台本概要

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タイトル 君があまりにも優しく笑うから…
作者名 天道司
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ご自由に、お使い下さい。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ユナ 97 勇者
ハル 98 魔王
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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ハル:君があまりにも優しく笑うから… ユナ:あぁ…。トゥイッターで流行ってるやつだよね? ハル:うん。そのあとに続く良い言葉がさ。思いつかないんだよな ユナ:ふーん…。それよりも ハル:それよりも? ユナ:せっかく会えたんだし、どこか行こうよ ハル:どこか…どこか…ね… ユナ:まぁ、こうして、行く宛もなく君と歩くのも悪くないけどね ハル:だろ?悪くないだろ? ユナ:悪く、ない…。悪くないけど、何か目的がほしいっていうか ハル:目的。目的ねぇ… ユナ:例えば、綺麗な景色を見に行くとか? ハル:君がそばにいてくれれば、景色は、いつだって綺麗だよ ハル:もちろん、月も! ユナ:今、さらっと口説いた? ハル:うん。口説いたよ ユナ:あのさ。どうせ口説くなら、もっと風情(ふぜい)のある場所やタイミングを選んでくれないかな? ハル:風情のある場所やタイミング? ユナ:そうそう。こうして公園を歩いてる最中にってのは、さすがにロマンチックのカケラもないでしょ? ハル:まぁ、確かに… ユナ:ん? ハル:おっと?急に立ち止まって、どうしたの? ユナ:きゅっ、嗅覚(きゅうかく)がピコっと反応した! ハル:え? ユナ:こっち! ハル:ちょちょい!急に、どうしたの!? 0: 0:【間】 0: ユナ:僕の嗅覚は、コレに反応したのか… ハル:はぁ…はぁ… ハル:コレに反応? ハル:あぁ、クレープ屋さんだね ユナ:クレープ、食べようよ ハル:まぁ、いいけど? ユナ:ヤッター! ハル:俺が並んどくから、君はあそこのベンチにでも座って待っててよ ユナ:やだ ハル:え? ユナ:一緒に並ぶ ハル:わかった 0: 0:【間】 0: 0:ユナとハルは、クレープを購入 ユナ:クレープ、美味しいな ハル:うん。美味しいね ユナ:デートみたいだね ハル:「デートみたい」じゃなくて、デートだろ? ユナ:あっ!そうか!コレは、デートなんだ! ハル:今さら!?デートだよ! 0:ハルのスマホが鳴る ハル:あ!ラインだ! ユナ:… ハル:クラスの女子からか…。ちょい、ごめんね ユナ:… 0:ハルはメッセージの返信をする ユナ:… ハル:ん?ムスっとした顔して、どうしたの? ハル:もしかして、ヤキモチ? ユナ:残念!僕はモチは蒸す派です! ハル:モチは蒸す派って… ハル:あぁ… ハル:だから、ムスっとした顔してるわけね? ユナ:ムッ! ハル:ちょい!睨むの禁止!せっかくのデートなんだから、スマイル!スマイル! ユナ:じゃあ、何か面白いことを言って、僕を笑わせて下さい ハル:面白いこと…面白いことね…って、急に言われても何も思い付かないよ ハル:ユナは、すぐに面白いこと言える? ユナ:僕が言えると思う? ハル:うーん… ハル:言えると思うよ。ユナはセンスのある言葉を思いつくの得意だから ユナ:そんなことないよ ハル:ユナの紡ぐ言葉からは、光るモノが見えるよ ユナ:僕だって、ハルの書く文章が好きだ ハル:俺の書く文章は、手紙だよ ユナ:手紙? ハル:そう、誰かさんに宛てた手紙 ユナ:誰かさんって、誰? ハル:気になる? ユナ:別に… ハル:そっか… ハル:ちなみに、ユナの夢は、作家になることだったり? ユナ:え!? ハル:ユナなら、作家になれると思うんだけどな ユナ:ムリムリムリ! ハル:そうなの?じゃあ、ユナの夢は? ユナ:炊飯器… ハル:炊飯器!? ユナ:炊飯器になりたい ハル:えっ…あっ…えっと… ハル:その夢は、作家になることよりもハードル高くないかい? ユナ:でも、なりたいんだもん ハル:どっ、どうして? ユナ:ご飯が炊けた時の匂いが好きだから ハル:ぷっ!あはははっ! ユナ:笑わないでよ。僕は、真剣に炊飯器になりたいって思ってるんだから ハル:そっか…。素敵な夢だね ユナ:ハルの夢は? ハル:俺の夢は、綺麗な月を、ずっと眺めていることかな ユナ:え?そんな夢なら、すぐに叶えられるよ? ハル:そうかな?「ずっと」っていうのが、難しいことなんだよ ユナ:どういうこと? ハル:眺めている間に、電話がかかってくるかも知れないし ハル:トイレに行きたくなるかも知れないし ハル:眠たくなるかも知れない ユナ:そんなの、スマホの電源を切れば良いし ユナ:トイレを済ませておけば良いし ユナ:昼間にぐっすり眠っていれば、問題ないと思うよ? ハル:まぁ、そうやって対策は取れる ハル:でもね… ハル:朝は、必ずやってくるんだよ ユナ:朝… ハル:そう、一緒にいるために、どれだけ前準備をして ハル:ずっと月だけを見つめると心に決めていても ハル:お別れの時は、必ずやってくるんだよ ユナ:… ユナ:それでも、月は、変わらず、そこにあると思うけどな ハル:ん? ユナ:陽の光が強すぎて、見えなくなってしまっても ユナ:月は、変わらず、そこにあるよ ユナ:ハルに見てもらうためにね ハル:… ハル:そうあってくれたなら、嬉しいな ユナ:大丈夫…。大丈夫だよ… 0:二人の体は光の粒子となり、消えて行く… ユナ:そろそろ時間みたいだね ハル:うん… ハル:時の宝玉(ほうぎょく)の効果が切れてしまう ハル:また、異世界に… ユナ:向こうでも、こちらと同じように、仲良しでいられたら良いのに ハル:それは、俺も同じ気持ちだよ ユナ:… ハル:ユナ! ユナ:? ハル:好きだよ… 0: 0:【間】 0: ユナ:【そして、僕は、異世界、フェアルナに、勇者として再び召喚された】 ユナ:【魔王を倒すために…】 ユナ:【魔王の正体は、現実世界での僕の恋人、ハルだ】 0: ユナ:【ハルが率いる魔王軍は、ライム王国の秘宝、オーラストーンを奪うために、一年ほど前に侵攻(しんこう)を開始した】 0: ハル:【魔界には、かつて瘴気(しょうき)が満ちていた】 ハル:【しかし、それは、ある日、突然、急速に減少していった】 ハル:【その理由は、謎だ…】 ハル:【魔界に住む魔族にとって、瘴気は、人にとっての酸素のようなモノ】 ハル:【瘴気がなくなれば、当然、魔族は滅んでしまう】 0: ユナ:【魔族が欲しているオーラストーンは、無尽蔵(むじんぞう)に瘴気(しょうき)を生成することができる石】 ユナ:【しかし、瘴気は、人にとっては、毒だ】 ユナ:【だから、ライム王国の聖域(せいいき)で管理し、瘴気の発生を制御(せいぎょ)している】 0: ユナ:【フェアルナに住む全ての人族(ひとぞく)の未来のために、僕は…】 ハル:【魔界に住む全ての魔族の未来のために、俺は…】 ユナ:【魔族最強の力を持つ魔王ハルと…】 ハル:【人族最強の力を持つ勇者ユナと…】 ユナ:(同時に)戦う! ハル:(同時に)戦う! 0: 0:【間】 0: ハル:やっぱり、戦わなきゃダメなのか? ハル:ユナ、今すぐオーラストーンを渡してくれ!俺は、君と戦いたくない ユナ:それは、無理。オーラストーンが聖域から離れてしまったら ユナ:この世界に瘴気(しょうき)が満ちてしまう。そうなれば、人族(ひとぞく)は滅んでしまう ハル:魔族だって、このままじゃ滅んでしまう! ユナ:何か方法はないの?第三の選択肢 ハル:そんなものはない。そして、もう、時間がないんだ ハル:今、この瞬間にも、弱い魔族は、次々に息絶えている ユナ:だったら、人族に死ねって言うの? ハル:どちらも救うなんてできない。でも、俺は、魔族に召喚されて ハル:魔族の想いを託された魔王だから! ユナ:僕だって、勇者として、人族の想いを託されてる! ハル:人族の想い!?人族に、救う価値なんてあるのか? ユナ:え!?何を言ってるの!? ハル:人族は、「魔族」ってだけで、無差別に魔族を殺す ハル:おとなしい奴でも、子供であってもだ! ハル:そんな卑劣な人族に、救う価値なんてないだろ? ユナ:ふざけないで!魔族だって同じよ! ハル:(さえぎって)同じじゃない!何が同じだって言うんだ! ユナ:魔族だって、人族を殺すって話よ! ハル:それは、魔族に危害を加えたクソ野郎だけだ! ハル:魔族は、決して、弱者に手を上げない! ユナ:弱者?弱者って何よ? ハル:武器を持たない者、攻撃の意思を持たない者のことだ ユナ:は!? ユナ:結婚式に向かう道中で、花嫁衣裳(はなよめいしょう)を着たまま殺された女の子がいる ユナ:森でキノコを拾っていただけなのに、無残に殺された子供がいる ユナ:弱者でしょ!弱者も、魔族に殺されてる! ハル:それは、一部の好戦的な魔族がやったんだ ユナ:人族だって同じよ!一部の好戦的な人たちが、無差別に魔族を殺してる! ユナ:同じなのよ! ハル:同じでも!俺は魔族を救いたい! ユナ:どうして魔族なの?ハルは、魔王に祭り上げられて、調子に乗ってるの? ハル:ユナだって、勇者に祭り上げられて、調子に乗ってるんじゃないのか? ユナ:平行線ね ハル:戦うしか、他に道はないようだな ユナ:真名開放(しんめいかいほう)! ユナ:永劫(えいごう)の輪廻(りんね)、破滅の天啓(てんけい) ユナ:我が呼び声にこたえ、ここに光臨(こうりん)せよ! ハル:魔眼開放(まがんかいほう)! ハル:終焉(しゅうえん)を告げし、殺戮(さつりく)と混沌(こんとん)の大精霊よ ハル:我が呼び声にこたえ、ここに顕現(けんげん)せよ! ユナ:(同時に)ラスト・ラグナロク! ハル:(同時に)ジェノサイド・ホロコースト! 0:【間】 ユナ:魔族のように、強欲(ごうよく)で、醜悪(しゅうあく)な外見の召喚獣(しょうかんじゅう)だね ハル:人族のように、綺麗な嘘で塗り固められた傲慢(ごうまん)な外見の召喚獣だな ユナ:だから… ハル:その ユナ:凝り固まった ハル:固定観念を! ユナ:ぶち破るしか! ハル:ないってことだよなぁ! ユナ:人族も、魔族も、外見は違っても ハル:内側は、同じように、悩んだり ユナ:苦しんだりしながら、成長して ハル:それぞれ別の、唯一無二の存在になって行く ユナ:みんな、違う ハル:良い奴もいれば、悪い奴もいる ユナ:誰かにとって、良い奴でも ハル:誰かにとっては、悪い奴なのかも知れない ユナ:だから、人族も魔族も関係ない ハル:種族の垣根(かきね)なんてない ユナ:心は… ハル:心だ! ユナ:どちらか一方しか救えないなんて ハル:そんな運命を背負いたくなんかなかった ユナ:敵か味方かに分かれて ハル:好きな人と戦うなんて ユナ:そんな運命 ハル:クソくらえだ ユナ:(同時に)はあああーっ!!! ハル:(同時に)うおおおーっ!!! ユナ:ハル、ごめん… ハル:ユナ、ごめんな ユナ:(同時に)シャイニング・エクス・カリバー!!! ハル:(同時に)ダークマター・ゼロノ・トリガー!!! 0: 0:【間】 0: ハル:君があまりにも優しく笑うから ハル:全部暴いて、壊したくなったよ 0: ユナ:不細工(ぶさいく)な嘘が ユナ:仮面の裏で泣いている ハル:だから、ハリボテの城に手を伸ばす ハル:姫を、そこから救い出すために 0: ユナ:感情なんてモノがあったから、傷ついた ハル:感情のおかげで、君を好きになれた 0: ユナ:ありがとう ハル:ありがとう ユナ:これからは、喜びも悲しみも ハル:一緒に分け合って ユナ:心を寄り添わせて ハル:一緒に生きて行こう 0: ユナ:そう言えたなら ハル:良かった… 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: ハル:ずいぶん待たせてしまったね ユナ:今から ハル:今ここで ユナ:(同時に)僕が君のヒーローになる ハル:(同時に)俺が君のヒーローになる 0: ユナ:僕の召喚獣が放った攻撃は、僕を ハル:俺の召喚獣が放った攻撃は、俺を ユナ:この世界から ハル:消した… 0: 0:―了―

ハル:君があまりにも優しく笑うから… ユナ:あぁ…。トゥイッターで流行ってるやつだよね? ハル:うん。そのあとに続く良い言葉がさ。思いつかないんだよな ユナ:ふーん…。それよりも ハル:それよりも? ユナ:せっかく会えたんだし、どこか行こうよ ハル:どこか…どこか…ね… ユナ:まぁ、こうして、行く宛もなく君と歩くのも悪くないけどね ハル:だろ?悪くないだろ? ユナ:悪く、ない…。悪くないけど、何か目的がほしいっていうか ハル:目的。目的ねぇ… ユナ:例えば、綺麗な景色を見に行くとか? ハル:君がそばにいてくれれば、景色は、いつだって綺麗だよ ハル:もちろん、月も! ユナ:今、さらっと口説いた? ハル:うん。口説いたよ ユナ:あのさ。どうせ口説くなら、もっと風情(ふぜい)のある場所やタイミングを選んでくれないかな? ハル:風情のある場所やタイミング? ユナ:そうそう。こうして公園を歩いてる最中にってのは、さすがにロマンチックのカケラもないでしょ? ハル:まぁ、確かに… ユナ:ん? ハル:おっと?急に立ち止まって、どうしたの? ユナ:きゅっ、嗅覚(きゅうかく)がピコっと反応した! ハル:え? ユナ:こっち! ハル:ちょちょい!急に、どうしたの!? 0: 0:【間】 0: ユナ:僕の嗅覚は、コレに反応したのか… ハル:はぁ…はぁ… ハル:コレに反応? ハル:あぁ、クレープ屋さんだね ユナ:クレープ、食べようよ ハル:まぁ、いいけど? ユナ:ヤッター! ハル:俺が並んどくから、君はあそこのベンチにでも座って待っててよ ユナ:やだ ハル:え? ユナ:一緒に並ぶ ハル:わかった 0: 0:【間】 0: 0:ユナとハルは、クレープを購入 ユナ:クレープ、美味しいな ハル:うん。美味しいね ユナ:デートみたいだね ハル:「デートみたい」じゃなくて、デートだろ? ユナ:あっ!そうか!コレは、デートなんだ! ハル:今さら!?デートだよ! 0:ハルのスマホが鳴る ハル:あ!ラインだ! ユナ:… ハル:クラスの女子からか…。ちょい、ごめんね ユナ:… 0:ハルはメッセージの返信をする ユナ:… ハル:ん?ムスっとした顔して、どうしたの? ハル:もしかして、ヤキモチ? ユナ:残念!僕はモチは蒸す派です! ハル:モチは蒸す派って… ハル:あぁ… ハル:だから、ムスっとした顔してるわけね? ユナ:ムッ! ハル:ちょい!睨むの禁止!せっかくのデートなんだから、スマイル!スマイル! ユナ:じゃあ、何か面白いことを言って、僕を笑わせて下さい ハル:面白いこと…面白いことね…って、急に言われても何も思い付かないよ ハル:ユナは、すぐに面白いこと言える? ユナ:僕が言えると思う? ハル:うーん… ハル:言えると思うよ。ユナはセンスのある言葉を思いつくの得意だから ユナ:そんなことないよ ハル:ユナの紡ぐ言葉からは、光るモノが見えるよ ユナ:僕だって、ハルの書く文章が好きだ ハル:俺の書く文章は、手紙だよ ユナ:手紙? ハル:そう、誰かさんに宛てた手紙 ユナ:誰かさんって、誰? ハル:気になる? ユナ:別に… ハル:そっか… ハル:ちなみに、ユナの夢は、作家になることだったり? ユナ:え!? ハル:ユナなら、作家になれると思うんだけどな ユナ:ムリムリムリ! ハル:そうなの?じゃあ、ユナの夢は? ユナ:炊飯器… ハル:炊飯器!? ユナ:炊飯器になりたい ハル:えっ…あっ…えっと… ハル:その夢は、作家になることよりもハードル高くないかい? ユナ:でも、なりたいんだもん ハル:どっ、どうして? ユナ:ご飯が炊けた時の匂いが好きだから ハル:ぷっ!あはははっ! ユナ:笑わないでよ。僕は、真剣に炊飯器になりたいって思ってるんだから ハル:そっか…。素敵な夢だね ユナ:ハルの夢は? ハル:俺の夢は、綺麗な月を、ずっと眺めていることかな ユナ:え?そんな夢なら、すぐに叶えられるよ? ハル:そうかな?「ずっと」っていうのが、難しいことなんだよ ユナ:どういうこと? ハル:眺めている間に、電話がかかってくるかも知れないし ハル:トイレに行きたくなるかも知れないし ハル:眠たくなるかも知れない ユナ:そんなの、スマホの電源を切れば良いし ユナ:トイレを済ませておけば良いし ユナ:昼間にぐっすり眠っていれば、問題ないと思うよ? ハル:まぁ、そうやって対策は取れる ハル:でもね… ハル:朝は、必ずやってくるんだよ ユナ:朝… ハル:そう、一緒にいるために、どれだけ前準備をして ハル:ずっと月だけを見つめると心に決めていても ハル:お別れの時は、必ずやってくるんだよ ユナ:… ユナ:それでも、月は、変わらず、そこにあると思うけどな ハル:ん? ユナ:陽の光が強すぎて、見えなくなってしまっても ユナ:月は、変わらず、そこにあるよ ユナ:ハルに見てもらうためにね ハル:… ハル:そうあってくれたなら、嬉しいな ユナ:大丈夫…。大丈夫だよ… 0:二人の体は光の粒子となり、消えて行く… ユナ:そろそろ時間みたいだね ハル:うん… ハル:時の宝玉(ほうぎょく)の効果が切れてしまう ハル:また、異世界に… ユナ:向こうでも、こちらと同じように、仲良しでいられたら良いのに ハル:それは、俺も同じ気持ちだよ ユナ:… ハル:ユナ! ユナ:? ハル:好きだよ… 0: 0:【間】 0: ユナ:【そして、僕は、異世界、フェアルナに、勇者として再び召喚された】 ユナ:【魔王を倒すために…】 ユナ:【魔王の正体は、現実世界での僕の恋人、ハルだ】 0: ユナ:【ハルが率いる魔王軍は、ライム王国の秘宝、オーラストーンを奪うために、一年ほど前に侵攻(しんこう)を開始した】 0: ハル:【魔界には、かつて瘴気(しょうき)が満ちていた】 ハル:【しかし、それは、ある日、突然、急速に減少していった】 ハル:【その理由は、謎だ…】 ハル:【魔界に住む魔族にとって、瘴気は、人にとっての酸素のようなモノ】 ハル:【瘴気がなくなれば、当然、魔族は滅んでしまう】 0: ユナ:【魔族が欲しているオーラストーンは、無尽蔵(むじんぞう)に瘴気(しょうき)を生成することができる石】 ユナ:【しかし、瘴気は、人にとっては、毒だ】 ユナ:【だから、ライム王国の聖域(せいいき)で管理し、瘴気の発生を制御(せいぎょ)している】 0: ユナ:【フェアルナに住む全ての人族(ひとぞく)の未来のために、僕は…】 ハル:【魔界に住む全ての魔族の未来のために、俺は…】 ユナ:【魔族最強の力を持つ魔王ハルと…】 ハル:【人族最強の力を持つ勇者ユナと…】 ユナ:(同時に)戦う! ハル:(同時に)戦う! 0: 0:【間】 0: ハル:やっぱり、戦わなきゃダメなのか? ハル:ユナ、今すぐオーラストーンを渡してくれ!俺は、君と戦いたくない ユナ:それは、無理。オーラストーンが聖域から離れてしまったら ユナ:この世界に瘴気(しょうき)が満ちてしまう。そうなれば、人族(ひとぞく)は滅んでしまう ハル:魔族だって、このままじゃ滅んでしまう! ユナ:何か方法はないの?第三の選択肢 ハル:そんなものはない。そして、もう、時間がないんだ ハル:今、この瞬間にも、弱い魔族は、次々に息絶えている ユナ:だったら、人族に死ねって言うの? ハル:どちらも救うなんてできない。でも、俺は、魔族に召喚されて ハル:魔族の想いを託された魔王だから! ユナ:僕だって、勇者として、人族の想いを託されてる! ハル:人族の想い!?人族に、救う価値なんてあるのか? ユナ:え!?何を言ってるの!? ハル:人族は、「魔族」ってだけで、無差別に魔族を殺す ハル:おとなしい奴でも、子供であってもだ! ハル:そんな卑劣な人族に、救う価値なんてないだろ? ユナ:ふざけないで!魔族だって同じよ! ハル:(さえぎって)同じじゃない!何が同じだって言うんだ! ユナ:魔族だって、人族を殺すって話よ! ハル:それは、魔族に危害を加えたクソ野郎だけだ! ハル:魔族は、決して、弱者に手を上げない! ユナ:弱者?弱者って何よ? ハル:武器を持たない者、攻撃の意思を持たない者のことだ ユナ:は!? ユナ:結婚式に向かう道中で、花嫁衣裳(はなよめいしょう)を着たまま殺された女の子がいる ユナ:森でキノコを拾っていただけなのに、無残に殺された子供がいる ユナ:弱者でしょ!弱者も、魔族に殺されてる! ハル:それは、一部の好戦的な魔族がやったんだ ユナ:人族だって同じよ!一部の好戦的な人たちが、無差別に魔族を殺してる! ユナ:同じなのよ! ハル:同じでも!俺は魔族を救いたい! ユナ:どうして魔族なの?ハルは、魔王に祭り上げられて、調子に乗ってるの? ハル:ユナだって、勇者に祭り上げられて、調子に乗ってるんじゃないのか? ユナ:平行線ね ハル:戦うしか、他に道はないようだな ユナ:真名開放(しんめいかいほう)! ユナ:永劫(えいごう)の輪廻(りんね)、破滅の天啓(てんけい) ユナ:我が呼び声にこたえ、ここに光臨(こうりん)せよ! ハル:魔眼開放(まがんかいほう)! ハル:終焉(しゅうえん)を告げし、殺戮(さつりく)と混沌(こんとん)の大精霊よ ハル:我が呼び声にこたえ、ここに顕現(けんげん)せよ! ユナ:(同時に)ラスト・ラグナロク! ハル:(同時に)ジェノサイド・ホロコースト! 0:【間】 ユナ:魔族のように、強欲(ごうよく)で、醜悪(しゅうあく)な外見の召喚獣(しょうかんじゅう)だね ハル:人族のように、綺麗な嘘で塗り固められた傲慢(ごうまん)な外見の召喚獣だな ユナ:だから… ハル:その ユナ:凝り固まった ハル:固定観念を! ユナ:ぶち破るしか! ハル:ないってことだよなぁ! ユナ:人族も、魔族も、外見は違っても ハル:内側は、同じように、悩んだり ユナ:苦しんだりしながら、成長して ハル:それぞれ別の、唯一無二の存在になって行く ユナ:みんな、違う ハル:良い奴もいれば、悪い奴もいる ユナ:誰かにとって、良い奴でも ハル:誰かにとっては、悪い奴なのかも知れない ユナ:だから、人族も魔族も関係ない ハル:種族の垣根(かきね)なんてない ユナ:心は… ハル:心だ! ユナ:どちらか一方しか救えないなんて ハル:そんな運命を背負いたくなんかなかった ユナ:敵か味方かに分かれて ハル:好きな人と戦うなんて ユナ:そんな運命 ハル:クソくらえだ ユナ:(同時に)はあああーっ!!! ハル:(同時に)うおおおーっ!!! ユナ:ハル、ごめん… ハル:ユナ、ごめんな ユナ:(同時に)シャイニング・エクス・カリバー!!! ハル:(同時に)ダークマター・ゼロノ・トリガー!!! 0: 0:【間】 0: ハル:君があまりにも優しく笑うから ハル:全部暴いて、壊したくなったよ 0: ユナ:不細工(ぶさいく)な嘘が ユナ:仮面の裏で泣いている ハル:だから、ハリボテの城に手を伸ばす ハル:姫を、そこから救い出すために 0: ユナ:感情なんてモノがあったから、傷ついた ハル:感情のおかげで、君を好きになれた 0: ユナ:ありがとう ハル:ありがとう ユナ:これからは、喜びも悲しみも ハル:一緒に分け合って ユナ:心を寄り添わせて ハル:一緒に生きて行こう 0: ユナ:そう言えたなら ハル:良かった… 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: 0: ハル:ずいぶん待たせてしまったね ユナ:今から ハル:今ここで ユナ:(同時に)僕が君のヒーローになる ハル:(同時に)俺が君のヒーローになる 0: ユナ:僕の召喚獣が放った攻撃は、僕を ハル:俺の召喚獣が放った攻撃は、俺を ユナ:この世界から ハル:消した… 0: 0:―了―