台本概要

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タイトル はむ
作者名 レンga  (@renganovel)
ジャンル 童話
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「はむ」と名付けられたハムスターの日常。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
はむ 不問 24 「はむ」と名付けられたハムスター
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
はむ:ボクはハムスター はむ:名前は、まだ保留らしい。  :  はむ:ご主人はボクの事を「はむ」と呼ぶけれど はむ:ご主人曰く≪いわく≫仮の名前なのだそうだ。 はむ:そりゃあ、そうだろう。 はむ:人間は自分の子供に「ヒト」なんて名前を付けないし はむ:犬に「ワンちゃん」と言う名前も付けない。 はむ:だから、ご主人がボクの事を「はむ」と呼ぶ期間はきっと短く はむ:より良い名前を思いついたら、その名前に切り替えていくのだろうと はむ:ボクはそう思っていて……もう半年が過ぎた。  :  0:間  :  はむ:ご主人は、きっとボクの事が狂おしいほど好きなのだろう。 はむ:どんなに自分が疲れていても、ボクを眺める事を欠かすことがないのだ。 はむ:くたくたになって、部屋の扉を投げやりに開け はむ:服を無造作に脱ぎ散らかし、結んでいた髪をほどいて はむ:半ばよろめきながら、ボクのゲージの前にやってくる。  :  はむ:「はむー!」なんて言いながら、ヒマワリの種をゲージの中に入れて はむ:じーっとボクの事を見つめてくるのだ。 はむ:ボクはいつも、少しばかり照れつつ はむ:ご主人が入れてくれたヒマワリの種を両手でつかんでかじる。 はむ:ガジガジしながら、まずは順番に、ヒマワリの種の殻に傷をつけていく はむ:両手でヒマワリの種をくるくると回して、殻をむいて最後に一度、ご主人を見てから はむ:中身を食べる。  :  はむ:ご主人はそんなボクの姿を黙ってじっと見て はむ:ほおを緩ませると、もう一粒ヒマワリの種をゲージの中に入れて はむ:ぶつぶつと何やらボクに声をかけるのだ。  :  はむ:会社の上司がどうのこうの、彼氏がうんぬんかんぬん。 はむ:ボクは種をかじりながら、鼻をひくひくさせてその話を聞く。 はむ:ご主人はきっと、毎日いろいろ嫌なことがあるのだろう。 はむ:そんなことを思いながら、種を食べ終われば はむ:ボクはおねだりをするように、ご主人の顔のすぐ近くまでひょこひょこと歩みより はむ:バーっと両手を広げてゲージにお腹から寄りかかるのだ。  :  はむ:もちろん、とてもいいことがあった日も、同じように声をかけてくれる。 はむ:その時は、いつもよりヒマワリの種を一粒多くくれるからとてもうれしいものだ。 はむ:ボクのゲージの足元には、なにやら木くずのようなものが敷かれているから はむ:ボクは喜びを表現するときはその木くずを、えっこらよっこらと掘って はむ:頭を突っ込んで、足をバタバタとするのだ。 はむ:そうすると、ご主人も笑顔になる。 はむ:顔は木くずの中だから、その顔を見ることはあまり多くないけれど はむ:笑い声がするのだ。 はむ:ボクはその笑い声が、何よりも好きだった。  :  0:間  :  はむ:回し車と言うものが、ボクのゲージにはある。 はむ:ボクなんかよりも、よっぽど目立つその青色の丸い輪っかは、見ると無性に走りたくなるのだ。 はむ:輪っかの中に入って、カラカラ音を立てて足を動かすと はむ:輪っかが回って、永遠に走ることができる。 はむ:ボクはこれがとても好きで、とても得意なのだ。 はむ:きっと、全国ハムスター回し車選手権があれば、ボクは日本一に間違いない。 はむ:なぜなら、ご主人がそう言っていたからだ。  :  はむ:カラカラという回し車の音は、ご主人を吸い寄せるという研究結果も出ている。 はむ:ボクが回し車を回すと、ご主人が寄ってくるのだ。 はむ:洗濯物を干している途中でも、一度かごをその辺に置いて寄ってくる。 はむ:料理中でもそうだ、火を止めて、わざわざボクのそばまで寄ってきてくれる。 はむ:ボクが回し車が好きな理由の一つに、この研究結果がある。 はむ:なにせボクは、どんなにおいしいヒマワリの種より、高級なチーズより はむ:ご主人が好きなのだから。  :  0:間  :  はむ:ボクは、なんと、驚くべきことに はむ:ヒマワリと言うものを見たことがなかった。 はむ:あんなにこってりとして、風味のあるおいしい食べ物が はむ:いったいどんな花の種なのか見当もつかなかったのだ。  :  はむ:そんなとき、ご主人がニコニコしながら、黄色い花の束をもって帰ってきた。 はむ:いつもなら、荷物を置いてから、服を脱ぎ散らかしてボクのもとに来るご主人は はむ:今日は帰ってすぐに、その花束を持ったまま はむ:これ以上ないくらいの笑顔で、ボクのゲージの方にルンルンしながら歩いてくる。  :  はむ:ご主人は、その花の太陽のような花びらを僕に見せて はむ:「これがひまわりだよー!」と、声をかけてくれた。 はむ:ボクは、大変驚いてしまった。 はむ:黒い粒のような目をまんまるにして、両手を広げておなかからもたれかかる。 はむ:ヒマワリと言うのは、大変きれいな花なのだと知った。  :  はむ:ご主人は、その花を幸せそうな顔で眺めて はむ:彼氏が、サプライズでプレゼントしてくれたのだと教えてくれた。 はむ:ヒマワリのような人だと、そう言ってくれたと、喜んでいた。 はむ:ボクはその意見に心から賛成すると同時に、その彼氏に嫉妬した。 はむ:ボクは、どんなに頑張っても、ご主人にそのことを伝えることはできないし はむ:あんなに幸せな表情にしてあげることができないからだ。  :  はむ:それでも、ご主人がボクにその話をしてくれる事がうれしくて はむ:木くずに頭を突っ込んで、足をばたばたした。 はむ:それを見て、ご主人は、声を出して笑ってくれたのだ。 はむ:これ以上幸せなことがあるのだろうかと、ボクはそう思った。  :  0:間  :  はむ:ご主人と出会って、一年が過ぎた。 はむ:保留の名前のまま、一年が過ぎてしまったことに少し不満を覚えながらも はむ:きっとご主人は、未だ良い名前がないかと探しているのだと はむ:ボクはそう信じて疑わない。  :  はむ:なにせ、ご主人はとてもセンスがいいからである。 はむ:先日、ご主人がボクのゲージに入れてくれた透明なビンは はむ:形が良く、ボクのサイズにもぴったりで はむ:よく、中に入って眠ってしまったものだ。 はむ:あのビンを選ぶセンスを持つご主人は、きっと自分の納得する名前を はむ:きっとまだ、悩み続けているのだろう。 はむ:センスの良い人は、こだわってしまうのだ。 はむ:こだわり続けて、こだりぬいたあげく はむ:一年が過ぎたと、そういうことなのだろう。  :  0:間  :  はむ:そんなある日、ご主人は、あるものをボクのゲージの中に入れた。  :  はむ:ハムスターだ。 はむ:ボクのゲージは、ボクとそいつのゲージになった。 はむ:これはとても喜ばしいことだ。 はむ:ご主人が仕事に行っている間、ボクは寝ることくらいしかなかったし はむ:ご主人が眠っている間は、ボクは一匹でずっと遊んでいるしかなかった。  :  はむ:新しい住民が増えたということは、そいつと遊ぶことができるのだ。 はむ:ご主人を独り占めすることはできなくなるけれど はむ:ご主人のすばらしさを語らう相手ができたのは、とても喜ばしいことだと思う。  :  はむ:しかし、新入りの名前はどうなるのか はむ:ボクにとっては、それがとても不安であり、興味があった。 はむ:ボクの名を『はむ』としながら、一年。 はむ:新入りの名も保留となれば『はむ』が二匹となってしまう。 はむ:これでは、ややこしくて仕方がない。 はむ:できれば、一か月くらいの保留で、何かしらの名前を付けてもらえればいい  :  はむ:……そう思っていたが、新入りの名前は、あっさりと決まった。  :  はむ:新入りの名前は……『ベーコン』だそうだ。  :   :  0:間  :   :  はむ:ボクはハムスター。 はむ:名前は、まだ保留らしい。  :  はむ:だけれど、おそらく、きっと、たぶん。 はむ:ボクの名前は……『ハム』 はむ:……らしい。  :   :  0:おしまい。  :

はむ:ボクはハムスター はむ:名前は、まだ保留らしい。  :  はむ:ご主人はボクの事を「はむ」と呼ぶけれど はむ:ご主人曰く≪いわく≫仮の名前なのだそうだ。 はむ:そりゃあ、そうだろう。 はむ:人間は自分の子供に「ヒト」なんて名前を付けないし はむ:犬に「ワンちゃん」と言う名前も付けない。 はむ:だから、ご主人がボクの事を「はむ」と呼ぶ期間はきっと短く はむ:より良い名前を思いついたら、その名前に切り替えていくのだろうと はむ:ボクはそう思っていて……もう半年が過ぎた。  :  0:間  :  はむ:ご主人は、きっとボクの事が狂おしいほど好きなのだろう。 はむ:どんなに自分が疲れていても、ボクを眺める事を欠かすことがないのだ。 はむ:くたくたになって、部屋の扉を投げやりに開け はむ:服を無造作に脱ぎ散らかし、結んでいた髪をほどいて はむ:半ばよろめきながら、ボクのゲージの前にやってくる。  :  はむ:「はむー!」なんて言いながら、ヒマワリの種をゲージの中に入れて はむ:じーっとボクの事を見つめてくるのだ。 はむ:ボクはいつも、少しばかり照れつつ はむ:ご主人が入れてくれたヒマワリの種を両手でつかんでかじる。 はむ:ガジガジしながら、まずは順番に、ヒマワリの種の殻に傷をつけていく はむ:両手でヒマワリの種をくるくると回して、殻をむいて最後に一度、ご主人を見てから はむ:中身を食べる。  :  はむ:ご主人はそんなボクの姿を黙ってじっと見て はむ:ほおを緩ませると、もう一粒ヒマワリの種をゲージの中に入れて はむ:ぶつぶつと何やらボクに声をかけるのだ。  :  はむ:会社の上司がどうのこうの、彼氏がうんぬんかんぬん。 はむ:ボクは種をかじりながら、鼻をひくひくさせてその話を聞く。 はむ:ご主人はきっと、毎日いろいろ嫌なことがあるのだろう。 はむ:そんなことを思いながら、種を食べ終われば はむ:ボクはおねだりをするように、ご主人の顔のすぐ近くまでひょこひょこと歩みより はむ:バーっと両手を広げてゲージにお腹から寄りかかるのだ。  :  はむ:もちろん、とてもいいことがあった日も、同じように声をかけてくれる。 はむ:その時は、いつもよりヒマワリの種を一粒多くくれるからとてもうれしいものだ。 はむ:ボクのゲージの足元には、なにやら木くずのようなものが敷かれているから はむ:ボクは喜びを表現するときはその木くずを、えっこらよっこらと掘って はむ:頭を突っ込んで、足をバタバタとするのだ。 はむ:そうすると、ご主人も笑顔になる。 はむ:顔は木くずの中だから、その顔を見ることはあまり多くないけれど はむ:笑い声がするのだ。 はむ:ボクはその笑い声が、何よりも好きだった。  :  0:間  :  はむ:回し車と言うものが、ボクのゲージにはある。 はむ:ボクなんかよりも、よっぽど目立つその青色の丸い輪っかは、見ると無性に走りたくなるのだ。 はむ:輪っかの中に入って、カラカラ音を立てて足を動かすと はむ:輪っかが回って、永遠に走ることができる。 はむ:ボクはこれがとても好きで、とても得意なのだ。 はむ:きっと、全国ハムスター回し車選手権があれば、ボクは日本一に間違いない。 はむ:なぜなら、ご主人がそう言っていたからだ。  :  はむ:カラカラという回し車の音は、ご主人を吸い寄せるという研究結果も出ている。 はむ:ボクが回し車を回すと、ご主人が寄ってくるのだ。 はむ:洗濯物を干している途中でも、一度かごをその辺に置いて寄ってくる。 はむ:料理中でもそうだ、火を止めて、わざわざボクのそばまで寄ってきてくれる。 はむ:ボクが回し車が好きな理由の一つに、この研究結果がある。 はむ:なにせボクは、どんなにおいしいヒマワリの種より、高級なチーズより はむ:ご主人が好きなのだから。  :  0:間  :  はむ:ボクは、なんと、驚くべきことに はむ:ヒマワリと言うものを見たことがなかった。 はむ:あんなにこってりとして、風味のあるおいしい食べ物が はむ:いったいどんな花の種なのか見当もつかなかったのだ。  :  はむ:そんなとき、ご主人がニコニコしながら、黄色い花の束をもって帰ってきた。 はむ:いつもなら、荷物を置いてから、服を脱ぎ散らかしてボクのもとに来るご主人は はむ:今日は帰ってすぐに、その花束を持ったまま はむ:これ以上ないくらいの笑顔で、ボクのゲージの方にルンルンしながら歩いてくる。  :  はむ:ご主人は、その花の太陽のような花びらを僕に見せて はむ:「これがひまわりだよー!」と、声をかけてくれた。 はむ:ボクは、大変驚いてしまった。 はむ:黒い粒のような目をまんまるにして、両手を広げておなかからもたれかかる。 はむ:ヒマワリと言うのは、大変きれいな花なのだと知った。  :  はむ:ご主人は、その花を幸せそうな顔で眺めて はむ:彼氏が、サプライズでプレゼントしてくれたのだと教えてくれた。 はむ:ヒマワリのような人だと、そう言ってくれたと、喜んでいた。 はむ:ボクはその意見に心から賛成すると同時に、その彼氏に嫉妬した。 はむ:ボクは、どんなに頑張っても、ご主人にそのことを伝えることはできないし はむ:あんなに幸せな表情にしてあげることができないからだ。  :  はむ:それでも、ご主人がボクにその話をしてくれる事がうれしくて はむ:木くずに頭を突っ込んで、足をばたばたした。 はむ:それを見て、ご主人は、声を出して笑ってくれたのだ。 はむ:これ以上幸せなことがあるのだろうかと、ボクはそう思った。  :  0:間  :  はむ:ご主人と出会って、一年が過ぎた。 はむ:保留の名前のまま、一年が過ぎてしまったことに少し不満を覚えながらも はむ:きっとご主人は、未だ良い名前がないかと探しているのだと はむ:ボクはそう信じて疑わない。  :  はむ:なにせ、ご主人はとてもセンスがいいからである。 はむ:先日、ご主人がボクのゲージに入れてくれた透明なビンは はむ:形が良く、ボクのサイズにもぴったりで はむ:よく、中に入って眠ってしまったものだ。 はむ:あのビンを選ぶセンスを持つご主人は、きっと自分の納得する名前を はむ:きっとまだ、悩み続けているのだろう。 はむ:センスの良い人は、こだわってしまうのだ。 はむ:こだわり続けて、こだりぬいたあげく はむ:一年が過ぎたと、そういうことなのだろう。  :  0:間  :  はむ:そんなある日、ご主人は、あるものをボクのゲージの中に入れた。  :  はむ:ハムスターだ。 はむ:ボクのゲージは、ボクとそいつのゲージになった。 はむ:これはとても喜ばしいことだ。 はむ:ご主人が仕事に行っている間、ボクは寝ることくらいしかなかったし はむ:ご主人が眠っている間は、ボクは一匹でずっと遊んでいるしかなかった。  :  はむ:新しい住民が増えたということは、そいつと遊ぶことができるのだ。 はむ:ご主人を独り占めすることはできなくなるけれど はむ:ご主人のすばらしさを語らう相手ができたのは、とても喜ばしいことだと思う。  :  はむ:しかし、新入りの名前はどうなるのか はむ:ボクにとっては、それがとても不安であり、興味があった。 はむ:ボクの名を『はむ』としながら、一年。 はむ:新入りの名も保留となれば『はむ』が二匹となってしまう。 はむ:これでは、ややこしくて仕方がない。 はむ:できれば、一か月くらいの保留で、何かしらの名前を付けてもらえればいい  :  はむ:……そう思っていたが、新入りの名前は、あっさりと決まった。  :  はむ:新入りの名前は……『ベーコン』だそうだ。  :   :  0:間  :   :  はむ:ボクはハムスター。 はむ:名前は、まだ保留らしい。  :  はむ:だけれど、おそらく、きっと、たぶん。 はむ:ボクの名前は……『ハム』 はむ:……らしい。  :   :  0:おしまい。  :