台本概要
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タイトル | 怪異戯曲・存在証明 |
---|---|
作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ある件を境に霊感に目覚めた叶芽は、天満たちのところで過ごすことになる。そんなある日、互いの目的を話すことになるが……。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
天満 | 男 | 59 | てんま。赤い目をした青年。蔵面という呪具で顔を隠している。呪禁師であり、多彩な能力を持つ。 |
喜邏 | 女 | 62 | きら。目隠しをした女性。天満の幼馴染であり、百々目鬼という妖怪から取った目を持っている。 |
叶芽 | 女 | 88 | かなめ。ある件を境に霊感に目覚めた。両親を殺した怪異を探している。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
喜邏:私は、死に触れた
喜邏:だけど、結果はコレ
喜邏:天満くんが、天満くんだから
喜邏:私は此処にいるんですよ
喜邏:そういう話です
0:
0:怪異戯曲・存在証明
0:
0:
0:ある一室でトレーニングをしている喜邏
叶芽:……凄い、ですね
喜邏:身体を鍛えろ、とは言いませんが
喜邏:損は無いという話です
喜邏:霊体相手にフィジカルで優位に立つというのは
喜邏:あまり現実的な話ではないですし
喜邏:天満くんと違って
喜邏:『完璧に触れることができる』訳ではありませんから
叶芽:じゃあ、どうして?
喜邏:取り憑かれた人
喜邏:つまり、対人用ですね
叶芽:なるほど
叶芽:それだったら触れることができるから!
叶芽:……触れることができる……か
喜邏:それに、霊を組み伏せるなんて構図
喜邏:あまり見たことないでしょう?
叶芽:確かに
叶芽:やっぱり触れることができるのは
叶芽:稀なんですか?
天満:業界じゃ普通だろうな
天満:だが、見て、聞いて、触れて、話せる
天満:はA級
天満:加えて、理解できる
天満:でS級だな
叶芽:でた!変な階級制度!
天満:うるせーなB級以下
叶芽:……それは、ムカつく
叶芽:なんですか、理解できるって
喜邏:にんじん様が、どんな霊体か解りますか?
喜邏:情報が無い段階で、初めて目にして
叶芽:解らないですね
叶芽:あ、喜邏さん何か言ってましたよね?
喜邏:私の場合、理解はできないんですが
喜邏:この百々目鬼の目の力で
喜邏:少しだけ見えるんですよ
喜邏:時々、この様なアイテムを使わずに
喜邏:霊体を理解し、分析し、対応したり
喜邏:または、協力関係を結んだりする方がいます
叶芽:凄い、ですね…?
天満:凄いどころの話じゃねーんだよ
天満:そんな奴はもう、人か怪異か解んねぇからな
叶芽:じゃあ、天満くんも理解はできないってこと?
天満:あぁ……多少は解るけどな
天満:喜邏が話したやつは、次元が違う
天満:……ここにいる3人はな
叶芽:はい?
天満:それぞれ目的があるんだろうな
叶芽:私の探したい怪異のことですか?
天満:それも後で聞いてやる
天満:お前だけじゃなくて、俺にも喜邏にも
天満:目的がある
天満:それを共有するべきか
叶芽:話してくれるんですか?
喜邏:私は、天満くんが話せと言うなら
天満:じゃあ、道中話すか
天満:準備しろ、出るぞ
叶芽:あ、はい!
0:
0:
叶芽:準備って蔵面と目隠しですか
叶芽:普段はしてないのに
天満:あの家は安全だからな、それに
天満:喜邏から色々聞いただろ?俺のこと
叶芽:まぁ、少し
天満:気は遣わなくていいぞ
天満:別に後悔も何もないからな
天満:そういう星の元に生まれただけだ
叶芽:それで納得できることでも無いと思いますけど
天満:……目に宿る怪異がいる
叶芽:えっ?
天満:怪異譚の中でよく使われる人のモノは
天満:髪、血、遺体……それから目
天満:これを題材にしたものが多くある
天満:俺の物語はどうやら目らしい
叶芽:喜邏さんも目、ですもんね
喜邏:私は少し違いますけどね
天満:俺が同業と言う奴らの中には
天満:動物霊を使役する奴だったり、呪術を専門にした奴
天満:ただ霊感があるだけで力のない奴だったり
天満:と、ジャンルは様々いるんだが
天満:この同業の中で、話題になることがある
叶芽:話題、ですか
天満:何処かに全てを視て、理解する奴がいるらしい
叶芽:全てを見る?
叶芽:霊が見えるってわけじゃなくて?
喜邏:六道と言うのですが
喜邏:それら全ての世界を写す鏡みたいで
喜邏:これが見えるということは
喜邏:神すらも見える事になりますからね
叶芽:神!?いるんですか!?
天満:お前の想像している様な神じゃない
天満:土地神だったり、神格化された霊体だ
天満:ゼウスとかじゃねーからな
叶芽:なんですかね、この感じ
叶芽:神様がいるって分かって嬉しい様な
叶芽:けど、想像と違うなら残念というか
叶芽:なんでも望みを叶えるよ、みたいな神様
叶芽:いないんですかね……
喜邏:いますよ
叶芽:え!?いるんですか!?
喜邏:殆ど、代償を求めてきますけどね
喜邏:百万円欲しければ、相応の代償が降りかかる
喜邏:これぞまさに天の災いで、天災です
叶芽:ウッ…マジっすか……
天満:神頼みする奴は多くいるがな
天満:なんでもホイホイ叶える訳ないだろ
天満:神は気まぐれでもあるし
天満:行動理念が人と駆け離れすぎてるんだよ
叶芽:まぁ……神、ですからね
天満:話が逸れたが、俺は
天満:その六道の目を持った奴に会いたいんだよ
叶芽:それは、どうして?
天満:俺の目も生まれつきコレだ
天満:六道は写さないが、霊界を写す
天満:この人間界であれば、霊の全てを視る
天満:話しても理解できないだろうから
天満:深くは言わねぇけどな
叶芽:見えてる世界が違うんですね
天満:あぁ、そんな感じだ
天満:だから、六道に会って確かめたい
天満:その星の元、生まれたことについて
天満:何故、俺がこの目を持つのかについて
天満:俺は、誰なのかを知りたい
叶芽:……
天満:と、そういうことだ
天満:だが、これは運命に決めてもらう
天満:会う日があれば会うし、無ければそのまま死ぬ
叶芽:目的なのに会いに行かないんですか?
天満:あぁ、この業界お得意のやつだ
天満:こういうことは、勝手に決まる
天満:必要なら会えるさ
叶芽:そういうもの、なんですね
天満:で、お前は探したい怪異だったか?
叶芽:はい
叶芽:天満くんに言われた様に無視をし続けたんです
叶芽:でも、限界が来ておばあちゃんに話しました
叶芽:結果は、話したと思うんですけど
叶芽:おばあちゃんも霊感があって
叶芽:ある種、私を霊から遠ざけてくれていたみたいで
喜邏:少し対処法を知っていたのは気がかりですが
喜邏:経験があったのでしょうね
叶芽:それで、聞いたんです
天満:何をだ?
叶芽:私の両親は、怪異に殺されたって
喜邏:……
天満:へぇ、そりゃまた物騒な話だな
叶芽:正直、よく分からないんです
叶芽:両親が亡くなったのも物心付く前で
叶芽:復讐とかそういうものも
天満:探してどうする?
叶芽:交通事故だったんですけど
叶芽:飲酒や、薬も検出されてない
叶芽:見通しの悪い道でもない
叶芽:車の故障もない
叶芽:なので、結果は脇見運転になったそうで
喜邏:怪異、ですか
叶芽:おばあちゃんの話ではですけど
天満:違うな
天満:原因は怪異だろうが、裏があるな
叶芽:どうして?
天満:推測だが、無作為に取り憑き
天満:霊障を引き起こす怪異ってのは少ない
天満:怪異譚にしろ、何か原因が含まれる
天満:にんじん様の場合は、『夜に出歩く』
天満:ただ、運転しているだけなら
天満:其処等中で、交通事故祭りだ
叶芽:確かに……
喜邏:この件は続けて調査ですね
喜邏:怪異を操る手の者がいると
天満:あぁ、作る奴もいるらしいからな
天満:操作、逆に霊に取り憑くとかいう
天満:変人も出てきておかしくねぇな
叶芽:もし、人だったら……
天満:あぁ
叶芽:許せないかもしれないです
天満:……あぁ
叶芽:それで、喜邏さんの目的は
喜邏:来ますよ
叶芽:えっ?
天満:喜邏の話は、後でだ
天満:特に大した目的でもないからな
喜邏:ふふふ、そうですね
叶芽:あれは……一体、何ですか?
天満:依頼内容
天満:最近、家の近くでおかしなことが起こる
天満:捨てたはずの物が戻ったり、声が聞こえるが
天満:近くには誰もいない
天満:気のせい、記憶違い、疲れからの幻聴
天満:まぁ、それもアリだが
喜邏:依頼が数件来ましたからね
喜邏:ほぼ確で霊の仕業と
叶芽:どんな霊なんですか?
喜邏:名無し
喜邏:人に対して悪戯をする程度の霊障
喜邏:霊障に対し、反応したモノを記憶
喜邏:その相手に何度も霊障を繰り返す
喜邏:地縛霊の一種
喜邏:対象は勘づいた人間
喜邏:依頼者のものと一致
喜邏:人型、緑、影
喜邏:認定、怪異『悪戯幽霊』
叶芽:なんだか、そんなに危険そうじゃないですね
天満:それは違うな
叶芽:違う?
天満:霊にずっと悩まされ続けてみろ
天満:精神異常になるぞ
天満:精神科に通う様になれば
天満:健康なのに無駄に薬の服用もしなきゃいけない
天満:副作用もあるし、睡眠障害も出れば
天満:最悪、自殺案件だ
叶芽:怪異が直接手を出すわけじゃなくて
叶芽:自分で追い詰めていく…?
喜邏:ホラー作品は、霊自体が直接手を出しますが
喜邏:現実では、こういう被害の方が多いですよ
喜邏:何も、殺すことが目的でないところが厄介
喜邏:疲弊するのも、自殺も
喜邏:本人の気持ちや意思ですからね
叶芽:ッ……
天満:直接的じゃなく、死へのサポート
天満:怪異ってのはこれで十分なんだよ
天満:だから、怖いんだ
叶芽:……はい!
天満:ははぁん、なるほどなァ
天満:原因はイジメ自殺か
天満:自分がやられて嫌だったから
天満:生きてる奴に嫌がらせしてんのか
天満:強気になったもんだなぁ?
天満:D級がよ
叶芽:その階級、どういう分け方なんですか……
喜邏:天満くんの実力で測りますから
喜邏:適当ですよ、適当
天満:ま、ちゃちゃっと除霊して終わりだ
天満:楯突くようなら、徹底的に虐めてやるよ
叶芽:いい人なのか、悪い人なのか分からない発言
天満:教訓その一
叶芽:はい?
天満:霊相手にビビんな、強気で行け
天満:基本中の基本、忘れんな
天満:喜邏、準備でもしとけ
喜邏:仰せのままに
天満:んじゃ、『御披露目』だ
0:
叶芽:あの
喜邏:はい?
叶芽:凄く今更な質問なんですけど
叶芽:天満くんだけで良かったのでは?
喜邏:まぁ、あの姿を見ればそう思うでしょうし
喜邏:実際、以前も手出しは必要無かったですね
叶芽:実際、私も何か出来るわけではないですけど
喜邏:一つは、不測の事態に対応する為
喜邏:一つは、相性の悪い怪異の場合の保険
叶芽:そんなことあるんですか?
喜邏:天満くんは凄いです、とても
喜邏:だけど、怪異というものは
喜邏:人の範疇を超える存在ですから
叶芽:天満くんで無理な場合、対処出来るんですか?
喜邏:……ただ、死を待つより
喜邏:最期に少しは抵抗したい
喜邏:無理になる前に対処するのが一番ですけどね
叶芽:……抵抗、ですか
喜邏:あぁ見えて、調子に乗ることはないです
喜邏:何かやる時は、何か理由があります
喜邏:彼が死ぬのであれば、私も抵抗した後、死にます
叶芽:喜邏さんはなんでそこまで
喜邏:私の目的だからです
叶芽:目的?
喜邏:私はあなたが羨ましい
喜邏:妬ましく思う日が来るかもしれません
叶芽:いや!何で!?
叶芽:私なんか取り柄すらないのに!?
喜邏:私には霊感がありません
叶芽:……え?
喜邏:私は、死に触れた
喜邏:だけど、結果はコレ
喜邏:天満くんが、天満くんだから
喜邏:私は此処にいるんですよ
喜邏:そういう話です
叶芽:それってどういう…
喜邏:そして、天満くんは頗る耳が良い
天満:もう、そんな話してんのかよ
天満:ほら、実力差解っただろ?
天満:謝るなら楽な方法で逝かせてやるよ
0:霊の髪を引っ張り連れてくる天満
叶芽:……可哀想
天満:やったことの対価だ
天満:俺は霊に優しさなんか見せねぇからな
天満:可哀想だっていうのは、被害者に言えるか?
叶芽:……ごめんなさい
天満:その言葉を吐くなら、どちらにも
天満:そう言える時だけだ
天満:死して尚、悪さをするんなら
天満:……俺は死んでも赦さない
0:赤い目が異常に輝いたように叶芽には見えた
0:それは、霊も同じだったのだろうか
0:その言葉を聞いた瞬間、震え出した
喜邏:天満くん
天満:あぁ、『天赭(てんしゃ)』
0:成仏したのか、赤い光になり霊体は消えた
叶芽:箱にしないんですか?
天満:あぁ、今回のは地縛霊だからな
天満:普通に除霊だ
天満:それと、喜邏の目的も聞けたな
叶芽:いや、よく分からないです
叶芽:霊感がないとか、死ぬとか
天満:霊感がないのに働きたいんだと
天満:とんだ変わり者が喜邏だ
天満:霊感がないのに霊に関わる
天満:それが、喜邏の
喜邏:罪滅ぼしですよ
叶芽:えっ?
天満:……言う必要あるのか?
天満:俺が気を遣ったのに
喜邏:数少ない、同志ですから
叶芽:私が?
喜邏:天満くんの目を綺麗と言ったのは
喜邏:私とあなたの二人だけ
喜邏:それだけで、十分価値がある
天満:そうかよ
天満:じゃあ俺は先に帰る
叶芽:は?えっ!ちょっと!
喜邏:ふふふ、恥ずかしいのかな
喜邏:じゃあ、二人で話しましょうか
叶芽:……はい
0:
0:帰りの道中、二人
喜邏:私は天満くんが好きなんです
叶芽:……はい?
喜邏:安心してください
喜邏:別に恋愛という訳ではないので
喜邏:惚れてもらって構わないですよ
叶芽:ありえません!
喜邏:虐められていたことは話しましたね
喜邏:私と天満くんは幼馴染
喜邏:彼がずっと気味悪がられていたのは知っていました
喜邏:……況してや私は、加害者側でした
叶芽:イジメの?
喜邏:傍観者も含まれるのであれば
喜邏:私は、天満くんを一度も守った事はない
喜邏:赤い目に霊が見えると話す男の子
喜邏:誰も近寄りませんし、手を出す人もいました
喜邏:だけど、彼は一度も学校に来なかったことはない
喜邏:彼が見ている世界は、多分違ったんでしょうね
叶芽:それを言わなきゃいいのに
叶芽:なんで天満くんは虐められていたのに
叶芽:それを言い続けたんだろう
喜邏:罪滅ぼしというは、そのことです
叶芽:そのこと?
喜邏:実は、私たちは似ています
喜邏:私の両親も怪異に殺されました
喜邏:違いがあるとすれば、死に触れた
喜邏:霊感の有無でしょうね
叶芽:怪異に殺された?
叶芽:その怪異は!?
喜邏:天満くんが祓いました
喜邏:彼が見ていた世界には日常的にいるモノたち
喜邏:どういう存在であるかをよく識っていた
喜邏:霊感があると言い続けたのは
喜邏:いつか、頼って欲しくて、です
叶芽:被害があるかもしれないと知っていたから
叶芽:虐められても言い続けた?
叶芽:そんなの、割に合わないっていうか
叶芽:え、じゃあ、天満くんは
喜邏:両親が殺された時、すぐに天満くんに言いました
喜邏:何が正解か解らない、何が起こったかすらも
喜邏:意味不明な私の説明を聞いて
喜邏:すぐに助けてくれたんです
叶芽:……
喜邏:かなり強い怪異で、霊感のない私すら見えてました
喜邏:いや、見せられているが正しい
叶芽:じゃあ、罪滅ぼしっていうのは
叶芽:何もできなかった自分を、守ってくれた天満くんを
叶芽:助ける為に?
喜邏:はい
喜邏:それから私は共にいます
喜邏:霊感が無いと解れば、これをくれました
叶芽:妖怪の目、ですね
喜邏:それだけじゃ力になれないと
喜邏:私の意思で手にも埋めました
喜邏:目隠しをしている間だけ
喜邏:私は霊を理解し、視ることができる
叶芽:そんな理由があったんですね
喜邏:だから、二人の様に立派な目的はないです
喜邏:私は、一生を賭けて罪を償い続ける
叶芽:だけど、それって……
叶芽:天満くんは望んでないんじゃないんですか?
叶芽:喜邏さんに普通に暮らしてほしいとか
叶芽:そこまでしてほしくないとか
叶芽:そういう風に思ってそうですけど
喜邏:えぇ、解っています
喜邏:ですが、それを理解した上で
喜邏:天満くんは、私という存在を側においていてくれている
喜邏:ふふふ、それでいいじゃないですか
叶芽:……
叶芽:(これは、私が立ち入る話じゃない…)
叶芽:わかりました、話してくれてありがとうございました
喜邏:こちらこそ
喜邏:聞いてくれてありがとうございます
喜邏:(ねぇ、天満くん
喜邏:私は、これでいいよね)
0:
0:ある過去
天満:喜邏
喜邏:喜邏?
天満:俺の目になるなら、それが名前
天満:明日から本格的に怪異関係に
天満:首突っ込むから偽名ね
天満:不満ある?
喜邏:仰せのままに
天満:やめろよ、それ
天満:別に恩に感じる必要もないし
天満:怒ってもないし、謝罪も贖罪もいらないって
喜邏:だけど、これは私の意思だから
天満:じゃあ、一つだけ
喜邏:何?
天満:俺より先に死ぬな
喜邏:……はい、絶対に
喜邏:これからは喜邏として
喜邏:天満くんと共に
天満:まぁ、一人よりマシか
天満:どうせ、俺もお前も独りだからな
喜邏:えぇ、そうですね
天満:慣れねぇな、ソレ
喜邏:慣れてください
天満:まぁ、ゆっくりな
0:
0:現在
喜邏:(この名が消えない限り……私は、喜邏として)
叶芽:あ、お土産買って帰ります?
叶芽:あそこ、最近できたシュークリーム屋さん!
喜邏:……いいですね
喜邏:買いましょう
0:
天満:叶芽の素質か
天満:あれは使えるかもな
天満:剣が増えるに越した事はない
天満:少し、考えてみるか
叶芽:戻りましたー
喜邏:お茶を用意しますね
天満:なんだ?
叶芽:お土産です!
叶芽:……優しいところあるんですねぇ、天満くん
天満:余計な事まで喋ったか?
天満:まぁ、いい
叶芽:はい!シュークリームです!
天満:(まぁ、甘い甘い天国の後に
天満:少しばかり、地獄を見てもらうか)
0:怪異戯曲・存在証明 終
喜邏:私は、死に触れた
喜邏:だけど、結果はコレ
喜邏:天満くんが、天満くんだから
喜邏:私は此処にいるんですよ
喜邏:そういう話です
0:
0:怪異戯曲・存在証明
0:
0:
0:ある一室でトレーニングをしている喜邏
叶芽:……凄い、ですね
喜邏:身体を鍛えろ、とは言いませんが
喜邏:損は無いという話です
喜邏:霊体相手にフィジカルで優位に立つというのは
喜邏:あまり現実的な話ではないですし
喜邏:天満くんと違って
喜邏:『完璧に触れることができる』訳ではありませんから
叶芽:じゃあ、どうして?
喜邏:取り憑かれた人
喜邏:つまり、対人用ですね
叶芽:なるほど
叶芽:それだったら触れることができるから!
叶芽:……触れることができる……か
喜邏:それに、霊を組み伏せるなんて構図
喜邏:あまり見たことないでしょう?
叶芽:確かに
叶芽:やっぱり触れることができるのは
叶芽:稀なんですか?
天満:業界じゃ普通だろうな
天満:だが、見て、聞いて、触れて、話せる
天満:はA級
天満:加えて、理解できる
天満:でS級だな
叶芽:でた!変な階級制度!
天満:うるせーなB級以下
叶芽:……それは、ムカつく
叶芽:なんですか、理解できるって
喜邏:にんじん様が、どんな霊体か解りますか?
喜邏:情報が無い段階で、初めて目にして
叶芽:解らないですね
叶芽:あ、喜邏さん何か言ってましたよね?
喜邏:私の場合、理解はできないんですが
喜邏:この百々目鬼の目の力で
喜邏:少しだけ見えるんですよ
喜邏:時々、この様なアイテムを使わずに
喜邏:霊体を理解し、分析し、対応したり
喜邏:または、協力関係を結んだりする方がいます
叶芽:凄い、ですね…?
天満:凄いどころの話じゃねーんだよ
天満:そんな奴はもう、人か怪異か解んねぇからな
叶芽:じゃあ、天満くんも理解はできないってこと?
天満:あぁ……多少は解るけどな
天満:喜邏が話したやつは、次元が違う
天満:……ここにいる3人はな
叶芽:はい?
天満:それぞれ目的があるんだろうな
叶芽:私の探したい怪異のことですか?
天満:それも後で聞いてやる
天満:お前だけじゃなくて、俺にも喜邏にも
天満:目的がある
天満:それを共有するべきか
叶芽:話してくれるんですか?
喜邏:私は、天満くんが話せと言うなら
天満:じゃあ、道中話すか
天満:準備しろ、出るぞ
叶芽:あ、はい!
0:
0:
叶芽:準備って蔵面と目隠しですか
叶芽:普段はしてないのに
天満:あの家は安全だからな、それに
天満:喜邏から色々聞いただろ?俺のこと
叶芽:まぁ、少し
天満:気は遣わなくていいぞ
天満:別に後悔も何もないからな
天満:そういう星の元に生まれただけだ
叶芽:それで納得できることでも無いと思いますけど
天満:……目に宿る怪異がいる
叶芽:えっ?
天満:怪異譚の中でよく使われる人のモノは
天満:髪、血、遺体……それから目
天満:これを題材にしたものが多くある
天満:俺の物語はどうやら目らしい
叶芽:喜邏さんも目、ですもんね
喜邏:私は少し違いますけどね
天満:俺が同業と言う奴らの中には
天満:動物霊を使役する奴だったり、呪術を専門にした奴
天満:ただ霊感があるだけで力のない奴だったり
天満:と、ジャンルは様々いるんだが
天満:この同業の中で、話題になることがある
叶芽:話題、ですか
天満:何処かに全てを視て、理解する奴がいるらしい
叶芽:全てを見る?
叶芽:霊が見えるってわけじゃなくて?
喜邏:六道と言うのですが
喜邏:それら全ての世界を写す鏡みたいで
喜邏:これが見えるということは
喜邏:神すらも見える事になりますからね
叶芽:神!?いるんですか!?
天満:お前の想像している様な神じゃない
天満:土地神だったり、神格化された霊体だ
天満:ゼウスとかじゃねーからな
叶芽:なんですかね、この感じ
叶芽:神様がいるって分かって嬉しい様な
叶芽:けど、想像と違うなら残念というか
叶芽:なんでも望みを叶えるよ、みたいな神様
叶芽:いないんですかね……
喜邏:いますよ
叶芽:え!?いるんですか!?
喜邏:殆ど、代償を求めてきますけどね
喜邏:百万円欲しければ、相応の代償が降りかかる
喜邏:これぞまさに天の災いで、天災です
叶芽:ウッ…マジっすか……
天満:神頼みする奴は多くいるがな
天満:なんでもホイホイ叶える訳ないだろ
天満:神は気まぐれでもあるし
天満:行動理念が人と駆け離れすぎてるんだよ
叶芽:まぁ……神、ですからね
天満:話が逸れたが、俺は
天満:その六道の目を持った奴に会いたいんだよ
叶芽:それは、どうして?
天満:俺の目も生まれつきコレだ
天満:六道は写さないが、霊界を写す
天満:この人間界であれば、霊の全てを視る
天満:話しても理解できないだろうから
天満:深くは言わねぇけどな
叶芽:見えてる世界が違うんですね
天満:あぁ、そんな感じだ
天満:だから、六道に会って確かめたい
天満:その星の元、生まれたことについて
天満:何故、俺がこの目を持つのかについて
天満:俺は、誰なのかを知りたい
叶芽:……
天満:と、そういうことだ
天満:だが、これは運命に決めてもらう
天満:会う日があれば会うし、無ければそのまま死ぬ
叶芽:目的なのに会いに行かないんですか?
天満:あぁ、この業界お得意のやつだ
天満:こういうことは、勝手に決まる
天満:必要なら会えるさ
叶芽:そういうもの、なんですね
天満:で、お前は探したい怪異だったか?
叶芽:はい
叶芽:天満くんに言われた様に無視をし続けたんです
叶芽:でも、限界が来ておばあちゃんに話しました
叶芽:結果は、話したと思うんですけど
叶芽:おばあちゃんも霊感があって
叶芽:ある種、私を霊から遠ざけてくれていたみたいで
喜邏:少し対処法を知っていたのは気がかりですが
喜邏:経験があったのでしょうね
叶芽:それで、聞いたんです
天満:何をだ?
叶芽:私の両親は、怪異に殺されたって
喜邏:……
天満:へぇ、そりゃまた物騒な話だな
叶芽:正直、よく分からないんです
叶芽:両親が亡くなったのも物心付く前で
叶芽:復讐とかそういうものも
天満:探してどうする?
叶芽:交通事故だったんですけど
叶芽:飲酒や、薬も検出されてない
叶芽:見通しの悪い道でもない
叶芽:車の故障もない
叶芽:なので、結果は脇見運転になったそうで
喜邏:怪異、ですか
叶芽:おばあちゃんの話ではですけど
天満:違うな
天満:原因は怪異だろうが、裏があるな
叶芽:どうして?
天満:推測だが、無作為に取り憑き
天満:霊障を引き起こす怪異ってのは少ない
天満:怪異譚にしろ、何か原因が含まれる
天満:にんじん様の場合は、『夜に出歩く』
天満:ただ、運転しているだけなら
天満:其処等中で、交通事故祭りだ
叶芽:確かに……
喜邏:この件は続けて調査ですね
喜邏:怪異を操る手の者がいると
天満:あぁ、作る奴もいるらしいからな
天満:操作、逆に霊に取り憑くとかいう
天満:変人も出てきておかしくねぇな
叶芽:もし、人だったら……
天満:あぁ
叶芽:許せないかもしれないです
天満:……あぁ
叶芽:それで、喜邏さんの目的は
喜邏:来ますよ
叶芽:えっ?
天満:喜邏の話は、後でだ
天満:特に大した目的でもないからな
喜邏:ふふふ、そうですね
叶芽:あれは……一体、何ですか?
天満:依頼内容
天満:最近、家の近くでおかしなことが起こる
天満:捨てたはずの物が戻ったり、声が聞こえるが
天満:近くには誰もいない
天満:気のせい、記憶違い、疲れからの幻聴
天満:まぁ、それもアリだが
喜邏:依頼が数件来ましたからね
喜邏:ほぼ確で霊の仕業と
叶芽:どんな霊なんですか?
喜邏:名無し
喜邏:人に対して悪戯をする程度の霊障
喜邏:霊障に対し、反応したモノを記憶
喜邏:その相手に何度も霊障を繰り返す
喜邏:地縛霊の一種
喜邏:対象は勘づいた人間
喜邏:依頼者のものと一致
喜邏:人型、緑、影
喜邏:認定、怪異『悪戯幽霊』
叶芽:なんだか、そんなに危険そうじゃないですね
天満:それは違うな
叶芽:違う?
天満:霊にずっと悩まされ続けてみろ
天満:精神異常になるぞ
天満:精神科に通う様になれば
天満:健康なのに無駄に薬の服用もしなきゃいけない
天満:副作用もあるし、睡眠障害も出れば
天満:最悪、自殺案件だ
叶芽:怪異が直接手を出すわけじゃなくて
叶芽:自分で追い詰めていく…?
喜邏:ホラー作品は、霊自体が直接手を出しますが
喜邏:現実では、こういう被害の方が多いですよ
喜邏:何も、殺すことが目的でないところが厄介
喜邏:疲弊するのも、自殺も
喜邏:本人の気持ちや意思ですからね
叶芽:ッ……
天満:直接的じゃなく、死へのサポート
天満:怪異ってのはこれで十分なんだよ
天満:だから、怖いんだ
叶芽:……はい!
天満:ははぁん、なるほどなァ
天満:原因はイジメ自殺か
天満:自分がやられて嫌だったから
天満:生きてる奴に嫌がらせしてんのか
天満:強気になったもんだなぁ?
天満:D級がよ
叶芽:その階級、どういう分け方なんですか……
喜邏:天満くんの実力で測りますから
喜邏:適当ですよ、適当
天満:ま、ちゃちゃっと除霊して終わりだ
天満:楯突くようなら、徹底的に虐めてやるよ
叶芽:いい人なのか、悪い人なのか分からない発言
天満:教訓その一
叶芽:はい?
天満:霊相手にビビんな、強気で行け
天満:基本中の基本、忘れんな
天満:喜邏、準備でもしとけ
喜邏:仰せのままに
天満:んじゃ、『御披露目』だ
0:
叶芽:あの
喜邏:はい?
叶芽:凄く今更な質問なんですけど
叶芽:天満くんだけで良かったのでは?
喜邏:まぁ、あの姿を見ればそう思うでしょうし
喜邏:実際、以前も手出しは必要無かったですね
叶芽:実際、私も何か出来るわけではないですけど
喜邏:一つは、不測の事態に対応する為
喜邏:一つは、相性の悪い怪異の場合の保険
叶芽:そんなことあるんですか?
喜邏:天満くんは凄いです、とても
喜邏:だけど、怪異というものは
喜邏:人の範疇を超える存在ですから
叶芽:天満くんで無理な場合、対処出来るんですか?
喜邏:……ただ、死を待つより
喜邏:最期に少しは抵抗したい
喜邏:無理になる前に対処するのが一番ですけどね
叶芽:……抵抗、ですか
喜邏:あぁ見えて、調子に乗ることはないです
喜邏:何かやる時は、何か理由があります
喜邏:彼が死ぬのであれば、私も抵抗した後、死にます
叶芽:喜邏さんはなんでそこまで
喜邏:私の目的だからです
叶芽:目的?
喜邏:私はあなたが羨ましい
喜邏:妬ましく思う日が来るかもしれません
叶芽:いや!何で!?
叶芽:私なんか取り柄すらないのに!?
喜邏:私には霊感がありません
叶芽:……え?
喜邏:私は、死に触れた
喜邏:だけど、結果はコレ
喜邏:天満くんが、天満くんだから
喜邏:私は此処にいるんですよ
喜邏:そういう話です
叶芽:それってどういう…
喜邏:そして、天満くんは頗る耳が良い
天満:もう、そんな話してんのかよ
天満:ほら、実力差解っただろ?
天満:謝るなら楽な方法で逝かせてやるよ
0:霊の髪を引っ張り連れてくる天満
叶芽:……可哀想
天満:やったことの対価だ
天満:俺は霊に優しさなんか見せねぇからな
天満:可哀想だっていうのは、被害者に言えるか?
叶芽:……ごめんなさい
天満:その言葉を吐くなら、どちらにも
天満:そう言える時だけだ
天満:死して尚、悪さをするんなら
天満:……俺は死んでも赦さない
0:赤い目が異常に輝いたように叶芽には見えた
0:それは、霊も同じだったのだろうか
0:その言葉を聞いた瞬間、震え出した
喜邏:天満くん
天満:あぁ、『天赭(てんしゃ)』
0:成仏したのか、赤い光になり霊体は消えた
叶芽:箱にしないんですか?
天満:あぁ、今回のは地縛霊だからな
天満:普通に除霊だ
天満:それと、喜邏の目的も聞けたな
叶芽:いや、よく分からないです
叶芽:霊感がないとか、死ぬとか
天満:霊感がないのに働きたいんだと
天満:とんだ変わり者が喜邏だ
天満:霊感がないのに霊に関わる
天満:それが、喜邏の
喜邏:罪滅ぼしですよ
叶芽:えっ?
天満:……言う必要あるのか?
天満:俺が気を遣ったのに
喜邏:数少ない、同志ですから
叶芽:私が?
喜邏:天満くんの目を綺麗と言ったのは
喜邏:私とあなたの二人だけ
喜邏:それだけで、十分価値がある
天満:そうかよ
天満:じゃあ俺は先に帰る
叶芽:は?えっ!ちょっと!
喜邏:ふふふ、恥ずかしいのかな
喜邏:じゃあ、二人で話しましょうか
叶芽:……はい
0:
0:帰りの道中、二人
喜邏:私は天満くんが好きなんです
叶芽:……はい?
喜邏:安心してください
喜邏:別に恋愛という訳ではないので
喜邏:惚れてもらって構わないですよ
叶芽:ありえません!
喜邏:虐められていたことは話しましたね
喜邏:私と天満くんは幼馴染
喜邏:彼がずっと気味悪がられていたのは知っていました
喜邏:……況してや私は、加害者側でした
叶芽:イジメの?
喜邏:傍観者も含まれるのであれば
喜邏:私は、天満くんを一度も守った事はない
喜邏:赤い目に霊が見えると話す男の子
喜邏:誰も近寄りませんし、手を出す人もいました
喜邏:だけど、彼は一度も学校に来なかったことはない
喜邏:彼が見ている世界は、多分違ったんでしょうね
叶芽:それを言わなきゃいいのに
叶芽:なんで天満くんは虐められていたのに
叶芽:それを言い続けたんだろう
喜邏:罪滅ぼしというは、そのことです
叶芽:そのこと?
喜邏:実は、私たちは似ています
喜邏:私の両親も怪異に殺されました
喜邏:違いがあるとすれば、死に触れた
喜邏:霊感の有無でしょうね
叶芽:怪異に殺された?
叶芽:その怪異は!?
喜邏:天満くんが祓いました
喜邏:彼が見ていた世界には日常的にいるモノたち
喜邏:どういう存在であるかをよく識っていた
喜邏:霊感があると言い続けたのは
喜邏:いつか、頼って欲しくて、です
叶芽:被害があるかもしれないと知っていたから
叶芽:虐められても言い続けた?
叶芽:そんなの、割に合わないっていうか
叶芽:え、じゃあ、天満くんは
喜邏:両親が殺された時、すぐに天満くんに言いました
喜邏:何が正解か解らない、何が起こったかすらも
喜邏:意味不明な私の説明を聞いて
喜邏:すぐに助けてくれたんです
叶芽:……
喜邏:かなり強い怪異で、霊感のない私すら見えてました
喜邏:いや、見せられているが正しい
叶芽:じゃあ、罪滅ぼしっていうのは
叶芽:何もできなかった自分を、守ってくれた天満くんを
叶芽:助ける為に?
喜邏:はい
喜邏:それから私は共にいます
喜邏:霊感が無いと解れば、これをくれました
叶芽:妖怪の目、ですね
喜邏:それだけじゃ力になれないと
喜邏:私の意思で手にも埋めました
喜邏:目隠しをしている間だけ
喜邏:私は霊を理解し、視ることができる
叶芽:そんな理由があったんですね
喜邏:だから、二人の様に立派な目的はないです
喜邏:私は、一生を賭けて罪を償い続ける
叶芽:だけど、それって……
叶芽:天満くんは望んでないんじゃないんですか?
叶芽:喜邏さんに普通に暮らしてほしいとか
叶芽:そこまでしてほしくないとか
叶芽:そういう風に思ってそうですけど
喜邏:えぇ、解っています
喜邏:ですが、それを理解した上で
喜邏:天満くんは、私という存在を側においていてくれている
喜邏:ふふふ、それでいいじゃないですか
叶芽:……
叶芽:(これは、私が立ち入る話じゃない…)
叶芽:わかりました、話してくれてありがとうございました
喜邏:こちらこそ
喜邏:聞いてくれてありがとうございます
喜邏:(ねぇ、天満くん
喜邏:私は、これでいいよね)
0:
0:ある過去
天満:喜邏
喜邏:喜邏?
天満:俺の目になるなら、それが名前
天満:明日から本格的に怪異関係に
天満:首突っ込むから偽名ね
天満:不満ある?
喜邏:仰せのままに
天満:やめろよ、それ
天満:別に恩に感じる必要もないし
天満:怒ってもないし、謝罪も贖罪もいらないって
喜邏:だけど、これは私の意思だから
天満:じゃあ、一つだけ
喜邏:何?
天満:俺より先に死ぬな
喜邏:……はい、絶対に
喜邏:これからは喜邏として
喜邏:天満くんと共に
天満:まぁ、一人よりマシか
天満:どうせ、俺もお前も独りだからな
喜邏:えぇ、そうですね
天満:慣れねぇな、ソレ
喜邏:慣れてください
天満:まぁ、ゆっくりな
0:
0:現在
喜邏:(この名が消えない限り……私は、喜邏として)
叶芽:あ、お土産買って帰ります?
叶芽:あそこ、最近できたシュークリーム屋さん!
喜邏:……いいですね
喜邏:買いましょう
0:
天満:叶芽の素質か
天満:あれは使えるかもな
天満:剣が増えるに越した事はない
天満:少し、考えてみるか
叶芽:戻りましたー
喜邏:お茶を用意しますね
天満:なんだ?
叶芽:お土産です!
叶芽:……優しいところあるんですねぇ、天満くん
天満:余計な事まで喋ったか?
天満:まぁ、いい
叶芽:はい!シュークリームです!
天満:(まぁ、甘い甘い天国の後に
天満:少しばかり、地獄を見てもらうか)
0:怪異戯曲・存在証明 終