台本概要
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タイトル | 今夜は月が綺麗ですね |
---|---|
作者名 | まりおん (@marion2009) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
わたしに実害が無い範囲で、有料無料に関わらず全て自由にお使いください。 過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。 わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。 686 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
亮平 | 男 | 154 | |
理子 | 女 | 155 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:亮平の部屋
理子:好きって言ってよ。
亮平:・・・え?
理子:愛してるって言って。
亮平:えっと・・・、理子さん?
理子:わたしのこと愛してるって言ってよ。
亮平:どうした?急に。
理子:どうしたもこうしたもないよ。わたし、亮平に一度も好きって言われたことない。
亮平:うん。言ったことないね。
理子:なんでよ。なんで一度も好きって言ってくれないの?
亮平:え?何?理子は俺に好きって言ってもらいたいの?
理子:当たり前でしょ!わたしだって女の子なんだから。
亮平:当たり前なの?
理子:当たり前よ。
亮平:そっか。
理子:そうよ。
亮平:ごめん。
理子:わかってくれればいいのよ。
亮平:うん・・・。
理子:じゃあ、はいどうぞ。
亮平:え?
理子:え?じゃないでしょ。なんにもわかってないじゃない。
亮平:うん、いや、その前にちょっと確認したいんだけどさ。
理子:なに?
亮平:俺たち友達だよね?
理子:友達だよ。
亮平:それ以上でもそれ以下でもないよな?
理子:何が言いたいの?
亮平:いやその・・・、恋愛感情とかないよね?
理子:わたしと亮平が?ありえないでしょ。
亮平:だよね?
理子:当たり前でしょ。何言ってるの。
亮平:ええええええ~、わっかんねぇ~。
理子:なにが?
亮平:いやいやいや、だって恋人でもないし好きでもないんだよ?
理子:そうだよ。
亮平:なんで好きって言うの?
理子:は~、これだからあんたは一生彼女ができないのよ。
亮平:おい、ちょっと待て。
理子:いい?女子っていうのはね、常にキュンキュンするような台詞を求めている生き物なのよ!
理子:キュン要素が不足してくるとイライラしてくるし気持ちも落ち込むし、お肌も荒れてくるの。
理子:女子にとってキュン要素は生命維持に欠かせない栄養素のひとつなのよ!!
理子:そんなこともわからないから亮平は一生独り者なのよ!!!
亮平:ガーン!そうだったのか!
理子:わかった?わかったら早くわたしのことを愛してると言いなさい。
亮平:はい、わかりました。だがその前に、『一生彼女できない』の一言は取り消せ。
理子:ごめんなさい、30歳過ぎたら魔法使いになる亮平。
亮平:お前、喧嘩売ってんだろ?
理子:違うよ。哀れんでるの。
亮平:くそっ!だがな、残念ながら俺にも彼女くらいいたことありますぅ~。
理子:な、なんですってぇ!!そ、そんな、馬鹿なあぁぁぁ!!!
亮平:おい、そんな劇画タッチで驚くほどのことじゃないだろ。
理子:それで、一体どんな動物と付き合ったの?
亮平:アホか!人だ人!
理子:人!?そんな・・・、まさか・・・。
亮平:どういう驚きなんだよ・・・。まあ、とは言っても、今まで付き合ったの一人だけだけど。
理子:いや、だって亮平なんか彼女できたら絶対アホヅラ下げてわたしに自慢しに来ると思ってた。
亮平:お前はいったい俺をどんな目で見てんだ。
理子:哀れみの目?
亮平:ふざけんな!
理子:というか、亮平に彼女がいたかどうかなんてこの際どうでもいいから、早く言ってよ。
亮平:お前、ホント最悪だな。
理子:早く~、言ってよ~
亮平:はいはい、わかったよ。うるせ~な~。で?好きって言えばいいの?
理子:そう。心を込めてね。
亮平:あのやりとりの後に心を込めて言えるか?しかも好きでもないのに。
理子:いいからいいから。
亮平:くっ、ほんと最悪だな・・・。えー、・・・好きだよ。
理子:は?
亮平:え?
理子:告白なめんなよ。
亮平:え?
理子:告白舐めんなって言ってんだよ。
亮平:いやいやいや、え?なにがいけなかったの?
理子:全て。顔から何からすべて。
亮平:おい、顔はしょうがねえだろ!
理子:百歩譲って顔は仕方ないにしても。
亮平:酷い言われようだな。
理子:まず名前を呼ばないのがありえない。
亮平:え?
理子:まずは名前でしょ!優しく名前を呼ばれてドキっとして、そこに好きだよの直球!
理子:これだよこれ!これがキュンポイントでしょ!!
亮平:知らないよそんなの。
理子:ああ~、なんでわからないかなぁ。だから男子はダメなんだよ。
亮平:・・・すみません。
理子:はい、じゃあもう一回行くよ。亮平が理子に告白するシーンから。スタンバイ!
亮平:え?
理子:はい、3、2、1、スタート!
亮平:え、あ、えっと・・・、理子・・・。
理子:なに?
亮平:好きだよ・・・。
理子:・・・・・・はいカット!う~ん、なんか違うんだよなぁ。
亮平:ええ~、結構うまく言えたと思ったんだけどなぁ。
理子:まあ1回目よりは良くなったと思う。やっぱり名前を呼ぶのは大きいね。うん。
理子:でもね、こんなんじゃまだまだわたしをキュンキュンさせることはできない。
亮平:めんどくせ~な~。
理子:今なんて言った?
亮平:えっと、がんばりて~な~って言いました!
理子:よろしい。今後も励むように。
亮平:はい。
理子:う~ん、なんだろ。台詞がいけなかったのかな?短いし単純すぎた?
亮平:いやでも、さすがに愛してるとかは、ちょっと嫌だよ。
理子:なんで?
亮平:いや、さすがにちょっと、恥ずかしいかなって。
理子:顔が?
亮平:顔じゃねえよ!
理子:でもまあ、そうね。愛してるは知性的な男じゃないと似合わないしね。
亮平:おい。
理子:シチュエーションが必要なのかも。今のは突然だし、いつどこで告白されたのかもわからないし。
亮平:確かにシチュエーションは大事かもね。
理子:よし、じゃあここはイギリスの古城(こじょう)近くの湖のほとりにしよう。
亮平:えらくあり得ない場所に飛んだな。
理子:恋人が亡くなって悲しみに暮れているわたしに、子爵(ししゃく)の一人息子である亮平が声をかける。
亮平:それはもう完全に俺じゃないけどね。
理子:じゃあ、良平の台詞は~、こんな感じで~。(紙に書いている)
亮平:え?さすがにそれは変じゃない?
理子:変じゃないよ。これくらいの方がロマンチックなんだから。
亮平:そうかなぁ?
理子:で、こう来て、こうっと。よし、できた。はい、この通りに言ってよ。
亮平:うん、まあ、わかったけど。
理子:はい、じゃあテスト行きまーす。良ければそのままもらっちゃいますんで本意気(ほんいき)で願いします。
理子:それでは、テストスタンバイ!3、2、1、アクション!
理子:・・・ああ、ケンジ、どうして私を残して逝ってしまったの・・・、うぅ・・・。
亮平:これで涙を拭いてください、マドモアゼル。
理子:!?あなたは・・・?
亮平:失礼。ボンジュール、マドモアゼル。ぼくはそこの古城に住む子爵の亮平と言います。
亮平:いつものようにこの湖まで散歩に来たら、とても綺麗なご婦人を見掛けたのでつい・・・。
理子:そうでしたか。あ、ハンカチ、ありがとうございます。
亮平:この湖のほとりから見える景色。
理子:え?
亮平:ぼくはこの景色がとても好きでね。夕日に照らされて柔らかいオレンジ色に染まる世界。
亮平:頬(ほほ)をくすぐる風がさざ波を起こし、湖面(こめん)をキラキラと輝かす。素晴らしいと思いませんか?
理子:・・・ええ。そうですね。とても綺麗。
亮平:ぼくは、今までこの景色が世界で一番好きだったんです。
理子:今まで?
亮平:そう、きみに会うまでは。きみはぼくの世界を一変してしまった。
亮平:もうきみの居ない世界は考えられない。この想い、君に伝えたい。
亮平:理子、僕は君が好きだ。
理子:・・・はいカット!!!いただきました!!!
亮平:いや、おかしいだろ!ツッコミどころが多すぎるって!!
理子:いや~良かったよ、亮平くん!きみなかなかやるじゃない!
亮平:いやいやいや、この台本おかしすぎるだろ。
理子:え~?どこが?
亮平:色々急展開すぎ!出会って3分も経ってないから!
理子:恋に時間は関係ないのよ。
亮平:そうかもしれないけど。あと、なんで理子の名前知ってるんだよ?そこは完全におかしいでしょ。
理子:うっさいなぁ。そういう細かいディテールはいいの。大事なのはキュンキュンするかどうかなの。
理子:それ以外は整合性があろうがなかろうがどうだっていいんだよ。
亮平:いいや、納得いかん。どうせやるなら俺も納得できるやり方でやりたい。
理子:めんどくせ~な~。
亮平:何か言った?
理子:えっと、そいつはい~な~って言いました。
亮平:そう。よし、じゃあ一緒に考えよう。
理子:ええ~、でも今のはかなり良かったと思うんだけどなぁ。
亮平:ダメ。全然ダメ。リアリティがなさすぎ。
理子:そう?
亮平:だいたい、子爵の息子亮平ってなんだよ。何人(ナニジン)なんだよ俺。そこからわかんねえよ。
理子:ぶぅ。
亮平:はい、そこ。ブーたれない。いい、こういうのは役割分担が大事だと思うんだよね。
亮平:で、俺には理子のキュンポイントはわからないから、原案は理子の担当ね。
理子:うん。
亮平:で、俺はそれがリアリティのあるものかどうかを判断する。つまり添削(てんさく)ってこと。
亮平:まずは理子が自由に発想していいから、こういうシチュエーションていうのをあげてみ。
理子:えーと、じゃあ、二人の男性から告白されて・・・。
亮平:はい却下。
理子:えー、なんで?
亮平:ここには男は一人しかいません。だから無理です~。
理子:ぶぅ。
亮平:はい、そこ。ブーたれない。
理子:じゃあ、大金持ちの御曹司に見初(みそ)められて・・・。
亮平:はい却下。
理子:えー、なんで?今度は一人だよ。
亮平:俺んちはお金持ちじゃない。つまりそれは俺じゃな~い。
理子:ぶぅ。
亮平:はい、そこ。ブーたれない。
理子:えーと、じゃあもう相手は亮平で考えないといけないわけね?
亮平:え?なに?いやなの?やめてもいいんだよ?俺は。
理子:わかったよ。亮平で我慢するよ。
亮平:ホント俺の扱いひどいな。
理子:うーんと、じゃあ、幼馴染の設定で。
亮平:おお、それなら本当だからいいんじゃない?
理子:で、亮平はずっとわたしに片思いをしていたのね。
亮平:ちょっと待って。俺別に理子のこと好きじゃないよ。
理子:いいじゃん。そういう設定なの。
亮平:いや、そういう設定とか言ってるからリアリティが無くなるんだって。ちゃんと本当のことじゃないと。
理子:じゃあさ、わたしのこと嫌い?
亮平:いや、別に嫌いじゃないよ。
理子:わたしのいいところって思いつく?
亮平:え?理子のいいところ?う~ん・・・。
理子:ちょっと!いろいろあるでしょ!可愛いとか、優しいとか。
亮平:あ!あった。
理子:なになに?
亮平:すっげー食うのにその割に太ってないよね。
理子:・・・それだけ?
亮平:う~ん・・・、それくらいかなぁ。
理子:そう・・・。言いたいことはたくさんあるけど、この際いいや。
亮平:そか。
理子:いい?よく考えて。いっぱい食べるってことは、健康ってことよね?
亮平:・・・まあそうだね。
理子:健康ってことは元気で明るいイメージよね?
亮平:うん・・・そうだね。
理子:あと、太ってないってことは、スタイルがいいってことよね?
亮平:え?
理子:スタイルの悪い子は?
亮平:太ってる。
理子:スタイルのいい子は?
亮平:太ってない。
理子:太ってない子は?
亮平:スタイルいい!
理子:そう!スタイルいい!
亮平:おお!スタイルいい!
理子:つまりわたしは、元気で明るくてその上スタイルも抜群。
亮平:なにそれ?最高じゃん!
理子:そうなの。そんな子と小さい頃からずっと一緒にいたら?
亮平:好きにならないわけがない。
理子:そう!正解。つまり亮平は昔からわたしのことが好きなわけね。
亮平:なるほど。で?
理子:でもその想いをずっと伝えられずにいたの。
亮平:なんで?
理子:それはわたしに他に好きな人がいることを知っていたから。
亮平:え?理子、お前好きな奴いるの?
理子:いないよ。
亮平:じゃあダメじゃん。
理子:そういう設定なの。
亮平:だから、設定じゃリアリティがないって何度も言ってるじゃん。
理子:だって、本当にいないんだからしょうがないじゃん。
亮平:アイドルとかは?あ、俳優でもいいや。好きな芸能人とかいないの?
理子:う~ん、芸能人かぁ。あんまり知らないからなぁ。
亮平:一人くらいいるだろ。ちょっと気になるとかでもいいから。
理子:じゃあ・・・、福山とか?
亮平:福山?だいぶおっさんだなぁ。まあいいや。
亮平:小さい頃から憧れてたっていうんならそれくらいの方が都合がいいし。
理子:どういうこと?
亮平:理子はちっちゃい頃から福山のこと知ってるでしょ?
理子:うん。
亮平:あんまり芸能人を知らない理子が、でも、ちっちゃい頃から福山だけは知ってる。それはなぜでしょう?
理子:・・・有名だから?
亮平:違う。それは、初恋だからだ。
理子:ええええ、初恋!?
亮平:そう。ただひとり忘れることのできない男、それが福山なんだ。
亮平:理子は何度も福山を忘れようとした。
亮平:でもテレビで福山を見かけるたびにどうしても忘れられない。
亮平:そしてその事を知っている俺は、ずっと理子のことを応援し続けてきた。
理子:応援?
亮平:そう。(急に真面目に)諦めるなよ。お前の想いはその程度だったのか?芸能人だって同じ人間だろ。
亮平:諦める必要なんかない。諦めずにいればいつか想いが届く日がくるって。
理子:でも・・・。
亮平:大丈夫。いつでも俺が応援してるから。な?
理子:亮平・・・、ありがと。わたし頑張る。
亮平:ああ、頑張れ。
理子:そう言いながら、自分の気持ちを心の奥に押し隠して苦悩し続ける亮平。
亮平:理子が、あいつが幸せになってくれれば、俺はそれでいいんだ。俺はそれで幸せだ・・・。
理子:そんなある日、福山結婚のニュースが飛び込んでくる。
亮平:コンコン、・・・理子?いるか?
理子:・・・・・・。
亮平:・・・入るぞ。ガチャ、ギー、バタン。理子・・・、その・・・。
理子:綺麗な人だね。
亮平:え?
理子:やっぱりさ、女優さんは有利だよね。仕事で会えるんだもん。
亮平:・・・・・・。
理子:わかってたけどさ。・・・やっぱり辛いね。
亮平:理子、その・・・、なんて言えばいいか・・・。
理子:大丈夫。・・・大丈夫だから、・・・今は、ひとりにさせて・・・。
亮平:・・・・・・。
理子:ごめんね・・・。
亮平:・・・理子、ごめん。俺、最低な奴だ。
理子:え?
亮平:俺、福山結婚のニュース見て、その瞬間、ほんの一瞬だけど喜んじまった。
理子:・・・どういうこと?
亮平:今までずっと理子のこと応援してるって言ってたけど、これが俺の本音なんだって思い知った。
理子:・・・なにそれ?わたしのこと馬鹿にしてたの?
亮平:いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。聞いてくれ。
理子:いや!聞きたくない!ずっと信じてたのに。亮平のこと信じてたのに!
理子:裏ではわたしのこと馬鹿な女だってずっと笑ってたんでしょ!もういや・・・。
亮平:違うんだ。聞いてくれ、理子。
理子:いや!もう帰って!帰ってよ!
亮平:俺はお前が好きなんだよ!
理子:・・・え?
亮平:俺は・・・、理子が好きだ。
理子:え?うそ・・・。
亮平:嘘じゃない。
理子:だって、そんな素振り一度も・・・。
亮平:ずっと隠してきたからな。
理子:なんで・・・。
亮平:理子が本気で福山のこと好きだって知ってたから。
理子:・・・・・・。
亮平:だから俺は、本気で理子の気持ちを応援しようって決めた。決めた、つもりだった・・・。でも・・・。
亮平:このニュースを見たら理子が悲しむってわかってるのに、俺は一瞬喜んだ。本当に最低な奴だ。
亮平:俺の応援なんてしょせん上辺だけのものだったんだよ。ほんと自分が嫌になった。・・・ごめんな、理子。
理子:・・・そんなことない。そんなことないよ。亮平が応援してくれなかったら、わたしとっくに諦めてた。
理子:福山のこと諦めようとしたわたしを、何度も引き留めてくれたのは亮平じゃん。
理子:今日まで福山のことを好きでいられたのは亮平がいたからだよ。
理子:・・・そりゃ、結婚のことを知ったときはすごい辛くて悲しくて、本当に苦しかったけど、
理子:でもさ、それって、それだけ本気の恋をしてたってことじゃん。
亮平:理子・・・。
理子:そんな素敵な恋の思い出を亮平はわたしにくれたんだよ。
理子:良平がいたからこんなに素敵な思い出にできたんだよ。だから、ありがとう、亮平。
亮平:理子、俺・・・。
理子:ねえ、さっきの、もう一度言ってみて。
亮平:え?さっきのって・・・。
理子:亮平の気持ち、もう一度、言って。
亮平:・・・俺、理子のことが好きだ。
理子:ありがと。・・・亮平、わたしも、亮平のことが好きみたい。
亮平:え?
理子:今までずっと側で見守ってくれてありがと。
理子:今更だけど、わたしにとって亮平は、とても大切な人だって気づいたの。
亮平:理子・・・。
理子:亮平にはいっぱい辛い思いさせちゃったね。全然気づかなくてごめんね。
亮平:ううん。俺が隠してたんだから理子は謝らなくていいよ。
亮平:理子、俺もう自分の気持ちを偽らない。俺は理子が好きだ。とても大切に思ってる。
亮平:だから、俺と付き合ってくれ。
理子:亮平・・・。うん!こちらこそ、よろしくお願いします。
0:亮平、理子を抱きしめる。
亮平:・・・・・・。
理子:・・・・・・。
亮平:・・・どう?
理子:・・・ん?
亮平:・・・キュンとした?
理子:・・・した。・・・リアリティはあった?
亮平:・・・少なくとも、俺の気持ちに、嘘は無かったかな・・・。
理子:そっか・・・。
亮平:うん・・・。
理子:・・・・・・。
亮平:・・・で、これって、いつ終わんの・・・?
理子:終わりにしたいの?
亮平:いや、そういうわけじゃないけど・・・。
理子:・・・じゃあさ、もう一回言って。
亮平:もう一回?
理子:うん・・・。
亮平:・・・好きだよ。
理子:・・・えへへ。
亮平:なに?
理子:ううん、別にぃ。
亮平:満足?
理子:う~ん、どうかな~。
亮平:なんだよそれ。
理子:・・・じゃあさ、また別のパターンでも考えてみる?
亮平:別のって、どんなの?
理子:そうね。なんか次はちょっと古風で奥ゆかしいのも良くない?
亮平:例えば?
理子:例えば、静かな夜。縁側(えんがわ)に座って二人で夜空を眺めてる。
理子:空には大きな満月が出ていて、それを見た亮平がこう言うの。
理子:『今夜は月が綺麗ですね』って。
0:おわり
0:亮平の部屋
理子:好きって言ってよ。
亮平:・・・え?
理子:愛してるって言って。
亮平:えっと・・・、理子さん?
理子:わたしのこと愛してるって言ってよ。
亮平:どうした?急に。
理子:どうしたもこうしたもないよ。わたし、亮平に一度も好きって言われたことない。
亮平:うん。言ったことないね。
理子:なんでよ。なんで一度も好きって言ってくれないの?
亮平:え?何?理子は俺に好きって言ってもらいたいの?
理子:当たり前でしょ!わたしだって女の子なんだから。
亮平:当たり前なの?
理子:当たり前よ。
亮平:そっか。
理子:そうよ。
亮平:ごめん。
理子:わかってくれればいいのよ。
亮平:うん・・・。
理子:じゃあ、はいどうぞ。
亮平:え?
理子:え?じゃないでしょ。なんにもわかってないじゃない。
亮平:うん、いや、その前にちょっと確認したいんだけどさ。
理子:なに?
亮平:俺たち友達だよね?
理子:友達だよ。
亮平:それ以上でもそれ以下でもないよな?
理子:何が言いたいの?
亮平:いやその・・・、恋愛感情とかないよね?
理子:わたしと亮平が?ありえないでしょ。
亮平:だよね?
理子:当たり前でしょ。何言ってるの。
亮平:ええええええ~、わっかんねぇ~。
理子:なにが?
亮平:いやいやいや、だって恋人でもないし好きでもないんだよ?
理子:そうだよ。
亮平:なんで好きって言うの?
理子:は~、これだからあんたは一生彼女ができないのよ。
亮平:おい、ちょっと待て。
理子:いい?女子っていうのはね、常にキュンキュンするような台詞を求めている生き物なのよ!
理子:キュン要素が不足してくるとイライラしてくるし気持ちも落ち込むし、お肌も荒れてくるの。
理子:女子にとってキュン要素は生命維持に欠かせない栄養素のひとつなのよ!!
理子:そんなこともわからないから亮平は一生独り者なのよ!!!
亮平:ガーン!そうだったのか!
理子:わかった?わかったら早くわたしのことを愛してると言いなさい。
亮平:はい、わかりました。だがその前に、『一生彼女できない』の一言は取り消せ。
理子:ごめんなさい、30歳過ぎたら魔法使いになる亮平。
亮平:お前、喧嘩売ってんだろ?
理子:違うよ。哀れんでるの。
亮平:くそっ!だがな、残念ながら俺にも彼女くらいいたことありますぅ~。
理子:な、なんですってぇ!!そ、そんな、馬鹿なあぁぁぁ!!!
亮平:おい、そんな劇画タッチで驚くほどのことじゃないだろ。
理子:それで、一体どんな動物と付き合ったの?
亮平:アホか!人だ人!
理子:人!?そんな・・・、まさか・・・。
亮平:どういう驚きなんだよ・・・。まあ、とは言っても、今まで付き合ったの一人だけだけど。
理子:いや、だって亮平なんか彼女できたら絶対アホヅラ下げてわたしに自慢しに来ると思ってた。
亮平:お前はいったい俺をどんな目で見てんだ。
理子:哀れみの目?
亮平:ふざけんな!
理子:というか、亮平に彼女がいたかどうかなんてこの際どうでもいいから、早く言ってよ。
亮平:お前、ホント最悪だな。
理子:早く~、言ってよ~
亮平:はいはい、わかったよ。うるせ~な~。で?好きって言えばいいの?
理子:そう。心を込めてね。
亮平:あのやりとりの後に心を込めて言えるか?しかも好きでもないのに。
理子:いいからいいから。
亮平:くっ、ほんと最悪だな・・・。えー、・・・好きだよ。
理子:は?
亮平:え?
理子:告白なめんなよ。
亮平:え?
理子:告白舐めんなって言ってんだよ。
亮平:いやいやいや、え?なにがいけなかったの?
理子:全て。顔から何からすべて。
亮平:おい、顔はしょうがねえだろ!
理子:百歩譲って顔は仕方ないにしても。
亮平:酷い言われようだな。
理子:まず名前を呼ばないのがありえない。
亮平:え?
理子:まずは名前でしょ!優しく名前を呼ばれてドキっとして、そこに好きだよの直球!
理子:これだよこれ!これがキュンポイントでしょ!!
亮平:知らないよそんなの。
理子:ああ~、なんでわからないかなぁ。だから男子はダメなんだよ。
亮平:・・・すみません。
理子:はい、じゃあもう一回行くよ。亮平が理子に告白するシーンから。スタンバイ!
亮平:え?
理子:はい、3、2、1、スタート!
亮平:え、あ、えっと・・・、理子・・・。
理子:なに?
亮平:好きだよ・・・。
理子:・・・・・・はいカット!う~ん、なんか違うんだよなぁ。
亮平:ええ~、結構うまく言えたと思ったんだけどなぁ。
理子:まあ1回目よりは良くなったと思う。やっぱり名前を呼ぶのは大きいね。うん。
理子:でもね、こんなんじゃまだまだわたしをキュンキュンさせることはできない。
亮平:めんどくせ~な~。
理子:今なんて言った?
亮平:えっと、がんばりて~な~って言いました!
理子:よろしい。今後も励むように。
亮平:はい。
理子:う~ん、なんだろ。台詞がいけなかったのかな?短いし単純すぎた?
亮平:いやでも、さすがに愛してるとかは、ちょっと嫌だよ。
理子:なんで?
亮平:いや、さすがにちょっと、恥ずかしいかなって。
理子:顔が?
亮平:顔じゃねえよ!
理子:でもまあ、そうね。愛してるは知性的な男じゃないと似合わないしね。
亮平:おい。
理子:シチュエーションが必要なのかも。今のは突然だし、いつどこで告白されたのかもわからないし。
亮平:確かにシチュエーションは大事かもね。
理子:よし、じゃあここはイギリスの古城(こじょう)近くの湖のほとりにしよう。
亮平:えらくあり得ない場所に飛んだな。
理子:恋人が亡くなって悲しみに暮れているわたしに、子爵(ししゃく)の一人息子である亮平が声をかける。
亮平:それはもう完全に俺じゃないけどね。
理子:じゃあ、良平の台詞は~、こんな感じで~。(紙に書いている)
亮平:え?さすがにそれは変じゃない?
理子:変じゃないよ。これくらいの方がロマンチックなんだから。
亮平:そうかなぁ?
理子:で、こう来て、こうっと。よし、できた。はい、この通りに言ってよ。
亮平:うん、まあ、わかったけど。
理子:はい、じゃあテスト行きまーす。良ければそのままもらっちゃいますんで本意気(ほんいき)で願いします。
理子:それでは、テストスタンバイ!3、2、1、アクション!
理子:・・・ああ、ケンジ、どうして私を残して逝ってしまったの・・・、うぅ・・・。
亮平:これで涙を拭いてください、マドモアゼル。
理子:!?あなたは・・・?
亮平:失礼。ボンジュール、マドモアゼル。ぼくはそこの古城に住む子爵の亮平と言います。
亮平:いつものようにこの湖まで散歩に来たら、とても綺麗なご婦人を見掛けたのでつい・・・。
理子:そうでしたか。あ、ハンカチ、ありがとうございます。
亮平:この湖のほとりから見える景色。
理子:え?
亮平:ぼくはこの景色がとても好きでね。夕日に照らされて柔らかいオレンジ色に染まる世界。
亮平:頬(ほほ)をくすぐる風がさざ波を起こし、湖面(こめん)をキラキラと輝かす。素晴らしいと思いませんか?
理子:・・・ええ。そうですね。とても綺麗。
亮平:ぼくは、今までこの景色が世界で一番好きだったんです。
理子:今まで?
亮平:そう、きみに会うまでは。きみはぼくの世界を一変してしまった。
亮平:もうきみの居ない世界は考えられない。この想い、君に伝えたい。
亮平:理子、僕は君が好きだ。
理子:・・・はいカット!!!いただきました!!!
亮平:いや、おかしいだろ!ツッコミどころが多すぎるって!!
理子:いや~良かったよ、亮平くん!きみなかなかやるじゃない!
亮平:いやいやいや、この台本おかしすぎるだろ。
理子:え~?どこが?
亮平:色々急展開すぎ!出会って3分も経ってないから!
理子:恋に時間は関係ないのよ。
亮平:そうかもしれないけど。あと、なんで理子の名前知ってるんだよ?そこは完全におかしいでしょ。
理子:うっさいなぁ。そういう細かいディテールはいいの。大事なのはキュンキュンするかどうかなの。
理子:それ以外は整合性があろうがなかろうがどうだっていいんだよ。
亮平:いいや、納得いかん。どうせやるなら俺も納得できるやり方でやりたい。
理子:めんどくせ~な~。
亮平:何か言った?
理子:えっと、そいつはい~な~って言いました。
亮平:そう。よし、じゃあ一緒に考えよう。
理子:ええ~、でも今のはかなり良かったと思うんだけどなぁ。
亮平:ダメ。全然ダメ。リアリティがなさすぎ。
理子:そう?
亮平:だいたい、子爵の息子亮平ってなんだよ。何人(ナニジン)なんだよ俺。そこからわかんねえよ。
理子:ぶぅ。
亮平:はい、そこ。ブーたれない。いい、こういうのは役割分担が大事だと思うんだよね。
亮平:で、俺には理子のキュンポイントはわからないから、原案は理子の担当ね。
理子:うん。
亮平:で、俺はそれがリアリティのあるものかどうかを判断する。つまり添削(てんさく)ってこと。
亮平:まずは理子が自由に発想していいから、こういうシチュエーションていうのをあげてみ。
理子:えーと、じゃあ、二人の男性から告白されて・・・。
亮平:はい却下。
理子:えー、なんで?
亮平:ここには男は一人しかいません。だから無理です~。
理子:ぶぅ。
亮平:はい、そこ。ブーたれない。
理子:じゃあ、大金持ちの御曹司に見初(みそ)められて・・・。
亮平:はい却下。
理子:えー、なんで?今度は一人だよ。
亮平:俺んちはお金持ちじゃない。つまりそれは俺じゃな~い。
理子:ぶぅ。
亮平:はい、そこ。ブーたれない。
理子:えーと、じゃあもう相手は亮平で考えないといけないわけね?
亮平:え?なに?いやなの?やめてもいいんだよ?俺は。
理子:わかったよ。亮平で我慢するよ。
亮平:ホント俺の扱いひどいな。
理子:うーんと、じゃあ、幼馴染の設定で。
亮平:おお、それなら本当だからいいんじゃない?
理子:で、亮平はずっとわたしに片思いをしていたのね。
亮平:ちょっと待って。俺別に理子のこと好きじゃないよ。
理子:いいじゃん。そういう設定なの。
亮平:いや、そういう設定とか言ってるからリアリティが無くなるんだって。ちゃんと本当のことじゃないと。
理子:じゃあさ、わたしのこと嫌い?
亮平:いや、別に嫌いじゃないよ。
理子:わたしのいいところって思いつく?
亮平:え?理子のいいところ?う~ん・・・。
理子:ちょっと!いろいろあるでしょ!可愛いとか、優しいとか。
亮平:あ!あった。
理子:なになに?
亮平:すっげー食うのにその割に太ってないよね。
理子:・・・それだけ?
亮平:う~ん・・・、それくらいかなぁ。
理子:そう・・・。言いたいことはたくさんあるけど、この際いいや。
亮平:そか。
理子:いい?よく考えて。いっぱい食べるってことは、健康ってことよね?
亮平:・・・まあそうだね。
理子:健康ってことは元気で明るいイメージよね?
亮平:うん・・・そうだね。
理子:あと、太ってないってことは、スタイルがいいってことよね?
亮平:え?
理子:スタイルの悪い子は?
亮平:太ってる。
理子:スタイルのいい子は?
亮平:太ってない。
理子:太ってない子は?
亮平:スタイルいい!
理子:そう!スタイルいい!
亮平:おお!スタイルいい!
理子:つまりわたしは、元気で明るくてその上スタイルも抜群。
亮平:なにそれ?最高じゃん!
理子:そうなの。そんな子と小さい頃からずっと一緒にいたら?
亮平:好きにならないわけがない。
理子:そう!正解。つまり亮平は昔からわたしのことが好きなわけね。
亮平:なるほど。で?
理子:でもその想いをずっと伝えられずにいたの。
亮平:なんで?
理子:それはわたしに他に好きな人がいることを知っていたから。
亮平:え?理子、お前好きな奴いるの?
理子:いないよ。
亮平:じゃあダメじゃん。
理子:そういう設定なの。
亮平:だから、設定じゃリアリティがないって何度も言ってるじゃん。
理子:だって、本当にいないんだからしょうがないじゃん。
亮平:アイドルとかは?あ、俳優でもいいや。好きな芸能人とかいないの?
理子:う~ん、芸能人かぁ。あんまり知らないからなぁ。
亮平:一人くらいいるだろ。ちょっと気になるとかでもいいから。
理子:じゃあ・・・、福山とか?
亮平:福山?だいぶおっさんだなぁ。まあいいや。
亮平:小さい頃から憧れてたっていうんならそれくらいの方が都合がいいし。
理子:どういうこと?
亮平:理子はちっちゃい頃から福山のこと知ってるでしょ?
理子:うん。
亮平:あんまり芸能人を知らない理子が、でも、ちっちゃい頃から福山だけは知ってる。それはなぜでしょう?
理子:・・・有名だから?
亮平:違う。それは、初恋だからだ。
理子:ええええ、初恋!?
亮平:そう。ただひとり忘れることのできない男、それが福山なんだ。
亮平:理子は何度も福山を忘れようとした。
亮平:でもテレビで福山を見かけるたびにどうしても忘れられない。
亮平:そしてその事を知っている俺は、ずっと理子のことを応援し続けてきた。
理子:応援?
亮平:そう。(急に真面目に)諦めるなよ。お前の想いはその程度だったのか?芸能人だって同じ人間だろ。
亮平:諦める必要なんかない。諦めずにいればいつか想いが届く日がくるって。
理子:でも・・・。
亮平:大丈夫。いつでも俺が応援してるから。な?
理子:亮平・・・、ありがと。わたし頑張る。
亮平:ああ、頑張れ。
理子:そう言いながら、自分の気持ちを心の奥に押し隠して苦悩し続ける亮平。
亮平:理子が、あいつが幸せになってくれれば、俺はそれでいいんだ。俺はそれで幸せだ・・・。
理子:そんなある日、福山結婚のニュースが飛び込んでくる。
亮平:コンコン、・・・理子?いるか?
理子:・・・・・・。
亮平:・・・入るぞ。ガチャ、ギー、バタン。理子・・・、その・・・。
理子:綺麗な人だね。
亮平:え?
理子:やっぱりさ、女優さんは有利だよね。仕事で会えるんだもん。
亮平:・・・・・・。
理子:わかってたけどさ。・・・やっぱり辛いね。
亮平:理子、その・・・、なんて言えばいいか・・・。
理子:大丈夫。・・・大丈夫だから、・・・今は、ひとりにさせて・・・。
亮平:・・・・・・。
理子:ごめんね・・・。
亮平:・・・理子、ごめん。俺、最低な奴だ。
理子:え?
亮平:俺、福山結婚のニュース見て、その瞬間、ほんの一瞬だけど喜んじまった。
理子:・・・どういうこと?
亮平:今までずっと理子のこと応援してるって言ってたけど、これが俺の本音なんだって思い知った。
理子:・・・なにそれ?わたしのこと馬鹿にしてたの?
亮平:いや、そうじゃない。そうじゃないんだ。聞いてくれ。
理子:いや!聞きたくない!ずっと信じてたのに。亮平のこと信じてたのに!
理子:裏ではわたしのこと馬鹿な女だってずっと笑ってたんでしょ!もういや・・・。
亮平:違うんだ。聞いてくれ、理子。
理子:いや!もう帰って!帰ってよ!
亮平:俺はお前が好きなんだよ!
理子:・・・え?
亮平:俺は・・・、理子が好きだ。
理子:え?うそ・・・。
亮平:嘘じゃない。
理子:だって、そんな素振り一度も・・・。
亮平:ずっと隠してきたからな。
理子:なんで・・・。
亮平:理子が本気で福山のこと好きだって知ってたから。
理子:・・・・・・。
亮平:だから俺は、本気で理子の気持ちを応援しようって決めた。決めた、つもりだった・・・。でも・・・。
亮平:このニュースを見たら理子が悲しむってわかってるのに、俺は一瞬喜んだ。本当に最低な奴だ。
亮平:俺の応援なんてしょせん上辺だけのものだったんだよ。ほんと自分が嫌になった。・・・ごめんな、理子。
理子:・・・そんなことない。そんなことないよ。亮平が応援してくれなかったら、わたしとっくに諦めてた。
理子:福山のこと諦めようとしたわたしを、何度も引き留めてくれたのは亮平じゃん。
理子:今日まで福山のことを好きでいられたのは亮平がいたからだよ。
理子:・・・そりゃ、結婚のことを知ったときはすごい辛くて悲しくて、本当に苦しかったけど、
理子:でもさ、それって、それだけ本気の恋をしてたってことじゃん。
亮平:理子・・・。
理子:そんな素敵な恋の思い出を亮平はわたしにくれたんだよ。
理子:良平がいたからこんなに素敵な思い出にできたんだよ。だから、ありがとう、亮平。
亮平:理子、俺・・・。
理子:ねえ、さっきの、もう一度言ってみて。
亮平:え?さっきのって・・・。
理子:亮平の気持ち、もう一度、言って。
亮平:・・・俺、理子のことが好きだ。
理子:ありがと。・・・亮平、わたしも、亮平のことが好きみたい。
亮平:え?
理子:今までずっと側で見守ってくれてありがと。
理子:今更だけど、わたしにとって亮平は、とても大切な人だって気づいたの。
亮平:理子・・・。
理子:亮平にはいっぱい辛い思いさせちゃったね。全然気づかなくてごめんね。
亮平:ううん。俺が隠してたんだから理子は謝らなくていいよ。
亮平:理子、俺もう自分の気持ちを偽らない。俺は理子が好きだ。とても大切に思ってる。
亮平:だから、俺と付き合ってくれ。
理子:亮平・・・。うん!こちらこそ、よろしくお願いします。
0:亮平、理子を抱きしめる。
亮平:・・・・・・。
理子:・・・・・・。
亮平:・・・どう?
理子:・・・ん?
亮平:・・・キュンとした?
理子:・・・した。・・・リアリティはあった?
亮平:・・・少なくとも、俺の気持ちに、嘘は無かったかな・・・。
理子:そっか・・・。
亮平:うん・・・。
理子:・・・・・・。
亮平:・・・で、これって、いつ終わんの・・・?
理子:終わりにしたいの?
亮平:いや、そういうわけじゃないけど・・・。
理子:・・・じゃあさ、もう一回言って。
亮平:もう一回?
理子:うん・・・。
亮平:・・・好きだよ。
理子:・・・えへへ。
亮平:なに?
理子:ううん、別にぃ。
亮平:満足?
理子:う~ん、どうかな~。
亮平:なんだよそれ。
理子:・・・じゃあさ、また別のパターンでも考えてみる?
亮平:別のって、どんなの?
理子:そうね。なんか次はちょっと古風で奥ゆかしいのも良くない?
亮平:例えば?
理子:例えば、静かな夜。縁側(えんがわ)に座って二人で夜空を眺めてる。
理子:空には大きな満月が出ていて、それを見た亮平がこう言うの。
理子:『今夜は月が綺麗ですね』って。
0:おわり