台本概要

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タイトル 愛しのセバスチャン
作者名 Oroるん  (@Oro90644720)
ジャンル その他
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 80 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 軽微なアドリブ可

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
セバスチャン 不問 327 お嬢様の家令
お嬢様 330 お嬢様
ゲス男 251 ゲス男
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台本本編

文字サイズ
0:⒈「小学校時代」 0:下校中 お嬢様:ねえー、返してよー、私のランドセルー ゲス男:誰が返すかよ!ほらパース!(ランドセルを投げる) お嬢様:やめてよ! ゲス男:ほらほらどうした!取り返してみろよ! お嬢様:(走り回りながら)返して!返して! ゲス男:やーだよ。こっこまでおいでー! お嬢様:う、うっ(泣き崩れる) ゲス男:あっ!泣いちゃったー!だっせー(大笑いする) お嬢様:(泣きながら)セバスチャーン! ゲス男:え?セバスチャン? セバスチャン:(遠くから走ってくる)うおぉぉぉぉぉ! ゲス男:なんだ? セバスチャン:(段々近づきながら)うぉぉぉぉぉ! ゲス男:誰かはしってくる! セバスチャン:とうっ!(ジャンプ) ゲス男:とんだ! セバスチャン:セバスチャン・キィィィック!!(一人蹴り飛ばす) ゲス男:ああっ!ゲンちゃんが! セバスチャン:セバスチャン・ソバット! ゲス男:はじめくん! セバスチャン:セバスチャン・ラリアット! ゲス男:ともやん! お嬢様:うわあーん!セバスチャーン! ゲス男:お、お前、こいつの使用人だな!大人が子供にぼーりょく振るって良いのか!?せんせーに言いつけてやる! セバスチャン:黙れっ!! ゲス男:ひぃっ! セバスチャン:お嬢様を泣かせた罪、その命で償ってもらおう! ゲス男:い、いのち!?うわあああ!ころされるぅぅ! セバスチャン:セバスチャーン・ジャーマンスープレックス!! ゲス男:ぎゃあああ!! セバスチャン:成敗! お嬢様:セバスチャン・・・ セバスチャン:お嬢様!お怪我はありませんか? お嬢様:うん・・・ セバスチャン:ほら、ランドセルを取り返しましたよ。 お嬢様:ありがとう、セバスチャン。 セバスチャン:礼には及びません。これはこのセバスチャンの務めでございます! お嬢様:・・・みんな、しんじゃったの? セバスチャン:ハッハッハッ!ご心配には及びません!子供相手ですから、ちゃあんと手加減しております! セバスチャン:派手にやられた様に見えますが、実はかすり傷一つ負わせてはおりません! お嬢様:・・・ホント? セバスチャン:本当ですとも!ハーハッハッハッ! セバスチャン:・・・多分。 お嬢様:『両親が事故で死んだのは、私が2歳の頃だ。だから私は、親の顔をほとんど覚えていない』 お嬢様:『父は有数の資産家で、私には多額の遺産が残された。』 お嬢様:『後見人は叔父だったが、彼とその妻は海外を拠点としていた為、私の側にはいない事が多かった』 お嬢様:『だから、実質私を育ててくれたのはたくさんの使用人たち・・・特に親代わりと言って良い存在は、家令(かれい)のセバスチャンだった』 0:「愛しのセバスチャン」 0:⒉「高校生時代」 0:校舎裏 ゲス男:なあー、良いじゃん。俺と付き合ってくれよぉ。 お嬢様:アンタさあ、昔私の事いじめてたよね?それなのに、良くそんな事が言えるわね。 ゲス男:そんなのガキの頃の話だろ?お前のことが好きなんだよう!頼むよ! お嬢様:嘘ばっかり!アンタ学校中の女子に声かけてるじゃない! お嬢様:アンタに泣かされた女の子の話、いーっぱい知ってるんだからね! ゲス男:ただの噂だって。なあ・・・(お嬢様に近づく) お嬢様:ちょっと!こっち来ないでよ!私急いでるの! ゲス男:そんなに嫌うなよ!(抱きつく) お嬢様:キャッ!は、離してよ! ゲス男:良いじゃん良いじゃん!ほら、チューしようぜ! お嬢様:嫌っ! ゲス男:ほらあ、んー・・・(無理矢理キスしようとする) お嬢様:助けて、セバスチャン! ゲス男:へ?まさか・・・ セバスチャン:ぬおぉぉぉぉぉ!! ゲス男:な、何だ!?こっちに向かって、人が落ちてくる? セバスチャン:セバスチャーーーン!フライィィィング!ヘッドバァァァッド!! ゲス男:あぎゃあっ!! セバスチャン:お嬢様、大丈夫ですか? お嬢様:う、うん。ありがと、セバスチャン。 セバスチャン:・・・ お嬢様:どうしたの? セバスチャン:今は予備校に行っている時間のはずですが、何故まだ学校に? お嬢様:それは・・・文化祭の準備!思ったより時間かかっちゃってさあ。 セバスチャン:そうでしたか。 お嬢様:う、うん、そうなの! セバスチャン:それならば、ご学友(ごがくゆう)に事情を話して、途中で抜ければ宜しかったのでは? お嬢様:そんなの、みんなに悪いじゃん! セバスチャン:第一、準備はほとんど終わったと、昨日仰って(おっしゃって)いたではないですか。 お嬢様:い、色々手直ししなきゃいけなかったんだもん! セバスチャン:それに・・・先ほどお嬢様の教室を通りかかりましたが、誰もおらず電気も消えておりました。 お嬢様:うっ・・・だから、さっき終わったんだって!それで、みんな帰っちゃったの! セバスチャン:お嬢様、嘘は良くありませんね。 お嬢様:・・・ セバスチャン:(ため息)来年は受験も控えているのですよ?もっと気を引き締めて頂かねば困ります! お嬢様:勉強だってちゃんとしてるし!成績だっていつも上位じゃん!やることやってるんだから、そんなガミガミ言わないでよ! セバスチャン:その驕り(おごり)が、このような男に付け入る隙を与えてしまったのではないですか? ゲス男:う、うぅ・・・ セバスチャン:まだ生きてたか。セバスチャン・ストンピング!(踏みつけ) ゲス男:ぐえっ! お嬢様:別に、付け入られてなんかないもん。 セバスチャン:私も、いつまでも守って差し上げられるわけでは無いのですよ? お嬢様:誰も守って欲しいなんて頼んでないじゃん! セバスチャン:困ったらすぐ私に助けを求めるのに、ですか? お嬢様:・・・ セバスチャン:さあ、参りますよ。 お嬢様:どこに? セバスチャン:予備校に決まっているでしょう? お嬢様:いやいや、今から行っても間に合わないって。 セバスチャン:遅刻は避けられませんが、いくらか授業は受けられるでしょう。 お嬢様:いや、その・・・ セバスチャン:お嬢様? お嬢様:今日は・・・友達と買い物行くって約束しちゃったの! セバスチャン:・・・ お嬢様:勉強は明日からちゃんとやるから!ううん、今日帰ったらすぐやるから!だから今回だけ、お願い! セバスチャン:つまり、今日は最初から予備校をサボるつもりだったわけですか。 お嬢様:え?いや、そういうわけじゃ・・・ セバスチャン:予備校の授業料、どこから支払われているか、当然ご存知ですね?大切なご両親のご遺産からです。 お嬢様:(小声で)予備校のお金なんて、大した額じゃないでしょ。 セバスチャン:お嬢様!何ということを仰いますか! お嬢様:あ、やべ。 セバスチャン:どうやら、お灸をすえる必要がありそうですね(スマホを取り出す) お嬢様:何?スマホを出して、どうするのよ? セバスチャン:(スマホを操作して)これでよし。 セバスチャン:いま、お嬢様のスマホの機能に制限をかけました。 お嬢様:えっ!? セバスチャン:お嬢様のスマホは、私の端末から機能制限をかけられるように特別に設定して頂いております。 セバスチャン:そのスマホは、もう私への電話とメール以外は使用できません。 お嬢様:嘘っ!?(慌ててスマホを取り出し操作する)ホントだ、アプリが使えなくなってる・・・ひどい! セバスチャン:昨日も遅くまでお友達と電話されていましたしね。このぐらいの措置は当然です。 お嬢様:こんなの子供スマホじゃん!私高校生だよ!? セバスチャン:いくら歳を重ねても、心が未熟ならば子供と同じです。 お嬢様:ふざけんなよ! セバスチャン:おやおや、どこでそんな言葉遣いを覚えられたのやら。嘆かわしゅうございます。 セバスチャン:取り上げられないだけ、ありがたく思いなさい! お嬢様:何よ、偉そうに・・・ お嬢様:本当の家族でもないくせに! セバスチャン:・・・ お嬢様:アンタはうちの家令なの!使用人なの! お嬢様:アンタが私を世話するのは、それが仕事だからよ!それで給料をもらうためよ! お嬢様:親みたいに干渉してくるの辞めてよ!マジでウザイ! セバスチャン:・・・気が済みましたか?では予備校へ参りますよ。 お嬢様:いや!私行かないもん! セバスチャン:失礼致します(腕を掴む) お嬢様:痛っ!離してよ! セバスチャン:離しません。学生の本文は勉強です。 お嬢様:ちょっと、引っ張らないでよ! セバスチャン:先ほどお嬢様が申された通り、これは私の職務にございます。 お嬢様:(引っ張られながら)離して!はーなーせー! セバスチャン:・・・お嬢様を立派に育て上げることが、私の責務なのです。 0:⒊「大学生時代」 0:お嬢様のマンション お嬢様:ただいま。 ゲス男:おう。(缶ビールを飲む) お嬢様:こんな時間から飲んで・・・バイトはどうしたの? ゲス男:辞めた。 お嬢様:え? ゲス男:店長が気に食わない奴だったから、殴ったらクビになった。 お嬢様:嘘でしょ・・・始めてまだ三日じゃない。 ゲス男:しょうがねえじゃん。それよりも、ん。(手を出す) お嬢様:その手は何よ? ゲス男:金貸してくれよ、かーね。 お嬢様:・・・ ゲス男:勝ったら返すからさ。 お嬢様:またパチンコ? ゲス男:当たり前だろ。ほら早く。 お嬢様:・・・私が気付いてないとでも思ってるの? ゲス男:あ? お嬢様:この前、私の財布から勝手に三万円、取ったでしょ? ゲス男:(舌打ち) お嬢様:それ泥棒だよ?分かってる? ゲス男:はあっ!?何が泥棒だよ!ちょっと借りただけじゃねえか! お嬢様:ふざけないでよ!返す気も無いくせに! ゲス男:うるせえ!(平手打ち) お嬢様:痛っ! ゲス男:三万ぐらいでガタガタ言ってんじゃねえ! ゲス男:お前みたいなダセェ女と我慢して付き合ってやってるんだからなあ、ありがたく思え! お嬢様:・・・別れてやる。 ゲス男:あ? お嬢様:別れてやるって言ったのよ! ゲス男:何だと!(掴みかかる) お嬢様:嫌っ!離して! ゲス男:セバスチャン、だっけか、お前の家の使用人。昔みたいに呼んでみろよ!助けに来るかもなあ! お嬢様:ぐっ・・・うぅっ・・・ ゲス男:ま、来るわきゃねえけどなあ! セバスチャン:セバスチャーン・・・ ゲス男:えっ? セバスチャン:テンカオ!(立ち膝蹴り) ゲス男:ぐぇっ!! お嬢様:セ、セバスチャン? セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:どうしてここに? セバスチャン:お嬢様が心配で、様子を見に来たのです。この様なことになっているとは・・・ ゲス男:うぅ・・・ セバスチャン:まさか、この男と交際されているとは、思いもよりませんでした。 お嬢様:私が誰と付き合おうが、勝手でしょ・・・ セバスチャン:だから、家を出るのは反対だったのです。 お嬢様:・・・ セバスチャン:この汚らしい(きたならしい)部屋はなんですか?とてもご婦人のお部屋とは思えませんね。 お嬢様:それは、こいつが汚すから。 ゲス男:こ、ここは半分俺の部屋だ!どう使おうが勝手だろ! お嬢様:何言ってんの!家賃払ってるのは私なのよ! ゲス男:うるせえ! セバスチャン:セバスチャン・ニードロップ! ゲス男:ぎゃはっ! セバスチャン:やはりお嬢様に一人暮らしは、まだ無理かと存じます。 セバスチャン:ここは引き払って、お屋敷に帰りましょう。多少遠くはなりますが、大学にも充分通える距離です。 お嬢様:何言ってんの?帰国した叔父さん夫婦がずっと住んでるんでしょ? セバスチャン:部屋はいくつも空いておりますし、事情を離せば叔父様もきっと受け入れて下さいます。 お嬢様:・・・嫌よ。 セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:私ちゃんとしてるわ!学費は遺産から出してもらったけど、バイトもして、ここの家賃も自分で払ってる! お嬢様:家賃だけじゃない!光熱費も、携帯代だって! お嬢様:もちろん勉強も頑張ってる!だからもう放っておいて! ゲス男:そうだそうだ!帰れ帰れ! セバスチャン:セバスチャン・エルボー! ゲス男:がはあっ! セバスチャン:この様な害虫が住み着いているようでは、信用はできませんな。 ゲス男:誰が害虫だコラァ! セバスチャン:セバスチャン・フライング・ボディープレス! ゲス男:げふぅ! お嬢様:こいつとは別れるから良いでしょ! セバスチャン:しかし・・・ お嬢様:私は、もう子供じゃない! セバスチャン:・・・ お嬢様:帰って、お願いだから・・・ 0:⒋「結婚」 0:市役所前 ゲス男:ふぅっ。 お嬢様:・・・ ゲス男:出しちゃったな・・・婚姻届。 お嬢様:出しちゃったね・・・婚姻届。 ゲス男:これで俺たち、夫婦ってことだよな? お嬢様:・・・だと思う。 ゲス男:なんだよ、「だと思う」って。 お嬢様:だって!何だか実感湧かないんだもん。 ゲス男:実を言うと、俺も。 お嬢様:・・・ ゲス男:(吹き出す)やべー!!俺たち、結婚したんだぜ!信じられるか!? お嬢様:(吹き出す)信じられない!まさかアンタと結婚するなんて! ゲス男:ひでえ! お嬢様:(幸せそうに笑う) ゲス男:・・・結婚式、できなくてゴメンな。俺が甲斐性無いばっかりに。 お嬢様:良いよ。二人で決めた事でしょ? ゲス男:そうだけどよ!やっぱり、祝ってもらいたかっただろ?ほら、あのセバスチャンとかさ。 お嬢様:ああ・・・実はね、実家には知らせて無いの、結婚のこと。 ゲス男:え?なんで? お嬢様:だって、反対されるに決まってるもん。「お嬢様に結婚など、まだ早過ぎます!」とか言ってさ。 ゲス男:しかも、相手は俺だしな。 お嬢様:うん、正直それが一番言いづらい。 ゲス男:だからひでぇって! 0:しばし二人で笑い合う ゲス男:なあ。俺、今までお前に酷いことばっかしてきたけど・・・俺、変わるから!絶対、お前のこと、幸せにするから! お嬢様:うん。 ゲス男:じゃ、帰るか。 お嬢様:何か食べに行こうよ。せめて食事ぐらい豪華にさ! ゲス男:そうだな!・・・って、あれ? お嬢様:え?・・・っ! セバスチャン:・・・ ゲス男:お前・・・ お嬢様:セバスチャン・・・ セバスチャン:セバスチャーン・・・ ゲス男:ひぃっ! お嬢様:セバスチャン、待って! セバスチャン:パァーンチ! ゲス男:うわあああ!! セバスチャン:寸止め! お嬢様:えっ? ゲス男:止まっ、た? セバスチャン:・・・ お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:良いか、もしお嬢様を悲しませる様なことをしたら、ただでは済まさんからな。 セバスチャン:生きてるのを後悔するぐらいの苦痛を味合わせた後、地獄に叩き落としてやる。・・・わかったな! ゲス男:は、はい! 0:セバスチャン、立ち去ろうとする。 お嬢様:セバスチャン、待って! セバスチャン:・・・ お嬢様:ゴメンなさい。勝手に結婚してしまって。 セバスチャン:・・・ お嬢様:やっぱり、怒ってる? セバスチャン:当たり前です!何も言わずに籍を入れてしまうなど!結婚がどれほどの大事か分かっておられるのですか!? お嬢様:・・・ セバスチャン:しかもこの男と! ゲス男:うっ・・・ セバスチャン:全く・・・勝手が過ぎます! お嬢様:ゴメンなさい。 セバスチャン:これで!・・・これで、幸せにならなかったら、承知致しませんよ。 お嬢様:セバスチャン・・・ありがとう。 0:⒌「出産」 0:病院 病室の前 セバスチャン:(ソワソワしている様子) セバスチャン:(他の見舞客に)ああ、すいません。もうすぐ産まれるので、落ち着かなくて。 セバスチャン:ち、違います!孫じゃありません!そんな歳に見えますか!?失敬な! セバスチャン:・・・申し訳ない、大きな声を出して。 セバスチャン:大切な方の、初めてのお子なのです。それで・・・ セバスチャン:っ!いま、赤ん坊の泣き声が・・・聞きました?聞きましたよね!? セバスチャン:すいません、行って参ります!話を聞いてくれてありがとう! 0:病室の中 お嬢様:・・・ セバスチャン:(病室のドアを開け放ち)お嬢様! お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:おお・・・おおおおお! お嬢様:(少し笑って)無事、産まれたわ。 セバスチャン:お嬢様!・・・おめでとうございます! お嬢様:ありがとう。 セバスチャン:・・・と、時に、父親の姿が見えぬようですが? お嬢様:うん。・・・連絡が付かなくて。 セバスチャン:この様な一大事に、一体どこに行っているのだ!私、探して参ります。 お嬢様:セバスチャン!それは良いから。ちょっとこっちに来て。 セバスチャン:は、はあ。 お嬢様:抱いてみてくれない? セバスチャン:はあっ!?私が、でございますかあ!? お嬢様:ええ。すいません看護師さん、この人に抱かせてあげて下さい。 セバスチャン:し、しかし、もし落としてしまったら・・・ お嬢様:大丈夫だから。さあ? セバスチャン:そ、それでは失礼致します。しっかりお掴まり下さいませ。 お嬢様:言っても分かんないって。 セバスチャン:(赤ちゃんを抱く)おお。 お嬢様:どう? セバスチャン:・・・呼吸しておられます。 お嬢様:そりゃ、生きてるからね。 セバスチャン:・・・お嬢様によく似ていらっしゃいますな。 お嬢様:そう?どちらかと言えば父親似だと思ったけど? セバスチャン:いいえ!断じてそんなことはございません!お嬢様の小さい頃に瓜二つにございます! セバスチャン:きっとお嬢様の様な麗しい(うるわしい)・・・ お嬢様:この子、男の子よ? セバスチャン:(咳払い)麗しさの中にも凛々しさ(りりしさ)を兼ね備えた、立派な紳士になられることでしょう! お嬢様:(笑いながら)そうね。 セバスチャン:・・・ お嬢様:どうしたの? セバスチャン:ここに、旦那様と奥様がおられたら、どれほど喜ばれたことか。 お嬢様:・・・ セバスチャン:・・・うっ・・・うっ。 お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:うおおおぉーーん!!(号泣) お嬢様:ええっ!? セバスチャン:うおぉーん!うおぉーん!ぼじょうざゔぁー!!(お嬢様、と言ってます) お嬢様:何?ひょっとして、それは泣いてるの? セバスチャン:ゼバズヂャンわあー!ゼバズヂャンわあー!うれじゅうございまずぅぅ!! お嬢様:分かった!分かったから!落ち着いて!ほら、看護師さんもキョトンとしちゃってるから。 セバスチャン:ヴオォォォォォーーン!!! お嬢様:やめい!! 0:10分ほどして セバスチャン:す、すいません、お嬢様。もう落ち着きました。 お嬢様:そ、そう。それは良かったわ。 セバスチャン:お見苦しい所をお見せ致しました。 セバスチャン:私、昔から泣くとあんな感じになってしまいまして・・・こうなるから嫌だったのでございます。 お嬢様:(笑いながら)そうだったのね、知らなかった。セバスチャンが泣いてる所なんて初めて見たもん。 セバスチャン:家令として、主(あるじ)の前で涙を見せるなどあってはならぬことです!・・・いま、見せてしまいましたが。 お嬢様:長い間一緒に暮らしてきたのに、まだ知らないことがあるんだね。 セバスチャン:そうですな・・・ セバスチャン:(赤ちゃんに対して)私はセバスチャンと申します。これからどうぞ宜しくお願い致します、坊っちゃま? ゲス男:(かなり酔っ払った様子)おー、産まれたかあ。 セバスチャン:っ! お嬢様:あなた・・・ ゲス男:あ、アンタも来てたの?(赤ちゃんを見て)ははっ、しわくちゃで、ホント猿みたいだな。 お嬢様:・・・ ゲス男:ハーイ、パパでちゅよー。な、俺にも抱かせてくれよ。 セバスチャン:看護師さん、坊っちゃまをお願いできますかな(看護師に赤ちゃんを渡す) ゲス男:? セバスチャン:セバスチャン・コークスクリュー・パァーンチ!!! ゲス男:ぐはあっ!!! 0:⒍「離婚」 0:マンション ゲス男:(酔っ払った様子)ただいまー、っと。 お嬢様:・・・ ゲス男:まだ起きてたのか。(椅子に座って)水ー。 お嬢様:自分でやって。 ゲス男:(舌打ち)ご機嫌斜めですねー。もう良いや、寝る。 お嬢様:待って、話があるの。 ゲス男:あん? お嬢様:最近毎晩遅いよね。どうして? ゲス男:仕事だよ、お・し・ご・と! お嬢様:毎晩飲み歩くのが? ゲス男:そうだよ。接待とか上司の付き合いとか。これも大事なお仕事なの。 ゲス男:ま、女には分かんねえか。 お嬢様:・・・休みの日もだよね。滅多に家に居ないじゃない。 ゲス男:うるせえなあ、色々あんの。あ、明日も上司と飲みだから、三万くれ。 お嬢様:また? ゲス男:しょうがねえだろ。 お嬢様:家事を手伝え、とは言わないけど、育児の方は、もう少し協力してくれても良いんじゃない? ゲス男:何だそんな話か、くだらねえ。家事も育児も、お前の仕事だろ?働いて無いんだから当然だよな。 お嬢様:アンタねえ! ゲス男:デカい声出すなよ。ガキが起きちまうぞ。 お嬢様:ガキって言わないでよ!アンタの息子なのよ! ゲス男:うるせえな!お前らを食わせてやってるのは一体誰だと思ってんだ!俺が毎日働いてやってるおかげだろうが! お嬢様:その働いて稼いだお金は、一体何に使ってるの? ゲス男:な、何言ってんだ。家族の生活費に・・・ お嬢様:飲み代にギャンブル代に・・・ ゲス男:お、おい! お嬢様:後は・・・女の子と遊ぶお金? ゲス男:・・・は?お前バカか?そんなわけ無いだろ! ゲス男:第一、金はお前が管理してるじゃねえか!お前からもらってる金だけじゃ、そんな余裕無いこと分かるだろ? お嬢様:そうね。私が渡してるお金だけだったらね。 ゲス男:え? お嬢様:(通帳をテーブルに置く)この通帳は何? ゲス男:あっ!(慌てて通帳を掴む)お前、これ、何で!? お嬢様:ずっと言ってたよね。「会社の業績厳しいから給料上がらない」とか「ボーナスも出ない」とかさ。 ゲス男:・・・ お嬢様:給料の入る口座、会社に頼んで二つに分けてたんでしょ?ボーナスに至っては全額そっちに入るようにさ。 ゲス男:何で、それを。 お嬢様:それでそのお金を、浮気相手に貢いでたわけだ。 ゲス男:ち、違う。 お嬢様:じゃあこの人は誰よ!(写真をテーブルに叩きつける) ゲス男:何だ、この写真! お嬢様:ここホテル街だよね?腕まで組んじゃって、随分仲良さそうだね。 ゲス男:こ、これは・・・ お嬢様:あとこの子も(写真を出す) ゲス男:っ! お嬢様:この子も(写真を出す) ゲス男:うあ・・・ お嬢様:みんな違う女の子だね。一体何人と付き合ってるのかしら? ゲス男:・・・ お嬢様:何とか言いなさいよ。謝るフリでもしてみたら?許す気ないけど。 ゲス男:この写真、探偵でも雇ったのか?手の込んだ真似しやがって。 お嬢様:あら、開き直り? ゲス男:俺はなあ、いつも仕事でストレス溜まってんだよ!ちょっと女遊びするぐらい良いだろ! お嬢様:何かあれば仕事仕事って・・・仕事さえしてれば、何しても許されると思ってんの!? お嬢様:アンタ結婚する時言ったわよね、「変わる」って。一体どこが変わったって言うの? ゲス男:・・・ お嬢様:・・・もう離婚ね。 ゲス男:好きにしろよ。あ、ガキは連れていけよ。 お嬢様:っ!アンタって人は・・・ ゲス男:俺に育てられると思うか? お嬢様:もちろん、あの子も連れて行きます。それから・・・そのうち弁護士から連絡が行くと思うから、そのつもりで。 ゲス男:あ?弁護士? お嬢様:離婚調停に入るんだから当然でしょ? ゲス男:おい待てよ!俺は離婚してやるって言ってんだ!何も争う必要無いじゃねえか! お嬢様:それだけじゃダメでしょ。慰謝料の事とかちゃんと決めないと。 ゲス男:はあ!?何が慰謝料だ! お嬢様:浮気したんだから当然でしょ。もちろん、あの子の養育費も払ってもらいます! ゲス男:ふざけんな!何でそんなもん払わなくちゃいけねえんだ! ゲス男:第一、お前には親の遺産があるじゃねえか! お嬢様:遺産は大半を叔父が管理してるし、私の自由にできるわけじゃないわ。 お嬢様:何より・・・どうしてもアンタを許せないのよ! ゲス男:お前!(お嬢様の髪の毛を掴む) お嬢様:痛い!離して! ゲス男:この!(手を振り上げる) お嬢様:最後は結局暴力?情けない男ね! ゲス男:てめえ! お嬢様:良いわよ、殴りなさいよ。私はそんなものに屈しないから! ゲス男:良い度胸だ。じゃあお望み通りにしてやらあ! お嬢様:っ! セバスチャン:セバスチャン・ネリチャギ!(かかと落とし) ゲス男:ぐあっ! お嬢様:セバスチャン・・・ ゲス男:(よろめきながら)またテメェか・・・いつもいつも、良いタイミングで現れるよなあ! ゲス男:お前は良いよな!こうして守ってくれる奴がいるんだからよ! お嬢様:私は・・・ ゲス男:さっさと出て行け!ここはもう、お前の家じゃねえんだ! お嬢様:・・・ セバスチャン:参りましょう、お嬢様。 お嬢様:ええ・・・荷物はもうまとめてあるわ。 ゲス男:ケッ!用意の良いこったな! セバスチャン:では、私は坊っちゃまを・・・ お嬢様:結構よ! セバスチャン:お嬢様? お嬢様:私が連れてきます。 セバスチャン:は、はい。 0:マンション前 0:お嬢様は息子を抱き抱えている。 セバスチャン:坊っちゃまは大丈夫ですか? お嬢様:ええ。よく眠っているわ。 セバスチャン:そうですか。間もなく、屋敷より迎えの車が参ります。 お嬢様:その必要は無いわ。タクシーを呼んだから。 セバスチャン:え? セバスチャン:まさかお嬢様、屋敷に戻られないおつもりですか? お嬢様:ええ。しばらくは知り合いの所に世話になるから。 セバスチャン:何故です? お嬢様:もう実家の世話になるつもりはないからよ。 セバスチャン:しかし、今回ばかりは仕方ないではありませんか。叔父上も喜んでお嬢様を迎え入れると仰っています。 お嬢様:もう、叔父さんにも話を通したのね。 セバスチャン:幼子(おさなご)を抱えて、一人でどうやって生きていくと言うのですか!? お嬢様:もう仕事も見つけてあるし、子供の事もちゃんと考えてる。 セバスチャン:しかし! お嬢様:・・・少し前に、叔父さんから連絡があったの。 セバスチャン:え? お嬢様:この子を、養子にしたいって。知ってたんでしょ? セバスチャン:・・・ お嬢様:叔父さんの会社、色々揉めてるらしいわね。特に古参の社員の反発が強いって聞いたわ。 セバスチャン:それは・・・ お嬢様:「私の父の会社を、叔父さんが乗っ取った」そう考える人が結構いるみたいね。 お嬢様:中には、私が実家を出たのは、叔父さんが追い出したからって言う人までいるそうよ。 お嬢様:だから、そう言う連中を黙らせるために、お父さんの孫であるこの子を、後継者にしようとしてるのよね? お嬢様:セバスチャンも、叔父さんに頼まれたんでしょ? セバスチャン:・・・違うと言えば、嘘になります。 お嬢様:私はね、この子をそういうことに巻き込みたくないの。 お嬢様:この子には普通の人生を歩んで欲しいから。 セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:セバスチャン、あなたも、もう良いのよ? セバスチャン:は? お嬢様:あなたの今の雇い主は叔父さんよ。だからもう、私のことは放っておいて良いの。 セバスチャン:お嬢様!私はその様な・・・ お嬢様:私の両親の恩に報いたかったんでしょ?それはもう、充分果たしてもらったわ。 セバスチャン:しかし! 0:タクシーが来る お嬢様:今までありがとう・・・さようなら。 セバスチャン:『そう言ってタクシーに乗り込むお嬢様を、私はただ立ち尽くしたまま、見送る事しか出来なかった』 0:⒎「誘拐」 0:マンションの一室 お嬢様:(洗い物しながら)いつまでテレビ見てるの?宿題まだでしょ?さっさと終わらせちゃいなさい。 0:チャイムが鳴る お嬢様:こんな時間に誰だろ?あ、行かなくて良いから。ママが出るから。 お嬢様:はーい、どちら様・・・って。 ゲス男:よう・・・久しぶり。 お嬢様:アンタ・・・ ゲス男:チェーン、外してくれよ。 お嬢様:何の用? ゲス男:あいつ、居るんだろ?ちょっと顔が見たくなってさ。 お嬢様:・・・帰って。 ゲス男:そんなこと言うなって。息子に会わせてくれよ。 お嬢様:今更何よ。父親らしいことなんて、何一つしてこなかったクセに。 ゲス男:・・・チェーン、外してくれよ。 お嬢様:だから帰ってよ! ゲス男:(ため息)出来るだけ手荒(てあら)にはしたくないんだけどな。 お嬢様:え?何言って・・・誰?その人たち・・ ゲス男:おい、チェーンを切れ。 お嬢様:っ! ゲス男:お前が悪いんだ。これは全部、お前のせいなんだ。 お嬢様:入ってこないで!(腕を捕まれ)離してよ! ゲス男:ガキを忘れんな。中にいるはずだ。 お嬢様:止めて!あの子には手を出さないで! ゲス男:そういうわけにはいかねえな!大事な人質なんだからよ。 お嬢様:人質? ゲス男:お、いたか。久しぶりだなあ、パパだぞぉ。(子供を抱き抱え)でっかくなったなあ。 お嬢様:いや・・・ ゲス男:これからパパと楽しいことしようぜ。それじゃあ、行こうか。 お嬢様:誰か、誰か助けて! ゲス男:騒ぐな。おい、黙らせろ。 お嬢様:いやあああ! 0:数時間後 0:河川敷 ゲス男:久しぶりだな。 セバスチャン:まさか、お前が私に連絡してくるとはな。何の用だ? セバスチャン:また私に痛めつけられたいのか? ゲス男:会ってすぐ言うことがそれか。ま、良いけどよ。 ゲス男:実はさ、アンタに見てもらいたいものがあるんだ。 セバスチャン:なに? ゲス男:この動画だよ。 セバスチャン:っ!お嬢様!坊っちゃま! セバスチャン:『奴が持つスマホに写っていたのは、縛り上げられた二人の姿だった』 ゲス男:慌てんな。いま再生するからよ。 お嬢様:『ここはどこ?家に帰らせてよ!』 ゲス男:『わめくな。大人しくしてりゃ、無傷で帰れんだからよ』 お嬢様:『この子に何かしたら、ただじゃおかないからね!』 ゲス男:『この状況でよくそんな口がきけるな?昔からなあ、そういうところがムカつくんだよ!(髪の毛を引っ張る)』 お嬢様:『痛いっ!』 ゲス男:『俺を怒らせるな、命が惜しかったらなあ』 0:動画が停止する セバスチャン:お嬢様!坊っちゃま! ゲス男:と、言うわけだ。 セバスチャン:貴様ぁ! セバスチャン:セバスチャーン・・・ ゲス男:おっと!二人がどうなっても良いのかよ? セバスチャン:くっ! ゲス男:二人を返して欲しかったら・・・分かってるな? セバスチャン:金か? ゲス男:ああ、10億な。 セバスチャン:そんな大金、すぐには・・・ ゲス男:何とかしろよ!お前のご主人様に取ったら端金(はしたがね)だろ?姪っ子の為なら払えるよなあ? セバスチャン:貴様・・・仮にもかつての妻と自分の息子だぞ? セバスチャン:それを誘拐して身代金を得ようとは・・・ ゲス男:(笑いながら)だって俺ゲスだもんよ。 ゲス男:第一、アンタ人のこと言えんのかよ。 セバスチャン:何のことだ? ゲス男:俺さあ、色々あって裏社会の人間と仲良くなってな、アンタの過去も知ったんだよ。 セバスチャン:・・・ ゲス男:ま、そんなこと、今はどうでも良いか。 ゲス男:まず金を受け取ったらガキの方を解放する。 ゲス男:その後、高飛びするからよ。俺の身の安全が確認できたら、母親の方も居場所を教えてやる。 セバスチャン:・・・わかった。 ゲス男:言っとくけど、警察に通報なんかすんなよ。その瞬間、ゲームオーバーだからな。 セバスチャン:・・・後悔するぞ。 ゲス男:ああ?何言ってやがる。 ゲス男:俺の人生、ずっと後悔しっぱなしだ、バーカ。 セバスチャン:・・・ ゲス男:じゃあな、大人しく次の指示を待ってな。 0:ゲス男、去る。 0:セバスチャン、自身のスマホを取り出す。 セバスチャン:もしもし、旦那様。いま宜しいでしょうか? セバスチャン:不躾(ぶしつけ)で恐縮なのですが・・・お暇を頂戴したく存じます。 セバスチャン:仕事については、他の者でも分かるようにしております。少しの間はご不便をお掛けすると思いますが・・・ セバスチャン:理由は・・・申せません。少なくとも今は。 セバスチャン:お世話になりました。(電話を切る) セバスチャン:・・・ セバスチャン:これしか、道はない。 セバスチャン:(再び電話をかける)もしもし、私です。ご無沙汰しております。 セバスチャン:実は・・・あなた方のお力をお借りしたいのです。 0:数時間後、廃倉庫の一角 お嬢様:・・・ ゲス男:ただいま、っと。 お嬢様:どこに行ってたの? ゲス男:お前の実家にな、身代金の要求ってやつだ。 お嬢様:っ! ゲス男:思ったより簡単だったぜ。俺って誘拐犯の才能あるんかなあ? お嬢様:馬鹿じゃないの?自分の正体晒す誘拐犯がどこにいんのよ!捕まるのがオチよ! ゲス男:あ、そっかあ。じゃあさ・・・ ゲス男:お前達の口、封じなきゃいけないかなあ? お嬢様:っ! ゲス男:(笑いながら)冗談だよ、冗談。そこまではしねえって。多分な。 お嬢様:・・・アンタ、昔から最悪なやつだったけど、本当に人間のクズね! お嬢様:まさか、ここまでするなんて。 ゲス男:だから言っただろ、全部お前のせいだって。 ゲス男:金には困ってないくせに、慰謝料なんざ要求しやがって。お陰で俺はな、借金までする羽目になったんだぜ。 お嬢様:何言ってんのよ!慰謝料なんて、半分も払ってないじゃない! ゲス男:うるせえ!! お嬢様:っ! ゲス男:職場にも借金取りが来るようになって、会社にも居られなくなって・・・ ゲス男:金返す当てもねえから、金貸しの仕事手伝わされるようになって。 ゲス男:どんどんどんどん、やばい仕事やらされて、気が付いたら立派な犯罪者だ。 お嬢様:そんなの全部自業自得じゃない。 ゲス男:違う!違う違う違う違う違う違う違う!! ゲス男:俺は悪くねえ!これは全部、お前のせいだ!! お嬢様:勝手なことを・・・(子供が泣き出す) ゲス男:何だあ、ガキが泣いてんのかあ? お嬢様:(子供に)ゴメンね、大丈夫だからね。ママがついてるからね。 ゲス男:うるせえなあ、さっさと泣き止ませろ! お嬢様:ゴメンね、ゴメンね。お願いだからもう泣かないで。 ゲス男:全然泣き止まねえじゃねえか!!イラつくなあ!・・・あー、もう我慢できねえ。 お嬢様:な、何する気。こっちに来ないで! ゲス男:お前言ってたよなあ、「父親らしい事何もしてない」って。 ゲス男:やってやろうじゃねえか、父親らしく「子供の躾」ってやつをなあ! お嬢様:やめて!この子に触らないで! ゲス男:最近のガキはよ、手を上げたらすぐに虐待だなんだって騒がれちまう。時代は変わったよな。 ゲス男:俺はガキの頃はよ、親父に散々殴られたもんさ。こいつでな。 お嬢様:金属バット?正気なの?そんなので殴られたら死んじゃうわ! ゲス男:そうか?俺は死ななかったぜ。 ゲス男:まあ最悪死んじまっても、人質はもう一人いるしなあ。 お嬢様:やめて!私には何をしたって構わないから、この子だけは助けてあげて! ゲス男:嫌だね。オラ!こっち来いクソガキ!!(子供を奪いとる) お嬢様:いやあ!! ゲス男:お前がいつまでもメソメソしてるからだ。男なら、簡単に泣いたりしちゃいけないんだぜ。 お嬢様:お願い、助けて。 ゲス男:痛みに耐えられるような、強い男になれや! お嬢様:誰か・・・助けて・・・ ゲス男:さあ、いくぞ!!(バットを振りかぶる) お嬢様:助けてええ!セバスチャーン!!! セバスチャン:セバスチャン・ボンバー!!!(数発の閃光弾が投げ込まれる。) ゲス男:ぐわああ!! お嬢様:きゃあっ!! ゲス男:何だ、何が起こった!?何も見えねえぞ! お嬢様:う、うぅぅ・・・ セバスチャン:お嬢様!坊っちゃま! お嬢様:セ、セバスチャン? セバスチャン:大丈夫ですか?威力は控えめにしておりますので、目はすぐに見えるようになります。 お嬢様:セバスチャン、本当に来てくれた・・・ セバスチャン:坊っちゃま、少しの間ご辛抱下さいませ。 お嬢様:『少しずつ視力が回復し、周囲の状況が見えるようになってきた』 ゲス男:お、お前、何でここに。それに、こいつら・・・ お嬢様:『助けにきたのはセバスチャンだけではなかった。銃火器らしきもので武装した数人の男たちがいた』 ゲス男:くそ!ガキと女を逃すな!金づるがいなくなっちまうぞ! お嬢様:『そこからは、双方入り乱れる乱戦となった。しかし・・・』 セバスチャン:セバスチャン・ショット! お嬢様:『セバスチャン達は躊躇い(ためらい)なく銃弾を放つ。彼らは明らかに戦い慣れていた』 ゲス男:くそ!くそおおおおお!! お嬢様:・・・ セバスチャン:お嬢様、坊っちゃまにはこの光景を見せないで下さい。 セバスチャン:実弾ではなくゴム弾を使用していますが、いずれにしても子供が見るものではありません。 お嬢様:セバスチャン、あなた・・・ ゲス男:死ねえええ!(金属バットで殴りかかる) セバスチャン:あぶない!(殴られ)ぐあっ! お嬢様:セバスチャン! ゲス男:何で、何で・・・お前はいつもよお!! セバスチャン:(振り向き様に引き金を引く)セバスチャン・バレット! ゲス男:(肩に命中し金属バットを落とす)ぐあっ!!・・・く、くそお(逃げ出す) セバスチャン:待て!(立ち上がるがぐらつき)ぐっ! お嬢様:セバスチャン、大丈夫?・・・血が出てるわ! セバスチャン:大したことはありません。ご心配なく。 お嬢様:でも! セバスチャン:・・・どうやら、制圧できたようです。もう心配ありません。 セバスチャン:間もなく警察もやってきましょう。 お嬢様:え、ええ・・・ セバスチャン:(仲間に)すみません、お嬢様と坊っちゃまをお願いできますか? お嬢様:セバスチャン?どこへ行くの? セバスチャン:私にはまだ、やり残したことがございます。 お嬢様:セバスチャン、待って。 お嬢様:『なぜか、もうセバスチャンに会えなくなるような気がした』 セバスチャン:・・・お嬢様。 お嬢様:お願い、行かないで。 セバスチャン:どうか坊っちゃまと、いつまでもお健やか(おすこやか)に。(立ち去る) お嬢様:セバスチャン!(追おうとするが仲間に止められる)セバスチャーン!! 0:廃工事 通路 0:よろめきながら逃げるゲス男 ゲス男:クソッ!ちくしょう! ゲス男:何で、いつも上手く行かないんだ・・・ ゲス男:何で、いつもこうなっちまうんだよ!! セバスチャン:自業自得だ。 ゲス男:ヒッ! セバスチャン:終わりだ。 ゲス男:な、なあ、頼む、見逃してくれ! ゲス男:このまま捕まったらよ、ガキが犯罪者の息子になっちまうんだぜ!それで良いのかよ!? セバスチャン:この期に及んでまだ減らず口がきけるのか。大したものだ。 ゲス男:た、助けてくれ! セバスチャン:安心しろ、警察に引き渡すつもりはない。 ゲス男:え? セバスチャン:お前は、やり過ぎた。私はもう、お前を許すことはできない。 ゲス男:アンタ、何するつもりだ? セバスチャン:・・・ ゲス男:う、嘘だろ・・・まさか・・・ セバスチャン:昔、お前に言ったことがあったな。「お嬢様を泣かせた罪、その命で償ってもらう」と。 ゲス男:あ、あれは、冗談だろ? セバスチャン:あの時はな。 ゲス男:っ!わ、分かった。自首するよ!大人しく刑務所に入る!もうアイツらの前には姿を見せない!だから・・・ セバスチャン:ダメだ。 ゲス男:お、お前、あいつの使用人だろ? セバスチャン:ああ。だが・・・家族じゃない。 セバスチャン:それにもう、私は家令じゃない。だから、私が何をしようと、お嬢様には関わりの無いことだ。 ゲス男:頼む、俺が悪かった。許してくれ。 ゲス男:こんな事したら、あいつも悲しむぜ! セバスチャン:貴様がお嬢様を語るな!! ゲス男:っ! セバスチャン:よくも長い間、お嬢様の人生をめちゃくちゃにしてくれたな。だがそれも、今日で終わりだ! ゲス男:やめろ! セバスチャン:セバスチャン・チョークスリーパー・・・ ゲス男:(首を絞められ)あ・・・がっ・・・ セバスチャン:(締め上げながら)ぬぅぅぅぅぅ・・・ ゲス男:ぐ・・・ぐぇ・・・ セバスチャン:(お嬢様、坊っちゃま・・・このセバスチャンが不甲斐ないばかりに、辛い目に遭わせてしまいました) セバスチャン:(お二人さえ幸せなら、私はどうなろうと・・・) お嬢様:セバスチャン! セバスチャン:お、お嬢様! ゲス男:た・・・す・・・けて・・・ お嬢様:何してるの!?やめなさい! セバスチャン:お嬢様、来てはなりません! お嬢様:もう全部終わったの!もう良いんだよ、セバスチャン! セバスチャン:良くありません!この男は、これからも、お嬢様達を苦しめ続けるのです。生きている限り! お嬢様:セバスチャン!そんな男の為に罪を犯さないで! お嬢様:あなたは、そんな事ができる人じゃないでしょう? セバスチャン:・・・そんなことはありません。 お嬢様:ううん、私の知ってるセバスチャンなら・・・ セバスチャン:人を殺すのは、初めてではありません。 お嬢様:・・・え? セバスチャン:お嬢様に出会う前の話です。私は故意に人を殺したことがあります。 お嬢様:嘘・・・どうして? セバスチャン:理由になど、大した意味はありません。重要なのは、私が人を殺したという事実だけです。 お嬢様:セバスチャン・・・ セバスチャン:だから、これで良いのです!(締め上げる) ゲス男:ぐがっ!・・・あっ! お嬢様:セバスチャン!もうやめて! セバスチャン:私は、こういう人間なのです! お嬢様:お嬢様ビンタ!(セバスチャンを平手打ちする) セバスチャン:っ! お嬢様:過去がどうだったかなんて関係ないわ! セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:私と出会ってからのセバスチャンは、優しくて、厳しくて、私の事をずっと守ってくれた人。 セバスチャン:・・・ お嬢様:私をここまで育ててくれた人、私の・・・家族。 セバスチャン:か、ぞく・・・ お嬢様:お願いよ、私から家族を奪わないで・・・ セバスチャン:・・・・・ セバスチャン:『体に力が入らなくなった』 ゲス男:(解放され、激しく咳込む) お嬢様:もうすぐ、警察がここに来るわ。ちゃんと、罪を償って。 ゲス男:・・・結局こうなんのか。俺はいつもいつも、クソみたいな生き方しかできねえのか。 お嬢様:・・・ねえ、あなたは確かに最低で、酷いことをたくさんしてきたわ。でも、良い所だってあった。 ゲス男:あ? お嬢様:だから私は、あなたと結婚しようと思った。あなたの子供を産もうと思ったのよ。 ゲス男:・・・ お嬢様:今度こそ、本当に、変わって下さい。婚姻届を出した時、誓ったように。 ゲス男:・・・わかった。 セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:帰ろう、セバスチャン。(手を差し出す) セバスチャン:はい(手を取る) お嬢様:(笑う) セバスチャン:(笑う) ゲス男:(堕ちるところまで堕ちたんだ、後は登るしかない、かもな) セバスチャン:あ、そうだ。一つ忘れ物を思い出した。 ゲス男:あ?忘れ物? セバスチャン:歯を食いしばれ! ゲス男:え?まさか・・・ セバスチャン:セバスチャン・アッパー! ゲス男:ぐはあっ! 0:⒏「過去」 セバスチャン:私を雇いたい?アンタら、本気で言ってるのか? セバスチャン:私は、人殺しだよ? セバスチャン:・・・金持ちの考えることは分からんね。 セバスチャン:確かに刑期は終えたさ。でもそれで・・・私の罪が、帳消しになるわけじゃない。 0:数日後 セバスチャン:これが執事の服か。意外と窮屈(きゅうくつ)なものだな。 セバスチャン:屋敷の使用人など初めてだが、私に務まるだろうか。 お嬢様:あー、あー。 セバスチャン:え?子供?どこから入ってきたんだ? お嬢様:だあ、あうあ。 セバスチャン:そうか、君が奥様と旦那様の一人娘か。 お嬢様:うー。 セバスチャン:どうしたら良いかな。子供は苦手なんだけど・・・とりあえず抱いてみるか。 お嬢様:あひゃっ! セバスチャン:こら、暴れないで。落としちゃうだろ。 お嬢様:う・・・うっ・・・ セバスチャン:え?まさか・・・ お嬢様:うぇーーん!! セバスチャン:ああっ!泣いちゃった!ほら、よしよし。 お嬢様:うぇーーん!! セバスチャン:えーっとほら、べろべろばー。 お嬢様:うぎゃーー! セバスチャン:ますます酷くなった!?どうしよう、どうしよう! お嬢様:うぎゃーー! セバスチャン:誰か助けてくださーい! お嬢様:うああーーん! セバスチャン:『子供は苦手だ。人を殺した時を、思い出してしまうから』 セバスチャン:『私は、子供の目の前で、その親を殺してしまったのだ』 セバスチャン:『子供の泣き叫ぶ声は、今でも耳をついて離れない。毎晩、夢にもあの子が出てきて、その叫び声で目を覚ます』 セバスチャン:『刑期は終えた。でも、私の罪は、一生消えることはない。』 セバスチャン:『お嬢様を見ていると、いやでもあの子を思い出す。だから、できればお嬢様を遠ざけて欲しかった。それなのに』 0:お馬さんごっこをする二人 お嬢様:きゃっ!きゃっ! セバスチャン:ヒ、ヒヒーン。セバスチャンは馬なのですー。 お嬢様:ああー。(髪の毛を掴む) セバスチャン:お、お嬢様、髪の毛を引っ張らないで下さい! お嬢様:ああっ!(髪の毛を引き抜く) セバスチャン:痛い!今ブチブチって言いませんでした!?私の頭大丈夫ですか? お嬢様:きゃっきゃっ。 セバスチャン:『何故かは分からないが、事あるごとにお嬢様の世話をさせられた。人殺しの私に幼い我が子の世話をさせるとは』 お嬢様:あうあーあ? セバスチャン:これは飛行機です。 お嬢様:だあ? セバスチャン:こちらは新幹線ですね。 お嬢様:ああう? セバスチャン:これはクマさんです。 お嬢様:きゃっきゃっ。 セバスチャン:これが気に入りましたか? お嬢様:あうー!だうああ? セバスチャン:クマさんですよ。ク・マ・さ・ん。 お嬢様:あうわあ! セバスチャン:(少し笑いながら)お話できるようになるのは、もう少し先かな? セバスチャン:『無邪気なお嬢様を見ていると、いつしか心が和むようになった。しかし、それでも私は自分を許すことが出来なかった』 お嬢様:あい? セバスチャン:(ため息)私は、何をやっているんだろうな・・・ セバスチャン:お嬢様、やはり私は、ここにいるべきではないと思うのですよ。 セバスチャン:こんな穏やかな生活、私には・・・ お嬢様:うー・・・ セバスチャン:『何度も仕事を辞めたいと申し出た。しかし、聞き入れてはもらえなかった』 セバスチャン:『「あなたは、ここに居た方が良い」そう言われた』 セバスチャン:『まるで納得がいかなかった。だから私は、勝手に出て行くことにした』 0:深夜 セバスチャン:・・・この時間なら、みんな寝てるだろう。気付かれると面倒だ、さっさと行こう。 お嬢様:えあ! セバスチャン:え?・・・お嬢様!?どうしてここに? お嬢様:えあーあー セバスチャン:(しゃがみ込む)ベッドを抜け出してきたのかい?とんだお転婆お嬢様だ。 お嬢様:あーあう。 セバスチャン:ハイハイでここまで来たのか。大したもんだ。アンタきっと、強い子になるよ。 お嬢様:えあ!えあー・・・ セバスチャン:本当ならベッドまで連れ帰らないといけないんだろうけどね、誰かに見つかると面倒なんだ。 セバスチャン:悪いけど、このまま行くよ。きっと誰かが見つけてくれるさ。 お嬢様:えあうあー! セバスチャン:アンタのお世話をするのは意外と楽しかったよ。けどね、私はここにいちゃいけないんだ。 セバスチャン:じゃあ、元気でね。 お嬢様:えあっ! セバスチャン:おっと。 セバスチャン:『小さな手が私のズボンの裾を掴んでいた』 お嬢様:えあーあ セバスチャン:・・・離してくれるかな? お嬢様:えあーあーんー セバスチャン:もしかして、私を引き留めようとしてるのか? セバスチャン:まさかね、そんなわけないか。 お嬢様:えあー・・・ちゃん! セバスチャン:え? お嬢様:せ・・・ば・・・す・・・ちゃん! セバスチャン:っ!!! お嬢様:せ、ば、す、ちゃん! セバスチャン:お、お嬢様。私の名前を。 セバスチャン:まさか、初めての言葉が、私の名前? お嬢様:せば、す、ちゃん! セバスチャン:まだ、ご両親の事も呼べないのに? お嬢様:せばーす、ちゃん。 セバスチャン:うっ・・・うっ・・・ お嬢様:? セバスチャン:うおおおぉーーん!!(号泣) お嬢様:っ! セバスチャン:うおおおぉーーん!!ボジョヴザヴァーー!!! お嬢様:うっ、うっ・・・うぇーーん! セバスチャン:ヴオォォォォォーーン!!! お嬢様:うあぁぁぁぁぁん!!! セバスチャン:『私たち二人の泣き声に屋敷中の者が目を覚ました。そうして、私の夜逃げは失敗に終わった』 セバスチャン:『私は救われた気がした。ここに居て良いのだと、そう思えた』 セバスチャン:お嬢様、貴方が私に、生きる意味を与えて下さったのです。 0:⒐「未来」 ゲス男:多分、この辺りだよな。 ゲス男:あった、このマンションだ。 ゲス男:部屋番号は・・・ セバスチャン:おい! ゲス男:うわあっ! セバスチャン:ここで何してる? ゲス男:あ、アンタ・・・ セバスチャン:そんなに怖がるな、失礼な。 ゲス男:あ、アンタ、昔俺を殺そうとしたじゃねえか!怖がって当然だ! セバスチャン:はて、そんなことあったかな? ゲス男:忘れたのかよ! セバスチャン:そういえば出所したんだったな。で、何の用だ? ゲス男:別に・・・ セバスチャン:ん?何か落ちたぞ。 ゲス男:あっ! セバスチャン:何だこれは?腕時計? ゲス男:・・・ セバスチャン:お前のか? ゲス男:今日、成人式だろ? セバスチャン:成人祝いか。 ゲス男:・・・顔を見せるつもりは無い。ポストに入れておこうと思って。 セバスチャン:こんな安物を。しかも値札も貼ったままじゃないか。 セバスチャン:大体、贈り物なのにラッピングもなしか? ゲス男:うるせえ!もう良いよ、持って帰る! セバスチャン:おっと。 ゲス男:返せよ! セバスチャン:渡しておいてやる。 ゲス男:え? セバスチャン:受け取って貰える保証は無いぞ? ゲス男:・・・分かってるよ。 セバスチャン:言っておくが、お前をまだ二人に会わせる事はできん。 セバスチャン:死にものぐるいで努力しろ。犯した罪を償う為に。 セバスチャン:そうすればいつか、成長した我が子に会えるかもしれんぞ。 ゲス男:相変わらず、説教臭いやつだな。 セバスチャン:・・・と、言うわけで。 ゲス男:え?何が? セバスチャン:分かっているだろう?いつものやつだ。 ゲス男:あれー?俺、今日は何も悪いことしてないけど? セバスチャン:つべこべ言うな。ほら、仰向けに寝ろ。 ゲス男:んん?な、何で俺の足を持ってるの? セバスチャン:頭を抱えておけ。危ないからな。 ゲス男:あれ?久しぶりなのに、ハードなやつしようとしてない? セバスチャン:行くぞおお!! ゲス男:うわああっ! セバスチャン:(ゲス男をジャイアントスイングしながら)ふん!ふん!ふん! ゲス男:やめっ!とめっ!たすけて! セバスチャン:喋るな、舌を噛むぞ! ゲス男:死ぬ、死んじゃうってこれ! セバスチャン:セバスチャーン・ジャイアントー・スィーング!! ゲス男:やめろおぉぉぉ! セバスチャン:(ハンマー投げの人みたいに)ああああああああああ!!! ゲス男:いやあああああああああ・・・(星になる) セバスチャン:ふぅっ!成敗! お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:お嬢様。 お嬢様:いま、誰かと話してなかった? セバスチャン:ええ。古い知り合いに偶然会いまして。 お嬢様:そう?・・・え?もうこんな時間?急がないと遅れちゃう! セバスチャン:お嬢様のお支度が遅いからでしょう? セバスチャン:良い年をして、時間管理もできないのですか? お嬢様:うるさいわね!走るわよ! セバスチャン:ヒールで走ったら危ないですよ。 お嬢様:じゃあ車呼んで! セバスチャン:余計に時間がかかります。 お嬢様:あの子の晴れ姿見逃したら、アンタのせいだからね! セバスチャン:やれやれ、仕方ありませんな。 お嬢様:え?何? セバスチャン:失礼致します! お嬢様:うわあ! セバスチャン:しっかり掴まっていて下さい。 お嬢様:降ろして!良い年してお姫様抱っことか、恥ずかしいことこの上ない! セバスチャン:参ります! お嬢様:だから、おーろーせー! セバスチャン:セバスチャーン・ダッシュ! 0:終わり

0:⒈「小学校時代」 0:下校中 お嬢様:ねえー、返してよー、私のランドセルー ゲス男:誰が返すかよ!ほらパース!(ランドセルを投げる) お嬢様:やめてよ! ゲス男:ほらほらどうした!取り返してみろよ! お嬢様:(走り回りながら)返して!返して! ゲス男:やーだよ。こっこまでおいでー! お嬢様:う、うっ(泣き崩れる) ゲス男:あっ!泣いちゃったー!だっせー(大笑いする) お嬢様:(泣きながら)セバスチャーン! ゲス男:え?セバスチャン? セバスチャン:(遠くから走ってくる)うおぉぉぉぉぉ! ゲス男:なんだ? セバスチャン:(段々近づきながら)うぉぉぉぉぉ! ゲス男:誰かはしってくる! セバスチャン:とうっ!(ジャンプ) ゲス男:とんだ! セバスチャン:セバスチャン・キィィィック!!(一人蹴り飛ばす) ゲス男:ああっ!ゲンちゃんが! セバスチャン:セバスチャン・ソバット! ゲス男:はじめくん! セバスチャン:セバスチャン・ラリアット! ゲス男:ともやん! お嬢様:うわあーん!セバスチャーン! ゲス男:お、お前、こいつの使用人だな!大人が子供にぼーりょく振るって良いのか!?せんせーに言いつけてやる! セバスチャン:黙れっ!! ゲス男:ひぃっ! セバスチャン:お嬢様を泣かせた罪、その命で償ってもらおう! ゲス男:い、いのち!?うわあああ!ころされるぅぅ! セバスチャン:セバスチャーン・ジャーマンスープレックス!! ゲス男:ぎゃあああ!! セバスチャン:成敗! お嬢様:セバスチャン・・・ セバスチャン:お嬢様!お怪我はありませんか? お嬢様:うん・・・ セバスチャン:ほら、ランドセルを取り返しましたよ。 お嬢様:ありがとう、セバスチャン。 セバスチャン:礼には及びません。これはこのセバスチャンの務めでございます! お嬢様:・・・みんな、しんじゃったの? セバスチャン:ハッハッハッ!ご心配には及びません!子供相手ですから、ちゃあんと手加減しております! セバスチャン:派手にやられた様に見えますが、実はかすり傷一つ負わせてはおりません! お嬢様:・・・ホント? セバスチャン:本当ですとも!ハーハッハッハッ! セバスチャン:・・・多分。 お嬢様:『両親が事故で死んだのは、私が2歳の頃だ。だから私は、親の顔をほとんど覚えていない』 お嬢様:『父は有数の資産家で、私には多額の遺産が残された。』 お嬢様:『後見人は叔父だったが、彼とその妻は海外を拠点としていた為、私の側にはいない事が多かった』 お嬢様:『だから、実質私を育ててくれたのはたくさんの使用人たち・・・特に親代わりと言って良い存在は、家令(かれい)のセバスチャンだった』 0:「愛しのセバスチャン」 0:⒉「高校生時代」 0:校舎裏 ゲス男:なあー、良いじゃん。俺と付き合ってくれよぉ。 お嬢様:アンタさあ、昔私の事いじめてたよね?それなのに、良くそんな事が言えるわね。 ゲス男:そんなのガキの頃の話だろ?お前のことが好きなんだよう!頼むよ! お嬢様:嘘ばっかり!アンタ学校中の女子に声かけてるじゃない! お嬢様:アンタに泣かされた女の子の話、いーっぱい知ってるんだからね! ゲス男:ただの噂だって。なあ・・・(お嬢様に近づく) お嬢様:ちょっと!こっち来ないでよ!私急いでるの! ゲス男:そんなに嫌うなよ!(抱きつく) お嬢様:キャッ!は、離してよ! ゲス男:良いじゃん良いじゃん!ほら、チューしようぜ! お嬢様:嫌っ! ゲス男:ほらあ、んー・・・(無理矢理キスしようとする) お嬢様:助けて、セバスチャン! ゲス男:へ?まさか・・・ セバスチャン:ぬおぉぉぉぉぉ!! ゲス男:な、何だ!?こっちに向かって、人が落ちてくる? セバスチャン:セバスチャーーーン!フライィィィング!ヘッドバァァァッド!! ゲス男:あぎゃあっ!! セバスチャン:お嬢様、大丈夫ですか? お嬢様:う、うん。ありがと、セバスチャン。 セバスチャン:・・・ お嬢様:どうしたの? セバスチャン:今は予備校に行っている時間のはずですが、何故まだ学校に? お嬢様:それは・・・文化祭の準備!思ったより時間かかっちゃってさあ。 セバスチャン:そうでしたか。 お嬢様:う、うん、そうなの! セバスチャン:それならば、ご学友(ごがくゆう)に事情を話して、途中で抜ければ宜しかったのでは? お嬢様:そんなの、みんなに悪いじゃん! セバスチャン:第一、準備はほとんど終わったと、昨日仰って(おっしゃって)いたではないですか。 お嬢様:い、色々手直ししなきゃいけなかったんだもん! セバスチャン:それに・・・先ほどお嬢様の教室を通りかかりましたが、誰もおらず電気も消えておりました。 お嬢様:うっ・・・だから、さっき終わったんだって!それで、みんな帰っちゃったの! セバスチャン:お嬢様、嘘は良くありませんね。 お嬢様:・・・ セバスチャン:(ため息)来年は受験も控えているのですよ?もっと気を引き締めて頂かねば困ります! お嬢様:勉強だってちゃんとしてるし!成績だっていつも上位じゃん!やることやってるんだから、そんなガミガミ言わないでよ! セバスチャン:その驕り(おごり)が、このような男に付け入る隙を与えてしまったのではないですか? ゲス男:う、うぅ・・・ セバスチャン:まだ生きてたか。セバスチャン・ストンピング!(踏みつけ) ゲス男:ぐえっ! お嬢様:別に、付け入られてなんかないもん。 セバスチャン:私も、いつまでも守って差し上げられるわけでは無いのですよ? お嬢様:誰も守って欲しいなんて頼んでないじゃん! セバスチャン:困ったらすぐ私に助けを求めるのに、ですか? お嬢様:・・・ セバスチャン:さあ、参りますよ。 お嬢様:どこに? セバスチャン:予備校に決まっているでしょう? お嬢様:いやいや、今から行っても間に合わないって。 セバスチャン:遅刻は避けられませんが、いくらか授業は受けられるでしょう。 お嬢様:いや、その・・・ セバスチャン:お嬢様? お嬢様:今日は・・・友達と買い物行くって約束しちゃったの! セバスチャン:・・・ お嬢様:勉強は明日からちゃんとやるから!ううん、今日帰ったらすぐやるから!だから今回だけ、お願い! セバスチャン:つまり、今日は最初から予備校をサボるつもりだったわけですか。 お嬢様:え?いや、そういうわけじゃ・・・ セバスチャン:予備校の授業料、どこから支払われているか、当然ご存知ですね?大切なご両親のご遺産からです。 お嬢様:(小声で)予備校のお金なんて、大した額じゃないでしょ。 セバスチャン:お嬢様!何ということを仰いますか! お嬢様:あ、やべ。 セバスチャン:どうやら、お灸をすえる必要がありそうですね(スマホを取り出す) お嬢様:何?スマホを出して、どうするのよ? セバスチャン:(スマホを操作して)これでよし。 セバスチャン:いま、お嬢様のスマホの機能に制限をかけました。 お嬢様:えっ!? セバスチャン:お嬢様のスマホは、私の端末から機能制限をかけられるように特別に設定して頂いております。 セバスチャン:そのスマホは、もう私への電話とメール以外は使用できません。 お嬢様:嘘っ!?(慌ててスマホを取り出し操作する)ホントだ、アプリが使えなくなってる・・・ひどい! セバスチャン:昨日も遅くまでお友達と電話されていましたしね。このぐらいの措置は当然です。 お嬢様:こんなの子供スマホじゃん!私高校生だよ!? セバスチャン:いくら歳を重ねても、心が未熟ならば子供と同じです。 お嬢様:ふざけんなよ! セバスチャン:おやおや、どこでそんな言葉遣いを覚えられたのやら。嘆かわしゅうございます。 セバスチャン:取り上げられないだけ、ありがたく思いなさい! お嬢様:何よ、偉そうに・・・ お嬢様:本当の家族でもないくせに! セバスチャン:・・・ お嬢様:アンタはうちの家令なの!使用人なの! お嬢様:アンタが私を世話するのは、それが仕事だからよ!それで給料をもらうためよ! お嬢様:親みたいに干渉してくるの辞めてよ!マジでウザイ! セバスチャン:・・・気が済みましたか?では予備校へ参りますよ。 お嬢様:いや!私行かないもん! セバスチャン:失礼致します(腕を掴む) お嬢様:痛っ!離してよ! セバスチャン:離しません。学生の本文は勉強です。 お嬢様:ちょっと、引っ張らないでよ! セバスチャン:先ほどお嬢様が申された通り、これは私の職務にございます。 お嬢様:(引っ張られながら)離して!はーなーせー! セバスチャン:・・・お嬢様を立派に育て上げることが、私の責務なのです。 0:⒊「大学生時代」 0:お嬢様のマンション お嬢様:ただいま。 ゲス男:おう。(缶ビールを飲む) お嬢様:こんな時間から飲んで・・・バイトはどうしたの? ゲス男:辞めた。 お嬢様:え? ゲス男:店長が気に食わない奴だったから、殴ったらクビになった。 お嬢様:嘘でしょ・・・始めてまだ三日じゃない。 ゲス男:しょうがねえじゃん。それよりも、ん。(手を出す) お嬢様:その手は何よ? ゲス男:金貸してくれよ、かーね。 お嬢様:・・・ ゲス男:勝ったら返すからさ。 お嬢様:またパチンコ? ゲス男:当たり前だろ。ほら早く。 お嬢様:・・・私が気付いてないとでも思ってるの? ゲス男:あ? お嬢様:この前、私の財布から勝手に三万円、取ったでしょ? ゲス男:(舌打ち) お嬢様:それ泥棒だよ?分かってる? ゲス男:はあっ!?何が泥棒だよ!ちょっと借りただけじゃねえか! お嬢様:ふざけないでよ!返す気も無いくせに! ゲス男:うるせえ!(平手打ち) お嬢様:痛っ! ゲス男:三万ぐらいでガタガタ言ってんじゃねえ! ゲス男:お前みたいなダセェ女と我慢して付き合ってやってるんだからなあ、ありがたく思え! お嬢様:・・・別れてやる。 ゲス男:あ? お嬢様:別れてやるって言ったのよ! ゲス男:何だと!(掴みかかる) お嬢様:嫌っ!離して! ゲス男:セバスチャン、だっけか、お前の家の使用人。昔みたいに呼んでみろよ!助けに来るかもなあ! お嬢様:ぐっ・・・うぅっ・・・ ゲス男:ま、来るわきゃねえけどなあ! セバスチャン:セバスチャーン・・・ ゲス男:えっ? セバスチャン:テンカオ!(立ち膝蹴り) ゲス男:ぐぇっ!! お嬢様:セ、セバスチャン? セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:どうしてここに? セバスチャン:お嬢様が心配で、様子を見に来たのです。この様なことになっているとは・・・ ゲス男:うぅ・・・ セバスチャン:まさか、この男と交際されているとは、思いもよりませんでした。 お嬢様:私が誰と付き合おうが、勝手でしょ・・・ セバスチャン:だから、家を出るのは反対だったのです。 お嬢様:・・・ セバスチャン:この汚らしい(きたならしい)部屋はなんですか?とてもご婦人のお部屋とは思えませんね。 お嬢様:それは、こいつが汚すから。 ゲス男:こ、ここは半分俺の部屋だ!どう使おうが勝手だろ! お嬢様:何言ってんの!家賃払ってるのは私なのよ! ゲス男:うるせえ! セバスチャン:セバスチャン・ニードロップ! ゲス男:ぎゃはっ! セバスチャン:やはりお嬢様に一人暮らしは、まだ無理かと存じます。 セバスチャン:ここは引き払って、お屋敷に帰りましょう。多少遠くはなりますが、大学にも充分通える距離です。 お嬢様:何言ってんの?帰国した叔父さん夫婦がずっと住んでるんでしょ? セバスチャン:部屋はいくつも空いておりますし、事情を離せば叔父様もきっと受け入れて下さいます。 お嬢様:・・・嫌よ。 セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:私ちゃんとしてるわ!学費は遺産から出してもらったけど、バイトもして、ここの家賃も自分で払ってる! お嬢様:家賃だけじゃない!光熱費も、携帯代だって! お嬢様:もちろん勉強も頑張ってる!だからもう放っておいて! ゲス男:そうだそうだ!帰れ帰れ! セバスチャン:セバスチャン・エルボー! ゲス男:がはあっ! セバスチャン:この様な害虫が住み着いているようでは、信用はできませんな。 ゲス男:誰が害虫だコラァ! セバスチャン:セバスチャン・フライング・ボディープレス! ゲス男:げふぅ! お嬢様:こいつとは別れるから良いでしょ! セバスチャン:しかし・・・ お嬢様:私は、もう子供じゃない! セバスチャン:・・・ お嬢様:帰って、お願いだから・・・ 0:⒋「結婚」 0:市役所前 ゲス男:ふぅっ。 お嬢様:・・・ ゲス男:出しちゃったな・・・婚姻届。 お嬢様:出しちゃったね・・・婚姻届。 ゲス男:これで俺たち、夫婦ってことだよな? お嬢様:・・・だと思う。 ゲス男:なんだよ、「だと思う」って。 お嬢様:だって!何だか実感湧かないんだもん。 ゲス男:実を言うと、俺も。 お嬢様:・・・ ゲス男:(吹き出す)やべー!!俺たち、結婚したんだぜ!信じられるか!? お嬢様:(吹き出す)信じられない!まさかアンタと結婚するなんて! ゲス男:ひでえ! お嬢様:(幸せそうに笑う) ゲス男:・・・結婚式、できなくてゴメンな。俺が甲斐性無いばっかりに。 お嬢様:良いよ。二人で決めた事でしょ? ゲス男:そうだけどよ!やっぱり、祝ってもらいたかっただろ?ほら、あのセバスチャンとかさ。 お嬢様:ああ・・・実はね、実家には知らせて無いの、結婚のこと。 ゲス男:え?なんで? お嬢様:だって、反対されるに決まってるもん。「お嬢様に結婚など、まだ早過ぎます!」とか言ってさ。 ゲス男:しかも、相手は俺だしな。 お嬢様:うん、正直それが一番言いづらい。 ゲス男:だからひでぇって! 0:しばし二人で笑い合う ゲス男:なあ。俺、今までお前に酷いことばっかしてきたけど・・・俺、変わるから!絶対、お前のこと、幸せにするから! お嬢様:うん。 ゲス男:じゃ、帰るか。 お嬢様:何か食べに行こうよ。せめて食事ぐらい豪華にさ! ゲス男:そうだな!・・・って、あれ? お嬢様:え?・・・っ! セバスチャン:・・・ ゲス男:お前・・・ お嬢様:セバスチャン・・・ セバスチャン:セバスチャーン・・・ ゲス男:ひぃっ! お嬢様:セバスチャン、待って! セバスチャン:パァーンチ! ゲス男:うわあああ!! セバスチャン:寸止め! お嬢様:えっ? ゲス男:止まっ、た? セバスチャン:・・・ お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:良いか、もしお嬢様を悲しませる様なことをしたら、ただでは済まさんからな。 セバスチャン:生きてるのを後悔するぐらいの苦痛を味合わせた後、地獄に叩き落としてやる。・・・わかったな! ゲス男:は、はい! 0:セバスチャン、立ち去ろうとする。 お嬢様:セバスチャン、待って! セバスチャン:・・・ お嬢様:ゴメンなさい。勝手に結婚してしまって。 セバスチャン:・・・ お嬢様:やっぱり、怒ってる? セバスチャン:当たり前です!何も言わずに籍を入れてしまうなど!結婚がどれほどの大事か分かっておられるのですか!? お嬢様:・・・ セバスチャン:しかもこの男と! ゲス男:うっ・・・ セバスチャン:全く・・・勝手が過ぎます! お嬢様:ゴメンなさい。 セバスチャン:これで!・・・これで、幸せにならなかったら、承知致しませんよ。 お嬢様:セバスチャン・・・ありがとう。 0:⒌「出産」 0:病院 病室の前 セバスチャン:(ソワソワしている様子) セバスチャン:(他の見舞客に)ああ、すいません。もうすぐ産まれるので、落ち着かなくて。 セバスチャン:ち、違います!孫じゃありません!そんな歳に見えますか!?失敬な! セバスチャン:・・・申し訳ない、大きな声を出して。 セバスチャン:大切な方の、初めてのお子なのです。それで・・・ セバスチャン:っ!いま、赤ん坊の泣き声が・・・聞きました?聞きましたよね!? セバスチャン:すいません、行って参ります!話を聞いてくれてありがとう! 0:病室の中 お嬢様:・・・ セバスチャン:(病室のドアを開け放ち)お嬢様! お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:おお・・・おおおおお! お嬢様:(少し笑って)無事、産まれたわ。 セバスチャン:お嬢様!・・・おめでとうございます! お嬢様:ありがとう。 セバスチャン:・・・と、時に、父親の姿が見えぬようですが? お嬢様:うん。・・・連絡が付かなくて。 セバスチャン:この様な一大事に、一体どこに行っているのだ!私、探して参ります。 お嬢様:セバスチャン!それは良いから。ちょっとこっちに来て。 セバスチャン:は、はあ。 お嬢様:抱いてみてくれない? セバスチャン:はあっ!?私が、でございますかあ!? お嬢様:ええ。すいません看護師さん、この人に抱かせてあげて下さい。 セバスチャン:し、しかし、もし落としてしまったら・・・ お嬢様:大丈夫だから。さあ? セバスチャン:そ、それでは失礼致します。しっかりお掴まり下さいませ。 お嬢様:言っても分かんないって。 セバスチャン:(赤ちゃんを抱く)おお。 お嬢様:どう? セバスチャン:・・・呼吸しておられます。 お嬢様:そりゃ、生きてるからね。 セバスチャン:・・・お嬢様によく似ていらっしゃいますな。 お嬢様:そう?どちらかと言えば父親似だと思ったけど? セバスチャン:いいえ!断じてそんなことはございません!お嬢様の小さい頃に瓜二つにございます! セバスチャン:きっとお嬢様の様な麗しい(うるわしい)・・・ お嬢様:この子、男の子よ? セバスチャン:(咳払い)麗しさの中にも凛々しさ(りりしさ)を兼ね備えた、立派な紳士になられることでしょう! お嬢様:(笑いながら)そうね。 セバスチャン:・・・ お嬢様:どうしたの? セバスチャン:ここに、旦那様と奥様がおられたら、どれほど喜ばれたことか。 お嬢様:・・・ セバスチャン:・・・うっ・・・うっ。 お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:うおおおぉーーん!!(号泣) お嬢様:ええっ!? セバスチャン:うおぉーん!うおぉーん!ぼじょうざゔぁー!!(お嬢様、と言ってます) お嬢様:何?ひょっとして、それは泣いてるの? セバスチャン:ゼバズヂャンわあー!ゼバズヂャンわあー!うれじゅうございまずぅぅ!! お嬢様:分かった!分かったから!落ち着いて!ほら、看護師さんもキョトンとしちゃってるから。 セバスチャン:ヴオォォォォォーーン!!! お嬢様:やめい!! 0:10分ほどして セバスチャン:す、すいません、お嬢様。もう落ち着きました。 お嬢様:そ、そう。それは良かったわ。 セバスチャン:お見苦しい所をお見せ致しました。 セバスチャン:私、昔から泣くとあんな感じになってしまいまして・・・こうなるから嫌だったのでございます。 お嬢様:(笑いながら)そうだったのね、知らなかった。セバスチャンが泣いてる所なんて初めて見たもん。 セバスチャン:家令として、主(あるじ)の前で涙を見せるなどあってはならぬことです!・・・いま、見せてしまいましたが。 お嬢様:長い間一緒に暮らしてきたのに、まだ知らないことがあるんだね。 セバスチャン:そうですな・・・ セバスチャン:(赤ちゃんに対して)私はセバスチャンと申します。これからどうぞ宜しくお願い致します、坊っちゃま? ゲス男:(かなり酔っ払った様子)おー、産まれたかあ。 セバスチャン:っ! お嬢様:あなた・・・ ゲス男:あ、アンタも来てたの?(赤ちゃんを見て)ははっ、しわくちゃで、ホント猿みたいだな。 お嬢様:・・・ ゲス男:ハーイ、パパでちゅよー。な、俺にも抱かせてくれよ。 セバスチャン:看護師さん、坊っちゃまをお願いできますかな(看護師に赤ちゃんを渡す) ゲス男:? セバスチャン:セバスチャン・コークスクリュー・パァーンチ!!! ゲス男:ぐはあっ!!! 0:⒍「離婚」 0:マンション ゲス男:(酔っ払った様子)ただいまー、っと。 お嬢様:・・・ ゲス男:まだ起きてたのか。(椅子に座って)水ー。 お嬢様:自分でやって。 ゲス男:(舌打ち)ご機嫌斜めですねー。もう良いや、寝る。 お嬢様:待って、話があるの。 ゲス男:あん? お嬢様:最近毎晩遅いよね。どうして? ゲス男:仕事だよ、お・し・ご・と! お嬢様:毎晩飲み歩くのが? ゲス男:そうだよ。接待とか上司の付き合いとか。これも大事なお仕事なの。 ゲス男:ま、女には分かんねえか。 お嬢様:・・・休みの日もだよね。滅多に家に居ないじゃない。 ゲス男:うるせえなあ、色々あんの。あ、明日も上司と飲みだから、三万くれ。 お嬢様:また? ゲス男:しょうがねえだろ。 お嬢様:家事を手伝え、とは言わないけど、育児の方は、もう少し協力してくれても良いんじゃない? ゲス男:何だそんな話か、くだらねえ。家事も育児も、お前の仕事だろ?働いて無いんだから当然だよな。 お嬢様:アンタねえ! ゲス男:デカい声出すなよ。ガキが起きちまうぞ。 お嬢様:ガキって言わないでよ!アンタの息子なのよ! ゲス男:うるせえな!お前らを食わせてやってるのは一体誰だと思ってんだ!俺が毎日働いてやってるおかげだろうが! お嬢様:その働いて稼いだお金は、一体何に使ってるの? ゲス男:な、何言ってんだ。家族の生活費に・・・ お嬢様:飲み代にギャンブル代に・・・ ゲス男:お、おい! お嬢様:後は・・・女の子と遊ぶお金? ゲス男:・・・は?お前バカか?そんなわけ無いだろ! ゲス男:第一、金はお前が管理してるじゃねえか!お前からもらってる金だけじゃ、そんな余裕無いこと分かるだろ? お嬢様:そうね。私が渡してるお金だけだったらね。 ゲス男:え? お嬢様:(通帳をテーブルに置く)この通帳は何? ゲス男:あっ!(慌てて通帳を掴む)お前、これ、何で!? お嬢様:ずっと言ってたよね。「会社の業績厳しいから給料上がらない」とか「ボーナスも出ない」とかさ。 ゲス男:・・・ お嬢様:給料の入る口座、会社に頼んで二つに分けてたんでしょ?ボーナスに至っては全額そっちに入るようにさ。 ゲス男:何で、それを。 お嬢様:それでそのお金を、浮気相手に貢いでたわけだ。 ゲス男:ち、違う。 お嬢様:じゃあこの人は誰よ!(写真をテーブルに叩きつける) ゲス男:何だ、この写真! お嬢様:ここホテル街だよね?腕まで組んじゃって、随分仲良さそうだね。 ゲス男:こ、これは・・・ お嬢様:あとこの子も(写真を出す) ゲス男:っ! お嬢様:この子も(写真を出す) ゲス男:うあ・・・ お嬢様:みんな違う女の子だね。一体何人と付き合ってるのかしら? ゲス男:・・・ お嬢様:何とか言いなさいよ。謝るフリでもしてみたら?許す気ないけど。 ゲス男:この写真、探偵でも雇ったのか?手の込んだ真似しやがって。 お嬢様:あら、開き直り? ゲス男:俺はなあ、いつも仕事でストレス溜まってんだよ!ちょっと女遊びするぐらい良いだろ! お嬢様:何かあれば仕事仕事って・・・仕事さえしてれば、何しても許されると思ってんの!? お嬢様:アンタ結婚する時言ったわよね、「変わる」って。一体どこが変わったって言うの? ゲス男:・・・ お嬢様:・・・もう離婚ね。 ゲス男:好きにしろよ。あ、ガキは連れていけよ。 お嬢様:っ!アンタって人は・・・ ゲス男:俺に育てられると思うか? お嬢様:もちろん、あの子も連れて行きます。それから・・・そのうち弁護士から連絡が行くと思うから、そのつもりで。 ゲス男:あ?弁護士? お嬢様:離婚調停に入るんだから当然でしょ? ゲス男:おい待てよ!俺は離婚してやるって言ってんだ!何も争う必要無いじゃねえか! お嬢様:それだけじゃダメでしょ。慰謝料の事とかちゃんと決めないと。 ゲス男:はあ!?何が慰謝料だ! お嬢様:浮気したんだから当然でしょ。もちろん、あの子の養育費も払ってもらいます! ゲス男:ふざけんな!何でそんなもん払わなくちゃいけねえんだ! ゲス男:第一、お前には親の遺産があるじゃねえか! お嬢様:遺産は大半を叔父が管理してるし、私の自由にできるわけじゃないわ。 お嬢様:何より・・・どうしてもアンタを許せないのよ! ゲス男:お前!(お嬢様の髪の毛を掴む) お嬢様:痛い!離して! ゲス男:この!(手を振り上げる) お嬢様:最後は結局暴力?情けない男ね! ゲス男:てめえ! お嬢様:良いわよ、殴りなさいよ。私はそんなものに屈しないから! ゲス男:良い度胸だ。じゃあお望み通りにしてやらあ! お嬢様:っ! セバスチャン:セバスチャン・ネリチャギ!(かかと落とし) ゲス男:ぐあっ! お嬢様:セバスチャン・・・ ゲス男:(よろめきながら)またテメェか・・・いつもいつも、良いタイミングで現れるよなあ! ゲス男:お前は良いよな!こうして守ってくれる奴がいるんだからよ! お嬢様:私は・・・ ゲス男:さっさと出て行け!ここはもう、お前の家じゃねえんだ! お嬢様:・・・ セバスチャン:参りましょう、お嬢様。 お嬢様:ええ・・・荷物はもうまとめてあるわ。 ゲス男:ケッ!用意の良いこったな! セバスチャン:では、私は坊っちゃまを・・・ お嬢様:結構よ! セバスチャン:お嬢様? お嬢様:私が連れてきます。 セバスチャン:は、はい。 0:マンション前 0:お嬢様は息子を抱き抱えている。 セバスチャン:坊っちゃまは大丈夫ですか? お嬢様:ええ。よく眠っているわ。 セバスチャン:そうですか。間もなく、屋敷より迎えの車が参ります。 お嬢様:その必要は無いわ。タクシーを呼んだから。 セバスチャン:え? セバスチャン:まさかお嬢様、屋敷に戻られないおつもりですか? お嬢様:ええ。しばらくは知り合いの所に世話になるから。 セバスチャン:何故です? お嬢様:もう実家の世話になるつもりはないからよ。 セバスチャン:しかし、今回ばかりは仕方ないではありませんか。叔父上も喜んでお嬢様を迎え入れると仰っています。 お嬢様:もう、叔父さんにも話を通したのね。 セバスチャン:幼子(おさなご)を抱えて、一人でどうやって生きていくと言うのですか!? お嬢様:もう仕事も見つけてあるし、子供の事もちゃんと考えてる。 セバスチャン:しかし! お嬢様:・・・少し前に、叔父さんから連絡があったの。 セバスチャン:え? お嬢様:この子を、養子にしたいって。知ってたんでしょ? セバスチャン:・・・ お嬢様:叔父さんの会社、色々揉めてるらしいわね。特に古参の社員の反発が強いって聞いたわ。 セバスチャン:それは・・・ お嬢様:「私の父の会社を、叔父さんが乗っ取った」そう考える人が結構いるみたいね。 お嬢様:中には、私が実家を出たのは、叔父さんが追い出したからって言う人までいるそうよ。 お嬢様:だから、そう言う連中を黙らせるために、お父さんの孫であるこの子を、後継者にしようとしてるのよね? お嬢様:セバスチャンも、叔父さんに頼まれたんでしょ? セバスチャン:・・・違うと言えば、嘘になります。 お嬢様:私はね、この子をそういうことに巻き込みたくないの。 お嬢様:この子には普通の人生を歩んで欲しいから。 セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:セバスチャン、あなたも、もう良いのよ? セバスチャン:は? お嬢様:あなたの今の雇い主は叔父さんよ。だからもう、私のことは放っておいて良いの。 セバスチャン:お嬢様!私はその様な・・・ お嬢様:私の両親の恩に報いたかったんでしょ?それはもう、充分果たしてもらったわ。 セバスチャン:しかし! 0:タクシーが来る お嬢様:今までありがとう・・・さようなら。 セバスチャン:『そう言ってタクシーに乗り込むお嬢様を、私はただ立ち尽くしたまま、見送る事しか出来なかった』 0:⒎「誘拐」 0:マンションの一室 お嬢様:(洗い物しながら)いつまでテレビ見てるの?宿題まだでしょ?さっさと終わらせちゃいなさい。 0:チャイムが鳴る お嬢様:こんな時間に誰だろ?あ、行かなくて良いから。ママが出るから。 お嬢様:はーい、どちら様・・・って。 ゲス男:よう・・・久しぶり。 お嬢様:アンタ・・・ ゲス男:チェーン、外してくれよ。 お嬢様:何の用? ゲス男:あいつ、居るんだろ?ちょっと顔が見たくなってさ。 お嬢様:・・・帰って。 ゲス男:そんなこと言うなって。息子に会わせてくれよ。 お嬢様:今更何よ。父親らしいことなんて、何一つしてこなかったクセに。 ゲス男:・・・チェーン、外してくれよ。 お嬢様:だから帰ってよ! ゲス男:(ため息)出来るだけ手荒(てあら)にはしたくないんだけどな。 お嬢様:え?何言って・・・誰?その人たち・・ ゲス男:おい、チェーンを切れ。 お嬢様:っ! ゲス男:お前が悪いんだ。これは全部、お前のせいなんだ。 お嬢様:入ってこないで!(腕を捕まれ)離してよ! ゲス男:ガキを忘れんな。中にいるはずだ。 お嬢様:止めて!あの子には手を出さないで! ゲス男:そういうわけにはいかねえな!大事な人質なんだからよ。 お嬢様:人質? ゲス男:お、いたか。久しぶりだなあ、パパだぞぉ。(子供を抱き抱え)でっかくなったなあ。 お嬢様:いや・・・ ゲス男:これからパパと楽しいことしようぜ。それじゃあ、行こうか。 お嬢様:誰か、誰か助けて! ゲス男:騒ぐな。おい、黙らせろ。 お嬢様:いやあああ! 0:数時間後 0:河川敷 ゲス男:久しぶりだな。 セバスチャン:まさか、お前が私に連絡してくるとはな。何の用だ? セバスチャン:また私に痛めつけられたいのか? ゲス男:会ってすぐ言うことがそれか。ま、良いけどよ。 ゲス男:実はさ、アンタに見てもらいたいものがあるんだ。 セバスチャン:なに? ゲス男:この動画だよ。 セバスチャン:っ!お嬢様!坊っちゃま! セバスチャン:『奴が持つスマホに写っていたのは、縛り上げられた二人の姿だった』 ゲス男:慌てんな。いま再生するからよ。 お嬢様:『ここはどこ?家に帰らせてよ!』 ゲス男:『わめくな。大人しくしてりゃ、無傷で帰れんだからよ』 お嬢様:『この子に何かしたら、ただじゃおかないからね!』 ゲス男:『この状況でよくそんな口がきけるな?昔からなあ、そういうところがムカつくんだよ!(髪の毛を引っ張る)』 お嬢様:『痛いっ!』 ゲス男:『俺を怒らせるな、命が惜しかったらなあ』 0:動画が停止する セバスチャン:お嬢様!坊っちゃま! ゲス男:と、言うわけだ。 セバスチャン:貴様ぁ! セバスチャン:セバスチャーン・・・ ゲス男:おっと!二人がどうなっても良いのかよ? セバスチャン:くっ! ゲス男:二人を返して欲しかったら・・・分かってるな? セバスチャン:金か? ゲス男:ああ、10億な。 セバスチャン:そんな大金、すぐには・・・ ゲス男:何とかしろよ!お前のご主人様に取ったら端金(はしたがね)だろ?姪っ子の為なら払えるよなあ? セバスチャン:貴様・・・仮にもかつての妻と自分の息子だぞ? セバスチャン:それを誘拐して身代金を得ようとは・・・ ゲス男:(笑いながら)だって俺ゲスだもんよ。 ゲス男:第一、アンタ人のこと言えんのかよ。 セバスチャン:何のことだ? ゲス男:俺さあ、色々あって裏社会の人間と仲良くなってな、アンタの過去も知ったんだよ。 セバスチャン:・・・ ゲス男:ま、そんなこと、今はどうでも良いか。 ゲス男:まず金を受け取ったらガキの方を解放する。 ゲス男:その後、高飛びするからよ。俺の身の安全が確認できたら、母親の方も居場所を教えてやる。 セバスチャン:・・・わかった。 ゲス男:言っとくけど、警察に通報なんかすんなよ。その瞬間、ゲームオーバーだからな。 セバスチャン:・・・後悔するぞ。 ゲス男:ああ?何言ってやがる。 ゲス男:俺の人生、ずっと後悔しっぱなしだ、バーカ。 セバスチャン:・・・ ゲス男:じゃあな、大人しく次の指示を待ってな。 0:ゲス男、去る。 0:セバスチャン、自身のスマホを取り出す。 セバスチャン:もしもし、旦那様。いま宜しいでしょうか? セバスチャン:不躾(ぶしつけ)で恐縮なのですが・・・お暇を頂戴したく存じます。 セバスチャン:仕事については、他の者でも分かるようにしております。少しの間はご不便をお掛けすると思いますが・・・ セバスチャン:理由は・・・申せません。少なくとも今は。 セバスチャン:お世話になりました。(電話を切る) セバスチャン:・・・ セバスチャン:これしか、道はない。 セバスチャン:(再び電話をかける)もしもし、私です。ご無沙汰しております。 セバスチャン:実は・・・あなた方のお力をお借りしたいのです。 0:数時間後、廃倉庫の一角 お嬢様:・・・ ゲス男:ただいま、っと。 お嬢様:どこに行ってたの? ゲス男:お前の実家にな、身代金の要求ってやつだ。 お嬢様:っ! ゲス男:思ったより簡単だったぜ。俺って誘拐犯の才能あるんかなあ? お嬢様:馬鹿じゃないの?自分の正体晒す誘拐犯がどこにいんのよ!捕まるのがオチよ! ゲス男:あ、そっかあ。じゃあさ・・・ ゲス男:お前達の口、封じなきゃいけないかなあ? お嬢様:っ! ゲス男:(笑いながら)冗談だよ、冗談。そこまではしねえって。多分な。 お嬢様:・・・アンタ、昔から最悪なやつだったけど、本当に人間のクズね! お嬢様:まさか、ここまでするなんて。 ゲス男:だから言っただろ、全部お前のせいだって。 ゲス男:金には困ってないくせに、慰謝料なんざ要求しやがって。お陰で俺はな、借金までする羽目になったんだぜ。 お嬢様:何言ってんのよ!慰謝料なんて、半分も払ってないじゃない! ゲス男:うるせえ!! お嬢様:っ! ゲス男:職場にも借金取りが来るようになって、会社にも居られなくなって・・・ ゲス男:金返す当てもねえから、金貸しの仕事手伝わされるようになって。 ゲス男:どんどんどんどん、やばい仕事やらされて、気が付いたら立派な犯罪者だ。 お嬢様:そんなの全部自業自得じゃない。 ゲス男:違う!違う違う違う違う違う違う違う!! ゲス男:俺は悪くねえ!これは全部、お前のせいだ!! お嬢様:勝手なことを・・・(子供が泣き出す) ゲス男:何だあ、ガキが泣いてんのかあ? お嬢様:(子供に)ゴメンね、大丈夫だからね。ママがついてるからね。 ゲス男:うるせえなあ、さっさと泣き止ませろ! お嬢様:ゴメンね、ゴメンね。お願いだからもう泣かないで。 ゲス男:全然泣き止まねえじゃねえか!!イラつくなあ!・・・あー、もう我慢できねえ。 お嬢様:な、何する気。こっちに来ないで! ゲス男:お前言ってたよなあ、「父親らしい事何もしてない」って。 ゲス男:やってやろうじゃねえか、父親らしく「子供の躾」ってやつをなあ! お嬢様:やめて!この子に触らないで! ゲス男:最近のガキはよ、手を上げたらすぐに虐待だなんだって騒がれちまう。時代は変わったよな。 ゲス男:俺はガキの頃はよ、親父に散々殴られたもんさ。こいつでな。 お嬢様:金属バット?正気なの?そんなので殴られたら死んじゃうわ! ゲス男:そうか?俺は死ななかったぜ。 ゲス男:まあ最悪死んじまっても、人質はもう一人いるしなあ。 お嬢様:やめて!私には何をしたって構わないから、この子だけは助けてあげて! ゲス男:嫌だね。オラ!こっち来いクソガキ!!(子供を奪いとる) お嬢様:いやあ!! ゲス男:お前がいつまでもメソメソしてるからだ。男なら、簡単に泣いたりしちゃいけないんだぜ。 お嬢様:お願い、助けて。 ゲス男:痛みに耐えられるような、強い男になれや! お嬢様:誰か・・・助けて・・・ ゲス男:さあ、いくぞ!!(バットを振りかぶる) お嬢様:助けてええ!セバスチャーン!!! セバスチャン:セバスチャン・ボンバー!!!(数発の閃光弾が投げ込まれる。) ゲス男:ぐわああ!! お嬢様:きゃあっ!! ゲス男:何だ、何が起こった!?何も見えねえぞ! お嬢様:う、うぅぅ・・・ セバスチャン:お嬢様!坊っちゃま! お嬢様:セ、セバスチャン? セバスチャン:大丈夫ですか?威力は控えめにしておりますので、目はすぐに見えるようになります。 お嬢様:セバスチャン、本当に来てくれた・・・ セバスチャン:坊っちゃま、少しの間ご辛抱下さいませ。 お嬢様:『少しずつ視力が回復し、周囲の状況が見えるようになってきた』 ゲス男:お、お前、何でここに。それに、こいつら・・・ お嬢様:『助けにきたのはセバスチャンだけではなかった。銃火器らしきもので武装した数人の男たちがいた』 ゲス男:くそ!ガキと女を逃すな!金づるがいなくなっちまうぞ! お嬢様:『そこからは、双方入り乱れる乱戦となった。しかし・・・』 セバスチャン:セバスチャン・ショット! お嬢様:『セバスチャン達は躊躇い(ためらい)なく銃弾を放つ。彼らは明らかに戦い慣れていた』 ゲス男:くそ!くそおおおおお!! お嬢様:・・・ セバスチャン:お嬢様、坊っちゃまにはこの光景を見せないで下さい。 セバスチャン:実弾ではなくゴム弾を使用していますが、いずれにしても子供が見るものではありません。 お嬢様:セバスチャン、あなた・・・ ゲス男:死ねえええ!(金属バットで殴りかかる) セバスチャン:あぶない!(殴られ)ぐあっ! お嬢様:セバスチャン! ゲス男:何で、何で・・・お前はいつもよお!! セバスチャン:(振り向き様に引き金を引く)セバスチャン・バレット! ゲス男:(肩に命中し金属バットを落とす)ぐあっ!!・・・く、くそお(逃げ出す) セバスチャン:待て!(立ち上がるがぐらつき)ぐっ! お嬢様:セバスチャン、大丈夫?・・・血が出てるわ! セバスチャン:大したことはありません。ご心配なく。 お嬢様:でも! セバスチャン:・・・どうやら、制圧できたようです。もう心配ありません。 セバスチャン:間もなく警察もやってきましょう。 お嬢様:え、ええ・・・ セバスチャン:(仲間に)すみません、お嬢様と坊っちゃまをお願いできますか? お嬢様:セバスチャン?どこへ行くの? セバスチャン:私にはまだ、やり残したことがございます。 お嬢様:セバスチャン、待って。 お嬢様:『なぜか、もうセバスチャンに会えなくなるような気がした』 セバスチャン:・・・お嬢様。 お嬢様:お願い、行かないで。 セバスチャン:どうか坊っちゃまと、いつまでもお健やか(おすこやか)に。(立ち去る) お嬢様:セバスチャン!(追おうとするが仲間に止められる)セバスチャーン!! 0:廃工事 通路 0:よろめきながら逃げるゲス男 ゲス男:クソッ!ちくしょう! ゲス男:何で、いつも上手く行かないんだ・・・ ゲス男:何で、いつもこうなっちまうんだよ!! セバスチャン:自業自得だ。 ゲス男:ヒッ! セバスチャン:終わりだ。 ゲス男:な、なあ、頼む、見逃してくれ! ゲス男:このまま捕まったらよ、ガキが犯罪者の息子になっちまうんだぜ!それで良いのかよ!? セバスチャン:この期に及んでまだ減らず口がきけるのか。大したものだ。 ゲス男:た、助けてくれ! セバスチャン:安心しろ、警察に引き渡すつもりはない。 ゲス男:え? セバスチャン:お前は、やり過ぎた。私はもう、お前を許すことはできない。 ゲス男:アンタ、何するつもりだ? セバスチャン:・・・ ゲス男:う、嘘だろ・・・まさか・・・ セバスチャン:昔、お前に言ったことがあったな。「お嬢様を泣かせた罪、その命で償ってもらう」と。 ゲス男:あ、あれは、冗談だろ? セバスチャン:あの時はな。 ゲス男:っ!わ、分かった。自首するよ!大人しく刑務所に入る!もうアイツらの前には姿を見せない!だから・・・ セバスチャン:ダメだ。 ゲス男:お、お前、あいつの使用人だろ? セバスチャン:ああ。だが・・・家族じゃない。 セバスチャン:それにもう、私は家令じゃない。だから、私が何をしようと、お嬢様には関わりの無いことだ。 ゲス男:頼む、俺が悪かった。許してくれ。 ゲス男:こんな事したら、あいつも悲しむぜ! セバスチャン:貴様がお嬢様を語るな!! ゲス男:っ! セバスチャン:よくも長い間、お嬢様の人生をめちゃくちゃにしてくれたな。だがそれも、今日で終わりだ! ゲス男:やめろ! セバスチャン:セバスチャン・チョークスリーパー・・・ ゲス男:(首を絞められ)あ・・・がっ・・・ セバスチャン:(締め上げながら)ぬぅぅぅぅぅ・・・ ゲス男:ぐ・・・ぐぇ・・・ セバスチャン:(お嬢様、坊っちゃま・・・このセバスチャンが不甲斐ないばかりに、辛い目に遭わせてしまいました) セバスチャン:(お二人さえ幸せなら、私はどうなろうと・・・) お嬢様:セバスチャン! セバスチャン:お、お嬢様! ゲス男:た・・・す・・・けて・・・ お嬢様:何してるの!?やめなさい! セバスチャン:お嬢様、来てはなりません! お嬢様:もう全部終わったの!もう良いんだよ、セバスチャン! セバスチャン:良くありません!この男は、これからも、お嬢様達を苦しめ続けるのです。生きている限り! お嬢様:セバスチャン!そんな男の為に罪を犯さないで! お嬢様:あなたは、そんな事ができる人じゃないでしょう? セバスチャン:・・・そんなことはありません。 お嬢様:ううん、私の知ってるセバスチャンなら・・・ セバスチャン:人を殺すのは、初めてではありません。 お嬢様:・・・え? セバスチャン:お嬢様に出会う前の話です。私は故意に人を殺したことがあります。 お嬢様:嘘・・・どうして? セバスチャン:理由になど、大した意味はありません。重要なのは、私が人を殺したという事実だけです。 お嬢様:セバスチャン・・・ セバスチャン:だから、これで良いのです!(締め上げる) ゲス男:ぐがっ!・・・あっ! お嬢様:セバスチャン!もうやめて! セバスチャン:私は、こういう人間なのです! お嬢様:お嬢様ビンタ!(セバスチャンを平手打ちする) セバスチャン:っ! お嬢様:過去がどうだったかなんて関係ないわ! セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:私と出会ってからのセバスチャンは、優しくて、厳しくて、私の事をずっと守ってくれた人。 セバスチャン:・・・ お嬢様:私をここまで育ててくれた人、私の・・・家族。 セバスチャン:か、ぞく・・・ お嬢様:お願いよ、私から家族を奪わないで・・・ セバスチャン:・・・・・ セバスチャン:『体に力が入らなくなった』 ゲス男:(解放され、激しく咳込む) お嬢様:もうすぐ、警察がここに来るわ。ちゃんと、罪を償って。 ゲス男:・・・結局こうなんのか。俺はいつもいつも、クソみたいな生き方しかできねえのか。 お嬢様:・・・ねえ、あなたは確かに最低で、酷いことをたくさんしてきたわ。でも、良い所だってあった。 ゲス男:あ? お嬢様:だから私は、あなたと結婚しようと思った。あなたの子供を産もうと思ったのよ。 ゲス男:・・・ お嬢様:今度こそ、本当に、変わって下さい。婚姻届を出した時、誓ったように。 ゲス男:・・・わかった。 セバスチャン:お嬢様・・・ お嬢様:帰ろう、セバスチャン。(手を差し出す) セバスチャン:はい(手を取る) お嬢様:(笑う) セバスチャン:(笑う) ゲス男:(堕ちるところまで堕ちたんだ、後は登るしかない、かもな) セバスチャン:あ、そうだ。一つ忘れ物を思い出した。 ゲス男:あ?忘れ物? セバスチャン:歯を食いしばれ! ゲス男:え?まさか・・・ セバスチャン:セバスチャン・アッパー! ゲス男:ぐはあっ! 0:⒏「過去」 セバスチャン:私を雇いたい?アンタら、本気で言ってるのか? セバスチャン:私は、人殺しだよ? セバスチャン:・・・金持ちの考えることは分からんね。 セバスチャン:確かに刑期は終えたさ。でもそれで・・・私の罪が、帳消しになるわけじゃない。 0:数日後 セバスチャン:これが執事の服か。意外と窮屈(きゅうくつ)なものだな。 セバスチャン:屋敷の使用人など初めてだが、私に務まるだろうか。 お嬢様:あー、あー。 セバスチャン:え?子供?どこから入ってきたんだ? お嬢様:だあ、あうあ。 セバスチャン:そうか、君が奥様と旦那様の一人娘か。 お嬢様:うー。 セバスチャン:どうしたら良いかな。子供は苦手なんだけど・・・とりあえず抱いてみるか。 お嬢様:あひゃっ! セバスチャン:こら、暴れないで。落としちゃうだろ。 お嬢様:う・・・うっ・・・ セバスチャン:え?まさか・・・ お嬢様:うぇーーん!! セバスチャン:ああっ!泣いちゃった!ほら、よしよし。 お嬢様:うぇーーん!! セバスチャン:えーっとほら、べろべろばー。 お嬢様:うぎゃーー! セバスチャン:ますます酷くなった!?どうしよう、どうしよう! お嬢様:うぎゃーー! セバスチャン:誰か助けてくださーい! お嬢様:うああーーん! セバスチャン:『子供は苦手だ。人を殺した時を、思い出してしまうから』 セバスチャン:『私は、子供の目の前で、その親を殺してしまったのだ』 セバスチャン:『子供の泣き叫ぶ声は、今でも耳をついて離れない。毎晩、夢にもあの子が出てきて、その叫び声で目を覚ます』 セバスチャン:『刑期は終えた。でも、私の罪は、一生消えることはない。』 セバスチャン:『お嬢様を見ていると、いやでもあの子を思い出す。だから、できればお嬢様を遠ざけて欲しかった。それなのに』 0:お馬さんごっこをする二人 お嬢様:きゃっ!きゃっ! セバスチャン:ヒ、ヒヒーン。セバスチャンは馬なのですー。 お嬢様:ああー。(髪の毛を掴む) セバスチャン:お、お嬢様、髪の毛を引っ張らないで下さい! お嬢様:ああっ!(髪の毛を引き抜く) セバスチャン:痛い!今ブチブチって言いませんでした!?私の頭大丈夫ですか? お嬢様:きゃっきゃっ。 セバスチャン:『何故かは分からないが、事あるごとにお嬢様の世話をさせられた。人殺しの私に幼い我が子の世話をさせるとは』 お嬢様:あうあーあ? セバスチャン:これは飛行機です。 お嬢様:だあ? セバスチャン:こちらは新幹線ですね。 お嬢様:ああう? セバスチャン:これはクマさんです。 お嬢様:きゃっきゃっ。 セバスチャン:これが気に入りましたか? お嬢様:あうー!だうああ? セバスチャン:クマさんですよ。ク・マ・さ・ん。 お嬢様:あうわあ! セバスチャン:(少し笑いながら)お話できるようになるのは、もう少し先かな? セバスチャン:『無邪気なお嬢様を見ていると、いつしか心が和むようになった。しかし、それでも私は自分を許すことが出来なかった』 お嬢様:あい? セバスチャン:(ため息)私は、何をやっているんだろうな・・・ セバスチャン:お嬢様、やはり私は、ここにいるべきではないと思うのですよ。 セバスチャン:こんな穏やかな生活、私には・・・ お嬢様:うー・・・ セバスチャン:『何度も仕事を辞めたいと申し出た。しかし、聞き入れてはもらえなかった』 セバスチャン:『「あなたは、ここに居た方が良い」そう言われた』 セバスチャン:『まるで納得がいかなかった。だから私は、勝手に出て行くことにした』 0:深夜 セバスチャン:・・・この時間なら、みんな寝てるだろう。気付かれると面倒だ、さっさと行こう。 お嬢様:えあ! セバスチャン:え?・・・お嬢様!?どうしてここに? お嬢様:えあーあー セバスチャン:(しゃがみ込む)ベッドを抜け出してきたのかい?とんだお転婆お嬢様だ。 お嬢様:あーあう。 セバスチャン:ハイハイでここまで来たのか。大したもんだ。アンタきっと、強い子になるよ。 お嬢様:えあ!えあー・・・ セバスチャン:本当ならベッドまで連れ帰らないといけないんだろうけどね、誰かに見つかると面倒なんだ。 セバスチャン:悪いけど、このまま行くよ。きっと誰かが見つけてくれるさ。 お嬢様:えあうあー! セバスチャン:アンタのお世話をするのは意外と楽しかったよ。けどね、私はここにいちゃいけないんだ。 セバスチャン:じゃあ、元気でね。 お嬢様:えあっ! セバスチャン:おっと。 セバスチャン:『小さな手が私のズボンの裾を掴んでいた』 お嬢様:えあーあ セバスチャン:・・・離してくれるかな? お嬢様:えあーあーんー セバスチャン:もしかして、私を引き留めようとしてるのか? セバスチャン:まさかね、そんなわけないか。 お嬢様:えあー・・・ちゃん! セバスチャン:え? お嬢様:せ・・・ば・・・す・・・ちゃん! セバスチャン:っ!!! お嬢様:せ、ば、す、ちゃん! セバスチャン:お、お嬢様。私の名前を。 セバスチャン:まさか、初めての言葉が、私の名前? お嬢様:せば、す、ちゃん! セバスチャン:まだ、ご両親の事も呼べないのに? お嬢様:せばーす、ちゃん。 セバスチャン:うっ・・・うっ・・・ お嬢様:? セバスチャン:うおおおぉーーん!!(号泣) お嬢様:っ! セバスチャン:うおおおぉーーん!!ボジョヴザヴァーー!!! お嬢様:うっ、うっ・・・うぇーーん! セバスチャン:ヴオォォォォォーーン!!! お嬢様:うあぁぁぁぁぁん!!! セバスチャン:『私たち二人の泣き声に屋敷中の者が目を覚ました。そうして、私の夜逃げは失敗に終わった』 セバスチャン:『私は救われた気がした。ここに居て良いのだと、そう思えた』 セバスチャン:お嬢様、貴方が私に、生きる意味を与えて下さったのです。 0:⒐「未来」 ゲス男:多分、この辺りだよな。 ゲス男:あった、このマンションだ。 ゲス男:部屋番号は・・・ セバスチャン:おい! ゲス男:うわあっ! セバスチャン:ここで何してる? ゲス男:あ、アンタ・・・ セバスチャン:そんなに怖がるな、失礼な。 ゲス男:あ、アンタ、昔俺を殺そうとしたじゃねえか!怖がって当然だ! セバスチャン:はて、そんなことあったかな? ゲス男:忘れたのかよ! セバスチャン:そういえば出所したんだったな。で、何の用だ? ゲス男:別に・・・ セバスチャン:ん?何か落ちたぞ。 ゲス男:あっ! セバスチャン:何だこれは?腕時計? ゲス男:・・・ セバスチャン:お前のか? ゲス男:今日、成人式だろ? セバスチャン:成人祝いか。 ゲス男:・・・顔を見せるつもりは無い。ポストに入れておこうと思って。 セバスチャン:こんな安物を。しかも値札も貼ったままじゃないか。 セバスチャン:大体、贈り物なのにラッピングもなしか? ゲス男:うるせえ!もう良いよ、持って帰る! セバスチャン:おっと。 ゲス男:返せよ! セバスチャン:渡しておいてやる。 ゲス男:え? セバスチャン:受け取って貰える保証は無いぞ? ゲス男:・・・分かってるよ。 セバスチャン:言っておくが、お前をまだ二人に会わせる事はできん。 セバスチャン:死にものぐるいで努力しろ。犯した罪を償う為に。 セバスチャン:そうすればいつか、成長した我が子に会えるかもしれんぞ。 ゲス男:相変わらず、説教臭いやつだな。 セバスチャン:・・・と、言うわけで。 ゲス男:え?何が? セバスチャン:分かっているだろう?いつものやつだ。 ゲス男:あれー?俺、今日は何も悪いことしてないけど? セバスチャン:つべこべ言うな。ほら、仰向けに寝ろ。 ゲス男:んん?な、何で俺の足を持ってるの? セバスチャン:頭を抱えておけ。危ないからな。 ゲス男:あれ?久しぶりなのに、ハードなやつしようとしてない? セバスチャン:行くぞおお!! ゲス男:うわああっ! セバスチャン:(ゲス男をジャイアントスイングしながら)ふん!ふん!ふん! ゲス男:やめっ!とめっ!たすけて! セバスチャン:喋るな、舌を噛むぞ! ゲス男:死ぬ、死んじゃうってこれ! セバスチャン:セバスチャーン・ジャイアントー・スィーング!! ゲス男:やめろおぉぉぉ! セバスチャン:(ハンマー投げの人みたいに)ああああああああああ!!! ゲス男:いやあああああああああ・・・(星になる) セバスチャン:ふぅっ!成敗! お嬢様:セバスチャン? セバスチャン:お嬢様。 お嬢様:いま、誰かと話してなかった? セバスチャン:ええ。古い知り合いに偶然会いまして。 お嬢様:そう?・・・え?もうこんな時間?急がないと遅れちゃう! セバスチャン:お嬢様のお支度が遅いからでしょう? セバスチャン:良い年をして、時間管理もできないのですか? お嬢様:うるさいわね!走るわよ! セバスチャン:ヒールで走ったら危ないですよ。 お嬢様:じゃあ車呼んで! セバスチャン:余計に時間がかかります。 お嬢様:あの子の晴れ姿見逃したら、アンタのせいだからね! セバスチャン:やれやれ、仕方ありませんな。 お嬢様:え?何? セバスチャン:失礼致します! お嬢様:うわあ! セバスチャン:しっかり掴まっていて下さい。 お嬢様:降ろして!良い年してお姫様抱っことか、恥ずかしいことこの上ない! セバスチャン:参ります! お嬢様:だから、おーろーせー! セバスチャン:セバスチャーン・ダッシュ! 0:終わり