台本概要
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タイトル | キミノナワ |
---|---|
作者名 | まりおん (@marion2009) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
わたしに実害が無い範囲で、有料無料に関わらず全て自由にお使いください。 過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。 わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。 1162 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
アルス | 男 | 59 | 竜殺しの異名を持つ最強の剣士と名高い男。 |
グレゴリー | 男 | 55 | 天下無双の斧使いと名を馳せた男。 |
エルメア | 女 | 52 | 爆炎の魔女と恐れられた天才女魔術師。 |
トメ | 女 | 51 | 自称、神をも縛りし者、縄使いの女。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
アルス:私の名はアルス。伯爵家の三男として生まれたが貴族の身分を捨て、剣に全てをささげた男。今日も山にこもり、一人修行に明け暮れていた。
グレゴリー:「よう、あんたがアルスか?」
アルス:「・・・・・・。」
グレゴリー:「こんな山奥で一人修行とは頭がイカれてるのか?何が楽しくてこんなことしてやがる。」
アルス:「・・・私に何か用か?」
グレゴリー:「ああ、用っちゃあ用だな。・・・お前を倒し、最強の名をもらいにきた。」
アルス:「・・・君の名は?」
グレゴリー:「俺様の名はグレゴリー。天下無双の斧使い、グレゴリー様だ。」
アルス:「グレゴリー?オルタナ戦役で最強の傭兵団と恐れられた、レッドエンペラーのグレゴリーか?」
グレゴリー:「ほう。こんな山奥にまで俺様の名声は届いていたか。悪くない気分だ。」
アルス:「それで、なぜそんな有名人がわざわざ俺なんかを倒しに来る。」
グレゴリー:「それはな・・・、未だに俺を最強と認めないやつがいるからだ!くそっ、忌々しい。
グレゴリー: 貴様の残した竜殺しのインパクトが強くてな、それだけで俺より上だと言いやがる。」
アルス:「なら、私ではなく竜を相手にすればよかろう。」
グレゴリー:「竜の住む地は遠いからな。それに、お前を倒せばどっちが強いか、よりはっきりするだろうが。」
アルス:「・・・ふう。しかたない。」
グレゴリー:「お、やる気になったかい?」
アルス:「今日の修行は、斧使いによる対人戦にすることにしよう。」
グレゴリー:「そうこなくっちゃなぁ。なあに、心配するな。街のやつにはちゃんと言ってやる。まあまあ強かったってな。」
アルス:「ごたくはいい。さっさと始めよう。」
グレゴリー:「ふん、後から泣き言言うんじゃねぇぞ。」
エルメア:「待ちなさい!」
グレゴリー:「っ!誰だ!」
エルメア:「その勝負、私が先にやらせてもらうわ。」
グレゴリー:「女?・・・その格好は・・・魔術師か?」
エルメア:「ええ。」
アルス:「君の名は?」
エルメア:「私はエルメア。」
グレゴリー:「エルメア!?まさか、お前、爆炎の魔女か!?」
エルメア:「その呼ばれ方は好きじゃないわ。」
グレゴリー:「まさか、こんな山奥で稀代の大魔術師と出会えるとはな。ツイてるんだか、ツイてないんだか・・・。」
エルメア:「あなたが、剣士アルス?」
アルス:「ああ、そうだ。」
エルメア:「あなたに一騎打ちを申し込むわ。」
グレゴリー:「なに?」
エルメア:「竜を倒したといわれるあなたの力、私の魔術師としての力とどちらが上か、知りたくなったのよ。」
アルス:「剣士と魔術師では、魔術師の方が不利なのでは?」
エルメア:「距離を詰められればそうね。でも、そう簡単に詰めさせはしないわよ?」
アルス:「・・・なるほど。たしかに骨が折れそうだ。」
グレゴリー:「おいおい、ちょっと待て!俺が先にやることになってるんだ。お前は後から来たんだろうが!」
エルメア:「いいえ、私は昨日のうちに来ていたの。策を練り、術を施し、さあこれからという時にあなたが来たのよ。」
グレゴリー:「そんなことは知らん。俺様が先に申し込んだんだ。お前は俺の後だ。」
エルメア:「なら、どちらが先に戦うか、実力で決めてもいいのよ?」
グレゴリー:「ほう・・・、言ったな?その綺麗な顔がどうなっても知らねぇぞ?」
エルメア:「それはこっちの台詞よ。あなたなんか一瞬でゴリラの丸焼きにしてあげるわ。」
グレゴリー:「てめぇ・・・。」
トメ:「ちょっとお待ち!」
エルメア:「誰!?」
トメ:「あたいかい?あたいはトメ。神をも縛りし縄使いさ!」
エルメア:「・・・・・・。」
グレゴリー:「・・・・・・。」
アルス:「・・・・・・。」
トメ:「(小声で)君の名は?」
アルス:「え?」
トメ:「(小声で)君の名は?って聞いて。」
アルス:「え?だって、今名乗ったよね?」
トメ:「(小声で)思わず名乗っちゃったけど、いいから。聞いて。」
アルス:「・・・君の名は?」
トメ:「あたいかい?あたいはトメ。神をも縛りし縄使いさ!」
エルメア:「・・・・・・。」
グレゴリー:「・・・・・・。」
アルス:「・・・なんで同じことやり直した?」
トメ:「二人には悪いけどね、あたいが先にやらせてもらうよ。」
アルス:「無視・・・だと・・・?」
グレゴリー:「おいおい、女。ふざけるのもたいがいにしろ。」
トメ:「トメ。」
エルメア:「そうよ、あなた。ここはあなたような者が立ち入っていいところじゃないの。」
トメ:「トメ。」
エルメア:「だいたい何?縄使いって。あなた、縄でいったい何をするというの?」
トメ:「トメ!・・・ふう。この時代には縄使いっていないのかしら?」
アルス:「この時代?」
トメ:「あたいはね、つい最近まで魔王の呪いで封印されていたのよ。それが、やっと開放されてこの時代に甦ったってわけ。」
アルス:「ま、魔王だと?魔王など、千年前のもはやおとぎ話だぞ?そんな話、誰が信じるものか。」
トメ:「信じる信じないはあんたたち次第さ。でもね、あたいの実力を見れば、あたいの話がただの与太話かどうかわかるはずさ。」
エルメア:「なに?なんなの?このプレッシャーは・・・?」
グレゴリー:「こいつ、ただの女じゃ、ない・・・?」
トメ:「トメ。」
アルス:「し、しかし、魔王を打ち倒した勇者の物語に、縄使いなどという職業はいなかったはず。」
トメ:「へえ。じゃあ、どんな職業がいたんだい?」
アルス:「勇者と戦士と神官と魔術師というふうに伝わっている。」
トメ:「ふむふむ。なるほど。じゃあ、あたいはその勇者だ。」
グレゴリー:「なに!?お前が勇者!?」
トメ:「だって、あたいの他の三人は戦士と神官と魔術師だったし。勇者だけ職業じゃないじゃん?」
エルメア:「勇者が、職業じゃないですって!?」
トメ:「そりゃそうでしょ。職業だったら、転職すればみんな勇者になれちゃうじゃない。」
エルメア:「た、たしかに・・・。」
トメ:「勇者って言うのは英雄に贈られる称号であって職業じゃない。魔王を倒した勇者の職業は縄使いだったのさ。」
アルス:「し、しかし、縄使いとは聞いたことが無い・・・。いったいどのような技を使うのか・・・。」
トメ:「そりゃあ、あたいと戦ってみればわかるってもんだよ。」
グレゴリー:「・・・面白い。ただの頭のおかしい女かどうか、俺が戦って試してやろう。」
トメ:「トメ。」
エルメア:「ちょっと待って。えっと・・・、トメ、さん?その、もしかして、その手に持ってる縄で戦うのかしら?」
トメ:「そうだよ。だって縄使いだもん。」
アルス:「ただの縄に見えるのだが?」
トメ:「そうだよ。ただの縄だよ。」
アルス:「ワラでできた?」
トメ:「ワラでできた。」
エルメア:「・・・ちょっと燃やしてみていいですか?」
トメ:「一本だけだよ?作るの結構大変なんだから。」
エルメア:「あ、はい。では・・・、ファイア。」
アルス:「あ、燃えた。」
グレゴリー:「燃えたな。」
エルメア:「燃えたわね。」
トメ:「・・・じゃあもういいかい?」
アルス:「いやいやいや!無理でしょ!?ただの縄で斧と戦うの、無理でしょ!」
トメ:「え?そう?」
アルス:「無理無理無理。簡単に切られちゃうから。縄もトメさんも斬られちゃうから!」
トメ:「はあ・・・、ったく。見くびられたもんだねぇ。こう見えても、あたいは魔王を倒した勇者なんだよ?
トメ: あんたらまとめて掛かってきたって負けやしないよ。」
エルメア:「なっ!」
グレゴリー:「おいおい、そいつは聞き捨てならねぇなぁ。この俺様がお前に、しかも三人がかりで勝てないだと?
グレゴリー: 冗談にしたって笑えねぇぞ、女ぁ。」
トメ:「トメ。」
グレゴリー:「どうやら死にたいようだな。いいだろう。この俺様がその願いを叶えてやろう。」
アルス:「待て、グレゴリー!」
グレゴリー:「死ねぇ!」
トメ:「ほい。」
アルス:「なっ!」
グレゴリー:「ぐわっ!」
エルメア:「素早い!」
アルス:「な・・・、何が起こった・・・?」
グレゴリー:「っつ、こ、これは・・・?」
アルス:「なんで俺様が倒れてるんだ?」
エルメア:「アルス?どうしたの?」
アルス:「アルス?俺様はグレゴリーだ。」
エルメア:「えっ?」
グレゴリー:「どうなっているんだ。目の前に、俺がいる・・・。」
エルメア:「ちょっと、二人とも、どうしちゃったの?」
アルス:「俺が・・・、剣を、持ってるだと?」
グレゴリー:「この斧は・・・。それにこの体、もしかして・・・!」
アルス:「俺たち。」
グレゴリー:「私たち。」
アルス:「(同時)入れ替わってる!?」
グレゴリー:「(同時)入れ替わってる!?」
エルメア:「これは、いったいどういうことなの!?」
トメ:「ふっふっふ。」
エルメア:「まさか、トメさんがやったというの?」
トメ:「これこそ縄使い究極秘奥義『君の縄』よ!一本の縄の端と端をそれぞれ巻きつけて、中身を入れ替える究極の技!
トメ: 魔王もこれによって近くのカエルと中身を入れ替えて倒したのだ。」
エルメア:「そ、そんな!」
アルス:「そんな馬鹿な技があってたまるか!第一、中身を入れ替えたくらいで、能力は落ちて無いんだろう?
アルス: それならこの体でお前をぶち殺してやるわ!」
トメ:「甘いなぁ。いくら鍛え上げられた体とは言え、あなたが使い古してきた体とは鍛え方も鍛えた場所も違うのよ。
トメ: 頭が技を覚えていたとしても、体がそれについていかないんだよ。」
アルス:「なんだとぉ!?」
トメ:「それに、あたいを殺せばもう一生元の体には戻れないよ?それでもいいのか?ほれほれ、いいのかい?」
アルス:「ぐあああああ!そんなこと知らん!とにかくお前は殺す!」
グレゴリー:「待て!」
アルス:「邪魔をするなぁ!」
グレゴリー:「元の体に戻る前に、トメを殺させるわけにはいかない!」
エルメア:「ああ、もうどうすればいいの?これじゃあ私は、どっちと戦えばいいの?」
トメ:「じゃあ、もう一回交換してやろう。ほい。」
エルメア:「え?」
アルス:「なにぃ!?」
グレゴリー:「ん?・・・戻ってない?・・・ということは?」
アルス:「え?え?ええええ!?」
エルメア:「な、なんじゃこりゃ!俺様が女に・・・?」
アルス:「まさか、わたし・・・。」
エルメア:「俺・・・。」
アルス:「(同時に)入れ替わってる~!?」
エルメア:「(同時に)入れ替わってる~!?」
グレゴリー:「(同時に)入れ替わってる~!?」
グレゴリー:「ちょ、ちょっと待て、落ち着け。」
アルス:「これが、落ち着いていられるわけ無いでしょ!」
エルメア:「俺が、女・・・?ホントかな?」
アルス:「あ!こら!人の体、勝手に触るんじゃない!」
エルメア:「いや、だってよう・・・。」
アルス:「ちょ!そう言いながらどこ触ろうとしてんの!」
グレゴリー:「ちょっと待て、二人とも。いったん落ち着いて話をしよう。」
アルス:「落ち着くのは、そこの変態をどうにかしてからよ!」
エルメア:「おいおい、自分に向かって変態って、お前・・・。」
アルス:「だから!私じゃなくてあんたに言ってんのよ!グレゴリー!」
グレゴリー:「つまり、今私の体に入ってるのはエルメアで、エルメアの体に入ってるのはグレゴリーというわけだな?」
アルス:「そうよ!だから、こいつ押さえるの手伝って!」
トメ:「どうだい?縄使いの恐ろしさ、わかったかい?」
グレゴリー:「たしかに。これは、強さというものを根本から覆(くつがえ)してしまう、そんなレベルの話だ。」
トメ:「だろう?この力がなければ、いくら歴戦のつわものとは言え、魔族の王に勝つことなどできないっての。」
グレゴリー:「ちなみに、これでトメさん自身を誰かと入れ替えることはできるのか?」
トメ:「やったことは無いが、たぶんできると思うよ。ほいっと。」
グレゴリー:「え?」
トメ:「うわっ!・・・グレゴリー、それに俺とエルメア・・・。ということは。」
グレゴリー:「ほらな?できたろ?」
トメ:「なんてことだ・・・。」
エルメア:「くそっ。さすがの俺様も、これは認めざるを得ないな。」
アルス:「そうね。こんなのほとんど反則よ。魔王だって勝てるわけが無いわ。」
トメ:「トメさん。悪かった。あなたの言うことを全面的に信じよう。トメさんは魔王を倒した勇者だ。」
グレゴリー:「そうかい。わかってくれればそれでいい。」
エルメア:「ああ。もう十分にわかったから、元の体に戻してくれ。」
アルス:「そうよ。お願い、トメさん。早くこの変態から体を取り戻したいの。」
トメ:「私からも頼む。己の未熟さがよくわかった。これまで以上に修行を重ね、より高みへと精進するつもりだ。」
グレゴリー:「・・・・・。」
トメ:「ん?どうした?トメさん?」
グレゴリー:「・・・この体じゃ、縄使いの技が使えない。」
アルス:「え?」
エルメア:「え?」
トメ:「え?」
グレゴリー:「いや、だって、この体で縄使いの修行したこと無いじゃん?だから、技、使えないよね・・・。」
トメ:「え・・・?ということは?」
グレゴリー:「・・・戻れないね。」
アルス:「(同時に)ええ~!」
エルメア:「(同時に)ええ~!」
トメ:「(同時に)ええ~!」
アルス:「どうするのよ!」
グレゴリー:「いや~、どうするって言われても・・・。」
トメ:「ずっとこのままなんですか!?」
グレゴリー:「縄使いの修行して、究極秘奥義を覚えるくらいまでいけば・・・。」
エルメア:「どれくらい掛かるんだ?」
グレゴリー:「早くて十年・・・。でも、この体不器用そうだから・・・。」
アルス:「キミノナワ・・・キミノナワ・・・。」
トメ:「あ!エルメアが壊れた!」
エルメア:「俺様は・・・、まあ女の体も悪くないな。」
トメ:「グレゴリー。お前自身は、魔術使えないだろ?そうしたら体はエルメアでもただの女とかわらないぞ?」
エルメア:「なっ!?」
トメ:「野盗に襲われ、奴隷として売られたりして・・・。」
エルメア:「やめろ!変な想像させるな!」
グレゴリー:「美人だから高く売れそうだな。」
エルメア:「おい!ふざけんな!一刻も早く奥義を習得しろ!」
グレゴリー:「そんな無茶な・・・。」
エルメア:「それと、お前も一緒に縄使いの修行しろ。」
トメ:「え?私も?」
エルメア:「その体は元々縄使いなんだから、習得も早いだろ?」
トメ:「そんな無茶な・・・。」
アルス:「キミノナワ・・・キミノナワ・・・。」
エルメア:「とにかく!何でもいいから早く元の体に戻せ~!」
0:おわり
アルス:私の名はアルス。伯爵家の三男として生まれたが貴族の身分を捨て、剣に全てをささげた男。今日も山にこもり、一人修行に明け暮れていた。
グレゴリー:「よう、あんたがアルスか?」
アルス:「・・・・・・。」
グレゴリー:「こんな山奥で一人修行とは頭がイカれてるのか?何が楽しくてこんなことしてやがる。」
アルス:「・・・私に何か用か?」
グレゴリー:「ああ、用っちゃあ用だな。・・・お前を倒し、最強の名をもらいにきた。」
アルス:「・・・君の名は?」
グレゴリー:「俺様の名はグレゴリー。天下無双の斧使い、グレゴリー様だ。」
アルス:「グレゴリー?オルタナ戦役で最強の傭兵団と恐れられた、レッドエンペラーのグレゴリーか?」
グレゴリー:「ほう。こんな山奥にまで俺様の名声は届いていたか。悪くない気分だ。」
アルス:「それで、なぜそんな有名人がわざわざ俺なんかを倒しに来る。」
グレゴリー:「それはな・・・、未だに俺を最強と認めないやつがいるからだ!くそっ、忌々しい。
グレゴリー: 貴様の残した竜殺しのインパクトが強くてな、それだけで俺より上だと言いやがる。」
アルス:「なら、私ではなく竜を相手にすればよかろう。」
グレゴリー:「竜の住む地は遠いからな。それに、お前を倒せばどっちが強いか、よりはっきりするだろうが。」
アルス:「・・・ふう。しかたない。」
グレゴリー:「お、やる気になったかい?」
アルス:「今日の修行は、斧使いによる対人戦にすることにしよう。」
グレゴリー:「そうこなくっちゃなぁ。なあに、心配するな。街のやつにはちゃんと言ってやる。まあまあ強かったってな。」
アルス:「ごたくはいい。さっさと始めよう。」
グレゴリー:「ふん、後から泣き言言うんじゃねぇぞ。」
エルメア:「待ちなさい!」
グレゴリー:「っ!誰だ!」
エルメア:「その勝負、私が先にやらせてもらうわ。」
グレゴリー:「女?・・・その格好は・・・魔術師か?」
エルメア:「ええ。」
アルス:「君の名は?」
エルメア:「私はエルメア。」
グレゴリー:「エルメア!?まさか、お前、爆炎の魔女か!?」
エルメア:「その呼ばれ方は好きじゃないわ。」
グレゴリー:「まさか、こんな山奥で稀代の大魔術師と出会えるとはな。ツイてるんだか、ツイてないんだか・・・。」
エルメア:「あなたが、剣士アルス?」
アルス:「ああ、そうだ。」
エルメア:「あなたに一騎打ちを申し込むわ。」
グレゴリー:「なに?」
エルメア:「竜を倒したといわれるあなたの力、私の魔術師としての力とどちらが上か、知りたくなったのよ。」
アルス:「剣士と魔術師では、魔術師の方が不利なのでは?」
エルメア:「距離を詰められればそうね。でも、そう簡単に詰めさせはしないわよ?」
アルス:「・・・なるほど。たしかに骨が折れそうだ。」
グレゴリー:「おいおい、ちょっと待て!俺が先にやることになってるんだ。お前は後から来たんだろうが!」
エルメア:「いいえ、私は昨日のうちに来ていたの。策を練り、術を施し、さあこれからという時にあなたが来たのよ。」
グレゴリー:「そんなことは知らん。俺様が先に申し込んだんだ。お前は俺の後だ。」
エルメア:「なら、どちらが先に戦うか、実力で決めてもいいのよ?」
グレゴリー:「ほう・・・、言ったな?その綺麗な顔がどうなっても知らねぇぞ?」
エルメア:「それはこっちの台詞よ。あなたなんか一瞬でゴリラの丸焼きにしてあげるわ。」
グレゴリー:「てめぇ・・・。」
トメ:「ちょっとお待ち!」
エルメア:「誰!?」
トメ:「あたいかい?あたいはトメ。神をも縛りし縄使いさ!」
エルメア:「・・・・・・。」
グレゴリー:「・・・・・・。」
アルス:「・・・・・・。」
トメ:「(小声で)君の名は?」
アルス:「え?」
トメ:「(小声で)君の名は?って聞いて。」
アルス:「え?だって、今名乗ったよね?」
トメ:「(小声で)思わず名乗っちゃったけど、いいから。聞いて。」
アルス:「・・・君の名は?」
トメ:「あたいかい?あたいはトメ。神をも縛りし縄使いさ!」
エルメア:「・・・・・・。」
グレゴリー:「・・・・・・。」
アルス:「・・・なんで同じことやり直した?」
トメ:「二人には悪いけどね、あたいが先にやらせてもらうよ。」
アルス:「無視・・・だと・・・?」
グレゴリー:「おいおい、女。ふざけるのもたいがいにしろ。」
トメ:「トメ。」
エルメア:「そうよ、あなた。ここはあなたような者が立ち入っていいところじゃないの。」
トメ:「トメ。」
エルメア:「だいたい何?縄使いって。あなた、縄でいったい何をするというの?」
トメ:「トメ!・・・ふう。この時代には縄使いっていないのかしら?」
アルス:「この時代?」
トメ:「あたいはね、つい最近まで魔王の呪いで封印されていたのよ。それが、やっと開放されてこの時代に甦ったってわけ。」
アルス:「ま、魔王だと?魔王など、千年前のもはやおとぎ話だぞ?そんな話、誰が信じるものか。」
トメ:「信じる信じないはあんたたち次第さ。でもね、あたいの実力を見れば、あたいの話がただの与太話かどうかわかるはずさ。」
エルメア:「なに?なんなの?このプレッシャーは・・・?」
グレゴリー:「こいつ、ただの女じゃ、ない・・・?」
トメ:「トメ。」
アルス:「し、しかし、魔王を打ち倒した勇者の物語に、縄使いなどという職業はいなかったはず。」
トメ:「へえ。じゃあ、どんな職業がいたんだい?」
アルス:「勇者と戦士と神官と魔術師というふうに伝わっている。」
トメ:「ふむふむ。なるほど。じゃあ、あたいはその勇者だ。」
グレゴリー:「なに!?お前が勇者!?」
トメ:「だって、あたいの他の三人は戦士と神官と魔術師だったし。勇者だけ職業じゃないじゃん?」
エルメア:「勇者が、職業じゃないですって!?」
トメ:「そりゃそうでしょ。職業だったら、転職すればみんな勇者になれちゃうじゃない。」
エルメア:「た、たしかに・・・。」
トメ:「勇者って言うのは英雄に贈られる称号であって職業じゃない。魔王を倒した勇者の職業は縄使いだったのさ。」
アルス:「し、しかし、縄使いとは聞いたことが無い・・・。いったいどのような技を使うのか・・・。」
トメ:「そりゃあ、あたいと戦ってみればわかるってもんだよ。」
グレゴリー:「・・・面白い。ただの頭のおかしい女かどうか、俺が戦って試してやろう。」
トメ:「トメ。」
エルメア:「ちょっと待って。えっと・・・、トメ、さん?その、もしかして、その手に持ってる縄で戦うのかしら?」
トメ:「そうだよ。だって縄使いだもん。」
アルス:「ただの縄に見えるのだが?」
トメ:「そうだよ。ただの縄だよ。」
アルス:「ワラでできた?」
トメ:「ワラでできた。」
エルメア:「・・・ちょっと燃やしてみていいですか?」
トメ:「一本だけだよ?作るの結構大変なんだから。」
エルメア:「あ、はい。では・・・、ファイア。」
アルス:「あ、燃えた。」
グレゴリー:「燃えたな。」
エルメア:「燃えたわね。」
トメ:「・・・じゃあもういいかい?」
アルス:「いやいやいや!無理でしょ!?ただの縄で斧と戦うの、無理でしょ!」
トメ:「え?そう?」
アルス:「無理無理無理。簡単に切られちゃうから。縄もトメさんも斬られちゃうから!」
トメ:「はあ・・・、ったく。見くびられたもんだねぇ。こう見えても、あたいは魔王を倒した勇者なんだよ?
トメ: あんたらまとめて掛かってきたって負けやしないよ。」
エルメア:「なっ!」
グレゴリー:「おいおい、そいつは聞き捨てならねぇなぁ。この俺様がお前に、しかも三人がかりで勝てないだと?
グレゴリー: 冗談にしたって笑えねぇぞ、女ぁ。」
トメ:「トメ。」
グレゴリー:「どうやら死にたいようだな。いいだろう。この俺様がその願いを叶えてやろう。」
アルス:「待て、グレゴリー!」
グレゴリー:「死ねぇ!」
トメ:「ほい。」
アルス:「なっ!」
グレゴリー:「ぐわっ!」
エルメア:「素早い!」
アルス:「な・・・、何が起こった・・・?」
グレゴリー:「っつ、こ、これは・・・?」
アルス:「なんで俺様が倒れてるんだ?」
エルメア:「アルス?どうしたの?」
アルス:「アルス?俺様はグレゴリーだ。」
エルメア:「えっ?」
グレゴリー:「どうなっているんだ。目の前に、俺がいる・・・。」
エルメア:「ちょっと、二人とも、どうしちゃったの?」
アルス:「俺が・・・、剣を、持ってるだと?」
グレゴリー:「この斧は・・・。それにこの体、もしかして・・・!」
アルス:「俺たち。」
グレゴリー:「私たち。」
アルス:「(同時)入れ替わってる!?」
グレゴリー:「(同時)入れ替わってる!?」
エルメア:「これは、いったいどういうことなの!?」
トメ:「ふっふっふ。」
エルメア:「まさか、トメさんがやったというの?」
トメ:「これこそ縄使い究極秘奥義『君の縄』よ!一本の縄の端と端をそれぞれ巻きつけて、中身を入れ替える究極の技!
トメ: 魔王もこれによって近くのカエルと中身を入れ替えて倒したのだ。」
エルメア:「そ、そんな!」
アルス:「そんな馬鹿な技があってたまるか!第一、中身を入れ替えたくらいで、能力は落ちて無いんだろう?
アルス: それならこの体でお前をぶち殺してやるわ!」
トメ:「甘いなぁ。いくら鍛え上げられた体とは言え、あなたが使い古してきた体とは鍛え方も鍛えた場所も違うのよ。
トメ: 頭が技を覚えていたとしても、体がそれについていかないんだよ。」
アルス:「なんだとぉ!?」
トメ:「それに、あたいを殺せばもう一生元の体には戻れないよ?それでもいいのか?ほれほれ、いいのかい?」
アルス:「ぐあああああ!そんなこと知らん!とにかくお前は殺す!」
グレゴリー:「待て!」
アルス:「邪魔をするなぁ!」
グレゴリー:「元の体に戻る前に、トメを殺させるわけにはいかない!」
エルメア:「ああ、もうどうすればいいの?これじゃあ私は、どっちと戦えばいいの?」
トメ:「じゃあ、もう一回交換してやろう。ほい。」
エルメア:「え?」
アルス:「なにぃ!?」
グレゴリー:「ん?・・・戻ってない?・・・ということは?」
アルス:「え?え?ええええ!?」
エルメア:「な、なんじゃこりゃ!俺様が女に・・・?」
アルス:「まさか、わたし・・・。」
エルメア:「俺・・・。」
アルス:「(同時に)入れ替わってる~!?」
エルメア:「(同時に)入れ替わってる~!?」
グレゴリー:「(同時に)入れ替わってる~!?」
グレゴリー:「ちょ、ちょっと待て、落ち着け。」
アルス:「これが、落ち着いていられるわけ無いでしょ!」
エルメア:「俺が、女・・・?ホントかな?」
アルス:「あ!こら!人の体、勝手に触るんじゃない!」
エルメア:「いや、だってよう・・・。」
アルス:「ちょ!そう言いながらどこ触ろうとしてんの!」
グレゴリー:「ちょっと待て、二人とも。いったん落ち着いて話をしよう。」
アルス:「落ち着くのは、そこの変態をどうにかしてからよ!」
エルメア:「おいおい、自分に向かって変態って、お前・・・。」
アルス:「だから!私じゃなくてあんたに言ってんのよ!グレゴリー!」
グレゴリー:「つまり、今私の体に入ってるのはエルメアで、エルメアの体に入ってるのはグレゴリーというわけだな?」
アルス:「そうよ!だから、こいつ押さえるの手伝って!」
トメ:「どうだい?縄使いの恐ろしさ、わかったかい?」
グレゴリー:「たしかに。これは、強さというものを根本から覆(くつがえ)してしまう、そんなレベルの話だ。」
トメ:「だろう?この力がなければ、いくら歴戦のつわものとは言え、魔族の王に勝つことなどできないっての。」
グレゴリー:「ちなみに、これでトメさん自身を誰かと入れ替えることはできるのか?」
トメ:「やったことは無いが、たぶんできると思うよ。ほいっと。」
グレゴリー:「え?」
トメ:「うわっ!・・・グレゴリー、それに俺とエルメア・・・。ということは。」
グレゴリー:「ほらな?できたろ?」
トメ:「なんてことだ・・・。」
エルメア:「くそっ。さすがの俺様も、これは認めざるを得ないな。」
アルス:「そうね。こんなのほとんど反則よ。魔王だって勝てるわけが無いわ。」
トメ:「トメさん。悪かった。あなたの言うことを全面的に信じよう。トメさんは魔王を倒した勇者だ。」
グレゴリー:「そうかい。わかってくれればそれでいい。」
エルメア:「ああ。もう十分にわかったから、元の体に戻してくれ。」
アルス:「そうよ。お願い、トメさん。早くこの変態から体を取り戻したいの。」
トメ:「私からも頼む。己の未熟さがよくわかった。これまで以上に修行を重ね、より高みへと精進するつもりだ。」
グレゴリー:「・・・・・。」
トメ:「ん?どうした?トメさん?」
グレゴリー:「・・・この体じゃ、縄使いの技が使えない。」
アルス:「え?」
エルメア:「え?」
トメ:「え?」
グレゴリー:「いや、だって、この体で縄使いの修行したこと無いじゃん?だから、技、使えないよね・・・。」
トメ:「え・・・?ということは?」
グレゴリー:「・・・戻れないね。」
アルス:「(同時に)ええ~!」
エルメア:「(同時に)ええ~!」
トメ:「(同時に)ええ~!」
アルス:「どうするのよ!」
グレゴリー:「いや~、どうするって言われても・・・。」
トメ:「ずっとこのままなんですか!?」
グレゴリー:「縄使いの修行して、究極秘奥義を覚えるくらいまでいけば・・・。」
エルメア:「どれくらい掛かるんだ?」
グレゴリー:「早くて十年・・・。でも、この体不器用そうだから・・・。」
アルス:「キミノナワ・・・キミノナワ・・・。」
トメ:「あ!エルメアが壊れた!」
エルメア:「俺様は・・・、まあ女の体も悪くないな。」
トメ:「グレゴリー。お前自身は、魔術使えないだろ?そうしたら体はエルメアでもただの女とかわらないぞ?」
エルメア:「なっ!?」
トメ:「野盗に襲われ、奴隷として売られたりして・・・。」
エルメア:「やめろ!変な想像させるな!」
グレゴリー:「美人だから高く売れそうだな。」
エルメア:「おい!ふざけんな!一刻も早く奥義を習得しろ!」
グレゴリー:「そんな無茶な・・・。」
エルメア:「それと、お前も一緒に縄使いの修行しろ。」
トメ:「え?私も?」
エルメア:「その体は元々縄使いなんだから、習得も早いだろ?」
トメ:「そんな無茶な・・・。」
アルス:「キミノナワ・・・キミノナワ・・・。」
エルメア:「とにかく!何でもいいから早く元の体に戻せ~!」
0:おわり