台本概要

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タイトル 凪いだカーテンに月は透ける
作者名 真野ショウタ  (@eda2812)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 しづかなよるのゆうれい。

【利用規約】(こまかいところ)
https://note.com/otetsudai_s/n/nd62bdc5b1067

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
沙月 60 高校生だった。
幽霊 61 先生だった。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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幽霊: その目は見つめる。 幽霊: 大きな瞳を、その造形美の持つ力を抑えることなく無遠慮に、五秒を経過し少し呆れる。この少女の愚かさは俺の欲望を満たし、破壊し、燻らせる。 幽霊: 欲して、欲して、欲して、 幽霊: やがて、その美は暴かれて、 幽霊: やがて、空虚で満たされて、 幽霊: そして—— 幽霊: もう、いらない。 0:タイトルコール『凪いだカーテンに月は透ける』 0:◯夜の学校 0:沙月、窓辺に靡くカーテンを見ている。 0:窓は開いていない。 幽霊:「何をそんなに見つめているの?」 沙月:「……あなた……幽霊?」 幽霊:「見ての通り幽霊だよ。白い布を被ってるじゃないか」 沙月:「それカーテンじゃない」 幽霊:「カーテンだよ。移動できる範囲はレールから1メートル」 沙月:「ふふっ」 幽霊:「あ、笑った」 沙月:「何よ。怖がると思ったの?」 幽霊:「いいや。少し睨まれるかもと思った」 沙月:「そう。それで?」 幽霊:「それでって?」 沙月:「私に何のようですか?」 幽霊:「ここ深夜の学校だよ? 訪ねてきたのはむしろ君の方だからね」 沙月:「こっちは此岸、そっちは彼岸」 幽霊:「いつからここが現世だと思っていた」 沙月:「ふふっ」 幽霊:「意外とよく笑うんだね」 沙月:「今日は特別です。普段はあんまり笑いません」 幽霊:「そ。夜だからかな」 沙月:「そうかも」 幽霊:「たくさん笑った方がいいよ、健康に。長生きできる」 沙月:「ジョークのつもり?」 幽霊:「何が?」 沙月:「ごめんなさい。ブラックジョークでも言ってるのかと思ったの」 幽霊:「……ああ、そっか。俺、幽霊だった」 沙月:「大丈夫?」 幽霊:「たぶん大丈夫。そんなに自分のことは気にしてないよ」 沙月:「あなた、案外最近の幽霊なのね」 幽霊:「そうかもね。それで、君は何しに来たの?」 沙月:「ふふっ、悪いことしに」 幽霊:「どんなこと? 花火とか?」 沙月:「花火をするには少し早いわね」 幽霊:「うーん。俺が昔、夜の学校でやった悪いことなんてそんな物だからなあ」 沙月:「不良ですね。楽しそう」 幽霊:「楽しいよ。んで、君は?」 沙月:「泥棒。盗みに来ました」 幽霊:「へえ、青春だね」 沙月:「卒業してますけどね」 幽霊:「大丈夫だよ、若いんだから。モラトリアム、モラトリアム」 沙月:「……非難しないんですね」 幽霊:「するような立場でもないしね」 沙月:「そうですね」 幽霊:「ははっ。君、かなり可愛いんだし、いろんな遊びをして青春しなきゃね」 沙月:「……」 幽霊:「どうしたの? 照れないんだね。言われ慣れてた?」 沙月:「可愛いって言葉、苦手なんですよ」 幽霊:「ふうん。ごめんね」 沙月:「いいえ。ありがとうございます」 幽霊:「理由は? 教えてくれる?」 沙月:「ええ、いいですよ。聞いてください」 幽霊:「うん」 沙月:「私……、ルックスがいいんです」 幽霊:「うん。まあ、そうだね」 沙月:「はい。はっきり言って美人です。自分の顔で左右非対称のところなんて見当たらないし、肌が荒れたことだってないです」 幽霊:「鼻も高いし、目も大きい。バランスもいいし、きっとてんびん座だね」 沙月:「ふふっ、正解」 幽霊:「へえ。てんびん座には美人が多いんだって」 沙月:「本当?」 幽霊:「血液型占いみたいなものだよ」 沙月:「ふうん」 幽霊:「それで、美人の何が嫌なの?」 沙月:「嫌ってわけじゃないです。ただ、美人なのに思い通りにならないことがイヤ」 幽霊:「思っていたより暴君だね、君」 沙月:「美人なのに好きな人と付き合えないって最悪じゃないですか?」 幽霊:「彼、B専だったの?」 沙月:「怒りますよ」 幽霊:「ごめんて」 沙月:「……感情の作用としては正しいでしょう? 資格を持っているのにそれを無下にされるやるせなさ。悔しさがわかりますよね?」 幽霊:「どうかな」 沙月:「例えば、明らかな実力差があるのにもかかわらず、凡才に主席の座を奪われるみたいな腹立たしさ」 幽霊:「寝取られたの?」 沙月:「いいえ。違います」 幽霊:「じゃあ、なんで振られたのかな」 沙月:「それがわからないから悔しいんです。」 幽霊:「そう」 沙月:「だから、この人の物をなんでもいいから奪いたくて、ここに来ました」 幽霊:「そっか」 沙月:「文脈がおかしいなんて言わないでくださいね」 幽霊:「言わないよ。読めるさ」 沙月:「……」 幽霊:「……盗んで何か得られるの?」 沙月:「……いいえ、でも……」 幽霊:「……」 沙月:「これで捨てられる」 幽霊:「……性格ワルイね」 沙月:「知ってます」 幽霊:「だから振られたんじゃない?」 沙月:「……違います、彼には素直でずっと従順でした」 0:沙月の目が逸れる。 幽霊:「じゃあ、それが原因だ」 沙月:「……は?」 幽霊:「君が子どもだったから。そうでしょ」 沙月:「何が、言いたいんですか?」 幽霊:「分からないかい?」 沙月:「私に考えがないと思ってます? 私が騙されたと思ってるの!?」 幽霊:「話が飛躍しているよ。落ち着きなよ」 沙月:「そういう話をしているのはあなたでしょ!」 幽霊:「だとしても、話を聞けないのは君が子どもだからだ」 沙月:「煽っておいて説教しないで!」 幽霊:「静かにするべきだ」 沙月:「どうして!」 幽霊:「ここは職員室だよ?」 沙月:「だから何よ!」 幽霊:「だからだろ?」 0:ここは学校。 0:場所は教室ではなく、職員室。 沙月:「……」 幽霊:「聞き分けがいい振りをしながら、言うことを聞けない。不都合があれば、すぐ自暴自棄を振りかざす。自分の身を自分で守ることもできない幼い子どもだ」 沙月:「……じゃあ、守ってくれればよかったじゃない」 幽霊:「君が手にしている物が答えだろ?」 沙月:「……」 幽霊:「その写真の中でその先生が一番笑顔じゃないか」 沙月:「……」 幽霊:「君がそれを盗んだところで、どうせ捨てられないだろう」 沙月:「……」 幽霊:「だから、捨てられたんだ」 0:沙月、項垂れ涙する。 沙月:「あなたに何が分かるんですか」 幽霊:「大人の立場かな」 沙月:「馬鹿みたい」 幽霊:「俺もそう思うよ」 沙月:「……」 幽霊:「俺は先に逝くよ。早く帰りな。故人の物に触るもんじゃない」 0:沙月、はっと向き直る。 0:静か。 沙月: デスクに靡いていた薄いカーテンの影が大きくはためく。 沙月: 咄嗟に振り向けばカーテンは静止していた。 沙月: 元から何もなかったかのように、薄く月を透かした布は凪いでいる。 沙月: 私は、手にした写真を戻した。 沙月: 五秒見つめて、涙が出た。 沙月: 音を立てないように、写真を伏せた.

幽霊: その目は見つめる。 幽霊: 大きな瞳を、その造形美の持つ力を抑えることなく無遠慮に、五秒を経過し少し呆れる。この少女の愚かさは俺の欲望を満たし、破壊し、燻らせる。 幽霊: 欲して、欲して、欲して、 幽霊: やがて、その美は暴かれて、 幽霊: やがて、空虚で満たされて、 幽霊: そして—— 幽霊: もう、いらない。 0:タイトルコール『凪いだカーテンに月は透ける』 0:◯夜の学校 0:沙月、窓辺に靡くカーテンを見ている。 0:窓は開いていない。 幽霊:「何をそんなに見つめているの?」 沙月:「……あなた……幽霊?」 幽霊:「見ての通り幽霊だよ。白い布を被ってるじゃないか」 沙月:「それカーテンじゃない」 幽霊:「カーテンだよ。移動できる範囲はレールから1メートル」 沙月:「ふふっ」 幽霊:「あ、笑った」 沙月:「何よ。怖がると思ったの?」 幽霊:「いいや。少し睨まれるかもと思った」 沙月:「そう。それで?」 幽霊:「それでって?」 沙月:「私に何のようですか?」 幽霊:「ここ深夜の学校だよ? 訪ねてきたのはむしろ君の方だからね」 沙月:「こっちは此岸、そっちは彼岸」 幽霊:「いつからここが現世だと思っていた」 沙月:「ふふっ」 幽霊:「意外とよく笑うんだね」 沙月:「今日は特別です。普段はあんまり笑いません」 幽霊:「そ。夜だからかな」 沙月:「そうかも」 幽霊:「たくさん笑った方がいいよ、健康に。長生きできる」 沙月:「ジョークのつもり?」 幽霊:「何が?」 沙月:「ごめんなさい。ブラックジョークでも言ってるのかと思ったの」 幽霊:「……ああ、そっか。俺、幽霊だった」 沙月:「大丈夫?」 幽霊:「たぶん大丈夫。そんなに自分のことは気にしてないよ」 沙月:「あなた、案外最近の幽霊なのね」 幽霊:「そうかもね。それで、君は何しに来たの?」 沙月:「ふふっ、悪いことしに」 幽霊:「どんなこと? 花火とか?」 沙月:「花火をするには少し早いわね」 幽霊:「うーん。俺が昔、夜の学校でやった悪いことなんてそんな物だからなあ」 沙月:「不良ですね。楽しそう」 幽霊:「楽しいよ。んで、君は?」 沙月:「泥棒。盗みに来ました」 幽霊:「へえ、青春だね」 沙月:「卒業してますけどね」 幽霊:「大丈夫だよ、若いんだから。モラトリアム、モラトリアム」 沙月:「……非難しないんですね」 幽霊:「するような立場でもないしね」 沙月:「そうですね」 幽霊:「ははっ。君、かなり可愛いんだし、いろんな遊びをして青春しなきゃね」 沙月:「……」 幽霊:「どうしたの? 照れないんだね。言われ慣れてた?」 沙月:「可愛いって言葉、苦手なんですよ」 幽霊:「ふうん。ごめんね」 沙月:「いいえ。ありがとうございます」 幽霊:「理由は? 教えてくれる?」 沙月:「ええ、いいですよ。聞いてください」 幽霊:「うん」 沙月:「私……、ルックスがいいんです」 幽霊:「うん。まあ、そうだね」 沙月:「はい。はっきり言って美人です。自分の顔で左右非対称のところなんて見当たらないし、肌が荒れたことだってないです」 幽霊:「鼻も高いし、目も大きい。バランスもいいし、きっとてんびん座だね」 沙月:「ふふっ、正解」 幽霊:「へえ。てんびん座には美人が多いんだって」 沙月:「本当?」 幽霊:「血液型占いみたいなものだよ」 沙月:「ふうん」 幽霊:「それで、美人の何が嫌なの?」 沙月:「嫌ってわけじゃないです。ただ、美人なのに思い通りにならないことがイヤ」 幽霊:「思っていたより暴君だね、君」 沙月:「美人なのに好きな人と付き合えないって最悪じゃないですか?」 幽霊:「彼、B専だったの?」 沙月:「怒りますよ」 幽霊:「ごめんて」 沙月:「……感情の作用としては正しいでしょう? 資格を持っているのにそれを無下にされるやるせなさ。悔しさがわかりますよね?」 幽霊:「どうかな」 沙月:「例えば、明らかな実力差があるのにもかかわらず、凡才に主席の座を奪われるみたいな腹立たしさ」 幽霊:「寝取られたの?」 沙月:「いいえ。違います」 幽霊:「じゃあ、なんで振られたのかな」 沙月:「それがわからないから悔しいんです。」 幽霊:「そう」 沙月:「だから、この人の物をなんでもいいから奪いたくて、ここに来ました」 幽霊:「そっか」 沙月:「文脈がおかしいなんて言わないでくださいね」 幽霊:「言わないよ。読めるさ」 沙月:「……」 幽霊:「……盗んで何か得られるの?」 沙月:「……いいえ、でも……」 幽霊:「……」 沙月:「これで捨てられる」 幽霊:「……性格ワルイね」 沙月:「知ってます」 幽霊:「だから振られたんじゃない?」 沙月:「……違います、彼には素直でずっと従順でした」 0:沙月の目が逸れる。 幽霊:「じゃあ、それが原因だ」 沙月:「……は?」 幽霊:「君が子どもだったから。そうでしょ」 沙月:「何が、言いたいんですか?」 幽霊:「分からないかい?」 沙月:「私に考えがないと思ってます? 私が騙されたと思ってるの!?」 幽霊:「話が飛躍しているよ。落ち着きなよ」 沙月:「そういう話をしているのはあなたでしょ!」 幽霊:「だとしても、話を聞けないのは君が子どもだからだ」 沙月:「煽っておいて説教しないで!」 幽霊:「静かにするべきだ」 沙月:「どうして!」 幽霊:「ここは職員室だよ?」 沙月:「だから何よ!」 幽霊:「だからだろ?」 0:ここは学校。 0:場所は教室ではなく、職員室。 沙月:「……」 幽霊:「聞き分けがいい振りをしながら、言うことを聞けない。不都合があれば、すぐ自暴自棄を振りかざす。自分の身を自分で守ることもできない幼い子どもだ」 沙月:「……じゃあ、守ってくれればよかったじゃない」 幽霊:「君が手にしている物が答えだろ?」 沙月:「……」 幽霊:「その写真の中でその先生が一番笑顔じゃないか」 沙月:「……」 幽霊:「君がそれを盗んだところで、どうせ捨てられないだろう」 沙月:「……」 幽霊:「だから、捨てられたんだ」 0:沙月、項垂れ涙する。 沙月:「あなたに何が分かるんですか」 幽霊:「大人の立場かな」 沙月:「馬鹿みたい」 幽霊:「俺もそう思うよ」 沙月:「……」 幽霊:「俺は先に逝くよ。早く帰りな。故人の物に触るもんじゃない」 0:沙月、はっと向き直る。 0:静か。 沙月: デスクに靡いていた薄いカーテンの影が大きくはためく。 沙月: 咄嗟に振り向けばカーテンは静止していた。 沙月: 元から何もなかったかのように、薄く月を透かした布は凪いでいる。 沙月: 私は、手にした写真を戻した。 沙月: 五秒見つめて、涙が出た。 沙月: 音を立てないように、写真を伏せた.