台本概要

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タイトル ぬいぐるみと僕の、本当のコト。
作者名 レンga  (@renganovel)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ◆◆あらすじ◆◆

ずっと昔から大切にしていたぬいぐるみが。
――突然、しゃべりだした。

おもちゃのぬいぐるみと
大人になってしまった元子供の持ち主の
ちょっと不思議で、とっても奇妙な。

ハートフルストーリー。

『ぬいぐるみと僕の、本当のコト。』

◆◆◆◆◆◆◆◆

ぬいぐるみも僕も、男女不問です。
僕役を女性がやる場合は、必要に応じて一人称を変更してください。
ぬいぐるみ役を男性がやる場合も、必要に応じて一人称を変更してください。

◆◆許可範囲◆◆

①アドリブ可
②男女比率変更可
③語尾などの軽微な台詞変更可

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
121 社会人の男性
ぬいぐるみ 不問 118 しゃべるぬいぐるみ
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:タイトル 0:『ぬいぐるみと僕の、本当のコト。』作:レンga  :   :  ぬいぐるみ:おかえり 僕:ただいま ぬいぐるみ:なに、今日は遅かったじゃん? 僕:まあ、いろいろあってさ。 僕:働く人間ってのは大変なんだよ。 僕:クマのぬいぐるみと違ってね。 ぬいぐるみ:バカにしてる? 僕:多少はね。 ぬいぐるみ:気分悪い。 僕:ぬいぐるみに気分とかあるんだ。 ぬいぐるみ:そりゃあ、あるよ。 僕:そうなんだね。  :  僕:ちょっと夕飯作るから。 僕:キッチン行ってくるわ。 ぬいぐるみ:そう。 僕:帰ってきてそうそう、かまってあげれなくてごめんね。 ぬいぐるみ:……ちょっとでもそう思ってるなら、キッチンに連れてったら? 僕:ほら、油がとんで、君が汚れたら嫌だしさ。 ぬいぐるみ:ふうん。 ぬいぐるみ:別にいいけど。 僕:――よっと。 ぬいぐるみ:なに。 僕:ほら、連れてってほしいのかなと思って。 ぬいぐるみ:油が飛ぶんじゃなかったの? 僕:油を使わなければいいだけの事だから。 僕:今日はそばにしようかな。 ぬいぐるみ:そもそも ぬいぐるみ:置き場をちょっと考えればいいだけじゃないの? 僕:ま、そうなんだけどね。 僕:かわいい君が見れたし充分かなって。 ぬいぐるみ:なにそれ、気分悪い。 僕:ぬいぐるみって、そもそもかわいいものじゃないの? ぬいぐるみ:すべてのぬいぐるみが、かわいくないといけないなんてことはないし ぬいぐるみ:すべてのぬいぐるみが、かわいがってほしいとは限らないよ。 ぬいぐるみ:そんなのは作った人間側の勝手な考えでしかなくて ぬいぐるみ:言葉を話せないぬいぐるみは、その人間の意図に沿ってあげる事しかできないだけ。 ぬいぐるみ:勘違いしないで。 僕:でも、君は? ぬいぐるみ:何を言わせたいの。 僕:……別に? ぬいぐるみ:はあ、むかつく。  :  僕:今日のおそばは、オクラと納豆のねばねばそばにしました。 ぬいぐるみ:くさそう。 僕:おいしいよ? ぬいぐるみ:ぬいぐるみにそばの味を想像させようって? 僕:そもそも、ぬいぐるみにくさそうって概念があることに驚き。 ぬいぐるみ:みためがよくないのよ。 僕:見た目の良い君が言うと説得力があるね。 ぬいぐるみ:食べ物とぬいぐるみを、同じ尺度で測る神経が分からない。 僕:ま、人間もぬいぐるみも、心の中まではわからないってことで。 僕:いただきまーす! 僕:(もぐもぐ) 僕:……疲れた体にオクラはいいね。 僕:元気が出ます。 ぬいぐるみ:ま、あんたがいいならいいんだけど。 僕:一口食べる? ぬいぐるみ:なに、にこにこして。 ぬいぐるみ:食べれるわけないじゃん。 僕:ほら、あーんして。 ぬいぐるみ:やだ、無理だから。 ぬいぐるみ:こわいって、何してんのあんた。 僕:……冗談。 ぬいぐるみ:冗談になってないから。 僕:ごめんって。  :  僕:片付けが終わりました。 ぬいぐるみ:見てれば分かるから。 僕:明日が早いので、今日はもう寝ます。 ぬいぐるみ:ああそう。 僕:それだけ? ぬいぐるみ:なに、それ。 僕:「やだー、あそんでー、かまってー」とかないの? ぬいぐるみ:……ない。 ぬいぐるみ:子供のころと、違うんだから。 僕:つまんないのー。 僕:……あ、でも。 僕:僕が子供のころは、そんなこと言ってくれてたんだ? ぬいぐるみ:……  :  僕:僕が君の声を聴けるようになったの 僕:まだ最近だし。 僕:ちょっと疑っててさ。 ぬいぐるみ:うたがうって何を? 僕:どこかに盗聴器とスピーカーがあって、誰かがどこかでしゃべってるんじゃないかとか。 ぬいぐるみ:なにそれ ぬいぐるみ:最初に声かけたとき、さんざん体をまさぐって確かめた癖に。 僕:中の綿まで調べてないからさ。 ぬいぐるみ:やめてよ。 ぬいぐるみ:中身開けるの。 ぬいぐるみ:どうなっちゃうかわからないから。 僕:調べないよ  :  僕:でも、君が僕との記憶をもし持ってるなら。 僕:子供の時の事、覚えてるかなって思って。 ぬいぐるみ:ああ、そういうこと? 僕:うん。 僕:君が僕の子供のころの記憶を覚えてるなら 僕:疑いは晴れるだろうね。 ぬいぐるみ:そもそも疑われてるのが気に食わないんだけど 僕:そりゃあ、そうでしょう? 僕:しゃべるクマのぬいぐるみと出会うのはこれが初めてだし 僕:こんなこと、聞いたこともないしね。 ぬいぐるみ:まあ、そうだとは思うけど。 ぬいぐるみ:なんか不服ね、不服かつ不愉快。 僕:あー、なんかごめんね?  :  ぬいぐるみ:で、あんたの子供のころのなにが知りたいの? 僕:何って言われると困るんだけど 僕:そうだな……出会いとか。 ぬいぐるみ:出会いって、あんたと初めて会った時の事? 僕:そう。 ぬいぐるみ:――雪が降ってた。 ぬいぐるみ:とっても寒い日で、あたしはプレゼントの箱の中にいた。 僕:うん。 ぬいぐるみ:あんたの声が聞こえた。 ぬいぐるみ:「サンタさんがプレゼントくれたー!」って、あたしの入った箱をもって ぬいぐるみ: 両親のもとに走っていった。 僕:そうだったかな ぬいぐるみ: あんたが覚えてなかったら、意味ないじゃない。 僕:ちょっとは覚えてるよ。 僕: ほら、続けて? ぬいぐるみ:……もう。 ぬいぐるみ:両親に、箱を開けていいか聞いたあんたは ぬいぐるみ:嬉しそうに箱を開けて、中から出てきた私を見て、目を輝かせた。 ぬいぐるみ:それで……その…… 僕:……? ぬいぐるみ:……ぎゅーって、抱きしめてくれた。 僕:そうだったかな。 ぬいぐるみ:そ、そうだったの! ぬいぐるみ:覚えてないなら、話す意味ないじゃない! 僕:冗談だって、覚えてるよ。 ぬいぐるみ:……もう。 ぬいぐるみ:こっちは恥ずかしい思いをしてしゃべってるのに。 僕:ごめんって。 僕:かわいかったから、からかいたくなっちゃって。 ぬいぐるみ:もう何もしゃべらない! 僕:悪かったって。  :  僕:……でも、これで本当に 僕:君が僕のぬいぐるみで、 僕:本当に、しゃべってるってことがわかっちゃったね。 ぬいぐるみ:だからそうだって、言ってるじゃない。 僕:でも、そうと分かれば、嬉しいものだね。 ぬいぐるみ:なにが? 僕:小さいころから一緒にいたぬいぐるみと 僕:こうやってお話しできるなんて。 ぬいぐるみ:……なに、いきなり。 僕:いや、今までは半信半疑だったから。 僕:遠隔操作でしゃべってたとしても、それはそれで面白がってたけど 僕:本当にぬいぐるみとお話してるなんて 僕:現実じゃないみたいだなって。 僕:おとぎ話みたいだとは思わない? ぬいぐるみ:おとぎ話……ね。 ぬいぐるみ:大の大人が、おとぎ話みたい……って心躍らせるのは ぬいぐるみ:聞いててあたしも、おもしろいわ。 僕:君もおもしろいなら、こんな素晴らしいことはないね。 僕:だけど、今日はもう眠いから、寝ることにするよ。 ぬいぐるみ:そう。 ぬいぐるみ:それじゃあ、おやすみなさい。 僕:……それだけ? ぬいぐるみ:それだけ。 僕:なーんだ。 ぬいぐるみ:おやすみ。 僕:おやすみー。  :  0:間  :  ぬいぐるみ:おかえり 僕:ふぅ……! 僕:ただいまー。 ぬいぐるみ:今日は早かったね。 僕:君とおしゃべりしたかったからね。 ぬいぐるみ:なに、気持ち悪いんだけど。 僕:ひどい事言うなあ。 ぬいぐるみ:冗談よ。 僕:冗談でも僕は傷ついたね。 僕:しばらくは立ち直れそうにない。 ぬいぐるみ:そう。 僕:……そう。じゃなくてさ。 僕:ほら、ほかにもっと何かないの? ぬいぐるみ:なにかってなに? 僕:例えば、かわいらしい声で謝るとか 僕:ちょっとだけ甘えてみるとかさ。 ぬいぐるみ:え、そんなこと考えてたの? 僕:ナチュラルにひかないでよ、それはそれで傷つくよ? ぬいぐるみ:別に、あんたがそういう人なのは昔から知ってるから ぬいぐるみ:ひいてるわけじゃないよ。 ぬいぐるみ:ちょっと気持ち悪いだけ。 僕:そんなになんども僕を傷つけるのをやめてくれるかな……  :  ぬいぐるみ:……! ぬいぐるみ:ふふふ 僕:あ!笑った! ぬいぐるみ:おもしろかったからね。 僕:まったく、君は意地悪なぬいぐるみだ。 ぬいぐるみ:そうかな? 僕:そうだとも。 ぬいぐるみ:まあ、それならそれでいいけど。 僕:そういえばさ ぬいぐるみ:なに? 僕:君に、聞きたいことがあったんだけど 僕:聞いてもいいかな。 ぬいぐるみ:いいよ、別に。 僕:どうして突然、君はしゃべりだしたの? ぬいぐるみ:…… ぬいぐるみ:そんなつまらない事が、知りたいの? 僕:不思議だなって思ってさ。 僕:ぬいぐるみが突然しゃべりだすなんて 僕:普通じゃないし。 ぬいぐるみ:……普通じゃない、ね。 ぬいぐるみ:あたしからしたら、逆に不思議なことがたくさんあるんだけど。 僕:逆に?  :  ぬいぐるみ:ちょっと長くなるけど。 僕:いいよ、聞きたい。  :  ぬいぐるみ:あのさ。 ぬいぐるみ:子供のころは、まるであたしみたいなぬいぐるみを ぬいぐるみ:本当の友達みたいに扱って。 ぬいぐるみ:名前を付けたり、どこに行くにも一緒にいたり ぬいぐるみ:当たり前のように、そうしてたじゃない? 僕:……そうだね。 ぬいぐるみ:それなのに、大人になるにつれて ぬいぐるみ:それが当り前じゃなくなっていった。 ぬいぐるみ:ぬいぐるみは友達じゃなくて、おもちゃだってわかっていって ぬいぐるみ:そして、いつしか、ガラクタになってしまう。 ぬいぐるみ:……不思議じゃない? 僕:確かに、不思議、だね。 ぬいぐるみ:あんたは、あたしみたいなぬいぐるみを ぬいぐるみ:一人暮らしの家にまで持ち込む変人だったから ぬいぐるみ:あたしはガラクタにならずに済んだけど。 僕:変人って。 ぬいぐるみ:世の中の多くのぬいぐるみは、そのほとんどが ぬいぐるみ:ガラクタとして、最終的には捨てられてるの。 ぬいぐるみ:あたしからしたら、あたしがしゃべることより ぬいぐるみ:そっちの方が不思議で仕方がないんだけど。  :  僕:そっか……確かに、それは不思議だ。 ぬいぐるみ:でしょう? 僕:だけど、ちょっとだけなら 僕:なんとなく、答えられるかもしれない。 ぬいぐるみ:そう。 ぬいぐるみ:聞かせてもらえる? 僕:いいよ。 僕:えっと……うまく伝わるかわからないけど。  :  僕:ぬいぐるみだけじゃなくて、子供のころのおもちゃって 僕:その子供が、大人になるために必要な、道具なんじゃないかって思うんだ。 ぬいぐるみ:道具……? 僕:言い方が悪くて、気分が悪くなったらごめんね。 僕:でも、おもちゃを通して、例えば、おしゃべりを覚えたり。 僕:ごっこ遊びで、想像力を鍛えたり。感性を磨いたり。 僕:そうやって、少しづつ色々な事を覚えていくと思うんだよ。 ぬいぐるみ:……うん。 僕:君たち、おもちゃ側からしたら、それは残酷なことかもしれないけど 僕:大人になっていくにつれて、成長に必要なものが変わっていくんだ。 僕:だから、おもちゃは使われず、捨てられるようになってしまう。 僕:悲しいことだけど、目的が果たされたからこそ、使われなくなってしまうんだ。 ぬいぐるみ:なるほど。 ぬいぐるみ:あたしたちは、道具として生まれてきたから。 ぬいぐるみ:そもそも、友達ごっこはできても、本当の友達にはなれないってことね。 僕:……そう、なっちゃうのかな。  :  僕:悲しいけど、僕が思う、不思議に対する答えはそう。 ぬいぐるみ:ありがとう。 僕:ありがとう? ぬいぐるみ:うん。 ぬいぐるみ:あんたはいつも正直に、思ったことを口にしてくれるから。 ぬいぐるみ:ぬいぐるみのあたしに向かって、ダイレクトに道具だなんて ぬいぐるみ:普通の大人は、そんなこと言わない。 僕:え、ごめんね。 僕:やっぱり、嫌な気持ちにさせたかな。 ぬいぐるみ:いや、逆だよ。 ぬいぐるみ:あんたらしくて、あたしは嬉しかった。 僕:僕……らしい? 僕:そうかな、そんな自覚はないんだけど。 ぬいぐるみ:自覚がないところも、あんたらしいかな。 僕:なんか、ちょっぴり腑に落ちないけど……。 僕:でも、まあいいかな。 僕:君の気分を害さなかったなら、それで。 ぬいぐるみ:……問題ないよ、別に  :  ぬいぐるみ:ところで、ほら、晩御飯。 ぬいぐるみ:今日は何を作るか、もう決めた? 僕:どうしようかな。 僕:まだ何にも考えてないんだけど。 ぬいぐるみ:それなら、カレーにしたら? 僕:カレー? ぬいぐるみ:子供のころ、あたしはよくあんたに ぬいぐるみ:カレーを食べさせられそうになったじゃない。 僕:あー、そんな写真、アルバムで見たことあるや。 ぬいぐるみ:あんた、自分がカレー好きだからって ぬいぐるみ:あたしにも食べさせてあげたいって。 僕:恥ずかしいから、もう、言わなくていいから。 ぬいぐるみ:ふふふ、形勢逆転、だね。 僕:……もう。 僕:でも、いいや、カレーにしよう。 ぬいぐるみ:ちゃんと食べさせてね。 僕:え……よごれるよ? ぬいぐるみ:冗談。 僕:なんだ、冗談か。 僕:騙されたよ。 ぬいぐるみ:ふふふ。 ぬいぐるみ:でも、あんたが作ってるところ、眺めたいかな。 僕:わかった。 僕:じゃあ、一緒に行こうか。 ぬいぐるみ:ありがとう。  :  0:間  :  僕:……ふわあ。 ぬいぐるみ:お腹がいっぱいになったら、すぐに眠くなるなんて ぬいぐるみ:あんたはいつまでたっても子供ね。 僕:どうだろう。 僕:僕は君と話していると、だんだんと子供に戻ってる気分なんだ。 僕:そのせいなのかもしれない。 ぬいぐるみ:きっと、子供のころのことを、あんた自身が、思い出しているだけだよ。 ぬいぐるみ:子供に戻ってるんじゃなくて ぬいぐるみ:あんたの中にずっとあった、子供らしい自分が ぬいぐるみ:戻ってきてるんだ。 僕:どうして君は、そんなことがわかるんだ? ぬいぐるみ:さあ、なんでだと思う? 僕:質問を質問で返すのは卑怯だ。 ぬいぐるみ:じゃあ、あたしは卑怯でいい。 僕:その返しも卑怯だ! ぬいぐるみ:ふふふ。 ぬいぐるみ:じゃあ、教えてあげる。 僕:やっぱり、何か知ってるんだ? ぬいぐるみ:推測でしかないけどね。 ぬいぐるみ:ご飯を食べる前、あんたと話してて、気が付いたんだ。 僕:なにに気が付いたのさ。 ぬいぐるみ:あたし、自分で言ったじゃない。 ぬいぐるみ:「友達ごっこはできても、本当の友達にはなれない」 って 僕:うん、言ってたね。 僕:僕は、なんて返したらいいかわからなかった。 ぬいぐるみ:そうだったね。 ぬいぐるみ:きっと、八つ当たりだったんだろうと思う。 ぬいぐるみ:あたし自身は、ごっこ遊びのために生まれて ぬいぐるみ:“本当”を知らないまま、捨てられるんだと思ったから。 ぬいぐるみ:ごめんね。 僕:謝らないでよ。 ぬいぐるみ:だけどさ、あたし、気づいたんだ。  :  ぬいぐるみ:“本当”を知ることができたから、君と話せるようになったんじゃないかって。  :  僕:本当を……。 ぬいぐるみ:うん。 僕:僕が君と、本当の友達になれたから 僕:君は、僕と話ができるようになったってこと? ぬいぐるみ:そう。 ぬいぐるみ:あんたが、一人暮らしの家にまで、あたしみたいなぬいぐるみを連れてくるほど ぬいぐるみ:あたしを、大事に思ってくれていたからこそ、あたしは“本当”になることができた。 僕:そっか。 僕:もし、それが本当のコトなら、嬉しいな。 ぬいぐるみ:あたしも、嬉しい。  :  僕:……なんか、今日はやけに素直だね。 ぬいぐるみ:そ、そう? 僕:いつもなら、「……別に」みたいな感じなのに。 ぬいぐるみ:え、なにそれムカつく。 僕:そうそう、そんな感じ。 ぬいぐるみ:ふうん。 ぬいぐるみ:じゃあ、今日は特別ってことで。 ぬいぐるみ:こんなに嬉しいことがあったんだから、今日くらいいいでしょう? 僕:いや、僕としては 僕:いつも、今日みたいな君だと 僕:もっと僕らしさが出ると思うんだけどな。 ぬいぐるみ:今日のあんたも、ちょっと変だよ? 僕:……そう? ぬいぐるみ:いつもはもっと、なんていうか、意地悪? 僕:そんなことないでしょう。 ぬいぐるみ:意地悪……って言うより、余裕がある感じでいけ好かない。 僕:口が悪いぬいぐるみめ。 ぬいぐるみ:そうそう、そんな感じ。 僕:やっぱりわかんないや。 ぬいぐるみ:そっか。 ぬいぐるみ:もう……そろそろ眠たくなってきちゃった? 僕:お腹がいっぱいでさ、さっきからずっと眠いよ。 ぬいぐるみ:そう。 僕:だから、ごめんだけどさ 僕:今日はもうおやすみ。 僕:素直な君とたくさん話せて、僕は満足したし 僕:君がしゃべれる理由もわかって、すっきりしたしね。 ぬいぐるみ:ふうん。 ぬいぐるみ:明日になったら、いつもの生意気なあたしに、もどっちゃうよ? 僕:いつもの君も、僕の大事な君だから、大丈夫。 ぬいぐるみ:そっか。 僕:ふわあ…… 僕:だから、もう、おやすみなさい。 僕:しゃべり疲れたでしょう? 僕:君も、ゆっくり休んで。 ぬいぐるみ:そうだね。 ぬいぐるみ:…… ぬいぐるみ:……でも。 僕:……ふわあ。 僕:でも? ぬいぐるみ:……  :  ぬいぐるみ:……やだ。(かわいく) ぬいぐるみ:……あそんで。(かわいく) ぬいぐるみ:……かまって。(かわいく)  :  僕:……! 僕:……仕方ないなあ。 僕:――今日だけ、特別だよ……。  :   :   :  0:おしまい。 0:めでたし、めでたし。  :   :

0:タイトル 0:『ぬいぐるみと僕の、本当のコト。』作:レンga  :   :  ぬいぐるみ:おかえり 僕:ただいま ぬいぐるみ:なに、今日は遅かったじゃん? 僕:まあ、いろいろあってさ。 僕:働く人間ってのは大変なんだよ。 僕:クマのぬいぐるみと違ってね。 ぬいぐるみ:バカにしてる? 僕:多少はね。 ぬいぐるみ:気分悪い。 僕:ぬいぐるみに気分とかあるんだ。 ぬいぐるみ:そりゃあ、あるよ。 僕:そうなんだね。  :  僕:ちょっと夕飯作るから。 僕:キッチン行ってくるわ。 ぬいぐるみ:そう。 僕:帰ってきてそうそう、かまってあげれなくてごめんね。 ぬいぐるみ:……ちょっとでもそう思ってるなら、キッチンに連れてったら? 僕:ほら、油がとんで、君が汚れたら嫌だしさ。 ぬいぐるみ:ふうん。 ぬいぐるみ:別にいいけど。 僕:――よっと。 ぬいぐるみ:なに。 僕:ほら、連れてってほしいのかなと思って。 ぬいぐるみ:油が飛ぶんじゃなかったの? 僕:油を使わなければいいだけの事だから。 僕:今日はそばにしようかな。 ぬいぐるみ:そもそも ぬいぐるみ:置き場をちょっと考えればいいだけじゃないの? 僕:ま、そうなんだけどね。 僕:かわいい君が見れたし充分かなって。 ぬいぐるみ:なにそれ、気分悪い。 僕:ぬいぐるみって、そもそもかわいいものじゃないの? ぬいぐるみ:すべてのぬいぐるみが、かわいくないといけないなんてことはないし ぬいぐるみ:すべてのぬいぐるみが、かわいがってほしいとは限らないよ。 ぬいぐるみ:そんなのは作った人間側の勝手な考えでしかなくて ぬいぐるみ:言葉を話せないぬいぐるみは、その人間の意図に沿ってあげる事しかできないだけ。 ぬいぐるみ:勘違いしないで。 僕:でも、君は? ぬいぐるみ:何を言わせたいの。 僕:……別に? ぬいぐるみ:はあ、むかつく。  :  僕:今日のおそばは、オクラと納豆のねばねばそばにしました。 ぬいぐるみ:くさそう。 僕:おいしいよ? ぬいぐるみ:ぬいぐるみにそばの味を想像させようって? 僕:そもそも、ぬいぐるみにくさそうって概念があることに驚き。 ぬいぐるみ:みためがよくないのよ。 僕:見た目の良い君が言うと説得力があるね。 ぬいぐるみ:食べ物とぬいぐるみを、同じ尺度で測る神経が分からない。 僕:ま、人間もぬいぐるみも、心の中まではわからないってことで。 僕:いただきまーす! 僕:(もぐもぐ) 僕:……疲れた体にオクラはいいね。 僕:元気が出ます。 ぬいぐるみ:ま、あんたがいいならいいんだけど。 僕:一口食べる? ぬいぐるみ:なに、にこにこして。 ぬいぐるみ:食べれるわけないじゃん。 僕:ほら、あーんして。 ぬいぐるみ:やだ、無理だから。 ぬいぐるみ:こわいって、何してんのあんた。 僕:……冗談。 ぬいぐるみ:冗談になってないから。 僕:ごめんって。  :  僕:片付けが終わりました。 ぬいぐるみ:見てれば分かるから。 僕:明日が早いので、今日はもう寝ます。 ぬいぐるみ:ああそう。 僕:それだけ? ぬいぐるみ:なに、それ。 僕:「やだー、あそんでー、かまってー」とかないの? ぬいぐるみ:……ない。 ぬいぐるみ:子供のころと、違うんだから。 僕:つまんないのー。 僕:……あ、でも。 僕:僕が子供のころは、そんなこと言ってくれてたんだ? ぬいぐるみ:……  :  僕:僕が君の声を聴けるようになったの 僕:まだ最近だし。 僕:ちょっと疑っててさ。 ぬいぐるみ:うたがうって何を? 僕:どこかに盗聴器とスピーカーがあって、誰かがどこかでしゃべってるんじゃないかとか。 ぬいぐるみ:なにそれ ぬいぐるみ:最初に声かけたとき、さんざん体をまさぐって確かめた癖に。 僕:中の綿まで調べてないからさ。 ぬいぐるみ:やめてよ。 ぬいぐるみ:中身開けるの。 ぬいぐるみ:どうなっちゃうかわからないから。 僕:調べないよ  :  僕:でも、君が僕との記憶をもし持ってるなら。 僕:子供の時の事、覚えてるかなって思って。 ぬいぐるみ:ああ、そういうこと? 僕:うん。 僕:君が僕の子供のころの記憶を覚えてるなら 僕:疑いは晴れるだろうね。 ぬいぐるみ:そもそも疑われてるのが気に食わないんだけど 僕:そりゃあ、そうでしょう? 僕:しゃべるクマのぬいぐるみと出会うのはこれが初めてだし 僕:こんなこと、聞いたこともないしね。 ぬいぐるみ:まあ、そうだとは思うけど。 ぬいぐるみ:なんか不服ね、不服かつ不愉快。 僕:あー、なんかごめんね?  :  ぬいぐるみ:で、あんたの子供のころのなにが知りたいの? 僕:何って言われると困るんだけど 僕:そうだな……出会いとか。 ぬいぐるみ:出会いって、あんたと初めて会った時の事? 僕:そう。 ぬいぐるみ:――雪が降ってた。 ぬいぐるみ:とっても寒い日で、あたしはプレゼントの箱の中にいた。 僕:うん。 ぬいぐるみ:あんたの声が聞こえた。 ぬいぐるみ:「サンタさんがプレゼントくれたー!」って、あたしの入った箱をもって ぬいぐるみ: 両親のもとに走っていった。 僕:そうだったかな ぬいぐるみ: あんたが覚えてなかったら、意味ないじゃない。 僕:ちょっとは覚えてるよ。 僕: ほら、続けて? ぬいぐるみ:……もう。 ぬいぐるみ:両親に、箱を開けていいか聞いたあんたは ぬいぐるみ:嬉しそうに箱を開けて、中から出てきた私を見て、目を輝かせた。 ぬいぐるみ:それで……その…… 僕:……? ぬいぐるみ:……ぎゅーって、抱きしめてくれた。 僕:そうだったかな。 ぬいぐるみ:そ、そうだったの! ぬいぐるみ:覚えてないなら、話す意味ないじゃない! 僕:冗談だって、覚えてるよ。 ぬいぐるみ:……もう。 ぬいぐるみ:こっちは恥ずかしい思いをしてしゃべってるのに。 僕:ごめんって。 僕:かわいかったから、からかいたくなっちゃって。 ぬいぐるみ:もう何もしゃべらない! 僕:悪かったって。  :  僕:……でも、これで本当に 僕:君が僕のぬいぐるみで、 僕:本当に、しゃべってるってことがわかっちゃったね。 ぬいぐるみ:だからそうだって、言ってるじゃない。 僕:でも、そうと分かれば、嬉しいものだね。 ぬいぐるみ:なにが? 僕:小さいころから一緒にいたぬいぐるみと 僕:こうやってお話しできるなんて。 ぬいぐるみ:……なに、いきなり。 僕:いや、今までは半信半疑だったから。 僕:遠隔操作でしゃべってたとしても、それはそれで面白がってたけど 僕:本当にぬいぐるみとお話してるなんて 僕:現実じゃないみたいだなって。 僕:おとぎ話みたいだとは思わない? ぬいぐるみ:おとぎ話……ね。 ぬいぐるみ:大の大人が、おとぎ話みたい……って心躍らせるのは ぬいぐるみ:聞いててあたしも、おもしろいわ。 僕:君もおもしろいなら、こんな素晴らしいことはないね。 僕:だけど、今日はもう眠いから、寝ることにするよ。 ぬいぐるみ:そう。 ぬいぐるみ:それじゃあ、おやすみなさい。 僕:……それだけ? ぬいぐるみ:それだけ。 僕:なーんだ。 ぬいぐるみ:おやすみ。 僕:おやすみー。  :  0:間  :  ぬいぐるみ:おかえり 僕:ふぅ……! 僕:ただいまー。 ぬいぐるみ:今日は早かったね。 僕:君とおしゃべりしたかったからね。 ぬいぐるみ:なに、気持ち悪いんだけど。 僕:ひどい事言うなあ。 ぬいぐるみ:冗談よ。 僕:冗談でも僕は傷ついたね。 僕:しばらくは立ち直れそうにない。 ぬいぐるみ:そう。 僕:……そう。じゃなくてさ。 僕:ほら、ほかにもっと何かないの? ぬいぐるみ:なにかってなに? 僕:例えば、かわいらしい声で謝るとか 僕:ちょっとだけ甘えてみるとかさ。 ぬいぐるみ:え、そんなこと考えてたの? 僕:ナチュラルにひかないでよ、それはそれで傷つくよ? ぬいぐるみ:別に、あんたがそういう人なのは昔から知ってるから ぬいぐるみ:ひいてるわけじゃないよ。 ぬいぐるみ:ちょっと気持ち悪いだけ。 僕:そんなになんども僕を傷つけるのをやめてくれるかな……  :  ぬいぐるみ:……! ぬいぐるみ:ふふふ 僕:あ!笑った! ぬいぐるみ:おもしろかったからね。 僕:まったく、君は意地悪なぬいぐるみだ。 ぬいぐるみ:そうかな? 僕:そうだとも。 ぬいぐるみ:まあ、それならそれでいいけど。 僕:そういえばさ ぬいぐるみ:なに? 僕:君に、聞きたいことがあったんだけど 僕:聞いてもいいかな。 ぬいぐるみ:いいよ、別に。 僕:どうして突然、君はしゃべりだしたの? ぬいぐるみ:…… ぬいぐるみ:そんなつまらない事が、知りたいの? 僕:不思議だなって思ってさ。 僕:ぬいぐるみが突然しゃべりだすなんて 僕:普通じゃないし。 ぬいぐるみ:……普通じゃない、ね。 ぬいぐるみ:あたしからしたら、逆に不思議なことがたくさんあるんだけど。 僕:逆に?  :  ぬいぐるみ:ちょっと長くなるけど。 僕:いいよ、聞きたい。  :  ぬいぐるみ:あのさ。 ぬいぐるみ:子供のころは、まるであたしみたいなぬいぐるみを ぬいぐるみ:本当の友達みたいに扱って。 ぬいぐるみ:名前を付けたり、どこに行くにも一緒にいたり ぬいぐるみ:当たり前のように、そうしてたじゃない? 僕:……そうだね。 ぬいぐるみ:それなのに、大人になるにつれて ぬいぐるみ:それが当り前じゃなくなっていった。 ぬいぐるみ:ぬいぐるみは友達じゃなくて、おもちゃだってわかっていって ぬいぐるみ:そして、いつしか、ガラクタになってしまう。 ぬいぐるみ:……不思議じゃない? 僕:確かに、不思議、だね。 ぬいぐるみ:あんたは、あたしみたいなぬいぐるみを ぬいぐるみ:一人暮らしの家にまで持ち込む変人だったから ぬいぐるみ:あたしはガラクタにならずに済んだけど。 僕:変人って。 ぬいぐるみ:世の中の多くのぬいぐるみは、そのほとんどが ぬいぐるみ:ガラクタとして、最終的には捨てられてるの。 ぬいぐるみ:あたしからしたら、あたしがしゃべることより ぬいぐるみ:そっちの方が不思議で仕方がないんだけど。  :  僕:そっか……確かに、それは不思議だ。 ぬいぐるみ:でしょう? 僕:だけど、ちょっとだけなら 僕:なんとなく、答えられるかもしれない。 ぬいぐるみ:そう。 ぬいぐるみ:聞かせてもらえる? 僕:いいよ。 僕:えっと……うまく伝わるかわからないけど。  :  僕:ぬいぐるみだけじゃなくて、子供のころのおもちゃって 僕:その子供が、大人になるために必要な、道具なんじゃないかって思うんだ。 ぬいぐるみ:道具……? 僕:言い方が悪くて、気分が悪くなったらごめんね。 僕:でも、おもちゃを通して、例えば、おしゃべりを覚えたり。 僕:ごっこ遊びで、想像力を鍛えたり。感性を磨いたり。 僕:そうやって、少しづつ色々な事を覚えていくと思うんだよ。 ぬいぐるみ:……うん。 僕:君たち、おもちゃ側からしたら、それは残酷なことかもしれないけど 僕:大人になっていくにつれて、成長に必要なものが変わっていくんだ。 僕:だから、おもちゃは使われず、捨てられるようになってしまう。 僕:悲しいことだけど、目的が果たされたからこそ、使われなくなってしまうんだ。 ぬいぐるみ:なるほど。 ぬいぐるみ:あたしたちは、道具として生まれてきたから。 ぬいぐるみ:そもそも、友達ごっこはできても、本当の友達にはなれないってことね。 僕:……そう、なっちゃうのかな。  :  僕:悲しいけど、僕が思う、不思議に対する答えはそう。 ぬいぐるみ:ありがとう。 僕:ありがとう? ぬいぐるみ:うん。 ぬいぐるみ:あんたはいつも正直に、思ったことを口にしてくれるから。 ぬいぐるみ:ぬいぐるみのあたしに向かって、ダイレクトに道具だなんて ぬいぐるみ:普通の大人は、そんなこと言わない。 僕:え、ごめんね。 僕:やっぱり、嫌な気持ちにさせたかな。 ぬいぐるみ:いや、逆だよ。 ぬいぐるみ:あんたらしくて、あたしは嬉しかった。 僕:僕……らしい? 僕:そうかな、そんな自覚はないんだけど。 ぬいぐるみ:自覚がないところも、あんたらしいかな。 僕:なんか、ちょっぴり腑に落ちないけど……。 僕:でも、まあいいかな。 僕:君の気分を害さなかったなら、それで。 ぬいぐるみ:……問題ないよ、別に  :  ぬいぐるみ:ところで、ほら、晩御飯。 ぬいぐるみ:今日は何を作るか、もう決めた? 僕:どうしようかな。 僕:まだ何にも考えてないんだけど。 ぬいぐるみ:それなら、カレーにしたら? 僕:カレー? ぬいぐるみ:子供のころ、あたしはよくあんたに ぬいぐるみ:カレーを食べさせられそうになったじゃない。 僕:あー、そんな写真、アルバムで見たことあるや。 ぬいぐるみ:あんた、自分がカレー好きだからって ぬいぐるみ:あたしにも食べさせてあげたいって。 僕:恥ずかしいから、もう、言わなくていいから。 ぬいぐるみ:ふふふ、形勢逆転、だね。 僕:……もう。 僕:でも、いいや、カレーにしよう。 ぬいぐるみ:ちゃんと食べさせてね。 僕:え……よごれるよ? ぬいぐるみ:冗談。 僕:なんだ、冗談か。 僕:騙されたよ。 ぬいぐるみ:ふふふ。 ぬいぐるみ:でも、あんたが作ってるところ、眺めたいかな。 僕:わかった。 僕:じゃあ、一緒に行こうか。 ぬいぐるみ:ありがとう。  :  0:間  :  僕:……ふわあ。 ぬいぐるみ:お腹がいっぱいになったら、すぐに眠くなるなんて ぬいぐるみ:あんたはいつまでたっても子供ね。 僕:どうだろう。 僕:僕は君と話していると、だんだんと子供に戻ってる気分なんだ。 僕:そのせいなのかもしれない。 ぬいぐるみ:きっと、子供のころのことを、あんた自身が、思い出しているだけだよ。 ぬいぐるみ:子供に戻ってるんじゃなくて ぬいぐるみ:あんたの中にずっとあった、子供らしい自分が ぬいぐるみ:戻ってきてるんだ。 僕:どうして君は、そんなことがわかるんだ? ぬいぐるみ:さあ、なんでだと思う? 僕:質問を質問で返すのは卑怯だ。 ぬいぐるみ:じゃあ、あたしは卑怯でいい。 僕:その返しも卑怯だ! ぬいぐるみ:ふふふ。 ぬいぐるみ:じゃあ、教えてあげる。 僕:やっぱり、何か知ってるんだ? ぬいぐるみ:推測でしかないけどね。 ぬいぐるみ:ご飯を食べる前、あんたと話してて、気が付いたんだ。 僕:なにに気が付いたのさ。 ぬいぐるみ:あたし、自分で言ったじゃない。 ぬいぐるみ:「友達ごっこはできても、本当の友達にはなれない」 って 僕:うん、言ってたね。 僕:僕は、なんて返したらいいかわからなかった。 ぬいぐるみ:そうだったね。 ぬいぐるみ:きっと、八つ当たりだったんだろうと思う。 ぬいぐるみ:あたし自身は、ごっこ遊びのために生まれて ぬいぐるみ:“本当”を知らないまま、捨てられるんだと思ったから。 ぬいぐるみ:ごめんね。 僕:謝らないでよ。 ぬいぐるみ:だけどさ、あたし、気づいたんだ。  :  ぬいぐるみ:“本当”を知ることができたから、君と話せるようになったんじゃないかって。  :  僕:本当を……。 ぬいぐるみ:うん。 僕:僕が君と、本当の友達になれたから 僕:君は、僕と話ができるようになったってこと? ぬいぐるみ:そう。 ぬいぐるみ:あんたが、一人暮らしの家にまで、あたしみたいなぬいぐるみを連れてくるほど ぬいぐるみ:あたしを、大事に思ってくれていたからこそ、あたしは“本当”になることができた。 僕:そっか。 僕:もし、それが本当のコトなら、嬉しいな。 ぬいぐるみ:あたしも、嬉しい。  :  僕:……なんか、今日はやけに素直だね。 ぬいぐるみ:そ、そう? 僕:いつもなら、「……別に」みたいな感じなのに。 ぬいぐるみ:え、なにそれムカつく。 僕:そうそう、そんな感じ。 ぬいぐるみ:ふうん。 ぬいぐるみ:じゃあ、今日は特別ってことで。 ぬいぐるみ:こんなに嬉しいことがあったんだから、今日くらいいいでしょう? 僕:いや、僕としては 僕:いつも、今日みたいな君だと 僕:もっと僕らしさが出ると思うんだけどな。 ぬいぐるみ:今日のあんたも、ちょっと変だよ? 僕:……そう? ぬいぐるみ:いつもはもっと、なんていうか、意地悪? 僕:そんなことないでしょう。 ぬいぐるみ:意地悪……って言うより、余裕がある感じでいけ好かない。 僕:口が悪いぬいぐるみめ。 ぬいぐるみ:そうそう、そんな感じ。 僕:やっぱりわかんないや。 ぬいぐるみ:そっか。 ぬいぐるみ:もう……そろそろ眠たくなってきちゃった? 僕:お腹がいっぱいでさ、さっきからずっと眠いよ。 ぬいぐるみ:そう。 僕:だから、ごめんだけどさ 僕:今日はもうおやすみ。 僕:素直な君とたくさん話せて、僕は満足したし 僕:君がしゃべれる理由もわかって、すっきりしたしね。 ぬいぐるみ:ふうん。 ぬいぐるみ:明日になったら、いつもの生意気なあたしに、もどっちゃうよ? 僕:いつもの君も、僕の大事な君だから、大丈夫。 ぬいぐるみ:そっか。 僕:ふわあ…… 僕:だから、もう、おやすみなさい。 僕:しゃべり疲れたでしょう? 僕:君も、ゆっくり休んで。 ぬいぐるみ:そうだね。 ぬいぐるみ:…… ぬいぐるみ:……でも。 僕:……ふわあ。 僕:でも? ぬいぐるみ:……  :  ぬいぐるみ:……やだ。(かわいく) ぬいぐるみ:……あそんで。(かわいく) ぬいぐるみ:……かまって。(かわいく)  :  僕:……! 僕:……仕方ないなあ。 僕:――今日だけ、特別だよ……。  :   :   :  0:おしまい。 0:めでたし、めでたし。  :   :