台本概要
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タイトル | 不滅のヒーロー |
---|---|
作者名 | レンga (@renganovel) |
ジャンル | ミステリー |
演者人数 | 1人用台本(男1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
『――お前は何のために、ヒーローをやってるんだ?』 ◆◆あらすじ◆◆ 目を覚ますと、手足が縛られ 口もふさがれて、完全に拘束されていた。 ベッドに縛り付けられているようだ。 そんなヒーローに、声がかけられる。 「よぉ、気が付いたか。」 その声の主は…… つい先ほどまで戦っていた、悪の姿だった。 『不滅のヒーロー』 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 悪役シリーズです。 基本、悪役の1人読み台本を投稿していきます。 まれに、サシ劇の投稿も考えています。 さあ、悪役になり切って 楽しんじゃいましょう! ◆◆許可範囲◆◆ ①アドリブ可 ②男女比率変更可 ③語尾などの軽微な台詞変更可 591 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
悪役 |
男 ![]() |
29 | ヒーローを捕えた悪役の男性 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
:
:
0:タイトル
0:『不滅のヒーロー』
0:作・★レンga★
:
:
:
悪役:よぉ、気が付いたか。
悪役:おいおい……
悪役:なんだよヒーロー、そんな顔して。
悪役:どうした? なんだ、俺の顔に何かついてるか?
:
悪役:ああわりぃ
悪役:よく考えりゃ、そうか
悪役:そんな顔するのも当たり前だな。
悪役:目を覚ましたら、知らない場所で、体縛られて
悪役:ついさっきまで対峙していた相手が、にやにや笑って目の前に立ってるんだ
:
悪役:いいだろう、この場所。
悪役:少し前までは高級ホテルだったらしいぜ?
悪役:不景気で倒産して、今じゃ廃墟のまま放置されてたのを
悪役:俺が一人で、個人宅にリノベーションしたんだ
悪役:大変だったんだぜ? 金もかかった。
悪役:やっぱりよ、隠れ家ってのはこだわるべきなんだ
悪役:隠れ家に限らず、住む場所ってのは、その個人の人生にかかわってくる。
悪役:一人で住むにゃ少しばかり大きいが……
悪役:まあ、そういうわけでもなくなるだろうし、それに
悪役:良い人生を送るには、良い場所に住むべきだっていうだろう?
悪役:しかも、何といっても、ここはタダだ。
悪役:ベッドもふかふかだろう?
悪役:俺がこの場所を見つけられなかったら、もしかしたら
悪役:堅い岩に縛られてたかもしれねえんだ
悪役:感謝しろよ?
:
悪役:口が塞がれて、何もしゃべれねえってか?
悪役:いいや、それを取る気はねえぞ
悪役:お前の魔法は、発声がトリガーだろ?
悪役:自由にしゃべれるようになったら
悪役:何されるかわかんねえからな。
悪役:ま、そこでゆっくり俺の話を聞いてくれや。
:
悪役:お前が俺に聞きたいことは、山ほどあるはずだ
悪役:人質にしてたあの嬢ちゃんの居場所とか
悪役:「どうして、ここに連れてきたのか」とか
悪役:あと、俺の目的か。
悪役:わかんねえだろうなあ。
悪役:全部お前に教えてやる義理はねえから
悪役:俺が話したいだけの事は話してやる。
悪役:そんで、話をしたらあとは取引だ。
悪役:一つはもうわかったな。
悪役:お前を生かして、ここに連れてきたのは、取引のためだってことが。
:
悪役:んじゃ、お前が一番聞きたがってる嬢ちゃんの事だけどな
悪役:安心しろ?
悪役:まだ、ちゃんと生きてる。
悪役:まあ、生きていることが幸せな事なのかどうかは
悪役:本人にしかわからねえだろうが……
悪役:とにかく、あの嬢ちゃんがお前との取引のなかで
悪役:一番重要なカードだってことは間違いないからな。
悪役:それに、あの子の魔力は、色々な国が欲してる。
悪役:それを簡単に殺すような真似はしないさ。
悪役:まあ、でも……
悪役:お前の返答次第では、あの子は戦争の道具になるだろうけどなぁ。
:
悪役:悪いな、隣に、座らせてもらうぜ
悪役:……よっと。
悪役:……
悪役:なあ、ヒーロー。
悪役:お前は、おかしいと思ったことはないか?
:
悪役:「なにを」って顔だな
悪役:まあ、聞けよ
:
0:間
:
悪役:「正義のヒーロー」ってやつだよ。
悪役:俺がおかしいと思ってるのは。
悪役:今こうして、お前が危機に瀕している状況でも
悪役:正義のヒーローを信じてるやつは
悪役:無条件で、いつだって
悪役:お前が自分を助けてくれるって思ってる。
悪役:自分に危機が迫ったら、正義のヒーローが、自分を救ってくれるって
悪役:そう思ってるんだ。
悪役:すげえ事考えるよな、恥ずかしげもなく、「たすけてー」って叫んだりしてよ。
悪役:本当、バカだと思わねえか?
:
悪役:……お前もたいがいバカだな、どうしてここで首を横に振る?
悪役:助けてくれってのは、その裏返しで
悪役:「自分の代わりに、この悪党と戦ってくれ」ってことだろう?
悪役:そもそも自分に、自分の身を守る能力がないから
悪役:それをヒーローに丸投げしてるんだ。
悪役:なんでそんな連中を救う必要がある。
悪役:お前は、そんなバカ共にうまく使われてるんだ
悪役:そう思ったことはないか?
:
悪役:なあ、ヒーロー。
悪役:お前はなんのために、ヒーローをやってるんだ?
:
0:間
:
悪役:お前は、知らねえかもしれねえが。
悪役:俺もな、昔はヒーローだったんだ。
悪役:聞いたことねえか?
悪役:“不滅のヒーロー”って話を。
:
悪役:伝説のヒーローだとか、ヒーローの常識を変えただとか
悪役:そんなたいそうなことを今は言われてるが
悪役:そんなものじゃ、決して無い。
:
悪役:不滅のヒーローってのは、呪いの名前だよ。
悪役:俺が、俺の後に出てくるヒーローたちにかけた、呪いだ。
:
悪役:「ヒーローは死なない」「ヒーローは負けない」「ヒーローは無条件で助けてくれる」
悪役:おもしれえよな、そんなこと言ってよ。
悪役:ヒーローだって、人間なのになあ。
悪役:でも、そう言われるきっかけを作ったのが、俺なんだ。
:
悪役:……俺は、強かったからな。
悪役:大体の敵は倒したし、多くのピンチをかいくぐった。
悪役:どんなにケガをしても、笑顔を崩さなかった。
悪役:痛いし苦しいのにな、その時の俺は、救った相手が笑顔になってくれることが
悪役:何よりも嬉しかった。
悪役:それと、まあ、承認欲求だ。
悪役:世界に認められたかった。
悪役:あいつは強い、あいつに任せれば大丈夫、あいつならやってくれる
悪役:そんな声が、俺をデカくしていったんだ。
悪役:俺がヒーローをはじめてから、犯罪率が70%も減ったんだってよ。
悪役:すげえよな
悪役:俺も、すげえと思うぜ。
悪役:俺一人の犠牲で、それだけの効果があって
悪役:きっと、ものすごい人が救われたんだ。
:
悪役:でもな、さらにすげえのが
悪役:そんな異常な状況が、つづくとな
悪役:「あたりまえ」になるんだ。
悪役:助けてもらう事、危機が去ること、平和が続く事
悪役:そんな奇跡みたいな事が、全部当たり前になっていくんだ。
悪役:そうなるとどうなると思う?
悪役:“ヒーローってのが、概念になるんだよ”
悪役:何かが起きたら、必ず助けてくれるもの。助けてくれなかったら、おかしい。
悪役:危機は去るもの。去ってくれないとおかしい。
悪役:平和は続くもの。乱されるわけがない。
:
悪役:「だって、私達には、僕たちにはヒーローがいるから」
:
悪役:……おかしいよな。
悪役:人間ってすごいなって、本気でそう思った。
悪役:もちろん、そこにすべての感謝が無くなったとか
悪役:そういうわけじゃないんだ。
悪役:でも、俺はその世界から姿を消した。
悪役:“不滅のヒーロー”っていう呪いだけ残してな。
:
0:間
:
悪役:なあ、ヒーロー。
悪役:もう一度聞くぜ?
悪役:お前は何のために、ヒーローをやってるんだ?
悪役:世界平和のためか?
悪役:それとも、認められたいから?
悪役:もしくはそうだな……感謝が欲しいのか?
悪役:違うとは思うが……
悪役:……守りたい誰かが、いるからか?
:
悪役:ま、何だっていいさ。
悪役:俺が欲しい答えは、一つさ。
:
悪役:――ヒーローを、やめろ。
:
悪役:お前がヒーローをやめるなら
悪役:お前を待ってる嬢ちゃんを、お前に返そう。
悪役:お前がヒーローでいる限り、あの子に平和は訪れない。
悪役:そのうち、お前に力を貸したいと言い出すだろう。
悪役:あの魔力を使ったら、世界平和が訪れるかもしれないな。
悪役:あの嬢ちゃんも、立派なヒーローになれるだろう。
悪役:それは、永遠に平和と日常を捨てることと等しい。
悪役:……もう、わかるだろう?
:
悪役:なに、大丈夫さ
悪役:お前一人が、ヒーローをやめたって
悪役:“ヒーローは不滅”だ。
:
0:間
:
悪役:……取引成立だな。
悪役:嬢ちゃんはこの家の、別の部屋にいるさ。
悪役:この家も、自由に使うといい。
:
悪役:食器類は埃まみれでまだ拭いてねえし、電気ガス水道の契約はまだだ。
悪役:家具家電は余るほど残ってるが、全部使ったら電気代がやばいから
悪役:不要なものは、埃を拭いて売ってしまえ。
悪役:生活に必要な、トイレットペーパーやらゴミ袋やらは買って倉庫に置いてある。
悪役:箸とか枕カバーとかそういうのは一通りあるが、二人で相談して好きなのを買った方がいいだろう。
悪役:職が無くなると思うが、警備会社ならお前の活躍の場所になると思うぜ。
悪役:まちがっても、「ヒーローでした」とか面接で言うなよ?
悪役:赤っ恥を掻くか、誰かに聞かれたら復讐されるかもしれねえからな。
悪役:ひっそりと、目立たず生活しろ。
:
悪役:……あ?
悪役:なんだ、まだわからねえのか、お前。
悪役:思いのほか、鈍いやつだな。
:
悪役:まあ、いいさ。
悪役:俺はもう行くことにする。
悪役:……じゃあ、娘は任せたぞ。
:
悪役:――“元”ヒーロー。
:
:
:
:
0:おしまい
:
:
:
:
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0:タイトル
0:『不滅のヒーロー』
0:作・★レンga★
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悪役:よぉ、気が付いたか。
悪役:おいおい……
悪役:なんだよヒーロー、そんな顔して。
悪役:どうした? なんだ、俺の顔に何かついてるか?
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悪役:ああわりぃ
悪役:よく考えりゃ、そうか
悪役:そんな顔するのも当たり前だな。
悪役:目を覚ましたら、知らない場所で、体縛られて
悪役:ついさっきまで対峙していた相手が、にやにや笑って目の前に立ってるんだ
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悪役:いいだろう、この場所。
悪役:少し前までは高級ホテルだったらしいぜ?
悪役:不景気で倒産して、今じゃ廃墟のまま放置されてたのを
悪役:俺が一人で、個人宅にリノベーションしたんだ
悪役:大変だったんだぜ? 金もかかった。
悪役:やっぱりよ、隠れ家ってのはこだわるべきなんだ
悪役:隠れ家に限らず、住む場所ってのは、その個人の人生にかかわってくる。
悪役:一人で住むにゃ少しばかり大きいが……
悪役:まあ、そういうわけでもなくなるだろうし、それに
悪役:良い人生を送るには、良い場所に住むべきだっていうだろう?
悪役:しかも、何といっても、ここはタダだ。
悪役:ベッドもふかふかだろう?
悪役:俺がこの場所を見つけられなかったら、もしかしたら
悪役:堅い岩に縛られてたかもしれねえんだ
悪役:感謝しろよ?
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悪役:口が塞がれて、何もしゃべれねえってか?
悪役:いいや、それを取る気はねえぞ
悪役:お前の魔法は、発声がトリガーだろ?
悪役:自由にしゃべれるようになったら
悪役:何されるかわかんねえからな。
悪役:ま、そこでゆっくり俺の話を聞いてくれや。
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悪役:お前が俺に聞きたいことは、山ほどあるはずだ
悪役:人質にしてたあの嬢ちゃんの居場所とか
悪役:「どうして、ここに連れてきたのか」とか
悪役:あと、俺の目的か。
悪役:わかんねえだろうなあ。
悪役:全部お前に教えてやる義理はねえから
悪役:俺が話したいだけの事は話してやる。
悪役:そんで、話をしたらあとは取引だ。
悪役:一つはもうわかったな。
悪役:お前を生かして、ここに連れてきたのは、取引のためだってことが。
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悪役:んじゃ、お前が一番聞きたがってる嬢ちゃんの事だけどな
悪役:安心しろ?
悪役:まだ、ちゃんと生きてる。
悪役:まあ、生きていることが幸せな事なのかどうかは
悪役:本人にしかわからねえだろうが……
悪役:とにかく、あの嬢ちゃんがお前との取引のなかで
悪役:一番重要なカードだってことは間違いないからな。
悪役:それに、あの子の魔力は、色々な国が欲してる。
悪役:それを簡単に殺すような真似はしないさ。
悪役:まあ、でも……
悪役:お前の返答次第では、あの子は戦争の道具になるだろうけどなぁ。
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悪役:悪いな、隣に、座らせてもらうぜ
悪役:……よっと。
悪役:……
悪役:なあ、ヒーロー。
悪役:お前は、おかしいと思ったことはないか?
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悪役:「なにを」って顔だな
悪役:まあ、聞けよ
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悪役:「正義のヒーロー」ってやつだよ。
悪役:俺がおかしいと思ってるのは。
悪役:今こうして、お前が危機に瀕している状況でも
悪役:正義のヒーローを信じてるやつは
悪役:無条件で、いつだって
悪役:お前が自分を助けてくれるって思ってる。
悪役:自分に危機が迫ったら、正義のヒーローが、自分を救ってくれるって
悪役:そう思ってるんだ。
悪役:すげえ事考えるよな、恥ずかしげもなく、「たすけてー」って叫んだりしてよ。
悪役:本当、バカだと思わねえか?
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悪役:……お前もたいがいバカだな、どうしてここで首を横に振る?
悪役:助けてくれってのは、その裏返しで
悪役:「自分の代わりに、この悪党と戦ってくれ」ってことだろう?
悪役:そもそも自分に、自分の身を守る能力がないから
悪役:それをヒーローに丸投げしてるんだ。
悪役:なんでそんな連中を救う必要がある。
悪役:お前は、そんなバカ共にうまく使われてるんだ
悪役:そう思ったことはないか?
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悪役:なあ、ヒーロー。
悪役:お前はなんのために、ヒーローをやってるんだ?
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悪役:お前は、知らねえかもしれねえが。
悪役:俺もな、昔はヒーローだったんだ。
悪役:聞いたことねえか?
悪役:“不滅のヒーロー”って話を。
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悪役:伝説のヒーローだとか、ヒーローの常識を変えただとか
悪役:そんなたいそうなことを今は言われてるが
悪役:そんなものじゃ、決して無い。
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悪役:不滅のヒーローってのは、呪いの名前だよ。
悪役:俺が、俺の後に出てくるヒーローたちにかけた、呪いだ。
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悪役:「ヒーローは死なない」「ヒーローは負けない」「ヒーローは無条件で助けてくれる」
悪役:おもしれえよな、そんなこと言ってよ。
悪役:ヒーローだって、人間なのになあ。
悪役:でも、そう言われるきっかけを作ったのが、俺なんだ。
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悪役:……俺は、強かったからな。
悪役:大体の敵は倒したし、多くのピンチをかいくぐった。
悪役:どんなにケガをしても、笑顔を崩さなかった。
悪役:痛いし苦しいのにな、その時の俺は、救った相手が笑顔になってくれることが
悪役:何よりも嬉しかった。
悪役:それと、まあ、承認欲求だ。
悪役:世界に認められたかった。
悪役:あいつは強い、あいつに任せれば大丈夫、あいつならやってくれる
悪役:そんな声が、俺をデカくしていったんだ。
悪役:俺がヒーローをはじめてから、犯罪率が70%も減ったんだってよ。
悪役:すげえよな
悪役:俺も、すげえと思うぜ。
悪役:俺一人の犠牲で、それだけの効果があって
悪役:きっと、ものすごい人が救われたんだ。
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悪役:でもな、さらにすげえのが
悪役:そんな異常な状況が、つづくとな
悪役:「あたりまえ」になるんだ。
悪役:助けてもらう事、危機が去ること、平和が続く事
悪役:そんな奇跡みたいな事が、全部当たり前になっていくんだ。
悪役:そうなるとどうなると思う?
悪役:“ヒーローってのが、概念になるんだよ”
悪役:何かが起きたら、必ず助けてくれるもの。助けてくれなかったら、おかしい。
悪役:危機は去るもの。去ってくれないとおかしい。
悪役:平和は続くもの。乱されるわけがない。
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悪役:「だって、私達には、僕たちにはヒーローがいるから」
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悪役:……おかしいよな。
悪役:人間ってすごいなって、本気でそう思った。
悪役:もちろん、そこにすべての感謝が無くなったとか
悪役:そういうわけじゃないんだ。
悪役:でも、俺はその世界から姿を消した。
悪役:“不滅のヒーロー”っていう呪いだけ残してな。
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悪役:なあ、ヒーロー。
悪役:もう一度聞くぜ?
悪役:お前は何のために、ヒーローをやってるんだ?
悪役:世界平和のためか?
悪役:それとも、認められたいから?
悪役:もしくはそうだな……感謝が欲しいのか?
悪役:違うとは思うが……
悪役:……守りたい誰かが、いるからか?
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悪役:ま、何だっていいさ。
悪役:俺が欲しい答えは、一つさ。
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悪役:――ヒーローを、やめろ。
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悪役:お前がヒーローをやめるなら
悪役:お前を待ってる嬢ちゃんを、お前に返そう。
悪役:お前がヒーローでいる限り、あの子に平和は訪れない。
悪役:そのうち、お前に力を貸したいと言い出すだろう。
悪役:あの魔力を使ったら、世界平和が訪れるかもしれないな。
悪役:あの嬢ちゃんも、立派なヒーローになれるだろう。
悪役:それは、永遠に平和と日常を捨てることと等しい。
悪役:……もう、わかるだろう?
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悪役:なに、大丈夫さ
悪役:お前一人が、ヒーローをやめたって
悪役:“ヒーローは不滅”だ。
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悪役:……取引成立だな。
悪役:嬢ちゃんはこの家の、別の部屋にいるさ。
悪役:この家も、自由に使うといい。
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悪役:食器類は埃まみれでまだ拭いてねえし、電気ガス水道の契約はまだだ。
悪役:家具家電は余るほど残ってるが、全部使ったら電気代がやばいから
悪役:不要なものは、埃を拭いて売ってしまえ。
悪役:生活に必要な、トイレットペーパーやらゴミ袋やらは買って倉庫に置いてある。
悪役:箸とか枕カバーとかそういうのは一通りあるが、二人で相談して好きなのを買った方がいいだろう。
悪役:職が無くなると思うが、警備会社ならお前の活躍の場所になると思うぜ。
悪役:まちがっても、「ヒーローでした」とか面接で言うなよ?
悪役:赤っ恥を掻くか、誰かに聞かれたら復讐されるかもしれねえからな。
悪役:ひっそりと、目立たず生活しろ。
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悪役:……あ?
悪役:なんだ、まだわからねえのか、お前。
悪役:思いのほか、鈍いやつだな。
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悪役:まあ、いいさ。
悪役:俺はもう行くことにする。
悪役:……じゃあ、娘は任せたぞ。
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悪役:――“元”ヒーロー。
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