台本概要

 1319 views 

タイトル 霞の國のアビス
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ミステリー
演者人数 5人用台本(男1、女1、不問3) ※兼役あり
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 館の夫人、チキータ・マーキュリーは決めた。
夫、ジャイブ・マーキュリーを殺すため、殺し屋を雇うことを。
しかし、そこに別の殺し屋二人組が参入。
陰謀が巻き起こる中、チキータは、遂に出会いに気づくのであった。

「貴女があの男を殺してみるのはどうだろう。」


【アビスシリーズ】第二話

 1319 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アビス 不問 75 ハッターとコンビを組んでいるらしい殺し屋。 見た目も声も幼い。
ハッター 不問 81 アビスとコンビを組んでいるらしい殺し屋。 シルクハットがトレードマーク。
スケアクロウ 78 チキータの館に現れた[脳みそ]が好きな殺し屋。 かなりラフな格好をしている。 ※チェシャーと兼ね役です。
チキータ 74 この館の夫人で、フルネームは「チキータ・マーキュリー」。 おどおどしているように見えるが、目の奥には信念を持つ……? ※クイーンと兼ね役です。
ビショップ 不問 76 チキータの傍仕えの使用人。 チキータに対してかなり過保護な面を見せることがあるようだ。
クイーン 6 最後の方にだけ登場。 アビスやハッターたちのボス。 ※チキータと兼ね役です。
チェシャー 6 最後の方にだけ登場。 ニタニタ笑うクイーンの護衛。 ※スケアクロウと兼ね役です。
ロミオ 不問 7 ???
ジュリエット 不問 7 ???
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:2022年1月29日、金曜日……。 0: 0: 0: 0: 0:夜。とある館の裏庭。一人の女性が不安そうに立っている。 0: チキータ:…今日で、終わり。今日でようやく、こんな生活から抜け出せる。…使用人さんたちには、悪いけれど。ごめんなさい。私は、私はもう耐えられないの。 0: スケアクロウ:ふふ。どうやら今回の依頼主様は大変愉快な方なようだ。 0: チキータ:っ…! スケアクロウ:こんばんは。チキータ・マーキュリーさんで良かったかな? チキータ:は、はい。えっと、あなたが、その…。 スケアクロウ:大丈夫、そんなに緊張しないで。別に貴女を殺すわけではないのだから。 チキータ:す、すみません…! スケアクロウ:謝ることもないよ。ふふ、変わったお嬢さんだ。さて、では改めて自己紹介を。僕の名前は―――、っ、危ないっ! チキータ:えっ? 0: 0:スケアクロウがチキータの手を掴み引き寄せる。 0:先ほどまで二人が経っていた場所にナイフが飛んでくる。 0: チキータ:な、ナイフ…!? スケアクロウ:…マーキュリーさん、貴女は僕の後ろに。どうやらイレギュラー発生のようだ。 0: 0:暗闇から現れたのは二人。幼い顔つきの人物と、 0:シルクハットが印象的な人物。 0: アビス:凄いねぇ、キミ。よくボクのナイフに気づけたね? ハッター:仕方ありませんよアリスちゃん。あの動きからして、どうやらあの方も我々の同胞のようですし?☆ アビス:うんうん、じゃあ「“鳥さん”で間違いない」ね、オッケー♪傍にいるのは夫人だろうし…。うん、一対二なら楽そうだ!殺っちゃおう!♪ ハッター:はいはーい☆ 0: 0:アビスはナイフ、ハッターはハンドガンをそれぞれ取り出し、構える。 0: チキータ:いやっ…。誰、なの…。私は「脳みそ蒐集家(しゅうしゅうか)」さんしか呼んでないはずっ…。 スケアクロウ:…なんだ、何が起こってる? チキータ:あ、あのっ…、これ大丈夫なんですか…? スケアクロウ:(チキータの台詞を待たずに)仕方ない…、一旦逃げようかっ! チキータ:わっ!? 0: 0:スケアクロウがチキータを抱え、館の中に逃げ込んでいく。 0: ハッター:はーやーいっ!?どうしましょう、アリスちゃん!もうワタシの銃の射程から抜けられてしまいました! アビス:うーん、クイーンさんからの情報じゃあんなに足が速いなんて聞いてなかったんだけどなあ…。まあいっか。考えてる暇あったら追うよっ♪ ハッター:今考えてたの、アリスちゃんですけどねーっ! シーン転換。 0:場面転換。 0:屋敷の倉庫に逃げ込んでいたチキータとスケアクロウ。 0: スケアクロウ:ありがとうねマーキュリーさん。良い隠れ場所だ。…今のうちにイレギュラーが起きたこと、一応本部に連絡しておこうかな。 0:携帯電話を取り出しメールを打つスケアクロウ。 チキータ:あの、あの方たちは一体…? スケアクロウ:すまない、それが何もわからないんだ…。目的も、誰なのかも。しかし確実にいえることが一つある。あれは、僕と同じ殺し屋だ。 チキータ:こ、殺し屋…。 スケアクロウ:…どうしようね?もし偶然、彼らも僕らと同じ人物を狙っていたら。僕の仕事がなくなってしまう。 チキータ:そ、その時は……。えっと…。 スケアクロウ:フフ…。困らせてしまったね。すまないすまない。 スケアクロウ:さて、すっかりうっかり自己紹介を忘れていたよ。まあ知っているだろうが、改めて名乗らせてもらうよ。 スケアクロウ:僕の名前はスケアクロウ。元マフィアの殺し屋さ。身長178cm、体重はトップシークレット。好きなことはぼーっと立っていることと脳みそを抉ったり眺めること。よろしくね。 チキータ:こ、こちらこそよろしくおねが―――っ、足音がします…っ。 スケアクロウ:…本当だね、こっちに向かってきてる。マーキュリーさん、音を立てないように…! 0: 0:その時、倉庫の扉が開く。 0: スケアクロウ:まずいっ…。 チキータ:ぁ…。 0: ビショップ:…お、奥方様?なぜここに?今日はお眠りになられたはずでは? 0: 0:扉の先に立っていたのは、使用人の服を着た人物だった。 0: ビショップ:それに…っ!あなた、誰です!?倉庫で奥方様と二人、侵入者ですか!?くっ、奥方様から離れなさい! チキータ:待ってくださいビショップ!勘違いですっ…! ビショップ:そ、そうなのですか…?ならば、この方は一体…? スケアクロウ:…その前に、君も倉庫に入って扉を閉めてほしい。死にたくないのなら。 ビショップ:死っ…? チキータ:とにかく、言うとおりに!事情も説明しますから…! ビショップ:は、はい…! 話数転換。 0:場面転換。 0:ハッターとアビスが廊下を歩いている。 0: ハッター:あーらーら。どうやら完全に見失ってしまいましたねぇ。 アビス:仕方ないよ、このお屋敷結構大きいし。僕たちはここの地図ほとんど頭に入ってないんだもん。 ハッター:ですねぇ…。ふむむー。どうしたものか。 アビス:これから手当たり次第に探すのもなかなか骨が折れそうだしね。あー、全員殺せたらいろいろ楽なのにー。 ハッター:またまたー、楽とか言っちゃって、本当はただ殺したいだけのくせにー☆ アビス:あはは、バレちゃったか♪ ハッター:あっ、そうですアリスちゃん!取り敢えずさっきの方は後回しにして、先に「もう一人」の方殺しに行きませんか!諸悪の根源はそっちですし、ワンチャンそっち殺すだけでも依頼達成かも! アビス:おぉー、流石帽子屋さん!大天才っ!♪そうと決まればぱっぱか行こーっ!♪ ハッター:はぁーい☆…あれ、そっちからよりこっちの方が速いんじゃなかったですっけ? アビス:えっ、嘘だあ。こっちから行けば階段あがった方が速いはずだよー? ハッター:…えぇー?…なるほど、アリスちゃんがそういうのなら間違いないですねぇ☆ではそっちルートで!☆ アビス:はぁーい、ではしゅっぱあーつっ!♪ ハッター:アイ、アイ、アリスちゃんーっ!☆ シーン転換。 0:場面転換。 0:倉庫部屋の三人。 0: チキータ:つまり私は、主人を…、「ジャイブ・マーキュリー」を殺すために、この方を雇ったんです。 ビショップ:なっ…。ということはこちらの方は殺し屋、ですか。 スケアクロウ:あぁ、そうだよ。初めまして、っえーっと、すまないなんと言ったっけか。 ビショップ:…ビショップ、です。 スケアクロウ:ありがとう。ごめんね、物覚えが悪いんだー…。 チキータ:…ごめんなさい、ビショップ。でも、もうこれしかないと思った、から…。 ビショップ:…いえ、奥方様のご決断を責めるつもりは毛頭ありません。むしろ…、良くここまでお耐えになりましたね。 チキータ:…あなたは私を、責めないの?だって私のこの身勝手な行動であなたは職を失うことになるし、もしかしたら世間から疑いの目を浴びるかもしれないのに…。 ビショップ:それで奥方様が救われるというのであれば、本望です。 スケアクロウ:フフ…。それにしても。その会話からして、君たちは彼に何か恨みを持っていたのかな?差し支えなければ教えてはくれないかな。興味が湧いてきてしまったよ。 チキータ:…別に構いません。明るい話では、ないですが…。 スケアクロウ:承知の上さ。昔から人の過去の話を聞くのが好きなんだ。それが楽しいモノだろうが、忌むべきものだろうが関係なく、ね。 チキータ:で、では…。 ビショップ:お待ちください。…この話を奥方様の口から語らせるのはあまりにも酷です、スケアクロウ。ここは私が語りましょう。 チキータ:っ…。ありがとう、ビショップ。お願いするわ。 ビショップ:はい。とは言っても、私がこの屋敷の使用人になったのは半年前のことなので、奥方様から聞いた話を私が語る、というだけなのですが…。 0: ビショップ:今から523日前。奥方様はこの屋敷の主人、ジャイブ様とご結婚なされました。…しかし、その結婚に奥方様の意志はないも同然だったのです。 ビショップ:…チキータ様に一目惚れをした彼は、自身が持つ資産と地位、そして脅しを使い、強引にチキータ様を娶(めと)りました。 チキータ:……。 スケアクロウ:なるほど。…しかし、そういうタチの男は、きっと籍を入れた後の方がひどい。実際そうだったのだろう? ビショップ:…えぇ。結婚してからの日々は、奥方様にとって地獄のようなものだったでしょう。物のように扱われ、逃げれば社会的に抹殺すると脅され…、 ビショップ:もしも助けを求めないようにと、チキータ様の親しい友人はすべてこの国から追い出されるか、殺害された。 チキータ:でも、もう、いいの。…今日で全て終わるから。スケアクロウさんが、あの人を殺してくれるのだから…。 スケアクロウ:そういうことだったのか。…うん、教えてくれてありがとう。二人とも。 チキータ:いえ…。 ビショップ:…私からもよろしくお願いします。なんなら苦しむように殺していただけると。…チキータ様を苦しめたのです、ただ殺すだけでは生温い。 チキータ:もう、本当にビショップは…。なぜ半年ほどしか付き添っていない私にそこまで感情移入できるのかしら、ふふ。 ビショップ:それはあなたのことを心からお慕い申しているからです、ユアマジェスティ。 チキータ:本当、口が上手なんだから…。ありがとう、ビショップ。 ビショップ:マイプレジャー。 話数転換。 ビショップ:…そういえば、先ほど説明された殺し屋の二組?はどこに行ったのでしょう?さっきからずっと話していましたが、足音も何も聞こえないような…。 スケアクロウ:おや、本当だね。すまない、正直すっかり忘れていたよ。 スケアクロウ:…じゃあ、そろそろお待ちかね。依頼を遂行しに行こうか。…あの二組はきっとまだ僕らを探しているだろうから、マーキュリーさんたちはここにいたほうが良いと思うけれど。 チキータ:…いえ。危険を承知のうえで、そこに立ち会わせて下さい。少しでも私は、復讐がしたい。 ビショップ:ご安心を、チキータ様。あなたは私がお守りします。何に換えても―――。 0: 0:その時、一つ上の階から「ドンッ!!」と大きな音が鳴る。 0: チキータ:っ、今のは…?! ビショップ:音の方向的に…。ジャイブの部屋? スケアクロウ:まさか…。本当にターゲットが同じだったのか…!?いや、考えるのは後だ。すまない、そこまで案内してくれるかな。 チキータ:は、はいっ…! シーン転換。 0:場面転換。 0:ジャイブの部屋に、アビスとハッター。 0: ハッター:ほら、だからこっちからのが近いって言ったじゃないですかぁー…? アビス:あはは、細かいことは気にしなーい!それにしても、なんかすっごい警備ザルだったねぇ♪ ハッター:少し調べましたが、こちらのご当主ジャイブ・マーキュリーさんはなかなかのクソ野郎で、使用人からや夫人に嫌われまくってたらしいですよ? アビス:なーるほど!警備員さんからも見放されてたってことか!…そういうことなら、この館の人たちの怒りの分まで、念入りにぐちゃぐちゃにしないとね♪ ハッター:ですね☆…しかし、こちらを裏切ってそんな方に与(くみ)するとは、よっぽどの変わり者だったんですね、“ドードー鳥”さんは。 アビス:んー、まあ気を見計らって殺して家を乗っ取るつもりだったんじゃない?ずっとクイーンさんに雇われてるよりそっちのがよっぽどお金貰えるし♪ ハッター:その計画はどうやらワタシたちのせいでお釈迦になるわけですがね☆ アビス:うんうん、ちゃあんと女王様の代わりにボク達が「Off with your head」(オフ・ウィズ・ユア・ヘッド)してあげなくっちゃ!♪…じゃ、そろそろ殺っちゃうね! ハッター:どうぞ、その役目はアリスちゃんにお任せいたします☆ アビス:アリガト♪それじゃあ…。じゃあね、ジャイブ・マーキュリーさん♪ 0: 0:アビスがナイフをジャイブの喉元に立て、喉を切り裂く。ジャイブは声を出せず、苦痛から床に転がり落ちる。 0: アビス:アハハハっ♪おはようございまーす!最悪だろうけど、ご機嫌いかが?♪ ハッター:ついでに赤い赤いワインはいかが?☆ アビス:えっ、帽子屋さんお酒持ってきたのー?♪ ハッター:いえ、ありませんよ?ほら、あれですよ!赤い血をワインと見立てる比喩表現です☆ アビス:なあんだ、飲みたかったなあ…。 ハッター:じゃあこの仕事が無事に終わったらみんなでパーティーしましょう、パーティー☆ アビス:ちょっと、それ死亡フラグじゃん!洒落にならないよぉー♪もう…♪フラグ回収したくないから、もうパパっと殺しちゃうね? ハッター:…あぁ、そんな恐怖しないで!ご安心ください、ご当主。ワタシたちのような者が来たということは、アナタが死ぬことで幸せを得る人間がいる、ということなんですから☆ アビス:そーそー♪だから、安心して逝っちゃってねぇ♪ばいばーいっ!♪ 0: 0:アビスがそのままジャイブの胸を裂こうとする―――。 0: スケアクロウ:悪いね、それは僕の獲物なんだっ! 0: 0:―――と、同時にノコギリを携えたスケアクロウがアビスに向かって切りかかってくる。 0:アビスはそれをすれすれで躱す。 0: アビス:おーっとっ…?危ないなあ。…って、あれぇ!?アナタ!? ハッター:大丈夫ですかアリスちゃん! 0: 0:そう言いながらスケアクロウに六発発砲するハッター。 0:スケアクロウもそれをゆらりと躱す。 0:ジャイブは血の流し過ぎで気絶したようだ。 0: ハッター:あーらーら!?普通この暗闇で銃弾全部躱せますかね!? スケアクロウ:そりゃあ、僕もこの道案外長いからねっ!殺し合いは一番慣れている分野さ…! ハッター:マージですか!ならば出し惜しみはできません、次弾装填しまーす☆ アビス:帽子屋さん、一旦攻撃ストップ。 ハッター:えぇ!?なぜですーっ?! アビス:いいから!…いやぁ、さっきはいきなり襲い掛かっちゃってごめんね、殺し屋さん!どうやらボクたち、ちょっと勘違いをしてたみたいなんだ♪ スケアクロウ:か、勘違い…? ハッター:…あれ、ということはこの方、“ドードー鳥”さんではない…!? アビス:どうやらね。実はボクとしてもアナタと殺し合うのは本意じゃなくてさ…。だから、ちょっとだけ話し合わない?……扉の向こうにいる、お二人も交えて。 チキータ:なっ…! 話数転換。 スケアクロウ:それは、どういう意味かな? アビス:そのままの意味だよー♪どうやら全員状況を把握できてないっぽいからさ?ここはいったん武器を置いて、状況整理したほうがいいんじゃないかなあって♪ スケアクロウ:…ならば、それに応じる条件を一つ提示してもいいかい? アビス:どーぞ♪ スケアクロウ:…この話し合いが良い方に進んで、和解できたなら、そこに転がっているジャイブの脳みそを僕にくれないか。 ハッター:の、のうみそ…? スケアクロウ:そう、脳みそ。人の脳みそを集めて家に飾るのが趣味なんだ。 ハッター:はぁー、人の性癖ってホント凄いですねぇ…☆ アビス:そんなことならお安い御用さ♪ スケアクロウ:ありがとう、恩に着るよ小さな殺し屋さん! アビス:どういたしまして?♪さて、扉の向こうにいるお二人はどうかな? チキータ:……。 ビショップ:ならば私からも一つ条件を。私たちが部屋に入る前に、三人ともベッドの上に自分の武器を全て置いてください。話はそれからでしょう。 アビス:勿論いいよぉ♪ほら、帽子屋さんも、アナタも。 ハッター:はいはーい、アリスちゃんの指示ならば喜んで☆ 0: 0:ハッターは拳銃と弾を、 0:アビスは八本のナイフを、 0:スケアクロウはノコギリをそれぞれベッドの上に置く。 0: スケアクロウ:これでいいかな、ビショップさん。 ビショップ:…えぇ。チキータ様、中に入りましょう。 チキータ:…っ。 ビショップ:大丈夫。何があっても私が貴女様をお守りいたします。 チキータ:…ありがとう、ビショップ。…入りましょう。 ハッター:あ、お入りになられるのでしたら部屋の電気をつけていただけませんか!話し合いをするのでしたら相手の顔がよぉーく見えたほうが良いはずですので☆ ビショップ:…かしこまりました。 0: 0:部屋の電気をつけ、チキータとビショップが部屋に入って来る。 0: ハッター:まーぶーしっ!?目があ、目があーっ! ビショップ:騒がないでください、あまり大声を出されても困り―――っ!? チキータ:ど、どうしたの、ビショップ? ビショップ:い、いえ…。なんでもありません。お気になさらず。 チキータ:そ、そうですか…? スケアクロウ:それで、話し合いというのは? アビス:まあまあ、まずは自己紹介からさせてよ♪ボクの名前はアビス。とある依頼でこの屋敷にやってきた殺し屋さ♪ スケアクロウ:なっ、アビスだって!?それって昔“鮮血”とタッグを組んでいた、あの“深淵”(しんえん)かい!? アビス:そうだよぉー!だからボクはアナタのことをよぉく知ってるんだあ、「“ジュリアス”の案山子(かかし)」、スケアクロウさん♪ ビショップ:……。 スケアクロウ:っ…。確かに、君は僕の名前はおろか、出自まで知っているようだ…。 アビス:ふふ、なんならもっと詳しく言えるよっ?♪「脳みそ蒐集家(しゅうしゅうか)」、「カチ割り紳士」、「ブレインキラー」など、様々な異名を持つ凄腕の殺し屋であり、元マフィアの暗殺者…♪ アビス:脳みそを集めるのが趣味だけれど、もっとも特筆するべきなのはその得物(えもの)。ノコギリを用いた近接戦闘を得意とする…。…ねえ、ずっと知りたかったんだけど、なんでノコギリなの? スケアクロウ:それは勿論、ロマンさ。ホラー映画でよくあるだろう?ノコギリを持った殺人鬼が追いかけてくるシーン。アレがとってもカッコ良かったから憧れて、少し使いにくいけど使ってる。それだけさ。 ハッター:使いにくいという自覚はあるのですねえ…。☆あ、ワタシはアリスちゃんの仕事仲間のイカれた帽子屋、ハッターと申しまーす!以後お見知りおきを…☆ アビス:あ、一応お二人にも自己紹介をお願いしていいかな?なんとなくわかってるけど、一応ね♪ チキータ:は、はい…。私は、チキータ…、チキータ・マーキュリーです。そこで横たわっているジャイブの妻、です。 ビショップ:私はこの屋敷の使用人のビショップと申します。 ハッター:…アレ?アナタ…。えーっと…、ビショップさん。 ビショップ:…な、なんでしょうか?そんなにじろじろ見て。 ハッター:…うーむーむ、どこかの誰かに似ている気がしたんですが…、すみません、思い出せなかったです☆ ビショップ:…そうですか。 ハッター:えぇ、すみません…。あ、話が脱線してしまいましたね☆どうぞ、アリスちゃん! アビス:ありがと、帽子屋さん♪…それじゃあ、一つ質問していいかな、お三方? チキータ:ど、どうぞ? アビス:…スケアクロウさんは、誰に呼ばれて、誰を殺すためにこのお屋敷まで来たのかな?♪ チキータ:わ、私が呼びました…!殺害対象は、私の夫、です…。 ハッター:わーぉ☆ アビス:あー、やっぱりそうなんだ♪ スケアクロウ:その反応…、予想してはいたけど、どうやら君たちもあの人を殺すために来たようだね。 ハッター:大正解です。しかし…。これは見事なダブルブッキングですねぇ☆ 話数転換。 ビショップ:しかし、貴方たちは誰に呼ばれてジャイブを殺しに?チキータ様の場合は私怨ですが…、まさか、他の方からも恨みを買っていたり? アビス:うーん、ちょっと違うかなあ。それに、実はボクたちが殺しに来たの、実はジャイブさんだけじゃないんだよねえ。 チキータ:えっ…。なら、わ、私ですか…? ハッター:いいえ、アナタじゃあありません!もしアナタなのであれば今、この場で真っ先に殺してますよぉ☆ ビショップ:チキータ様に手を出すのであればその前に私が貴方を殺して差し上げる。 ハッター:むぅ、怖いですねぇ…。 スケアクロウ:でも、それなら本当に誰なんだい? アビス:“ドードー鳥”。 チキータ:…ど、ドードー? アビス:そう。僕達の雇い主さんがこの館に忍ばせたスパイの呼び名さ♪ ビショップ:なっ、スパイですって!? ハッター:では少しややこしいですが説明をば☆ワタシとアリスちゃんはとある富豪の方に雇われていまして。そしてその御方は半年ほど前、ジャイブさんが貿易に手を染めているのを嗅ぎつけた。 ハッター:その取引の拡大の勢いが当時はかなり良かったので、我らが麗しの女王殿下はこちらの屋敷に諜報員を送り込むことにしたのです。コードネームは“ドードー鳥”。 ハッター:しーかーし!“鳥さん”は送り込んで一か月も経たないうちに音信不通になり、そのまま半年が経過。きっと裏切ったのだろうということで、ジャイブさんもろとも首を斬って来い☆という命令が下され。 アビス:ボクたちが送り込まれた、というわけさ♪ スケアクロウ:なるほど…。 チキータ:じゃあつまり、裏庭で私たちに襲い掛かってきたのは…。 アビス:そう、スケアクロウさんを“ドードー鳥”さんと勘違いしちゃったから♪ホントごめんねぇ…♪ スケアクロウ:全然構わないよ、確かにそのシチュエーションなら僕でも勘違いするだろうしね…。誤解が解けて良かった。 ビショップ:…それで。これからどうするのでしょうか。ジャイブは殺すとして。 ハッター:うーん、ワタシたちとしては“ドードー鳥”さんを殺さないと多分雇い主様から怒られてしまうので、なんとか見つけ出したいんですが…。この館に詳しいお二方は何か知っていたりしませんかねぇ…? チキータ:えっと、そのスパイが送り込まれたのは確か、半年前ですよね?…あっ、でも半年前と言ったら…。……ビショップ。 ビショップ:…はい、確かに私がこの屋敷に配属されたのは190日前…、およそ半年前です。 ハッター:正確な日数を覚えていらっしゃる!? ビショップ:ええ。得意なんです。正確な日数の記憶と計算。 アビス:…ふぅん。まあ一応聞くけど、アナタは違う、よね? チキータ:ビ、ビショップは絶対に違います!ビショップはこの屋敷に来てすぐ私の傍仕えになったんです。そして半年間ずっと、夫ではなく私の傍にいた。朝から晩まで、ずっとです。 チキータ:これじゃあそちらの情報をこちらに流すことも、その逆もできなければ、お金の動きすらろくに知らないんです!だから、ビショップは違いますっ…! ハッター:なるほど。お嬢さんが言うのならば間違いありませんねぇ☆ ビショップ:そう言っていただきありがとうございます、チキータ様。 チキータ:いえ。半年間、あなたはずっと私のことを支えてくれていたもの。これくらいは当然よ。…ねえ、この地獄を抜け出した後も、私についてきてくれる? ビショップ:…っ!勿論でございます、ユアマジェスティ…! スケアクロウ:ふふふっ…!なんかさ、マーキュリーさんって殺し屋の才能ありそうだよね。 チキータ:えっ…、私が、殺し…? アビス:あー、それボクも思ってた♪なんかおどおどしているように見えて、ずっと眼が物怖じしていないっていうか♪ホント、向いてるんじゃない?♪ ビショップ:…話が逸れているので戻しますが。お二人は今からその“ドードー鳥”を探すのですか? ハッター:えぇ、ワタシはそのつもりでいましたよ!一応諸悪の根源は今から殺すのですし、別に生かしても問題ないのでは、とも思いましたが…。クイーンさんに怒られるの、怖いので☆ アビス:そうだね…。まあなーんも手掛かりないし、もしかしたらもうこの館にはいないかもしれないんだけどね!一応探すだけ探してみよっかぁ♪ ビショップ:…では、私と同時期に入った使用人が使っている部屋を数個教えましょう。もしも内通者がいるのなら、机の引き出しや電子端末を調べればわかるはずです。 ハッター:おや、本当ですか!そーれはありがたい☆ スケアクロウ:しかし、そんなことをしてしまっていいのかい?君の同業の個人情報を売るようなものだけれど…。 ビショップ:構いません。この夜が明ければジャイブは死に、この家はなくなり、もうその使用人たちと会うこともないのです。 アビス:あはは、そっかぁ♪じゃあ、ありがたく教えてもらうとしようかな! チキータ:…もしかしたら、ビショップにも殺し屋の素質があるのかもしれないですね。ふふっ…。 ビショップ:…そうかもしれませんね。 話数転換。 0:ビショップに部屋を教えてもらったハッターとアビス。 0: ハッター:さて、ではワタシたちはそこの部屋まで行ってきますが…。お三方はどうされます? スケアクロウ:うーん、どうしようかな。 チキータ:わ、私はこの部屋に残ります。きっと、アビスさんたちについて行っても足手まといになりそうですし…。 ビショップ:ならば私もこの部屋に残らせていただきます。 アビス:オッケー♪案山子(かかし)さんはー? スケアクロウ:…じゃあ、僕はついて行こうかな。“深淵”(しんえん)と話したいこともあるし。 ハッター:かしこまりました☆では、行きましょうか! アビス:あぁ、待って!…とっても空気だったから忘れてたけど…、あれ、どうする?多分まだかろうじて息あるよねー。 0: 0:ジャイブを指さすアビス。 0: スケアクロウ:あー…。とりあえず放置でもいいんじゃないかな。ほら、クソ野郎は十分いたぶってから殺すべしって昔から言われてるだろ? チキータ:初耳です。 アビス:だろうね♪でも、彼が所属してた組織ではずっと言われてたんだよ!「気に入らないなら力で潰せ、クソ野郎はいたぶって殺せ」ってね♪ チキータ:なんてバイオレンスな…。 ハッター:仕方ないですよ、だってマフィア組織だったのでしょう?☆ スケアクロウ:そうだよー。結構長い間裏のセカイで覇権を握ってた“ジュリアス”って組織でね。前のボスが統治してた時はなかなか良かったんだけど、ある日、右腕と一緒に忽然と姿を消しちゃってね。 スケアクロウ:それでボスの左腕だった女マフィア、“鮮血”がボスになったんだけど、彼女、なかなか指揮を執るのが下手でね。一年も経たずに組織は瓦解(がかい)してしまった。 スケアクロウ:で、行く先がなくなった僕を残った組織の資金を使って富豪になった“鮮血”が拾って、今はそこで用心棒やったり、個人サイト立ち上げて今日みたいに殺し屋やったりしてるんだ。 アビス:それで、マフィア時代の“鮮血”さんと一時期タッグを組んでたのがこのボクなんだー!凄いでしょー♪ ハッター:素晴らしい、流石ですアリスちゃんっ!☆ チキータ:…この方はアビスさんの話になると本当になんでも全肯定になるのですね。 スケアクロウ:でも、言うてビショップさんもマーキュリーさんに対してそんな感じだよ? ビショップ:…そんな自覚は、ないのですが。 ハッター:ワタシもありませんでしたね。 アビス:駄目だこりゃ♪ ビショップ:ところでスケアクロウ。興味本位の質問なのですが。 スケアクロウ:うん?何かな? ビショップ:貴方が今居る…、“鮮血”?さんのチームでしたっけ。そのチーム、貴方以外にはどんな方々がいるのでしょう。 チキータ:ビショップが他人に興味を持つなんて珍しいわね。 スケアクロウ:変わり者ばっかだよ。“心臓喰い”と、戦闘狂の“武器商人”、引きこもりの“情報屋”。そしてリーダー、“鮮血”の魔女。僕を入れて五人かな。 ビショップ:…ふむ、なるほど……。 チキータ:因みに、アビスさんのチームはどんな方々がいるんですか? アビス:ボクたちのとこも変な人ばっかりだよぉ♪ ハッター:少し気の強い我らがリーダー“ダイヤのクイーン”、ニヤニヤ笑いの傍仕え“チェシャ猫”、そしてワタシたちと、もう一人☆ ビショップ:もう一人、ですか。 ハッター:えぇ☆ワタシたちはあの方を“怪物”、と呼んでいます。 チキータ:か、怪物…? ビショップ:…ふむ。 アビス:いいけど、でもそれは一通り部屋を見終わってからね♪すっかり話が脱線しちゃった。早くしないと陽が昇っちゃうよ! スケアクロウ:あぁ、そうだったね。ごめんごめん、さっきからよく脱線しちゃうね…。そろそろ行こうか。 ハッター:はあい!それではお二方、またあとでお会いしましょう☆ 0: 0:三人が部屋を出ていく。 0: ビショップ:…しかし、まさかチキータ様が殺し屋に依頼をするだなんて思いませんでした。 チキータ:私も自分でびっくりしているわ。 ビショップ:ちなみに、どうやってスケアクロウのサイトに辿り着いたのですか? チキータ:それが、偶然だったの。インターネットで調べ物をしていたら、間違ったリンクを踏んでしまって。そうしたらそこがたまたまスケアクロウさんの殺し屋サイトで。 ビショップ:…ふふっ、なるほど。そうでしたか。 チキータ:えぇ、こんな偶然ってあるのね。…でも、ほんの少しだけ後ろめたいの。 ビショップ:それはなぜです? チキータ:スケアクロウさんは依頼の報酬に、お金と脳みそを一つを要求するの。暗殺対象の脳みそは勿論スケアクロウさんが持ち帰るのだけれど、それとは別にもう一つ…。 ビショップ:…つまり、知り合いを一人犠牲にしなくてはいけない、ということですか。それはなかなかにえげつないですね。 チキータ:本当、顔はあんなにも無害そうなのにね…! 話数転換。 0:その時、倒れているジャイブの身体が少し痙攣する。 0: チキータ:…あ。 ビショップ:…ふむ。放っておいたら勝手に死にそうですね、アイツ。 チキータ:…なら、そっとしておきましょう。喉を斬られて血を流して、もう充分苦しんだでしょう。 ビショップ:ふふ…。やはりチキータ様はお優しいですね。しかし…。それは少し甘いかと。 チキータ:えっ? ビショップ:いいですか。決して恨みを抱いてはいけない。だけど、貴女にはヤツを裁く権利がある。 チキータ:び、ビショップ? ビショップ:チキータ様。提案なのですが。 0: ビショップ:貴女が彼に止めを刺してみるのはどうだろう? シーン転換。 0:場面転換。 0:館の廊下を歩く三人。 0: スケアクロウ:ふふふっ…。 ハッター:おや、どうされたのですかスケアクロウさん。何やら上機嫌なようですが。 スケアクロウ:あぁ、そう見えるかい?実はね、今日は四つも脳みそが手に入るのさ! アビス:へぇー、何かのご褒美かい? スケアクロウ:違う違う、この仕事の報酬さ! ハッター:あれ?この仕事で手に入るのはジャイブさんの一つだけじゃないんですか? スケアクロウ:いや、実は違うんだよ…!…これ、マーキュリーさんには内緒なんだけどね。 スケアクロウ:実は僕とビショップさんは最初から組んでたんだ! アビス:えぇっ、そうだったのー!?なんか全然そんな素振りしてなかったけど…。 スケアクロウ:極力雰囲気を隠すように無駄な発言とかしないように結構慎重になってたからね。いやあ、それにしても相当な洞察力を持つ“深淵”を騙せるとは、なんだか嬉しいなあ! ハッター:しかし、最初から組んでいたというのはどういうことなんです?協定を結ぶような話があったってことですよね? スケアクロウ:そうそう!言葉で説明するのは難しいから回想使わせてもらうよ! ハッター:メーターい!? シーン転換。 0:回想。 0:電話で話すビショップとスケアクロウ。 0: ビショップ:…もしもし。「脳みそ蒐集家(しゅうしゅうか)」さんの電話番号でよろしかったでしょうか。 スケアクロウ:はい、合ってますよー。殺しの依頼ですか? ビショップ:えぇ、そうなんですが…。少し変わった形で殺しをお願いしたくて。 スケアクロウ:ほぅ、というと? ビショップ:まず、暗殺対象は「ジャイブ・マーキュリー」。最近勢いを増している富豪です。そして、私はそれに仕える使用人。名前は…、今は仮称“R”ということで。 スケアクロウ:“R”さん、なるほどなるほど…。今のところは普通の依頼だけど。 ビショップ:面倒くさいのはここからです…。私は今からそのジャイブの妻であるチキータ様が貴方のサイトに私とまったく同じ依頼をするように仕組みます。 スケアクロウ:し、仕組むの? ビショップ:えぇ。屋敷の人間全員、ジャイブの素行にはうんざりしておりまして。もう殺してしまいたいくらいなのですが、訳あって私が暗殺者を雇ったとチキータ様に悟られてはまずいのです。 ビショップ:なのでもういっそ、チキータ様が貴方に依頼をするように仕組んだ方が速いと考えまして。 スケアクロウ:なるほど?なんだかよくわからないけれどかなり複雑な事情なんだね。OK、引き受けたよ。 ビショップ:ありがとうございます。なんとか二か月以内にはチキータ様からそちらに問い合わせるように致しますので。そうしたら、お手数ですがこの私の番号まで電話をお願いできますでしょうか。 スケアクロウ:わかった。計画がうまく運ぶように祈っているよ。 ビショップ:感謝いたします。そして報酬の件ですが、普段の金額の2倍の額と、生きた人間の脳みそを三つでいかがでしょうか。 スケアクロウ:えぇっ!?そんなにもらっちゃっていいのかい!?張り切ってお仕事させていただきます!! ビショップ:では、契約成立ということで。なにか不手際などがあればまた連絡させていただきます。それでは。 シーン転換。 0:回想終了。 0: スケアクロウ:―――と、いう訳らしいんだよねえ。 アビス:なるほど…。えぇ、どういう事情なのかすっごい気になるなぁそれー!♪ ハッター:それに、仮称“R”も気になります!あの方の名前のスペルにRは一つも入ってないはずなんですがね?ファミリーネームのイニシャルなのでしょうか☆ スケアクロウ:まあ、聞けそうだったら聞いてみようかな。僕も気になるし。 アビス:じゃあ、聞けたらボクにだけこっそり教えてくれないー?♪ ハッター:あぁ、ずるいですよアリスちゃん!ワタシにも教えてくださいね☆ スケアクロウ:OK、OK!さて…。どうやら着いたみたいだよ、使用人部屋。 ハッター:ありゃ、話してて全然気づきませんでした! アビス:よーし、早く情報探してとっととチキータさんたちのとこ戻るよー♪ ハッター:はーい☆ 話数転換。 0:場面転換。 0:ジャイブの部屋。 0: ビショップ:ヤツはどうせ貴女が何かしようが何もしなかろうが時期死にます。貴女がノコギリで斬ろうが斬らなかろうが、銃で撃とうが撃たなかろうが運命は同じ。 ビショップ:ならば、アイツが生きているうちにその身体を使ってストレスを発散しても、なんにも問題ない。そうでしょう? チキータ:び、ビショップ、あなたはっ…。 ビショップ:幸いなことに、得物は沢山あります。ベッドの上に。貴女が好きなものを選ぶといい。 チキータ:あ、あなたは一体、何者なんですか、ビショップ!? ビショップ:それは、貴女がアイツを殺した後にお教えしましょう。…ねえ、私の…、いや、“俺”のマジェスティ。 チキータ:っ!? ビショップ:きみは気づいていないかもしれないけれど、きみには殺しの才能が溢れている。 ビショップ:人や物を切り捨てることに一切躊躇いがなく、人にやさしくしているようでその実は自分本位に動いてる。わがままなお姫様。今はタガが外れていないだけ。 ビショップ:可哀想に。きみはまだ殺しの楽しさに気づいていないんだ。…俺が今、その理性の檻からきみを解き放ってあげよう。 チキータ:な、何を言っているの…?私はあの人を殺したくなんてっ…! ビショップ:嘘はつかなくていいんだよ。じゃあなぜきみはスケアクロウに依頼したんだい?それは殺意だよ。きみは心の奥底で、ずっとアイツを殺したいと思っていたんだ。 ビショップ:それも怨念や憎しみからじゃない。きみは、「今まで散々虐げた者に逆に虐げられ殺される」ジャイブが見たいんだ。それは好奇心。それは快楽主義。それは禁断の行為。 チキータ:…私、は…。 ビショップ:でも、いいんだよ。きみが何をしたって俺はきみを護ってあげる。何人、何十人、何百人殺そうが俺は君の味方でいてあげる。それだけ俺は君を愛してる。 ビショップ:だから、きみも「こちら側」にくるといい。一緒に、人を殺して愉しもう? ビショップ:俺だけの“ジュリエット”。 チキータ:…私があの人をどれだけ苦しめても。あなたが私を、護ってくれるのよね。だから、だから…、我慢しなくて、いいのよね? ビショップ:そうだよ。きみは自由になっていい。 ビショップ:本能に従って、悪意を押しつぶして、狂気に呑まれて。 ビショップ:きみは、アイツを。 0: ビショップ:殺したいはずだ。 0: チキータ:そうだ。私は、苦しんで死ぬアナタが見たい…。私は、ヒトを苦しめて殺したいっ…!! 0: 0:チキータはアビスのナイフを一本手に握ると、 0:ジャイブに馬乗りになり突き刺した。 0: チキータ:アハハ…アハハハハっ…♡ チキータ:アハハハ、アハハハハハハっ♡アハハハハハハハハハッッ♡愉しいっ!♡ 0: 0:何度も何度もナイフを突き刺すチキータ。 0:いつのまにか人間だったものはただの肉塊と化していた。 0: チキータ:アハハ…♡あぁ、ありがとうビショップ!私、今頭の中の霞(かすみ)が晴れたような気分なの!♡ ビショップ:ようこそ、「こちら側のセカイ」へ。歓迎するよ、“ジュリエット”。そして、「初めまして」。 0: ビショップ:俺の本当の名前は“ロミオ”。きみに一目惚れをした、ただの殺人鬼だよ。 チキータ:まあ、こんな素敵な方に一目ぼれされるなんて…♡ 0: 0:そして部屋の扉が開かれる。 0: スケアクロウ:今の声はっ?!って…、ま、マーキュリーさん?なんで血まみれでジャイブに跨ってるんだい? チキータ:…“ロミオ”。私、次はあの人を殺したいわ♡殺していい?ねえ、ねぇ♡ 0:※ここからチキータは「ジュリエット」、ビショップは「ロミオ」に名称が変わります。 ロミオ:勿論だよ。“ジュリエット”。さっき武器はベッドの上に没収したからね。一方的に苦しめることができるよ。 ジュリエット:まぁ♡とっても素敵!♡流石は私のロミオね…♡ スケアクロウ:っ、なるほどー…。本当に目覚めちゃったか…っ! ジュリエット:ねぇ、スケアクロウさん…♡脳みそがだあいすきなスケアクロウさん…!そんなアナタの脳みそは、一体どんなカタチをしてるのかしらね…?♡私、見てみたいわ…っ!♡ ロミオ:あぁ、俺も興味がある。ぜひ拝見したいね…っ! 0: 0:ロミオは鉤爪を何処からか取り出し手に付ける。 0: スケアクロウ:っ…、これは…。逃げるが勝ち、かなっ! ジュリエット:アハハッ♡逃がさないわよ!♡ 0: 0:スケアクロウが逃げ、ジュリエットたちが追おうとした、その時。 0: ロミオ:っ、危ないっ!! 0: 0:ジュリエットに向かって一本ナイフが飛んでくる。 0:ナイフはそれを庇ったロミオの左肩に刺さる。 0: ジュリエット:ロミオ! ロミオ:大丈夫、これくらいはかすり傷…。 話数転換。 アビス:いやぁー、やっぱりナイフ一本隠し持っといて正解だったね!♪ ハッター:うんうん、まさに備えあれば憂いなし、ですねぇ☆ ロミオ:…お前たち…。俺のジュリエットによく傷をつけようとしてくれたなっ…!!絶対に殺してやるッ…! ジュリエット:ええ、ええ!私にこんな楽しいことをしてくれたロミオに傷をつけたこと、許さないわっ!!必ず殺すっ…! ハッター:おぉー、なんかあれですね、「The☆本性表しました」感というより、「The☆本心出しました」感ですね、これは!哀れなウサギを思い出します…☆ スケアクロウ:二人ともっ! 0: 0:隙をついてスケアクロウがハッターと銃とアビスのナイフ、 0:そして自分のノコギリを持ってくる。 0: ハッター:おぉ、ナイスですスケアクロウさん!流石、俊敏ですねぇ☆案山子(カカシ)のくせに! スケアクロウ:コードネームは仕方ないじゃないか!それに、僕がスケアクロウなのは、「脳みそを欲しているから」なんだよ? ハッター:んー?…あぁっ!そういうことでしたか!その解説聞いてワタシ、凄くスッキリしました☆ アビス:さあて♪三対二、そして元チキータさんは殺し合いをしたことがない…。…これは形勢逆転、だね?♪ ジュリエット:ど、どうしましょうロミオ。このままだと私たち、殺されてしまうわ!そんなの楽しくない! ロミオ:大丈夫だよ、ジュリエット。「俺たちにも仲間がいるから」! 0: 0:ジュリエットをお姫様抱っこで抱え、 0:部屋の窓から外に飛び出るロミオ。 0: ハッター:逃ーげーた!…あれ、というかあの方、肩にナイフ喰らってますよね?そしてお姫様抱っこしてますよね!?なんであんなに俊敏に動けるんですかぁ!? アビス:あはは、肩撃ち抜かれて少し運動しただけでぜぇぜぇ言ってた帽子屋さんには到底真似できないねっ♪ ハッター:ぐぬぬ~…。ワタシも運動しなくてはっ…!! スケアクロウ:そんなこと言ってる暇あったら追おうよー!増援を呼ぶ的なこと言ってたから、結構面倒くさくなるかもしれないだろう! 0: 0:そう言ってスケアクロウは二人を追いかけるように窓から飛び出す。 0: ハッター:…ワタシたちも行きますか☆ アビス:そうだね♪でも、窓から飛び出して足首挫いたりしないでねー? ハッター:ワタシそこまで運動音痴じゃないですーっ!! シーン転換。 0:場面転換。 0:館の裏庭。…に、轟音が鳴り響いている。 0: スケアクロウ:…おーいおい、これは凄いなあ…。 0: 0:見上げると、そこにはヘリコプター。 0:そして、そこから垂れる縄梯子に掴まっている 0:ロミオとジュリエット。 0: アビス:おぉー、凄ーい♪映画でしか見たことないやつだぁー!いいなあ、カッコいいなあー!♪ ハッター:く、クイーンさんに頼めばっ、やらせてくれるかも、ですね…☆ スケアクロウ:は、ハッターさん?一体なんでそんな辛そうなんだい? ハッター:足首を挫きましたー☆ アビス:もう言わんこっちゃないなあー…。 0: 0: ロミオ:今日は退かせて貰う!だが、俺たちは必ずお前たちを殺しに行く! ロミオ:“ダイヤのクイーン”、そして“鮮血の魔女”!情報は集めたぞっ! ジュリエット:またお会いしましょう、皆さん!次会ったその時は、楽しくアナタたちを殺して見せるわっ!♡ 0: 0:二人がそう言い残すと、ヘリコプターは去っていく。 0: アビス:なんか、とっても怖い宣戦布告されちゃったなあー…♪ふふっ。クイーンさんに報告しなきゃねっ! ハッター:うんうん!イレギュラー続きではありましたが、アリスちゃんが笑顔でワタシは嬉しいです☆ スケアクロウ:…はぁー、こんなにはらはらしたのに報酬は実質脳みそ一個かあー…。 アビス:まあまあ、そんなに気を落とさずに♪でも、楽しかったでしょ? スケアクロウ:そりゃもちろんさ! アビス:なら良いじゃん!楽しむのが一番だよっ♪ ハッター:…あぁ、あと、あの顔と声、どこかで聞き覚えがあると思ったら…、今思い出しました。…ワタシ、ロミオさんに会ったことあります。 スケアクロウ:あれ、そうなの?どこでだい? ハッター:“お茶会”の前に雇われていた組織です。確かロミオさんはそこの諜報担当だったんですよ。 アビス:ふーん。…待って、諜報員? スケアクロウ:…そういえば“ドードー鳥”の手がかりは結局掴めず終いだったよね。 ハッター:…ちょっと帰って色々調べましょうか☆ アビス:うん、そうしよっ!じゃあボクたちはクイーンさんの所に戻るケド…、案山子(かかし)さん! スケアクロウ:んー、なんだい? 0: アビス:“ルージュ”によろしく伝えておいてっ!“深淵”(しんえん)がまた話したがってるってさ! 話数転換。 0:場面転換。 0:クイーンの事務所。 0: アビス:―――と、言うのが今回の事件のあらましさ♪ クイーン:…どうやら、なかなか面倒な集団に目をつけられてしまったようね。 チェシャー:おいおい、抗争相手が増えるのは勘弁だぜぇ…?ヒヒ。 クイーン:わかってるわよ。…ここは一つ、その時一緒になったスケアクロウ?の所属する組織と同盟を結ぶのも手かもしれないわね。 アビス:あー…。やめたほうが良いかも。“鮮血”、すーぐ掌クルクルして裏切るタイプだから…。 チェシャー:ヒヒっ…!なんかお前の困り顔を見るのは久しぶりだなあ、アビス!その顔からして、その“鮮血”とかいう女に滅茶苦茶手を焼いてたのが伺えるぜ。 アビス:うーん、悪い子じゃないんだけどね。結構欲望に忠実なタイプだから、制御が効かない、というかねー…。 0: 0:そしてハッターが駆け足でこちらに来る。 0: ハッター:皆さん、色々調べて結果出ましたよー☆ クイーン:伝えてちょうだい。 ハッター:仰せのままに、女王殿下!…とは言っても結構複雑なのですが。 ハッター:えー、結論から申し上げますと、“ドードー鳥”さんとビショップ…。“ロミオ”さんは同一人物です。 アビス:ありゃ、やっぱりそうだったんだ…♪ ハッター:そうです。どうやら“ロミオ”さんの組織はほぼ完璧な情報統制を敷いているらしく、あまり情報が集まらなかったのですが…。一応あの方ウチの組織にいた来歴がありますので、なんとかそこから集めてきました! クイーン:まあ。流石ねハッター。 ハッター:お褒めの言葉感謝です! チェシャー:そんで?複雑っつってたがどこら辺が複雑なんだ。 ハッター:あぁ、そうでしたそうでした。えーっとですねぇ…。あの方がここに来た目的、どうやら諜報をするためだったっぽいのですよ。 チェシャー:…と、言うとォ? ハッター:まず、ロミオさんの組織からクイーンさんの情報を盗むためにロミオさんが送り込まれた。そして、そのロミオさんをクイーンさんがジャイブさんの情報を盗むためにジャイブ邸へ送り出した。 ハッター:つまりロミオさんは、スパイ先でスパイを命じられていた、というわけですね!だから“ドードー鳥”さんは裏切ったのではなく、最初から裏切っていたという訳です☆ クイーン:そ、そんなことある…? アビス:…待って。ということはだよー?クイーンさんのお金の流れやボクたちの情報、あっちに全部漏れてたってことじゃない? チェシャー:…おい。普通に緊急事態じゃねえか!? クイーン:き、緊急幹部会開きましょう!どうすればこの状況を乗り切れるかの! ハッター:ワタシ、“怪物”さん呼んできますねー☆ チェシャー:おいおい、唐突に大ピンチってアニメの第一話じゃねえんだぞォ…? 0: 0: アビス:(N)霞の世界を抜け出して、殺し屋達は今日も騒ぐ。 アビス:(N)怨念さえも覆したら、きっと世界は広がるのさ! 0: アビス:(N)今日もマーダー、遊びましょ!♪ 0: 0: 0:アビスの無邪気な笑い声が響いている…。 0: 0: 0:―――Change the MistyFate.

0:2022年1月29日、金曜日……。 0: 0: 0: 0: 0:夜。とある館の裏庭。一人の女性が不安そうに立っている。 0: チキータ:…今日で、終わり。今日でようやく、こんな生活から抜け出せる。…使用人さんたちには、悪いけれど。ごめんなさい。私は、私はもう耐えられないの。 0: スケアクロウ:ふふ。どうやら今回の依頼主様は大変愉快な方なようだ。 0: チキータ:っ…! スケアクロウ:こんばんは。チキータ・マーキュリーさんで良かったかな? チキータ:は、はい。えっと、あなたが、その…。 スケアクロウ:大丈夫、そんなに緊張しないで。別に貴女を殺すわけではないのだから。 チキータ:す、すみません…! スケアクロウ:謝ることもないよ。ふふ、変わったお嬢さんだ。さて、では改めて自己紹介を。僕の名前は―――、っ、危ないっ! チキータ:えっ? 0: 0:スケアクロウがチキータの手を掴み引き寄せる。 0:先ほどまで二人が経っていた場所にナイフが飛んでくる。 0: チキータ:な、ナイフ…!? スケアクロウ:…マーキュリーさん、貴女は僕の後ろに。どうやらイレギュラー発生のようだ。 0: 0:暗闇から現れたのは二人。幼い顔つきの人物と、 0:シルクハットが印象的な人物。 0: アビス:凄いねぇ、キミ。よくボクのナイフに気づけたね? ハッター:仕方ありませんよアリスちゃん。あの動きからして、どうやらあの方も我々の同胞のようですし?☆ アビス:うんうん、じゃあ「“鳥さん”で間違いない」ね、オッケー♪傍にいるのは夫人だろうし…。うん、一対二なら楽そうだ!殺っちゃおう!♪ ハッター:はいはーい☆ 0: 0:アビスはナイフ、ハッターはハンドガンをそれぞれ取り出し、構える。 0: チキータ:いやっ…。誰、なの…。私は「脳みそ蒐集家(しゅうしゅうか)」さんしか呼んでないはずっ…。 スケアクロウ:…なんだ、何が起こってる? チキータ:あ、あのっ…、これ大丈夫なんですか…? スケアクロウ:(チキータの台詞を待たずに)仕方ない…、一旦逃げようかっ! チキータ:わっ!? 0: 0:スケアクロウがチキータを抱え、館の中に逃げ込んでいく。 0: ハッター:はーやーいっ!?どうしましょう、アリスちゃん!もうワタシの銃の射程から抜けられてしまいました! アビス:うーん、クイーンさんからの情報じゃあんなに足が速いなんて聞いてなかったんだけどなあ…。まあいっか。考えてる暇あったら追うよっ♪ ハッター:今考えてたの、アリスちゃんですけどねーっ! シーン転換。 0:場面転換。 0:屋敷の倉庫に逃げ込んでいたチキータとスケアクロウ。 0: スケアクロウ:ありがとうねマーキュリーさん。良い隠れ場所だ。…今のうちにイレギュラーが起きたこと、一応本部に連絡しておこうかな。 0:携帯電話を取り出しメールを打つスケアクロウ。 チキータ:あの、あの方たちは一体…? スケアクロウ:すまない、それが何もわからないんだ…。目的も、誰なのかも。しかし確実にいえることが一つある。あれは、僕と同じ殺し屋だ。 チキータ:こ、殺し屋…。 スケアクロウ:…どうしようね?もし偶然、彼らも僕らと同じ人物を狙っていたら。僕の仕事がなくなってしまう。 チキータ:そ、その時は……。えっと…。 スケアクロウ:フフ…。困らせてしまったね。すまないすまない。 スケアクロウ:さて、すっかりうっかり自己紹介を忘れていたよ。まあ知っているだろうが、改めて名乗らせてもらうよ。 スケアクロウ:僕の名前はスケアクロウ。元マフィアの殺し屋さ。身長178cm、体重はトップシークレット。好きなことはぼーっと立っていることと脳みそを抉ったり眺めること。よろしくね。 チキータ:こ、こちらこそよろしくおねが―――っ、足音がします…っ。 スケアクロウ:…本当だね、こっちに向かってきてる。マーキュリーさん、音を立てないように…! 0: 0:その時、倉庫の扉が開く。 0: スケアクロウ:まずいっ…。 チキータ:ぁ…。 0: ビショップ:…お、奥方様?なぜここに?今日はお眠りになられたはずでは? 0: 0:扉の先に立っていたのは、使用人の服を着た人物だった。 0: ビショップ:それに…っ!あなた、誰です!?倉庫で奥方様と二人、侵入者ですか!?くっ、奥方様から離れなさい! チキータ:待ってくださいビショップ!勘違いですっ…! ビショップ:そ、そうなのですか…?ならば、この方は一体…? スケアクロウ:…その前に、君も倉庫に入って扉を閉めてほしい。死にたくないのなら。 ビショップ:死っ…? チキータ:とにかく、言うとおりに!事情も説明しますから…! ビショップ:は、はい…! 話数転換。 0:場面転換。 0:ハッターとアビスが廊下を歩いている。 0: ハッター:あーらーら。どうやら完全に見失ってしまいましたねぇ。 アビス:仕方ないよ、このお屋敷結構大きいし。僕たちはここの地図ほとんど頭に入ってないんだもん。 ハッター:ですねぇ…。ふむむー。どうしたものか。 アビス:これから手当たり次第に探すのもなかなか骨が折れそうだしね。あー、全員殺せたらいろいろ楽なのにー。 ハッター:またまたー、楽とか言っちゃって、本当はただ殺したいだけのくせにー☆ アビス:あはは、バレちゃったか♪ ハッター:あっ、そうですアリスちゃん!取り敢えずさっきの方は後回しにして、先に「もう一人」の方殺しに行きませんか!諸悪の根源はそっちですし、ワンチャンそっち殺すだけでも依頼達成かも! アビス:おぉー、流石帽子屋さん!大天才っ!♪そうと決まればぱっぱか行こーっ!♪ ハッター:はぁーい☆…あれ、そっちからよりこっちの方が速いんじゃなかったですっけ? アビス:えっ、嘘だあ。こっちから行けば階段あがった方が速いはずだよー? ハッター:…えぇー?…なるほど、アリスちゃんがそういうのなら間違いないですねぇ☆ではそっちルートで!☆ アビス:はぁーい、ではしゅっぱあーつっ!♪ ハッター:アイ、アイ、アリスちゃんーっ!☆ シーン転換。 0:場面転換。 0:倉庫部屋の三人。 0: チキータ:つまり私は、主人を…、「ジャイブ・マーキュリー」を殺すために、この方を雇ったんです。 ビショップ:なっ…。ということはこちらの方は殺し屋、ですか。 スケアクロウ:あぁ、そうだよ。初めまして、っえーっと、すまないなんと言ったっけか。 ビショップ:…ビショップ、です。 スケアクロウ:ありがとう。ごめんね、物覚えが悪いんだー…。 チキータ:…ごめんなさい、ビショップ。でも、もうこれしかないと思った、から…。 ビショップ:…いえ、奥方様のご決断を責めるつもりは毛頭ありません。むしろ…、良くここまでお耐えになりましたね。 チキータ:…あなたは私を、責めないの?だって私のこの身勝手な行動であなたは職を失うことになるし、もしかしたら世間から疑いの目を浴びるかもしれないのに…。 ビショップ:それで奥方様が救われるというのであれば、本望です。 スケアクロウ:フフ…。それにしても。その会話からして、君たちは彼に何か恨みを持っていたのかな?差し支えなければ教えてはくれないかな。興味が湧いてきてしまったよ。 チキータ:…別に構いません。明るい話では、ないですが…。 スケアクロウ:承知の上さ。昔から人の過去の話を聞くのが好きなんだ。それが楽しいモノだろうが、忌むべきものだろうが関係なく、ね。 チキータ:で、では…。 ビショップ:お待ちください。…この話を奥方様の口から語らせるのはあまりにも酷です、スケアクロウ。ここは私が語りましょう。 チキータ:っ…。ありがとう、ビショップ。お願いするわ。 ビショップ:はい。とは言っても、私がこの屋敷の使用人になったのは半年前のことなので、奥方様から聞いた話を私が語る、というだけなのですが…。 0: ビショップ:今から523日前。奥方様はこの屋敷の主人、ジャイブ様とご結婚なされました。…しかし、その結婚に奥方様の意志はないも同然だったのです。 ビショップ:…チキータ様に一目惚れをした彼は、自身が持つ資産と地位、そして脅しを使い、強引にチキータ様を娶(めと)りました。 チキータ:……。 スケアクロウ:なるほど。…しかし、そういうタチの男は、きっと籍を入れた後の方がひどい。実際そうだったのだろう? ビショップ:…えぇ。結婚してからの日々は、奥方様にとって地獄のようなものだったでしょう。物のように扱われ、逃げれば社会的に抹殺すると脅され…、 ビショップ:もしも助けを求めないようにと、チキータ様の親しい友人はすべてこの国から追い出されるか、殺害された。 チキータ:でも、もう、いいの。…今日で全て終わるから。スケアクロウさんが、あの人を殺してくれるのだから…。 スケアクロウ:そういうことだったのか。…うん、教えてくれてありがとう。二人とも。 チキータ:いえ…。 ビショップ:…私からもよろしくお願いします。なんなら苦しむように殺していただけると。…チキータ様を苦しめたのです、ただ殺すだけでは生温い。 チキータ:もう、本当にビショップは…。なぜ半年ほどしか付き添っていない私にそこまで感情移入できるのかしら、ふふ。 ビショップ:それはあなたのことを心からお慕い申しているからです、ユアマジェスティ。 チキータ:本当、口が上手なんだから…。ありがとう、ビショップ。 ビショップ:マイプレジャー。 話数転換。 ビショップ:…そういえば、先ほど説明された殺し屋の二組?はどこに行ったのでしょう?さっきからずっと話していましたが、足音も何も聞こえないような…。 スケアクロウ:おや、本当だね。すまない、正直すっかり忘れていたよ。 スケアクロウ:…じゃあ、そろそろお待ちかね。依頼を遂行しに行こうか。…あの二組はきっとまだ僕らを探しているだろうから、マーキュリーさんたちはここにいたほうが良いと思うけれど。 チキータ:…いえ。危険を承知のうえで、そこに立ち会わせて下さい。少しでも私は、復讐がしたい。 ビショップ:ご安心を、チキータ様。あなたは私がお守りします。何に換えても―――。 0: 0:その時、一つ上の階から「ドンッ!!」と大きな音が鳴る。 0: チキータ:っ、今のは…?! ビショップ:音の方向的に…。ジャイブの部屋? スケアクロウ:まさか…。本当にターゲットが同じだったのか…!?いや、考えるのは後だ。すまない、そこまで案内してくれるかな。 チキータ:は、はいっ…! シーン転換。 0:場面転換。 0:ジャイブの部屋に、アビスとハッター。 0: ハッター:ほら、だからこっちからのが近いって言ったじゃないですかぁー…? アビス:あはは、細かいことは気にしなーい!それにしても、なんかすっごい警備ザルだったねぇ♪ ハッター:少し調べましたが、こちらのご当主ジャイブ・マーキュリーさんはなかなかのクソ野郎で、使用人からや夫人に嫌われまくってたらしいですよ? アビス:なーるほど!警備員さんからも見放されてたってことか!…そういうことなら、この館の人たちの怒りの分まで、念入りにぐちゃぐちゃにしないとね♪ ハッター:ですね☆…しかし、こちらを裏切ってそんな方に与(くみ)するとは、よっぽどの変わり者だったんですね、“ドードー鳥”さんは。 アビス:んー、まあ気を見計らって殺して家を乗っ取るつもりだったんじゃない?ずっとクイーンさんに雇われてるよりそっちのがよっぽどお金貰えるし♪ ハッター:その計画はどうやらワタシたちのせいでお釈迦になるわけですがね☆ アビス:うんうん、ちゃあんと女王様の代わりにボク達が「Off with your head」(オフ・ウィズ・ユア・ヘッド)してあげなくっちゃ!♪…じゃ、そろそろ殺っちゃうね! ハッター:どうぞ、その役目はアリスちゃんにお任せいたします☆ アビス:アリガト♪それじゃあ…。じゃあね、ジャイブ・マーキュリーさん♪ 0: 0:アビスがナイフをジャイブの喉元に立て、喉を切り裂く。ジャイブは声を出せず、苦痛から床に転がり落ちる。 0: アビス:アハハハっ♪おはようございまーす!最悪だろうけど、ご機嫌いかが?♪ ハッター:ついでに赤い赤いワインはいかが?☆ アビス:えっ、帽子屋さんお酒持ってきたのー?♪ ハッター:いえ、ありませんよ?ほら、あれですよ!赤い血をワインと見立てる比喩表現です☆ アビス:なあんだ、飲みたかったなあ…。 ハッター:じゃあこの仕事が無事に終わったらみんなでパーティーしましょう、パーティー☆ アビス:ちょっと、それ死亡フラグじゃん!洒落にならないよぉー♪もう…♪フラグ回収したくないから、もうパパっと殺しちゃうね? ハッター:…あぁ、そんな恐怖しないで!ご安心ください、ご当主。ワタシたちのような者が来たということは、アナタが死ぬことで幸せを得る人間がいる、ということなんですから☆ アビス:そーそー♪だから、安心して逝っちゃってねぇ♪ばいばーいっ!♪ 0: 0:アビスがそのままジャイブの胸を裂こうとする―――。 0: スケアクロウ:悪いね、それは僕の獲物なんだっ! 0: 0:―――と、同時にノコギリを携えたスケアクロウがアビスに向かって切りかかってくる。 0:アビスはそれをすれすれで躱す。 0: アビス:おーっとっ…?危ないなあ。…って、あれぇ!?アナタ!? ハッター:大丈夫ですかアリスちゃん! 0: 0:そう言いながらスケアクロウに六発発砲するハッター。 0:スケアクロウもそれをゆらりと躱す。 0:ジャイブは血の流し過ぎで気絶したようだ。 0: ハッター:あーらーら!?普通この暗闇で銃弾全部躱せますかね!? スケアクロウ:そりゃあ、僕もこの道案外長いからねっ!殺し合いは一番慣れている分野さ…! ハッター:マージですか!ならば出し惜しみはできません、次弾装填しまーす☆ アビス:帽子屋さん、一旦攻撃ストップ。 ハッター:えぇ!?なぜですーっ?! アビス:いいから!…いやぁ、さっきはいきなり襲い掛かっちゃってごめんね、殺し屋さん!どうやらボクたち、ちょっと勘違いをしてたみたいなんだ♪ スケアクロウ:か、勘違い…? ハッター:…あれ、ということはこの方、“ドードー鳥”さんではない…!? アビス:どうやらね。実はボクとしてもアナタと殺し合うのは本意じゃなくてさ…。だから、ちょっとだけ話し合わない?……扉の向こうにいる、お二人も交えて。 チキータ:なっ…! 話数転換。 スケアクロウ:それは、どういう意味かな? アビス:そのままの意味だよー♪どうやら全員状況を把握できてないっぽいからさ?ここはいったん武器を置いて、状況整理したほうがいいんじゃないかなあって♪ スケアクロウ:…ならば、それに応じる条件を一つ提示してもいいかい? アビス:どーぞ♪ スケアクロウ:…この話し合いが良い方に進んで、和解できたなら、そこに転がっているジャイブの脳みそを僕にくれないか。 ハッター:の、のうみそ…? スケアクロウ:そう、脳みそ。人の脳みそを集めて家に飾るのが趣味なんだ。 ハッター:はぁー、人の性癖ってホント凄いですねぇ…☆ アビス:そんなことならお安い御用さ♪ スケアクロウ:ありがとう、恩に着るよ小さな殺し屋さん! アビス:どういたしまして?♪さて、扉の向こうにいるお二人はどうかな? チキータ:……。 ビショップ:ならば私からも一つ条件を。私たちが部屋に入る前に、三人ともベッドの上に自分の武器を全て置いてください。話はそれからでしょう。 アビス:勿論いいよぉ♪ほら、帽子屋さんも、アナタも。 ハッター:はいはーい、アリスちゃんの指示ならば喜んで☆ 0: 0:ハッターは拳銃と弾を、 0:アビスは八本のナイフを、 0:スケアクロウはノコギリをそれぞれベッドの上に置く。 0: スケアクロウ:これでいいかな、ビショップさん。 ビショップ:…えぇ。チキータ様、中に入りましょう。 チキータ:…っ。 ビショップ:大丈夫。何があっても私が貴女様をお守りいたします。 チキータ:…ありがとう、ビショップ。…入りましょう。 ハッター:あ、お入りになられるのでしたら部屋の電気をつけていただけませんか!話し合いをするのでしたら相手の顔がよぉーく見えたほうが良いはずですので☆ ビショップ:…かしこまりました。 0: 0:部屋の電気をつけ、チキータとビショップが部屋に入って来る。 0: ハッター:まーぶーしっ!?目があ、目があーっ! ビショップ:騒がないでください、あまり大声を出されても困り―――っ!? チキータ:ど、どうしたの、ビショップ? ビショップ:い、いえ…。なんでもありません。お気になさらず。 チキータ:そ、そうですか…? スケアクロウ:それで、話し合いというのは? アビス:まあまあ、まずは自己紹介からさせてよ♪ボクの名前はアビス。とある依頼でこの屋敷にやってきた殺し屋さ♪ スケアクロウ:なっ、アビスだって!?それって昔“鮮血”とタッグを組んでいた、あの“深淵”(しんえん)かい!? アビス:そうだよぉー!だからボクはアナタのことをよぉく知ってるんだあ、「“ジュリアス”の案山子(かかし)」、スケアクロウさん♪ ビショップ:……。 スケアクロウ:っ…。確かに、君は僕の名前はおろか、出自まで知っているようだ…。 アビス:ふふ、なんならもっと詳しく言えるよっ?♪「脳みそ蒐集家(しゅうしゅうか)」、「カチ割り紳士」、「ブレインキラー」など、様々な異名を持つ凄腕の殺し屋であり、元マフィアの暗殺者…♪ アビス:脳みそを集めるのが趣味だけれど、もっとも特筆するべきなのはその得物(えもの)。ノコギリを用いた近接戦闘を得意とする…。…ねえ、ずっと知りたかったんだけど、なんでノコギリなの? スケアクロウ:それは勿論、ロマンさ。ホラー映画でよくあるだろう?ノコギリを持った殺人鬼が追いかけてくるシーン。アレがとってもカッコ良かったから憧れて、少し使いにくいけど使ってる。それだけさ。 ハッター:使いにくいという自覚はあるのですねえ…。☆あ、ワタシはアリスちゃんの仕事仲間のイカれた帽子屋、ハッターと申しまーす!以後お見知りおきを…☆ アビス:あ、一応お二人にも自己紹介をお願いしていいかな?なんとなくわかってるけど、一応ね♪ チキータ:は、はい…。私は、チキータ…、チキータ・マーキュリーです。そこで横たわっているジャイブの妻、です。 ビショップ:私はこの屋敷の使用人のビショップと申します。 ハッター:…アレ?アナタ…。えーっと…、ビショップさん。 ビショップ:…な、なんでしょうか?そんなにじろじろ見て。 ハッター:…うーむーむ、どこかの誰かに似ている気がしたんですが…、すみません、思い出せなかったです☆ ビショップ:…そうですか。 ハッター:えぇ、すみません…。あ、話が脱線してしまいましたね☆どうぞ、アリスちゃん! アビス:ありがと、帽子屋さん♪…それじゃあ、一つ質問していいかな、お三方? チキータ:ど、どうぞ? アビス:…スケアクロウさんは、誰に呼ばれて、誰を殺すためにこのお屋敷まで来たのかな?♪ チキータ:わ、私が呼びました…!殺害対象は、私の夫、です…。 ハッター:わーぉ☆ アビス:あー、やっぱりそうなんだ♪ スケアクロウ:その反応…、予想してはいたけど、どうやら君たちもあの人を殺すために来たようだね。 ハッター:大正解です。しかし…。これは見事なダブルブッキングですねぇ☆ 話数転換。 ビショップ:しかし、貴方たちは誰に呼ばれてジャイブを殺しに?チキータ様の場合は私怨ですが…、まさか、他の方からも恨みを買っていたり? アビス:うーん、ちょっと違うかなあ。それに、実はボクたちが殺しに来たの、実はジャイブさんだけじゃないんだよねえ。 チキータ:えっ…。なら、わ、私ですか…? ハッター:いいえ、アナタじゃあありません!もしアナタなのであれば今、この場で真っ先に殺してますよぉ☆ ビショップ:チキータ様に手を出すのであればその前に私が貴方を殺して差し上げる。 ハッター:むぅ、怖いですねぇ…。 スケアクロウ:でも、それなら本当に誰なんだい? アビス:“ドードー鳥”。 チキータ:…ど、ドードー? アビス:そう。僕達の雇い主さんがこの館に忍ばせたスパイの呼び名さ♪ ビショップ:なっ、スパイですって!? ハッター:では少しややこしいですが説明をば☆ワタシとアリスちゃんはとある富豪の方に雇われていまして。そしてその御方は半年ほど前、ジャイブさんが貿易に手を染めているのを嗅ぎつけた。 ハッター:その取引の拡大の勢いが当時はかなり良かったので、我らが麗しの女王殿下はこちらの屋敷に諜報員を送り込むことにしたのです。コードネームは“ドードー鳥”。 ハッター:しーかーし!“鳥さん”は送り込んで一か月も経たないうちに音信不通になり、そのまま半年が経過。きっと裏切ったのだろうということで、ジャイブさんもろとも首を斬って来い☆という命令が下され。 アビス:ボクたちが送り込まれた、というわけさ♪ スケアクロウ:なるほど…。 チキータ:じゃあつまり、裏庭で私たちに襲い掛かってきたのは…。 アビス:そう、スケアクロウさんを“ドードー鳥”さんと勘違いしちゃったから♪ホントごめんねぇ…♪ スケアクロウ:全然構わないよ、確かにそのシチュエーションなら僕でも勘違いするだろうしね…。誤解が解けて良かった。 ビショップ:…それで。これからどうするのでしょうか。ジャイブは殺すとして。 ハッター:うーん、ワタシたちとしては“ドードー鳥”さんを殺さないと多分雇い主様から怒られてしまうので、なんとか見つけ出したいんですが…。この館に詳しいお二方は何か知っていたりしませんかねぇ…? チキータ:えっと、そのスパイが送り込まれたのは確か、半年前ですよね?…あっ、でも半年前と言ったら…。……ビショップ。 ビショップ:…はい、確かに私がこの屋敷に配属されたのは190日前…、およそ半年前です。 ハッター:正確な日数を覚えていらっしゃる!? ビショップ:ええ。得意なんです。正確な日数の記憶と計算。 アビス:…ふぅん。まあ一応聞くけど、アナタは違う、よね? チキータ:ビ、ビショップは絶対に違います!ビショップはこの屋敷に来てすぐ私の傍仕えになったんです。そして半年間ずっと、夫ではなく私の傍にいた。朝から晩まで、ずっとです。 チキータ:これじゃあそちらの情報をこちらに流すことも、その逆もできなければ、お金の動きすらろくに知らないんです!だから、ビショップは違いますっ…! ハッター:なるほど。お嬢さんが言うのならば間違いありませんねぇ☆ ビショップ:そう言っていただきありがとうございます、チキータ様。 チキータ:いえ。半年間、あなたはずっと私のことを支えてくれていたもの。これくらいは当然よ。…ねえ、この地獄を抜け出した後も、私についてきてくれる? ビショップ:…っ!勿論でございます、ユアマジェスティ…! スケアクロウ:ふふふっ…!なんかさ、マーキュリーさんって殺し屋の才能ありそうだよね。 チキータ:えっ…、私が、殺し…? アビス:あー、それボクも思ってた♪なんかおどおどしているように見えて、ずっと眼が物怖じしていないっていうか♪ホント、向いてるんじゃない?♪ ビショップ:…話が逸れているので戻しますが。お二人は今からその“ドードー鳥”を探すのですか? ハッター:えぇ、ワタシはそのつもりでいましたよ!一応諸悪の根源は今から殺すのですし、別に生かしても問題ないのでは、とも思いましたが…。クイーンさんに怒られるの、怖いので☆ アビス:そうだね…。まあなーんも手掛かりないし、もしかしたらもうこの館にはいないかもしれないんだけどね!一応探すだけ探してみよっかぁ♪ ビショップ:…では、私と同時期に入った使用人が使っている部屋を数個教えましょう。もしも内通者がいるのなら、机の引き出しや電子端末を調べればわかるはずです。 ハッター:おや、本当ですか!そーれはありがたい☆ スケアクロウ:しかし、そんなことをしてしまっていいのかい?君の同業の個人情報を売るようなものだけれど…。 ビショップ:構いません。この夜が明ければジャイブは死に、この家はなくなり、もうその使用人たちと会うこともないのです。 アビス:あはは、そっかぁ♪じゃあ、ありがたく教えてもらうとしようかな! チキータ:…もしかしたら、ビショップにも殺し屋の素質があるのかもしれないですね。ふふっ…。 ビショップ:…そうかもしれませんね。 話数転換。 0:ビショップに部屋を教えてもらったハッターとアビス。 0: ハッター:さて、ではワタシたちはそこの部屋まで行ってきますが…。お三方はどうされます? スケアクロウ:うーん、どうしようかな。 チキータ:わ、私はこの部屋に残ります。きっと、アビスさんたちについて行っても足手まといになりそうですし…。 ビショップ:ならば私もこの部屋に残らせていただきます。 アビス:オッケー♪案山子(かかし)さんはー? スケアクロウ:…じゃあ、僕はついて行こうかな。“深淵”(しんえん)と話したいこともあるし。 ハッター:かしこまりました☆では、行きましょうか! アビス:あぁ、待って!…とっても空気だったから忘れてたけど…、あれ、どうする?多分まだかろうじて息あるよねー。 0: 0:ジャイブを指さすアビス。 0: スケアクロウ:あー…。とりあえず放置でもいいんじゃないかな。ほら、クソ野郎は十分いたぶってから殺すべしって昔から言われてるだろ? チキータ:初耳です。 アビス:だろうね♪でも、彼が所属してた組織ではずっと言われてたんだよ!「気に入らないなら力で潰せ、クソ野郎はいたぶって殺せ」ってね♪ チキータ:なんてバイオレンスな…。 ハッター:仕方ないですよ、だってマフィア組織だったのでしょう?☆ スケアクロウ:そうだよー。結構長い間裏のセカイで覇権を握ってた“ジュリアス”って組織でね。前のボスが統治してた時はなかなか良かったんだけど、ある日、右腕と一緒に忽然と姿を消しちゃってね。 スケアクロウ:それでボスの左腕だった女マフィア、“鮮血”がボスになったんだけど、彼女、なかなか指揮を執るのが下手でね。一年も経たずに組織は瓦解(がかい)してしまった。 スケアクロウ:で、行く先がなくなった僕を残った組織の資金を使って富豪になった“鮮血”が拾って、今はそこで用心棒やったり、個人サイト立ち上げて今日みたいに殺し屋やったりしてるんだ。 アビス:それで、マフィア時代の“鮮血”さんと一時期タッグを組んでたのがこのボクなんだー!凄いでしょー♪ ハッター:素晴らしい、流石ですアリスちゃんっ!☆ チキータ:…この方はアビスさんの話になると本当になんでも全肯定になるのですね。 スケアクロウ:でも、言うてビショップさんもマーキュリーさんに対してそんな感じだよ? ビショップ:…そんな自覚は、ないのですが。 ハッター:ワタシもありませんでしたね。 アビス:駄目だこりゃ♪ ビショップ:ところでスケアクロウ。興味本位の質問なのですが。 スケアクロウ:うん?何かな? ビショップ:貴方が今居る…、“鮮血”?さんのチームでしたっけ。そのチーム、貴方以外にはどんな方々がいるのでしょう。 チキータ:ビショップが他人に興味を持つなんて珍しいわね。 スケアクロウ:変わり者ばっかだよ。“心臓喰い”と、戦闘狂の“武器商人”、引きこもりの“情報屋”。そしてリーダー、“鮮血”の魔女。僕を入れて五人かな。 ビショップ:…ふむ、なるほど……。 チキータ:因みに、アビスさんのチームはどんな方々がいるんですか? アビス:ボクたちのとこも変な人ばっかりだよぉ♪ ハッター:少し気の強い我らがリーダー“ダイヤのクイーン”、ニヤニヤ笑いの傍仕え“チェシャ猫”、そしてワタシたちと、もう一人☆ ビショップ:もう一人、ですか。 ハッター:えぇ☆ワタシたちはあの方を“怪物”、と呼んでいます。 チキータ:か、怪物…? ビショップ:…ふむ。 アビス:いいけど、でもそれは一通り部屋を見終わってからね♪すっかり話が脱線しちゃった。早くしないと陽が昇っちゃうよ! スケアクロウ:あぁ、そうだったね。ごめんごめん、さっきからよく脱線しちゃうね…。そろそろ行こうか。 ハッター:はあい!それではお二方、またあとでお会いしましょう☆ 0: 0:三人が部屋を出ていく。 0: ビショップ:…しかし、まさかチキータ様が殺し屋に依頼をするだなんて思いませんでした。 チキータ:私も自分でびっくりしているわ。 ビショップ:ちなみに、どうやってスケアクロウのサイトに辿り着いたのですか? チキータ:それが、偶然だったの。インターネットで調べ物をしていたら、間違ったリンクを踏んでしまって。そうしたらそこがたまたまスケアクロウさんの殺し屋サイトで。 ビショップ:…ふふっ、なるほど。そうでしたか。 チキータ:えぇ、こんな偶然ってあるのね。…でも、ほんの少しだけ後ろめたいの。 ビショップ:それはなぜです? チキータ:スケアクロウさんは依頼の報酬に、お金と脳みそを一つを要求するの。暗殺対象の脳みそは勿論スケアクロウさんが持ち帰るのだけれど、それとは別にもう一つ…。 ビショップ:…つまり、知り合いを一人犠牲にしなくてはいけない、ということですか。それはなかなかにえげつないですね。 チキータ:本当、顔はあんなにも無害そうなのにね…! 話数転換。 0:その時、倒れているジャイブの身体が少し痙攣する。 0: チキータ:…あ。 ビショップ:…ふむ。放っておいたら勝手に死にそうですね、アイツ。 チキータ:…なら、そっとしておきましょう。喉を斬られて血を流して、もう充分苦しんだでしょう。 ビショップ:ふふ…。やはりチキータ様はお優しいですね。しかし…。それは少し甘いかと。 チキータ:えっ? ビショップ:いいですか。決して恨みを抱いてはいけない。だけど、貴女にはヤツを裁く権利がある。 チキータ:び、ビショップ? ビショップ:チキータ様。提案なのですが。 0: ビショップ:貴女が彼に止めを刺してみるのはどうだろう? シーン転換。 0:場面転換。 0:館の廊下を歩く三人。 0: スケアクロウ:ふふふっ…。 ハッター:おや、どうされたのですかスケアクロウさん。何やら上機嫌なようですが。 スケアクロウ:あぁ、そう見えるかい?実はね、今日は四つも脳みそが手に入るのさ! アビス:へぇー、何かのご褒美かい? スケアクロウ:違う違う、この仕事の報酬さ! ハッター:あれ?この仕事で手に入るのはジャイブさんの一つだけじゃないんですか? スケアクロウ:いや、実は違うんだよ…!…これ、マーキュリーさんには内緒なんだけどね。 スケアクロウ:実は僕とビショップさんは最初から組んでたんだ! アビス:えぇっ、そうだったのー!?なんか全然そんな素振りしてなかったけど…。 スケアクロウ:極力雰囲気を隠すように無駄な発言とかしないように結構慎重になってたからね。いやあ、それにしても相当な洞察力を持つ“深淵”を騙せるとは、なんだか嬉しいなあ! ハッター:しかし、最初から組んでいたというのはどういうことなんです?協定を結ぶような話があったってことですよね? スケアクロウ:そうそう!言葉で説明するのは難しいから回想使わせてもらうよ! ハッター:メーターい!? シーン転換。 0:回想。 0:電話で話すビショップとスケアクロウ。 0: ビショップ:…もしもし。「脳みそ蒐集家(しゅうしゅうか)」さんの電話番号でよろしかったでしょうか。 スケアクロウ:はい、合ってますよー。殺しの依頼ですか? ビショップ:えぇ、そうなんですが…。少し変わった形で殺しをお願いしたくて。 スケアクロウ:ほぅ、というと? ビショップ:まず、暗殺対象は「ジャイブ・マーキュリー」。最近勢いを増している富豪です。そして、私はそれに仕える使用人。名前は…、今は仮称“R”ということで。 スケアクロウ:“R”さん、なるほどなるほど…。今のところは普通の依頼だけど。 ビショップ:面倒くさいのはここからです…。私は今からそのジャイブの妻であるチキータ様が貴方のサイトに私とまったく同じ依頼をするように仕組みます。 スケアクロウ:し、仕組むの? ビショップ:えぇ。屋敷の人間全員、ジャイブの素行にはうんざりしておりまして。もう殺してしまいたいくらいなのですが、訳あって私が暗殺者を雇ったとチキータ様に悟られてはまずいのです。 ビショップ:なのでもういっそ、チキータ様が貴方に依頼をするように仕組んだ方が速いと考えまして。 スケアクロウ:なるほど?なんだかよくわからないけれどかなり複雑な事情なんだね。OK、引き受けたよ。 ビショップ:ありがとうございます。なんとか二か月以内にはチキータ様からそちらに問い合わせるように致しますので。そうしたら、お手数ですがこの私の番号まで電話をお願いできますでしょうか。 スケアクロウ:わかった。計画がうまく運ぶように祈っているよ。 ビショップ:感謝いたします。そして報酬の件ですが、普段の金額の2倍の額と、生きた人間の脳みそを三つでいかがでしょうか。 スケアクロウ:えぇっ!?そんなにもらっちゃっていいのかい!?張り切ってお仕事させていただきます!! ビショップ:では、契約成立ということで。なにか不手際などがあればまた連絡させていただきます。それでは。 シーン転換。 0:回想終了。 0: スケアクロウ:―――と、いう訳らしいんだよねえ。 アビス:なるほど…。えぇ、どういう事情なのかすっごい気になるなぁそれー!♪ ハッター:それに、仮称“R”も気になります!あの方の名前のスペルにRは一つも入ってないはずなんですがね?ファミリーネームのイニシャルなのでしょうか☆ スケアクロウ:まあ、聞けそうだったら聞いてみようかな。僕も気になるし。 アビス:じゃあ、聞けたらボクにだけこっそり教えてくれないー?♪ ハッター:あぁ、ずるいですよアリスちゃん!ワタシにも教えてくださいね☆ スケアクロウ:OK、OK!さて…。どうやら着いたみたいだよ、使用人部屋。 ハッター:ありゃ、話してて全然気づきませんでした! アビス:よーし、早く情報探してとっととチキータさんたちのとこ戻るよー♪ ハッター:はーい☆ 話数転換。 0:場面転換。 0:ジャイブの部屋。 0: ビショップ:ヤツはどうせ貴女が何かしようが何もしなかろうが時期死にます。貴女がノコギリで斬ろうが斬らなかろうが、銃で撃とうが撃たなかろうが運命は同じ。 ビショップ:ならば、アイツが生きているうちにその身体を使ってストレスを発散しても、なんにも問題ない。そうでしょう? チキータ:び、ビショップ、あなたはっ…。 ビショップ:幸いなことに、得物は沢山あります。ベッドの上に。貴女が好きなものを選ぶといい。 チキータ:あ、あなたは一体、何者なんですか、ビショップ!? ビショップ:それは、貴女がアイツを殺した後にお教えしましょう。…ねえ、私の…、いや、“俺”のマジェスティ。 チキータ:っ!? ビショップ:きみは気づいていないかもしれないけれど、きみには殺しの才能が溢れている。 ビショップ:人や物を切り捨てることに一切躊躇いがなく、人にやさしくしているようでその実は自分本位に動いてる。わがままなお姫様。今はタガが外れていないだけ。 ビショップ:可哀想に。きみはまだ殺しの楽しさに気づいていないんだ。…俺が今、その理性の檻からきみを解き放ってあげよう。 チキータ:な、何を言っているの…?私はあの人を殺したくなんてっ…! ビショップ:嘘はつかなくていいんだよ。じゃあなぜきみはスケアクロウに依頼したんだい?それは殺意だよ。きみは心の奥底で、ずっとアイツを殺したいと思っていたんだ。 ビショップ:それも怨念や憎しみからじゃない。きみは、「今まで散々虐げた者に逆に虐げられ殺される」ジャイブが見たいんだ。それは好奇心。それは快楽主義。それは禁断の行為。 チキータ:…私、は…。 ビショップ:でも、いいんだよ。きみが何をしたって俺はきみを護ってあげる。何人、何十人、何百人殺そうが俺は君の味方でいてあげる。それだけ俺は君を愛してる。 ビショップ:だから、きみも「こちら側」にくるといい。一緒に、人を殺して愉しもう? ビショップ:俺だけの“ジュリエット”。 チキータ:…私があの人をどれだけ苦しめても。あなたが私を、護ってくれるのよね。だから、だから…、我慢しなくて、いいのよね? ビショップ:そうだよ。きみは自由になっていい。 ビショップ:本能に従って、悪意を押しつぶして、狂気に呑まれて。 ビショップ:きみは、アイツを。 0: ビショップ:殺したいはずだ。 0: チキータ:そうだ。私は、苦しんで死ぬアナタが見たい…。私は、ヒトを苦しめて殺したいっ…!! 0: 0:チキータはアビスのナイフを一本手に握ると、 0:ジャイブに馬乗りになり突き刺した。 0: チキータ:アハハ…アハハハハっ…♡ チキータ:アハハハ、アハハハハハハっ♡アハハハハハハハハハッッ♡愉しいっ!♡ 0: 0:何度も何度もナイフを突き刺すチキータ。 0:いつのまにか人間だったものはただの肉塊と化していた。 0: チキータ:アハハ…♡あぁ、ありがとうビショップ!私、今頭の中の霞(かすみ)が晴れたような気分なの!♡ ビショップ:ようこそ、「こちら側のセカイ」へ。歓迎するよ、“ジュリエット”。そして、「初めまして」。 0: ビショップ:俺の本当の名前は“ロミオ”。きみに一目惚れをした、ただの殺人鬼だよ。 チキータ:まあ、こんな素敵な方に一目ぼれされるなんて…♡ 0: 0:そして部屋の扉が開かれる。 0: スケアクロウ:今の声はっ?!って…、ま、マーキュリーさん?なんで血まみれでジャイブに跨ってるんだい? チキータ:…“ロミオ”。私、次はあの人を殺したいわ♡殺していい?ねえ、ねぇ♡ 0:※ここからチキータは「ジュリエット」、ビショップは「ロミオ」に名称が変わります。 ロミオ:勿論だよ。“ジュリエット”。さっき武器はベッドの上に没収したからね。一方的に苦しめることができるよ。 ジュリエット:まぁ♡とっても素敵!♡流石は私のロミオね…♡ スケアクロウ:っ、なるほどー…。本当に目覚めちゃったか…っ! ジュリエット:ねぇ、スケアクロウさん…♡脳みそがだあいすきなスケアクロウさん…!そんなアナタの脳みそは、一体どんなカタチをしてるのかしらね…?♡私、見てみたいわ…っ!♡ ロミオ:あぁ、俺も興味がある。ぜひ拝見したいね…っ! 0: 0:ロミオは鉤爪を何処からか取り出し手に付ける。 0: スケアクロウ:っ…、これは…。逃げるが勝ち、かなっ! ジュリエット:アハハッ♡逃がさないわよ!♡ 0: 0:スケアクロウが逃げ、ジュリエットたちが追おうとした、その時。 0: ロミオ:っ、危ないっ!! 0: 0:ジュリエットに向かって一本ナイフが飛んでくる。 0:ナイフはそれを庇ったロミオの左肩に刺さる。 0: ジュリエット:ロミオ! ロミオ:大丈夫、これくらいはかすり傷…。 話数転換。 アビス:いやぁー、やっぱりナイフ一本隠し持っといて正解だったね!♪ ハッター:うんうん、まさに備えあれば憂いなし、ですねぇ☆ ロミオ:…お前たち…。俺のジュリエットによく傷をつけようとしてくれたなっ…!!絶対に殺してやるッ…! ジュリエット:ええ、ええ!私にこんな楽しいことをしてくれたロミオに傷をつけたこと、許さないわっ!!必ず殺すっ…! ハッター:おぉー、なんかあれですね、「The☆本性表しました」感というより、「The☆本心出しました」感ですね、これは!哀れなウサギを思い出します…☆ スケアクロウ:二人ともっ! 0: 0:隙をついてスケアクロウがハッターと銃とアビスのナイフ、 0:そして自分のノコギリを持ってくる。 0: ハッター:おぉ、ナイスですスケアクロウさん!流石、俊敏ですねぇ☆案山子(カカシ)のくせに! スケアクロウ:コードネームは仕方ないじゃないか!それに、僕がスケアクロウなのは、「脳みそを欲しているから」なんだよ? ハッター:んー?…あぁっ!そういうことでしたか!その解説聞いてワタシ、凄くスッキリしました☆ アビス:さあて♪三対二、そして元チキータさんは殺し合いをしたことがない…。…これは形勢逆転、だね?♪ ジュリエット:ど、どうしましょうロミオ。このままだと私たち、殺されてしまうわ!そんなの楽しくない! ロミオ:大丈夫だよ、ジュリエット。「俺たちにも仲間がいるから」! 0: 0:ジュリエットをお姫様抱っこで抱え、 0:部屋の窓から外に飛び出るロミオ。 0: ハッター:逃ーげーた!…あれ、というかあの方、肩にナイフ喰らってますよね?そしてお姫様抱っこしてますよね!?なんであんなに俊敏に動けるんですかぁ!? アビス:あはは、肩撃ち抜かれて少し運動しただけでぜぇぜぇ言ってた帽子屋さんには到底真似できないねっ♪ ハッター:ぐぬぬ~…。ワタシも運動しなくてはっ…!! スケアクロウ:そんなこと言ってる暇あったら追おうよー!増援を呼ぶ的なこと言ってたから、結構面倒くさくなるかもしれないだろう! 0: 0:そう言ってスケアクロウは二人を追いかけるように窓から飛び出す。 0: ハッター:…ワタシたちも行きますか☆ アビス:そうだね♪でも、窓から飛び出して足首挫いたりしないでねー? ハッター:ワタシそこまで運動音痴じゃないですーっ!! シーン転換。 0:場面転換。 0:館の裏庭。…に、轟音が鳴り響いている。 0: スケアクロウ:…おーいおい、これは凄いなあ…。 0: 0:見上げると、そこにはヘリコプター。 0:そして、そこから垂れる縄梯子に掴まっている 0:ロミオとジュリエット。 0: アビス:おぉー、凄ーい♪映画でしか見たことないやつだぁー!いいなあ、カッコいいなあー!♪ ハッター:く、クイーンさんに頼めばっ、やらせてくれるかも、ですね…☆ スケアクロウ:は、ハッターさん?一体なんでそんな辛そうなんだい? ハッター:足首を挫きましたー☆ アビス:もう言わんこっちゃないなあー…。 0: 0: ロミオ:今日は退かせて貰う!だが、俺たちは必ずお前たちを殺しに行く! ロミオ:“ダイヤのクイーン”、そして“鮮血の魔女”!情報は集めたぞっ! ジュリエット:またお会いしましょう、皆さん!次会ったその時は、楽しくアナタたちを殺して見せるわっ!♡ 0: 0:二人がそう言い残すと、ヘリコプターは去っていく。 0: アビス:なんか、とっても怖い宣戦布告されちゃったなあー…♪ふふっ。クイーンさんに報告しなきゃねっ! ハッター:うんうん!イレギュラー続きではありましたが、アリスちゃんが笑顔でワタシは嬉しいです☆ スケアクロウ:…はぁー、こんなにはらはらしたのに報酬は実質脳みそ一個かあー…。 アビス:まあまあ、そんなに気を落とさずに♪でも、楽しかったでしょ? スケアクロウ:そりゃもちろんさ! アビス:なら良いじゃん!楽しむのが一番だよっ♪ ハッター:…あぁ、あと、あの顔と声、どこかで聞き覚えがあると思ったら…、今思い出しました。…ワタシ、ロミオさんに会ったことあります。 スケアクロウ:あれ、そうなの?どこでだい? ハッター:“お茶会”の前に雇われていた組織です。確かロミオさんはそこの諜報担当だったんですよ。 アビス:ふーん。…待って、諜報員? スケアクロウ:…そういえば“ドードー鳥”の手がかりは結局掴めず終いだったよね。 ハッター:…ちょっと帰って色々調べましょうか☆ アビス:うん、そうしよっ!じゃあボクたちはクイーンさんの所に戻るケド…、案山子(かかし)さん! スケアクロウ:んー、なんだい? 0: アビス:“ルージュ”によろしく伝えておいてっ!“深淵”(しんえん)がまた話したがってるってさ! 話数転換。 0:場面転換。 0:クイーンの事務所。 0: アビス:―――と、言うのが今回の事件のあらましさ♪ クイーン:…どうやら、なかなか面倒な集団に目をつけられてしまったようね。 チェシャー:おいおい、抗争相手が増えるのは勘弁だぜぇ…?ヒヒ。 クイーン:わかってるわよ。…ここは一つ、その時一緒になったスケアクロウ?の所属する組織と同盟を結ぶのも手かもしれないわね。 アビス:あー…。やめたほうが良いかも。“鮮血”、すーぐ掌クルクルして裏切るタイプだから…。 チェシャー:ヒヒっ…!なんかお前の困り顔を見るのは久しぶりだなあ、アビス!その顔からして、その“鮮血”とかいう女に滅茶苦茶手を焼いてたのが伺えるぜ。 アビス:うーん、悪い子じゃないんだけどね。結構欲望に忠実なタイプだから、制御が効かない、というかねー…。 0: 0:そしてハッターが駆け足でこちらに来る。 0: ハッター:皆さん、色々調べて結果出ましたよー☆ クイーン:伝えてちょうだい。 ハッター:仰せのままに、女王殿下!…とは言っても結構複雑なのですが。 ハッター:えー、結論から申し上げますと、“ドードー鳥”さんとビショップ…。“ロミオ”さんは同一人物です。 アビス:ありゃ、やっぱりそうだったんだ…♪ ハッター:そうです。どうやら“ロミオ”さんの組織はほぼ完璧な情報統制を敷いているらしく、あまり情報が集まらなかったのですが…。一応あの方ウチの組織にいた来歴がありますので、なんとかそこから集めてきました! クイーン:まあ。流石ねハッター。 ハッター:お褒めの言葉感謝です! チェシャー:そんで?複雑っつってたがどこら辺が複雑なんだ。 ハッター:あぁ、そうでしたそうでした。えーっとですねぇ…。あの方がここに来た目的、どうやら諜報をするためだったっぽいのですよ。 チェシャー:…と、言うとォ? ハッター:まず、ロミオさんの組織からクイーンさんの情報を盗むためにロミオさんが送り込まれた。そして、そのロミオさんをクイーンさんがジャイブさんの情報を盗むためにジャイブ邸へ送り出した。 ハッター:つまりロミオさんは、スパイ先でスパイを命じられていた、というわけですね!だから“ドードー鳥”さんは裏切ったのではなく、最初から裏切っていたという訳です☆ クイーン:そ、そんなことある…? アビス:…待って。ということはだよー?クイーンさんのお金の流れやボクたちの情報、あっちに全部漏れてたってことじゃない? チェシャー:…おい。普通に緊急事態じゃねえか!? クイーン:き、緊急幹部会開きましょう!どうすればこの状況を乗り切れるかの! ハッター:ワタシ、“怪物”さん呼んできますねー☆ チェシャー:おいおい、唐突に大ピンチってアニメの第一話じゃねえんだぞォ…? 0: 0: アビス:(N)霞の世界を抜け出して、殺し屋達は今日も騒ぐ。 アビス:(N)怨念さえも覆したら、きっと世界は広がるのさ! 0: アビス:(N)今日もマーダー、遊びましょ!♪ 0: 0: 0:アビスの無邪気な笑い声が響いている…。 0: 0: 0:―――Change the MistyFate.