台本概要
554 views
タイトル | 声優さんと駅員さん |
---|---|
作者名 | ヒデじい (@taltal3014s) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
女性声優さんが子供のふりをしたり、おばあちゃんのふりをするお話
554 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
花子 | 女 | 69 | 29歳の演技派女性声優 |
駅員 | 男 | 47 | 駅員。20代前半ぐらい |
セールスマン | 男 | 15 | 胡散臭いセールスマン。駅員さんと兼役 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
花子:私は29歳の演技派声優。そんな私は……今、大ピンチに陥っている。
花子:今月の生活費が入ったお財布を電車に忘れてきてしまったのだ……。
花子:どうしよう……? 駅に電話しようかしら……?
花子:でも、子供っぽいお財布だから、なんだか電話するのも恥ずかしい……。
花子:一体どうすれば……!?
0:花子、しばらく苦悩した後に思いつく
花子:あ……! そうだわ! 私は声優。演技はお手の物。
花子:小さい女の子のふりをして電話すれば良いのよ……!
0:花子、受話器に手をかける
花子:よーし、かけるわよ……!
花子:普段のお仕事よりも緊張するけど……それでも私はやるわ! この困難なミッションを乗り切ってみせる!
花子:ピッポッパ……っと。
0:駅員が電話に出る
駅員:はい、もしもし。ボイコネ駅です。
0:花子、子供の声に切り替えて話す
花子:(子供の声で)あのー、もしもし、こんにちは・・・。
花子:すみません、ボイコネ駅の落し物センターの人ですか・・・?
駅員:はい、そうですよ。お嬢ちゃん、落し物ですか?
花子:(よし、大人だってバレてない・・・! いけるわ! さすが私!)
駅員:・・・? お嬢ちゃん?
花子:あ、えーっと・・・電車におさいふを忘れてしまって、そちらに届いてないでしょうか・・・?
駅員:お財布かあ・・・。ごめんなさい、今のところ届いてないですね。
花子:そうですか・・・。
駅員:では、私が後で探しておきますね。
駅員:ちなみに、どんなお財布でしょうか? 特徴を教えてもらってもいいですか?
花子:とくちょう・・・? えーっと・・・あのー・・・。
駅員:はい。
花子:色はピンク色で、『くまごろう』のお顔が大きく描いてあります・・・。
駅員:くまごろう・・・?
駅員:あの、夕方にやっている子供向けアニメの?
花子:は、はい・・・そうです。子供っぽいおさいふで、すみません・・・。
駅員:いえいえ、そんな。実は私も大好きなんですよ、くまごろう♪ 小学生の妹とよく見ています。
花子:えっ、お兄さんも?
駅員:いやあ、特に先週のお話は良かったですね。お友達のキリンくんと・・・。
花子:わあ、分かります! あのお話はすごく感動しました! わたし、テレビの前で泣いちゃって・・・。
駅員:ええ、私も妹と一緒に大泣きしちゃいましたよ。はは、大の男なのに恥ずかしい。
花子:ふふっ、そんなことないですよ? くまごろうは本当に名作ですから。
駅員:はは、そうですね。
花子:あのあの! わたし、348話が特に好きで・・・! 特にあのCパートが・・・!
駅員:初めてくまごろうが宇宙に行ったシーンですね。いやあ、あの時は熱かったですね。
花子:うんうん、わかってもらえて嬉しいです・・・♪
駅員:それから、主題歌も凄く良いんですよね。歌詞がとっても素敵で、大人になってから改めて良さがわかりました。
花子:そう! そうなんです! 私もあのお歌が大好きで・・・! 落ち込んだときに聞くと元気が出るんです。
駅員:そうそう。お話も歌もキャラクターも、どれもとっても素敵なので、昔から大好きな作品なんです、くまごろう。
花子:えへへ、私もです。もう子供の頃からずっと大好きで・・・。部屋中、くまごろうのグッズだらけです。
花子:それに、実は私が初めて演じさせてもらった作品でもあるので・・・思い入れが深くて。本当に、大好きな作品なんです。
駅員:へえ・・・? 子供の頃から・・・?
花子:あ・・・! はい・・・! えーっと、よ、幼稚園の頃から大好きで・・・。
駅員:ああ、そっかあ。じゃあ、さっき言っていた、初めて演じた作品っていうのはお遊戯会とかかな?
花子:そ、そうなんです! 幼稚園のお遊戯会で、くまごろうの劇をする機会があって・・・わたし、うさぴょんの役を。
駅員:なるほど。それは楽しそうですね。おじさんもやってみたいなあ。
花子:ふふ、機会があればぜひやってみて下さい。くまごろうごっこ、楽しいですよ。
駅員:はは、そうですね。妹とやってみます。
0:数分後
駅員:おっと・・・もうこんな時間ですか。もう少しくまごろうのお話を続けたいけど、おじさんもお仕事中だから、この辺で。お財布は後で探しておきますね。
花子:はい。
駅員:では、お嬢ちゃんのお名前と、おうちの電話番号を教えてもらっていいですか?
花子:えっと、お名前は田中花子で・・・、おうちの電話番号は・・・。
駅員:はい、了解しました。それではまた後で連絡させていただきますね。
花子:はい、おねがいします。ありがとうございました。
0:花子、電話を切って一息つく
花子:(地声に戻って)ふう・・・くまごろうトーク、楽しかった・・・♪
花子:残念ながらお財布は見つからなかったけど、なんとか電話はできたわね。あとは連絡を待とうかしら・・・。
花子:それにしてもさすが私ね・・・! 完璧な子供の演技だったわ。魔法少女アニメで長年、ロリっ子を演じてきた経験が生きたわね。
0:ふいに家の電話が鳴る
花子:あら・・・電話だわ。
花子:さっきの駅員さん・・・じゃないわよね。番号が違うし。
花子:固定電話にかってくる場合、セールスが多くて面倒なのよね・・・。でも大事な電話かもしれないし、出ないわけには・・・。
花子:そうだわ・・・! またさっきの手でいこう・・・。
花子:
花子:
花子:
0:花子、再び子供の声で受話器を取る
花子:(子供の声で)はい、もしもし・・・。
セールスマン:もしもし、私、プニプニ商事の者ですが。
花子:プニプニ商事さん・・・?
花子:(ああ、やっぱりセールスだわ・・・)
セールスマン:お嬢ちゃん、おうちの人はいますか?
花子:はい、ちょっと待って下さい。おばあちゃーん、電話〜。
セールスマン:すみません。
0:花子、今度はお婆ちゃんの声に切り替える
花子:(お婆ちゃん声で)はいはい、もしもし。
セールスマン:ああ、奥様、すみません、お忙しいところを。
花子:いえいえ。
セールスマン:私、プニプニ商事の者でございます。
セールスマン:只今、当社で新開発した『すごく良く落ちる洗剤』を無料でプレゼントするキャンペーンをやっておりまして。
花子:ほう、すごく良く落ちる洗剤かい。
セールスマン:ええ、これさえあればどんな汚れも一発で落とせます。しかもシャツから布団、スーツまで何でもお洗濯可能! もうクリーニングに出す必要はありません。
花子:それはなかなか良いねえ。無料でくれるのかい?
セールスマン:ええ、無料で進呈いたします。しかも今なら一年分進呈!
花子:じゃあもらっておこうかねえ。
セールスマン:ええ、ぜひぜひ。
セールスマン:あ・・・すみません、言い忘れておりました。ただし、少々契約書にハンコを押していただく必要がありまして。
セールスマン:洗剤をさしあげるのは、当社で提携しているマンションを購入していただいた方に限ります。どうです? 奥様、マンション経営などに興味は・・・。
花子:ええ? なんだい? 最近耳が遠くてね・・・。
セールスマン:あ、はい。ぜひ、マンションを購入していただきたく・・・。
花子:んん? なんだい? 聞こえないねえ・・・。
セールスマン:(小声で)・・・・ちぇっ。はあ、ダメだな、こんなお婆ちゃん相手だと・・・。
花子:今、舌打ちしたね?
セールスマン:い、いえいえ! 滅相もございません!
花子:『ちぇっ』て音が聞こえたよ。
セールスマン:えっと・・・舌打ちではなく・・・投げキッスでございます! 私の親愛の情を込めた表現でして・・・!
花子:おやおや、テレちゃうねえ。
セールスマン:ははは・・・。
花子:じゃあ、もう一回やってくれるかい?
セールスマン:は、はい・・・では・・・僭越ながら・・・おほん。
セールスマン:チュッ・・・。
花子:ああ、ごめんねえ。よく聞こえなかったのでもう一回。
セールスマン:し、失礼いたします・・・!
0:花子、電話を切って安堵する
花子:(地声に戻って)ふう・・・。さすが私、またしても全然バレなかったわ。
花子:今度から知らない番号の時は毎回おばあちゃんの声で出ようかしら? 演技の練習にもなるし、一石二鳥ね。
花子:・・・さてさて、ひと仕事終えたことだし、日課の昼寝でもしようかしら。
0:
花子:んー・・・、むにゃむにゃ・・・。あ、もうこんな時間・・・?
花子:ふああ・・・よく寝た・・・。
花子:あれ、電話がなってる・・・。
0:電話の音が響く。花子、眠そうな声で受話器を取る
花子:(眠そうな地声で)ふぁい、もしもし・・・。
駅員:ああ、すみません、ボイコネ駅の者ですが。
花子:・・・え? ボイコネ駅!?
駅員:はい。すみません、お休みのところを・・・。あの、田中花子さんはいらっしゃいますか?
花子:い、いえいえ・・・。花子ですね。はい、呼んで参ります。
花子:花子〜。電話よ〜。
0:花子、子供の声に切り替える
花子:(子供の声で)・・・はい、お電話かわりました。
駅員:やあ、お昼ぶりですね。
花子:はい。
駅員:さっきのはお母さんかな? ふふっ、素敵なお声のお母さんですね。
花子:そ、そうですか・・・? あはは、お母さん、寝起きだったみたいで、すみません・・・。
駅員:いえいえ。それはそうと、お財布、見つかりましたよ!
花子:わあ! ホントですか!? 良かった・・・!
駅員:駅員が総出で探して、ようやく見つかりました。線路に落ちていたんです。危なかったですね。見つかってよかった。
花子:そうだったんですか・・・。
花子:すみません、本当にありがとうございます。あのおさいふ、とっても大事なものだったから嬉しいです。
駅員:ははは。お嬢ちゃんとは、くまごろう友達ですからね。頑張って探しましたよ。
花子:ふふっ、そうですね。ありがとうございます。
花子:それじゃあ、おさいふは、あとでお母さんに引き取りに行ってもらいますね。
花子:(よし・・・、これで一件落着ね。完璧だわ! ミッションコンプリート!)
駅員:あー・・・。ただですね、少し問題があって・・・。
花子:え・・・? 問題・・・?
駅員:お財布が見つかった時、口が開いた状態で落ちていたんです。今日は風が強かったから、もしかしたら中身がなくなっているかも・・・。
花子:ええ・・・!?
駅員:ちなみに、あのお財布は貴方の物ですか? 親御さんやご兄弟のではなく?
花子:はい、わたしのです。
駅員:そうですか。では。すみませんが、今から確認のためにお財布の中を見ても良いでしょうか。
花子:はい・・・わかりました。
駅員:えーっと・・・では、失礼して・・・中を拝見・・・。
花子:(ハッ・・・しまった・・・! 流れでうなずいてしまったけど、ここは断ったほうが良かったかも・・・)
駅員:ちなみに、現金はいくら入っていたか覚えていますか?
花子:え、えーっと・・・に、二十万円・・・ぐらい・・・?
駅員:二十万円!? 凄い・・・。おじさんよりお金持ちですね・・・。
駅員:ひい、ふう、みい・・・うん、現金は問題なさそうですね。
花子:よ、よかったです・・・。・
駅員:あとは、クレジットカードが入っていますね。
駅員:え、これはブラックカード・・・!?
駅員:これまた凄いですね・・・。初めて見ましたよ、私は。
花子:は、はい、お母さんに持たされてて・・・。はは、心配性なお母さんで・・・。
駅員:おじさんなんて、ガチャのやりすぎでカード止められてるのに・・・。
花子:えーっと、それはそうと、メモが三枚入っていたと思うんですけど、それは無事でしょうか? 学校で使う、とっても大事なもので・・・。
駅員:メモですか?
駅員:・・・うん、メモは三枚ともちゃんとありますね。
花子:よかった・・・!
駅員:あ、一応、メモの中身を読み上げましょうか?
花子:あ、あー! 大丈夫です!
花子:え、えーっと、じゃあ問題なしということで! では、このへんで失礼しますね。
駅員:はい。本当に無事で良かったですね。
駅員:・・・あ・・・!
花子:・・・?
0:駅員、財布を床に落としてしまう
駅員:す、すみません、お財布を床に落としてしまいました・・・! ごめんなさい、大事な物なのに・・・!
花子:え・・・? いえいえ、大丈夫ですよ。気にしないで下さい。
駅員:ああ・・・お財布の中身がこぼれてしまいましたね・・・。
0:駅員、何かを拾う
駅員:ん、これは・・・?
花子:え・・・。
駅員:・・・運転免許証・・・?
花子:・・・。
駅員:田中花子さん・・・二十九歳の方でしたか・・・。
花子:・・・。
駅員:すみません、『お嬢ちゃん』とお呼びするのは失礼でしたね・・・。まさか年上だとは・・・。
花子:は、はい・・・。いえ、お気になさらず・・・。
駅員:ふふ、大人の方なのに、趣味もお声も可愛らしい方なんですね。
駅員:とっても素敵だと思いますよ。
駅員:くまごろうのお財布、見つかって本当によかったですね。では、後ほどお待ちしていますね。
花子:は、はい、では後ほど・・・。うう、ありがとうございました・・・。
花子:私は29歳の演技派声優。そんな私は……今、大ピンチに陥っている。
花子:今月の生活費が入ったお財布を電車に忘れてきてしまったのだ……。
花子:どうしよう……? 駅に電話しようかしら……?
花子:でも、子供っぽいお財布だから、なんだか電話するのも恥ずかしい……。
花子:一体どうすれば……!?
0:花子、しばらく苦悩した後に思いつく
花子:あ……! そうだわ! 私は声優。演技はお手の物。
花子:小さい女の子のふりをして電話すれば良いのよ……!
0:花子、受話器に手をかける
花子:よーし、かけるわよ……!
花子:普段のお仕事よりも緊張するけど……それでも私はやるわ! この困難なミッションを乗り切ってみせる!
花子:ピッポッパ……っと。
0:駅員が電話に出る
駅員:はい、もしもし。ボイコネ駅です。
0:花子、子供の声に切り替えて話す
花子:(子供の声で)あのー、もしもし、こんにちは・・・。
花子:すみません、ボイコネ駅の落し物センターの人ですか・・・?
駅員:はい、そうですよ。お嬢ちゃん、落し物ですか?
花子:(よし、大人だってバレてない・・・! いけるわ! さすが私!)
駅員:・・・? お嬢ちゃん?
花子:あ、えーっと・・・電車におさいふを忘れてしまって、そちらに届いてないでしょうか・・・?
駅員:お財布かあ・・・。ごめんなさい、今のところ届いてないですね。
花子:そうですか・・・。
駅員:では、私が後で探しておきますね。
駅員:ちなみに、どんなお財布でしょうか? 特徴を教えてもらってもいいですか?
花子:とくちょう・・・? えーっと・・・あのー・・・。
駅員:はい。
花子:色はピンク色で、『くまごろう』のお顔が大きく描いてあります・・・。
駅員:くまごろう・・・?
駅員:あの、夕方にやっている子供向けアニメの?
花子:は、はい・・・そうです。子供っぽいおさいふで、すみません・・・。
駅員:いえいえ、そんな。実は私も大好きなんですよ、くまごろう♪ 小学生の妹とよく見ています。
花子:えっ、お兄さんも?
駅員:いやあ、特に先週のお話は良かったですね。お友達のキリンくんと・・・。
花子:わあ、分かります! あのお話はすごく感動しました! わたし、テレビの前で泣いちゃって・・・。
駅員:ええ、私も妹と一緒に大泣きしちゃいましたよ。はは、大の男なのに恥ずかしい。
花子:ふふっ、そんなことないですよ? くまごろうは本当に名作ですから。
駅員:はは、そうですね。
花子:あのあの! わたし、348話が特に好きで・・・! 特にあのCパートが・・・!
駅員:初めてくまごろうが宇宙に行ったシーンですね。いやあ、あの時は熱かったですね。
花子:うんうん、わかってもらえて嬉しいです・・・♪
駅員:それから、主題歌も凄く良いんですよね。歌詞がとっても素敵で、大人になってから改めて良さがわかりました。
花子:そう! そうなんです! 私もあのお歌が大好きで・・・! 落ち込んだときに聞くと元気が出るんです。
駅員:そうそう。お話も歌もキャラクターも、どれもとっても素敵なので、昔から大好きな作品なんです、くまごろう。
花子:えへへ、私もです。もう子供の頃からずっと大好きで・・・。部屋中、くまごろうのグッズだらけです。
花子:それに、実は私が初めて演じさせてもらった作品でもあるので・・・思い入れが深くて。本当に、大好きな作品なんです。
駅員:へえ・・・? 子供の頃から・・・?
花子:あ・・・! はい・・・! えーっと、よ、幼稚園の頃から大好きで・・・。
駅員:ああ、そっかあ。じゃあ、さっき言っていた、初めて演じた作品っていうのはお遊戯会とかかな?
花子:そ、そうなんです! 幼稚園のお遊戯会で、くまごろうの劇をする機会があって・・・わたし、うさぴょんの役を。
駅員:なるほど。それは楽しそうですね。おじさんもやってみたいなあ。
花子:ふふ、機会があればぜひやってみて下さい。くまごろうごっこ、楽しいですよ。
駅員:はは、そうですね。妹とやってみます。
0:数分後
駅員:おっと・・・もうこんな時間ですか。もう少しくまごろうのお話を続けたいけど、おじさんもお仕事中だから、この辺で。お財布は後で探しておきますね。
花子:はい。
駅員:では、お嬢ちゃんのお名前と、おうちの電話番号を教えてもらっていいですか?
花子:えっと、お名前は田中花子で・・・、おうちの電話番号は・・・。
駅員:はい、了解しました。それではまた後で連絡させていただきますね。
花子:はい、おねがいします。ありがとうございました。
0:花子、電話を切って一息つく
花子:(地声に戻って)ふう・・・くまごろうトーク、楽しかった・・・♪
花子:残念ながらお財布は見つからなかったけど、なんとか電話はできたわね。あとは連絡を待とうかしら・・・。
花子:それにしてもさすが私ね・・・! 完璧な子供の演技だったわ。魔法少女アニメで長年、ロリっ子を演じてきた経験が生きたわね。
0:ふいに家の電話が鳴る
花子:あら・・・電話だわ。
花子:さっきの駅員さん・・・じゃないわよね。番号が違うし。
花子:固定電話にかってくる場合、セールスが多くて面倒なのよね・・・。でも大事な電話かもしれないし、出ないわけには・・・。
花子:そうだわ・・・! またさっきの手でいこう・・・。
花子:
花子:
花子:
0:花子、再び子供の声で受話器を取る
花子:(子供の声で)はい、もしもし・・・。
セールスマン:もしもし、私、プニプニ商事の者ですが。
花子:プニプニ商事さん・・・?
花子:(ああ、やっぱりセールスだわ・・・)
セールスマン:お嬢ちゃん、おうちの人はいますか?
花子:はい、ちょっと待って下さい。おばあちゃーん、電話〜。
セールスマン:すみません。
0:花子、今度はお婆ちゃんの声に切り替える
花子:(お婆ちゃん声で)はいはい、もしもし。
セールスマン:ああ、奥様、すみません、お忙しいところを。
花子:いえいえ。
セールスマン:私、プニプニ商事の者でございます。
セールスマン:只今、当社で新開発した『すごく良く落ちる洗剤』を無料でプレゼントするキャンペーンをやっておりまして。
花子:ほう、すごく良く落ちる洗剤かい。
セールスマン:ええ、これさえあればどんな汚れも一発で落とせます。しかもシャツから布団、スーツまで何でもお洗濯可能! もうクリーニングに出す必要はありません。
花子:それはなかなか良いねえ。無料でくれるのかい?
セールスマン:ええ、無料で進呈いたします。しかも今なら一年分進呈!
花子:じゃあもらっておこうかねえ。
セールスマン:ええ、ぜひぜひ。
セールスマン:あ・・・すみません、言い忘れておりました。ただし、少々契約書にハンコを押していただく必要がありまして。
セールスマン:洗剤をさしあげるのは、当社で提携しているマンションを購入していただいた方に限ります。どうです? 奥様、マンション経営などに興味は・・・。
花子:ええ? なんだい? 最近耳が遠くてね・・・。
セールスマン:あ、はい。ぜひ、マンションを購入していただきたく・・・。
花子:んん? なんだい? 聞こえないねえ・・・。
セールスマン:(小声で)・・・・ちぇっ。はあ、ダメだな、こんなお婆ちゃん相手だと・・・。
花子:今、舌打ちしたね?
セールスマン:い、いえいえ! 滅相もございません!
花子:『ちぇっ』て音が聞こえたよ。
セールスマン:えっと・・・舌打ちではなく・・・投げキッスでございます! 私の親愛の情を込めた表現でして・・・!
花子:おやおや、テレちゃうねえ。
セールスマン:ははは・・・。
花子:じゃあ、もう一回やってくれるかい?
セールスマン:は、はい・・・では・・・僭越ながら・・・おほん。
セールスマン:チュッ・・・。
花子:ああ、ごめんねえ。よく聞こえなかったのでもう一回。
セールスマン:し、失礼いたします・・・!
0:花子、電話を切って安堵する
花子:(地声に戻って)ふう・・・。さすが私、またしても全然バレなかったわ。
花子:今度から知らない番号の時は毎回おばあちゃんの声で出ようかしら? 演技の練習にもなるし、一石二鳥ね。
花子:・・・さてさて、ひと仕事終えたことだし、日課の昼寝でもしようかしら。
0:
花子:んー・・・、むにゃむにゃ・・・。あ、もうこんな時間・・・?
花子:ふああ・・・よく寝た・・・。
花子:あれ、電話がなってる・・・。
0:電話の音が響く。花子、眠そうな声で受話器を取る
花子:(眠そうな地声で)ふぁい、もしもし・・・。
駅員:ああ、すみません、ボイコネ駅の者ですが。
花子:・・・え? ボイコネ駅!?
駅員:はい。すみません、お休みのところを・・・。あの、田中花子さんはいらっしゃいますか?
花子:い、いえいえ・・・。花子ですね。はい、呼んで参ります。
花子:花子〜。電話よ〜。
0:花子、子供の声に切り替える
花子:(子供の声で)・・・はい、お電話かわりました。
駅員:やあ、お昼ぶりですね。
花子:はい。
駅員:さっきのはお母さんかな? ふふっ、素敵なお声のお母さんですね。
花子:そ、そうですか・・・? あはは、お母さん、寝起きだったみたいで、すみません・・・。
駅員:いえいえ。それはそうと、お財布、見つかりましたよ!
花子:わあ! ホントですか!? 良かった・・・!
駅員:駅員が総出で探して、ようやく見つかりました。線路に落ちていたんです。危なかったですね。見つかってよかった。
花子:そうだったんですか・・・。
花子:すみません、本当にありがとうございます。あのおさいふ、とっても大事なものだったから嬉しいです。
駅員:ははは。お嬢ちゃんとは、くまごろう友達ですからね。頑張って探しましたよ。
花子:ふふっ、そうですね。ありがとうございます。
花子:それじゃあ、おさいふは、あとでお母さんに引き取りに行ってもらいますね。
花子:(よし・・・、これで一件落着ね。完璧だわ! ミッションコンプリート!)
駅員:あー・・・。ただですね、少し問題があって・・・。
花子:え・・・? 問題・・・?
駅員:お財布が見つかった時、口が開いた状態で落ちていたんです。今日は風が強かったから、もしかしたら中身がなくなっているかも・・・。
花子:ええ・・・!?
駅員:ちなみに、あのお財布は貴方の物ですか? 親御さんやご兄弟のではなく?
花子:はい、わたしのです。
駅員:そうですか。では。すみませんが、今から確認のためにお財布の中を見ても良いでしょうか。
花子:はい・・・わかりました。
駅員:えーっと・・・では、失礼して・・・中を拝見・・・。
花子:(ハッ・・・しまった・・・! 流れでうなずいてしまったけど、ここは断ったほうが良かったかも・・・)
駅員:ちなみに、現金はいくら入っていたか覚えていますか?
花子:え、えーっと・・・に、二十万円・・・ぐらい・・・?
駅員:二十万円!? 凄い・・・。おじさんよりお金持ちですね・・・。
駅員:ひい、ふう、みい・・・うん、現金は問題なさそうですね。
花子:よ、よかったです・・・。・
駅員:あとは、クレジットカードが入っていますね。
駅員:え、これはブラックカード・・・!?
駅員:これまた凄いですね・・・。初めて見ましたよ、私は。
花子:は、はい、お母さんに持たされてて・・・。はは、心配性なお母さんで・・・。
駅員:おじさんなんて、ガチャのやりすぎでカード止められてるのに・・・。
花子:えーっと、それはそうと、メモが三枚入っていたと思うんですけど、それは無事でしょうか? 学校で使う、とっても大事なもので・・・。
駅員:メモですか?
駅員:・・・うん、メモは三枚ともちゃんとありますね。
花子:よかった・・・!
駅員:あ、一応、メモの中身を読み上げましょうか?
花子:あ、あー! 大丈夫です!
花子:え、えーっと、じゃあ問題なしということで! では、このへんで失礼しますね。
駅員:はい。本当に無事で良かったですね。
駅員:・・・あ・・・!
花子:・・・?
0:駅員、財布を床に落としてしまう
駅員:す、すみません、お財布を床に落としてしまいました・・・! ごめんなさい、大事な物なのに・・・!
花子:え・・・? いえいえ、大丈夫ですよ。気にしないで下さい。
駅員:ああ・・・お財布の中身がこぼれてしまいましたね・・・。
0:駅員、何かを拾う
駅員:ん、これは・・・?
花子:え・・・。
駅員:・・・運転免許証・・・?
花子:・・・。
駅員:田中花子さん・・・二十九歳の方でしたか・・・。
花子:・・・。
駅員:すみません、『お嬢ちゃん』とお呼びするのは失礼でしたね・・・。まさか年上だとは・・・。
花子:は、はい・・・。いえ、お気になさらず・・・。
駅員:ふふ、大人の方なのに、趣味もお声も可愛らしい方なんですね。
駅員:とっても素敵だと思いますよ。
駅員:くまごろうのお財布、見つかって本当によかったですね。では、後ほどお待ちしていますね。
花子:は、はい、では後ほど・・・。うう、ありがとうございました・・・。