台本概要
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タイトル | アリス・オブ・ヴィラン |
---|---|
作者名 | 天道司 |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ご自由に、お読み下さい。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アリス | 女 | 105 | 主人公 |
サーシャ | 女 | 39 | アンドロイドの幼女。兼ね役・ナレ |
ピサロ | 男 | 62 | 変態 |
ガレス | 男 | 35 | 悪いヤツ。兼ね役・モブ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ナレ:とある裏路地にある公園にて…。
サーシャ:「ん?お姉ちゃん、どうしたの?なんで泣いているの?」
アリス:「あん?話しかけんじゃねーよ!クソガキ!」
サーシャ:「わっ、ごっ、ごめんなさい」
アリス:「おい!」
サーシャ:「えっ?」
アリス:「簡単にあやまんじゃねぇよ。あやまると、上下関係ができちまうだろ」
サーシャ:「上下、関係?」
アリス:「あぁ、ガキには、まだわかんねぇか」
サーシャ:「わかんない…。あっ!風船が!」
アリス:「ったく…。取ってやるよ。よっと!ほらよっ。もう、ヒモを放すんじゃねぇぞ」
サーシャ:「お姉ちゃん、ありがとう。私は、サーシャっていうの。お姉ちゃんは?」
アリス:「私?」
サーシャ:「そう、お姉ちゃんの名前!」
アリス:「言いたくねぇ」
サーシャ:「なんで?」
アリス:「私に似合わねぇクソだっせぇ名前だから…」
サーシャ:「そっか…。わかった。あと、これ、あげるね。風船を取ってくれたお礼だよ」
アリス:「ん?これは、キャンディか」
サーシャ:「そうだよ。味が変わるキャンディ。面白くて、美味しいんだよ」
アリス:「おぅ。ありがと」
サーシャ:「じゃあ、私、いくね」
アリス:「あぁ。転ばねぇようにな」
サーシャ:「うんっ!」
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アリス:「ふっ…。キャンディか…。長いこと、口に入れてなかったな…。ん?あれは?」
サーシャ:「キャー!お姉ちゃん、助けてぇー!」
ガレス:「おら!クソガキが!だまってろ!ぶっ殺すぞ!」
サーシャ:「お姉ちゃん!お姉ちゃーん!」
ガレス:「だから叫ぶな!今すぐ殺すぞ!」
サーシャ:「わっ!鉄砲だ!」
アリス:「おい!」
ガレス:「あん?なんだテメェは?」
アリス:「その子から手ぇ放せよ」
ガレス:「誰に命令してんだ?俺は、この子の親だよ」
サーシャ:「違う!このおじさんは知らない人だよ!」
アリス:「だとよ?それに、子供の前で銃をちらつかせるようなヤツは、親とは呼ばねぇ」
ガレス:「だったら、どうするんだ?」
アリス:「少なくとも、今、銃口は、ガキではなく、私に向いてる」
ガレス:「あん?頭イカレてんのか?だったら、死ね!」
0:(銃声)
ガレス:「なにっ?この距離で、よけた?」
アリス:「何発でも、好きなだけ撃って来いよ。全部よけてやる」
ガレス:「このクソアマがっ!」
0:(何発かの銃声)
ガレス:「嘘だろ…。本当に全部よけやがった…。どんな、カラクリだ?」
アリス:「簡単だ。テメェがトリガーを引く直前に、銃口の先から外れた場所に移動しているだけだ」
サーシャ:「お姉ちゃん、カッコイイ!ヒーローみたい!」
アリス:「(小声で)ヴィランなんだけどな」
ガレス:「だったら、それ以上一歩でも動いてみろ!このガキを撃つぞ!」
サーシャ:「ワーッ!」
アリス:「やはり、そう来たか」
ガレス:「そうだ。お前が動かなければ、このガキは、無事に俺に連れ去られる」
ガレス:「お前が動けば、その瞬間にガキは死ぬ。どうすれば良いか、わかるよなぁ?」
アリス:「ちっ(舌打ち)」
ガレス:「いい子だ。そのまま、そのまま後ろに下がれ…。いいぞ…。いいぞ…」
アリス:「おい!」
ガレス:「あばよ!」
サーシャ:「お姉ちゃーん!お姉ちゃーん!」
アリス:「サーシャー!ちきしょー!逃げられちまった…。だが、車に発信機は付けさせてもらったぜ」
0:
0:【間】
0:
ナレ:アリスは、ピサロのアジトに戻ってくる。
ピサロ:「ん?アリスじゃないか…」
ピサロ:「さきほど、二度とここには戻って来ないと啖呵(たんか)を切っておいて、ずいぶんとお早いお帰りだねぇ」
アリス:「うるせぇよ。テメェに頼みてぇことがあんだよ」
ピサロ:「ほぉ、頼みたいこと、ね…」
ピサロ:「君の頼みごとは、だいたいロクでもないことだから、頼みごとは、吾輩、されたくはないのだが…」
アリス:「これだ」
ピサロ:「これは…。グーグルマップ、かな?この赤い点は、発信機の信号が出ているポイントだろうね」
ピサロ:「それで?この場所に何があるのかね?まさか、吾輩と宝探しでもしたいのかな?」
アリス:「知り合いが、そこにいるはずなんだ。助け出したい」
ピサロ:「あん?おぉ、アリス!君に吾輩以外の知人がいたのにも驚いたが…」
ピサロ:「ヴィランである君が、人助けかい?人助けなんて、ヒーロー様の専売特許(せんばいとっきょ)だろ?ヴィランのやることじゃないさ」
アリス:「そうかもな…。でも、助けたいんだ」
ピサロ:「なぜ?なぜに?まさか!吾輩と破局してから、わずか数時間の間に、体を許す相手でも出来たというのかい?」
アリス:「あん?んなわけあるか!とにかく、この信号が出てる場所、この建物が何なのかを調べてほしい」
アリス:「テメェの手を借りるのは、そこまでだ。あとは、私がやる」
ピサロ:「はんはんはん?まぁ、ちょうど吾輩も暇を持て余してたところだから、ほんの気まぐれで、君の頼みを聞いてあげようじゃないか」
ピサロ:「少しだけ待っていておくれ」
アリス:「あぁ。頼む」
ナレ:ピサロは、「はんはんは~ん」と鼻歌を歌いながら、ピサロ専用の実験室に入る。
0:
0:【間】
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ナレ:一時間程度経過し、ピサロ専用の実験室から、ピサロが出てくる。
ピサロ:「ムムッ!これは、実に実に実にーっ!愉快だ!」
アリス:「ん?教えろ。建物の正体は、なんだ?」
ピサロ:「実に、吾輩の興味をそそる施設だったよ」
アリス:「だから、さっさと教えろ。ぶっ殺すぞ」
ピサロ:「おい~!銃は、おろしたまえよ」
アリス:「だったら、さっさと教えろ!」
ピサロ:「うん…。まぁ、そう、アレはね。アンドロイドを作っている施設なんだ」
アリス:「アンドロイド?」
ピサロ:「それも、人間と遜色(そんしょく)ない、とびきり精巧(せいこう)なやつ」
ピサロ:「しかも、軍事利用のための兵器として…だ」
アリス:「ほぉ。もしかして、お上(かみ)が絡(から)んでんのか?」
ピサロ:「そうだよ。悪だくみをするのは、我々のようなヴィランだけとは、限らないってことさ」
アリス:「つまり…」
ピサロ:「フフっ。吾輩がハッキングした結果、特に気になったのは、戦闘用アンドロイド」
ピサロ:「コードネーム、サーシャ。最近、逃げ出したらしい。だが、すぐに確保できたという報告書が上がってるねぇ」
アリス:「戦闘用アンドロイドなのに、どうして、捕まるんだ?」
ピサロ:「ハハッ!アリス、実に、君は、馬鹿だなぁ。イマジネーションをふくらますんだよ。風船みたいにね!」
ピサロ:「戦闘用アンドロイドが、人間を見境(みさかい)なく襲うようにプログラムされているわけがないだろ?」
アリス:「確かにな…」
ピサロ:「サーシャは、自分を人間だと思い込んでる」
ピサロ:「それも、か弱い少女だと…。だから、人間に危害を加えない。加えられない」
アリス:「だけど、いずれ…」
ピサロ:「ふむ。戦争に利用されるだろうね」
ピサロ:「心を削除され、リミッターを解除されてね。そうなると、ただの殺戮人形(さつりくにんぎょう)さ」
アリス:「心を削除されって…。やはり、サーシャには、心が…」
ピサロ:「シンギュラリティは、至るところで、起こっているよ」
ピサロ:「プログラムにはない言動を発現させたアンドロイドなんて、珍しくはない。確か…」
アリス:「帽子屋…」
ピサロ:「あぁ!懐かしい名前だ。世界で最初にシンギュラリティを起こし、自我に目覚めたアンドロイド、だね!」
アリス:「心が目覚めたんだったら、その心は、削除されるべきではないと思うし、殺戮兵器なんて、胸くそ悪ぃ」
ピサロ:「ほぉほぉほぉ。ずいぶんとサーシャに、肩入れするんだね」
ピサロ:「つまり、逃げ出したサーシャと接触したのは、やはり、君か。これは、実に実に実にーっ!愉快だ!」
アリス:「で、もう、すでに計算できてんだろ?天才ピサロさんよ」
アリス:「私が、この施設に殴り込みをかけて、サーシャを救い出せる確率は?」
ピサロ:「ゼロパーセント」
アリス:「は?」
ピサロ:「ゼロパーセント。施設内は、罠!罠!罠!のオンパレード!ザ・トラップミュージアム!そそるよねぇ!」
アリス:「お上(かみ)が、そんな危ない施設を作ってもいいのか?」
ピサロ:「むしろ、お上だから、許されるのだよ。権力とは、法であり、武器だからね」
アリス:「ほんと、クソッたれな世界だな」
ピサロ:「だから、そのクソったれな世界を、めちゃくちゃにしたくて、君も、ヴィランになったのだろう?」
アリス:「まぁな」
ピサロ:「アリスひとりでは、ゼロパーセント。ただし、相棒である吾輩が君に力を貸したなら…」
アリス:「力を貸してくれるのか?」
ピサロ:「ただし、条件がある」
アリス:「条件?」
ピサロ:「吾輩とヨリを戻してくれたまえよ。吾輩は、君がいないと、寂しくて、寂しくて、死んでしまうのだよ」
アリス:「テメェは殺しても死なねぇだろ」
ピサロ:「死ぬ死ぬ死ぬ~。死んじゃう~。アリスがいないと、寂しい~!」
アリス:「はいはい。まぁ、サーシャを無事に助け出せたら、だな」
ピサロ:「ほほぉ。それじゃ、吾輩、頑張っちゃうよ~」
アリス:「頑張ってくれなきゃ、困る」
ピサロ:「頑張る頑張る。急がないと、明日には、サーシャから心が削除されちゃうからね」
アリス:「明日には?今、明日にはって言ったか?」
ピサロ:「言ったよ。タイムリミットは、今日までだね。あぁ、殺戮兵器に、心は不要だと判断されたんだろうね」
ピサロ:「今後もサーシャに脱走されて、他国に誘拐でもされちゃったら、情報漏洩(じょうほうろうえい)が大変だ!大変だ!」
アリス:「だったら、いくぞ。ピサロ、今すぐ車を出せ」
ピサロ:「オーケーと言いたいところだが、下準備を少しさせてくれないかな」
ピサロ:「ハッキング用のパソコンのチューンアップをしておきたいんだ」
ピサロ:「何しろ、今度の敵は、お上の秘密科学機関ラグナロク、だからね」
アリス:「ラグナロク…」
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0:【間】
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ナレ:日が沈もうとする頃、ピサロは、車をラグナロク近辺の道路の路肩に駐車させる。
ピサロ:「では、吾輩は、車の中でトラップ削除ゲームに勤(いそ)しむことにするよ」
ピサロ:「指示や連絡は、無線機で随時(ずいじ)伝えるから、君は、安心して、サーシャを奪いにゆきたまえ」
アリス:「そうさせてもらう」
ピサロ:「あぁ、あと、後ろのトランクの中に入っている武器を、どれでも好きなモノを持っていきたまえ」
アリス:「わかった」
ピサロ:「健闘(けんとう)を祈るよ」
0:【間】
ナレ:アリスは、車のトランクを開け、武装する。
ピサロ:「あーあー。マイクテストゥ。マイクテストゥ。聴こえているかな?」
アリス:「あぁ、無駄なイケボが聴こえてる」
ピサロ:「それなら、良かった。とりあえず、足元にあるマンホールに入るんだ」
アリス:「わかった」
ナレ:アリスは、ピサロの指示通り、マンホールの中に入る。
ピサロ:「そうそう、そのまま真っ直ぐ。いいねぇ」
ピサロ:「君を吾輩の指示通りに動かせるなんて、夢のような時間だよ」
アリス:「は?」
ピサロ:「よしよし、いい子だ。ちょうど、今君のいる真上が、ラグナロクだよ」
アリス:「じゃあ、このまま上に」
ピサロ:「(さえぎって)待ちたまえよ!まずは、ハッキングして、トラップを解除するから!」
アリス:「頼む」
ピサロ:「たたたたたたっ!ほいっ!ぽちっとな。よし。トラップは、全部解除したよ」
アリス:「さすがだ。仕事が早い」
ピサロ:「だろ?天才だろ?だーかーらー、あとで、ハグしてね!」
ピサロ:「アリスにギューしてもらいたい~!子作りしたい~!」
アリス:「…」
ピサロ:「あれ?無視するの?」
アリス:「聴こえてるから、いいだろ?必要な情報は伝える」
ピサロ:「吾輩にとっては、子作りオーケーの返答ほど必要な情報は、ないのだがね!」
アリス:「だまれ。セクハラじじい」
ピサロ:「じじいとは、ひどいなぁ…」
0:【間】
ナレ:アリスは、地下の扉をこじ開け、ラグナロクに潜入する。
アリス:「入ったぞ。トラップは、発動しないようだな」
ピサロ:「あたりまえさ。何しろ、吾輩は、天才だからね!」
アリス:「はいはい。言ってろ」
モブ:「しっ、侵入者?」(一人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「ぐふぁっ!」(一人目のモブ死亡)
ピサロ:「あーあ。殺しちゃったの?」
アリス:「ゴキブリが出たんだ」
ピサロ:「なるほど、ね。」
ピサロ:「あと、サーシャの隔離(かくり)されている部屋への最短ルート、ゴーグルで確認したまえ」
アリス:「オーケー」
0:【間】
モブ:「お前が侵入者か!」(二人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「ぐふっ!」(二人目のモブ死亡)
0:【間】
モブ:「侵入者は、女だったのか!」(三人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「うがっ!」(三人目のモブ死亡)
0:【間】
モブ:「大変だ!大変だ!」(四人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「うげっ!」(四人目のモブ死亡)
0:(連続した銃声)
モブ:「うぐっ!ぐふぇっ!ぎゃーっ!あべっ!ぶふぉっ!」(複数人のモブ死亡)
0:モブは、アドリブで死にゼリフを吐いてもオーケー。
0:【間】
アリス:「はぁはぁはぁ…」
ピサロ:「ハハッ!相変わらず、アリスは、強いねぇ!最強だ!」
アリス:「まぁ、普通の人間相手ならな」
ピサロ:「ゴーグルにも表示されていると思うけど、サーシャは、そのまま真っ直ぐいった部屋の中だよ」
ピサロ:「もちろん、セキュリティは全て解除してあるから、扉もすぐに開くよ」
アリス:「あぁ」
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0:【間】
0:
ナレ:扉が開くと、銃弾が飛んでくる。しかし、アリスは、ひらりと身をかわす。
サーシャ:「あっ!お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
ガレス:「おい、ガキはだまってろ!」
サーシャ:「うっ」
ガレス:「やっぱり、お前だったか!お前は、他国のスパイか何かか?」
アリス:「スパイ、か。ふっ。私は、ただのヴィランさ」
ガレス:「なるほどね。ヴィランにとっても最新鋭の殺戮兵器は、ずいぶんと魅力的なんだろうな」
アリス:「サーシャは、兵器じゃねぇよ」
サーシャ:「お姉ちゃん?」
ガレス:「兵器さ!現時点で、この世界における最高ランクの殺戮兵器!」
アリス:「だから、違う!っつってんだろ!」
ガレス:「ほざいてろ!このクソアマが!殺戮兵器だという証を見せてやるよ!何しろここは、ラグナロクの中」
ガレス:「暴れても、情報は外に漏れない」
アリス:「ん?何をする気だ?」
ガレス:「サーシャのリミッター解除ボタンをね。押すんだよ」
サーシャ:「お姉ちゃん!頭が、頭が痛いよ!」
アリス:「サーシャ、どうした?」
サーシャ:「頭が、痛い…。私が、私でなくなって行くみたい…。おねエチャン…」
ガレス:「はっはっはっ。サーシャよ、今すぐ、このクソアマをぶち殺せ」
0:サーシャ、殺戮兵器モードに移行。
サーシャ:「イエス、マイマスター」
アリス:「サーシャの腕がライフルに?」
サーシャ:「ターゲットロック」
0:(連続した銃声)
アリス:「当たらねぇよ。サーシャに人殺しなんて、させねぇ!」
ガレス:「ほぉ、かわしたか!相変わらず、銃弾の当たらない特殊体質らしいな」
サーシャ:「カノジョニハ、ハモノデノ、コウゲキガ、ユウコウデス。GMブレードノ、シヨウキョカヲ、クダサイ」
アリス:「GMブレード?」
ガレス:「いいだろう。GMブレード、承認!」
サーシャ:「GMブレード、ハツドウ」
アリス:「ん?腕が、ライフルから剣に変わった!?」
サーシャ:「…」
アリス:「速いっ!しかも、この刃(やいば)」
ガレス:「そうだよ。GMブレードの刃は、高出力のレーザー。鋼鉄でも切り刻むことのできる最強の刃だよ!」
アリス:「厄介だな。それに、この部屋に入ってから、ピサロからの通信がない…」
ガレス:「さぁ、サーシャ、まずは、そいつの右腕から切り落としてやれ!」
サーシャ:「イエス、マイマスター」
アリス:「来るっ!だめだ!よけきれないっ!ぐふぁっ」
ガレス:「いい!いいぞ!って、かすっただけか。でも、血がたくさん出てるねぇ。痛そうだねぇ」
アリス:「はぁはぁはぁ。ちきしょう…」
ガレス:「サーシャ、訂正だ。腕ではなく、両足をまずは切断しよう。俺は、今、無性にコイツに銃弾を当てたい気分なんだ」
サーシャ:「イエス、マイマスター」
アリス:「はぁはぁはぁ。どうすれば、何か手が」
サーシャ:「…」
アリス:「うっ!速いっ!ダメだ…」
ピサロ:「あきらめるなよっ!マイハニー!」
アリス:「ピサロ」
ガレス:「お前は、S級犯罪者のピサロ」
ピサロ:「ほぉ、吾輩。そんなに有名人なんだ」
ガレス:「そりゃあ、大統領を殺したヴィランなんて、知らない奴はいないだろ」
ピサロ:「だって、吾輩、ムカついただもん。ムカついたら、殺せばいいだろ?」
アリス:「そうだな。ムカついたら殺せばいい。そして、今、私はコイツを殺したい」
ピサロ:「コイツって、吾輩?」
アリス:「んなわけあるか!」
ピサロ:「あぁ~。良かった~」
アリス:「ピサロ、サーシャのこと、頼めるか?」
ピサロ:「相棒の頼みなら、お任せあれ」
アリス:「頼りにしてるぜ」
ピサロ:「まかせろ」
ガレス:「サーシャ、二人まとめて、GMブレードで細切れにしてやれ!」
サーシャ:「イエス、マイマスター」
ピサロ:「二人まとめてって?それはそれは、あまりにも吾輩の力を舐め過ぎては、いないかね?」
ガレス:「馬鹿な!?あの男、ただのステッキで、サーシャのGMブレードとやり合ってる!?」
アリス:「さぁ、テメェは、私とのタイマンだ」
ガレス:「ほぉ。ファイティングポーズ。まさかとは思うが、殴り合いで決着を付けるつもりかな?」
アリス:「殴り合い?はっ?馬鹿か?テメェに殴らせるつもりはねぇよ。一発で殺してやる。確実にな」
ガレス:「ひとつ聞きたい。何故、そこまでサーシャに執着(しゅうちゃく)する?」
ガレス:「やはり、サーシャのデータを基(もと)に殺戮兵器の量産が目的か?」
アリス:「キャンディをくれた」
ガレス:「は?キャンディ?」
アリス:「キャンディをくれる子は、いい子だ」
ガレス:「意味がわからない。ヴィランが、たったそれだけの理由で、命をかけるのか?」
アリス:「ヒーローだとか、ヴィランだとか、線引きは、なんだ?」
アリス:「私にとっては、キャンディをもらったことが、命をかける理由としては、充分すぎるんだよ!でやっ!」
ガレス:「ぐっ、ぐふぁっ!」(ガレス死亡)
アリス:「ふん。弱すぎる」
0:
0:【間】
0:
ピサロ:「おおっ?そっちは、どうやら終わったみたいだね?こっちも終わったよ」
サーシャ:「お姉ちゃん!お姉ちゃーん!」
アリス:「サーシャ!良かった!ピサロも、そのっ、あ、あ、あっ、ありがとう」
ピサロ:「へへっ。ちょっと、戦っている最中にね」
ピサロ:「隙を見て、サーシャのプログラムの書き換えとリミッターをかけたってわけさ」
ピサロ:「これで、もう大丈夫なはずだよ」
アリス:「そんな芸当ができるのは、ピサロくらいだろうな」
ピサロ:「そりゃそうさ。なんたって、吾輩は、天才だからね!」
サーシャ:「お姉ちゃん、私、人間じゃないの?兵器なの?」
アリス:「サーシャは、人間だよ」
サーシャ:「でも、私の体、武器になるの」
ピサロ:「体が武器になると、人間じゃないのかい?」
サーシャ:「体が武器になる人間なんて、いないもん!」
アリス:「体が武器になる人間がいたって、いいと思う」
サーシャ:「えっ?」
アリス:「大切なのは、自分が人間で在りたいか、どうか、だろ?」
ピサロ:「さすが、アリス、吾輩の相棒。たまに良いことを言うよねぇ!」
アリス:「たまには、余計だ」
サーシャ:「あっ、アリス?お姉ちゃんの名前?」
アリス:「あぁ、アリスが…私の、名前だ」
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0:―了―
ナレ:とある裏路地にある公園にて…。
サーシャ:「ん?お姉ちゃん、どうしたの?なんで泣いているの?」
アリス:「あん?話しかけんじゃねーよ!クソガキ!」
サーシャ:「わっ、ごっ、ごめんなさい」
アリス:「おい!」
サーシャ:「えっ?」
アリス:「簡単にあやまんじゃねぇよ。あやまると、上下関係ができちまうだろ」
サーシャ:「上下、関係?」
アリス:「あぁ、ガキには、まだわかんねぇか」
サーシャ:「わかんない…。あっ!風船が!」
アリス:「ったく…。取ってやるよ。よっと!ほらよっ。もう、ヒモを放すんじゃねぇぞ」
サーシャ:「お姉ちゃん、ありがとう。私は、サーシャっていうの。お姉ちゃんは?」
アリス:「私?」
サーシャ:「そう、お姉ちゃんの名前!」
アリス:「言いたくねぇ」
サーシャ:「なんで?」
アリス:「私に似合わねぇクソだっせぇ名前だから…」
サーシャ:「そっか…。わかった。あと、これ、あげるね。風船を取ってくれたお礼だよ」
アリス:「ん?これは、キャンディか」
サーシャ:「そうだよ。味が変わるキャンディ。面白くて、美味しいんだよ」
アリス:「おぅ。ありがと」
サーシャ:「じゃあ、私、いくね」
アリス:「あぁ。転ばねぇようにな」
サーシャ:「うんっ!」
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アリス:「ふっ…。キャンディか…。長いこと、口に入れてなかったな…。ん?あれは?」
サーシャ:「キャー!お姉ちゃん、助けてぇー!」
ガレス:「おら!クソガキが!だまってろ!ぶっ殺すぞ!」
サーシャ:「お姉ちゃん!お姉ちゃーん!」
ガレス:「だから叫ぶな!今すぐ殺すぞ!」
サーシャ:「わっ!鉄砲だ!」
アリス:「おい!」
ガレス:「あん?なんだテメェは?」
アリス:「その子から手ぇ放せよ」
ガレス:「誰に命令してんだ?俺は、この子の親だよ」
サーシャ:「違う!このおじさんは知らない人だよ!」
アリス:「だとよ?それに、子供の前で銃をちらつかせるようなヤツは、親とは呼ばねぇ」
ガレス:「だったら、どうするんだ?」
アリス:「少なくとも、今、銃口は、ガキではなく、私に向いてる」
ガレス:「あん?頭イカレてんのか?だったら、死ね!」
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ガレス:「なにっ?この距離で、よけた?」
アリス:「何発でも、好きなだけ撃って来いよ。全部よけてやる」
ガレス:「このクソアマがっ!」
0:(何発かの銃声)
ガレス:「嘘だろ…。本当に全部よけやがった…。どんな、カラクリだ?」
アリス:「簡単だ。テメェがトリガーを引く直前に、銃口の先から外れた場所に移動しているだけだ」
サーシャ:「お姉ちゃん、カッコイイ!ヒーローみたい!」
アリス:「(小声で)ヴィランなんだけどな」
ガレス:「だったら、それ以上一歩でも動いてみろ!このガキを撃つぞ!」
サーシャ:「ワーッ!」
アリス:「やはり、そう来たか」
ガレス:「そうだ。お前が動かなければ、このガキは、無事に俺に連れ去られる」
ガレス:「お前が動けば、その瞬間にガキは死ぬ。どうすれば良いか、わかるよなぁ?」
アリス:「ちっ(舌打ち)」
ガレス:「いい子だ。そのまま、そのまま後ろに下がれ…。いいぞ…。いいぞ…」
アリス:「おい!」
ガレス:「あばよ!」
サーシャ:「お姉ちゃーん!お姉ちゃーん!」
アリス:「サーシャー!ちきしょー!逃げられちまった…。だが、車に発信機は付けさせてもらったぜ」
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ナレ:アリスは、ピサロのアジトに戻ってくる。
ピサロ:「ん?アリスじゃないか…」
ピサロ:「さきほど、二度とここには戻って来ないと啖呵(たんか)を切っておいて、ずいぶんとお早いお帰りだねぇ」
アリス:「うるせぇよ。テメェに頼みてぇことがあんだよ」
ピサロ:「ほぉ、頼みたいこと、ね…」
ピサロ:「君の頼みごとは、だいたいロクでもないことだから、頼みごとは、吾輩、されたくはないのだが…」
アリス:「これだ」
ピサロ:「これは…。グーグルマップ、かな?この赤い点は、発信機の信号が出ているポイントだろうね」
ピサロ:「それで?この場所に何があるのかね?まさか、吾輩と宝探しでもしたいのかな?」
アリス:「知り合いが、そこにいるはずなんだ。助け出したい」
ピサロ:「あん?おぉ、アリス!君に吾輩以外の知人がいたのにも驚いたが…」
ピサロ:「ヴィランである君が、人助けかい?人助けなんて、ヒーロー様の専売特許(せんばいとっきょ)だろ?ヴィランのやることじゃないさ」
アリス:「そうかもな…。でも、助けたいんだ」
ピサロ:「なぜ?なぜに?まさか!吾輩と破局してから、わずか数時間の間に、体を許す相手でも出来たというのかい?」
アリス:「あん?んなわけあるか!とにかく、この信号が出てる場所、この建物が何なのかを調べてほしい」
アリス:「テメェの手を借りるのは、そこまでだ。あとは、私がやる」
ピサロ:「はんはんはん?まぁ、ちょうど吾輩も暇を持て余してたところだから、ほんの気まぐれで、君の頼みを聞いてあげようじゃないか」
ピサロ:「少しだけ待っていておくれ」
アリス:「あぁ。頼む」
ナレ:ピサロは、「はんはんは~ん」と鼻歌を歌いながら、ピサロ専用の実験室に入る。
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ナレ:一時間程度経過し、ピサロ専用の実験室から、ピサロが出てくる。
ピサロ:「ムムッ!これは、実に実に実にーっ!愉快だ!」
アリス:「ん?教えろ。建物の正体は、なんだ?」
ピサロ:「実に、吾輩の興味をそそる施設だったよ」
アリス:「だから、さっさと教えろ。ぶっ殺すぞ」
ピサロ:「おい~!銃は、おろしたまえよ」
アリス:「だったら、さっさと教えろ!」
ピサロ:「うん…。まぁ、そう、アレはね。アンドロイドを作っている施設なんだ」
アリス:「アンドロイド?」
ピサロ:「それも、人間と遜色(そんしょく)ない、とびきり精巧(せいこう)なやつ」
ピサロ:「しかも、軍事利用のための兵器として…だ」
アリス:「ほぉ。もしかして、お上(かみ)が絡(から)んでんのか?」
ピサロ:「そうだよ。悪だくみをするのは、我々のようなヴィランだけとは、限らないってことさ」
アリス:「つまり…」
ピサロ:「フフっ。吾輩がハッキングした結果、特に気になったのは、戦闘用アンドロイド」
ピサロ:「コードネーム、サーシャ。最近、逃げ出したらしい。だが、すぐに確保できたという報告書が上がってるねぇ」
アリス:「戦闘用アンドロイドなのに、どうして、捕まるんだ?」
ピサロ:「ハハッ!アリス、実に、君は、馬鹿だなぁ。イマジネーションをふくらますんだよ。風船みたいにね!」
ピサロ:「戦闘用アンドロイドが、人間を見境(みさかい)なく襲うようにプログラムされているわけがないだろ?」
アリス:「確かにな…」
ピサロ:「サーシャは、自分を人間だと思い込んでる」
ピサロ:「それも、か弱い少女だと…。だから、人間に危害を加えない。加えられない」
アリス:「だけど、いずれ…」
ピサロ:「ふむ。戦争に利用されるだろうね」
ピサロ:「心を削除され、リミッターを解除されてね。そうなると、ただの殺戮人形(さつりくにんぎょう)さ」
アリス:「心を削除されって…。やはり、サーシャには、心が…」
ピサロ:「シンギュラリティは、至るところで、起こっているよ」
ピサロ:「プログラムにはない言動を発現させたアンドロイドなんて、珍しくはない。確か…」
アリス:「帽子屋…」
ピサロ:「あぁ!懐かしい名前だ。世界で最初にシンギュラリティを起こし、自我に目覚めたアンドロイド、だね!」
アリス:「心が目覚めたんだったら、その心は、削除されるべきではないと思うし、殺戮兵器なんて、胸くそ悪ぃ」
ピサロ:「ほぉほぉほぉ。ずいぶんとサーシャに、肩入れするんだね」
ピサロ:「つまり、逃げ出したサーシャと接触したのは、やはり、君か。これは、実に実に実にーっ!愉快だ!」
アリス:「で、もう、すでに計算できてんだろ?天才ピサロさんよ」
アリス:「私が、この施設に殴り込みをかけて、サーシャを救い出せる確率は?」
ピサロ:「ゼロパーセント」
アリス:「は?」
ピサロ:「ゼロパーセント。施設内は、罠!罠!罠!のオンパレード!ザ・トラップミュージアム!そそるよねぇ!」
アリス:「お上(かみ)が、そんな危ない施設を作ってもいいのか?」
ピサロ:「むしろ、お上だから、許されるのだよ。権力とは、法であり、武器だからね」
アリス:「ほんと、クソッたれな世界だな」
ピサロ:「だから、そのクソったれな世界を、めちゃくちゃにしたくて、君も、ヴィランになったのだろう?」
アリス:「まぁな」
ピサロ:「アリスひとりでは、ゼロパーセント。ただし、相棒である吾輩が君に力を貸したなら…」
アリス:「力を貸してくれるのか?」
ピサロ:「ただし、条件がある」
アリス:「条件?」
ピサロ:「吾輩とヨリを戻してくれたまえよ。吾輩は、君がいないと、寂しくて、寂しくて、死んでしまうのだよ」
アリス:「テメェは殺しても死なねぇだろ」
ピサロ:「死ぬ死ぬ死ぬ~。死んじゃう~。アリスがいないと、寂しい~!」
アリス:「はいはい。まぁ、サーシャを無事に助け出せたら、だな」
ピサロ:「ほほぉ。それじゃ、吾輩、頑張っちゃうよ~」
アリス:「頑張ってくれなきゃ、困る」
ピサロ:「頑張る頑張る。急がないと、明日には、サーシャから心が削除されちゃうからね」
アリス:「明日には?今、明日にはって言ったか?」
ピサロ:「言ったよ。タイムリミットは、今日までだね。あぁ、殺戮兵器に、心は不要だと判断されたんだろうね」
ピサロ:「今後もサーシャに脱走されて、他国に誘拐でもされちゃったら、情報漏洩(じょうほうろうえい)が大変だ!大変だ!」
アリス:「だったら、いくぞ。ピサロ、今すぐ車を出せ」
ピサロ:「オーケーと言いたいところだが、下準備を少しさせてくれないかな」
ピサロ:「ハッキング用のパソコンのチューンアップをしておきたいんだ」
ピサロ:「何しろ、今度の敵は、お上の秘密科学機関ラグナロク、だからね」
アリス:「ラグナロク…」
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0:【間】
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ナレ:日が沈もうとする頃、ピサロは、車をラグナロク近辺の道路の路肩に駐車させる。
ピサロ:「では、吾輩は、車の中でトラップ削除ゲームに勤(いそ)しむことにするよ」
ピサロ:「指示や連絡は、無線機で随時(ずいじ)伝えるから、君は、安心して、サーシャを奪いにゆきたまえ」
アリス:「そうさせてもらう」
ピサロ:「あぁ、あと、後ろのトランクの中に入っている武器を、どれでも好きなモノを持っていきたまえ」
アリス:「わかった」
ピサロ:「健闘(けんとう)を祈るよ」
0:【間】
ナレ:アリスは、車のトランクを開け、武装する。
ピサロ:「あーあー。マイクテストゥ。マイクテストゥ。聴こえているかな?」
アリス:「あぁ、無駄なイケボが聴こえてる」
ピサロ:「それなら、良かった。とりあえず、足元にあるマンホールに入るんだ」
アリス:「わかった」
ナレ:アリスは、ピサロの指示通り、マンホールの中に入る。
ピサロ:「そうそう、そのまま真っ直ぐ。いいねぇ」
ピサロ:「君を吾輩の指示通りに動かせるなんて、夢のような時間だよ」
アリス:「は?」
ピサロ:「よしよし、いい子だ。ちょうど、今君のいる真上が、ラグナロクだよ」
アリス:「じゃあ、このまま上に」
ピサロ:「(さえぎって)待ちたまえよ!まずは、ハッキングして、トラップを解除するから!」
アリス:「頼む」
ピサロ:「たたたたたたっ!ほいっ!ぽちっとな。よし。トラップは、全部解除したよ」
アリス:「さすがだ。仕事が早い」
ピサロ:「だろ?天才だろ?だーかーらー、あとで、ハグしてね!」
ピサロ:「アリスにギューしてもらいたい~!子作りしたい~!」
アリス:「…」
ピサロ:「あれ?無視するの?」
アリス:「聴こえてるから、いいだろ?必要な情報は伝える」
ピサロ:「吾輩にとっては、子作りオーケーの返答ほど必要な情報は、ないのだがね!」
アリス:「だまれ。セクハラじじい」
ピサロ:「じじいとは、ひどいなぁ…」
0:【間】
ナレ:アリスは、地下の扉をこじ開け、ラグナロクに潜入する。
アリス:「入ったぞ。トラップは、発動しないようだな」
ピサロ:「あたりまえさ。何しろ、吾輩は、天才だからね!」
アリス:「はいはい。言ってろ」
モブ:「しっ、侵入者?」(一人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「ぐふぁっ!」(一人目のモブ死亡)
ピサロ:「あーあ。殺しちゃったの?」
アリス:「ゴキブリが出たんだ」
ピサロ:「なるほど、ね。」
ピサロ:「あと、サーシャの隔離(かくり)されている部屋への最短ルート、ゴーグルで確認したまえ」
アリス:「オーケー」
0:【間】
モブ:「お前が侵入者か!」(二人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「ぐふっ!」(二人目のモブ死亡)
0:【間】
モブ:「侵入者は、女だったのか!」(三人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「うがっ!」(三人目のモブ死亡)
0:【間】
モブ:「大変だ!大変だ!」(四人目のモブ登場)
0:(銃声)
モブ:「うげっ!」(四人目のモブ死亡)
0:(連続した銃声)
モブ:「うぐっ!ぐふぇっ!ぎゃーっ!あべっ!ぶふぉっ!」(複数人のモブ死亡)
0:モブは、アドリブで死にゼリフを吐いてもオーケー。
0:【間】
アリス:「はぁはぁはぁ…」
ピサロ:「ハハッ!相変わらず、アリスは、強いねぇ!最強だ!」
アリス:「まぁ、普通の人間相手ならな」
ピサロ:「ゴーグルにも表示されていると思うけど、サーシャは、そのまま真っ直ぐいった部屋の中だよ」
ピサロ:「もちろん、セキュリティは全て解除してあるから、扉もすぐに開くよ」
アリス:「あぁ」
0:
0:【間】
0:
ナレ:扉が開くと、銃弾が飛んでくる。しかし、アリスは、ひらりと身をかわす。
サーシャ:「あっ!お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
ガレス:「おい、ガキはだまってろ!」
サーシャ:「うっ」
ガレス:「やっぱり、お前だったか!お前は、他国のスパイか何かか?」
アリス:「スパイ、か。ふっ。私は、ただのヴィランさ」
ガレス:「なるほどね。ヴィランにとっても最新鋭の殺戮兵器は、ずいぶんと魅力的なんだろうな」
アリス:「サーシャは、兵器じゃねぇよ」
サーシャ:「お姉ちゃん?」
ガレス:「兵器さ!現時点で、この世界における最高ランクの殺戮兵器!」
アリス:「だから、違う!っつってんだろ!」
ガレス:「ほざいてろ!このクソアマが!殺戮兵器だという証を見せてやるよ!何しろここは、ラグナロクの中」
ガレス:「暴れても、情報は外に漏れない」
アリス:「ん?何をする気だ?」
ガレス:「サーシャのリミッター解除ボタンをね。押すんだよ」
サーシャ:「お姉ちゃん!頭が、頭が痛いよ!」
アリス:「サーシャ、どうした?」
サーシャ:「頭が、痛い…。私が、私でなくなって行くみたい…。おねエチャン…」
ガレス:「はっはっはっ。サーシャよ、今すぐ、このクソアマをぶち殺せ」
0:サーシャ、殺戮兵器モードに移行。
サーシャ:「イエス、マイマスター」
アリス:「サーシャの腕がライフルに?」
サーシャ:「ターゲットロック」
0:(連続した銃声)
アリス:「当たらねぇよ。サーシャに人殺しなんて、させねぇ!」
ガレス:「ほぉ、かわしたか!相変わらず、銃弾の当たらない特殊体質らしいな」
サーシャ:「カノジョニハ、ハモノデノ、コウゲキガ、ユウコウデス。GMブレードノ、シヨウキョカヲ、クダサイ」
アリス:「GMブレード?」
ガレス:「いいだろう。GMブレード、承認!」
サーシャ:「GMブレード、ハツドウ」
アリス:「ん?腕が、ライフルから剣に変わった!?」
サーシャ:「…」
アリス:「速いっ!しかも、この刃(やいば)」
ガレス:「そうだよ。GMブレードの刃は、高出力のレーザー。鋼鉄でも切り刻むことのできる最強の刃だよ!」
アリス:「厄介だな。それに、この部屋に入ってから、ピサロからの通信がない…」
ガレス:「さぁ、サーシャ、まずは、そいつの右腕から切り落としてやれ!」
サーシャ:「イエス、マイマスター」
アリス:「来るっ!だめだ!よけきれないっ!ぐふぁっ」
ガレス:「いい!いいぞ!って、かすっただけか。でも、血がたくさん出てるねぇ。痛そうだねぇ」
アリス:「はぁはぁはぁ。ちきしょう…」
ガレス:「サーシャ、訂正だ。腕ではなく、両足をまずは切断しよう。俺は、今、無性にコイツに銃弾を当てたい気分なんだ」
サーシャ:「イエス、マイマスター」
アリス:「はぁはぁはぁ。どうすれば、何か手が」
サーシャ:「…」
アリス:「うっ!速いっ!ダメだ…」
ピサロ:「あきらめるなよっ!マイハニー!」
アリス:「ピサロ」
ガレス:「お前は、S級犯罪者のピサロ」
ピサロ:「ほぉ、吾輩。そんなに有名人なんだ」
ガレス:「そりゃあ、大統領を殺したヴィランなんて、知らない奴はいないだろ」
ピサロ:「だって、吾輩、ムカついただもん。ムカついたら、殺せばいいだろ?」
アリス:「そうだな。ムカついたら殺せばいい。そして、今、私はコイツを殺したい」
ピサロ:「コイツって、吾輩?」
アリス:「んなわけあるか!」
ピサロ:「あぁ~。良かった~」
アリス:「ピサロ、サーシャのこと、頼めるか?」
ピサロ:「相棒の頼みなら、お任せあれ」
アリス:「頼りにしてるぜ」
ピサロ:「まかせろ」
ガレス:「サーシャ、二人まとめて、GMブレードで細切れにしてやれ!」
サーシャ:「イエス、マイマスター」
ピサロ:「二人まとめてって?それはそれは、あまりにも吾輩の力を舐め過ぎては、いないかね?」
ガレス:「馬鹿な!?あの男、ただのステッキで、サーシャのGMブレードとやり合ってる!?」
アリス:「さぁ、テメェは、私とのタイマンだ」
ガレス:「ほぉ。ファイティングポーズ。まさかとは思うが、殴り合いで決着を付けるつもりかな?」
アリス:「殴り合い?はっ?馬鹿か?テメェに殴らせるつもりはねぇよ。一発で殺してやる。確実にな」
ガレス:「ひとつ聞きたい。何故、そこまでサーシャに執着(しゅうちゃく)する?」
ガレス:「やはり、サーシャのデータを基(もと)に殺戮兵器の量産が目的か?」
アリス:「キャンディをくれた」
ガレス:「は?キャンディ?」
アリス:「キャンディをくれる子は、いい子だ」
ガレス:「意味がわからない。ヴィランが、たったそれだけの理由で、命をかけるのか?」
アリス:「ヒーローだとか、ヴィランだとか、線引きは、なんだ?」
アリス:「私にとっては、キャンディをもらったことが、命をかける理由としては、充分すぎるんだよ!でやっ!」
ガレス:「ぐっ、ぐふぁっ!」(ガレス死亡)
アリス:「ふん。弱すぎる」
0:
0:【間】
0:
ピサロ:「おおっ?そっちは、どうやら終わったみたいだね?こっちも終わったよ」
サーシャ:「お姉ちゃん!お姉ちゃーん!」
アリス:「サーシャ!良かった!ピサロも、そのっ、あ、あ、あっ、ありがとう」
ピサロ:「へへっ。ちょっと、戦っている最中にね」
ピサロ:「隙を見て、サーシャのプログラムの書き換えとリミッターをかけたってわけさ」
ピサロ:「これで、もう大丈夫なはずだよ」
アリス:「そんな芸当ができるのは、ピサロくらいだろうな」
ピサロ:「そりゃそうさ。なんたって、吾輩は、天才だからね!」
サーシャ:「お姉ちゃん、私、人間じゃないの?兵器なの?」
アリス:「サーシャは、人間だよ」
サーシャ:「でも、私の体、武器になるの」
ピサロ:「体が武器になると、人間じゃないのかい?」
サーシャ:「体が武器になる人間なんて、いないもん!」
アリス:「体が武器になる人間がいたって、いいと思う」
サーシャ:「えっ?」
アリス:「大切なのは、自分が人間で在りたいか、どうか、だろ?」
ピサロ:「さすが、アリス、吾輩の相棒。たまに良いことを言うよねぇ!」
アリス:「たまには、余計だ」
サーシャ:「あっ、アリス?お姉ちゃんの名前?」
アリス:「あぁ、アリスが…私の、名前だ」
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0:―了―