台本概要

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タイトル 魔王と勇者の季節。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女3)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 一人では出来ないことも四人なら、そう信じて私達はここに立つ。

◆あらすじ◆
魔王のもとに四人の勇者が辿り着き、宿命の戦いが今まさに幕を開けようとしていた。

文字数約8,000字

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
魔王 108 フラヴィア・エマ・コスモス。 黄金(こがね)の魔王。あらゆる魔法の使い手。女性。
71 セレスト・スプリング。 青の勇者。鍬の使い手。女性。
80 フラン・ニュー・サマー。 赤の勇者。芝刈機の使い手。男性。
70 グウェイン・オータム。 白の勇者。大鎌の使い手。男性。
78 コール・ウィンター・ステラ。 黒の勇者。剪定鋏の使い手。女性。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:魔王と勇者の季節。 : 0:一人では出来ないことも四人なら、そう信じて私達はここに立つ。 : 0:◆あらすじ◆ 0:魔王のもとに四人の勇者が辿り着き、宿命の戦いが今まさに幕を開けようとしていた。 : 0:◇登場人物◇ 魔王:フラヴィア・エマ・コスモス。 魔王:黄金(こがね)の魔王。あらゆる魔法の使い手。女性。 青:セレスト・スプリング。 青:青の勇者。鍬の使い手。女性。 赤:フラン・ニュー・サマー。 赤:赤の勇者。芝刈機の使い手。男性。 白:グウェイン・オータム。 白:白の勇者。大鎌の使い手。男性。 黒:コール・ウィンター・ステラ。 黒:黒の勇者。剪定鋏の使い手。女性。 : 0:◇◇◆◇◇ : 0:魔王城。 0:四人の勇者が玉座の間の扉を見つめている。 : 青:ついにここまで来たな。 赤:ようやく俺達の旅も終わる。 白:この先に魔王が……。 黒:みんなぁ心の準備はいーい? 赤:おう! 俺ぁいつでもいけるぜ? 白:僕もいけますよ。 青:私も問題ない。 黒:うん。じゃぁ……あ! 赤:どした? コール? 黒:せっかくだからせーのでいかない? 青:せーの? 白:足並みを揃えるんですか? 黒:みんなの力で辿り着いたから、最後もしっかり合わせていきたいなって。 赤:へぇ、良いアイデアだな! さっすがコールだ! 黒:えへへ、ありがとフラン。 白:楽しそうですね。 黒:でしょ? グウェイン。 白:良いと思います。 黒:ねぇやってもいーい? セレス? 青:うむ。かまわんぞコール。 黒:やったぁ! 赤:だったらついでに「覚悟しろ魔王」も言っとこうぜ? 青:ふふ、悪くないな。いつもの名乗りはどうする? 黒:やろう! 赤:だよな! 白:楽しくなってきましたね。 黒:じゃあみんな準備はいーい? 3、2、1でいくからね? 青:わかった。 赤:おっけー。 白:いいですよ。 黒:うん! 3、2、1 : 0:四人同時に。 : 青:せーの! 赤:せーの! 白:せーの! 黒:せーの! : 0:扉を開くと一歩踏み出し、四人同時に。 : 青:覚悟しろ魔王! 赤:覚悟しろ魔王! 白:覚悟しろ魔王! 黒:覚悟しろ魔王! : 魔王:ふぁ!? な、何者じゃ貴様ら!? : 赤:おいおいおい、俺達が誰かだって? 黒:そんなの決まっているでしょう? 白:僕らは君の悪行に、 青:そっと終わりを告げる者。 黒:それ以上でも、 赤:以下でもありゃしねぇが、 白:名前も知らず散っていくのは、 黒:ほんの少しだけ可哀想。 赤:だから特別だぁ、 白:冥土の土産に、 黒:教えてあげる! 青:隠れた悪も掘り起こす! 美しき魂! 青の勇者セレスト・スプリング! 赤:芽生えた悪は駆逐する! 猛き血潮! 赤の勇者フラン・ニュー・サマー! 白:悪の実り刈り取ります! 清き精神! 白の勇者グウェイン・オータム! 黒:悪の枝葉をつみ取るの! 気高き心! 黒の勇者コール・ウィンター・ステラ! 青:そう、我ら! : 0:四人同時。 : 青:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 赤:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 白:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 黒:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! : 0:間。 : 魔王:……何なんじゃ貴様ら? 赤:おいおいおい、俺達が誰かだって? 黒:そんなの決まっているでしょう? 白:僕らは君の悪行に、 青:そっと終わりを告げる者。 魔王:いや、TAKE2はいらぬわ馬鹿たれ。ただ唖然としとっただけで一応聞こえておるわ。そうじゃない、突然現れて一体何用だと聞いておるのじゃ。えっと……《ブレイヴ・ジーンズ》? 赤:デニム地じゃねーよ! 白:僕達は勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》です。 魔王:ああ、シーズンのう。微妙に揃ってなくてよく聴きとれんかったのじゃ、許せ。 黒:あたし達をそんなおしゃれなジーンズ屋さんみたいな名前で呼ばないでくれる? 魔王:お洒落、か? 我はクソダサいと思うぞ? 赤:ダサくねぇし! 魔王:いやいや。 黒:とにかく、あたし達はかっこいい勇者なの! 白:そして魔王、君を、 青:滅ぼす存在だ。 魔王:…………勇者? 勇者と言ったか? 赤:だから何度も言ってるだろ!? 白:耳が遠いんですか? 魔王:やかましいわ。てか、それマジで言っておる? 赤:マジもマジさ! 白:そうです、僕達は君を倒しに来ました。 魔王:倒すじゃと? 青:ああ、覚悟するのだな。 黒:魔王さん! 魔王:……ふむ。勇者、勇者……か。成る程のう。もうそんな季節じゃったか。 赤:そんな季節? 魔王:いや、なに。時折、アホでイカレた勇者共が来るが、そうか、そんな季節か。時の移ろいも早いものよな。 黒:ちょっと! あたし達を風物詩みたいに言わないでくれる!? 魔王:やれやれ、我としたことが抜かったわ。普段なら、勇者避けの結界を準備しておくのじゃが。 白:結界……? 魔王:まぁ、そんな大層なもんじゃ無い。あるモノを仕掛けておくだけじゃ。 白:あるモノ……? 赤:何を仕掛けるってんだよ!? 青:どんな汚い仕掛けをしてるんだ? 魔王:ある意味汚いことは否定せんが、自然由来で比較的環境にも優しい昔ながらの勇者避けグッズじゃよ。 青:昔ながら? それは何だ? 魔王:まぁアレじゃな。 黒:アレってなに? 魔王:ところで貴様ら、とびきり臭いの強いモノは好きか? 腐敗した感じの。 黒:嫌いに決まってるでしょ! 青:腐敗というと四天王、 赤:ああそうだ! 例のゾンビ・ジャイアント退治にゃ辟易としたなぁ。 白:あれはきつかったですね。臭いが。 魔王:ああ、我もぶっちゃけあいつ苦手じゃったわ。 青:でも、私達の敵では無かったな。 魔王:ほう。ということはしっかり四天王も倒してきたのか。 赤:『鍵』だけ置いて逃げられたちまったけどな。 魔王:あいつは生き汚いからの。まぁ既に死んどるけど。 黒:それで? 臭いが何だっていうの? 魔王:なぁに獣避けと同じじゃ。 赤:獣だぁ? 魔王:忌避剤を仕掛けておけば、五感の鋭い――特に臭いに敏感である勇者はここまで辿り着けんという寸法じゃ。 白:確かに。 魔王:勇者なぞ獣と変わらんからな。 赤:なるほど! 青:なるほどじゃないフラン、 黒:ディスられてるよあたし達! 赤:何だって?! 白:それで、忌避剤とは? 魔王:ドラゴン。 青:ドラゴン? : 魔王:そう、ドラゴンの、アレじゃ。 : 白:ああ。 黒:ああ。 青:ああ。 赤:ああ。 魔王:な? 来たくなくなるじゃろ? 青:来たくなくなると言うか率直に、 白:“きたない”ですね。 魔王:くはは。上手いこと言うでは無いか。 黒:でもでも、来る途中にそんなのなかったよね? 青:ああ。こんなにすんなり来れるモノかと思ったが。 魔王:何? そんな筈は。 赤:けどよ、ちょっと嫌な臭いはしたぜ? 白:しましたね。残り香みたいな。 青:残り香って。 魔王:うーん、ならば盗まれたか。 赤:盗むっておいおい、ドラゴンのアレだぜ? そんなもん盗むやついんのかよ? 魔王:いるんじゃよな、たまに。 白:ドラゴンのアレ。素材としては実はレアなんですよ。 黒:欲深いトレジャーハンターとかが拾いそうだよねー。 赤:へー。色んなやつが居るんだな。 魔王:まぁ、それはさておき。勇者よ。来てしまったのなら仕方が無い。久しぶりにアレをやるか。 青:アレ? 赤:まさか……クソか? 魔王:するか馬鹿たれが! その話はもう終わりじゃ! 勇者が来たら魔王がすることなど決まっておろう! 黒:なにするの? 魔王:名乗り! 青:名乗りか。 白:名乗りですか。 赤:名乗りは、 黒:大事だよね! 魔王:うむ。 : 0:魔王、咳払い。 : 魔王:くはははは! 勇者共よ! 聞くが良い! : 魔王:我は絶大なる魔力で世界を統べる覇者! 黄金の魔王フラヴィア・エマ・コスモス! : 魔王:我が精強なる手勢を打ち倒し、よくぞこの我のもとまで辿り着いた、褒めて遣わす! 赤:っは! たりめぇよ! 俺達は勇者だぜ! 黒:なんてことないよ! 魔王:……じゃがその程度で、はしゃがぬことだ勇者。 白:どういうことですか? 魔王:くはは、貴様らが倒してきた四天王も側近も、所詮は我が指の一本程の強さに過ぎぬのじゃからな! 青:何だと! 魔王:絶望したか? 勇者共よ! まぁ、挑むというのなら止めはせぬがな、心の準備はしておけ? 我の前に屈するための、な。くははははは! 赤:っへ! 上等だぁ! やれるもんならやってみやがれ! 青:油断するなよ、フラン。 白:言うだけのことはありますね。黄金の魔王フラヴィア・エマ・コスモス。すごい魔力と威圧感です。 黒:だとしても! あたし達四人ならやれる! そうでしょ? セレス、フラン、グウェイン! 青:ああ! 赤:おうよ! 白:ええ! 魔王:くはは。四人揃って威勢の良いことよ。しかしその前に――。 : 0:間。 : 赤:おい、しかしその前に――なんだよ? 魔王:いや、ちょっと質問があっての。 青:質問だと? 白:僕らが魔王の質問に素直に答えると思いますか? 魔王:ふむ、それもそうか。 黒:質問ってなーに? 青:おい、コール! まさか答える気なのか? 黒:だって気にならない? ここで倒しちゃったら永遠の謎だよ? 赤:っは! 確かに! 青:それは……そうかも知れんな。 白:全クリ出来なくなるかもですね。 黒:でしょ? 魔王:しれっと倒せる前提なのが引っかかるな。 青:しかしだな、こういうのは聞かない方が無難じゃないか? うっかり選ぶとゲームオーバーの選択肢が無いとも限らない。 白:せかいのはんぶん、的な。 赤:っは! 確かに! 青:だろ? 黒:でも、それって間違えなければいいんじゃない? 赤:っは! 確かに! 黒:そのあと魔王倒しちゃえばめでたしめでたし! 赤:っは! 確かに! 青:確かにじゃないフラン、お前ちょっとコールに甘すぎるぞ。 赤:っは! 確かに! 青:はぁ……。 白:まぁ答えたくなければ答えない選択もありだと思いますよ。 赤:っは! 確かに! 白:…………。 黒:それで、質問ってなーに? 魔王:ふむ。では質問なのじゃが、おぬしらの中の誰が勇者なのじゃ? 青:…………。 赤:…………。 白:…………。 黒:…………。 魔王:おぬしらの中の誰が勇者かと聞いておるのじゃが……、なんじゃ答えられぬか? 青:……いや、それはどういう意味だ? 魔王。 魔王:どういうって、そのままの意味じゃが? 白:そのままの意味、ですか? 魔王:そうじゃが。 赤:そのままって言ったってよ? 黒:あたし達、勇者だし。ねー? 青:ああ。最初に名乗ったように、我々は《ブレイヴ・シーズン》。四人組の勇者パーティーだ。 魔王:勇者パーティーなのは分かっておる。 赤:なら、それが答えだろ。 白:何の疑問があるんです? 魔王:いや、じゃからな? 四人パーティーのうち一人が選ばれし勇者で、それ以外はなんかギルドとか旅の道中で一緒になった友達みたいな感じなんじゃろ? よく知らんけど。 黒:えーっと、 青:それは、 白:つまり、 赤:どういうことだ? 魔王:いや、なに。正直、我の目的を妨げる、生意気な勇者を返り討ちにできたらそれで良いから勇者以外の他の奴らは見逃してやっても良いかなって思ってるわけよ。ドラゴンのク……忌避剤もじゃが、 青:言い直したな。 黒:言い直したね。 魔王:そこは突っ込むな。とにかく無駄な殺生したくない的な。我って蜘蛛とか見つけたら外に逃がすタイプだし。流石に危険な蜂とか不快なGは始末するけど。みたいなそんな感じ? 赤:あーね。 白:いや、僕ら虫扱いされてるんですが。 青:しかしどうしてそんなことをする必要がある? 黒:牙を剥くかも知れない災いの種なんて残らず全部粉砕するべきだと思うけどねー? 魔王:そうなのじゃが容赦ないな小娘。……まぁ魔王的には、やっぱ世界支配した後の事も考えてんのよ。 赤:後のことだぁ? 今を全力で生きろよ。 魔王:良いこと風に言っておるが、後先くらいは考えよ愚か者。 赤:ぐぬぬ。 魔王:今は敵じゃが、世界支配するってことは、おぬしらもいずれ我の下につくわけじゃん? 青:お前などに屈さないが。 魔王:威勢は良いが、我の支配する世界ではそのようなことも言っておれんじゃろうて。さておき、未来ある有能な若者をここで始末するのもどうかと思うのじゃよ我は。 白:戦後処理、ですか。 魔王:四天王も、側近も失った故な。……まぁ、わりと生きておるのもおるが。 赤:あいつら逃げ足だけは早かったからな! 魔王:我が魔王軍のスローガンは『いのちをだいじに』じゃからな。 黒:あたし達は『ガンガンいこうぜ』だよ。 魔王:生き急ぐでない、若人よ。というわけで選ばれし勇者、手ぇ挙げてみ? : 0:四人、手を挙げる。 : 青:はい。 赤:はい! 白:はい……。 黒:はーい! 魔王:……あれ? 全員? 赤:ったりめぇだろ。 青:我々は勇者だ。 白:挙げない理由がありません。 黒:決まってるよねー? 魔王:あー、なるほどの。うんうん。そりゃまぁここで手を上げなかったら裏切りになるもんなぁ。それは関係ぎくしゃくしちゃうよな。 赤:っは! 確かに! 魔王:よし、では目ぇ瞑って手を挙げることにしてみようかの。……選ばれし勇者! はーい! : 0:四人、手を挙げる。 : 青:……。 赤:……。 白:……。 黒:……。 魔王:……うーん、やっぱり全員か。マジで全員勇者なのか? 赤:だからそう言ってんだろ。 青:何度も言うが我々は勇者だ。 白:よって挙げないという選択はありません。 黒:ゲームオーバーになるかもしれないしねー? 魔王:いや、そんなことにはならんと思うが……。 黒:分かんないじゃん? 魔王:分かれよ。というか、我がやらせておいてなんじゃが、従うのな。 赤:はぁ? だから何なんだよ? 魔王:いや、敵の前で、魔王の前で当たり前のように目を瞑るのなって。不意打ちとか警戒せんのおぬしら? 赤:っは! 確かに! 青:っは。そんなもの、貴様がそんな卑怯なことはしないと信じていただけだ。 赤:そうだぜ! セレスの言うとおりだ! まさかそんなみみっちい真似はしねぇよなぁ魔王さんよぉ! 白:いい加減黙りましょう。フラン。 黒:あはは、フラン怒られてる~。 魔王:おぬしら緊張感ゼロか? なんかやたら素直じゃし。良く生き残ったな。逆にすごいわ。 青:勇者だからな。 魔王:てか、嘘ついてない? 白:嘘、ですか? 赤:おいおいおいおい! 言いがかりはやめろよな!? 俺達は嘘なんてついてねぇ! 俺は自分のハートに正直に生きてんだよ! 魔王:おぬしはハートというか嘘つく頭が無さそうじゃがな。 青:フランの頭のことはさておき。 赤:さておきって何だぁ! 青:どうして貴様はそんなに我々を疑う? 白:勇者が四人居てはいけない理由でもあるんですか? 黒:四人相手だと負けちゃう! みたいな? 魔王:いや、別にそういう訳じゃないんだけど、聞いてないんじゃよな。 白:聞いてない? 魔王:ああ。先代からの引き継ぎ資料には『勇者は選ばれし一人の若者』って書いてあったんじゃよ。複数人いるなんてどこにも書いとらんから、それ話違うくね? って。 黒:あーね。 白:それは引き継ぎ資料に不備があったのでは? 魔王:いや、あの魔王そのへんしっかりしてたからそんな筈は無いんじゃが……あ! そうだ! 赤:何だよ? 魔王:聖剣! 青:聖剣? 黒:聖剣がどうかしたのー? 魔王:聖剣に選ばれた者が勇者として目覚める! 的な! 白:確かに伝承ではそういう感じになってましたね。 魔王:はい! と言うわけで聖剣を出すのじゃ! 赤:……おい、セレス、どうする? 青:どうすると言ってもな。どうせ戦いになったら使うし、いいんじゃないか? 白:それもそうですね。 赤:じゃあ、出すか! 黒:あ! 魔王:なんじゃ? 黒:せっかくだからせーのでいかない? 魔王:はぁ? 青:せーの? 白:足並みを揃えるんですか? 黒:みんなの力で辿り着いたから、最終決戦もしっかり合わせていきたいなって。 魔王:…………。 赤:へぇ、良いアイデアだな! さっすがコールだ! 黒:えへへ、ありがとフラン。 魔王:早くしてくんないかな……? 白:それは楽しそうですね。 魔王:無視? 黒:でしょ? グウェイン。 白:良いと思います。 黒:ねぇやってもいーい? セレス? 青:うむ。かまわんぞコール。 黒:やったぁ! 魔王:さぁ勇者よ! 聖剣を出すのじゃ! 赤:あ! だったらついでに「覚悟しろ魔王」も言っとこうぜ? 魔王:なんじゃと!? 青:ふふ、悪くないな。その前に「出でよ聖剣」と言うのはどうだろう? 黒:やろう! 魔王:やるな! 赤:やろうぜ! 魔王:やるな! 白:楽しくなってきましたね。 魔王:楽しくないわ! 黒:じゃあみんな準備はいーい? 魔王:準備なんてとっくに済んでおるわ! 黒:3、2、1でいくからね? 青:わかった。 赤:おっけー。 白:いいですよ。 魔王:はぁ、勝手にせい。 黒:うん! 3、2、1 : 0:四人同時に。 : 青:せーの! 赤:せーの! 白:せーの! 黒:せーの! : 0:四人、各々得物を取り出す。 : 青:出でよ聖剣《ブレイヴ・プラウ》! 覚悟しろ魔王! 赤:出でよ聖剣《ブレイヴ・マウア》! 覚悟しろ魔王! 白:出でよ聖剣《ブレイヴ・サイス》! 覚悟しろ魔王! 黒:出でよ聖剣《ブレイヴ・シザー》! 覚悟しろ魔王! : 魔王:我はいったい何を見せられておるのか。しかし、うーむ。全員か。 青:とくと見よ私達の聖剣の耀き! 赤:この耀きが偽りに見えるかぁ!? 白:つまり僕達に偽りは無く! 黒:選ばれし勇者ってやつなんだよね! 魔王:確かに聖剣的な気配感じるが……。 青:感じるが? 魔王:全員剣じゃねぇし。 赤:あん? 魔王:ねぇ、ふざけておる? 白:僕達は真剣ですよ! 魔王:いや、どこがじゃ。 黒:見て分からない?! 魔王:分かるか、何じゃそれ。 青:だから、聖剣だと言っているだろう? 魔王:おぬしのそれは何じゃ? 青いの。 青:《ブレイヴ・プラウ》だ。 魔王:鍬じゃろ。魔王を耕してどうする。 青:悪によって荒れ果てた大地を蘇らせる的な! 魔王:新たな悪が芽生えるだけじゃろ。 魔王:おぬしはなんじゃ、黒いの? 黒:《ブレイヴ・シザー》だよ! 魔王:鋏、しかも剪定鋏って我、枝扱いされておる? 黒:悪の芽を摘み取る、みたいな! 魔王:何が悪じゃ。おぬしのシルエットB級ホラーじゃぞ。 魔王:で、白いの、おぬしは? 白:《ブレイヴ・サイス》です。 魔王:鎌な。おぬしは比較的マシな気がするが、我は雑草か? 作物か? 白:作物です。 魔王:違うわ馬鹿たれ。魔王じゃわ、収穫してどうするんじゃ。勇者じゃ無くて死神なのか? 魔王:そしておぬしに至ってはほんと何? 赤いの。 赤:《ブレイヴ・マウア》だぜ! 魔王:鎌と鋏と鍬はギリ赦せるわ。なんかおかしいけど。でもおぬし、それ芝刈機じゃろ。 赤:《ブレイヴ・マウア》だぜ! 魔王:二回も言うな。なんじゃ我は芝生か? 庭か? ゴルフ場か? 赤:まぁ俺にとっちゃ魔王なんて庭みたいなもんだな! 魔王:適当な返事をするでないわ! たわけ! それでどうやって戦うのよ? 赤:なんか良い感じに! 魔王:……はぁ。おぬしらいったいどこで聖剣(仮)手に入れたの? : 0:四人同時(バラバラでも良い) : 青:コメリだが? 赤:コーナンだぜ! 白:カインズです。 黒:ホーマックだよー。 : 魔王:じゃよな! やっぱホームセンターじゃよな! おぬしらのそれ武具じゃなくて農具じゃもんな! はぁ! 久しぶりに勇者が来たと思えば、勇者がホームセンターで聖剣手に入れる時代か。やれやれじゃな。 魔王:ふっ! まぁ良い! 魔王:農具じゃろうが、芝刈機じゃろうが四人とも勇者に相違ないというのなら、遠慮はせぬぞ? 赤:っへ! 面白ぇ! 青:のぞむところだ魔王! 白:僕らの力を見せてあげますよ。 黒:私達の勇者の力を、ね。 魔王:ホームセンターに選ばれし、勇者、か。生きて帰れると思わぬことだ! 青:隠れた悪も掘り起こす! 美しき魂! 青の勇者セレスト・スプリング! 赤:芽生えた悪は駆逐する! 猛き血潮! 赤の勇者フラン・ニュー・サマー! 白:悪の実り刈り取ります! 清き精神! 白の勇者グウェイン・オータム! 黒:悪の枝葉をつみ取るの! 気高き心! 黒の勇者コール・ウィンター・ステラ! 魔王:茶番は終わりだ! 我は黄金の魔王フラヴィア・エマ・コスモス! 青:……そう、我ら! : 0:四人同時。 : 青:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 赤:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 白:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 黒:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! : 魔王:いざ――参らん!

0:魔王と勇者の季節。 : 0:一人では出来ないことも四人なら、そう信じて私達はここに立つ。 : 0:◆あらすじ◆ 0:魔王のもとに四人の勇者が辿り着き、宿命の戦いが今まさに幕を開けようとしていた。 : 0:◇登場人物◇ 魔王:フラヴィア・エマ・コスモス。 魔王:黄金(こがね)の魔王。あらゆる魔法の使い手。女性。 青:セレスト・スプリング。 青:青の勇者。鍬の使い手。女性。 赤:フラン・ニュー・サマー。 赤:赤の勇者。芝刈機の使い手。男性。 白:グウェイン・オータム。 白:白の勇者。大鎌の使い手。男性。 黒:コール・ウィンター・ステラ。 黒:黒の勇者。剪定鋏の使い手。女性。 : 0:◇◇◆◇◇ : 0:魔王城。 0:四人の勇者が玉座の間の扉を見つめている。 : 青:ついにここまで来たな。 赤:ようやく俺達の旅も終わる。 白:この先に魔王が……。 黒:みんなぁ心の準備はいーい? 赤:おう! 俺ぁいつでもいけるぜ? 白:僕もいけますよ。 青:私も問題ない。 黒:うん。じゃぁ……あ! 赤:どした? コール? 黒:せっかくだからせーのでいかない? 青:せーの? 白:足並みを揃えるんですか? 黒:みんなの力で辿り着いたから、最後もしっかり合わせていきたいなって。 赤:へぇ、良いアイデアだな! さっすがコールだ! 黒:えへへ、ありがとフラン。 白:楽しそうですね。 黒:でしょ? グウェイン。 白:良いと思います。 黒:ねぇやってもいーい? セレス? 青:うむ。かまわんぞコール。 黒:やったぁ! 赤:だったらついでに「覚悟しろ魔王」も言っとこうぜ? 青:ふふ、悪くないな。いつもの名乗りはどうする? 黒:やろう! 赤:だよな! 白:楽しくなってきましたね。 黒:じゃあみんな準備はいーい? 3、2、1でいくからね? 青:わかった。 赤:おっけー。 白:いいですよ。 黒:うん! 3、2、1 : 0:四人同時に。 : 青:せーの! 赤:せーの! 白:せーの! 黒:せーの! : 0:扉を開くと一歩踏み出し、四人同時に。 : 青:覚悟しろ魔王! 赤:覚悟しろ魔王! 白:覚悟しろ魔王! 黒:覚悟しろ魔王! : 魔王:ふぁ!? な、何者じゃ貴様ら!? : 赤:おいおいおい、俺達が誰かだって? 黒:そんなの決まっているでしょう? 白:僕らは君の悪行に、 青:そっと終わりを告げる者。 黒:それ以上でも、 赤:以下でもありゃしねぇが、 白:名前も知らず散っていくのは、 黒:ほんの少しだけ可哀想。 赤:だから特別だぁ、 白:冥土の土産に、 黒:教えてあげる! 青:隠れた悪も掘り起こす! 美しき魂! 青の勇者セレスト・スプリング! 赤:芽生えた悪は駆逐する! 猛き血潮! 赤の勇者フラン・ニュー・サマー! 白:悪の実り刈り取ります! 清き精神! 白の勇者グウェイン・オータム! 黒:悪の枝葉をつみ取るの! 気高き心! 黒の勇者コール・ウィンター・ステラ! 青:そう、我ら! : 0:四人同時。 : 青:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 赤:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 白:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 黒:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! : 0:間。 : 魔王:……何なんじゃ貴様ら? 赤:おいおいおい、俺達が誰かだって? 黒:そんなの決まっているでしょう? 白:僕らは君の悪行に、 青:そっと終わりを告げる者。 魔王:いや、TAKE2はいらぬわ馬鹿たれ。ただ唖然としとっただけで一応聞こえておるわ。そうじゃない、突然現れて一体何用だと聞いておるのじゃ。えっと……《ブレイヴ・ジーンズ》? 赤:デニム地じゃねーよ! 白:僕達は勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》です。 魔王:ああ、シーズンのう。微妙に揃ってなくてよく聴きとれんかったのじゃ、許せ。 黒:あたし達をそんなおしゃれなジーンズ屋さんみたいな名前で呼ばないでくれる? 魔王:お洒落、か? 我はクソダサいと思うぞ? 赤:ダサくねぇし! 魔王:いやいや。 黒:とにかく、あたし達はかっこいい勇者なの! 白:そして魔王、君を、 青:滅ぼす存在だ。 魔王:…………勇者? 勇者と言ったか? 赤:だから何度も言ってるだろ!? 白:耳が遠いんですか? 魔王:やかましいわ。てか、それマジで言っておる? 赤:マジもマジさ! 白:そうです、僕達は君を倒しに来ました。 魔王:倒すじゃと? 青:ああ、覚悟するのだな。 黒:魔王さん! 魔王:……ふむ。勇者、勇者……か。成る程のう。もうそんな季節じゃったか。 赤:そんな季節? 魔王:いや、なに。時折、アホでイカレた勇者共が来るが、そうか、そんな季節か。時の移ろいも早いものよな。 黒:ちょっと! あたし達を風物詩みたいに言わないでくれる!? 魔王:やれやれ、我としたことが抜かったわ。普段なら、勇者避けの結界を準備しておくのじゃが。 白:結界……? 魔王:まぁ、そんな大層なもんじゃ無い。あるモノを仕掛けておくだけじゃ。 白:あるモノ……? 赤:何を仕掛けるってんだよ!? 青:どんな汚い仕掛けをしてるんだ? 魔王:ある意味汚いことは否定せんが、自然由来で比較的環境にも優しい昔ながらの勇者避けグッズじゃよ。 青:昔ながら? それは何だ? 魔王:まぁアレじゃな。 黒:アレってなに? 魔王:ところで貴様ら、とびきり臭いの強いモノは好きか? 腐敗した感じの。 黒:嫌いに決まってるでしょ! 青:腐敗というと四天王、 赤:ああそうだ! 例のゾンビ・ジャイアント退治にゃ辟易としたなぁ。 白:あれはきつかったですね。臭いが。 魔王:ああ、我もぶっちゃけあいつ苦手じゃったわ。 青:でも、私達の敵では無かったな。 魔王:ほう。ということはしっかり四天王も倒してきたのか。 赤:『鍵』だけ置いて逃げられたちまったけどな。 魔王:あいつは生き汚いからの。まぁ既に死んどるけど。 黒:それで? 臭いが何だっていうの? 魔王:なぁに獣避けと同じじゃ。 赤:獣だぁ? 魔王:忌避剤を仕掛けておけば、五感の鋭い――特に臭いに敏感である勇者はここまで辿り着けんという寸法じゃ。 白:確かに。 魔王:勇者なぞ獣と変わらんからな。 赤:なるほど! 青:なるほどじゃないフラン、 黒:ディスられてるよあたし達! 赤:何だって?! 白:それで、忌避剤とは? 魔王:ドラゴン。 青:ドラゴン? : 魔王:そう、ドラゴンの、アレじゃ。 : 白:ああ。 黒:ああ。 青:ああ。 赤:ああ。 魔王:な? 来たくなくなるじゃろ? 青:来たくなくなると言うか率直に、 白:“きたない”ですね。 魔王:くはは。上手いこと言うでは無いか。 黒:でもでも、来る途中にそんなのなかったよね? 青:ああ。こんなにすんなり来れるモノかと思ったが。 魔王:何? そんな筈は。 赤:けどよ、ちょっと嫌な臭いはしたぜ? 白:しましたね。残り香みたいな。 青:残り香って。 魔王:うーん、ならば盗まれたか。 赤:盗むっておいおい、ドラゴンのアレだぜ? そんなもん盗むやついんのかよ? 魔王:いるんじゃよな、たまに。 白:ドラゴンのアレ。素材としては実はレアなんですよ。 黒:欲深いトレジャーハンターとかが拾いそうだよねー。 赤:へー。色んなやつが居るんだな。 魔王:まぁ、それはさておき。勇者よ。来てしまったのなら仕方が無い。久しぶりにアレをやるか。 青:アレ? 赤:まさか……クソか? 魔王:するか馬鹿たれが! その話はもう終わりじゃ! 勇者が来たら魔王がすることなど決まっておろう! 黒:なにするの? 魔王:名乗り! 青:名乗りか。 白:名乗りですか。 赤:名乗りは、 黒:大事だよね! 魔王:うむ。 : 0:魔王、咳払い。 : 魔王:くはははは! 勇者共よ! 聞くが良い! : 魔王:我は絶大なる魔力で世界を統べる覇者! 黄金の魔王フラヴィア・エマ・コスモス! : 魔王:我が精強なる手勢を打ち倒し、よくぞこの我のもとまで辿り着いた、褒めて遣わす! 赤:っは! たりめぇよ! 俺達は勇者だぜ! 黒:なんてことないよ! 魔王:……じゃがその程度で、はしゃがぬことだ勇者。 白:どういうことですか? 魔王:くはは、貴様らが倒してきた四天王も側近も、所詮は我が指の一本程の強さに過ぎぬのじゃからな! 青:何だと! 魔王:絶望したか? 勇者共よ! まぁ、挑むというのなら止めはせぬがな、心の準備はしておけ? 我の前に屈するための、な。くははははは! 赤:っへ! 上等だぁ! やれるもんならやってみやがれ! 青:油断するなよ、フラン。 白:言うだけのことはありますね。黄金の魔王フラヴィア・エマ・コスモス。すごい魔力と威圧感です。 黒:だとしても! あたし達四人ならやれる! そうでしょ? セレス、フラン、グウェイン! 青:ああ! 赤:おうよ! 白:ええ! 魔王:くはは。四人揃って威勢の良いことよ。しかしその前に――。 : 0:間。 : 赤:おい、しかしその前に――なんだよ? 魔王:いや、ちょっと質問があっての。 青:質問だと? 白:僕らが魔王の質問に素直に答えると思いますか? 魔王:ふむ、それもそうか。 黒:質問ってなーに? 青:おい、コール! まさか答える気なのか? 黒:だって気にならない? ここで倒しちゃったら永遠の謎だよ? 赤:っは! 確かに! 青:それは……そうかも知れんな。 白:全クリ出来なくなるかもですね。 黒:でしょ? 魔王:しれっと倒せる前提なのが引っかかるな。 青:しかしだな、こういうのは聞かない方が無難じゃないか? うっかり選ぶとゲームオーバーの選択肢が無いとも限らない。 白:せかいのはんぶん、的な。 赤:っは! 確かに! 青:だろ? 黒:でも、それって間違えなければいいんじゃない? 赤:っは! 確かに! 黒:そのあと魔王倒しちゃえばめでたしめでたし! 赤:っは! 確かに! 青:確かにじゃないフラン、お前ちょっとコールに甘すぎるぞ。 赤:っは! 確かに! 青:はぁ……。 白:まぁ答えたくなければ答えない選択もありだと思いますよ。 赤:っは! 確かに! 白:…………。 黒:それで、質問ってなーに? 魔王:ふむ。では質問なのじゃが、おぬしらの中の誰が勇者なのじゃ? 青:…………。 赤:…………。 白:…………。 黒:…………。 魔王:おぬしらの中の誰が勇者かと聞いておるのじゃが……、なんじゃ答えられぬか? 青:……いや、それはどういう意味だ? 魔王。 魔王:どういうって、そのままの意味じゃが? 白:そのままの意味、ですか? 魔王:そうじゃが。 赤:そのままって言ったってよ? 黒:あたし達、勇者だし。ねー? 青:ああ。最初に名乗ったように、我々は《ブレイヴ・シーズン》。四人組の勇者パーティーだ。 魔王:勇者パーティーなのは分かっておる。 赤:なら、それが答えだろ。 白:何の疑問があるんです? 魔王:いや、じゃからな? 四人パーティーのうち一人が選ばれし勇者で、それ以外はなんかギルドとか旅の道中で一緒になった友達みたいな感じなんじゃろ? よく知らんけど。 黒:えーっと、 青:それは、 白:つまり、 赤:どういうことだ? 魔王:いや、なに。正直、我の目的を妨げる、生意気な勇者を返り討ちにできたらそれで良いから勇者以外の他の奴らは見逃してやっても良いかなって思ってるわけよ。ドラゴンのク……忌避剤もじゃが、 青:言い直したな。 黒:言い直したね。 魔王:そこは突っ込むな。とにかく無駄な殺生したくない的な。我って蜘蛛とか見つけたら外に逃がすタイプだし。流石に危険な蜂とか不快なGは始末するけど。みたいなそんな感じ? 赤:あーね。 白:いや、僕ら虫扱いされてるんですが。 青:しかしどうしてそんなことをする必要がある? 黒:牙を剥くかも知れない災いの種なんて残らず全部粉砕するべきだと思うけどねー? 魔王:そうなのじゃが容赦ないな小娘。……まぁ魔王的には、やっぱ世界支配した後の事も考えてんのよ。 赤:後のことだぁ? 今を全力で生きろよ。 魔王:良いこと風に言っておるが、後先くらいは考えよ愚か者。 赤:ぐぬぬ。 魔王:今は敵じゃが、世界支配するってことは、おぬしらもいずれ我の下につくわけじゃん? 青:お前などに屈さないが。 魔王:威勢は良いが、我の支配する世界ではそのようなことも言っておれんじゃろうて。さておき、未来ある有能な若者をここで始末するのもどうかと思うのじゃよ我は。 白:戦後処理、ですか。 魔王:四天王も、側近も失った故な。……まぁ、わりと生きておるのもおるが。 赤:あいつら逃げ足だけは早かったからな! 魔王:我が魔王軍のスローガンは『いのちをだいじに』じゃからな。 黒:あたし達は『ガンガンいこうぜ』だよ。 魔王:生き急ぐでない、若人よ。というわけで選ばれし勇者、手ぇ挙げてみ? : 0:四人、手を挙げる。 : 青:はい。 赤:はい! 白:はい……。 黒:はーい! 魔王:……あれ? 全員? 赤:ったりめぇだろ。 青:我々は勇者だ。 白:挙げない理由がありません。 黒:決まってるよねー? 魔王:あー、なるほどの。うんうん。そりゃまぁここで手を上げなかったら裏切りになるもんなぁ。それは関係ぎくしゃくしちゃうよな。 赤:っは! 確かに! 魔王:よし、では目ぇ瞑って手を挙げることにしてみようかの。……選ばれし勇者! はーい! : 0:四人、手を挙げる。 : 青:……。 赤:……。 白:……。 黒:……。 魔王:……うーん、やっぱり全員か。マジで全員勇者なのか? 赤:だからそう言ってんだろ。 青:何度も言うが我々は勇者だ。 白:よって挙げないという選択はありません。 黒:ゲームオーバーになるかもしれないしねー? 魔王:いや、そんなことにはならんと思うが……。 黒:分かんないじゃん? 魔王:分かれよ。というか、我がやらせておいてなんじゃが、従うのな。 赤:はぁ? だから何なんだよ? 魔王:いや、敵の前で、魔王の前で当たり前のように目を瞑るのなって。不意打ちとか警戒せんのおぬしら? 赤:っは! 確かに! 青:っは。そんなもの、貴様がそんな卑怯なことはしないと信じていただけだ。 赤:そうだぜ! セレスの言うとおりだ! まさかそんなみみっちい真似はしねぇよなぁ魔王さんよぉ! 白:いい加減黙りましょう。フラン。 黒:あはは、フラン怒られてる~。 魔王:おぬしら緊張感ゼロか? なんかやたら素直じゃし。良く生き残ったな。逆にすごいわ。 青:勇者だからな。 魔王:てか、嘘ついてない? 白:嘘、ですか? 赤:おいおいおいおい! 言いがかりはやめろよな!? 俺達は嘘なんてついてねぇ! 俺は自分のハートに正直に生きてんだよ! 魔王:おぬしはハートというか嘘つく頭が無さそうじゃがな。 青:フランの頭のことはさておき。 赤:さておきって何だぁ! 青:どうして貴様はそんなに我々を疑う? 白:勇者が四人居てはいけない理由でもあるんですか? 黒:四人相手だと負けちゃう! みたいな? 魔王:いや、別にそういう訳じゃないんだけど、聞いてないんじゃよな。 白:聞いてない? 魔王:ああ。先代からの引き継ぎ資料には『勇者は選ばれし一人の若者』って書いてあったんじゃよ。複数人いるなんてどこにも書いとらんから、それ話違うくね? って。 黒:あーね。 白:それは引き継ぎ資料に不備があったのでは? 魔王:いや、あの魔王そのへんしっかりしてたからそんな筈は無いんじゃが……あ! そうだ! 赤:何だよ? 魔王:聖剣! 青:聖剣? 黒:聖剣がどうかしたのー? 魔王:聖剣に選ばれた者が勇者として目覚める! 的な! 白:確かに伝承ではそういう感じになってましたね。 魔王:はい! と言うわけで聖剣を出すのじゃ! 赤:……おい、セレス、どうする? 青:どうすると言ってもな。どうせ戦いになったら使うし、いいんじゃないか? 白:それもそうですね。 赤:じゃあ、出すか! 黒:あ! 魔王:なんじゃ? 黒:せっかくだからせーのでいかない? 魔王:はぁ? 青:せーの? 白:足並みを揃えるんですか? 黒:みんなの力で辿り着いたから、最終決戦もしっかり合わせていきたいなって。 魔王:…………。 赤:へぇ、良いアイデアだな! さっすがコールだ! 黒:えへへ、ありがとフラン。 魔王:早くしてくんないかな……? 白:それは楽しそうですね。 魔王:無視? 黒:でしょ? グウェイン。 白:良いと思います。 黒:ねぇやってもいーい? セレス? 青:うむ。かまわんぞコール。 黒:やったぁ! 魔王:さぁ勇者よ! 聖剣を出すのじゃ! 赤:あ! だったらついでに「覚悟しろ魔王」も言っとこうぜ? 魔王:なんじゃと!? 青:ふふ、悪くないな。その前に「出でよ聖剣」と言うのはどうだろう? 黒:やろう! 魔王:やるな! 赤:やろうぜ! 魔王:やるな! 白:楽しくなってきましたね。 魔王:楽しくないわ! 黒:じゃあみんな準備はいーい? 魔王:準備なんてとっくに済んでおるわ! 黒:3、2、1でいくからね? 青:わかった。 赤:おっけー。 白:いいですよ。 魔王:はぁ、勝手にせい。 黒:うん! 3、2、1 : 0:四人同時に。 : 青:せーの! 赤:せーの! 白:せーの! 黒:せーの! : 0:四人、各々得物を取り出す。 : 青:出でよ聖剣《ブレイヴ・プラウ》! 覚悟しろ魔王! 赤:出でよ聖剣《ブレイヴ・マウア》! 覚悟しろ魔王! 白:出でよ聖剣《ブレイヴ・サイス》! 覚悟しろ魔王! 黒:出でよ聖剣《ブレイヴ・シザー》! 覚悟しろ魔王! : 魔王:我はいったい何を見せられておるのか。しかし、うーむ。全員か。 青:とくと見よ私達の聖剣の耀き! 赤:この耀きが偽りに見えるかぁ!? 白:つまり僕達に偽りは無く! 黒:選ばれし勇者ってやつなんだよね! 魔王:確かに聖剣的な気配感じるが……。 青:感じるが? 魔王:全員剣じゃねぇし。 赤:あん? 魔王:ねぇ、ふざけておる? 白:僕達は真剣ですよ! 魔王:いや、どこがじゃ。 黒:見て分からない?! 魔王:分かるか、何じゃそれ。 青:だから、聖剣だと言っているだろう? 魔王:おぬしのそれは何じゃ? 青いの。 青:《ブレイヴ・プラウ》だ。 魔王:鍬じゃろ。魔王を耕してどうする。 青:悪によって荒れ果てた大地を蘇らせる的な! 魔王:新たな悪が芽生えるだけじゃろ。 魔王:おぬしはなんじゃ、黒いの? 黒:《ブレイヴ・シザー》だよ! 魔王:鋏、しかも剪定鋏って我、枝扱いされておる? 黒:悪の芽を摘み取る、みたいな! 魔王:何が悪じゃ。おぬしのシルエットB級ホラーじゃぞ。 魔王:で、白いの、おぬしは? 白:《ブレイヴ・サイス》です。 魔王:鎌な。おぬしは比較的マシな気がするが、我は雑草か? 作物か? 白:作物です。 魔王:違うわ馬鹿たれ。魔王じゃわ、収穫してどうするんじゃ。勇者じゃ無くて死神なのか? 魔王:そしておぬしに至ってはほんと何? 赤いの。 赤:《ブレイヴ・マウア》だぜ! 魔王:鎌と鋏と鍬はギリ赦せるわ。なんかおかしいけど。でもおぬし、それ芝刈機じゃろ。 赤:《ブレイヴ・マウア》だぜ! 魔王:二回も言うな。なんじゃ我は芝生か? 庭か? ゴルフ場か? 赤:まぁ俺にとっちゃ魔王なんて庭みたいなもんだな! 魔王:適当な返事をするでないわ! たわけ! それでどうやって戦うのよ? 赤:なんか良い感じに! 魔王:……はぁ。おぬしらいったいどこで聖剣(仮)手に入れたの? : 0:四人同時(バラバラでも良い) : 青:コメリだが? 赤:コーナンだぜ! 白:カインズです。 黒:ホーマックだよー。 : 魔王:じゃよな! やっぱホームセンターじゃよな! おぬしらのそれ武具じゃなくて農具じゃもんな! はぁ! 久しぶりに勇者が来たと思えば、勇者がホームセンターで聖剣手に入れる時代か。やれやれじゃな。 魔王:ふっ! まぁ良い! 魔王:農具じゃろうが、芝刈機じゃろうが四人とも勇者に相違ないというのなら、遠慮はせぬぞ? 赤:っへ! 面白ぇ! 青:のぞむところだ魔王! 白:僕らの力を見せてあげますよ。 黒:私達の勇者の力を、ね。 魔王:ホームセンターに選ばれし、勇者、か。生きて帰れると思わぬことだ! 青:隠れた悪も掘り起こす! 美しき魂! 青の勇者セレスト・スプリング! 赤:芽生えた悪は駆逐する! 猛き血潮! 赤の勇者フラン・ニュー・サマー! 白:悪の実り刈り取ります! 清き精神! 白の勇者グウェイン・オータム! 黒:悪の枝葉をつみ取るの! 気高き心! 黒の勇者コール・ウィンター・ステラ! 魔王:茶番は終わりだ! 我は黄金の魔王フラヴィア・エマ・コスモス! 青:……そう、我ら! : 0:四人同時。 : 青:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 赤:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 白:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! 黒:勇者の季節《ブレイヴ・シーズン》! : 魔王:いざ――参らん!