながら。  :  0:間  :  エリーゼ:「貴方は私のどこが好きなの?」 ソクラテス:「君がピアノを弾く、その表情が好きだ」 ソクラテス:「鍵盤しか見ていない、僕を映さない瞳が好きだ」 エリーゼ:「ピアノを弾く私…面白い答えだわ。 エリーゼ:でも、それは、私を好きとは言わないのよ」 ソクラテス:「君がピアノを弾くたびに、僕は君に恋をする。一体それの、どこが間違っているというんだ?」 エリーゼ:「わからないなら、それでいい…」  :  エリーゼ:「あなたは、この空を飛ぶ鳥を見てどう感じるの?」 ソクラテス:「またそういう質問か」 ソクラテス:「鳥は椅子に座って、のんびりできずにかわいそうだと思うね」 エリーゼ:「そう…。私は鳥が羨ましいわ。 エリーゼ:自由に思う場所へ飛んでいける… エリーゼ:その羽が私にあれば…もっと自由だったのかも知れない…」  :  ソクラテス:「僕はそうは思わない」 ソクラテス:「羽根も足もあるなんて、贅沢だよ」 エリーゼ:「贅沢…、そうかしら。 エリーゼ:貴方は足も問題なく使うことができるから、そう思うのかも知れないわ。 エリーゼ:貴方は、自分が変わりたいなんて… エリーゼ:思ったことなんてないのでしょうね」  :  エリーゼ:「私の姿・形を愛してくれてありがとう。 エリーゼ:でも、それが貴方の答え。 エリーゼ:だから私の答えを貴方に送るわ」  :  ソクラテス:「……」 ソクラテス:「待ち、くたびれたよ」 ソクラテス:「教えてくれ……君の答えを」  :  エリーゼ:「私は、ピアノしかなかった。 エリーゼ:足も不自由で、だからピアノだけが私の生きている術だった。 エリーゼ:そんな必死な私の姿を貴方は、愛してると言ってくれた。 エリーゼ:私は…貴方にとって、一つの形。 エリーゼ:だけど私は…! エリーゼ:ピアノを弾けなくても、足が自由だったとしても… エリーゼ:私という自分の中にある、本質を愛して欲しかった! エリーゼ:貴方のために変わりたかった…私。 エリーゼ:変わる事を望まない貴方。 エリーゼ:そんな貴方を私は愛せない。 エリーゼ:だから、これでお別れよ。」  :  0:間  :  ソクラテス:――どうした、味が濃かったか?  エリーゼ:いいえ、そんな事はないわ ソクラテス:さっきから、手が止まっているように感じてね。 ソクラテス:口に合わなかったなら、そう言ってくれればいい エリーゼ:そう…ね、あまりこの味は好きじゃないかな… エリーゼ:でも、ちゃんと食べるわ。 エリーゼ:気にしてくれてありがとう ソクラテス:……そう、か。 ソクラテス:いや、いいんだ。作り直してこよう。 ソクラテス:少し、待っていてくれ。 ソクラテス:それは、僕が食べる。  :  エリーゼ:?! エリーゼ:どうしたの? エリーゼ:私が口をつけたものなのに… エリーゼ:いつもなら、食べるなんて言葉…言わないあなたが… エリーゼ:でも…それってなんだか嬉しいわ…! エリーゼ:だけど大丈夫、ちゃんと食べるから! エリーゼ:その代わり、今度は私もあなたと一緒に作るわね? エリーゼ:私の好きな味をあなたにも知って欲しいから♪  :  ソクラテス:君は…………いや。 ソクラテス:わかった、今度、一緒に作ろうか。 エリーゼ:ええ!約束ね!  :  0:間  :  エリーゼ:今日はすごく空が青くて綺麗! エリーゼ:みてみて!鳥が飛んでいるわ! ソクラテス:鳥……か。 ソクラテス:本当だ、たくさん飛んでるね。 エリーゼ:えぇ!でも、自由に飛ぶ鳥達は… エリーゼ:何を求めて飛ぶのかしら… エリーゼ:生きるため、かしら…  :  ソクラテス:僕たちが、何を求めて歩くのかと ソクラテス:もし鳥に聞かれたら、何と答えるかな。 ソクラテス:……きっと、その答えと同じ言葉が ソクラテス:鳥からも、返ってくると思うよ  :  エリーゼ:そうね… エリーゼ:私ならきっと、一緒に同じ世界を見ることができる…仲間や、愛するものと出会う為…かしら エリーゼ:一羽なら…きっと寂しくて エリーゼ:飛ぶ事をやめてしまうかも知れない  :  ソクラテス:そうだね。 ソクラテス:僕は、一人で歩くことは、きっとできない。 エリーゼ:そっか…良かった… エリーゼ:あなたも、私も、気持ちを分かち合いたいと…願ってるのね エリーゼ:あなたが時折みせる、寂しそうな瞳…気になっていたの エリーゼ:あなたはあまり、感情を表に出さないけれど… エリーゼ:あなたの優しさは…私には届いているわ ソクラテス:……!  :  エリーゼ:私を助けてくれたのが…あなたで…良かった…  :  ソクラテス:それは……! ソクラテス:……そう、言ってもらえて、嬉しいよ。  :  0:間  :  エリーゼ:気になっていたのだけど… エリーゼ:あなたの周りにあるものは、どこか、誰かの為のものみたいな… エリーゼ:気のせいならごめんなさい… エリーゼ:この…埃被った…ピアノ…とか…  :  エリーゼ:あなたは一度も奏でた事はない… エリーゼ:調べてみたの、これが何なのかを… エリーゼ:演奏するものでしょ? エリーゼ:なのに、もう長い間、開けられた様子もない… エリーゼ:でも、大切な物のように感じるの…  :  ソクラテス:そのピアノの音色は、僕のものじゃないから ソクラテス:もう、ずいぶんと長い間、弾いていないんだ。 エリーゼ:… ソクラテス:大切なもの、そう……だね。 ソクラテス:とても大切なものだよ、その音色は。  :  エリーゼ:…音色。 エリーゼ:弾いていた誰か、ではなくて…? ソクラテス:――ああ。 ソクラテス:きっと僕は、勘違いをしていたんだ。 ソクラテス:でも、もうその音色を奏でる人はいないからね。 ソクラテス:君は、気にしなくてもいいさ。 ソクラテス:それとも……気になるかい?  :  エリーゼ:…えぇ。 エリーゼ:あなたがそこまで、想いを寄せる音色… エリーゼ:勘違い、というその理由… エリーゼ:あなたを知りたいから… エリーゼ:教えてほしい  :  ソクラテス:そのピアノを、弾く女性がいたんだ。 ソクラテス:ひどく儚げでね、でも、強い人だった エリーゼ:… ソクラテス:彼女は僕から、ピアノを奪ったんだ。 ソクラテス:その音色が、それまでの僕の全てだったピアノを奪い ソクラテス:僕の人生を、台無しにした。 ソクラテス:憎かったけれどね、同時に、憧れたんだ。  :  エリーゼ:…愛して、いたのね…その人を。  :  ソクラテス:いいや、違うさ、エリーゼ。 ソクラテス:その人の指先から奏でられる音色に ソクラテス:その旋律に恋をした。  :  ソクラテス:僕はそれを ソクラテス:彼女に恋をしているのだと、勘違いをしていた。 ソクラテス:でも、全部彼女は、わかってたんだ。 ソクラテス:僕は……今の今まで、わからなかったのに。  :  エリーゼ:…でも、あなたは…今でも…その音色を愛しているのね…  :  ソクラテス:――そうだ、そのはずなんだ! ソクラテス:それなのに、そのはずなのに、どうして! ソクラテス:「君」を目の前にして、「君」と過ごして ソクラテス:どうしてこんなに、胸が張り裂けそうなんだ!!  :  エリーゼ:…あなたは エリーゼ:不器用で優しい人なのね エリーゼ:本当は…音色に恋をしたんじゃないわ、ソクラテス。 エリーゼ:あなたは間違いなく、その彼女を愛していた… エリーゼ:だから、彼女が紡ぐ音そのものを、彼女として…愛していたのよ  :  ソクラテス:――エリーゼ。  :  エリーゼ:彼女が、もし… エリーゼ:彼女じゃない人が、同じものを弾いた音色に、あなたは恋をしたかしら? エリーゼ:きっと…違うわね… エリーゼ:だってあなたは…とても一途な人だもの… エリーゼ:哀しそうな瞳の色は…忘れられない想いを映した影…だったのね…  :  ソクラテス:――エリーゼ! エリーゼ:…いいのよ、ソクラテス。 ソクラテス:その瞳に、僕を映さないでくれ! エリーゼ:一つだけ、私が言える事は… ソクラテス:僕は、僕は……君のために……! エリーゼ:その影を背負うあなたごと…愛しているわ…  :  ソクラテス:――一度死んでしまった君を、エリーゼ、君を!! ソクラテス:……この手で、生き返らせたんだ!!  :  エリーゼ:?!  :  0:間  :  ソクラテス:『――後悔は、消えなかった。 ソクラテス:「君」は、「君」であるはずなのに ソクラテス:目を覚ました「君」は、僕が知らない「君」だった ソクラテス:今、僕は、僕を知り、「君」に向き合う。 ソクラテス:「僕」の答えが目を覚ます、その瞬間まで』  :  0:間  :  エリーゼ:いや…何…を…言っている…の? エリーゼ:聞きたくない…怖い… エリーゼ:私を…生き、かえ、らせた…? エリーゼ:そんな…バカげた話を…私が信じるとでも…?!  :  ソクラテス:……聞いてほしい。 ソクラテス:君が、君でいるために。 ソクラテス:本当のことを、君は知るべきだ。  :  エリーゼ:…私が…私でいるため… ソクラテス:……そう。 ソクラテス:今の君が、君でいるために。 エリーゼ:今の私のままでも…私なの… エリーゼ:記憶が全て取り戻せなくても… エリーゼ:それごと…今の私なの!  :  ソクラテス:エリーゼ。 ソクラテス:君がそう言うのであれば、言い方を変えさせてくれ ソクラテス:僕のために、知ってほしいんだ。 ソクラテス:僕が、今の君に、ちゃんと向き合うために エリーゼ:…向き合う エリーゼ:あなたが、私と… エリーゼ:そう言われたら…拒否できないじゃない… エリーゼ:ズルい言い方ね…  :  ソクラテス:ズルい……か。 ソクラテス:確かにその通りだ。 エリーゼ:…ごめんなさい エリーゼ:わかったわ。あなたの話を聞かせて… ソクラテス:ありがとう。  :  ソクラテス:『テセウスの船』の話を、覚えているかい? エリーゼ:…えぇ、覚えている。 エリーゼ:とても…心に残る問いかけだったから  :  ソクラテス:君は一度、命を落とした。 ソクラテス:ひどい事故で、体はもう使いようのない状態になってしまったんだ。 エリーゼ:…?! ソクラテス:僕は、君を失うことを受け入れられなかった ソクラテス:だから、君の代わりの体を用意して、その体に君の脳を移植した。 ソクラテス:……信じられないかも知れないけれど、そういう技術を持つ友人がいてね、僕の願いを叶えてもらったのさ。  :  エリーゼ:どうして…?! エリーゼ:…そこまでして、叶えたかった願いは…なんなの?! エリーゼ:失いたくない…それだけで…? エリーゼ:違うわよね… エリーゼ:神の領域を超える世界を見たかった理由は…なんなの?!  :  ソクラテス:――また、君に会いたかった。  :  ソクラテス:いいや、ちがうな ソクラテス:――後悔が、あったんだ。 ソクラテス:どうしても、君に伝えないといけない事があった! ソクラテス:僕は…… ソクラテス:だから、だから僕は……!!……君を!!! ソクラテス:…………それなのに。 ソクラテス:……  :  ソクラテス:――君は、君じゃなかった。  :  エリーゼ:…私じゃなかった… エリーゼ:じゃあ…あなたの目の前にいる… エリーゼ:ここで息をして、あなたに恋をしている私は… エリーゼ:一体…なんなの?! エリーゼ:ねぇ!!!教えてよ!!!  :  ソクラテス:でも…… ソクラテス:――君は、「君」だよ。  :  ソクラテス:君は、言ったね ソクラテス:それ自身の本質を決めるのは、「想い出」だって。 ソクラテス:「愛着」だって。  :  ソクラテス:僕は、今の君と過ごした「思い出」を持っている。 ソクラテス:君が僕を知るために飲んでくれた、苦い珈琲の香り。 ソクラテス:君の好きな味を僕が知るために、一緒に料理だってした。 ソクラテス:青空を羽ばたく鳥を、あれほど綺麗な瞳で追った君は、まぎれもない「君」自身だ。  :  エリーゼ:…あなたが。 エリーゼ:愛した、過去の私…。 エリーゼ:そして、今を生きる過去とは違う私…。 エリーゼ:あなたにとって、私は… エリーゼ:同じものなの?  :  ソクラテス:……エリーゼ。 ソクラテス:今の君は、間違いなく、過去の君とは違う。 ソクラテス:そして僕も、過去の僕とは違う。 エリーゼ:…ソクラテス ソクラテス:僕は今の君を、愛してしまった。 ソクラテス:ピアノに一度も触れる事のない、僕をまっすぐに見つめる君が、愛おしくて仕方がないんだ。  :  エリーゼ:あなたが愛した音色を…頭の中で… エリーゼ:奏でる事が出来るのに… エリーゼ:私は…この身体で…奏でる事は出来ない… エリーゼ:あなたが愛した想い出を…今の私は…思い出にはしてあげられない エリーゼ:だけど、あなたを知りたいと思って、あなたが好きなブラックの珈琲を…同じ形で飲んだ私は… エリーゼ:記憶の中にある私の過去は… エリーゼ:間違いなく…あなたを愛していた想い出。 エリーゼ:でも、それ以上に… エリーゼ:今の私の好きな味を、美味しそうに食べてくれるあなたを…私は失いたくないの…  :  エリーゼ:あなたが望んだ…過去の私ではなく… エリーゼ:もう一度…あなたと時を過ごす事を許された… エリーゼ:今の私自身を… エリーゼ:あなたは、同じとしてではなく… エリーゼ:今の一人の私として… エリーゼ:求めてくれますか?  :  ソクラテス:僕は、今、僕の瞳に映る君を ソクラテス:過去の君ではない、今の君を、愛している。  :  エリーゼ:実はね… エリーゼ:あなたのそばに…いたくて… エリーゼ:あなたを突き放した…過去の記憶を… エリーゼ:本当は想い出していた事を…打ち明けられなかったの… エリーゼ:過去の私は、あなたを突き放した。 エリーゼ:その時の想い、そして今のあなたと過ごして感じる思い… エリーゼ:それは…同じようで、同じではない事… エリーゼ:過去の記憶を取り戻した事を、あなたに告げたら… エリーゼ:ここにいられない気がした。  :  エリーゼ:でも…今のあなたを見ている私も… エリーゼ:過去にあなたを愛していた、私も… エリーゼ:本質は…変わらない想い… エリーゼ:私は、あなたに…私の心を愛して欲しかった… エリーゼ:私という中身を…あなたに知って欲しかった…  :  エリーゼ:私は…生まれ変わる前から… エリーゼ:あなたに…恋をしていた…  :  ソクラテス:……! ソクラテス:君を……君を、生き返らせたこと ソクラテス:僕の勝手で、君をもう一度目覚めさせたこと ソクラテス:間違いだと、思っていた。 ソクラテス:でも、君の、その言葉で…… ソクラテス:うまく、言葉に、できないけれど…… 0: ソクラテス:――救われたよ。  :  エリーゼ:ソクラテス… エリーゼ:私を生き返らせてくれた事に…感謝は、しないわ… エリーゼ:だけど…もう一度…あなたを愛せた事…、そして。 エリーゼ:今の私を、本当のあなたの気持ちのまま…向き合ってくれた事に…感謝します…  :  エリーゼ:愛しているわ…ありのままのあなたを…  :  0:間  :  ソクラテス:『――航海が終わった。 ソクラテス:その時、君は「君」のまま ソクラテス:僕を瞳に映して、笑ってくれた。 ソクラテス:「僕」は、「君」に、伝えないといけないことがある』  :   :  ソクラテス:――僕も、君を、愛している。  :   :  0:間  :   :  エリーゼ:この物語を読んでいる、聴いている、「あなた」に問います。 ソクラテス:『始まりのテセウスの船から、すべての部品が取り換えられてしまったとき、その船は同じテセウスの船と言えるのだろうか』  :  エリーゼ:あなたは、どう感じ、 ソクラテス:――どう……答えますか?  :   :  0:――FIN――  :   :   :

0:タイトル『ソクラテスの思考実験-case.エリーゼ』  :   :  エリーゼ:ん…、ここは?…ぇっ…待って…私は…誰…。 エリーゼ:怖い…、誰か…いないの?…  :  ソクラテス:よかった、目が覚めたようだね。 ソクラテス:珈琲は、飲めるかな? エリーゼ:…はっ、あ…なたは…誰?  :  ソクラテス:僕は、そうだな。ソクラテスと呼んでくれ。 ソクラテス:屋敷の側で、君が倒れていたものだから、部屋で休んでもらっていた。 ソクラテス:どこか痛いところはないかい? ソクラテス:君はどうして、あんなところで倒れていたんだい?  :  エリーゼ:ソクラ…テスさん…。初めまして… エリーゼ:私…珈琲…というものが何か…さえ、分からない…のだけれど… エリーゼ:それに…一度にたくさん問われても…答えられないわ?  :  ソクラテス:すまない、事を急いてしまうのが僕の悪い癖でね。順番に話をしていこう。  :  エリーゼ:ソクラテスさん…私…は倒れていたの? エリーゼ:どうして、私は倒れていたのか… エリーゼ:それすら…わからない…  :  ソクラテス:なるほど……なにも、覚えていないと。  :  エリーゼ:えぇ…考えても…頭に靄がかかってるみたいで… エリーゼ:思い出せないわ…ごめんなさい… ソクラテス:そう……か。 ソクラテス:君は昨晩 ソクラテス:僕の屋敷の前で倒れていたんだ。 ソクラテス:近くに病院もないもので、そのままにしておくわけにもいかず、 ソクラテス:先ほども言ったように、屋敷で休んでもらっていた。  :  エリーゼ:…そう、なのね… エリーゼ:助けてくださり…ありがとうございます… エリーゼ:それなのに、何も覚えていなくて…ごめんなさい…  :  エリーゼ:ところであの、ソクラテスさん… エリーゼ:さっきおっしゃっていた珈琲とは、飲み物か何かかしら? ソクラテス:ああ、そうだ。飲み物だよ。 エリーゼ:私、とても喉が渇いてて… エリーゼ:もし良ければ、珈琲をいただけるかしら?  :  ソクラテス:もちろん、飲むといい。  ソクラテス:熱いから気を付けてくれ。 ソクラテス:苦ければ、砂糖もある。 ソクラテス:心を落ち着かせるのに、珈琲は最適だろう。 ソクラテス:……口に合えばいいが。  :  エリーゼ:いただきます… エリーゼ:えっ!?何、なんだかとても苦い… エリーゼ:お砂糖…、それ以外は何も入れないのかしら… エリーゼ:…だけど、この香り…、どこかで嗅いだことがある、ような…  :  ソクラテス:……これを。 ソクラテス:ミルクも入れれば、だいぶ苦みも薄まるだろう。 エリーゼ:…ありがとうございます。 エリーゼ:あ、とても優しい色になった… エリーゼ:うん、甘くて素敵… エリーゼ:とても美味しいわ…! エリーゼ:でも…香りは…薄まってしまった… エリーゼ:なんだろう…この感じ… ソクラテス:消えてしまった記憶が、珈琲の香りで呼び出されているのかもしれない。 ソクラテス:何かきっかけがあれば ソクラテス:存外、簡単に思い出すかもしれないね。 エリーゼ:…そう、ね… エリーゼ:だといいのだけれど… エリーゼ:貴方にとっても、気味が悪いでしょう… エリーゼ:自分が誰かもわからない者を、側に置いておくなんて…  :  ソクラテス:そんなことはないさ。 ソクラテス:気にする必要はない。 エリーゼ:早く、記憶を取り戻せたらいいのだけど… エリーゼ:それから、私…この珈琲の香り…とても好きみたい… エリーゼ:この香りから…誰かの姿が記憶の後ろに思い浮かぶ様な…? エリーゼ:だけどそれが誰だか…、思い出せない… エリーゼ:でもそれは…大切な記憶なんだと… エリーゼ:そう思うの… エリーゼ:早く…、その誰かを思いだしてあげたい…!  :  ソクラテス:……! ソクラテス:そ……そうか。 ソクラテス:君の記憶の中のその人が、君にとってどういう人なのか、僕も少し気になるな。 ソクラテス:少し待っていてくれ、ゆっくり話をしよう ソクラテス:僕の分の珈琲も、持ってくることにする。 エリーゼ:…えぇ、私は私がわからない、だから貴方の言葉から… エリーゼ:私の中の記憶を巡る旅をするわ… エリーゼ:いってらっしゃい。  :  ソクラテス:…………待たせたね。 エリーゼ:お帰りなさい、とても素敵な香り… エリーゼ:貴方は、そのままでその珈琲を飲むの? ソクラテス:心を落ち着かせるには ソクラテス:この香りでないと、僕はダメみたいでね。 ソクラテス:あと、甘いものはあまり好きではないんだ。 エリーゼ:そう、なのね… エリーゼ:褐色な飲み物なのに…どこか優しく包みこむ香り… エリーゼ:苦いのがいいんだって…貴方はいつもはにかんで笑っていたわ… エリーゼ:え? エリーゼ:これは…一体誰…のことなの?  :  ソクラテス:僕が、君の記憶の中の誰かと重なっているのかな エリーゼ:…ごめんなさい。 エリーゼ:貴方の言葉から…自然と…想い出?が… エリーゼ:溢れてきたみたい… エリーゼ:貴方の声…とても、聞き覚えがあるような… エリーゼ:気がするからかしら… エリーゼ:貴方の言葉が、記憶の紐に結び付いていく… エリーゼ:そんな気がする ソクラテス:僕は…… エリーゼ:…どうして、そんな…悲しい色を、瞳に浮かべるの? ソクラテス:なに、なんでもないさ ソクラテス:君が、僕の顔をそんなにまじまじと見るから ソクラテス:少し照れてしまっただけだよ。  :  ソクラテス:ささ、話をしよう。話だ。 ソクラテス:僕ならきっと、君の思い出を取り戻す手助けができる。 エリーゼ:えぇ、わかったわ ソクラテス:どうにも、そうだな。 ソクラテス:まずは ソクラテス:君の名前がどうにか思い出せれば、よいのだけれど。 エリーゼ:名前… エリーゼ:私の名前… エリーゼ:思い出せない… エリーゼ:頭の中で…音色が聞こえるような気がするのだけど… エリーゼ:それが何なのかわからない…  :  エリーゼ:ねぇ、ソクラテスさん? エリーゼ:もし、嫌じゃなければ、私に記憶が戻るまで… エリーゼ:なにか名前を…付けていただけないかしら? エリーゼ:ダメ…かしら…  :  ソクラテス:……エリーゼ。  :  ソクラテス:君のことは、エリーゼと呼ぶことにするよ。 エリーゼ:エリーゼ…とても素敵な名前ね! エリーゼ:嬉しいわ、ありがとう! ソクラテス:じゃあ……エリーゼ。 ソクラテス:――君の記憶を巡る、旅に出かけよう。 ソクラテス:少し難しい問いを、君に投げかける。 ソクラテス:それに対する君の答えを、僕は聞きたい。 ソクラテス:……いいかい? エリーゼ:…わかったわ。 エリーゼ:記憶がないままの答えになっても、怒らないでもらえるかしら…? ソクラテス:もちろんさ ソクラテス:記憶がないからこそ、君本来の答えが導き出されるだろう。 ソクラテス:そうすれば、思い出も戻ってくるはずさ。 エリーゼ:そうね… エリーゼ:貴方ならきっと導いてくれる… エリーゼ:何故だかそう思うから… エリーゼ:よろしくお願いします。  :   :  ソクラテス:エリーゼ、君は『テセウスの船』と言う話を知っているかな? エリーゼ:…いいえ、わからないわ? エリーゼ:それは一体どんな船、なの? ソクラテス:テセウスという人物が乗っていた船さ。 ソクラテス:それは長い長い航海をしていた船でね、いつしか所々の部品が、壊れていってしまったんだ。 エリーゼ:…部品が壊れる。 エリーゼ:そうなると、交換しなければ…旅は続けられない… ソクラテス:……そう、エリーゼ。君の言う通り、壊れてしまったら、別の部品に取り換えていく。旅を続けるには、そうするしかないんだ。 ソクラテス:いつしか、すべての船の部品が取り換えられてしまって……もともとのテセウスの船についていた部品は、すべて外されてしまったんだ。 ソクラテス:そこでふと、 ソクラテス:テセウスは疑問に思う。  :  ソクラテス:『すべての部品が取り換えられてしまったとき、その船は同じテセウスの船と言えるのだろうか』 ソクラテス:とね。  :  ソクラテス:これが、『テセウスの船』という問いだ。 ソクラテス:――エリーゼ、君はどう考える?  :  エリーゼ:… エリーゼ:とても、難しい問いね… ソクラテス:……難しいだろうとも、答えのない問いだからね。 ソクラテス:だから、ゆっくり考えてくれてかまわない。 ソクラテス:思考の中で、君は自分を見つけるんだ。  :  エリーゼ:もし、全ての部品が変わっても… エリーゼ:そのテセウスが旅をする為に乗り込んだ船なのだと… エリーゼ:そう思えば、目的として、選んだその船は母体として変わらない意味を持っている… エリーゼ:だけど、時を共にしたものが… エリーゼ:一つずつ新しい部品に全てが変わった船を見て、テセウスが… エリーゼ:どこか違う気持ちを…本人が感じてしまえば… エリーゼ:それは違うものとなるのではないかしら… エリーゼ:物としての感情は、物からは発する事はない… エリーゼ:だからこそ…そこに必要なのは… エリーゼ:人の気持ち、かしら?  :  ソクラテス:君は『その持ち主がどう思うか』で、変わってくると言いたいんだね。 ソクラテス:テセウスの船そのものがどうか、ではなく。それを持つものが、それを元の船と違うと思えば、それはもう、別のものになってしまっていると。 エリーゼ:えぇ。 エリーゼ:だって…物に気持ちなどありえない… エリーゼ:だからこそ、人の気持ちが…愛着という思いに変えて、記憶として紐づける… エリーゼ:そう思うの  :  ソクラテス:……そうか。 ソクラテス:人の気持ち……記憶、思い出が、それが何か、どういうものかを決定づけると。 ソクラテス:だからこそ、たとえ見た目が全く同じテセウスの船でも、テセウス自身が、今までの旅の思い出の中にいた船と、違うものだと思ってしまえば、それは違う船だと言う事だね。 エリーゼ:えぇ、そうね。 エリーゼ:だって不思議だと思わない? エリーゼ:目を覚ましたばかりの私は… エリーゼ:名前がなかった… エリーゼ:でも、今、エリーゼという名前をあなたにつけてもらったの… エリーゼ:私が、船ならば、新しい部品と交換したのよ…? エリーゼ:そこにすでに…違いがあると感じるの。  :  ソクラテス:確かに、エリーゼ、君の言うとおりだ。 ソクラテス:僕は君に名前を付けた。 ソクラテス:『名前』と言う部品を取り替えた……ことになる。 ソクラテス:それじゃあ……もう一つ。 ソクラテス:少し意地悪な質問をしてもいいかな?  :  エリーゼ:えぇ、構わないわ…? ソクラテス:ありがとう。 ソクラテス:一つ、思いついてしまってね。 ソクラテス:その答えを君に聞いてみたくなったんだ。 エリーゼ:…何かしら。 エリーゼ:ソクラテスさんはとても、人の心の真髄を奥底から引っ張り出してしまいそうで… エリーゼ:とても答えに迷ってしまいそう… ソクラテス:君の考えは……とても、温かい。 ソクラテス:だからこそ、この問いを思いついてしまったんだろう。君の考えが、知りたくなった。  :  エリーゼ:ねぇ、その前に… エリーゼ:もう一杯、珈琲をいただけるかしら? エリーゼ:今度は、砂糖もミルクもいらないわ。 エリーゼ:構わない? ソクラテス:あ、ああ。 ソクラテス:……構わないよ、待っていてくれ。 エリーゼ:ありがとう…  :  ソクラテス:……待たせてしまって悪いね。 ソクラテス:挽いた豆を切らしていたんだ。 ソクラテス:これを。 ソクラテス:熱いから気を付けて。 エリーゼ:あぁ、この香り… エリーゼ:私は…、貴方を知りたくて… エリーゼ:ミルクも砂糖も…入れなくなった… エリーゼ:だけど、それは… エリーゼ:貴方には告げる事はなかった… エリーゼ:なぜなのかしら…でも…えぇ… エリーゼ:私なりの貴方への問いであり、答えだったのだと思う… エリーゼ:あ、ごめんなさい… エリーゼ:どうしても…今の気持ちのまま、このブラックの珈琲を飲みたかったの… エリーゼ:ありがとう… エリーゼ:お話を続けて…?  :  ソクラテス:…… ソクラテス:……ああ。 ソクラテス:つづけよう。  :  ソクラテス:……もし、テセウス自身が、今の船は今までの船とは違うと感じていたとしよう。 ソクラテス:君が言っていた通り、その場合、その船はテセウスの船ではなくなってしまっている。 ソクラテス:しかし、だ。 ソクラテス:テセウス以外のすべての乗組員が ソクラテス:『あの船は変わらず、部品が変わっても自分たちが旅をしたテセウスの船だ』 ソクラテス:と、言ったら。 ソクラテス:その船は『テセウスの船』か『別の新しい船』か。 ソクラテス:――君は、どう考える?  :  エリーゼ:…それは、とても難しい問題ね…。 エリーゼ:でも単純に考えて答えてしまえば… エリーゼ:テセウスにとって、その船は、テセウスの船ではない。 エリーゼ:大切なのは、その船が同じか エリーゼ:ではなくて… エリーゼ:旅が終わった時、その目の前の船を見て、この船で良かったと…思えるか、じゃないかしら?  :  ソクラテス:旅をし終わったときに、どう思うか……か。  :  エリーゼ:テセウスが最初の船じゃなきゃダメと感じるなら、旅自体の意味を無くすわ? エリーゼ:だけど、旅はしたい。 エリーゼ:でも部品を変えなければ、旅は続けられなかった。 エリーゼ:だからテセウスは部品を変えながら、旅を続けたのでしょう? エリーゼ:そのせいで船そのものは変貌を遂げ、最初とは全く違う姿となった。 エリーゼ:でもそれに対して、お前は違う船だ!と言うなら、旅をしなければ良かっただけ。 エリーゼ:結局、たどり着いた旅の終わりに感じる気持ち… エリーゼ:それが本心で、答えじゃないかしら? エリーゼ:他の船員達は、きっと。 エリーゼ:旅の終わりに、この船自体の意味を理解して、テセウスの船だと…言ったのだと思う。 エリーゼ:姿は全く別のものになった船…。 エリーゼ:だけど、その船に乗せた最初の想いは旅の中で積み重なり、たどり着いた答えは、愛着… エリーゼ:だから「テセウスの船」と言わしめたのではないかしら… エリーゼ:結局… エリーゼ:どの答えも間違えではなくて… エリーゼ:導く答えそのものは… エリーゼ:人の想い…なんだと私は思う。  :  エリーゼ:私が珈琲は甘いのが好きだったのに… エリーゼ:たどり着いた答えは… エリーゼ:ブラックで…飲む事…そういう事なのね…  :  ソクラテス:エリーゼ。 ソクラテス:僕は君に、とても酷な質問をしてしまったのかもしれない。  :  ソクラテス:僕は、君に『名前』と言う部品を与えたと比喩をしたね。 ソクラテス:名前を忘れていた、甘い珈琲を飲んでいた君も。 ソクラテス:エリーゼと言う名前を与えられた、今、苦い珈琲を飲んでいる君も…… ソクラテス:僕から見たら、同じ女性だ。  :  エリーゼ:そう…ね…確かにそうかも知れない… エリーゼ:でも、同じ女性だという視点には エリーゼ:愛着がないから…じゃないかしら。 エリーゼ:それがもし、あなたにとって。 エリーゼ:愛している女性なら。 エリーゼ:名前、仕草、飲み方、普段なら気にも留めないことが… エリーゼ:特別なものに映るかもしれない。 エリーゼ:それが、違いに見えるのではないかしら…? エリーゼ:知らなくても、気に留めなかったものが… エリーゼ:感情が入れば…違いさえ…許せなくなったりする… エリーゼ:それが…思いなのかも知れない。  :  ソクラテス:……僕は、 ソクラテス:……まだ、君のことを理解していないから ソクラテス:名前のない君も、今の君も、同じだと感じていると。 ソクラテス:つまりは君は、そう言っているんだね。  :  ソクラテス:…… ソクラテス:なるほど、これは痛いところを突かれたかもしれない。  :  エリーゼ:それは…私も同じかも知れないわ…? エリーゼ:ソクラテスさんの事、私もよく分かっていないもの… エリーゼ:だから、どこか、本当の自分とは違うままで、答えているかも知れない…  :  ソクラテス:……いいや、君は変わらないさ。  :  エリーゼ:…? エリーゼ:そうかしら…? エリーゼ:もしこの先にあなたをたくさん知れた時… エリーゼ:同じ質問の答えを…あなたに聞いてみたいわ? エリーゼ:ねえ、堅苦しいお話は少し休憩して、…お散歩でもご一緒しない? ソクラテス:……ああ、構わないよ。 ソクラテス:もう、体は動けるのかい? エリーゼ:えぇ、怪我はあるみたいだけれど… エリーゼ:あなたが処置してくださったのがとても適切だったのね… エリーゼ:ありがとう ソクラテス:よかった、安心したよ。  :  エリーゼ:どうしてか、わからないのだけど… エリーゼ:じっとしていると… エリーゼ:何かをし忘れている…そんな気持ちが込み上げてくるの… エリーゼ:何かをしていなければいけなかった… エリーゼ:どこかそれは…強迫観念にも似ていて… エリーゼ:とても不安な気持ちに襲われるわ… エリーゼ:だから少しだけでいい、気分転換したいの… エリーゼ:わがままかしら…?  :  ソクラテス:大丈夫かい? ソクラテス:顔色が、あまりよくないみたいだけれど。 ソクラテス:……君が、そうしたいというのであれば ソクラテス:僕は、付き合うよ。 ソクラテス:立てるかい?  :  エリーゼ:嬉しい…ありがとう! エリーゼ:私、少し風にあたりたい! エリーゼ:歩き回るのは…無理そうだから… エリーゼ:何か補助するものがあれば…、なんてあるわけないわね… ソクラテス:それなら、車いすの用意がある。 ソクラテス:昔……知り合いが使っていたものでね。 ソクラテス:彼女は少し前に亡くなってしまったから、若干埃をかぶってしまっているが。 ソクラテス:……それでも、よければ。  :  エリーゼ:まぁ、とてもありがたい…! エリーゼ:あなたに押させてしまうけれど、よかったら案内も兼ねて、お願い出来るかしら? ソクラテス:ああ……任せて。 ソクラテス:この辺りは、緑が豊かだからね。 ソクラテス:良い気分転換になるだろう。 エリーゼ:嬉しい! エリーゼ:とても楽しみだわ! エリーゼ:じゃあ…いきましょう!  :  0:間  :  ソクラテス:『――後悔があった ソクラテス:君は、どうだろう ソクラテス:後悔は、あっただろうか。 ソクラテス:けれども、もうそれを知るすべはない。 ソクラテス:僕は、自分の後悔を消し去るために ソクラテス:ただただ、未だ動かない、君に向き合う。 ソクラテス:「君」が目を覚ます、その瞬間まで。  :  ソクラテス:――心が、そこにあると信じながら。  :  0:間  :  エリーゼ:「貴方は私のどこが好きなの?」 ソクラテス:「君がピアノを弾く、その表情が好きだ」 ソクラテス:「鍵盤しか見ていない、僕を映さない瞳が好きだ」 エリーゼ:「ピアノを弾く私…面白い答えだわ。 エリーゼ:でも、それは、私を好きとは言わないのよ」 ソクラテス:「君がピアノを弾くたびに、僕は君に恋をする。一体それの、どこが間違っているというんだ?」 エリーゼ:「わからないなら、それでいい…」  :  エリーゼ:「あなたは、この空を飛ぶ鳥を見てどう感じるの?」 ソクラテス:「またそういう質問か」 ソクラテス:「鳥は椅子に座って、のんびりできずにかわいそうだと思うね」 エリーゼ:「そう…。私は鳥が羨ましいわ。 エリーゼ:自由に思う場所へ飛んでいける… エリーゼ:その羽が私にあれば…もっと自由だったのかも知れない…」  :  ソクラテス:「僕はそうは思わない」 ソクラテス:「羽根も足もあるなんて、贅沢だよ」 エリーゼ:「贅沢…、そうかしら。 エリーゼ:貴方は足も問題なく使うことができるから、そう思うのかも知れないわ。 エリーゼ:貴方は、自分が変わりたいなんて… エリーゼ:思ったことなんてないのでしょうね」  :  エリーゼ:「私の姿・形を愛してくれてありがとう。 エリーゼ:でも、それが貴方の答え。 エリーゼ:だから私の答えを貴方に送るわ」  :  ソクラテス:「……」 ソクラテス:「待ち、くたびれたよ」 ソクラテス:「教えてくれ……君の答えを」  :  エリーゼ:「私は、ピアノしかなかった。 エリーゼ:足も不自由で、だからピアノだけが私の生きている術だった。 エリーゼ:そんな必死な私の姿を貴方は、愛してると言ってくれた。 エリーゼ:私は…貴方にとって、一つの形。 エリーゼ:だけど私は…! エリーゼ:ピアノを弾けなくても、足が自由だったとしても… エリーゼ:私という自分の中にある、本質を愛して欲しかった! エリーゼ:貴方のために変わりたかった…私。 エリーゼ:変わる事を望まない貴方。 エリーゼ:そんな貴方を私は愛せない。 エリーゼ:だから、これでお別れよ。」  :  0:間  :  ソクラテス:――どうした、味が濃かったか?  エリーゼ:いいえ、そんな事はないわ ソクラテス:さっきから、手が止まっているように感じてね。 ソクラテス:口に合わなかったなら、そう言ってくれればいい エリーゼ:そう…ね、あまりこの味は好きじゃないかな… エリーゼ:でも、ちゃんと食べるわ。 エリーゼ:気にしてくれてありがとう ソクラテス:……そう、か。 ソクラテス:いや、いいんだ。作り直してこよう。 ソクラテス:少し、待っていてくれ。 ソクラテス:それは、僕が食べる。  :  エリーゼ:?! エリーゼ:どうしたの? エリーゼ:私が口をつけたものなのに… エリーゼ:いつもなら、食べるなんて言葉…言わないあなたが… エリーゼ:でも…それってなんだか嬉しいわ…! エリーゼ:だけど大丈夫、ちゃんと食べるから! エリーゼ:その代わり、今度は私もあなたと一緒に作るわね? エリーゼ:私の好きな味をあなたにも知って欲しいから♪  :  ソクラテス:君は…………いや。 ソクラテス:わかった、今度、一緒に作ろうか。 エリーゼ:ええ!約束ね!  :  0:間  :  エリーゼ:今日はすごく空が青くて綺麗! エリーゼ:みてみて!鳥が飛んでいるわ! ソクラテス:鳥……か。 ソクラテス:本当だ、たくさん飛んでるね。 エリーゼ:えぇ!でも、自由に飛ぶ鳥達は… エリーゼ:何を求めて飛ぶのかしら… エリーゼ:生きるため、かしら…  :  ソクラテス:僕たちが、何を求めて歩くのかと ソクラテス:もし鳥に聞かれたら、何と答えるかな。 ソクラテス:……きっと、その答えと同じ言葉が ソクラテス:鳥からも、返ってくると思うよ  :  エリーゼ:そうね… エリーゼ:私ならきっと、一緒に同じ世界を見ることができる…仲間や、愛するものと出会う為…かしら エリーゼ:一羽なら…きっと寂しくて エリーゼ:飛ぶ事をやめてしまうかも知れない  :  ソクラテス:そうだね。 ソクラテス:僕は、一人で歩くことは、きっとできない。 エリーゼ:そっか…良かった… エリーゼ:あなたも、私も、気持ちを分かち合いたいと…願ってるのね エリーゼ:あなたが時折みせる、寂しそうな瞳…気になっていたの エリーゼ:あなたはあまり、感情を表に出さないけれど… エリーゼ:あなたの優しさは…私には届いているわ ソクラテス:……!  :  エリーゼ:私を助けてくれたのが…あなたで…良かった…  :  ソクラテス:それは……! ソクラテス:……そう、言ってもらえて、嬉しいよ。  :  0:間  :  エリーゼ:気になっていたのだけど… エリーゼ:あなたの周りにあるものは、どこか、誰かの為のものみたいな… エリーゼ:気のせいならごめんなさい… エリーゼ:この…埃被った…ピアノ…とか…  :  エリーゼ:あなたは一度も奏でた事はない… エリーゼ:調べてみたの、これが何なのかを… エリーゼ:演奏するものでしょ? エリーゼ:なのに、もう長い間、開けられた様子もない… エリーゼ:でも、大切な物のように感じるの…  :  ソクラテス:そのピアノの音色は、僕のものじゃないから ソクラテス:もう、ずいぶんと長い間、弾いていないんだ。 エリーゼ:… ソクラテス:大切なもの、そう……だね。 ソクラテス:とても大切なものだよ、その音色は。  :  エリーゼ:…音色。 エリーゼ:弾いていた誰か、ではなくて…? ソクラテス:――ああ。 ソクラテス:きっと僕は、勘違いをしていたんだ。 ソクラテス:でも、もうその音色を奏でる人はいないからね。 ソクラテス:君は、気にしなくてもいいさ。 ソクラテス:それとも……気になるかい?  :  エリーゼ:…えぇ。 エリーゼ:あなたがそこまで、想いを寄せる音色… エリーゼ:勘違い、というその理由… エリーゼ:あなたを知りたいから… エリーゼ:教えてほしい  :  ソクラテス:そのピアノを、弾く女性がいたんだ。 ソクラテス:ひどく儚げでね、でも、強い人だった エリーゼ:… ソクラテス:彼女は僕から、ピアノを奪ったんだ。 ソクラテス:その音色が、それまでの僕の全てだったピアノを奪い ソクラテス:僕の人生を、台無しにした。 ソクラテス:憎かったけれどね、同時に、憧れたんだ。  :  エリーゼ:…愛して、いたのね…その人を。  :  ソクラテス:いいや、違うさ、エリーゼ。 ソクラテス:その人の指先から奏でられる音色に ソクラテス:その旋律に恋をした。  :  ソクラテス:僕はそれを ソクラテス:彼女に恋をしているのだと、勘違いをしていた。 ソクラテス:でも、全部彼女は、わかってたんだ。 ソクラテス:僕は……今の今まで、わからなかったのに。  :  エリーゼ:…でも、あなたは…今でも…その音色を愛しているのね…  :  ソクラテス:――そうだ、そのはずなんだ! ソクラテス:それなのに、そのはずなのに、どうして! ソクラテス:「君」を目の前にして、「君」と過ごして ソクラテス:どうしてこんなに、胸が張り裂けそうなんだ!!  :  エリーゼ:…あなたは エリーゼ:不器用で優しい人なのね エリーゼ:本当は…音色に恋をしたんじゃないわ、ソクラテス。 エリーゼ:あなたは間違いなく、その彼女を愛していた… エリーゼ:だから、彼女が紡ぐ音そのものを、彼女として…愛していたのよ  :  ソクラテス:――エリーゼ。  :  エリーゼ:彼女が、もし… エリーゼ:彼女じゃない人が、同じものを弾いた音色に、あなたは恋をしたかしら? エリーゼ:きっと…違うわね… エリーゼ:だってあなたは…とても一途な人だもの… エリーゼ:哀しそうな瞳の色は…忘れられない想いを映した影…だったのね…  :  ソクラテス:――エリーゼ! エリーゼ:…いいのよ、ソクラテス。 ソクラテス:その瞳に、僕を映さないでくれ! エリーゼ:一つだけ、私が言える事は… ソクラテス:僕は、僕は……君のために……! エリーゼ:その影を背負うあなたごと…愛しているわ…  :  ソクラテス:――一度死んでしまった君を、エリーゼ、君を!! ソクラテス:……この手で、生き返らせたんだ!!  :  エリーゼ:?!  :  0:間  :  ソクラテス:『――後悔は、消えなかった。 ソクラテス:「君」は、「君」であるはずなのに ソクラテス:目を覚ました「君」は、僕が知らない「君」だった ソクラテス:今、僕は、僕を知り、「君」に向き合う。 ソクラテス:「僕」の答えが目を覚ます、その瞬間まで』  :  0:間  :  エリーゼ:いや…何…を…言っている…の? エリーゼ:聞きたくない…怖い… エリーゼ:私を…生き、かえ、らせた…? エリーゼ:そんな…バカげた話を…私が信じるとでも…?!  :  ソクラテス:……聞いてほしい。 ソクラテス:君が、君でいるために。 ソクラテス:本当のことを、君は知るべきだ。  :  エリーゼ:…私が…私でいるため… ソクラテス:……そう。 ソクラテス:今の君が、君でいるために。 エリーゼ:今の私のままでも…私なの… エリーゼ:記憶が全て取り戻せなくても… エリーゼ:それごと…今の私なの!  :  ソクラテス:エリーゼ。 ソクラテス:君がそう言うのであれば、言い方を変えさせてくれ ソクラテス:僕のために、知ってほしいんだ。 ソクラテス:僕が、今の君に、ちゃんと向き合うために エリーゼ:…向き合う エリーゼ:あなたが、私と… エリーゼ:そう言われたら…拒否できないじゃない… エリーゼ:ズルい言い方ね…  :  ソクラテス:ズルい……か。 ソクラテス:確かにその通りだ。 エリーゼ:…ごめんなさい エリーゼ:わかったわ。あなたの話を聞かせて… ソクラテス:ありがとう。  :  ソクラテス:『テセウスの船』の話を、覚えているかい? エリーゼ:…えぇ、覚えている。 エリーゼ:とても…心に残る問いかけだったから  :  ソクラテス:君は一度、命を落とした。 ソクラテス:ひどい事故で、体はもう使いようのない状態になってしまったんだ。 エリーゼ:…?! ソクラテス:僕は、君を失うことを受け入れられなかった ソクラテス:だから、君の代わりの体を用意して、その体に君の脳を移植した。 ソクラテス:……信じられないかも知れないけれど、そういう技術を持つ友人がいてね、僕の願いを叶えてもらったのさ。  :  エリーゼ:どうして…?! エリーゼ:…そこまでして、叶えたかった願いは…なんなの?! エリーゼ:失いたくない…それだけで…? エリーゼ:違うわよね… エリーゼ:神の領域を超える世界を見たかった理由は…なんなの?!  :  ソクラテス:――また、君に会いたかった。  :  ソクラテス:いいや、ちがうな ソクラテス:――後悔が、あったんだ。 ソクラテス:どうしても、君に伝えないといけない事があった! ソクラテス:僕は…… ソクラテス:だから、だから僕は……!!……君を!!! ソクラテス:…………それなのに。 ソクラテス:……  :  ソクラテス:――君は、君じゃなかった。  :  エリーゼ:…私じゃなかった… エリーゼ:じゃあ…あなたの目の前にいる… エリーゼ:ここで息をして、あなたに恋をしている私は… エリーゼ:一体…なんなの?! エリーゼ:ねぇ!!!教えてよ!!!  :  ソクラテス:でも…… ソクラテス:――君は、「君」だよ。  :  ソクラテス:君は、言ったね ソクラテス:それ自身の本質を決めるのは、「想い出」だって。 ソクラテス:「愛着」だって。  :  ソクラテス:僕は、今の君と過ごした「思い出」を持っている。 ソクラテス:君が僕を知るために飲んでくれた、苦い珈琲の香り。 ソクラテス:君の好きな味を僕が知るために、一緒に料理だってした。 ソクラテス:青空を羽ばたく鳥を、あれほど綺麗な瞳で追った君は、まぎれもない「君」自身だ。  :  エリーゼ:…あなたが。 エリーゼ:愛した、過去の私…。 エリーゼ:そして、今を生きる過去とは違う私…。 エリーゼ:あなたにとって、私は… エリーゼ:同じものなの?  :  ソクラテス:……エリーゼ。 ソクラテス:今の君は、間違いなく、過去の君とは違う。 ソクラテス:そして僕も、過去の僕とは違う。 エリーゼ:…ソクラテス ソクラテス:僕は今の君を、愛してしまった。 ソクラテス:ピアノに一度も触れる事のない、僕をまっすぐに見つめる君が、愛おしくて仕方がないんだ。  :  エリーゼ:あなたが愛した音色を…頭の中で… エリーゼ:奏でる事が出来るのに… エリーゼ:私は…この身体で…奏でる事は出来ない… エリーゼ:あなたが愛した想い出を…今の私は…思い出にはしてあげられない エリーゼ:だけど、あなたを知りたいと思って、あなたが好きなブラックの珈琲を…同じ形で飲んだ私は… エリーゼ:記憶の中にある私の過去は… エリーゼ:間違いなく…あなたを愛していた想い出。 エリーゼ:でも、それ以上に… エリーゼ:今の私の好きな味を、美味しそうに食べてくれるあなたを…私は失いたくないの…  :  エリーゼ:あなたが望んだ…過去の私ではなく… エリーゼ:もう一度…あなたと時を過ごす事を許された… エリーゼ:今の私自身を… エリーゼ:あなたは、同じとしてではなく… エリーゼ:今の一人の私として… エリーゼ:求めてくれますか?  :  ソクラテス:僕は、今、僕の瞳に映る君を ソクラテス:過去の君ではない、今の君を、愛している。  :  エリーゼ:実はね… エリーゼ:あなたのそばに…いたくて… エリーゼ:あなたを突き放した…過去の記憶を… エリーゼ:本当は想い出していた事を…打ち明けられなかったの… エリーゼ:過去の私は、あなたを突き放した。 エリーゼ:その時の想い、そして今のあなたと過ごして感じる思い… エリーゼ:それは…同じようで、同じではない事… エリーゼ:過去の記憶を取り戻した事を、あなたに告げたら… エリーゼ:ここにいられない気がした。  :  エリーゼ:でも…今のあなたを見ている私も… エリーゼ:過去にあなたを愛していた、私も… エリーゼ:本質は…変わらない想い… エリーゼ:私は、あなたに…私の心を愛して欲しかった… エリーゼ:私という中身を…あなたに知って欲しかった…  :  エリーゼ:私は…生まれ変わる前から… エリーゼ:あなたに…恋をしていた…  :  ソクラテス:……! ソクラテス:君を……君を、生き返らせたこと ソクラテス:僕の勝手で、君をもう一度目覚めさせたこと ソクラテス:間違いだと、思っていた。 ソクラテス:でも、君の、その言葉で…… ソクラテス:うまく、言葉に、できないけれど…… 0: ソクラテス:――救われたよ。  :  エリーゼ:ソクラテス… エリーゼ:私を生き返らせてくれた事に…感謝は、しないわ… エリーゼ:だけど…もう一度…あなたを愛せた事…、そして。 エリーゼ:今の私を、本当のあなたの気持ちのまま…向き合ってくれた事に…感謝します…  :  エリーゼ:愛しているわ…ありのままのあなたを…  :  0:間  :  ソクラテス:『――航海が終わった。 ソクラテス:その時、君は「君」のまま ソクラテス:僕を瞳に映して、笑ってくれた。 ソクラテス:「僕」は、「君」に、伝えないといけないことがある』  :   :  ソクラテス:――僕も、君を、愛している。  :   :  0:間  :   :  エリーゼ:この物語を読んでいる、聴いている、「あなた」に問います。 ソクラテス:『始まりのテセウスの船から、すべての部品が取り換えられてしまったとき、その船は同じテセウスの船と言えるのだろうか』  :  エリーゼ:あなたは、どう感じ、 ソクラテス:――どう……答えますか?  :   :  0:――FIN――  :   :   :