台本概要
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タイトル | 持ち込み武器で異世界ダンジョン攻略記 1 |
---|---|
作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
目覚めるとそこは、知らない草原だった。手にはハンガーのみ。 そして、近寄る影が一つ。 一体、これはどういう状況!? 184 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
大和 | 男 | 108 | やまと。ハンガーを持って転移した大学生。 |
スノウ | 女 | 67 | 女子高生。剣道部。真面目! |
アーミュ | 女 | 64 | 女子大生。コンカフェ嬢! |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
大和:(照りつける太陽、涼しい風)
大和:(生い茂った草花、匂いも良い)
大和:(ただ一つ、気掛かりなのはーー)
:
:
大和:どこ、ここ
:
:
大和:(俺が全く知らない場所だ、ということだ)
0:『持ち込み武器で異世界ダンジョン攻略記』
:
:
0:間
:
:
スノウ:ふぅ……
アーミュ:あ!スノウちゃんにゃ
スノウ:アーミュ?アナタも来てたの?
アーミュ:ムムッ…今回はちょっと多いかにゃ?
スノウ:知った顔が近くにいるわね
アーミュ:スノウちゃん……
スノウ:ん?どうしたの?
アーミュ:今日はこれにゃ……
アーミュ:『逃げ』の日だにゃ……
スノウ:いいわ、今日は一緒にいてあげる
スノウ:『スカウト』に切り替えましょ
アーミュ:そうするにゃ!早速行くのにゃー!
スノウ:あ!アーミュ!待って!
:
:
0:間
:
:
大和:……全くわからん!!
大和:……現実だよな……これ
:
大和:(見渡す限り、草原)
大和:(見たことない花が、ちらほら)
大和:まず状況整理するか……
大和:いや、てかこれ異世界だよな!?絶対!
大和:うわぁ…流行りの異世界転生だよなぁ……
0:手に持つハンガーに目がいく大和
大和:俺、死んだっけ?
:
:
大和:(死んでない、はずだ)
大和:(手に持ってるハンガーがそれを彷彿させる)
大和:俺は日野 大和 20歳、大学生
大和:一人暮らし、彼女……いない……
大和:くそ!記憶も意識もハッキリしてる!
大和:彼女できないまま死ぬわけねぇし!
大和:大学生だぞ!?俺、華の大学生だぞ!?
大和:……洗濯物干してただけなのになぁ……
:
:
スノウ:アーミュ、どう?見える?
アーミュ:新規に集中するにゃ
アーミュ:んん、近くに一人いるっぽいにゃ
スノウ:じゃあ、まずはそこから行きましょう
アーミュ:了解にゃ!
:
:
大和:あー……転移、か
大和:異世界転移ってやつなら
大和:死んでないことにも説明がつくし
大和:あれ?ていうかお約束の女神様は?
大和:チートスキルイベントは!?
大和:……えぇ、初期装備ハンガー…?
大和:いや、俺の私物やんけ……
大和:とりあえず、町か村か
大和:人が居るとこ探すしかないよな
0:草むらを歩く音が後ろから聞こえる
大和:え!もしかして、人!?
大和:助かった!あのー!すみませ……ん
0:棍棒を持った緑の生き物がそこに立っていた
大和:人間……な、訳ないですよねー…
0:棍棒を振り翳し、走る生物
大和:あっ…
:
:
アーミュ:にゃにゃ!?
スノウ:どうしたの?
アーミュ:移動し始めたにゃ!
スノウ:まさか…急ぎましょう
アーミュ:飛ばすにゃーー!
:
:
0:森まで走ってきた大和
大和:ハッ…ハッ…くっ…!!ハァ!
大和:(ダメだ、ダメだダメだダメだダメだ)
大和:(殺される……!!あれ、ゴブリンだ!)
大和:ハァ、ハァ…クソ、運動不足が祟った……!
大和:息が……ハァハァ!
大和:あっ!ッ!!
0:岩陰に隠れる大和
大和:ハァ…ハァ…
大和:マジ…かよ、マジで異世界か…?
大和:……ファイア!カエン!ボーボー!
大和:魔法すらできないの!?俺!?
0:音に反応するゴブリン
大和:!?ッやっばっ!
大和:とりあえず、やり過ごすしか…
大和:あ、これ…いやいや!
大和:ハンガーでどうやって棍棒に勝つんだよ……
:
大和:(俺は異世界に転移した、これは確定だ)
大和:(お約束のチートスキルやら女神様は、どうやらおあずけ)
大和:(相手は小さいが、あんなデカいモノをブンブン振り回すくらいには怪力)
大和:(対して俺は、装備はハンガーのみ)
大和:いや、俺マジで死んだ?これ
0:その時、後ろで音がする
大和:えっ?
0:気持ち悪い笑みを浮かべ、ゴブリンが見ていた
:
:
アーミュ:近いにゃ!
スノウ:草原エリアだと言っても
スノウ:良くてスライム、ゴブリン
スノウ:最悪ベア系だったら命は……
アーミュ:まだ反応は消えてないにゃ
アーミュ:なんとか間に合えば大丈夫にゃ!
スノウ:えぇ、無事でいてくれればいいのだけど
:
:
大和:グッ……おっヴェ…
大和:痛ッ……ぁ…
大和:(んだこれ、声出ねぇ……)
0:ゴブリンに蹴られ、数メートル飛ばされる大和
大和:(あぁ、コイツ、分かってんだ)
大和:(すぐに殺せるから遊びやがった…)
0:またも不気味な笑みを浮かべ、近づくゴブリン
大和:に……げ…
大和:(ダメだ、力入らねぇ…人生で蹴られたの初じゃね?俺)
大和:(ヤンキーすげぇな、こんな喧嘩毎日やるんかなー…)
大和:(あれ?死ぬ時って走馬灯見るだよな?)
大和:(何で俺、ヤンキーについて考えてんだよ……アホらし)
アーミュ:いたにゃ!
スノウ:まずい!殺されちゃう!
アーミュ:あ!スノウちゃん!
大和:あー……クソ…
大和:死に…たくねぇーなぁ……
大和:(どうせ死ぬなら、何か最後に、一矢報いて死んでやる)
大和:一矢……はっ、ハハッ!ッッ!?ゴホッ!痛ってぇ…
大和:死ぬってのに……馬鹿なこと考えたよ…
大和:けど、まぁ……
0:ゴブリンに向けてハンガーを弓の様に構える大和
大和:一矢、報いてやるよ
0:突如、ハンガーが光り、弓になる
大和:えっ……?
0:同時に、光の矢が射出され、ゴブリンの眉間を貫く
0:そして、倒れるゴブリン
アーミュ:嘘……
スノウ:まさか、土壇場で?
大和:……あー…疲れた…
0:そして、倒れ込む、大和
スノウ:!!ちょっと!あなた!大丈夫!?
スノウ:アーミュ!早く!
アーミュ:あ、あ!わかったにゃ!
大和:(なんだ?声が聞こえた気が…)
大和:(いや、それよりも…眠いような…)
:
:
:
0:間
:
:
:
大和:!?オエッ、ゲェーーー!
アーミュ:あ、目が覚めたにゃ
大和:まっっずっ!口の中、苦ァァァア!!
スノウ:はぁ、それだけ元気なら安心ね
大和:オェーーー
アーミュ:汚にゃ!!
大和:んだこれ、うぇ、気持ち悪っ
スノウ:ポーションよ、回復薬って言った方がいいかしら?
大和:えっ?
アーミュ:やっほー
大和:……誰?
スノウ:はぁ、あなた、新規よね?
大和:新規?
アーミュ:その反応が新規の証拠にゃ
アーミュ:はい、回復したでしょ、立つにゃ
大和:あ、あぁ
大和:もしかして、助けてくれた?
スノウ:ゴブリンから?だったら助けてないわよ
スノウ:あなた、自分で倒したし
大和:あ!そうだ、ゴブリン!
大和:あいつ…いや、俺がこれで……
アーミュ:新規で説明無しに武器化するのは凄いにゃ
アーミュ:よく死ななかったにゃー
大和:武器化?
スノウ:いいわ、説明しながら町に行きましょう
スノウ:今回は町もあるみたいだから
大和:あ、あぁ
:
:
0:間
:
:
大和:やっぱり異世界に転移したのは
大和:確定ってわけか
スノウ:そうね
大和:他にも俺みたいな人がいるってことか……
大和:結構前から、こんな感じで異世界から人が来てたのか?
アーミュ:わかんないにゃ
アーミュ:私たちもコッチに来たのは5回目にゃ
大和:え?
アーミュ:にゃ?
大和:いや、どう見てもコッチの世界の人でしょ!?
大和:猫耳生えてるし、にゃー言ってるし!
大和:名前もスノウとアーミュって
スノウ:あぁ、そのことね
スノウ:名前に関してはこっちの世界では
スノウ:リアルの方の名前を使うと変に思われるから
スノウ:……そうね、まずは見せた方が早いかな
アーミュ:『ステータス』って言うにゃ
大和:す、『ステータス』
:
0:ステータスウィンドウが表示される
:
大和:うぉ!?何だこれ!
スノウ:それがあなたの状態よ
スノウ:ゲームと一緒ね
スノウ:それで、ほらこの名前のところ
大和:空欄になってる
アーミュ:そこに名前を入れるにゃ
アーミュ:ちなみに私の本名はアユミにゃ
スノウ:私は、ユキエよ
大和:リアルの名前を入れると、こっちの世界の人に
大和:怪しまれるから、ゲームっぽい名前にするってこと?
スノウ:そんな感じで思ってていいわ
大和:なるほど
スノウ:HPだったり、MP
スノウ:それは分かると思うけど
スノウ:あとはレベル、下のバーは経験値よ
大和:全然溜まってない…のか?
アーミュ:それがよくわからないのにゃ
アーミュ:色んなモンスター倒すけど
アーミュ:レベルが上がんないにゃ
大和:どういうことだ?
スノウ:筋力、防御力ってのがあるでしょ?
スノウ:それはこの世界に来た時にランダムに振り分けられてて
スノウ:リアルより多少、身体が強化されてるの
アーミュ:私の場合は素早さが高かったにゃ
アーミュ:100メートル9秒くらいで走れたにゃ
大和:早いな!オリンピック選手じゃん!
スノウ:武器を持たなくてもモンスターを倒せるくらい
スノウ:強い人もいるわ
スノウ:あなたの場合、少し防御力が高いわね
スノウ:ゴブリンの蹴りを素で受けて
スノウ:あの程度で済んだのはそれかも
大和:もし、防御力が低かったら……
アーミュ:内臓破裂とか、即死とかかにゃ?
大和:こっわっ!!
大和:ステータスに助けられたってわけか
スノウ:それで、レベルのことだけど
スノウ:たしかにレベルが上がらないのよ
スノウ:ただ、この筋力や防御の数値は
スノウ:経験を積めば、ランダムだけど上がっていくわ
大和:うん?どういうシステムなんだ…?
大和:レベルを上げるには、また別の特殊な条件があるのか
アーミュ:そこはわからないにゃ
アーミュ:顔見知りはいるけど、みんなレベル1なのにゃ
大和:大体分かった
大和:それで、ハンガーが弓矢になったのは?
スノウ:それがこの世界の理(ことわり)みたいなものね
スノウ:さっきのはゲームで言う『チュートリアル』
大和:チュートリアル?
アーミュ:本来、新規の人は経験者の近くに転移するにゃ
アーミュ:だけど、時々離れた場所に転移することがあるにゃ
アーミュ:今回のキミみたいに…それで普通は……
大和:ん?どうした?
スノウ:死ぬのよ
大和:……え?
スノウ:訳も分からず、何も出来ずに、ね
スノウ:あなたは運が良かったと言うしかない
スノウ:本来は経験者が新規に教えて、ある程度慣れるものなの
大和:……俺はやっぱり、死んでてもおかしくなかったのか
アーミュ:そういうこともあるからだけど
アーミュ:経験者たちで色々決めてることがあるのにゃ
スノウ:その説明より、まずは武器化の説明が先ね
スノウ:この世界の理、私たちは『持ち込み武器』と呼んでるわ
大和:持ち込み武器?
スノウ:えぇ、転移前に現実世界で所持していた道具
スノウ:そのどれか1つがコッチに持ち込まれるのよ
アーミュ:それを武器化するのが、その名の通り『武器化』にゃ
スノウ:持ち込んだ道具をどう武器にするかなんて
スノウ:これは説明されないと分からない
スノウ:武器化は想像、妄想すると、それが具現化するの
大和:そうか……俺が咄嗟にハンガーを弓矢みたいに
大和:思ったから武器化したわけか
アーミュ:本当に運が良かったにゃ
大和:確か……転移前は洗濯物を干してて
大和:それでハンガーを持ってた
大和:もし、別の物だったら、それが持ち込まれてた
大和:あ、二人は何を持ち込んだんだ?
アーミュ:私はこれにゃ
大和:なんだこれ?
アーミュ:電卓
大和:電卓!?これが!?
アーミュ:戦えないから、探すことに特化させたんだにゃ
アーミュ:武器化は、探知機みたいな感じにゃ
大和:まさか、これで俺を見つけてくれた?
スノウ:そのまさか、よ
大和:あ、ありがとう!
大和:命の恩人感謝永遠にー!!
アーミュ:いやぁ、それほどでもにゃ
スノウ:私はこれよ
大和:刀?
スノウ:えぇ、元は竹刀よ
スノウ:私は剣道部だから常に持ち歩いてるの
大和:なるほど
大和:けど常に持ち歩いてるならいいけど
大和:転移は急に起こるんだろ?
大和:電卓みたいに戦えない物を持ってると
大和:きつくないか?
アーミュ:そうにゃ
アーミュ:だから決め事がるのにゃ
アーミュ:次はそれを説明するのにゃ
大和:わかった
アーミュ:ゲームはしたことあるにゃ?
アーミュ:戦闘が始まるとコマンドがでるにゃ
大和:あー、戦う、道具、逃げるとか?
スノウ:そう
スノウ:それになぞって、武器として戦えそうな人は『戦闘』
スノウ:戦えない人は『逃げ』
スノウ:今回のアーミュみたいに何かを探したりできそうなら『スカウト』
スノウ:それでこの異世界を攻略しているの
大和:スカウトってなんだ?
アーミュ:今回のキミみたいに遠くに飛ばされた
アーミュ:新規を探したり、他にも異世界の道具とかを探すのも
アーミュ:スカウトがやることにゃ
大和:なるほど、分かった
大和:まぁリアルでもゲームとか漫画は
大和:よく見る方だったし、チートスキルなしの
大和:異世界転生モノって思えば……チートスキル欲しかったなぁ…
アーミュ:それで言うとスノウちゃんは凄いにゃ!
アーミュ:すっごい真面目で初めて飛ばされて以降
アーミュ:リアルでラノベとか読み出したみたいだにゃ!
大和:へぇ
スノウ:ちょ!別にそれはいいでしょ!?
スノウ:知らないことがあるのが嫌なの!
大和:スノウ…さんは大体予想がつくんだけど
大和:アーミュさんはマジでなんなの?
アーミュ:んー?どういうことにゃ?
アーミュ:あと普通にアーミュでいいにゃよ
大和:いや、にゃあにゃあ言ってるし
大和:それ、コスプレじゃないよな?
大和:普通に動いてるし、猫耳
アーミュ:あー、これにゃー?
アーミュ:カチューシャ
大和:いや、絶対違う!
スノウ:あまりリアルを詮索するのはマナー違反だけど
スノウ:アーミュは自分から言ってるしいいかな
スノウ:その人はコンカフェで働いてるのよ
大和:コンカフェ……
アーミュ:コンセプトカフェ
アーミュ:ちなみに猫の世界がコンセプトにゃ
大和:コンカフェ嬢!?本物初めて見た!
アーミュ:そうにゃ
アーミュ:初めて転移した時からカチューシャは
アーミュ:多分、服として持ち込まれているにゃ
アーミュ:それがどういう訳か、コッチでは本物の猫耳になるにゃ
大和:マジかよスゲェな
アーミュ:ちなみに……
大和:えっ
アーミュ:リアルでは普通に喋れるから
アーミュ:仕事中と、せっかくの異世界だけは
アーミュ:猫獣人として楽しんでるの
アーミュ:あまりお姉さんを悪く言うとお仕置きしちゃうよ?
大和:あっ…ハィ…
アーミュ:よろしい
スノウ:じゃあ最後にこの世界の攻略についてね
大和:あ、そうか
大和:何回か来てるってことは戻ってるってことか
アーミュ:そうにゃ!
大和:(いや、切り替え怖ぇよ)
スノウ:色々あるんだけど
スノウ:まずは異世界レベルについてね
大和:異世界レベル?
スノウ:今回は町もあるし、草原フィールドもある
スノウ:結構難易度は低いはずよ
スノウ:以前には、火山地帯や洞窟なんかもあったわ
アーミュ:町があると買い物もできるから
アーミュ:準備もできて楽にゃ
大和:なるほど
大和:お金は……あっ、これか
スノウ:モンスターを倒すと自動的に追加されるわ
スノウ:それは持ち越されるから残しても大丈夫よ
スノウ:あとそのウィンドウに手を突っ込んでみて
大和:うわっ!?何だこれ?
大和:ウィンドウに吸い込まれた!?
アーミュ:そこに入れると持ち物。ゆスロットが埋まるにゃ
アーミュ:同じものは同一化されるけど
アーミュ:大きさで数が変わるにゃ
大和:道具袋にもなるのかよ、このウィンドウ…
スノウ:これくらいの石だと99個は入るわ
スノウ:入らない時は、飲み込まれず落ちるから
スノウ:それで判断するしかないのだけど
大和:異世界技術すげぇな…
スノウ:それで、一番大事な元の世界に帰る方法
大和:あ、あぁ……
スノウ:『廻層主(かいそうぬし)』を倒す
大和:階層主?
スノウ:多分思ってる漢字と違うわ
スノウ:廻る(めぐる)層の主
スノウ:私たちは何度もこの異世界を廻って
スノウ:その主を倒しているのよ
大和:っ……
アーミュ:ちなみにこの世界のルールは
アーミュ:誰が倒しても全員戻れる
アーミュ:だから、『逃げ』や『スカウト』がいる
アーミュ:ただし……
大和:待て!戦闘がいなくなったら!?
大和:戦えない役職が残ったら…
スノウ:えぇ、全員死ぬまで終わらないし
スノウ:全員死ぬのだから、どうなるか分からないわ
大和:……今まで全滅したことは?
アーミュ:生きてるってことは
アーミュ:私たちが知ってる段階では無いってことにゃ
大和:……
スノウ:お金もそうだけど、この世界で手に入れた道具も
スノウ:持ち越しは可能よ
スノウ:廻層主を倒せばアイテムも手に入ることがある
大和:利点はあるわけ…か
アーミュ:一番は帰れることだろうけどにゃ
スノウ:結構時間が経ったわ
スノウ:だけどまだこの世界にいるってことは
大和:まだ廻層主を倒してない……
スノウ:えぇ、そうなるわね
大和:二人はどうするんだ?
スノウ:私は戦闘でもいいけど
スノウ:アーミュは無理ね
アーミュ:コレだからにゃぁ…
大和:探そう
スノウ:え?
大和:廻層主、俺は戦える
スノウ:馬鹿じゃないの!る
スノウ:ゴブリンを倒したからって調子に乗ったら!
大和:だけど、このままってのも!
アーミュ:何も初めてで無理しにゃくても
大和:……それでも探すだけでも
大和:やれることはあるはずだから
スノウ:……はぁ
スノウ:アーミュ
アーミュ:大丈夫にゃ!
アーミュ:私は町で時間潰しておくにゃ
大和:スノウは一緒に来てくれるのか?
スノウ:一応、戦闘は経験してるし
スノウ:廻層主とも戦ったことはあるから
大和:心強いな
アーミュ:だけど、廻層主は普通と違うにゃ
アーミュ:ゴブリンより更に強力でヤバい存在にゃ
スノウ:私が戦ったのは……鬼人種(オーガ)
大和:オーガ……
スノウ:2メートル以上の身体に特殊な力もあった
スノウ:そういえば忘れていたけど
スノウ:この世界にはら魔法がないのよね
大和:魔法がない?
アーミュ:MPはあるのに魔法が使えないのにゃ
大和:魔法を想像してないからじゃないのか?
スノウ:というより、発動しないのよ
スノウ:例えば、その弓を火の矢のようにするのも
スノウ:無理なはずよ
スノウ:私の場合は火を現に纏わせたりできないし
アーミュ:都市伝説でレベルが上がらないと使えないって
アーミュ:言われているにゃ
大和:なるほど……
スノウ:あとは武器化した道具は別の武器にはできないわ
スノウ:今のあなたはハンガーを弓矢にしかできない
スノウ:別の武器にするには一度元の世界に戻って
スノウ:また転移した時に想像し直すしかない
大和:けど、ハンガーは弓しかイメージ湧かないな…
スノウ:まぁ、武器ごとにも何かあるはずよ
スノウ:色んな武器化をするより、一つに特化した方が
スノウ:いいのかもしれないわ
アーミュ:これもラノベの知識にゃ
スノウ:だから!それは言わなくていいから!
大和:……よし、『チュートリアル』は終わりだな
スノウ:えぇ、大体伝えたわ
アーミュ:行くのかにゃ?
大和:あぁ、何ができるかわからないけど
大和:廻層主、探してみるよ
スノウ:いいわ、今回は付き合ってあげる
アーミュ:私は手伝えないけど
アーミュ:次の転移では何か手伝うにゃ!
大和:何から何までありがとう、二人とも
大和:よし、じゃあベタだけど……
スノウ:何?
アーミュ:にゃ?
大和:俺の冒険、始めてみますか!
0:第一話『はじめての転移』終
大和:(照りつける太陽、涼しい風)
大和:(生い茂った草花、匂いも良い)
大和:(ただ一つ、気掛かりなのはーー)
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:
大和:どこ、ここ
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大和:(俺が全く知らない場所だ、ということだ)
0:『持ち込み武器で異世界ダンジョン攻略記』
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0:間
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スノウ:ふぅ……
アーミュ:あ!スノウちゃんにゃ
スノウ:アーミュ?アナタも来てたの?
アーミュ:ムムッ…今回はちょっと多いかにゃ?
スノウ:知った顔が近くにいるわね
アーミュ:スノウちゃん……
スノウ:ん?どうしたの?
アーミュ:今日はこれにゃ……
アーミュ:『逃げ』の日だにゃ……
スノウ:いいわ、今日は一緒にいてあげる
スノウ:『スカウト』に切り替えましょ
アーミュ:そうするにゃ!早速行くのにゃー!
スノウ:あ!アーミュ!待って!
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0:間
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大和:……全くわからん!!
大和:……現実だよな……これ
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大和:(見渡す限り、草原)
大和:(見たことない花が、ちらほら)
大和:まず状況整理するか……
大和:いや、てかこれ異世界だよな!?絶対!
大和:うわぁ…流行りの異世界転生だよなぁ……
0:手に持つハンガーに目がいく大和
大和:俺、死んだっけ?
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大和:(死んでない、はずだ)
大和:(手に持ってるハンガーがそれを彷彿させる)
大和:俺は日野 大和 20歳、大学生
大和:一人暮らし、彼女……いない……
大和:くそ!記憶も意識もハッキリしてる!
大和:彼女できないまま死ぬわけねぇし!
大和:大学生だぞ!?俺、華の大学生だぞ!?
大和:……洗濯物干してただけなのになぁ……
:
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スノウ:アーミュ、どう?見える?
アーミュ:新規に集中するにゃ
アーミュ:んん、近くに一人いるっぽいにゃ
スノウ:じゃあ、まずはそこから行きましょう
アーミュ:了解にゃ!
:
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大和:あー……転移、か
大和:異世界転移ってやつなら
大和:死んでないことにも説明がつくし
大和:あれ?ていうかお約束の女神様は?
大和:チートスキルイベントは!?
大和:……えぇ、初期装備ハンガー…?
大和:いや、俺の私物やんけ……
大和:とりあえず、町か村か
大和:人が居るとこ探すしかないよな
0:草むらを歩く音が後ろから聞こえる
大和:え!もしかして、人!?
大和:助かった!あのー!すみませ……ん
0:棍棒を持った緑の生き物がそこに立っていた
大和:人間……な、訳ないですよねー…
0:棍棒を振り翳し、走る生物
大和:あっ…
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アーミュ:にゃにゃ!?
スノウ:どうしたの?
アーミュ:移動し始めたにゃ!
スノウ:まさか…急ぎましょう
アーミュ:飛ばすにゃーー!
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0:森まで走ってきた大和
大和:ハッ…ハッ…くっ…!!ハァ!
大和:(ダメだ、ダメだダメだダメだダメだ)
大和:(殺される……!!あれ、ゴブリンだ!)
大和:ハァ、ハァ…クソ、運動不足が祟った……!
大和:息が……ハァハァ!
大和:あっ!ッ!!
0:岩陰に隠れる大和
大和:ハァ…ハァ…
大和:マジ…かよ、マジで異世界か…?
大和:……ファイア!カエン!ボーボー!
大和:魔法すらできないの!?俺!?
0:音に反応するゴブリン
大和:!?ッやっばっ!
大和:とりあえず、やり過ごすしか…
大和:あ、これ…いやいや!
大和:ハンガーでどうやって棍棒に勝つんだよ……
:
大和:(俺は異世界に転移した、これは確定だ)
大和:(お約束のチートスキルやら女神様は、どうやらおあずけ)
大和:(相手は小さいが、あんなデカいモノをブンブン振り回すくらいには怪力)
大和:(対して俺は、装備はハンガーのみ)
大和:いや、俺マジで死んだ?これ
0:その時、後ろで音がする
大和:えっ?
0:気持ち悪い笑みを浮かべ、ゴブリンが見ていた
:
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アーミュ:近いにゃ!
スノウ:草原エリアだと言っても
スノウ:良くてスライム、ゴブリン
スノウ:最悪ベア系だったら命は……
アーミュ:まだ反応は消えてないにゃ
アーミュ:なんとか間に合えば大丈夫にゃ!
スノウ:えぇ、無事でいてくれればいいのだけど
:
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大和:グッ……おっヴェ…
大和:痛ッ……ぁ…
大和:(んだこれ、声出ねぇ……)
0:ゴブリンに蹴られ、数メートル飛ばされる大和
大和:(あぁ、コイツ、分かってんだ)
大和:(すぐに殺せるから遊びやがった…)
0:またも不気味な笑みを浮かべ、近づくゴブリン
大和:に……げ…
大和:(ダメだ、力入らねぇ…人生で蹴られたの初じゃね?俺)
大和:(ヤンキーすげぇな、こんな喧嘩毎日やるんかなー…)
大和:(あれ?死ぬ時って走馬灯見るだよな?)
大和:(何で俺、ヤンキーについて考えてんだよ……アホらし)
アーミュ:いたにゃ!
スノウ:まずい!殺されちゃう!
アーミュ:あ!スノウちゃん!
大和:あー……クソ…
大和:死に…たくねぇーなぁ……
大和:(どうせ死ぬなら、何か最後に、一矢報いて死んでやる)
大和:一矢……はっ、ハハッ!ッッ!?ゴホッ!痛ってぇ…
大和:死ぬってのに……馬鹿なこと考えたよ…
大和:けど、まぁ……
0:ゴブリンに向けてハンガーを弓の様に構える大和
大和:一矢、報いてやるよ
0:突如、ハンガーが光り、弓になる
大和:えっ……?
0:同時に、光の矢が射出され、ゴブリンの眉間を貫く
0:そして、倒れるゴブリン
アーミュ:嘘……
スノウ:まさか、土壇場で?
大和:……あー…疲れた…
0:そして、倒れ込む、大和
スノウ:!!ちょっと!あなた!大丈夫!?
スノウ:アーミュ!早く!
アーミュ:あ、あ!わかったにゃ!
大和:(なんだ?声が聞こえた気が…)
大和:(いや、それよりも…眠いような…)
:
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0:間
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大和:!?オエッ、ゲェーーー!
アーミュ:あ、目が覚めたにゃ
大和:まっっずっ!口の中、苦ァァァア!!
スノウ:はぁ、それだけ元気なら安心ね
大和:オェーーー
アーミュ:汚にゃ!!
大和:んだこれ、うぇ、気持ち悪っ
スノウ:ポーションよ、回復薬って言った方がいいかしら?
大和:えっ?
アーミュ:やっほー
大和:……誰?
スノウ:はぁ、あなた、新規よね?
大和:新規?
アーミュ:その反応が新規の証拠にゃ
アーミュ:はい、回復したでしょ、立つにゃ
大和:あ、あぁ
大和:もしかして、助けてくれた?
スノウ:ゴブリンから?だったら助けてないわよ
スノウ:あなた、自分で倒したし
大和:あ!そうだ、ゴブリン!
大和:あいつ…いや、俺がこれで……
アーミュ:新規で説明無しに武器化するのは凄いにゃ
アーミュ:よく死ななかったにゃー
大和:武器化?
スノウ:いいわ、説明しながら町に行きましょう
スノウ:今回は町もあるみたいだから
大和:あ、あぁ
:
:
0:間
:
:
大和:やっぱり異世界に転移したのは
大和:確定ってわけか
スノウ:そうね
大和:他にも俺みたいな人がいるってことか……
大和:結構前から、こんな感じで異世界から人が来てたのか?
アーミュ:わかんないにゃ
アーミュ:私たちもコッチに来たのは5回目にゃ
大和:え?
アーミュ:にゃ?
大和:いや、どう見てもコッチの世界の人でしょ!?
大和:猫耳生えてるし、にゃー言ってるし!
大和:名前もスノウとアーミュって
スノウ:あぁ、そのことね
スノウ:名前に関してはこっちの世界では
スノウ:リアルの方の名前を使うと変に思われるから
スノウ:……そうね、まずは見せた方が早いかな
アーミュ:『ステータス』って言うにゃ
大和:す、『ステータス』
:
0:ステータスウィンドウが表示される
:
大和:うぉ!?何だこれ!
スノウ:それがあなたの状態よ
スノウ:ゲームと一緒ね
スノウ:それで、ほらこの名前のところ
大和:空欄になってる
アーミュ:そこに名前を入れるにゃ
アーミュ:ちなみに私の本名はアユミにゃ
スノウ:私は、ユキエよ
大和:リアルの名前を入れると、こっちの世界の人に
大和:怪しまれるから、ゲームっぽい名前にするってこと?
スノウ:そんな感じで思ってていいわ
大和:なるほど
スノウ:HPだったり、MP
スノウ:それは分かると思うけど
スノウ:あとはレベル、下のバーは経験値よ
大和:全然溜まってない…のか?
アーミュ:それがよくわからないのにゃ
アーミュ:色んなモンスター倒すけど
アーミュ:レベルが上がんないにゃ
大和:どういうことだ?
スノウ:筋力、防御力ってのがあるでしょ?
スノウ:それはこの世界に来た時にランダムに振り分けられてて
スノウ:リアルより多少、身体が強化されてるの
アーミュ:私の場合は素早さが高かったにゃ
アーミュ:100メートル9秒くらいで走れたにゃ
大和:早いな!オリンピック選手じゃん!
スノウ:武器を持たなくてもモンスターを倒せるくらい
スノウ:強い人もいるわ
スノウ:あなたの場合、少し防御力が高いわね
スノウ:ゴブリンの蹴りを素で受けて
スノウ:あの程度で済んだのはそれかも
大和:もし、防御力が低かったら……
アーミュ:内臓破裂とか、即死とかかにゃ?
大和:こっわっ!!
大和:ステータスに助けられたってわけか
スノウ:それで、レベルのことだけど
スノウ:たしかにレベルが上がらないのよ
スノウ:ただ、この筋力や防御の数値は
スノウ:経験を積めば、ランダムだけど上がっていくわ
大和:うん?どういうシステムなんだ…?
大和:レベルを上げるには、また別の特殊な条件があるのか
アーミュ:そこはわからないにゃ
アーミュ:顔見知りはいるけど、みんなレベル1なのにゃ
大和:大体分かった
大和:それで、ハンガーが弓矢になったのは?
スノウ:それがこの世界の理(ことわり)みたいなものね
スノウ:さっきのはゲームで言う『チュートリアル』
大和:チュートリアル?
アーミュ:本来、新規の人は経験者の近くに転移するにゃ
アーミュ:だけど、時々離れた場所に転移することがあるにゃ
アーミュ:今回のキミみたいに…それで普通は……
大和:ん?どうした?
スノウ:死ぬのよ
大和:……え?
スノウ:訳も分からず、何も出来ずに、ね
スノウ:あなたは運が良かったと言うしかない
スノウ:本来は経験者が新規に教えて、ある程度慣れるものなの
大和:……俺はやっぱり、死んでてもおかしくなかったのか
アーミュ:そういうこともあるからだけど
アーミュ:経験者たちで色々決めてることがあるのにゃ
スノウ:その説明より、まずは武器化の説明が先ね
スノウ:この世界の理、私たちは『持ち込み武器』と呼んでるわ
大和:持ち込み武器?
スノウ:えぇ、転移前に現実世界で所持していた道具
スノウ:そのどれか1つがコッチに持ち込まれるのよ
アーミュ:それを武器化するのが、その名の通り『武器化』にゃ
スノウ:持ち込んだ道具をどう武器にするかなんて
スノウ:これは説明されないと分からない
スノウ:武器化は想像、妄想すると、それが具現化するの
大和:そうか……俺が咄嗟にハンガーを弓矢みたいに
大和:思ったから武器化したわけか
アーミュ:本当に運が良かったにゃ
大和:確か……転移前は洗濯物を干してて
大和:それでハンガーを持ってた
大和:もし、別の物だったら、それが持ち込まれてた
大和:あ、二人は何を持ち込んだんだ?
アーミュ:私はこれにゃ
大和:なんだこれ?
アーミュ:電卓
大和:電卓!?これが!?
アーミュ:戦えないから、探すことに特化させたんだにゃ
アーミュ:武器化は、探知機みたいな感じにゃ
大和:まさか、これで俺を見つけてくれた?
スノウ:そのまさか、よ
大和:あ、ありがとう!
大和:命の恩人感謝永遠にー!!
アーミュ:いやぁ、それほどでもにゃ
スノウ:私はこれよ
大和:刀?
スノウ:えぇ、元は竹刀よ
スノウ:私は剣道部だから常に持ち歩いてるの
大和:なるほど
大和:けど常に持ち歩いてるならいいけど
大和:転移は急に起こるんだろ?
大和:電卓みたいに戦えない物を持ってると
大和:きつくないか?
アーミュ:そうにゃ
アーミュ:だから決め事がるのにゃ
アーミュ:次はそれを説明するのにゃ
大和:わかった
アーミュ:ゲームはしたことあるにゃ?
アーミュ:戦闘が始まるとコマンドがでるにゃ
大和:あー、戦う、道具、逃げるとか?
スノウ:そう
スノウ:それになぞって、武器として戦えそうな人は『戦闘』
スノウ:戦えない人は『逃げ』
スノウ:今回のアーミュみたいに何かを探したりできそうなら『スカウト』
スノウ:それでこの異世界を攻略しているの
大和:スカウトってなんだ?
アーミュ:今回のキミみたいに遠くに飛ばされた
アーミュ:新規を探したり、他にも異世界の道具とかを探すのも
アーミュ:スカウトがやることにゃ
大和:なるほど、分かった
大和:まぁリアルでもゲームとか漫画は
大和:よく見る方だったし、チートスキルなしの
大和:異世界転生モノって思えば……チートスキル欲しかったなぁ…
アーミュ:それで言うとスノウちゃんは凄いにゃ!
アーミュ:すっごい真面目で初めて飛ばされて以降
アーミュ:リアルでラノベとか読み出したみたいだにゃ!
大和:へぇ
スノウ:ちょ!別にそれはいいでしょ!?
スノウ:知らないことがあるのが嫌なの!
大和:スノウ…さんは大体予想がつくんだけど
大和:アーミュさんはマジでなんなの?
アーミュ:んー?どういうことにゃ?
アーミュ:あと普通にアーミュでいいにゃよ
大和:いや、にゃあにゃあ言ってるし
大和:それ、コスプレじゃないよな?
大和:普通に動いてるし、猫耳
アーミュ:あー、これにゃー?
アーミュ:カチューシャ
大和:いや、絶対違う!
スノウ:あまりリアルを詮索するのはマナー違反だけど
スノウ:アーミュは自分から言ってるしいいかな
スノウ:その人はコンカフェで働いてるのよ
大和:コンカフェ……
アーミュ:コンセプトカフェ
アーミュ:ちなみに猫の世界がコンセプトにゃ
大和:コンカフェ嬢!?本物初めて見た!
アーミュ:そうにゃ
アーミュ:初めて転移した時からカチューシャは
アーミュ:多分、服として持ち込まれているにゃ
アーミュ:それがどういう訳か、コッチでは本物の猫耳になるにゃ
大和:マジかよスゲェな
アーミュ:ちなみに……
大和:えっ
アーミュ:リアルでは普通に喋れるから
アーミュ:仕事中と、せっかくの異世界だけは
アーミュ:猫獣人として楽しんでるの
アーミュ:あまりお姉さんを悪く言うとお仕置きしちゃうよ?
大和:あっ…ハィ…
アーミュ:よろしい
スノウ:じゃあ最後にこの世界の攻略についてね
大和:あ、そうか
大和:何回か来てるってことは戻ってるってことか
アーミュ:そうにゃ!
大和:(いや、切り替え怖ぇよ)
スノウ:色々あるんだけど
スノウ:まずは異世界レベルについてね
大和:異世界レベル?
スノウ:今回は町もあるし、草原フィールドもある
スノウ:結構難易度は低いはずよ
スノウ:以前には、火山地帯や洞窟なんかもあったわ
アーミュ:町があると買い物もできるから
アーミュ:準備もできて楽にゃ
大和:なるほど
大和:お金は……あっ、これか
スノウ:モンスターを倒すと自動的に追加されるわ
スノウ:それは持ち越されるから残しても大丈夫よ
スノウ:あとそのウィンドウに手を突っ込んでみて
大和:うわっ!?何だこれ?
大和:ウィンドウに吸い込まれた!?
アーミュ:そこに入れると持ち物。ゆスロットが埋まるにゃ
アーミュ:同じものは同一化されるけど
アーミュ:大きさで数が変わるにゃ
大和:道具袋にもなるのかよ、このウィンドウ…
スノウ:これくらいの石だと99個は入るわ
スノウ:入らない時は、飲み込まれず落ちるから
スノウ:それで判断するしかないのだけど
大和:異世界技術すげぇな…
スノウ:それで、一番大事な元の世界に帰る方法
大和:あ、あぁ……
スノウ:『廻層主(かいそうぬし)』を倒す
大和:階層主?
スノウ:多分思ってる漢字と違うわ
スノウ:廻る(めぐる)層の主
スノウ:私たちは何度もこの異世界を廻って
スノウ:その主を倒しているのよ
大和:っ……
アーミュ:ちなみにこの世界のルールは
アーミュ:誰が倒しても全員戻れる
アーミュ:だから、『逃げ』や『スカウト』がいる
アーミュ:ただし……
大和:待て!戦闘がいなくなったら!?
大和:戦えない役職が残ったら…
スノウ:えぇ、全員死ぬまで終わらないし
スノウ:全員死ぬのだから、どうなるか分からないわ
大和:……今まで全滅したことは?
アーミュ:生きてるってことは
アーミュ:私たちが知ってる段階では無いってことにゃ
大和:……
スノウ:お金もそうだけど、この世界で手に入れた道具も
スノウ:持ち越しは可能よ
スノウ:廻層主を倒せばアイテムも手に入ることがある
大和:利点はあるわけ…か
アーミュ:一番は帰れることだろうけどにゃ
スノウ:結構時間が経ったわ
スノウ:だけどまだこの世界にいるってことは
大和:まだ廻層主を倒してない……
スノウ:えぇ、そうなるわね
大和:二人はどうするんだ?
スノウ:私は戦闘でもいいけど
スノウ:アーミュは無理ね
アーミュ:コレだからにゃぁ…
大和:探そう
スノウ:え?
大和:廻層主、俺は戦える
スノウ:馬鹿じゃないの!る
スノウ:ゴブリンを倒したからって調子に乗ったら!
大和:だけど、このままってのも!
アーミュ:何も初めてで無理しにゃくても
大和:……それでも探すだけでも
大和:やれることはあるはずだから
スノウ:……はぁ
スノウ:アーミュ
アーミュ:大丈夫にゃ!
アーミュ:私は町で時間潰しておくにゃ
大和:スノウは一緒に来てくれるのか?
スノウ:一応、戦闘は経験してるし
スノウ:廻層主とも戦ったことはあるから
大和:心強いな
アーミュ:だけど、廻層主は普通と違うにゃ
アーミュ:ゴブリンより更に強力でヤバい存在にゃ
スノウ:私が戦ったのは……鬼人種(オーガ)
大和:オーガ……
スノウ:2メートル以上の身体に特殊な力もあった
スノウ:そういえば忘れていたけど
スノウ:この世界にはら魔法がないのよね
大和:魔法がない?
アーミュ:MPはあるのに魔法が使えないのにゃ
大和:魔法を想像してないからじゃないのか?
スノウ:というより、発動しないのよ
スノウ:例えば、その弓を火の矢のようにするのも
スノウ:無理なはずよ
スノウ:私の場合は火を現に纏わせたりできないし
アーミュ:都市伝説でレベルが上がらないと使えないって
アーミュ:言われているにゃ
大和:なるほど……
スノウ:あとは武器化した道具は別の武器にはできないわ
スノウ:今のあなたはハンガーを弓矢にしかできない
スノウ:別の武器にするには一度元の世界に戻って
スノウ:また転移した時に想像し直すしかない
大和:けど、ハンガーは弓しかイメージ湧かないな…
スノウ:まぁ、武器ごとにも何かあるはずよ
スノウ:色んな武器化をするより、一つに特化した方が
スノウ:いいのかもしれないわ
アーミュ:これもラノベの知識にゃ
スノウ:だから!それは言わなくていいから!
大和:……よし、『チュートリアル』は終わりだな
スノウ:えぇ、大体伝えたわ
アーミュ:行くのかにゃ?
大和:あぁ、何ができるかわからないけど
大和:廻層主、探してみるよ
スノウ:いいわ、今回は付き合ってあげる
アーミュ:私は手伝えないけど
アーミュ:次の転移では何か手伝うにゃ!
大和:何から何までありがとう、二人とも
大和:よし、じゃあベタだけど……
スノウ:何?
アーミュ:にゃ?
大和:俺の冒険、始めてみますか!
0:第一話『はじめての転移』終