台本概要

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タイトル 救難ラジオ「ハッピーラッキー」
作者名 よぉげるとサマー  (@gerutohoukai)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(女2)
時間 40 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 女性2人台本ですが、お好きに性別は変更してください。
劇の音声が残るようにしてくれる場合は、ご共有下されば幸いです。是非、聴きたいです。
あと、感想もくれると喜びます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
キラキ 79 テンション上げて頑張る
リリナ 68 なるべく冷静に頑張る
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
タイトル:救難ラジオ「ハッピーラッキー」 タイトル: ■登場人物: キラキ:女/改変すれば男  リリナ:女/改変すれば男  リリナ:  0: ~Mとついてるところは、モノローグです。 0: ト書きは、適宜読んでもいいです。伝わりにくいと思うので転換が。 ■本編:  0:  0:  0:  キラキ:メーデー、メーデー。こちら、ハッピーラッキー号。ただ今遭難中、エンジン故障により、推進力を失っております。 キラキ:どなたかこの救難信号を受け取ったら、至急、救助願います。 リリナ:はーい。はぁ……遭難しといて、なにがハッピーラッキー号なんだか。 キラキ:えー、幸福も幸運も、どっかに飛んでっちゃいましたが、今日も私は生きております。 リリナ:強運は積荷にまだ残ってるかもね。 キラキ:遭難して七日目ではありますが、本日も無事助かる為、元気にやっていきましょー! リリナ:いえーい、希望をすてるなー。 キラキ:さて、では早速、届きもしない普通のおたより、略してフツオタのコーナーでぇーす。 リリナ:毎回考えるのつらーい。 キラキ:遭難ネーム、きらきら星さん、からのおたよりです。 リリナ:どー考えても自分自身。 キラキ:キラキさん初めまして。いつも楽しく聴いてます。うん、ありがとうー。私は、日に日にメンタルやられてきてるけどね! リリナ:やめて、現実逃避してて、ほら、楽しいラジオの時間だよ。 キラキ:あー。危ない危ない。えーっと、楽しくて聴いててー。あ、でー、質問です。 リリナ:考えながら喋ってるなー。 キラキ:えー、食糧は後どのくらい残っているんですか? キラキ:気になって考え込んでいると、いつの間にか眠ってしまっています、助けてください。 リリナ:幸せじゃねぇか。何が不満なんだ。 キラキ:こっちが助けて欲しいわ。 リリナ:せやな。 キラキ:はーい、じゃあ、お答えしますね。食糧は今回の航海分で積んだのが残りニ日分。あと、非常用のが三日分くらいかなー? リリナ:うーん、改めて厳しい状況が見えてきて、つらいな。 キラキ:まあ、これを節約して食べることで、頑張って生き延びたいでーす。 リリナ:いえーい。がんばろー。 キラキ:では次のおたよりでーす。 リリナ:遭難ネーム、えーっと、まあ、リリナでいいか。いつも楽しく聴いてます。まだ救助は来ないようで、心配です。 リリナ:このラジオを他の人も聴いていればなぁと思います。っと、あれ? 電波が。 0:電波の乱れる音。 キラキ:……あー、あー……戻った? リリナ:お、OK。大丈夫そう。 キラキ:オッケー。でも、あー、そろそろ電波障害の起こる場所かな。このくらいにしておきます。 キラキ:お便りありがとー! また聴いて、助けに来てください! ハッピーラッキー号でした! キラキ:あ、ほんとに遭難してます! メーデー、メーデー! リリナ:言っとかないとね、遭難してる感じしないしな。ではまたー。 リリナ: 0:数日後 0: リリナ:当該機は依然、引力により移動しており、座標を正確に特定する事は不可能となっている、と。 0:電波の乱れる音。 キラキ:おっ……あ……がった?(お? あー。つながった?) リリナ:ん? キラキ:あー、あー。電波OKかな? 聞こえる? リリナ:おー、OK。いま聞こえてる。 キラキ:よーし、じゃあ数日振りに始めます。まずは、メーデーから! リリナ:そうね、単なるラジオだとわけわからんからね。 キラキ:メーデー、メーデー。こちら、ハッピーラッキー号。ただ今遭難中、エンジン故障により、推進力を失っております。どなたかこの救難信号を受け取ったら、至急、救助願います。 リリナ:お願いします。 キラキ:……前から結構経ちましたよねー。ようやく放送できます。色々とつらい状況ですけれども、今日もあきらめずにやって行きたいと思いまーす! リリナ:うん。届け、救難信号。こちらはこちらで頑張るけど、早く助けて。 キラキ:それでは、フツオタのコーナー! リリナ:よいしょー。 キラキ:遭難ネーム、メーデーヤメナイデー、さん。 キラキ:いつもラジオ楽しく聴いてます。最近眠りが浅くて、すぐ起きてしまったり、眠るのに時間が掛かってしまって、寝不足気味です。 キラキ:ぐっすり眠るにはどうしたらいいですか? リリナ:うわっ、普通の質問。 キラキ:うーん、それはつらいね。私も眠りが浅くなってるから、困ってるんだよねぇ。てか、自分で考えてるから自分のことなんだけどね。 リリナ:おいおい、ぶっちゃけるなぁ。 キラキ:このラジオは、NG無しでやっておりますからねー。 リリナ:いやぁ、精神状態が心配になる。 キラキ:うん。最近ほんと寝れないね。寝れなくて疲れて気絶、みたいな感じに近いこともあるし。 リリナ:こわっ。ベッドで気絶してくれよ頼むから。 キラキ:あははっ、流石に一日一回寝るまで極力ベッドにいるようにしてるけど。 リリナ:えらい。 キラキ:さて、ぐっすり眠る方法っていうと、アロマをたいたり、ぬるめのお風呂に寝る前に入ったり、なんかそんな感じのこと聞きますよね。 リリナ:定番どころね。 キラキ:まあ、何もいまできないんすけどね私! リリナ:なんか、ごめんて。 キラキ:浴槽でお湯に全身つかりたいよぉ、ぐへえー。 リリナ:救助されたら、お風呂行こうな。 キラキ:はぁー……救助なんて来んのかしら。 リリナ:おっとぉ、メンタルよわよわやん。 キラキ:もうすっかりさぁ。お腹もいっぱいにできないし、睡眠も不自由だし、一日のほとんどは真っ暗だしぃ。 リリナ:うん……つらいねぇ。 キラキ:あー、もー、どうしてこうなったかなぁ。 キラキ:エンジンユニットにデブリが衝突しなければなぁ……。 キラキ:避けれてればー、気づけてればなぁ……。 リリナ:しゃーなしよ。レーダーの不具合起きてたんだし、目視で全部確認はできんって。 キラキ:はぁ……そう、仕方ないんだけどね。こうなっちゃったんだし。 リリナ:うん。運が悪かった。そうとしか言えんね。 キラキ:……つらいけど、できることなんて、なんとか食い繋ぐことと、救難信号を送ることくらいだもんなぁ。 リリナ:うん、ちゃんと届いてるから、頑張って耐えよう。 キラキ:届いてればいいなぁ。この通信も、きっと何日かのラグがあるんだろうけど……。機内時計も、もうバグっちゃって正確な情報出せないしなぁ。 リリナ:それね。これ聞いてるときには、もう手遅れとか……あー、考えない考えない。 キラキ:……まっ、考えたって仕方ないよね! 今日はここまで! また次回の救難信号にてお会いしましょう! リリナ:……うん。 キラキ:じゃあ……早くだれか助けに来てくださーい! バイバイ! リリナ:……まぁ、頑張るけどね。 リリナ: キラキ:……ふぅ、あーあ、通信不可になっちゃったー。 キラキ:気を紛らわせるものなんて、他にないんだもんな。 キラキ:困ったもんだよねー、宇宙の彼方でひとりぼっちってのは。 キラキ:……さみしいなぁ。 キラキ: 0:数日後 0: リリナ:給油は済ませたけど。どうしよっかなぁ。 リリナM:このままハッピーラッキー号の捜索を続けても良いのか、迷っていた。 リリナM:辺境惑星への調査任務帰りに、偶然ハッピーラッキー号の救難信号をキャッチしたことが始まりだ。 リリナM:しかるべき機関の捜索隊に任せるのが筋なんだろうけど。 リリナM:その時は、そういった通信も3日くらい進まないと届けられないくらいの位置だったから。 リリナM:自分が行ったほうが早いか、と……思ってしまった。 リリナ:それがちょっと判断ミスだったよねぇ。 リリナM:まったく船は見つからなかった。一箇所にとどまらず、引力で流されてしまっているらしい。 リリナM:救難信号の電波を伝い、進んでみたけど、まだ追いつかない。 リリナM:引き返すのも考えていたが、今さら感があったので……。 リリナ:ここまで来てしまったけど、ここが最後の補給ポイントなんだよなぁ……しかも無人。 リリナM:ここから先は、燃料を補給できなくなる。 リリナ:……潮時ではあるよねぇ。 リリナM:この先、片道分の距離で、ハッピーラッキー号に出会える保証は無い。 リリナM:通信ログの日付もわからないので、今どのくらいの距離なのかもわからない。 リリナ:確率は絶望的。迎えに行っても、無事に帰って来れる保証も無いしなぁ。 キラキM:……つらいけど、できることなんて、なんとか食い繋ぐことと、救難信号を送ることくらいだもんなぁ。 リリナ:できることは十分にやったつもりだけどなぁ。まっ、最初の判断ミスは痛いけど。 キラキM:届いてればいいなぁ。この通信も、きっと何日かのラグがあるんだろうけど……。 リリナ:……届いてるけど、そうねぇ、何日のラグがあるんだろう。 リリナM:本当に。私たちはどのくらい離れているんだろうか。 リリナ:こんなに……一緒にいるような感じがするのにね。 リリナM:キラキのことは何も知らない。 リリナM:ただただ、救難信号と称したラジオを聴いているだけ。 リリナ:……知ってるのは、あんたがピンチだってことと。 リリナM:なんだか、友達になれそうな奴だなぁって、ことくらい。 リリナ:そうなんだよねぇ……そんだけなんだけど。 キラキM:……まっ、考えたって仕方ないよね! 今日はここまで! また次回の救難信号にてお会いしましょう! リリナ:うん……でも、さすがに考えないといけないよねぇ、こっちは。 リリナM:これ以上のリスクは、本来避けるべきだ。 リリナM:ここから先へ行って、帰ってこれる保証なんて、どこにもない。 リリナ:……キラキが生きてるかどうかだって、わかんないんだ。 0:数日後 0: キラキ:これが最後……か。 キラキM:最後の食糧。その終わりのひとかけらを、口の中で溶かしてしまった。 キラキ:まったく……味わうも何もあったもんじゃないなぁ。 キラキM:暗い船の中で、限られた機能だけが、辛うじて稼働している状況。 キラキM:機器のランプが薄ぼんやりと照らすコックピットに座る私。 キラキ:絶望ってこんな味だったのか、なんて思っちゃいますね。 キラキM:思わず出るひとり言が、救難信号の時みたいな口調で、少し笑えた。 キラキ:意味無いんだけどなぁ、リアルタイムで声送るの。 キラキM:常に救難信号の電波は飛ばしているので、そこに音声通信を乗せるというのは、 キラキM:現状においては、本来意味のない行為だ。 キラキ:わかっては、いるんだけど。 キラキM:暗い宇宙のただ中で、恐怖に耐えられなかった。 キラキ:ひとりじゃないって……思いたかったんだよねぇ。 キラキM:もう、食糧と呼べる物は水だけ。それもほんの僅かだ。 キラキM:このまま……私自身もなくなってしまうんじゃないか。 キラキ:……あー、やだやだ! ブルー極まりないですよ、いま。 キラキM:悪い方へ。確実に、どん底に、落ちて行っている。 キラキM:積み荷には、ハッピーもラッキーも積まれていなかったんだ。 キラキ:なんでこんなことになったかなぁ……。 キラキM:あの時こうしていたら、そうじゃなかったら、と。 キラキM:ずっと、もしも、を考えてたってしょうがないのは分かっている。 キラキ:でもさ、それくらいは許してよ。 キラキM:ここには、慰めてくれる人もいないんだから。 キラキ:そう、ここには……。 キラキM:私だけなんだ。 キラキ:そろそろ……ラジオでもしようかな。 キラキM:救難信号だけど、あれはもはやラジオだった。 キラキ:さて……今日は、助けがきてくれるかな。 0: 0: キラキ:あー、メーデーメーデー! キラキ:こちら、ハッピーラッキー号、ただ今遭難中! キラキ:エンジン故障により、推進力を失っております! キラキ:どなたかこの救難信号を受け取ったら、至急、救助願います! リリナ:お……聞こえた。なんか、気合入ってるな。 キラキ:さっき、最後の食糧を食べ終わって、けっこう絶望中ですっ! リリナ:あぁ……ついにそんな状態になっちゃったか。 キラキ:これを聞いてくれている方がいたら、是非、助けてください! もしくは、助けを呼んでほしいです! リリナ:そうよなー。 キラキ:それでは、今日も……うん……おたよりを……。 リリナ:ん? キラキ:……きっと、こんなの誰も聞いてない。 リリナ:……そんなことないよ。 キラキ:随分と時間が経ったけど、助けが来る気配は無いし。 リリナM:声は、落ち着いていた。 キラキ:もし届いたとしても、どうせもう手遅れだと思う。 リリナM:この先に続くのが、どんな類いの言葉なのか。聞くのが怖い。 キラキ:……星の終わりって、話を知ってるかな? キラキ:星の光って、どんなに距離があっても、ずっと遠くまで届くけど、その距離分、ちゃんと時間がかかってる。 リリナM:それは、私でも聞いたことのある話だ。 キラキ:今実際に見えてる星の光は、ずっと昔の光で、もしかしたら元の星は、なくなってるかもしれない、って。 リリナ:どうして……そんなこと。 キラキ:……この通信も、同じ。これが……あなたに届いている頃には、私はもう、きっと……。 リリナM:どれだけ……。 キラキ:ここにはいないかもしれない。 リリナM:この言葉が出てくるまで、どれだけ耐えたのだろう。 リリナM:これまでの振る舞いが、どれ程の強がりだったのだろう。 キラキ:……だから、大丈夫。もし、助けに来ようとしてくれている人がいるなら……あきらめて、大丈夫。 リリナ:……何が、大丈夫なの? キラキ:……あー、楽しかった! ちょっとラジオのパーソナリティみたいなの、やってみたかったんだよね、昔から。 リリナ:ちょっと、ねぇ……。 キラキ:本当にフツオタとか来なかったり、色んなコーナーとか出来なかったのが、残念だけどぉ……うん、私のラジオなんてこんなもんかなって! リリナ:勝手に…‥進めないで。 キラキ:音楽とかもかけれなかったけど、自分で歌っておけばそれっぽさが増したかもしんないなー。 リリナ:無視しないでよ! キラキ:いやぁ……いい気晴らしでした。 リリナ:あんたばっか一方的に喋って! こっちは聞いてるばっかで何ひとつ伝えられない! いつも勝手に終わらせて! キラキ:今回で……うん、このラジオはおしまい。 リリナ:届いた私は、どうすればいいのよ! キラキ:…………。 リリナM:静かな船内に、自分の憤りだけが、霧散していく。 リリナM:私も、キラキと同じだ。 リリナ:誰にも……届かない。 キラキ:…………。 リリナM:猶予が、こちらにも無い。燃料が、確かにすり減って行く。 リリナM:行けるとこまで……できる範囲で……なんて、考えていた自分が……。 キラキ:馬鹿みたいだ……。 リリナ:え? キラキ:……通信、切れなかったよ。 リリナ:まだ……繋がってた? キラキ:……もう、なんにも無い。 リリナM:震える声が、言葉を繋ぐ。 キラキ:ここには、食料も、燃料も……希望も運も……なくなったのに。 キラキ:…………どうしよう……死にたくない。 リリナM:その小さな声は。 キラキ:……どう、しよう。 リリナM:今までで一番大きな、SOSだった。 キラキ:…………誰か……誰か! キラキ:この声が届いてますか! 聞こえたら! 助けてください! リリナM:一度あきらめたとは思えない、必死な声。 キラキ:メーデー! リリナM:そうだ、そんな簡単なわけない。 キラキ:めぇーでぇーーー! リリナM:まだ、私たちは。 キラキ:私は、ここにいます! リリナ:うん……知ってるよ。 キラキ:生きて……ます……! リリナ:わかってる……ずっと前から。 リリナM:通信は、そこで途絶えた。 リリナ:……遭難ネーム、リリナです。いつも楽しく聞かせてもらってます。 リリナ:絶望的な状況でも明るく振る舞うキラキさんを、なんだか放っておけなくて、ずっと追いかけてきました。 リリナ:最近になって追いかけることが、結構大変になり、あきらめてしまおうかとも思ったのですが……もう少し頑張ってみようと思います。 リリナ:きっとまだ、やりたいこととか、思い付かないくらい、キラキさんにも……自分にも、あるんだと思います。 リリナ:だから、そのやりたいことのひとつに。キラキさんのラジオを、地上で聞くことを加えます。 リリナ:大丈夫、きっと何らかの形でちゃんとしたラジオできますよ。面白かったし。 リリナ:だから……待ってて。 リリナ:ハッピーもラッキーも。私が届けに行くから。 リリナ: 0:   終

タイトル:救難ラジオ「ハッピーラッキー」 タイトル: ■登場人物: キラキ:女/改変すれば男  リリナ:女/改変すれば男  リリナ:  0: ~Mとついてるところは、モノローグです。 0: ト書きは、適宜読んでもいいです。伝わりにくいと思うので転換が。 ■本編:  0:  0:  0:  キラキ:メーデー、メーデー。こちら、ハッピーラッキー号。ただ今遭難中、エンジン故障により、推進力を失っております。 キラキ:どなたかこの救難信号を受け取ったら、至急、救助願います。 リリナ:はーい。はぁ……遭難しといて、なにがハッピーラッキー号なんだか。 キラキ:えー、幸福も幸運も、どっかに飛んでっちゃいましたが、今日も私は生きております。 リリナ:強運は積荷にまだ残ってるかもね。 キラキ:遭難して七日目ではありますが、本日も無事助かる為、元気にやっていきましょー! リリナ:いえーい、希望をすてるなー。 キラキ:さて、では早速、届きもしない普通のおたより、略してフツオタのコーナーでぇーす。 リリナ:毎回考えるのつらーい。 キラキ:遭難ネーム、きらきら星さん、からのおたよりです。 リリナ:どー考えても自分自身。 キラキ:キラキさん初めまして。いつも楽しく聴いてます。うん、ありがとうー。私は、日に日にメンタルやられてきてるけどね! リリナ:やめて、現実逃避してて、ほら、楽しいラジオの時間だよ。 キラキ:あー。危ない危ない。えーっと、楽しくて聴いててー。あ、でー、質問です。 リリナ:考えながら喋ってるなー。 キラキ:えー、食糧は後どのくらい残っているんですか? キラキ:気になって考え込んでいると、いつの間にか眠ってしまっています、助けてください。 リリナ:幸せじゃねぇか。何が不満なんだ。 キラキ:こっちが助けて欲しいわ。 リリナ:せやな。 キラキ:はーい、じゃあ、お答えしますね。食糧は今回の航海分で積んだのが残りニ日分。あと、非常用のが三日分くらいかなー? リリナ:うーん、改めて厳しい状況が見えてきて、つらいな。 キラキ:まあ、これを節約して食べることで、頑張って生き延びたいでーす。 リリナ:いえーい。がんばろー。 キラキ:では次のおたよりでーす。 リリナ:遭難ネーム、えーっと、まあ、リリナでいいか。いつも楽しく聴いてます。まだ救助は来ないようで、心配です。 リリナ:このラジオを他の人も聴いていればなぁと思います。っと、あれ? 電波が。 0:電波の乱れる音。 キラキ:……あー、あー……戻った? リリナ:お、OK。大丈夫そう。 キラキ:オッケー。でも、あー、そろそろ電波障害の起こる場所かな。このくらいにしておきます。 キラキ:お便りありがとー! また聴いて、助けに来てください! ハッピーラッキー号でした! キラキ:あ、ほんとに遭難してます! メーデー、メーデー! リリナ:言っとかないとね、遭難してる感じしないしな。ではまたー。 リリナ: 0:数日後 0: リリナ:当該機は依然、引力により移動しており、座標を正確に特定する事は不可能となっている、と。 0:電波の乱れる音。 キラキ:おっ……あ……がった?(お? あー。つながった?) リリナ:ん? キラキ:あー、あー。電波OKかな? 聞こえる? リリナ:おー、OK。いま聞こえてる。 キラキ:よーし、じゃあ数日振りに始めます。まずは、メーデーから! リリナ:そうね、単なるラジオだとわけわからんからね。 キラキ:メーデー、メーデー。こちら、ハッピーラッキー号。ただ今遭難中、エンジン故障により、推進力を失っております。どなたかこの救難信号を受け取ったら、至急、救助願います。 リリナ:お願いします。 キラキ:……前から結構経ちましたよねー。ようやく放送できます。色々とつらい状況ですけれども、今日もあきらめずにやって行きたいと思いまーす! リリナ:うん。届け、救難信号。こちらはこちらで頑張るけど、早く助けて。 キラキ:それでは、フツオタのコーナー! リリナ:よいしょー。 キラキ:遭難ネーム、メーデーヤメナイデー、さん。 キラキ:いつもラジオ楽しく聴いてます。最近眠りが浅くて、すぐ起きてしまったり、眠るのに時間が掛かってしまって、寝不足気味です。 キラキ:ぐっすり眠るにはどうしたらいいですか? リリナ:うわっ、普通の質問。 キラキ:うーん、それはつらいね。私も眠りが浅くなってるから、困ってるんだよねぇ。てか、自分で考えてるから自分のことなんだけどね。 リリナ:おいおい、ぶっちゃけるなぁ。 キラキ:このラジオは、NG無しでやっておりますからねー。 リリナ:いやぁ、精神状態が心配になる。 キラキ:うん。最近ほんと寝れないね。寝れなくて疲れて気絶、みたいな感じに近いこともあるし。 リリナ:こわっ。ベッドで気絶してくれよ頼むから。 キラキ:あははっ、流石に一日一回寝るまで極力ベッドにいるようにしてるけど。 リリナ:えらい。 キラキ:さて、ぐっすり眠る方法っていうと、アロマをたいたり、ぬるめのお風呂に寝る前に入ったり、なんかそんな感じのこと聞きますよね。 リリナ:定番どころね。 キラキ:まあ、何もいまできないんすけどね私! リリナ:なんか、ごめんて。 キラキ:浴槽でお湯に全身つかりたいよぉ、ぐへえー。 リリナ:救助されたら、お風呂行こうな。 キラキ:はぁー……救助なんて来んのかしら。 リリナ:おっとぉ、メンタルよわよわやん。 キラキ:もうすっかりさぁ。お腹もいっぱいにできないし、睡眠も不自由だし、一日のほとんどは真っ暗だしぃ。 リリナ:うん……つらいねぇ。 キラキ:あー、もー、どうしてこうなったかなぁ。 キラキ:エンジンユニットにデブリが衝突しなければなぁ……。 キラキ:避けれてればー、気づけてればなぁ……。 リリナ:しゃーなしよ。レーダーの不具合起きてたんだし、目視で全部確認はできんって。 キラキ:はぁ……そう、仕方ないんだけどね。こうなっちゃったんだし。 リリナ:うん。運が悪かった。そうとしか言えんね。 キラキ:……つらいけど、できることなんて、なんとか食い繋ぐことと、救難信号を送ることくらいだもんなぁ。 リリナ:うん、ちゃんと届いてるから、頑張って耐えよう。 キラキ:届いてればいいなぁ。この通信も、きっと何日かのラグがあるんだろうけど……。機内時計も、もうバグっちゃって正確な情報出せないしなぁ。 リリナ:それね。これ聞いてるときには、もう手遅れとか……あー、考えない考えない。 キラキ:……まっ、考えたって仕方ないよね! 今日はここまで! また次回の救難信号にてお会いしましょう! リリナ:……うん。 キラキ:じゃあ……早くだれか助けに来てくださーい! バイバイ! リリナ:……まぁ、頑張るけどね。 リリナ: キラキ:……ふぅ、あーあ、通信不可になっちゃったー。 キラキ:気を紛らわせるものなんて、他にないんだもんな。 キラキ:困ったもんだよねー、宇宙の彼方でひとりぼっちってのは。 キラキ:……さみしいなぁ。 キラキ: 0:数日後 0: リリナ:給油は済ませたけど。どうしよっかなぁ。 リリナM:このままハッピーラッキー号の捜索を続けても良いのか、迷っていた。 リリナM:辺境惑星への調査任務帰りに、偶然ハッピーラッキー号の救難信号をキャッチしたことが始まりだ。 リリナM:しかるべき機関の捜索隊に任せるのが筋なんだろうけど。 リリナM:その時は、そういった通信も3日くらい進まないと届けられないくらいの位置だったから。 リリナM:自分が行ったほうが早いか、と……思ってしまった。 リリナ:それがちょっと判断ミスだったよねぇ。 リリナM:まったく船は見つからなかった。一箇所にとどまらず、引力で流されてしまっているらしい。 リリナM:救難信号の電波を伝い、進んでみたけど、まだ追いつかない。 リリナM:引き返すのも考えていたが、今さら感があったので……。 リリナ:ここまで来てしまったけど、ここが最後の補給ポイントなんだよなぁ……しかも無人。 リリナM:ここから先は、燃料を補給できなくなる。 リリナ:……潮時ではあるよねぇ。 リリナM:この先、片道分の距離で、ハッピーラッキー号に出会える保証は無い。 リリナM:通信ログの日付もわからないので、今どのくらいの距離なのかもわからない。 リリナ:確率は絶望的。迎えに行っても、無事に帰って来れる保証も無いしなぁ。 キラキM:……つらいけど、できることなんて、なんとか食い繋ぐことと、救難信号を送ることくらいだもんなぁ。 リリナ:できることは十分にやったつもりだけどなぁ。まっ、最初の判断ミスは痛いけど。 キラキM:届いてればいいなぁ。この通信も、きっと何日かのラグがあるんだろうけど……。 リリナ:……届いてるけど、そうねぇ、何日のラグがあるんだろう。 リリナM:本当に。私たちはどのくらい離れているんだろうか。 リリナ:こんなに……一緒にいるような感じがするのにね。 リリナM:キラキのことは何も知らない。 リリナM:ただただ、救難信号と称したラジオを聴いているだけ。 リリナ:……知ってるのは、あんたがピンチだってことと。 リリナM:なんだか、友達になれそうな奴だなぁって、ことくらい。 リリナ:そうなんだよねぇ……そんだけなんだけど。 キラキM:……まっ、考えたって仕方ないよね! 今日はここまで! また次回の救難信号にてお会いしましょう! リリナ:うん……でも、さすがに考えないといけないよねぇ、こっちは。 リリナM:これ以上のリスクは、本来避けるべきだ。 リリナM:ここから先へ行って、帰ってこれる保証なんて、どこにもない。 リリナ:……キラキが生きてるかどうかだって、わかんないんだ。 0:数日後 0: キラキ:これが最後……か。 キラキM:最後の食糧。その終わりのひとかけらを、口の中で溶かしてしまった。 キラキ:まったく……味わうも何もあったもんじゃないなぁ。 キラキM:暗い船の中で、限られた機能だけが、辛うじて稼働している状況。 キラキM:機器のランプが薄ぼんやりと照らすコックピットに座る私。 キラキ:絶望ってこんな味だったのか、なんて思っちゃいますね。 キラキM:思わず出るひとり言が、救難信号の時みたいな口調で、少し笑えた。 キラキ:意味無いんだけどなぁ、リアルタイムで声送るの。 キラキM:常に救難信号の電波は飛ばしているので、そこに音声通信を乗せるというのは、 キラキM:現状においては、本来意味のない行為だ。 キラキ:わかっては、いるんだけど。 キラキM:暗い宇宙のただ中で、恐怖に耐えられなかった。 キラキ:ひとりじゃないって……思いたかったんだよねぇ。 キラキM:もう、食糧と呼べる物は水だけ。それもほんの僅かだ。 キラキM:このまま……私自身もなくなってしまうんじゃないか。 キラキ:……あー、やだやだ! ブルー極まりないですよ、いま。 キラキM:悪い方へ。確実に、どん底に、落ちて行っている。 キラキM:積み荷には、ハッピーもラッキーも積まれていなかったんだ。 キラキ:なんでこんなことになったかなぁ……。 キラキM:あの時こうしていたら、そうじゃなかったら、と。 キラキM:ずっと、もしも、を考えてたってしょうがないのは分かっている。 キラキ:でもさ、それくらいは許してよ。 キラキM:ここには、慰めてくれる人もいないんだから。 キラキ:そう、ここには……。 キラキM:私だけなんだ。 キラキ:そろそろ……ラジオでもしようかな。 キラキM:救難信号だけど、あれはもはやラジオだった。 キラキ:さて……今日は、助けがきてくれるかな。 0: 0: キラキ:あー、メーデーメーデー! キラキ:こちら、ハッピーラッキー号、ただ今遭難中! キラキ:エンジン故障により、推進力を失っております! キラキ:どなたかこの救難信号を受け取ったら、至急、救助願います! リリナ:お……聞こえた。なんか、気合入ってるな。 キラキ:さっき、最後の食糧を食べ終わって、けっこう絶望中ですっ! リリナ:あぁ……ついにそんな状態になっちゃったか。 キラキ:これを聞いてくれている方がいたら、是非、助けてください! もしくは、助けを呼んでほしいです! リリナ:そうよなー。 キラキ:それでは、今日も……うん……おたよりを……。 リリナ:ん? キラキ:……きっと、こんなの誰も聞いてない。 リリナ:……そんなことないよ。 キラキ:随分と時間が経ったけど、助けが来る気配は無いし。 リリナM:声は、落ち着いていた。 キラキ:もし届いたとしても、どうせもう手遅れだと思う。 リリナM:この先に続くのが、どんな類いの言葉なのか。聞くのが怖い。 キラキ:……星の終わりって、話を知ってるかな? キラキ:星の光って、どんなに距離があっても、ずっと遠くまで届くけど、その距離分、ちゃんと時間がかかってる。 リリナM:それは、私でも聞いたことのある話だ。 キラキ:今実際に見えてる星の光は、ずっと昔の光で、もしかしたら元の星は、なくなってるかもしれない、って。 リリナ:どうして……そんなこと。 キラキ:……この通信も、同じ。これが……あなたに届いている頃には、私はもう、きっと……。 リリナM:どれだけ……。 キラキ:ここにはいないかもしれない。 リリナM:この言葉が出てくるまで、どれだけ耐えたのだろう。 リリナM:これまでの振る舞いが、どれ程の強がりだったのだろう。 キラキ:……だから、大丈夫。もし、助けに来ようとしてくれている人がいるなら……あきらめて、大丈夫。 リリナ:……何が、大丈夫なの? キラキ:……あー、楽しかった! ちょっとラジオのパーソナリティみたいなの、やってみたかったんだよね、昔から。 リリナ:ちょっと、ねぇ……。 キラキ:本当にフツオタとか来なかったり、色んなコーナーとか出来なかったのが、残念だけどぉ……うん、私のラジオなんてこんなもんかなって! リリナ:勝手に…‥進めないで。 キラキ:音楽とかもかけれなかったけど、自分で歌っておけばそれっぽさが増したかもしんないなー。 リリナ:無視しないでよ! キラキ:いやぁ……いい気晴らしでした。 リリナ:あんたばっか一方的に喋って! こっちは聞いてるばっかで何ひとつ伝えられない! いつも勝手に終わらせて! キラキ:今回で……うん、このラジオはおしまい。 リリナ:届いた私は、どうすればいいのよ! キラキ:…………。 リリナM:静かな船内に、自分の憤りだけが、霧散していく。 リリナM:私も、キラキと同じだ。 リリナ:誰にも……届かない。 キラキ:…………。 リリナM:猶予が、こちらにも無い。燃料が、確かにすり減って行く。 リリナM:行けるとこまで……できる範囲で……なんて、考えていた自分が……。 キラキ:馬鹿みたいだ……。 リリナ:え? キラキ:……通信、切れなかったよ。 リリナ:まだ……繋がってた? キラキ:……もう、なんにも無い。 リリナM:震える声が、言葉を繋ぐ。 キラキ:ここには、食料も、燃料も……希望も運も……なくなったのに。 キラキ:…………どうしよう……死にたくない。 リリナM:その小さな声は。 キラキ:……どう、しよう。 リリナM:今までで一番大きな、SOSだった。 キラキ:…………誰か……誰か! キラキ:この声が届いてますか! 聞こえたら! 助けてください! リリナM:一度あきらめたとは思えない、必死な声。 キラキ:メーデー! リリナM:そうだ、そんな簡単なわけない。 キラキ:めぇーでぇーーー! リリナM:まだ、私たちは。 キラキ:私は、ここにいます! リリナ:うん……知ってるよ。 キラキ:生きて……ます……! リリナ:わかってる……ずっと前から。 リリナM:通信は、そこで途絶えた。 リリナ:……遭難ネーム、リリナです。いつも楽しく聞かせてもらってます。 リリナ:絶望的な状況でも明るく振る舞うキラキさんを、なんだか放っておけなくて、ずっと追いかけてきました。 リリナ:最近になって追いかけることが、結構大変になり、あきらめてしまおうかとも思ったのですが……もう少し頑張ってみようと思います。 リリナ:きっとまだ、やりたいこととか、思い付かないくらい、キラキさんにも……自分にも、あるんだと思います。 リリナ:だから、そのやりたいことのひとつに。キラキさんのラジオを、地上で聞くことを加えます。 リリナ:大丈夫、きっと何らかの形でちゃんとしたラジオできますよ。面白かったし。 リリナ:だから……待ってて。 リリナ:ハッピーもラッキーも。私が届けに行くから。 リリナ: 0:   終