台本概要
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タイトル | 【切ない】君は僕で僕は君 |
---|---|
作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
小説を書いている銀河と女優を目指しているうるは。 2人はいつも考えていることが同じで似た者同士だった そんな2人の間で合言葉が作られる 心を繋ぐ合言葉…『君は僕で僕は君』 412 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
銀河 | 男 | 339 | 小説家を目指している |
うるは | 女 | 296 | 女優を目指している |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
銀河:あの照りつける夏の日に僕は誓った
うるは:気温が高い夏の空の下で私は誓った
銀河:この繋がりは永遠に続くと思った
うるは:いつまでも一緒に居られると思った
銀河:僕達はいつも考え方が同じだった
うるは:私達は思いが通じあっていた
銀河:だから、二人の合言葉を使うようにした
うるは:特別だから合言葉を使うようにした
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:……
銀河:セミの音うるさいな。集中出来ないや
銀河:何も思い浮かばない。やっぱりスランプなのかなー?
銀河:こんな公園じゃ刺激なんて得られないし、どっか行くかなー?
銀河:せめて、キャラクターの参考になる面白そうな人でも居ればいいんだけど
銀河:……ん?
うるは:おどおど、おどおど
うるは:キョロ!キョロ!
うるは:……ブルブルブル!
銀河:ん?
うるは:すぅーはあーすぅーはあー
うるは:あめんぼ赤いなあいうえお!
うるは:うきにも、こえびが、泳いでる!
銀河:え?
うるは:柿の木、栗の木、かきくけこ!
うるは:きつつき、こつこつ、枯れけやき!
銀河:なんだ?
うるは:ふぅー。セミの音うるさいなー
うるは:……っ!
銀河:え、こっちに気づいた
うるは:あ、あ、あ、あの、い、い、い、いつから!?
銀河:ずっと居ましたよ?
うるは:ええぇー!!
銀河:いや、キョロキョロしてたじゃん……
うるは:ごめんなさいごめんなさい!迷惑でしたよね?
うるは:あーもう!ジャングルジムから飛び降ります!
銀河:ちょ!やめて!見てただけだから!
うるは:わ、私が汚いものを見せてしまったんです!やらせてください!
銀河:冒頭から激しすぎですよ!落ち着いてください!
うるは:落ち着いてられないですー!もう飛び降りて死にますー!
銀河:ジャングルジムから飛び降りても死なないよ!
うるは:え?そうなんですか?
銀河:その高さじゃ捻挫にもならないよ
うるは:そ、そんな〜!
うるは:そ、そうだ……この前の台本を試そう
うるは:・・・・・・
銀河:え?
うるは:うふっ、私が死ねないなら誰を殺したらいいと思う?
銀河:お、おい、何を
うるは:これなーんだ?
銀河:……それは、スマホの充電器?
うるは:ただの充電器じゃないよー?これ、断線しにくいライトニングケーブルっていうの
うるは:これで人の首は絞められるんだよ?
銀河:何を…するつもりだ
うるは:ふふっ
銀河:やめろ……
うるは:あっははははは!!
銀河:うわあああああーー!!!
うるは:きゃああああ!!!
銀河:え?
うるは:急に大きな声出さないでください!ビックリするじゃないですか!
銀河:……は?
うるは:あービックリしたー心臓止まるかと思いました
銀河:いやいやこっちのセリフですよ。急になんですか?
うるは:あ、ごめんなさい!前に受けたオーディションの台本の役を演じただけなんです
銀河:台本の役?
うるは:はい!私、演技するのが好きで……
うるは:なんで私の演技見るんですか!!
銀河:見せてきたのそっちでしょ!
銀河:(変な人だな…)
銀河:(にしてもさっきの演技凄かったな)
銀河:(まるで本当に殺人を犯す人のようだった)
銀河:(いい刺激になるかもしれない)
銀河:あの
うるは:はい?
銀河:僕、小説書いてるんです。なので…
銀河:僕の書いた小説の役を演じてもらえないですか?
うるは:……えぇ!?
銀河:む、無理なら大丈夫です!
銀河:おこがましいですよね。見ず知らずの人が書いた小説の役なんて。ごめんなさい
うるは:……わ、私でよかったら!
銀河:……ほ、本当に?
うるは:はい
銀河:あ、ありがとうございます!
うるは:と、とんでもないです!セリフとか役の設定を教えて貰えれば
銀河:はい!心臓病の女の子の設定なんですけど、病気持ちでも明るくてポジティブなんです
うるは:…素敵ですね
銀河:……あ、ありがとう
うるは:じゃあ、メガネ外してもいいですか?
銀河:どうして?
うるは:私、目が悪いんです。
銀河:それならメガネかけてた方がいいんじゃ
うるは:いえ、視界がぼやけてた方が私には都合がいいんです。人が目の前に居ると緊張しちゃって
銀河:そうなんだ
うるは:はい、じゃあ読みますね
0:うるははメガネを外す
銀河:………っ
うるは:・・・・・・
うるは:私は何回も死にそうになったことあるよ。その度に思うの
うるは:生きててよかった。私が生きてるのはみんなのおかげ。みんなありがとうって
銀河:(メガネを外した彼女の表情がよく見える)
銀河:(その表情は固くなく、軽快で、煌(きら)びやかで)
銀河:(麗(うるわ)しいくらい、彼女の全身が輝いて見えた)
銀河:………
うるは:どうでした?
銀河:……好きです
うるは:……え?
銀河:……あ
うるは:……え?えぇーー!!
銀河:ち、違います!そういう意味じゃなくて!
うるは:あああうううおおおえええいいいー!!
銀河:落ち着いてください!
うるは:ピーー!!
銀河:あぁ、ダメだ、完全に壊れてる
銀河:僕が言ってるのはあなたの演技が好きってことです
うるは:……え?
銀河:すごく、素敵な演技でした
うるは:……ありがとうございます
銀河:こちらこそありがとうございます!
うるは:お名前は?
銀河:…僕は銀河
うるは:銀河さん。素敵な小説を書かれる方ですね。私はラッキーです
銀河:どうして?
うるは:あなたの小説が売れる前にあなたの小説に出会えたから
うるは:私もあなたの小説、好きですよ。売れるようになっても読み続けます
銀河:ありがとう!
銀河:君の名前は?
うるは:私はうるは
銀河:うるはさん。僕も君の活躍が楽しみだよ
うるは:物語が好きならこれあげます!
銀河:これは?
うるは:舞台のチケットです。私は出てないですけど
銀河:そんな、悪いよ
うるは:大丈夫です!私ももう一枚持ってますから!
銀河:そ、そう?じゃあ
うるは:またどこかで会いましょうね
銀河:うん、またね
銀河:今日の舞台の場所ってこの辺だったよな?
銀河:にしてもまたどこかで会いましょうねって、同じ舞台のチケット持ってたらまた会うことになるような……
銀河:そこまで計算してるとは思えないけど
うるは:あ、あれ?……どうして銀河さんがここに!?
銀河:だよね。そうなると思ってたよ
銀河:同じ舞台のチケット渡されたらまた会うに決まってるでしょ
うるは:つ、つまり、同じ舞台のチケット渡したからまた会ったんですね…!
銀河:全く同じこと言ってるよ
銀河:しかも多分席も隣だよね?
うるは:ああ〜〜!本当だ!またご迷惑を〜!なんとお詫びをしたら……
うるは:もう!舞台中ずっとごめんなさいって泣き叫びます!
銀河:生き地獄みたいな真似はしないで貰えるかな!?
銀河:いいんじゃない?隣で見てても
うるは:いいんですか?
銀河:うん
うるは:銀河さんが後悔しないならそれでも…
銀河:後悔なんてするわけないよ
うるは:本当ですか!?じゃあ行きましょ!
銀河:………
うるは:ほら!あのセリフの抑揚がたまらないんですよー!
銀河:う、うん
うるは:あの女の人は可愛い声なのにかっこよく演技してるー!凄くないですか!?
銀河:あ、ああ、すごい
うるは:わあー!苦しむ演技リアルー!絞められたい…
銀河:ちょっと後悔してる自分がいる…
うるは:なんか言いました?
銀河:何も!
うるは:私もいつか……ここに立ちたいなー
銀河:……
銀河:(彼女の目はキラキラしていた)
銀河:(こんな一面の彼女を見て後悔なんてするはずがない)
銀河:(何故か心が弾んでいるのは舞台を見ているからなのだろうか?)
銀河:(それは自分じゃわからないし、あえてわからないフリをする)
0:二人は喫茶店に入る
うるは:はあー楽しかったですね
銀河:うん、僕もいい刺激になったよ
銀河:うるはさん今は大学通いながら稽古(けいこ)してるの?
うるは:そうです
銀河:事務所にも入ってるの?
うるは:入ってますよ
銀河:すごいね
うるは:すごくないですよ。東京の大手事務所ならまだしも地方の事務所ですからね。女の子なら誰でも入れるみたいだし
銀河:そうなの?
うるは:そうです。そこからオーディション勝ち取れる人なんて1割も居ないです
うるは:私も全然だめだめですよ
銀河:厳しい世界なんだね
うるは:でも、夢は諦めたくないです。女優になる夢だけは…
銀河:……
うるは:銀河さんは?小説活動どうなんですか?
銀河:僕もダメだよ。小説サイトで投稿しても全く見られない
うるは:そうなんですね…
うるは:私たちって似てますか?
銀河:似てる?
うるは:はい!お互い上手くいかないことが多いけどお互いの好きなものをお互いが好きだなんて似たもの同士ですよ
銀河:傷の舐め合いって言うんじゃないかな?
うるは:傷なんて舐め合った方がいいに決まってます!
銀河:……え?
うるは:お互い気にしてることを慰め合った方が痛みは半分になるんですよ
銀河:……そうだね
うるは:でも、今日みたいに同じ舞台を見た時の楽しさとか、幸せな時間は2人で分けても2倍になるんです!これすごくないですか?
銀河:………
うるは:人のマイナスを半分に出来て、人のプラスを2倍に出来る
うるは:人との心の繋がりって素敵なことなんですよ
銀河:……君は感受性が豊かだね
うるは:そうですかね?
銀河:うん、君以上に素敵な人は見たことないよ
うるは:そ、そんな!
銀河:どこか抜けてて、臆病で、でも自分の夢に真っ直ぐで、それでいて発する言葉も筋がある
銀河:そんな君と一緒に居ると前向きになれる気がする
うるは:………
銀河:……好きです
うるは:……え?
うるは:い、今なんて?
銀河:好きだって言ったんだよ
うるは:………
銀河:あれ?驚かないの?
うるは:緊張し過ぎると声出なくなるんです
銀河:役者さんとしては致命的じゃない?
うるは:そうじゃなくて
銀河:何?
うるは:ドキッとしてしまいました
銀河:……そう?
うるは:この間会ったばかりなのにどうしてでしょうか?
銀河:わからないよ、僕にもわからない
うるは:あの日、銀河さんはなんで公園に居たんですか?
銀河:あの日…執筆がスランプで上手く書けなかったから公園に居たんだ
銀河:でもセミの音がうるさかったから集中出来なかった
うるは:……私も同じです。
銀河:え?
うるは:最近なかなか思うように演技が出来なくて練習してたんです。でも同じくセミの音がうるさかった
うるは:どこか行って何か刺激になるものでも探そうかと思った時
うるは:素敵な小説を書く、あなたと出会いました
銀河:……僕も同じだよ
うるは:……え?
銀河:僕も何か刺激を求めてどこかに行こうとした時に偶然君に会ったんだ
銀河:そして、君の素敵な演技に出会って君に恋をした
うるは:……私、恋ってどういうことかわからないんです
銀河:……僕もそんなに多く恋してきたわけじゃないよ
うるは:ふふっ。やっぱ私たち似たもの同士ですね。
銀河:うん。じゃあ君の素敵な言葉をまとめて一つの言葉にしてみよう
うるは:なんですか?
銀河:君は僕で僕は君
うるは:……どういう意味ですか?
銀河:君が言った痛みを半分に。幸せを2倍に出来る関係のことだよ。僕達は似たもの同士だ
うるは:なるほど!いいですね!
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
うるは:ふふっ!なんかワクワクしますね!
銀河:あははっ。そうだね
うるは:これからもよろしくお願いします
銀河:うん、こちらこそよろしくお願いします
0:そして月日が経つ
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:おはよ、うるは。早かったね
うるは:お、おはようございます!ぎ、銀河君!
銀河:まだ慣れない?あと敬語も
うるは:あ、ああ!ごめんなさい!
銀河:ほらまた
うるは:ああぁぁ、まただ!なんとお詫びをしたら…
うるは:もう、前歯3本折ります!
銀河:や、やめなよ!君、仮にも役者さんなんだから顔は大事に!
うるは:やらせてください!折れた歯はあなたに渡すんで形見にでもしてください!
銀河:形見が歯なんて呪いだよ!
0:また月日が経つ
うるは:君は僕で
銀河:僕は君
うるは:遅くなってごめんね。銀河君
銀河:いや、珍しいね。うるはが遅れるなんて。10分くらいだけど
うるは:セリフ読みながら電車乗ってたら乗り過ごしちゃった
銀河:あー僕もよくやるよ。小説書いてるとつい集中し過ぎて乗り過ごしてしまう
うるは:やっぱやるよねー。さすが似たもの同士だね
銀河:うん。やっぱそうだと思った
銀河:(うるはとの日々は1年が過ぎる)
銀河:(毎日笑って、毎日楽しんで、毎日幸せを感じる。そして)
銀河:(毎日、繋がっていると思える)
銀河:(僕らは似たもの同士で、二人で一つ)
銀河:(ずっと心が繋がっているんだ。)
銀河:(だから、この合言葉を作って良かったと思う)
銀河:(君は僕で僕は君)
0:ある日のこと
うるは:ん〜〜!美味しい
銀河:………
うるは:ねえ、銀河君、こっちのお団子食べた?
銀河:……うん
うるは:銀河君?
銀河:あぁ、ごめん。
うるは:ぼーっとしてどうしたの?
銀河:次書く小説のこと考えてた
うるは:物語書くのって大変だね
銀河:ううん。物語の中に自分が入り込んじゃってダメだ
うるは:大丈夫
銀河:うるはは?この間オーディションを受けたって言ってたじゃん
うるは:まだ結果は出てないよ。どうなんだろうね
銀河:うるはなら大丈夫だよ、きっと
うるは:わかんないよ。すごく有名な舞台のオーディションだったから、多分ダメだよ
銀河:でも最終オーディションまで通ったんだからすごいじゃん
うるは:すごくないよ!受からないとダメだもん。あーもうどうしよ〜今から緊張してきた!
銀河:今緊張してもしょうがないよ
うるは:もう!このお団子丸飲みして喉に詰まらせて死にますー!
銀河:や、やめなよ!掃除機無いから喉に詰まったお団子取り出せないから!
うるは:……っ!じゃあ銀河君がダイソーンになってくれる?
銀河:意味深にこっち見ないでよ。僕に吸引力はない
うるは:……あ、電話だ
うるは:ごめん、出てくるね
銀河:うん
うるは:はい。はい。
うるは:………え?
うるは:はい。わかりました
銀河:うるは?なんの電話だったの?
うるは:………
銀河:ん?
うるは:受かってた
銀河:……え?
うるは:オーディション受かってた!
銀河:オーディションに?
うるは:うん!受かってた!
銀河:す、すごいね!やったじゃん!
うるは:やったよー!よかったー!
うるは:嬉しいことの後のお団子は美味しいー!
銀河:喉に詰まらせないでね?
銀河:(うるはは有名な舞台のオーディションに合格した)
銀河:(主役ではなくて主役の妹役らしいけど、すごく重要な役を任されたみたいだ)
銀河:(本当に心から嬉しいと思う反面、何故か心の中にしこりのような鈍い傷が出来ていた)
銀河:今日はうるはが出演する舞台の公演日
銀河:なんだかんだでうるはの舞台を見るのは初めてだ
銀河:初めて会った頃のうるはの演技は今でも鮮明に覚えてる
銀河:うるはのあの姿は輝いていたんだ
銀河:きっと今はそれ以上に輝いているはずだ
0:舞台が始まる
銀河:(うるはの出番はまだかな?)
銀河:(あ、あれかな?)
うるは:あら?お兄様、目覚めましたか?気持ちよさそうに寝てましたね
うるは:昨晩は何かされてたんでしょうか?……ふふっ
うるは:うっふふふふ!!冗談ですよ!そんな怖い顔しないでください
うるは:でも、この状況については冗談ではないですよ?ごめんなさい。暴れられると困るので手足は動かないようにしてあげました
うるは:これからは一緒にご飯を食べて、一緒にテレビを見て、一緒に寝るだけですから。手足は動かないんで私が体を拭いてあげます
うるは:今夜とは言わず。何度も熱い夜を過ごしましょうね?んふっ
銀河:(初めて会った頃のうるはもこんな感じのキャラだったなー。もしかしてサイコパスがハマり役なのか?)
銀河:(……でも、なんでだろう。闇に堕ちてるはずなのにやっぱりうるはは輝いていた)
0:舞台が終わる
銀河:本当に控え室に入っていいのかな?
うるは:君は僕で
銀河:……っ!僕は君…
銀河:びっくりしたよ
うるは:ごめんね、こんな所に呼び出しちゃって
銀河:ううん、うるはの演技すごくよかったよ!なんか色々とすごかった
うるは:本当に!?よかったー!
銀河:ここって関係者以外入っちゃダメなんじゃないの?
うるは:銀河君は私の関係者でしょ?
銀河:……また悪気もなくそんなことを
うるは:これ終わったら打ち上げがあるんだけど銀河君も来る?
銀河:僕も?それこそ関係者以外来ちゃダメなんじゃ?
うるは:私の関係者なんだからいいの。それに多分お酒も飲まないといけないからさ
銀河:そうだね、じゃあ行こうかな?
0:二人は打ち上げに参加する
銀河:(なんだか気まずいなー。でも物語の話とかちょっと聞けて悪くない気もする)
うるは:あ、あー!そうですよね!あはは!
銀河:(うるはもちょっと無理してそうだ)
うるは:あ、はーい!今行きますね!
うるは:ごめん、監督に呼ばれたから行くね?
銀河:うん
銀河:(隣に居たうるはが居なくなる)
銀河:(それは胸にぽっかりと穴が空くような感覚だった)
うるは:今日もすごく楽しく演じれてよかったです!
うるは:またお願いします!
うるは:え?お話ですか?
0:打ち上げが終わり二人は一緒に帰る
銀河:うるはー?大丈夫?
うるは:ん〜大丈夫ー
銀河:うるはお酒飲めないのに無理しないでよ
うるは:無理なんかしてないよ〜?
うるは:銀河君、私が隣に居なくて寂しかったの?
銀河:また君はそんなこと聞く
うるは:寂しかったの?
銀河:………寂しかった
うるは:……そっか。可愛いところあるね
銀河:からかわないでよ
うるは:私が居ないと銀河君寂しいよね
銀河:どうして?
うるは:さっき監督に呼ばれてね、色々と話したんだ
銀河:何を?
うるは:東京に出てみないかって
銀河:………
うるは:………
うるは:お互い沈黙するよね
銀河:そりゃそうなるよ
うるは:私もどうしたらいいかわからなくてさ
うるは:一応まだ大学に通ってるし、大学卒業してからでもいいかなーって思ったんだけど、早いに越したことはないって言われてね
うるは:大学も辞めるか悩んでるの
銀河:……それは僕も悩むね
うるは:そうだよね
銀河:今はゆっくり考えてさ、また今度話そうよ
うるは:うん。すぐには答えは出せないって言ってあるからそうしよう
:場面転換
銀河:君は何を思ってるんだろう?今は何もわからない
銀河:君の演技は出会ったあの頃よりももっと輝いて見えている
銀河:それは東京に行っても評価されるべきだと僕も思う
銀河:東京なら電車で3時間はかかるだろう
銀河:遠距離恋愛っていうのも悪くは無いことだと思う
銀河:うるはの人生を大切にしたい
銀河:夢に向かって頑張ってるうるはを応援するのは当たり前だ
うるは:私は銀河君との思い出を振り返る
うるは:銀河君と、この地元で過ごした日々はすごく大切で私の中の宝物だよ
うるは:私が東京に出たら、あなたは何を思って、何を感じるんだろう?
うるは:私の夢は確かに大事だけど、それ以上に大事なものはなんだろう?
うるは:何度問い返しても答えは出てこない
うるは:あなたのことは大事なはずなのに、手を離したくないはずなのに
うるは:離さないといけない時が来ると胸にトゲが刺さるようにチクチクする
銀河:君は何を思うんだろう?
うるは:あなたは何を思うんだろう?
銀河:きっと、僕と同じように君も悩んでるはず
うるは:私と同じようにあなたも悩んでるはず
銀河:そうだ、いつだって僕達は似たもの同士
うるは:きっと今思ってることも同じなのかもしれない
銀河:気持ちはもう決まってる
うるは:私だって覚悟は出来てる
銀河:僕が東京に行くべきだと言っても、君は僕を選んでくれる
うるは:私が東京に行くと言っても、あなたは私を選んでくれる
銀河:そうやっていつも心を繋いできた
うるは:あの合言葉は心を繋ぐ合言葉だから
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:………
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:おはよう。うるは
うるは:おはよう。銀河君
銀河:今日も暑いな
うるは:ね、セミの音がうるさいよね
銀河:………
うるは………
銀河:本題に入ろうか
うるは:そうだね
銀河:どう?うるはは自分の中で答えは決まったの?
うるは:うん。決まったよ
銀河:……そっか
うるは:私さ、東京に行こうと思う
銀河:……え?
うるは:私の夢は女優になることだから、東京に行ってもっと活躍出来るように頑張りたいの
銀河:……そうだよな、うるはの大事な夢だもんな
銀河:僕もうるはは東京に行くべきだと思う
うるは:……え?
銀河:こんなチャンス無駄にしちゃダメだよ。うるはの演技は素敵なんだから
うるは:……うん、ありがとう
うるは:私たち、思ってることは同じなのかな?
銀河:……ああ、同じだよ
銀河:うるはの活躍を見守ってる。僕も小説を書くことを辞めないから
銀河:遠くに居ても同じ気持ちで居て欲しい
うるは:……うん。ありがとう
0:そして、うるはが東京に行く日。電車の改札にて
うるは:じゃあ行くね
銀河:うん。絶対にラインするから
うるは:ありがとう
銀河:毎日連絡するよ。ご飯何食べたとかなんのテレビ見てるとか
うるは:うん。毎日送ってよ
銀河:うるはが毎日楽しい日々を送れる事を僕は願ってる
うるは:私もそう思ってるよ
うるは:やっぱり私たちは考えてる事一緒だね
銀河:……うん。そうだね
うるは:じゃあ、時間になったから行くね
銀河:うん。頑張ってね。うるは
銀河:絶対に夢を叶えてね
うるは:うん。銀河君も小説家になる夢、諦めないでね
銀河:もちろんだよ
うるは:ばいばい
銀河:うん、じゃあね
銀河:(また明日とか、また来週とか、昨日までの僕達ならそう言えてたはず)
銀河:(遠くに離れていても心は繋がってると。そう胸を張って言いたいところだけど)
銀河:(遠くに行く君を追いかけられない僕の気持ちに嘘はないのだろうか?)
銀河:(同じ気持ちでいるはずなら。君はここに残ってくれるはずだった)
銀河:(自分の気持ちに嘘をついた場合は、僕の望んでる未来にはならない)
銀河:(そう気づいた時には君はもう君の夢を追いかけて遠くに行った)
うるは:(私たちは似たもの同士で同じ考え方を持っている)
うるは:(わかりきっていたことだけど、またどこかすれ違っている気がした)
うるは:(私たちの関係は痛みを半分に、幸せを2倍に出来る関係だったはず)
うるは:(でもどうしてこの胸の痛みは何倍にも膨れ上がってるんだろう?)
うるは:(私は女優になる夢を諦めてあなたのそばに居たい)
うるは:(口で言うにはあまりにも重すぎるからその言葉を飲み込んだ)
うるは:(あなたに変なプレッシャーみたいのは与えたくなかったからそうしたの)
うるは:(私の目指しているのは女優だから、自分の気持ちを押し殺さないといけない)
うるは:(それでもあなたが遠くに行ってしまうような、この感覚は押し殺せず胸に残ってしまう)
:場面転換
0:月日が経ったある日のこと
銀河:……また落選か
銀河:全然上手くいかないじゃん…
銀河:うるはは東京で舞台を中心に活躍している
銀河:近々、ちょっとした役でドラマにも出るらしい
銀河:うるはは確実に成果を上げて頑張ってるのに…僕は何をしてるんだろう
銀河:うるはに送ったラインはまだ帰ってこない
銀河:舞台の稽古か、打ち合わせをしているんだろう
銀河:最近毎日こんな調子だ
銀河:月に1回、うるはと会ってる。毎日電話もしてる。それでも毎日君を思ってしまう
銀河:うるはに対しての好きな思いは募るばかりなのに、辛い思いも募ってく
銀河:どうしてこんなに余裕がないんだろ
うるは:銀河君のラインはいつも稽古が終わったあとに返すことにしてる
うるは:今返すと、私は稽古どころじゃなくなってしまいそうだから
うるは:私は毎日、それなりに充実してる
うるは:バイトして、稽古して、家に帰って銀河君と電話をする
うるは:そんな日々でも少しは寂しさは紛れてくれる
うるは:小さな幸せでも、噛み締められるような。そんな人になりたいと思う
0:銀河のスマホが鳴る
銀河:うるは!?
銀河:……ふぅー
0:銀河は電話に出る
うるは:君は僕で
銀河:僕は君
うるは:稽古終わったよ
銀河:うん、遅くまでお疲れ様
うるは:ありがとう
銀河:……
うるは:ん?どうしたの?
銀河:え?何が?
うるは:なんか元気ない?
銀河:そんなことないよ
うるは:……そう?
銀河:うん
うるは:……
銀河:話すことないなら切ってもいい?
うるは:え?
銀河:じゃあね
うるは:待って、何その言い方
銀河:何って何?
うるは:何か変だよ
銀河:……そうかな?
うるは:銀河君が毎日連絡してくれるって言ってたじゃん。確かに連絡してくれるけど
うるは:話すことないなら切るなんて言ったことなかったよね?
銀河:……毎日連絡してるからもういいかなって
うるは:それが変だって言ってるの!
銀河:もう、君のこと考えるのが苦しいんだ
うるは:……え?
銀河:君のことは好きなはずなのに、会えない日が続く
銀河:君が女優として活躍すると嬉しいはずなのに、何もしてない僕に嫌気がさす
銀河:二人とも少しは成長して、似たもの同士だったはずの心はズレていくばかりだよ
うるは:……それは私も同じこと思ってた
うるは:私は銀河君のことは好きなのに、なんで遠くなっちゃったんだろうって
うるは:あの時、銀河君のために地元に残るって言えば、この気持ちにはならなかったのかなって
銀河:……僕もそれは思ってたよ
うるは:ほら、似たもの同士じゃん
銀河:でももう戻れないだろ!
うるは:……うん、戻れないよ。私、東京まで来て自分の夢を追いかけてるんだもん
うるは:今更、銀河君のために戻ろうとは思わない
銀河:……そうだよな
銀河:なら、もういっそ別れるか
うるは:……どうしてそんなこと言うの?
銀河:うるはが全力で夢を叶えるためだよ
銀河:今こうして電話してる時間だって、うるはは舞台のセリフを覚えたり出来る
銀河:それでいいと思わない?
うるは:………そうだね
銀河:……うん
うるは:私たちはお互い別の道に進もうね
うるは:銀河君の小説が全国に渡るようになったら絶対読むから
銀河:……ありがとう
0:2年が経ったある日
銀河:僕とうるはが別れてから2年が経つ
銀河:あれから連絡もしてないし会うこともなかった
銀河:それでも、どこかしらでうるはの姿は見かける
銀河:雑誌の表紙、テレビのバラエティ、SNS、ドラマ、舞台
銀河:彼女を見かけない日なんてなかった
銀河:うるははこの2年で躍進を遂げていた
銀河:自分の夢に真っ直ぐだったうるはは自分の夢を叶えていたんだ
銀河:写真で見るうるはは美しい。
銀河:メガネを外した姿はどこの誰より綺麗だ
銀河:僕はこんな彼女と共に過ごせた事を誇りに思う
銀河:僕は筆を走らせる
銀河:君への思いも、君への後悔も、全部物語になる
銀河:僕が言葉に出来なかった代わりに、物語が言葉にしてくれる
銀河:愛した日々も、名残惜しい別れも、嘘をついた自分も
銀河:僕とうるはが過ごした日々は決して無駄なんかじゃない
銀河:この物語の二人も、自分の気持ちに嘘は付かず、ずっとそばにいて欲しかった
銀河:痛みを半分に幸せを2倍に出来る関係
銀河:この関係では、僕とうるはのように離れてしまう
銀河:この物語のタイトルはなんて付けよう?
:場面転換
うるは:仕事と帰宅を繰り返す毎日を送っている私は今日も家のベットで、メイクも落とさず倒れ込む
うるは:お盆休みは貰えたからそれまでの辛抱だと思って乗り切ろう。実家にも帰らないとだし
うるは:……銀河君はまだ、地元にいるのかな?
うるは:もう2年経つのに、私の中の最後の恋は銀河君だけだった
うるは:未練とかはないはず。それでもふとした時に何してるのか気になる時がある
うるは:もしかしたら、少しずつテレビに出れるようになった私を、彼もどこかで見ているのかもしれない
うるは:私は何となく、彼が小説サイトで投稿していた小説を見る
うるは:……この小説
うるは:小説のタイトルだけで何のことなのか、誰のことなのかがわかった
うるは:その小説のセリフから、妙に心に残る言葉があった
うるは:痛みも幸せも半分にするんじゃない
うるは:痛みも幸せも二人で分かち合うこと
うるは:自分の気持ちを素直に話すと、痛みと幸せの分だけ、相手を好きになれること
うるは:この言葉は紛れもなく私と銀河君が分かち合えなかった事だった
うるは:あなたの言葉をもう一度聞かせて欲しい
うるは:分かち合えた上でこのタイトルになった理由を聞かせて欲しい
0:あの日の公園のベンチに銀河は座っている
銀河:この日はあの日と同じように、照りつける夏の暑さでじんわりと汗をかいていた
銀河:この公園でうるはを見つけた時の事を思い出す
銀河:あの時、メガネかけてたのにキョロキョロしても僕に気づかなかったのはおかしいよ
銀河:今思えばあのジャングルジムから飛び降りても死ねるわけがない
銀河:スマホの充電器で首を絞めるのはアドリブだったのかな?
銀河:僕が叫んだ後にびっくりして叫ぶのも面白いね
銀河:あの時の君の演技は……今でも素敵だったと思うよ
銀河:ああ、だめだ。この公園に来ると君を思い出してしまう
銀河:君を思い出すと…涙が勝手に出てしまう
銀河:どうして…こんなに愛おしいんだろう……
銀河:君を好きでいた日々が今でも、僕の胸を締め付けていた
銀河:……電話だ
銀河:……もしもし?はい。はい。
銀河:……え?書籍化ですか?
銀河:はい!もう少し待ってもらえればゆっくりお話出来ます!
銀河:(僕は急いで家に帰る)
うるは:………
うるは:居るわけないよね。私との思い出をわざわざ振り返るわけないか
うるは:似たもの同士…………やっぱり違うんだ
0:場面転換
銀河:僕の書いた小説が全国の書店で販売されることになった
銀河:本格的に小説家になれる日が来るなんて思いもよらなかったけど本当によかった
銀河:うるはと別れたというのに、うるはと過ごした経験の小説が書籍化なんてどこまでもうるはに頭が上がらない
銀河:そんな街の中を歩く。20数年居たこの街の中で、一際輝くオーラをまとった人を見つけた
うるは:この育った街の中で平凡そうなあなたを私は遠くの方からすぐに見つける
うるは:メガネ姿の私に気づける人なんて一人しか居ない
銀河:遠くの方にはうるはが居た
銀河:紛れもない、あのメガネ姿はうるはだ
銀河:仕事で忙しいはずの君がなんでここにいるんだ
うるは:あなたに会いに来たわけではないけど、どこかで会えると思っていた
うるは:どこかで会えたら話したいことが沢山あった
銀河:どこかで会えたら君の出てるドラマの話をしようと思っていた
うるは:1歩ずつ確実にあなたに近づいていく
銀河:遠くなった心が少しずつ近づいていく
うるは:あなたの今の気持ちが知りたい
銀河:君の今の気持ちが知りたい
うるは:私はスマホを取り出して小説サイトを見る
うるは:あなたが書いた小説を開いて、このタイトルの意味も知りたい
うるは:あなたが書いた小説のタイトルは
うるは:君は僕で僕は君
銀河:君のおかげで書籍化することが出来た
銀河:君には感謝してる
銀河:それでも…あと数メートルで君に近づくと襲いかかるものがあった
銀河:それは恐怖だった
うるは:あなたに近づく度に私自身が遠くなる気がした
うるは:女優としてのうるはが居なくなる気がした
銀河:僕の夢はまだまだこれからだ。だからこそ君と離れておくべきだと思う
銀河:うるはと僕はすれ違う
うるは:あなたの懐かしい香りがする
うるは:あなたも同じ気持ちでいるのかな?
うるは:あなたの香りで私は泣いている
銀河:君の懐かしい香りで僕は泣いている
銀河:君も泣いているのだろうか?
うるは:あなたも泣いているのかな?
銀河:僕は…君に会えなくなったんだ
うるは:私は…あなたに会うと今の私が居なくなってしまうの
銀河:君ともっと話したいのに
うるは:今の私を見て欲しいのに
銀河:心はすれ違うばかり
うるは:似たもの同士のはずなのに
銀河:僕達はいつも考え方が同じだった
うるは:私たちは思いが通じあっていた
銀河:だから、二人の合言葉を使うようにした
うるは:特別だから合言葉を使うようにした
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:気持ちは分かり合えない
0:君は僕で僕は君
0:〜END〜
銀河:あの照りつける夏の日に僕は誓った
うるは:気温が高い夏の空の下で私は誓った
銀河:この繋がりは永遠に続くと思った
うるは:いつまでも一緒に居られると思った
銀河:僕達はいつも考え方が同じだった
うるは:私達は思いが通じあっていた
銀河:だから、二人の合言葉を使うようにした
うるは:特別だから合言葉を使うようにした
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:……
銀河:セミの音うるさいな。集中出来ないや
銀河:何も思い浮かばない。やっぱりスランプなのかなー?
銀河:こんな公園じゃ刺激なんて得られないし、どっか行くかなー?
銀河:せめて、キャラクターの参考になる面白そうな人でも居ればいいんだけど
銀河:……ん?
うるは:おどおど、おどおど
うるは:キョロ!キョロ!
うるは:……ブルブルブル!
銀河:ん?
うるは:すぅーはあーすぅーはあー
うるは:あめんぼ赤いなあいうえお!
うるは:うきにも、こえびが、泳いでる!
銀河:え?
うるは:柿の木、栗の木、かきくけこ!
うるは:きつつき、こつこつ、枯れけやき!
銀河:なんだ?
うるは:ふぅー。セミの音うるさいなー
うるは:……っ!
銀河:え、こっちに気づいた
うるは:あ、あ、あ、あの、い、い、い、いつから!?
銀河:ずっと居ましたよ?
うるは:ええぇー!!
銀河:いや、キョロキョロしてたじゃん……
うるは:ごめんなさいごめんなさい!迷惑でしたよね?
うるは:あーもう!ジャングルジムから飛び降ります!
銀河:ちょ!やめて!見てただけだから!
うるは:わ、私が汚いものを見せてしまったんです!やらせてください!
銀河:冒頭から激しすぎですよ!落ち着いてください!
うるは:落ち着いてられないですー!もう飛び降りて死にますー!
銀河:ジャングルジムから飛び降りても死なないよ!
うるは:え?そうなんですか?
銀河:その高さじゃ捻挫にもならないよ
うるは:そ、そんな〜!
うるは:そ、そうだ……この前の台本を試そう
うるは:・・・・・・
銀河:え?
うるは:うふっ、私が死ねないなら誰を殺したらいいと思う?
銀河:お、おい、何を
うるは:これなーんだ?
銀河:……それは、スマホの充電器?
うるは:ただの充電器じゃないよー?これ、断線しにくいライトニングケーブルっていうの
うるは:これで人の首は絞められるんだよ?
銀河:何を…するつもりだ
うるは:ふふっ
銀河:やめろ……
うるは:あっははははは!!
銀河:うわあああああーー!!!
うるは:きゃああああ!!!
銀河:え?
うるは:急に大きな声出さないでください!ビックリするじゃないですか!
銀河:……は?
うるは:あービックリしたー心臓止まるかと思いました
銀河:いやいやこっちのセリフですよ。急になんですか?
うるは:あ、ごめんなさい!前に受けたオーディションの台本の役を演じただけなんです
銀河:台本の役?
うるは:はい!私、演技するのが好きで……
うるは:なんで私の演技見るんですか!!
銀河:見せてきたのそっちでしょ!
銀河:(変な人だな…)
銀河:(にしてもさっきの演技凄かったな)
銀河:(まるで本当に殺人を犯す人のようだった)
銀河:(いい刺激になるかもしれない)
銀河:あの
うるは:はい?
銀河:僕、小説書いてるんです。なので…
銀河:僕の書いた小説の役を演じてもらえないですか?
うるは:……えぇ!?
銀河:む、無理なら大丈夫です!
銀河:おこがましいですよね。見ず知らずの人が書いた小説の役なんて。ごめんなさい
うるは:……わ、私でよかったら!
銀河:……ほ、本当に?
うるは:はい
銀河:あ、ありがとうございます!
うるは:と、とんでもないです!セリフとか役の設定を教えて貰えれば
銀河:はい!心臓病の女の子の設定なんですけど、病気持ちでも明るくてポジティブなんです
うるは:…素敵ですね
銀河:……あ、ありがとう
うるは:じゃあ、メガネ外してもいいですか?
銀河:どうして?
うるは:私、目が悪いんです。
銀河:それならメガネかけてた方がいいんじゃ
うるは:いえ、視界がぼやけてた方が私には都合がいいんです。人が目の前に居ると緊張しちゃって
銀河:そうなんだ
うるは:はい、じゃあ読みますね
0:うるははメガネを外す
銀河:………っ
うるは:・・・・・・
うるは:私は何回も死にそうになったことあるよ。その度に思うの
うるは:生きててよかった。私が生きてるのはみんなのおかげ。みんなありがとうって
銀河:(メガネを外した彼女の表情がよく見える)
銀河:(その表情は固くなく、軽快で、煌(きら)びやかで)
銀河:(麗(うるわ)しいくらい、彼女の全身が輝いて見えた)
銀河:………
うるは:どうでした?
銀河:……好きです
うるは:……え?
銀河:……あ
うるは:……え?えぇーー!!
銀河:ち、違います!そういう意味じゃなくて!
うるは:あああうううおおおえええいいいー!!
銀河:落ち着いてください!
うるは:ピーー!!
銀河:あぁ、ダメだ、完全に壊れてる
銀河:僕が言ってるのはあなたの演技が好きってことです
うるは:……え?
銀河:すごく、素敵な演技でした
うるは:……ありがとうございます
銀河:こちらこそありがとうございます!
うるは:お名前は?
銀河:…僕は銀河
うるは:銀河さん。素敵な小説を書かれる方ですね。私はラッキーです
銀河:どうして?
うるは:あなたの小説が売れる前にあなたの小説に出会えたから
うるは:私もあなたの小説、好きですよ。売れるようになっても読み続けます
銀河:ありがとう!
銀河:君の名前は?
うるは:私はうるは
銀河:うるはさん。僕も君の活躍が楽しみだよ
うるは:物語が好きならこれあげます!
銀河:これは?
うるは:舞台のチケットです。私は出てないですけど
銀河:そんな、悪いよ
うるは:大丈夫です!私ももう一枚持ってますから!
銀河:そ、そう?じゃあ
うるは:またどこかで会いましょうね
銀河:うん、またね
銀河:今日の舞台の場所ってこの辺だったよな?
銀河:にしてもまたどこかで会いましょうねって、同じ舞台のチケット持ってたらまた会うことになるような……
銀河:そこまで計算してるとは思えないけど
うるは:あ、あれ?……どうして銀河さんがここに!?
銀河:だよね。そうなると思ってたよ
銀河:同じ舞台のチケット渡されたらまた会うに決まってるでしょ
うるは:つ、つまり、同じ舞台のチケット渡したからまた会ったんですね…!
銀河:全く同じこと言ってるよ
銀河:しかも多分席も隣だよね?
うるは:ああ〜〜!本当だ!またご迷惑を〜!なんとお詫びをしたら……
うるは:もう!舞台中ずっとごめんなさいって泣き叫びます!
銀河:生き地獄みたいな真似はしないで貰えるかな!?
銀河:いいんじゃない?隣で見てても
うるは:いいんですか?
銀河:うん
うるは:銀河さんが後悔しないならそれでも…
銀河:後悔なんてするわけないよ
うるは:本当ですか!?じゃあ行きましょ!
銀河:………
うるは:ほら!あのセリフの抑揚がたまらないんですよー!
銀河:う、うん
うるは:あの女の人は可愛い声なのにかっこよく演技してるー!凄くないですか!?
銀河:あ、ああ、すごい
うるは:わあー!苦しむ演技リアルー!絞められたい…
銀河:ちょっと後悔してる自分がいる…
うるは:なんか言いました?
銀河:何も!
うるは:私もいつか……ここに立ちたいなー
銀河:……
銀河:(彼女の目はキラキラしていた)
銀河:(こんな一面の彼女を見て後悔なんてするはずがない)
銀河:(何故か心が弾んでいるのは舞台を見ているからなのだろうか?)
銀河:(それは自分じゃわからないし、あえてわからないフリをする)
0:二人は喫茶店に入る
うるは:はあー楽しかったですね
銀河:うん、僕もいい刺激になったよ
銀河:うるはさん今は大学通いながら稽古(けいこ)してるの?
うるは:そうです
銀河:事務所にも入ってるの?
うるは:入ってますよ
銀河:すごいね
うるは:すごくないですよ。東京の大手事務所ならまだしも地方の事務所ですからね。女の子なら誰でも入れるみたいだし
銀河:そうなの?
うるは:そうです。そこからオーディション勝ち取れる人なんて1割も居ないです
うるは:私も全然だめだめですよ
銀河:厳しい世界なんだね
うるは:でも、夢は諦めたくないです。女優になる夢だけは…
銀河:……
うるは:銀河さんは?小説活動どうなんですか?
銀河:僕もダメだよ。小説サイトで投稿しても全く見られない
うるは:そうなんですね…
うるは:私たちって似てますか?
銀河:似てる?
うるは:はい!お互い上手くいかないことが多いけどお互いの好きなものをお互いが好きだなんて似たもの同士ですよ
銀河:傷の舐め合いって言うんじゃないかな?
うるは:傷なんて舐め合った方がいいに決まってます!
銀河:……え?
うるは:お互い気にしてることを慰め合った方が痛みは半分になるんですよ
銀河:……そうだね
うるは:でも、今日みたいに同じ舞台を見た時の楽しさとか、幸せな時間は2人で分けても2倍になるんです!これすごくないですか?
銀河:………
うるは:人のマイナスを半分に出来て、人のプラスを2倍に出来る
うるは:人との心の繋がりって素敵なことなんですよ
銀河:……君は感受性が豊かだね
うるは:そうですかね?
銀河:うん、君以上に素敵な人は見たことないよ
うるは:そ、そんな!
銀河:どこか抜けてて、臆病で、でも自分の夢に真っ直ぐで、それでいて発する言葉も筋がある
銀河:そんな君と一緒に居ると前向きになれる気がする
うるは:………
銀河:……好きです
うるは:……え?
うるは:い、今なんて?
銀河:好きだって言ったんだよ
うるは:………
銀河:あれ?驚かないの?
うるは:緊張し過ぎると声出なくなるんです
銀河:役者さんとしては致命的じゃない?
うるは:そうじゃなくて
銀河:何?
うるは:ドキッとしてしまいました
銀河:……そう?
うるは:この間会ったばかりなのにどうしてでしょうか?
銀河:わからないよ、僕にもわからない
うるは:あの日、銀河さんはなんで公園に居たんですか?
銀河:あの日…執筆がスランプで上手く書けなかったから公園に居たんだ
銀河:でもセミの音がうるさかったから集中出来なかった
うるは:……私も同じです。
銀河:え?
うるは:最近なかなか思うように演技が出来なくて練習してたんです。でも同じくセミの音がうるさかった
うるは:どこか行って何か刺激になるものでも探そうかと思った時
うるは:素敵な小説を書く、あなたと出会いました
銀河:……僕も同じだよ
うるは:……え?
銀河:僕も何か刺激を求めてどこかに行こうとした時に偶然君に会ったんだ
銀河:そして、君の素敵な演技に出会って君に恋をした
うるは:……私、恋ってどういうことかわからないんです
銀河:……僕もそんなに多く恋してきたわけじゃないよ
うるは:ふふっ。やっぱ私たち似たもの同士ですね。
銀河:うん。じゃあ君の素敵な言葉をまとめて一つの言葉にしてみよう
うるは:なんですか?
銀河:君は僕で僕は君
うるは:……どういう意味ですか?
銀河:君が言った痛みを半分に。幸せを2倍に出来る関係のことだよ。僕達は似たもの同士だ
うるは:なるほど!いいですね!
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
うるは:ふふっ!なんかワクワクしますね!
銀河:あははっ。そうだね
うるは:これからもよろしくお願いします
銀河:うん、こちらこそよろしくお願いします
0:そして月日が経つ
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:おはよ、うるは。早かったね
うるは:お、おはようございます!ぎ、銀河君!
銀河:まだ慣れない?あと敬語も
うるは:あ、ああ!ごめんなさい!
銀河:ほらまた
うるは:ああぁぁ、まただ!なんとお詫びをしたら…
うるは:もう、前歯3本折ります!
銀河:や、やめなよ!君、仮にも役者さんなんだから顔は大事に!
うるは:やらせてください!折れた歯はあなたに渡すんで形見にでもしてください!
銀河:形見が歯なんて呪いだよ!
0:また月日が経つ
うるは:君は僕で
銀河:僕は君
うるは:遅くなってごめんね。銀河君
銀河:いや、珍しいね。うるはが遅れるなんて。10分くらいだけど
うるは:セリフ読みながら電車乗ってたら乗り過ごしちゃった
銀河:あー僕もよくやるよ。小説書いてるとつい集中し過ぎて乗り過ごしてしまう
うるは:やっぱやるよねー。さすが似たもの同士だね
銀河:うん。やっぱそうだと思った
銀河:(うるはとの日々は1年が過ぎる)
銀河:(毎日笑って、毎日楽しんで、毎日幸せを感じる。そして)
銀河:(毎日、繋がっていると思える)
銀河:(僕らは似たもの同士で、二人で一つ)
銀河:(ずっと心が繋がっているんだ。)
銀河:(だから、この合言葉を作って良かったと思う)
銀河:(君は僕で僕は君)
0:ある日のこと
うるは:ん〜〜!美味しい
銀河:………
うるは:ねえ、銀河君、こっちのお団子食べた?
銀河:……うん
うるは:銀河君?
銀河:あぁ、ごめん。
うるは:ぼーっとしてどうしたの?
銀河:次書く小説のこと考えてた
うるは:物語書くのって大変だね
銀河:ううん。物語の中に自分が入り込んじゃってダメだ
うるは:大丈夫
銀河:うるはは?この間オーディションを受けたって言ってたじゃん
うるは:まだ結果は出てないよ。どうなんだろうね
銀河:うるはなら大丈夫だよ、きっと
うるは:わかんないよ。すごく有名な舞台のオーディションだったから、多分ダメだよ
銀河:でも最終オーディションまで通ったんだからすごいじゃん
うるは:すごくないよ!受からないとダメだもん。あーもうどうしよ〜今から緊張してきた!
銀河:今緊張してもしょうがないよ
うるは:もう!このお団子丸飲みして喉に詰まらせて死にますー!
銀河:や、やめなよ!掃除機無いから喉に詰まったお団子取り出せないから!
うるは:……っ!じゃあ銀河君がダイソーンになってくれる?
銀河:意味深にこっち見ないでよ。僕に吸引力はない
うるは:……あ、電話だ
うるは:ごめん、出てくるね
銀河:うん
うるは:はい。はい。
うるは:………え?
うるは:はい。わかりました
銀河:うるは?なんの電話だったの?
うるは:………
銀河:ん?
うるは:受かってた
銀河:……え?
うるは:オーディション受かってた!
銀河:オーディションに?
うるは:うん!受かってた!
銀河:す、すごいね!やったじゃん!
うるは:やったよー!よかったー!
うるは:嬉しいことの後のお団子は美味しいー!
銀河:喉に詰まらせないでね?
銀河:(うるはは有名な舞台のオーディションに合格した)
銀河:(主役ではなくて主役の妹役らしいけど、すごく重要な役を任されたみたいだ)
銀河:(本当に心から嬉しいと思う反面、何故か心の中にしこりのような鈍い傷が出来ていた)
銀河:今日はうるはが出演する舞台の公演日
銀河:なんだかんだでうるはの舞台を見るのは初めてだ
銀河:初めて会った頃のうるはの演技は今でも鮮明に覚えてる
銀河:うるはのあの姿は輝いていたんだ
銀河:きっと今はそれ以上に輝いているはずだ
0:舞台が始まる
銀河:(うるはの出番はまだかな?)
銀河:(あ、あれかな?)
うるは:あら?お兄様、目覚めましたか?気持ちよさそうに寝てましたね
うるは:昨晩は何かされてたんでしょうか?……ふふっ
うるは:うっふふふふ!!冗談ですよ!そんな怖い顔しないでください
うるは:でも、この状況については冗談ではないですよ?ごめんなさい。暴れられると困るので手足は動かないようにしてあげました
うるは:これからは一緒にご飯を食べて、一緒にテレビを見て、一緒に寝るだけですから。手足は動かないんで私が体を拭いてあげます
うるは:今夜とは言わず。何度も熱い夜を過ごしましょうね?んふっ
銀河:(初めて会った頃のうるはもこんな感じのキャラだったなー。もしかしてサイコパスがハマり役なのか?)
銀河:(……でも、なんでだろう。闇に堕ちてるはずなのにやっぱりうるはは輝いていた)
0:舞台が終わる
銀河:本当に控え室に入っていいのかな?
うるは:君は僕で
銀河:……っ!僕は君…
銀河:びっくりしたよ
うるは:ごめんね、こんな所に呼び出しちゃって
銀河:ううん、うるはの演技すごくよかったよ!なんか色々とすごかった
うるは:本当に!?よかったー!
銀河:ここって関係者以外入っちゃダメなんじゃないの?
うるは:銀河君は私の関係者でしょ?
銀河:……また悪気もなくそんなことを
うるは:これ終わったら打ち上げがあるんだけど銀河君も来る?
銀河:僕も?それこそ関係者以外来ちゃダメなんじゃ?
うるは:私の関係者なんだからいいの。それに多分お酒も飲まないといけないからさ
銀河:そうだね、じゃあ行こうかな?
0:二人は打ち上げに参加する
銀河:(なんだか気まずいなー。でも物語の話とかちょっと聞けて悪くない気もする)
うるは:あ、あー!そうですよね!あはは!
銀河:(うるはもちょっと無理してそうだ)
うるは:あ、はーい!今行きますね!
うるは:ごめん、監督に呼ばれたから行くね?
銀河:うん
銀河:(隣に居たうるはが居なくなる)
銀河:(それは胸にぽっかりと穴が空くような感覚だった)
うるは:今日もすごく楽しく演じれてよかったです!
うるは:またお願いします!
うるは:え?お話ですか?
0:打ち上げが終わり二人は一緒に帰る
銀河:うるはー?大丈夫?
うるは:ん〜大丈夫ー
銀河:うるはお酒飲めないのに無理しないでよ
うるは:無理なんかしてないよ〜?
うるは:銀河君、私が隣に居なくて寂しかったの?
銀河:また君はそんなこと聞く
うるは:寂しかったの?
銀河:………寂しかった
うるは:……そっか。可愛いところあるね
銀河:からかわないでよ
うるは:私が居ないと銀河君寂しいよね
銀河:どうして?
うるは:さっき監督に呼ばれてね、色々と話したんだ
銀河:何を?
うるは:東京に出てみないかって
銀河:………
うるは:………
うるは:お互い沈黙するよね
銀河:そりゃそうなるよ
うるは:私もどうしたらいいかわからなくてさ
うるは:一応まだ大学に通ってるし、大学卒業してからでもいいかなーって思ったんだけど、早いに越したことはないって言われてね
うるは:大学も辞めるか悩んでるの
銀河:……それは僕も悩むね
うるは:そうだよね
銀河:今はゆっくり考えてさ、また今度話そうよ
うるは:うん。すぐには答えは出せないって言ってあるからそうしよう
:場面転換
銀河:君は何を思ってるんだろう?今は何もわからない
銀河:君の演技は出会ったあの頃よりももっと輝いて見えている
銀河:それは東京に行っても評価されるべきだと僕も思う
銀河:東京なら電車で3時間はかかるだろう
銀河:遠距離恋愛っていうのも悪くは無いことだと思う
銀河:うるはの人生を大切にしたい
銀河:夢に向かって頑張ってるうるはを応援するのは当たり前だ
うるは:私は銀河君との思い出を振り返る
うるは:銀河君と、この地元で過ごした日々はすごく大切で私の中の宝物だよ
うるは:私が東京に出たら、あなたは何を思って、何を感じるんだろう?
うるは:私の夢は確かに大事だけど、それ以上に大事なものはなんだろう?
うるは:何度問い返しても答えは出てこない
うるは:あなたのことは大事なはずなのに、手を離したくないはずなのに
うるは:離さないといけない時が来ると胸にトゲが刺さるようにチクチクする
銀河:君は何を思うんだろう?
うるは:あなたは何を思うんだろう?
銀河:きっと、僕と同じように君も悩んでるはず
うるは:私と同じようにあなたも悩んでるはず
銀河:そうだ、いつだって僕達は似たもの同士
うるは:きっと今思ってることも同じなのかもしれない
銀河:気持ちはもう決まってる
うるは:私だって覚悟は出来てる
銀河:僕が東京に行くべきだと言っても、君は僕を選んでくれる
うるは:私が東京に行くと言っても、あなたは私を選んでくれる
銀河:そうやっていつも心を繋いできた
うるは:あの合言葉は心を繋ぐ合言葉だから
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:………
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:おはよう。うるは
うるは:おはよう。銀河君
銀河:今日も暑いな
うるは:ね、セミの音がうるさいよね
銀河:………
うるは………
銀河:本題に入ろうか
うるは:そうだね
銀河:どう?うるはは自分の中で答えは決まったの?
うるは:うん。決まったよ
銀河:……そっか
うるは:私さ、東京に行こうと思う
銀河:……え?
うるは:私の夢は女優になることだから、東京に行ってもっと活躍出来るように頑張りたいの
銀河:……そうだよな、うるはの大事な夢だもんな
銀河:僕もうるはは東京に行くべきだと思う
うるは:……え?
銀河:こんなチャンス無駄にしちゃダメだよ。うるはの演技は素敵なんだから
うるは:……うん、ありがとう
うるは:私たち、思ってることは同じなのかな?
銀河:……ああ、同じだよ
銀河:うるはの活躍を見守ってる。僕も小説を書くことを辞めないから
銀河:遠くに居ても同じ気持ちで居て欲しい
うるは:……うん。ありがとう
0:そして、うるはが東京に行く日。電車の改札にて
うるは:じゃあ行くね
銀河:うん。絶対にラインするから
うるは:ありがとう
銀河:毎日連絡するよ。ご飯何食べたとかなんのテレビ見てるとか
うるは:うん。毎日送ってよ
銀河:うるはが毎日楽しい日々を送れる事を僕は願ってる
うるは:私もそう思ってるよ
うるは:やっぱり私たちは考えてる事一緒だね
銀河:……うん。そうだね
うるは:じゃあ、時間になったから行くね
銀河:うん。頑張ってね。うるは
銀河:絶対に夢を叶えてね
うるは:うん。銀河君も小説家になる夢、諦めないでね
銀河:もちろんだよ
うるは:ばいばい
銀河:うん、じゃあね
銀河:(また明日とか、また来週とか、昨日までの僕達ならそう言えてたはず)
銀河:(遠くに離れていても心は繋がってると。そう胸を張って言いたいところだけど)
銀河:(遠くに行く君を追いかけられない僕の気持ちに嘘はないのだろうか?)
銀河:(同じ気持ちでいるはずなら。君はここに残ってくれるはずだった)
銀河:(自分の気持ちに嘘をついた場合は、僕の望んでる未来にはならない)
銀河:(そう気づいた時には君はもう君の夢を追いかけて遠くに行った)
うるは:(私たちは似たもの同士で同じ考え方を持っている)
うるは:(わかりきっていたことだけど、またどこかすれ違っている気がした)
うるは:(私たちの関係は痛みを半分に、幸せを2倍に出来る関係だったはず)
うるは:(でもどうしてこの胸の痛みは何倍にも膨れ上がってるんだろう?)
うるは:(私は女優になる夢を諦めてあなたのそばに居たい)
うるは:(口で言うにはあまりにも重すぎるからその言葉を飲み込んだ)
うるは:(あなたに変なプレッシャーみたいのは与えたくなかったからそうしたの)
うるは:(私の目指しているのは女優だから、自分の気持ちを押し殺さないといけない)
うるは:(それでもあなたが遠くに行ってしまうような、この感覚は押し殺せず胸に残ってしまう)
:場面転換
0:月日が経ったある日のこと
銀河:……また落選か
銀河:全然上手くいかないじゃん…
銀河:うるはは東京で舞台を中心に活躍している
銀河:近々、ちょっとした役でドラマにも出るらしい
銀河:うるはは確実に成果を上げて頑張ってるのに…僕は何をしてるんだろう
銀河:うるはに送ったラインはまだ帰ってこない
銀河:舞台の稽古か、打ち合わせをしているんだろう
銀河:最近毎日こんな調子だ
銀河:月に1回、うるはと会ってる。毎日電話もしてる。それでも毎日君を思ってしまう
銀河:うるはに対しての好きな思いは募るばかりなのに、辛い思いも募ってく
銀河:どうしてこんなに余裕がないんだろ
うるは:銀河君のラインはいつも稽古が終わったあとに返すことにしてる
うるは:今返すと、私は稽古どころじゃなくなってしまいそうだから
うるは:私は毎日、それなりに充実してる
うるは:バイトして、稽古して、家に帰って銀河君と電話をする
うるは:そんな日々でも少しは寂しさは紛れてくれる
うるは:小さな幸せでも、噛み締められるような。そんな人になりたいと思う
0:銀河のスマホが鳴る
銀河:うるは!?
銀河:……ふぅー
0:銀河は電話に出る
うるは:君は僕で
銀河:僕は君
うるは:稽古終わったよ
銀河:うん、遅くまでお疲れ様
うるは:ありがとう
銀河:……
うるは:ん?どうしたの?
銀河:え?何が?
うるは:なんか元気ない?
銀河:そんなことないよ
うるは:……そう?
銀河:うん
うるは:……
銀河:話すことないなら切ってもいい?
うるは:え?
銀河:じゃあね
うるは:待って、何その言い方
銀河:何って何?
うるは:何か変だよ
銀河:……そうかな?
うるは:銀河君が毎日連絡してくれるって言ってたじゃん。確かに連絡してくれるけど
うるは:話すことないなら切るなんて言ったことなかったよね?
銀河:……毎日連絡してるからもういいかなって
うるは:それが変だって言ってるの!
銀河:もう、君のこと考えるのが苦しいんだ
うるは:……え?
銀河:君のことは好きなはずなのに、会えない日が続く
銀河:君が女優として活躍すると嬉しいはずなのに、何もしてない僕に嫌気がさす
銀河:二人とも少しは成長して、似たもの同士だったはずの心はズレていくばかりだよ
うるは:……それは私も同じこと思ってた
うるは:私は銀河君のことは好きなのに、なんで遠くなっちゃったんだろうって
うるは:あの時、銀河君のために地元に残るって言えば、この気持ちにはならなかったのかなって
銀河:……僕もそれは思ってたよ
うるは:ほら、似たもの同士じゃん
銀河:でももう戻れないだろ!
うるは:……うん、戻れないよ。私、東京まで来て自分の夢を追いかけてるんだもん
うるは:今更、銀河君のために戻ろうとは思わない
銀河:……そうだよな
銀河:なら、もういっそ別れるか
うるは:……どうしてそんなこと言うの?
銀河:うるはが全力で夢を叶えるためだよ
銀河:今こうして電話してる時間だって、うるはは舞台のセリフを覚えたり出来る
銀河:それでいいと思わない?
うるは:………そうだね
銀河:……うん
うるは:私たちはお互い別の道に進もうね
うるは:銀河君の小説が全国に渡るようになったら絶対読むから
銀河:……ありがとう
0:2年が経ったある日
銀河:僕とうるはが別れてから2年が経つ
銀河:あれから連絡もしてないし会うこともなかった
銀河:それでも、どこかしらでうるはの姿は見かける
銀河:雑誌の表紙、テレビのバラエティ、SNS、ドラマ、舞台
銀河:彼女を見かけない日なんてなかった
銀河:うるははこの2年で躍進を遂げていた
銀河:自分の夢に真っ直ぐだったうるはは自分の夢を叶えていたんだ
銀河:写真で見るうるはは美しい。
銀河:メガネを外した姿はどこの誰より綺麗だ
銀河:僕はこんな彼女と共に過ごせた事を誇りに思う
銀河:僕は筆を走らせる
銀河:君への思いも、君への後悔も、全部物語になる
銀河:僕が言葉に出来なかった代わりに、物語が言葉にしてくれる
銀河:愛した日々も、名残惜しい別れも、嘘をついた自分も
銀河:僕とうるはが過ごした日々は決して無駄なんかじゃない
銀河:この物語の二人も、自分の気持ちに嘘は付かず、ずっとそばにいて欲しかった
銀河:痛みを半分に幸せを2倍に出来る関係
銀河:この関係では、僕とうるはのように離れてしまう
銀河:この物語のタイトルはなんて付けよう?
:場面転換
うるは:仕事と帰宅を繰り返す毎日を送っている私は今日も家のベットで、メイクも落とさず倒れ込む
うるは:お盆休みは貰えたからそれまでの辛抱だと思って乗り切ろう。実家にも帰らないとだし
うるは:……銀河君はまだ、地元にいるのかな?
うるは:もう2年経つのに、私の中の最後の恋は銀河君だけだった
うるは:未練とかはないはず。それでもふとした時に何してるのか気になる時がある
うるは:もしかしたら、少しずつテレビに出れるようになった私を、彼もどこかで見ているのかもしれない
うるは:私は何となく、彼が小説サイトで投稿していた小説を見る
うるは:……この小説
うるは:小説のタイトルだけで何のことなのか、誰のことなのかがわかった
うるは:その小説のセリフから、妙に心に残る言葉があった
うるは:痛みも幸せも半分にするんじゃない
うるは:痛みも幸せも二人で分かち合うこと
うるは:自分の気持ちを素直に話すと、痛みと幸せの分だけ、相手を好きになれること
うるは:この言葉は紛れもなく私と銀河君が分かち合えなかった事だった
うるは:あなたの言葉をもう一度聞かせて欲しい
うるは:分かち合えた上でこのタイトルになった理由を聞かせて欲しい
0:あの日の公園のベンチに銀河は座っている
銀河:この日はあの日と同じように、照りつける夏の暑さでじんわりと汗をかいていた
銀河:この公園でうるはを見つけた時の事を思い出す
銀河:あの時、メガネかけてたのにキョロキョロしても僕に気づかなかったのはおかしいよ
銀河:今思えばあのジャングルジムから飛び降りても死ねるわけがない
銀河:スマホの充電器で首を絞めるのはアドリブだったのかな?
銀河:僕が叫んだ後にびっくりして叫ぶのも面白いね
銀河:あの時の君の演技は……今でも素敵だったと思うよ
銀河:ああ、だめだ。この公園に来ると君を思い出してしまう
銀河:君を思い出すと…涙が勝手に出てしまう
銀河:どうして…こんなに愛おしいんだろう……
銀河:君を好きでいた日々が今でも、僕の胸を締め付けていた
銀河:……電話だ
銀河:……もしもし?はい。はい。
銀河:……え?書籍化ですか?
銀河:はい!もう少し待ってもらえればゆっくりお話出来ます!
銀河:(僕は急いで家に帰る)
うるは:………
うるは:居るわけないよね。私との思い出をわざわざ振り返るわけないか
うるは:似たもの同士…………やっぱり違うんだ
0:場面転換
銀河:僕の書いた小説が全国の書店で販売されることになった
銀河:本格的に小説家になれる日が来るなんて思いもよらなかったけど本当によかった
銀河:うるはと別れたというのに、うるはと過ごした経験の小説が書籍化なんてどこまでもうるはに頭が上がらない
銀河:そんな街の中を歩く。20数年居たこの街の中で、一際輝くオーラをまとった人を見つけた
うるは:この育った街の中で平凡そうなあなたを私は遠くの方からすぐに見つける
うるは:メガネ姿の私に気づける人なんて一人しか居ない
銀河:遠くの方にはうるはが居た
銀河:紛れもない、あのメガネ姿はうるはだ
銀河:仕事で忙しいはずの君がなんでここにいるんだ
うるは:あなたに会いに来たわけではないけど、どこかで会えると思っていた
うるは:どこかで会えたら話したいことが沢山あった
銀河:どこかで会えたら君の出てるドラマの話をしようと思っていた
うるは:1歩ずつ確実にあなたに近づいていく
銀河:遠くなった心が少しずつ近づいていく
うるは:あなたの今の気持ちが知りたい
銀河:君の今の気持ちが知りたい
うるは:私はスマホを取り出して小説サイトを見る
うるは:あなたが書いた小説を開いて、このタイトルの意味も知りたい
うるは:あなたが書いた小説のタイトルは
うるは:君は僕で僕は君
銀河:君のおかげで書籍化することが出来た
銀河:君には感謝してる
銀河:それでも…あと数メートルで君に近づくと襲いかかるものがあった
銀河:それは恐怖だった
うるは:あなたに近づく度に私自身が遠くなる気がした
うるは:女優としてのうるはが居なくなる気がした
銀河:僕の夢はまだまだこれからだ。だからこそ君と離れておくべきだと思う
銀河:うるはと僕はすれ違う
うるは:あなたの懐かしい香りがする
うるは:あなたも同じ気持ちでいるのかな?
うるは:あなたの香りで私は泣いている
銀河:君の懐かしい香りで僕は泣いている
銀河:君も泣いているのだろうか?
うるは:あなたも泣いているのかな?
銀河:僕は…君に会えなくなったんだ
うるは:私は…あなたに会うと今の私が居なくなってしまうの
銀河:君ともっと話したいのに
うるは:今の私を見て欲しいのに
銀河:心はすれ違うばかり
うるは:似たもの同士のはずなのに
銀河:僕達はいつも考え方が同じだった
うるは:私たちは思いが通じあっていた
銀河:だから、二人の合言葉を使うようにした
うるは:特別だから合言葉を使うようにした
銀河:君は僕で
うるは:僕は君
銀河:気持ちは分かり合えない
0:君は僕で僕は君
0:〜END〜