台本概要
205 views
タイトル | 君があまりにも優しく笑うから… |
---|---|
作者名 | 天道司 |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ご自由に、お使い下さい。
205 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ユナ | 女 | 97 | 勇者 |
ハル | 男 | 98 | 魔王 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ハル:君があまりにも優しく笑うから…
ユナ:あぁ…。トゥイッターで流行ってるやつだよね?
ハル:うん。そのあとに続く良い言葉がさ。思いつかないんだよな
ユナ:ふーん…。それよりも
ハル:それよりも?
ユナ:せっかく会えたんだし、どこか行こうよ
ハル:どこか…どこか…ね…
ユナ:まぁ、こうして、行く宛もなく君と歩くのも悪くないけどね
ハル:だろ?悪くないだろ?
ユナ:悪く、ない…。悪くないけど、何か目的がほしいっていうか
ハル:目的。目的ねぇ…
ユナ:例えば、綺麗な景色を見に行くとか?
ハル:君がそばにいてくれれば、景色は、いつだって綺麗だよ
ハル:もちろん、月も!
ユナ:今、さらっと口説いた?
ハル:うん。口説いたよ
ユナ:あのさ。どうせ口説くなら、もっと風情(ふぜい)のある場所やタイミングを選んでくれないかな?
ハル:風情のある場所やタイミング?
ユナ:そうそう。こうして公園を歩いてる最中にってのは、さすがにロマンチックのカケラもないでしょ?
ハル:まぁ、確かに…
ユナ:ん?
ハル:おっと?急に立ち止まって、どうしたの?
ユナ:きゅっ、嗅覚(きゅうかく)がピコっと反応した!
ハル:え?
ユナ:こっち!
ハル:ちょちょい!急に、どうしたの!?
0:
0:【間】
0:
ユナ:僕の嗅覚は、コレに反応したのか…
ハル:はぁ…はぁ…
ハル:コレに反応?
ハル:あぁ、クレープ屋さんだね
ユナ:クレープ、食べようよ
ハル:まぁ、いいけど?
ユナ:ヤッター!
ハル:俺が並んどくから、君はあそこのベンチにでも座って待っててよ
ユナ:やだ
ハル:え?
ユナ:一緒に並ぶ
ハル:わかった
0:
0:【間】
0:
0:ユナとハルは、クレープを購入
ユナ:クレープ、美味しいな
ハル:うん。美味しいね
ユナ:デートみたいだね
ハル:「デートみたい」じゃなくて、デートだろ?
ユナ:あっ!そうか!コレは、デートなんだ!
ハル:今さら!?デートだよ!
0:ハルのスマホが鳴る
ハル:あ!ラインだ!
ユナ:…
ハル:クラスの女子からか…。ちょい、ごめんね
ユナ:…
0:ハルはメッセージの返信をする
ユナ:…
ハル:ん?ムスっとした顔して、どうしたの?
ハル:もしかして、ヤキモチ?
ユナ:残念!僕はモチは蒸す派です!
ハル:モチは蒸す派って…
ハル:あぁ…
ハル:だから、ムスっとした顔してるわけね?
ユナ:ムッ!
ハル:ちょい!睨むの禁止!せっかくのデートなんだから、スマイル!スマイル!
ユナ:じゃあ、何か面白いことを言って、僕を笑わせて下さい
ハル:面白いこと…面白いことね…って、急に言われても何も思い付かないよ
ハル:ユナは、すぐに面白いこと言える?
ユナ:僕が言えると思う?
ハル:うーん…
ハル:言えると思うよ。ユナはセンスのある言葉を思いつくの得意だから
ユナ:そんなことないよ
ハル:ユナの紡ぐ言葉からは、光るモノが見えるよ
ユナ:僕だって、ハルの書く文章が好きだ
ハル:俺の書く文章は、手紙だよ
ユナ:手紙?
ハル:そう、誰かさんに宛てた手紙
ユナ:誰かさんって、誰?
ハル:気になる?
ユナ:別に…
ハル:そっか…
ハル:ちなみに、ユナの夢は、作家になることだったり?
ユナ:え!?
ハル:ユナなら、作家になれると思うんだけどな
ユナ:ムリムリムリ!
ハル:そうなの?じゃあ、ユナの夢は?
ユナ:炊飯器…
ハル:炊飯器!?
ユナ:炊飯器になりたい
ハル:えっ…あっ…えっと…
ハル:その夢は、作家になることよりもハードル高くないかい?
ユナ:でも、なりたいんだもん
ハル:どっ、どうして?
ユナ:ご飯が炊けた時の匂いが好きだから
ハル:ぷっ!あはははっ!
ユナ:笑わないでよ。僕は、真剣に炊飯器になりたいって思ってるんだから
ハル:そっか…。素敵な夢だね
ユナ:ハルの夢は?
ハル:俺の夢は、綺麗な月を、ずっと眺めていることかな
ユナ:え?そんな夢なら、すぐに叶えられるよ?
ハル:そうかな?「ずっと」っていうのが、難しいことなんだよ
ユナ:どういうこと?
ハル:眺めている間に、電話がかかってくるかも知れないし
ハル:トイレに行きたくなるかも知れないし
ハル:眠たくなるかも知れない
ユナ:そんなの、スマホの電源を切れば良いし
ユナ:トイレを済ませておけば良いし
ユナ:昼間にぐっすり眠っていれば、問題ないと思うよ?
ハル:まぁ、そうやって対策は取れる
ハル:でもね…
ハル:朝は、必ずやってくるんだよ
ユナ:朝…
ハル:そう、一緒にいるために、どれだけ前準備をして
ハル:ずっと月だけを見つめると心に決めていても
ハル:お別れの時は、必ずやってくるんだよ
ユナ:…
ユナ:それでも、月は、変わらず、そこにあると思うけどな
ハル:ん?
ユナ:陽の光が強すぎて、見えなくなってしまっても
ユナ:月は、変わらず、そこにあるよ
ユナ:ハルに見てもらうためにね
ハル:…
ハル:そうあってくれたなら、嬉しいな
ユナ:大丈夫…。大丈夫だよ…
0:二人の体は光の粒子となり、消えて行く…
ユナ:そろそろ時間みたいだね
ハル:うん…
ハル:時の宝玉(ほうぎょく)の効果が切れてしまう
ハル:また、異世界に…
ユナ:向こうでも、こちらと同じように、仲良しでいられたら良いのに
ハル:それは、俺も同じ気持ちだよ
ユナ:…
ハル:ユナ!
ユナ:?
ハル:好きだよ…
0:
0:【間】
0:
ユナ:【そして、僕は、異世界、フェアルナに、勇者として再び召喚された】
ユナ:【魔王を倒すために…】
ユナ:【魔王の正体は、現実世界での僕の恋人、ハルだ】
0:
ユナ:【ハルが率いる魔王軍は、ライム王国の秘宝、オーラストーンを奪うために、一年ほど前に侵攻(しんこう)を開始した】
0:
ハル:【魔界には、かつて瘴気(しょうき)が満ちていた】
ハル:【しかし、それは、ある日、突然、急速に減少していった】
ハル:【その理由は、謎だ…】
ハル:【魔界に住む魔族にとって、瘴気は、人にとっての酸素のようなモノ】
ハル:【瘴気がなくなれば、当然、魔族は滅んでしまう】
0:
ユナ:【魔族が欲しているオーラストーンは、無尽蔵(むじんぞう)に瘴気(しょうき)を生成することができる石】
ユナ:【しかし、瘴気は、人にとっては、毒だ】
ユナ:【だから、ライム王国の聖域(せいいき)で管理し、瘴気の発生を制御(せいぎょ)している】
0:
ユナ:【フェアルナに住む全ての人族(ひとぞく)の未来のために、僕は…】
ハル:【魔界に住む全ての魔族の未来のために、俺は…】
ユナ:【魔族最強の力を持つ魔王ハルと…】
ハル:【人族最強の力を持つ勇者ユナと…】
ユナ:(同時に)戦う!
ハル:(同時に)戦う!
0:
0:【間】
0:
ハル:やっぱり、戦わなきゃダメなのか?
ハル:ユナ、今すぐオーラストーンを渡してくれ!俺は、君と戦いたくない
ユナ:それは、無理。オーラストーンが聖域から離れてしまったら
ユナ:この世界に瘴気(しょうき)が満ちてしまう。そうなれば、人族(ひとぞく)は滅んでしまう
ハル:魔族だって、このままじゃ滅んでしまう!
ユナ:何か方法はないの?第三の選択肢
ハル:そんなものはない。そして、もう、時間がないんだ
ハル:今、この瞬間にも、弱い魔族は、次々に息絶えている
ユナ:だったら、人族に死ねって言うの?
ハル:どちらも救うなんてできない。でも、俺は、魔族に召喚されて
ハル:魔族の想いを託された魔王だから!
ユナ:僕だって、勇者として、人族の想いを託されてる!
ハル:人族の想い!?人族に、救う価値なんてあるのか?
ユナ:え!?何を言ってるの!?
ハル:人族は、「魔族」ってだけで、無差別に魔族を殺す
ハル:おとなしい奴でも、子供であってもだ!
ハル:そんな卑劣な人族に、救う価値なんてないだろ?
ユナ:ふざけないで!魔族だって同じよ!
ハル:(さえぎって)同じじゃない!何が同じだって言うんだ!
ユナ:魔族だって、人族を殺すって話よ!
ハル:それは、魔族に危害を加えたクソ野郎だけだ!
ハル:魔族は、決して、弱者に手を上げない!
ユナ:弱者?弱者って何よ?
ハル:武器を持たない者、攻撃の意思を持たない者のことだ
ユナ:は!?
ユナ:結婚式に向かう道中で、花嫁衣裳(はなよめいしょう)を着たまま殺された女の子がいる
ユナ:森でキノコを拾っていただけなのに、無残に殺された子供がいる
ユナ:弱者でしょ!弱者も、魔族に殺されてる!
ハル:それは、一部の好戦的な魔族がやったんだ
ユナ:人族だって同じよ!一部の好戦的な人たちが、無差別に魔族を殺してる!
ユナ:同じなのよ!
ハル:同じでも!俺は魔族を救いたい!
ユナ:どうして魔族なの?ハルは、魔王に祭り上げられて、調子に乗ってるの?
ハル:ユナだって、勇者に祭り上げられて、調子に乗ってるんじゃないのか?
ユナ:平行線ね
ハル:戦うしか、他に道はないようだな
ユナ:真名開放(しんめいかいほう)!
ユナ:永劫(えいごう)の輪廻(りんね)、破滅の天啓(てんけい)
ユナ:我が呼び声にこたえ、ここに光臨(こうりん)せよ!
ハル:魔眼開放(まがんかいほう)!
ハル:終焉(しゅうえん)を告げし、殺戮(さつりく)と混沌(こんとん)の大精霊よ
ハル:我が呼び声にこたえ、ここに顕現(けんげん)せよ!
ユナ:(同時に)ラスト・ラグナロク!
ハル:(同時に)ジェノサイド・ホロコースト!
0:【間】
ユナ:魔族のように、強欲(ごうよく)で、醜悪(しゅうあく)な外見の召喚獣(しょうかんじゅう)だね
ハル:人族のように、綺麗な嘘で塗り固められた傲慢(ごうまん)な外見の召喚獣だな
ユナ:だから…
ハル:その
ユナ:凝り固まった
ハル:固定観念を!
ユナ:ぶち破るしか!
ハル:ないってことだよなぁ!
ユナ:人族も、魔族も、外見は違っても
ハル:内側は、同じように、悩んだり
ユナ:苦しんだりしながら、成長して
ハル:それぞれ別の、唯一無二の存在になって行く
ユナ:みんな、違う
ハル:良い奴もいれば、悪い奴もいる
ユナ:誰かにとって、良い奴でも
ハル:誰かにとっては、悪い奴なのかも知れない
ユナ:だから、人族も魔族も関係ない
ハル:種族の垣根(かきね)なんてない
ユナ:心は…
ハル:心だ!
ユナ:どちらか一方しか救えないなんて
ハル:そんな運命を背負いたくなんかなかった
ユナ:敵か味方かに分かれて
ハル:好きな人と戦うなんて
ユナ:そんな運命
ハル:クソくらえだ
ユナ:(同時に)はあああーっ!!!
ハル:(同時に)うおおおーっ!!!
ユナ:ハル、ごめん…
ハル:ユナ、ごめんな
ユナ:(同時に)シャイニング・エクス・カリバー!!!
ハル:(同時に)ダークマター・ゼロノ・トリガー!!!
0:
0:【間】
0:
ハル:君があまりにも優しく笑うから
ハル:全部暴いて、壊したくなったよ
0:
ユナ:不細工(ぶさいく)な嘘が
ユナ:仮面の裏で泣いている
ハル:だから、ハリボテの城に手を伸ばす
ハル:姫を、そこから救い出すために
0:
ユナ:感情なんてモノがあったから、傷ついた
ハル:感情のおかげで、君を好きになれた
0:
ユナ:ありがとう
ハル:ありがとう
ユナ:これからは、喜びも悲しみも
ハル:一緒に分け合って
ユナ:心を寄り添わせて
ハル:一緒に生きて行こう
0:
ユナ:そう言えたなら
ハル:良かった…
0:
0:
0:
0:
0:
0:
0:
0:
0:
0:
ハル:ずいぶん待たせてしまったね
ユナ:今から
ハル:今ここで
ユナ:(同時に)僕が君のヒーローになる
ハル:(同時に)俺が君のヒーローになる
0:
ユナ:僕の召喚獣が放った攻撃は、僕を
ハル:俺の召喚獣が放った攻撃は、俺を
ユナ:この世界から
ハル:消した…
0:
0:―了―
ハル:君があまりにも優しく笑うから…
ユナ:あぁ…。トゥイッターで流行ってるやつだよね?
ハル:うん。そのあとに続く良い言葉がさ。思いつかないんだよな
ユナ:ふーん…。それよりも
ハル:それよりも?
ユナ:せっかく会えたんだし、どこか行こうよ
ハル:どこか…どこか…ね…
ユナ:まぁ、こうして、行く宛もなく君と歩くのも悪くないけどね
ハル:だろ?悪くないだろ?
ユナ:悪く、ない…。悪くないけど、何か目的がほしいっていうか
ハル:目的。目的ねぇ…
ユナ:例えば、綺麗な景色を見に行くとか?
ハル:君がそばにいてくれれば、景色は、いつだって綺麗だよ
ハル:もちろん、月も!
ユナ:今、さらっと口説いた?
ハル:うん。口説いたよ
ユナ:あのさ。どうせ口説くなら、もっと風情(ふぜい)のある場所やタイミングを選んでくれないかな?
ハル:風情のある場所やタイミング?
ユナ:そうそう。こうして公園を歩いてる最中にってのは、さすがにロマンチックのカケラもないでしょ?
ハル:まぁ、確かに…
ユナ:ん?
ハル:おっと?急に立ち止まって、どうしたの?
ユナ:きゅっ、嗅覚(きゅうかく)がピコっと反応した!
ハル:え?
ユナ:こっち!
ハル:ちょちょい!急に、どうしたの!?
0:
0:【間】
0:
ユナ:僕の嗅覚は、コレに反応したのか…
ハル:はぁ…はぁ…
ハル:コレに反応?
ハル:あぁ、クレープ屋さんだね
ユナ:クレープ、食べようよ
ハル:まぁ、いいけど?
ユナ:ヤッター!
ハル:俺が並んどくから、君はあそこのベンチにでも座って待っててよ
ユナ:やだ
ハル:え?
ユナ:一緒に並ぶ
ハル:わかった
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0:ユナとハルは、クレープを購入
ユナ:クレープ、美味しいな
ハル:うん。美味しいね
ユナ:デートみたいだね
ハル:「デートみたい」じゃなくて、デートだろ?
ユナ:あっ!そうか!コレは、デートなんだ!
ハル:今さら!?デートだよ!
0:ハルのスマホが鳴る
ハル:あ!ラインだ!
ユナ:…
ハル:クラスの女子からか…。ちょい、ごめんね
ユナ:…
0:ハルはメッセージの返信をする
ユナ:…
ハル:ん?ムスっとした顔して、どうしたの?
ハル:もしかして、ヤキモチ?
ユナ:残念!僕はモチは蒸す派です!
ハル:モチは蒸す派って…
ハル:あぁ…
ハル:だから、ムスっとした顔してるわけね?
ユナ:ムッ!
ハル:ちょい!睨むの禁止!せっかくのデートなんだから、スマイル!スマイル!
ユナ:じゃあ、何か面白いことを言って、僕を笑わせて下さい
ハル:面白いこと…面白いことね…って、急に言われても何も思い付かないよ
ハル:ユナは、すぐに面白いこと言える?
ユナ:僕が言えると思う?
ハル:うーん…
ハル:言えると思うよ。ユナはセンスのある言葉を思いつくの得意だから
ユナ:そんなことないよ
ハル:ユナの紡ぐ言葉からは、光るモノが見えるよ
ユナ:僕だって、ハルの書く文章が好きだ
ハル:俺の書く文章は、手紙だよ
ユナ:手紙?
ハル:そう、誰かさんに宛てた手紙
ユナ:誰かさんって、誰?
ハル:気になる?
ユナ:別に…
ハル:そっか…
ハル:ちなみに、ユナの夢は、作家になることだったり?
ユナ:え!?
ハル:ユナなら、作家になれると思うんだけどな
ユナ:ムリムリムリ!
ハル:そうなの?じゃあ、ユナの夢は?
ユナ:炊飯器…
ハル:炊飯器!?
ユナ:炊飯器になりたい
ハル:えっ…あっ…えっと…
ハル:その夢は、作家になることよりもハードル高くないかい?
ユナ:でも、なりたいんだもん
ハル:どっ、どうして?
ユナ:ご飯が炊けた時の匂いが好きだから
ハル:ぷっ!あはははっ!
ユナ:笑わないでよ。僕は、真剣に炊飯器になりたいって思ってるんだから
ハル:そっか…。素敵な夢だね
ユナ:ハルの夢は?
ハル:俺の夢は、綺麗な月を、ずっと眺めていることかな
ユナ:え?そんな夢なら、すぐに叶えられるよ?
ハル:そうかな?「ずっと」っていうのが、難しいことなんだよ
ユナ:どういうこと?
ハル:眺めている間に、電話がかかってくるかも知れないし
ハル:トイレに行きたくなるかも知れないし
ハル:眠たくなるかも知れない
ユナ:そんなの、スマホの電源を切れば良いし
ユナ:トイレを済ませておけば良いし
ユナ:昼間にぐっすり眠っていれば、問題ないと思うよ?
ハル:まぁ、そうやって対策は取れる
ハル:でもね…
ハル:朝は、必ずやってくるんだよ
ユナ:朝…
ハル:そう、一緒にいるために、どれだけ前準備をして
ハル:ずっと月だけを見つめると心に決めていても
ハル:お別れの時は、必ずやってくるんだよ
ユナ:…
ユナ:それでも、月は、変わらず、そこにあると思うけどな
ハル:ん?
ユナ:陽の光が強すぎて、見えなくなってしまっても
ユナ:月は、変わらず、そこにあるよ
ユナ:ハルに見てもらうためにね
ハル:…
ハル:そうあってくれたなら、嬉しいな
ユナ:大丈夫…。大丈夫だよ…
0:二人の体は光の粒子となり、消えて行く…
ユナ:そろそろ時間みたいだね
ハル:うん…
ハル:時の宝玉(ほうぎょく)の効果が切れてしまう
ハル:また、異世界に…
ユナ:向こうでも、こちらと同じように、仲良しでいられたら良いのに
ハル:それは、俺も同じ気持ちだよ
ユナ:…
ハル:ユナ!
ユナ:?
ハル:好きだよ…
0:
0:【間】
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ユナ:【そして、僕は、異世界、フェアルナに、勇者として再び召喚された】
ユナ:【魔王を倒すために…】
ユナ:【魔王の正体は、現実世界での僕の恋人、ハルだ】
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ユナ:【ハルが率いる魔王軍は、ライム王国の秘宝、オーラストーンを奪うために、一年ほど前に侵攻(しんこう)を開始した】
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ハル:【魔界には、かつて瘴気(しょうき)が満ちていた】
ハル:【しかし、それは、ある日、突然、急速に減少していった】
ハル:【その理由は、謎だ…】
ハル:【魔界に住む魔族にとって、瘴気は、人にとっての酸素のようなモノ】
ハル:【瘴気がなくなれば、当然、魔族は滅んでしまう】
0:
ユナ:【魔族が欲しているオーラストーンは、無尽蔵(むじんぞう)に瘴気(しょうき)を生成することができる石】
ユナ:【しかし、瘴気は、人にとっては、毒だ】
ユナ:【だから、ライム王国の聖域(せいいき)で管理し、瘴気の発生を制御(せいぎょ)している】
0:
ユナ:【フェアルナに住む全ての人族(ひとぞく)の未来のために、僕は…】
ハル:【魔界に住む全ての魔族の未来のために、俺は…】
ユナ:【魔族最強の力を持つ魔王ハルと…】
ハル:【人族最強の力を持つ勇者ユナと…】
ユナ:(同時に)戦う!
ハル:(同時に)戦う!
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0:【間】
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ハル:やっぱり、戦わなきゃダメなのか?
ハル:ユナ、今すぐオーラストーンを渡してくれ!俺は、君と戦いたくない
ユナ:それは、無理。オーラストーンが聖域から離れてしまったら
ユナ:この世界に瘴気(しょうき)が満ちてしまう。そうなれば、人族(ひとぞく)は滅んでしまう
ハル:魔族だって、このままじゃ滅んでしまう!
ユナ:何か方法はないの?第三の選択肢
ハル:そんなものはない。そして、もう、時間がないんだ
ハル:今、この瞬間にも、弱い魔族は、次々に息絶えている
ユナ:だったら、人族に死ねって言うの?
ハル:どちらも救うなんてできない。でも、俺は、魔族に召喚されて
ハル:魔族の想いを託された魔王だから!
ユナ:僕だって、勇者として、人族の想いを託されてる!
ハル:人族の想い!?人族に、救う価値なんてあるのか?
ユナ:え!?何を言ってるの!?
ハル:人族は、「魔族」ってだけで、無差別に魔族を殺す
ハル:おとなしい奴でも、子供であってもだ!
ハル:そんな卑劣な人族に、救う価値なんてないだろ?
ユナ:ふざけないで!魔族だって同じよ!
ハル:(さえぎって)同じじゃない!何が同じだって言うんだ!
ユナ:魔族だって、人族を殺すって話よ!
ハル:それは、魔族に危害を加えたクソ野郎だけだ!
ハル:魔族は、決して、弱者に手を上げない!
ユナ:弱者?弱者って何よ?
ハル:武器を持たない者、攻撃の意思を持たない者のことだ
ユナ:は!?
ユナ:結婚式に向かう道中で、花嫁衣裳(はなよめいしょう)を着たまま殺された女の子がいる
ユナ:森でキノコを拾っていただけなのに、無残に殺された子供がいる
ユナ:弱者でしょ!弱者も、魔族に殺されてる!
ハル:それは、一部の好戦的な魔族がやったんだ
ユナ:人族だって同じよ!一部の好戦的な人たちが、無差別に魔族を殺してる!
ユナ:同じなのよ!
ハル:同じでも!俺は魔族を救いたい!
ユナ:どうして魔族なの?ハルは、魔王に祭り上げられて、調子に乗ってるの?
ハル:ユナだって、勇者に祭り上げられて、調子に乗ってるんじゃないのか?
ユナ:平行線ね
ハル:戦うしか、他に道はないようだな
ユナ:真名開放(しんめいかいほう)!
ユナ:永劫(えいごう)の輪廻(りんね)、破滅の天啓(てんけい)
ユナ:我が呼び声にこたえ、ここに光臨(こうりん)せよ!
ハル:魔眼開放(まがんかいほう)!
ハル:終焉(しゅうえん)を告げし、殺戮(さつりく)と混沌(こんとん)の大精霊よ
ハル:我が呼び声にこたえ、ここに顕現(けんげん)せよ!
ユナ:(同時に)ラスト・ラグナロク!
ハル:(同時に)ジェノサイド・ホロコースト!
0:【間】
ユナ:魔族のように、強欲(ごうよく)で、醜悪(しゅうあく)な外見の召喚獣(しょうかんじゅう)だね
ハル:人族のように、綺麗な嘘で塗り固められた傲慢(ごうまん)な外見の召喚獣だな
ユナ:だから…
ハル:その
ユナ:凝り固まった
ハル:固定観念を!
ユナ:ぶち破るしか!
ハル:ないってことだよなぁ!
ユナ:人族も、魔族も、外見は違っても
ハル:内側は、同じように、悩んだり
ユナ:苦しんだりしながら、成長して
ハル:それぞれ別の、唯一無二の存在になって行く
ユナ:みんな、違う
ハル:良い奴もいれば、悪い奴もいる
ユナ:誰かにとって、良い奴でも
ハル:誰かにとっては、悪い奴なのかも知れない
ユナ:だから、人族も魔族も関係ない
ハル:種族の垣根(かきね)なんてない
ユナ:心は…
ハル:心だ!
ユナ:どちらか一方しか救えないなんて
ハル:そんな運命を背負いたくなんかなかった
ユナ:敵か味方かに分かれて
ハル:好きな人と戦うなんて
ユナ:そんな運命
ハル:クソくらえだ
ユナ:(同時に)はあああーっ!!!
ハル:(同時に)うおおおーっ!!!
ユナ:ハル、ごめん…
ハル:ユナ、ごめんな
ユナ:(同時に)シャイニング・エクス・カリバー!!!
ハル:(同時に)ダークマター・ゼロノ・トリガー!!!
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0:【間】
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ハル:君があまりにも優しく笑うから
ハル:全部暴いて、壊したくなったよ
0:
ユナ:不細工(ぶさいく)な嘘が
ユナ:仮面の裏で泣いている
ハル:だから、ハリボテの城に手を伸ばす
ハル:姫を、そこから救い出すために
0:
ユナ:感情なんてモノがあったから、傷ついた
ハル:感情のおかげで、君を好きになれた
0:
ユナ:ありがとう
ハル:ありがとう
ユナ:これからは、喜びも悲しみも
ハル:一緒に分け合って
ユナ:心を寄り添わせて
ハル:一緒に生きて行こう
0:
ユナ:そう言えたなら
ハル:良かった…
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ハル:ずいぶん待たせてしまったね
ユナ:今から
ハル:今ここで
ユナ:(同時に)僕が君のヒーローになる
ハル:(同時に)俺が君のヒーローになる
0:
ユナ:僕の召喚獣が放った攻撃は、僕を
ハル:俺の召喚獣が放った攻撃は、俺を
ユナ:この世界から
ハル:消した…
0:
0:―了―