台本概要
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タイトル | 虎と桜 |
---|---|
作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
街を歩く そこには、行列のできた店や 写真映えを気にしたメニューや 外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる それを"表"だとする そんな表から少し外れて"裏"に行く そこには、映えを気にしない店がある あるのは、『こだわり』 マスターこだわりの珈琲だったり こだわりのアンティークだったり そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる 私は、それが好きだ ゆっくりと流れる時間の中で 私は一人、この時間を、私の世界に閉じ込めるのだ 296 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
桜子 | 女 | 171 | 女子大生。人と関わることが苦手で、服装も相待って冷たくみられがち。 |
彪子 | 女 | 157 | 女子大生。かっこよくみられたいが、可愛い見た目をしている。喫茶店でバイト中。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:モノローグ
桜子:街を歩く
桜子:そこには、行列のできた店や
桜子:写真映えを気にしたメニューや
桜子:外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
桜子:それを"表"だとする
桜子:そんな表から少し外れて"裏"に行く
桜子:そこには、映えを気にしない店がある
桜子:あるのは、『こだわり』
桜子:マスターこだわりの珈琲だったり
桜子:こだわりのアンティークだったり
桜子:そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
桜子:私は、それが好きだ
桜子:ゆっくりと流れる時間の中で
桜子:私は一人、この時間を、私の世界に閉じ込めるのだ
0:
桜子:こんにちは
0:お好きな席にと声がかかる
桜子:あ、また増えてる
桜子:マスター、これどこで見つけてくるんだろ?
0:机に飾ってある小さな人形たち
0:それを横目にメニューを取る
桜子:すみません、カフェラテ…
桜子:えっと、マンデリンで
0:注文を終え、一息つくーー
桜子:『やっぱりこの時間が私は好きだとそう思う
桜子:ゆっくり流れるこの時間がーーだけど』
彪子:遅れましたーー!あっ
桜子:『ゆっくりと流れる時間は終わりを告げた』
0:
桜子:(うん、やっぱり美味しい)
0:
桜子:『カフェラテが届き、一息
桜子:カウンターの奥では、さっき入ってきた
桜子:女の子が急いで準備を始めていた』
彪子:マスター、珍しいですね
彪子:若いお客様ですよ!
彪子:こんな辺鄙な場所にねー!
桜子:(聞こえてますけど…まぁ、いいか)
0 :
桜子:『ゆっくりと流れていたはずの時間は
桜子:少しだけ、早くなっていた気がした』
彪子:ねぇ、マスター…
桜子:『女の子はマスターとコソコソと何かを話している
桜子:正直、目の前でやられると気になってしまう
桜子:そんな気を逸らす為に一口、飾ってある人形で
桜子:手遊びを始めていたら』
彪子:あのー、お隣いいですか?
桜子:え?あ、えっと
彪子:今、お客様少なくて
彪子:マスターに言ったら喋っていいよって
桜子:はぁ…
彪子:あ、迷惑でした?
桜子:『正直、そうだと言いたい
桜子:私は、この一人の時間を楽しむために
桜子:ここに来ているから、だけど
桜子:私の口から出た言葉に、私自身が驚いた』
0:
桜子:いいですよ
彪子:わぁ!やったー!
彪子:私、最近ここでバイト始めて
彪子:歳が近そうな人が来るのが初めてで
桜子:あぁ、そうなんですか
桜子:私も最近なので、ここを知ったのは
彪子:表には行かないんですか?
桜子:え?表?
彪子:あ!えっと、表っていうのは
彪子:ほら、こんな辺鄙なところじゃなくて
彪子:今時のお店っていうか
彪子:ほら、飲まれてるカフェラテも普通でしょ?
彪子:もっとラテアートしてるお店とか
桜子:私は、こっちの方が好き
桜子:こだわりがあるみたいで
桜子:だから、表より裏が好き
彪子:似てますね、私たち
桜子:どこが、ですか?
彪子:裏の方が好きなところとか
彪子:その人形とか
桜子:いや、人形は別に…手持ち無沙汰というか…
桜子:好きなんですか?こういう店
彪子:好きじゃないとバイトしないですよ!
彪子:ちなみに、その右から四番目からは
彪子:私が持ってきたやつです
桜子:なるほど
桜子:…表と裏、たしかに私もそう呼んでました
彪子:ちょっと驚いた顔してたんで
彪子:なんとなく気付きました
桜子:…よく、見てるんですね
彪子:接客業なので!
桜子:『よく笑うその顔が印象的だった
桜子:それが、私と虎との出会い』
0:
桜子:歳って聞いても大丈夫ですか?
彪子:二十歳ですよ
桜子:あ、同じ
彪子:え!てことは中央ですか!?
桜子:え、は、はい
彪子:わぁ!私、西宮の方!
桜子:あー…あの
彪子:そんな怪訝な顔しないでくださいよ
彪子:評判ほど悪くない大学ですよ!
桜子:あ、ごめんなさい
桜子:意外と近くに住んでるんですね
彪子:仲良くなれそうですね!
桜子:いや…それはどうですかね
彪子:はっきり言いますね〜
桜子:…私、あまりその
桜子:友達とかそういうの慣れてなくて
彪子:だから一人で?
桜子:…半分かな
桜子:一人の時間が好きっていうのもあるし
彪子:じゃあ私、本当にお邪魔しちゃった!?
桜子:あ、いや、そういうわけじゃ
彪子:じゃあ、友達になりましょう!
桜子:え!?
彪子:同い年だし、大学も近いし
彪子:同じ辺鄙な場所を…いや!裏を愛する者として!
桜子:いや、愛してはないかも
彪子:えー!そこは愛しましょうよー!
彪子:あ!じゃあ、自己紹介しよう!
桜子:…安藤です
彪子:下の名前は?
桜子:えっと…桜子、です
彪子:可愛い名前!
桜子:…似合わないでしょ?
彪子:何が?
桜子:桜子ってもっとこう
桜子:可愛い感じの子の名前というか…
桜子:例えば、あなたみたいに
彪子:あはは、可愛いって言われた
桜子:私は、そういう可愛さっていうのに疎いし
桜子:自分を可愛いとも思わないし
彪子:うーん、確かに可愛いというより
彪子:綺麗というか、格好良さもある
桜子:そういうの苦手ってこともあって
桜子:髪もずっとショートだし
彪子:私は好きだよ
桜子:っ…、ありがとう
彪子:照れてる、可愛い
桜子:はい!次、次はそっち!
彪子:やっぱり似てる、私たち
桜子:似てる?
彪子:私の名前、虎子っていうの
桜子:虎!?
彪子:あはは、ビックリだよね
桜子:あ、いや似合わないっていうか
彪子:嘘。本当は彪子、西村彪子
彪子:あ、ちょっと待ってね
0:紙に名前を書く彪子
彪子:これ、これで彪子
桜子:あ、虎だ
彪子:見つかちゃった!
彪子:話せば長いんだよー、聞く?
桜子:聞いて欲しそうなんだけど?
彪子:私の両親がね、不良なの
桜子:どうリアクションしていいのか困る
彪子:レディースと暴走族だったんだって
桜子:えぇ…じゃあ、あなたも
彪子:彪子でいいよ
彪子:私はそんな二人から生まれたけど
彪子:全くそっちに興味なくて
桜子:確かに、そんな感じはするけど
桜子:虎子って最初の嘘はなんだったの?
彪子:本当は虎子って付けたかったみたい
彪子:ただね、虎子って調べると
0:店内をキョロキョロと見渡し、小声で
彪子:お尻の穴って意味があるらしいよ
桜子:そうなの?
彪子:そ、だけど虎をどうしても入れたくて
彪子:色々調べたら、これになったんだって
桜子:凄い名前だね
彪子:私もね?似合わないと思う
彪子:だけど、この名前好きだよ
桜子:そうなの?
彪子:うん、名は体を表すっていうけど
彪子:そうじゃなくてもいいと思うし
彪子:実際、不良じゃないし
彪子:あ!タバコとか興味持ったこともないよ?
彪子:けど、かっこいいでしょ?虎!
桜子:…かっこいい
桜子:私も、似合わないと思うけど
桜子:桜は好き、毎年どこかに見に行くから
彪子:両親と?
桜子:ううん、一人で
桜子:一人の時間が好きだから
彪子:次は、一緒に行く?
桜子:え?
彪子:まだ春は先だけど、予約
桜子:…考えとく
彪子:楽しみだね
桜子:行くとは言ってないけど
彪子:ふふ、行ってくれる気がしてる
桜子:考えとく
彪子:それとね、彪子って嫌いじゃないけど
彪子:両親が付けたかった本当の名前
彪子:実はちょっと気に入ってる
彪子:私はよく友達に
彪子:顔が天然っぽいって言われる
桜子:なんか、ちょっとわかる気がするけど
彪子:可愛いっていうことだなって
彪子:良いように解釈してるけどね!
彪子:けど、かっこよくなってみたい
彪子:桜子みたいな、クールで大人な
桜子:…そんなもんじゃないよ
桜子:ただ、人と話すのが苦手なだけ
彪子:虎のスカジャンかっこいいし
桜子:こ、これは、たまたま!
桜子:確かにそういう趣味はあるけどさ…
彪子:人って、自分に無いものに憧れるんだって
彪子:鼻が低い人は、高い人を好きになりがちとか
彪子:身長が低い子は、高い人を求めたり
彪子:だから、私は少しでもかっこよくなってみたくて
彪子:虎子って言ってみた
桜子:十分…
彪子:ん?
桜子:私は、十分かっこいいと思う
桜子:だから、虎って呼ぶ
彪子:……
彪子:是非!
0:
桜子:『その時の虎の顔は満開の桜の様だった』
0:
0:
0:
桜子:こんにちは
0:お好きな席にと声がかかる
桜子:あ、また増えてる
彪子:いらっしゃいませー、桜
桜子:また増やしたの?これ
彪子:良いガチャ見つけてねー!
彪子:あ、待ってて!注文取ってくる!
桜子:(へぇ、珍しい
桜子:若いお客さんが来てる)
彪子:マスター、注文でーす
彪子:カフェモカとアイスコーヒー二つ
彪子:それと、モンブランとプリン、チキンサンドーー
0:注文を伝える彪子
桜子:ちゃんと仕事してるんだなぁ
彪子:え?何か言った?
桜子:ううん、虎が真面目に働いてるとこ
桜子:珍しいなって
彪子:普段、人少ないからねー
彪子:桜も、いっぱい頼んで良いんだよ〜
桜子:いつもので
彪子:はーい
桜子:うわっ、これ光るんだ
彪子:いいでしょー!新しい子
桜子:こういうの好きなところは
桜子:虎って感じはしないね
彪子:虎だって可愛いの好きかもしれないじゃん
桜子:それじゃ、言ってたこと変わってくるんだけど?
彪子:それはそれ、これはこれ
桜子:虎のそういうところは見習いたいわ
彪子:ねぇ、クイズしない?
桜子:クイズ?
彪子:珍しい若いお客様が3人来ています
彪子:さて、あの3人の関係性は?
桜子:趣味悪くない?それ
彪子:まぁまぁ、カフェラテ来るまでの暇つぶしだと思って
桜子:……男2人に女の子が1人
桜子:座り位置からして、カップル…いや、友達?
桜子:…男2人は同い年くらいかな
桜子:けど、女の子は若そうな気がするけど
桜子:うん、じゃあカップルとその友達
彪子:ぶっぶー!残念!
彪子:あの二人は兄妹、それで一人で座ってる方が
彪子:兄の友達かな!
桜子:なんで?
彪子:顔似てるし、距離がカップルの距離じゃない
彪子:あれは家族って感じがする
彪子:けど仲良い方だね、ちょっと近い
桜子:……なんで分かるの?
彪子:接客業だから!
桜子:嘘
彪子:あはは、すぐ言うー!
彪子:注文聞いた時に、分かっちゃった
彪子:けど、あの二人知ってる
桜子:え?そうなの?
彪子:うん、同じ大学の先輩
彪子:向こうは全然知らないだろうけどね
桜子:じゃあ、なんで虎は知ってるの?
彪子:結構有名なんだよー
彪子:めっちゃモテる
桜子:…確かに顔は整ってるけど
彪子:それでね、そんなにモテるのに
彪子:本人は人類皆友達〜って思ってる人だから
彪子:余計、色々言われてて
桜子:あー…、時々いるよねそういう人
彪子:ま、ちょっとした有名人
桜子:ふーん…
彪子:あ、できたみたい
0:
彪子:はい、おまたせ
桜子:ありがと
彪子:桜は夏、何するの?
桜子:えっ?決めてないけど
彪子:あの3人は夏フェスに行くんだって
桜子:へぇ…
彪子:……
桜子:……行く?
彪子:え!?何!?何!?
桜子:……、どっか行く?
彪子:行く!
桜子:っ…、絶対言わせた
彪子:さぁ、何のことでしょう?
桜子:その時、虎の奢りね
彪子:お昼くらいだったら任せてよ!
桜子:も〜…、全然ダメージ受けないじゃん…
彪子:楽しみだね、桜
桜子:『虎の満開の笑顔が咲く度に
桜子:私の世界に色が付いていく』
0:
0:
0:
桜子:こんにちは
彪子:あ!きたきた〜
桜子:はい、これ
彪子:おぉー!できた!?
彪子:海に行った時の!
桜子:うん、けど久しぶりに見たなぁ
桜子:インスタントカメラっていつぶりだろ
彪子:私は小学校の頃は撮ってたよ
桜子:よく覚えてるね
彪子:あー!凄い綺麗!
桜子:へぇ、結構よく撮れてるね
彪子:ね、良い感じだね
彪子:あ、これ…
桜子:ん?…あ!ちょ!それ!
彪子:あはは!めっちゃかっこいい!
桜子:アンタが隠し撮りしたやつでしょ!
桜子:それは返して!
彪子:黄昏てるなぁー
桜子:いいから!
彪子:だめー!これは飾る!
桜子:いや!飾らなくていいから!
彪子:はい、ご注文どうぞー
桜子:はぁ…本当にもう
0:
桜子:それで、それは何かな?虎
彪子:ふふーん、いいでしょー!
桜子:飾るって自分の部屋じゃなかったの?
彪子:そんな事、言ったかな?
桜子:アンタのそういうと、本当…もう
彪子:いいでしょ?別にお客様から見えないし
彪子:マスターも良いって言ったし
桜子:ちょっと!マスター!なんで!?
彪子:それに、ほら!
彪子:これと、これと…あとこれ
彪子:マスター写ってるし
彪子:私と桜とマスターの思い出コルクボード
桜子:本当調子いいんだから
桜子:…けど、写真増えたね
彪子:なんだかんだ遊んだね、私たち
桜子:…そうだね
彪子:これからも写真増やさないと
桜子:…虎のそういうとこ
桜子:私は好きだ……よ
0:急にシャッターを押す彪子
桜子:何してんの?
彪子:桜が好きって言ってくれた記念
桜子:言ってないし
彪子:言った
桜子:嫌いじゃないって言ったの
桜子:それ何?
彪子:ううん、言った
彪子:チェキ、買ったんだ〜
桜子:写真は返して
彪子:やだ、貴重な一枚、これも飾るー!
彪子:あ、映ってきた!
彪子:おぉー!いい感じ!
桜子:…まぁ、確かに
彪子:……
彪子:でしょ?
0:
0:
0:
桜子:こんにちは
彪子:お、きたきた!待ってたよ
桜子:え?
彪子:いつもの、だよね?
桜子:う、うん
桜子:じゃあ、それで
彪子:待ってて!
桜子:?
0:
彪子:おまたせ!
桜子:ありがと…え?何これ?
彪子:ど、どう?
桜子:…可愛い
彪子:よかったー…
桜子:ラテアートかぁ
桜子:写真ではよく見てたけど
桜子:本物初めて見たかも
彪子:そうなの?
彪子:あ、そっか裏だもんね
桜子:ふふっ、そう、裏だから
彪子:そんな裏に表を持ってきてみました
桜子:なるほどね…
0:カウンターの奥にコーヒーカップの残骸を見つける
桜子:……うん、じゃあ評価します
彪子:え!?あ、はい!
桜子:初めてにしては上出来
桜子:けど、まだまだ改善の余地あり
桜子:って感じかな
彪子:そこは精進しまーす
桜子:けど、私は好きだ……
0:チェキのシャッターを押す彪子
桜子:よ……何してるの?
彪子:桜の好きだよ記念
桜子:虎、アンタまた…
桜子:貸して!
彪子:うわぁ!何ー!
桜子:はい、撮るよ
彪子:え?何で!?
桜子:虎ばっかり撮るから
桜子:私の写真が増えるでしょ
桜子:それに…はいチーズ
彪子:?
桜子:……はい、はじめてのラテアート記念
彪子:あっ
桜子:どう?
彪子:…へへっ、いい感じ
0:
0:
0:
彪子:決めた
桜子:急にどうしたの?
彪子:私、チャレンジする
桜子:うん?チャレンジ?
彪子:ねぇ、桜
彪子:その服、どこで買うの?
桜子:服?あぁ…これ?
彪子:初めて会った時も着てたよね
彪子:虎のスカジャン
桜子:そういえば、そうだったかな?
彪子:私、そういうの着たことない
彪子:けど、ずっと気になってた
彪子:桜が着てるの見て、ずっと
桜子:……
桜子:よし、わかった
桜子:バイト終わるまで待ってるから
桜子:買いに行こう、虎
彪子:うん!
0:
彪子:お待たせ!
桜子:じゃあ、行こう
彪子:どこ?大通り出る感じ?
桜子:確かにそっちにもあるけど
桜子:私も思い出したことがあって
彪子:?
彪子:何を?
桜子:裏を愛する者同士
桜子:表じゃなくて、裏で買おう
彪子:……
彪子:あれれ〜?愛しては、ないんじゃなかった?
桜子:……
桜子:ううん、愛してる
桜子:今は言える
彪子:心境の変化ですかー
彪子:ま、私はなんとなくわかってたけどね!
彪子:初めて会った時から愛してる者同士って
桜子:なんでわかったの?
彪子:接客業だから!
桜子:ははっ、言うと思った
桜子:よし、改めて言うと恥ずかしいから終わり!
彪子:はいはい、終わりね
0:
桜子:ここだよ
彪子:うわぁー…桜って感じの店
桜子:なにそれ
桜子:…まぁ、確かにストリート系ばっかりだけどさ
彪子:こういうの初めてだから新鮮
桜子:虎、スカジャンこっち
彪子:え!?こんな種類あるの?
桜子:まぁね、これはほら、アニメのキャラクターのやつ
桜子:こっちは…結構男っぽいやつ
桜子:あとは……
彪子:あ
桜子:?どうした?
彪子:私、これがいい
桜子:……これ?
彪子:うん!
桜子:じゃあ、それにしよう
0:
彪子:あ!えっと着て帰ります!
桜子:え?マジ?
彪子:よいしょっ…と
彪子:あははー、今の服には似合わないかな?
桜子:ううん、大丈夫
桜子:かっこいいよ、虎
彪子:そう?かっこいい?
桜子:うん
彪子:あ、そだ
彪子:写真撮ってもらっていいですか?
桜子:撮るの?
彪子:記念でしょ?
彪子:スカジャンデビュー!
桜子:あはは、そうだね
0:写真を撮ってもらう
彪子:おおー!
彪子:なんかエモい!
桜子:なるほど、これがエモいか
桜子:…私が虎で、虎が桜のスカジャンか
彪子:双子コーデってやつ?
彪子:それとも、お互いの名前を交換した…
彪子:うーん、名刺交換コーデとか!
桜子:ぷっ、何そのネーミング!
彪子:あはは!いいじゃん!
0:笑い合う二人
桜子:…うん、エモい
彪子:ありがとう、桜
桜子:うん、また行こう
彪子:……うん!桜!
0:
0:
0:
0:
桜子:『街を歩く
桜子:そこには、行列のできた店や
桜子:写真映えを気にしたメニューや
桜子:外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
桜子:それを"表"だとする
桜子:そんな表から少し外れて"裏"に行く
桜子:そこには、映えを気にしない店がある
桜子:あるのは、『こだわり』
桜子:マスターこだわりの珈琲だったり
桜子:こだわりのアンティークだったり
桜子:そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
桜子:私は、それが好きだ
桜子:だから、私はこの店に行く』
桜子:こんちは
彪子:あ!いらっしゃいませ!
桜子:『だけど、最近私の目的は変わった
桜子:私は、彼女に会いに行く
桜子:この気持ちは友情が、恋か
桜子:そんなものは、どうでもいい
桜子:ただーー』
彪子:いつもの?
桜子:…ううん、今日はブラック
桜子:アイスで
彪子:意外!何で?
桜子:うーん…まぁ、チャレンジってやつ?
彪子:あはは!わかった、ブラックね
桜子:『ただ、ゆっくりと流れる時間の中に
桜子:少しだけ、写真映えのような彩ができたのだ』
桜子:……ねぇ、虎
彪子:んー?何ー?
桜子:明日
桜子:桜、見に行かない?
0:終
0:モノローグ
桜子:街を歩く
桜子:そこには、行列のできた店や
桜子:写真映えを気にしたメニューや
桜子:外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
桜子:それを"表"だとする
桜子:そんな表から少し外れて"裏"に行く
桜子:そこには、映えを気にしない店がある
桜子:あるのは、『こだわり』
桜子:マスターこだわりの珈琲だったり
桜子:こだわりのアンティークだったり
桜子:そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
桜子:私は、それが好きだ
桜子:ゆっくりと流れる時間の中で
桜子:私は一人、この時間を、私の世界に閉じ込めるのだ
0:
桜子:こんにちは
0:お好きな席にと声がかかる
桜子:あ、また増えてる
桜子:マスター、これどこで見つけてくるんだろ?
0:机に飾ってある小さな人形たち
0:それを横目にメニューを取る
桜子:すみません、カフェラテ…
桜子:えっと、マンデリンで
0:注文を終え、一息つくーー
桜子:『やっぱりこの時間が私は好きだとそう思う
桜子:ゆっくり流れるこの時間がーーだけど』
彪子:遅れましたーー!あっ
桜子:『ゆっくりと流れる時間は終わりを告げた』
0:
桜子:(うん、やっぱり美味しい)
0:
桜子:『カフェラテが届き、一息
桜子:カウンターの奥では、さっき入ってきた
桜子:女の子が急いで準備を始めていた』
彪子:マスター、珍しいですね
彪子:若いお客様ですよ!
彪子:こんな辺鄙な場所にねー!
桜子:(聞こえてますけど…まぁ、いいか)
0 :
桜子:『ゆっくりと流れていたはずの時間は
桜子:少しだけ、早くなっていた気がした』
彪子:ねぇ、マスター…
桜子:『女の子はマスターとコソコソと何かを話している
桜子:正直、目の前でやられると気になってしまう
桜子:そんな気を逸らす為に一口、飾ってある人形で
桜子:手遊びを始めていたら』
彪子:あのー、お隣いいですか?
桜子:え?あ、えっと
彪子:今、お客様少なくて
彪子:マスターに言ったら喋っていいよって
桜子:はぁ…
彪子:あ、迷惑でした?
桜子:『正直、そうだと言いたい
桜子:私は、この一人の時間を楽しむために
桜子:ここに来ているから、だけど
桜子:私の口から出た言葉に、私自身が驚いた』
0:
桜子:いいですよ
彪子:わぁ!やったー!
彪子:私、最近ここでバイト始めて
彪子:歳が近そうな人が来るのが初めてで
桜子:あぁ、そうなんですか
桜子:私も最近なので、ここを知ったのは
彪子:表には行かないんですか?
桜子:え?表?
彪子:あ!えっと、表っていうのは
彪子:ほら、こんな辺鄙なところじゃなくて
彪子:今時のお店っていうか
彪子:ほら、飲まれてるカフェラテも普通でしょ?
彪子:もっとラテアートしてるお店とか
桜子:私は、こっちの方が好き
桜子:こだわりがあるみたいで
桜子:だから、表より裏が好き
彪子:似てますね、私たち
桜子:どこが、ですか?
彪子:裏の方が好きなところとか
彪子:その人形とか
桜子:いや、人形は別に…手持ち無沙汰というか…
桜子:好きなんですか?こういう店
彪子:好きじゃないとバイトしないですよ!
彪子:ちなみに、その右から四番目からは
彪子:私が持ってきたやつです
桜子:なるほど
桜子:…表と裏、たしかに私もそう呼んでました
彪子:ちょっと驚いた顔してたんで
彪子:なんとなく気付きました
桜子:…よく、見てるんですね
彪子:接客業なので!
桜子:『よく笑うその顔が印象的だった
桜子:それが、私と虎との出会い』
0:
桜子:歳って聞いても大丈夫ですか?
彪子:二十歳ですよ
桜子:あ、同じ
彪子:え!てことは中央ですか!?
桜子:え、は、はい
彪子:わぁ!私、西宮の方!
桜子:あー…あの
彪子:そんな怪訝な顔しないでくださいよ
彪子:評判ほど悪くない大学ですよ!
桜子:あ、ごめんなさい
桜子:意外と近くに住んでるんですね
彪子:仲良くなれそうですね!
桜子:いや…それはどうですかね
彪子:はっきり言いますね〜
桜子:…私、あまりその
桜子:友達とかそういうの慣れてなくて
彪子:だから一人で?
桜子:…半分かな
桜子:一人の時間が好きっていうのもあるし
彪子:じゃあ私、本当にお邪魔しちゃった!?
桜子:あ、いや、そういうわけじゃ
彪子:じゃあ、友達になりましょう!
桜子:え!?
彪子:同い年だし、大学も近いし
彪子:同じ辺鄙な場所を…いや!裏を愛する者として!
桜子:いや、愛してはないかも
彪子:えー!そこは愛しましょうよー!
彪子:あ!じゃあ、自己紹介しよう!
桜子:…安藤です
彪子:下の名前は?
桜子:えっと…桜子、です
彪子:可愛い名前!
桜子:…似合わないでしょ?
彪子:何が?
桜子:桜子ってもっとこう
桜子:可愛い感じの子の名前というか…
桜子:例えば、あなたみたいに
彪子:あはは、可愛いって言われた
桜子:私は、そういう可愛さっていうのに疎いし
桜子:自分を可愛いとも思わないし
彪子:うーん、確かに可愛いというより
彪子:綺麗というか、格好良さもある
桜子:そういうの苦手ってこともあって
桜子:髪もずっとショートだし
彪子:私は好きだよ
桜子:っ…、ありがとう
彪子:照れてる、可愛い
桜子:はい!次、次はそっち!
彪子:やっぱり似てる、私たち
桜子:似てる?
彪子:私の名前、虎子っていうの
桜子:虎!?
彪子:あはは、ビックリだよね
桜子:あ、いや似合わないっていうか
彪子:嘘。本当は彪子、西村彪子
彪子:あ、ちょっと待ってね
0:紙に名前を書く彪子
彪子:これ、これで彪子
桜子:あ、虎だ
彪子:見つかちゃった!
彪子:話せば長いんだよー、聞く?
桜子:聞いて欲しそうなんだけど?
彪子:私の両親がね、不良なの
桜子:どうリアクションしていいのか困る
彪子:レディースと暴走族だったんだって
桜子:えぇ…じゃあ、あなたも
彪子:彪子でいいよ
彪子:私はそんな二人から生まれたけど
彪子:全くそっちに興味なくて
桜子:確かに、そんな感じはするけど
桜子:虎子って最初の嘘はなんだったの?
彪子:本当は虎子って付けたかったみたい
彪子:ただね、虎子って調べると
0:店内をキョロキョロと見渡し、小声で
彪子:お尻の穴って意味があるらしいよ
桜子:そうなの?
彪子:そ、だけど虎をどうしても入れたくて
彪子:色々調べたら、これになったんだって
桜子:凄い名前だね
彪子:私もね?似合わないと思う
彪子:だけど、この名前好きだよ
桜子:そうなの?
彪子:うん、名は体を表すっていうけど
彪子:そうじゃなくてもいいと思うし
彪子:実際、不良じゃないし
彪子:あ!タバコとか興味持ったこともないよ?
彪子:けど、かっこいいでしょ?虎!
桜子:…かっこいい
桜子:私も、似合わないと思うけど
桜子:桜は好き、毎年どこかに見に行くから
彪子:両親と?
桜子:ううん、一人で
桜子:一人の時間が好きだから
彪子:次は、一緒に行く?
桜子:え?
彪子:まだ春は先だけど、予約
桜子:…考えとく
彪子:楽しみだね
桜子:行くとは言ってないけど
彪子:ふふ、行ってくれる気がしてる
桜子:考えとく
彪子:それとね、彪子って嫌いじゃないけど
彪子:両親が付けたかった本当の名前
彪子:実はちょっと気に入ってる
彪子:私はよく友達に
彪子:顔が天然っぽいって言われる
桜子:なんか、ちょっとわかる気がするけど
彪子:可愛いっていうことだなって
彪子:良いように解釈してるけどね!
彪子:けど、かっこよくなってみたい
彪子:桜子みたいな、クールで大人な
桜子:…そんなもんじゃないよ
桜子:ただ、人と話すのが苦手なだけ
彪子:虎のスカジャンかっこいいし
桜子:こ、これは、たまたま!
桜子:確かにそういう趣味はあるけどさ…
彪子:人って、自分に無いものに憧れるんだって
彪子:鼻が低い人は、高い人を好きになりがちとか
彪子:身長が低い子は、高い人を求めたり
彪子:だから、私は少しでもかっこよくなってみたくて
彪子:虎子って言ってみた
桜子:十分…
彪子:ん?
桜子:私は、十分かっこいいと思う
桜子:だから、虎って呼ぶ
彪子:……
彪子:是非!
0:
桜子:『その時の虎の顔は満開の桜の様だった』
0:
0:
0:
桜子:こんにちは
0:お好きな席にと声がかかる
桜子:あ、また増えてる
彪子:いらっしゃいませー、桜
桜子:また増やしたの?これ
彪子:良いガチャ見つけてねー!
彪子:あ、待ってて!注文取ってくる!
桜子:(へぇ、珍しい
桜子:若いお客さんが来てる)
彪子:マスター、注文でーす
彪子:カフェモカとアイスコーヒー二つ
彪子:それと、モンブランとプリン、チキンサンドーー
0:注文を伝える彪子
桜子:ちゃんと仕事してるんだなぁ
彪子:え?何か言った?
桜子:ううん、虎が真面目に働いてるとこ
桜子:珍しいなって
彪子:普段、人少ないからねー
彪子:桜も、いっぱい頼んで良いんだよ〜
桜子:いつもので
彪子:はーい
桜子:うわっ、これ光るんだ
彪子:いいでしょー!新しい子
桜子:こういうの好きなところは
桜子:虎って感じはしないね
彪子:虎だって可愛いの好きかもしれないじゃん
桜子:それじゃ、言ってたこと変わってくるんだけど?
彪子:それはそれ、これはこれ
桜子:虎のそういうところは見習いたいわ
彪子:ねぇ、クイズしない?
桜子:クイズ?
彪子:珍しい若いお客様が3人来ています
彪子:さて、あの3人の関係性は?
桜子:趣味悪くない?それ
彪子:まぁまぁ、カフェラテ来るまでの暇つぶしだと思って
桜子:……男2人に女の子が1人
桜子:座り位置からして、カップル…いや、友達?
桜子:…男2人は同い年くらいかな
桜子:けど、女の子は若そうな気がするけど
桜子:うん、じゃあカップルとその友達
彪子:ぶっぶー!残念!
彪子:あの二人は兄妹、それで一人で座ってる方が
彪子:兄の友達かな!
桜子:なんで?
彪子:顔似てるし、距離がカップルの距離じゃない
彪子:あれは家族って感じがする
彪子:けど仲良い方だね、ちょっと近い
桜子:……なんで分かるの?
彪子:接客業だから!
桜子:嘘
彪子:あはは、すぐ言うー!
彪子:注文聞いた時に、分かっちゃった
彪子:けど、あの二人知ってる
桜子:え?そうなの?
彪子:うん、同じ大学の先輩
彪子:向こうは全然知らないだろうけどね
桜子:じゃあ、なんで虎は知ってるの?
彪子:結構有名なんだよー
彪子:めっちゃモテる
桜子:…確かに顔は整ってるけど
彪子:それでね、そんなにモテるのに
彪子:本人は人類皆友達〜って思ってる人だから
彪子:余計、色々言われてて
桜子:あー…、時々いるよねそういう人
彪子:ま、ちょっとした有名人
桜子:ふーん…
彪子:あ、できたみたい
0:
彪子:はい、おまたせ
桜子:ありがと
彪子:桜は夏、何するの?
桜子:えっ?決めてないけど
彪子:あの3人は夏フェスに行くんだって
桜子:へぇ…
彪子:……
桜子:……行く?
彪子:え!?何!?何!?
桜子:……、どっか行く?
彪子:行く!
桜子:っ…、絶対言わせた
彪子:さぁ、何のことでしょう?
桜子:その時、虎の奢りね
彪子:お昼くらいだったら任せてよ!
桜子:も〜…、全然ダメージ受けないじゃん…
彪子:楽しみだね、桜
桜子:『虎の満開の笑顔が咲く度に
桜子:私の世界に色が付いていく』
0:
0:
0:
桜子:こんにちは
彪子:あ!きたきた〜
桜子:はい、これ
彪子:おぉー!できた!?
彪子:海に行った時の!
桜子:うん、けど久しぶりに見たなぁ
桜子:インスタントカメラっていつぶりだろ
彪子:私は小学校の頃は撮ってたよ
桜子:よく覚えてるね
彪子:あー!凄い綺麗!
桜子:へぇ、結構よく撮れてるね
彪子:ね、良い感じだね
彪子:あ、これ…
桜子:ん?…あ!ちょ!それ!
彪子:あはは!めっちゃかっこいい!
桜子:アンタが隠し撮りしたやつでしょ!
桜子:それは返して!
彪子:黄昏てるなぁー
桜子:いいから!
彪子:だめー!これは飾る!
桜子:いや!飾らなくていいから!
彪子:はい、ご注文どうぞー
桜子:はぁ…本当にもう
0:
桜子:それで、それは何かな?虎
彪子:ふふーん、いいでしょー!
桜子:飾るって自分の部屋じゃなかったの?
彪子:そんな事、言ったかな?
桜子:アンタのそういうと、本当…もう
彪子:いいでしょ?別にお客様から見えないし
彪子:マスターも良いって言ったし
桜子:ちょっと!マスター!なんで!?
彪子:それに、ほら!
彪子:これと、これと…あとこれ
彪子:マスター写ってるし
彪子:私と桜とマスターの思い出コルクボード
桜子:本当調子いいんだから
桜子:…けど、写真増えたね
彪子:なんだかんだ遊んだね、私たち
桜子:…そうだね
彪子:これからも写真増やさないと
桜子:…虎のそういうとこ
桜子:私は好きだ……よ
0:急にシャッターを押す彪子
桜子:何してんの?
彪子:桜が好きって言ってくれた記念
桜子:言ってないし
彪子:言った
桜子:嫌いじゃないって言ったの
桜子:それ何?
彪子:ううん、言った
彪子:チェキ、買ったんだ〜
桜子:写真は返して
彪子:やだ、貴重な一枚、これも飾るー!
彪子:あ、映ってきた!
彪子:おぉー!いい感じ!
桜子:…まぁ、確かに
彪子:……
彪子:でしょ?
0:
0:
0:
桜子:こんにちは
彪子:お、きたきた!待ってたよ
桜子:え?
彪子:いつもの、だよね?
桜子:う、うん
桜子:じゃあ、それで
彪子:待ってて!
桜子:?
0:
彪子:おまたせ!
桜子:ありがと…え?何これ?
彪子:ど、どう?
桜子:…可愛い
彪子:よかったー…
桜子:ラテアートかぁ
桜子:写真ではよく見てたけど
桜子:本物初めて見たかも
彪子:そうなの?
彪子:あ、そっか裏だもんね
桜子:ふふっ、そう、裏だから
彪子:そんな裏に表を持ってきてみました
桜子:なるほどね…
0:カウンターの奥にコーヒーカップの残骸を見つける
桜子:……うん、じゃあ評価します
彪子:え!?あ、はい!
桜子:初めてにしては上出来
桜子:けど、まだまだ改善の余地あり
桜子:って感じかな
彪子:そこは精進しまーす
桜子:けど、私は好きだ……
0:チェキのシャッターを押す彪子
桜子:よ……何してるの?
彪子:桜の好きだよ記念
桜子:虎、アンタまた…
桜子:貸して!
彪子:うわぁ!何ー!
桜子:はい、撮るよ
彪子:え?何で!?
桜子:虎ばっかり撮るから
桜子:私の写真が増えるでしょ
桜子:それに…はいチーズ
彪子:?
桜子:……はい、はじめてのラテアート記念
彪子:あっ
桜子:どう?
彪子:…へへっ、いい感じ
0:
0:
0:
彪子:決めた
桜子:急にどうしたの?
彪子:私、チャレンジする
桜子:うん?チャレンジ?
彪子:ねぇ、桜
彪子:その服、どこで買うの?
桜子:服?あぁ…これ?
彪子:初めて会った時も着てたよね
彪子:虎のスカジャン
桜子:そういえば、そうだったかな?
彪子:私、そういうの着たことない
彪子:けど、ずっと気になってた
彪子:桜が着てるの見て、ずっと
桜子:……
桜子:よし、わかった
桜子:バイト終わるまで待ってるから
桜子:買いに行こう、虎
彪子:うん!
0:
彪子:お待たせ!
桜子:じゃあ、行こう
彪子:どこ?大通り出る感じ?
桜子:確かにそっちにもあるけど
桜子:私も思い出したことがあって
彪子:?
彪子:何を?
桜子:裏を愛する者同士
桜子:表じゃなくて、裏で買おう
彪子:……
彪子:あれれ〜?愛しては、ないんじゃなかった?
桜子:……
桜子:ううん、愛してる
桜子:今は言える
彪子:心境の変化ですかー
彪子:ま、私はなんとなくわかってたけどね!
彪子:初めて会った時から愛してる者同士って
桜子:なんでわかったの?
彪子:接客業だから!
桜子:ははっ、言うと思った
桜子:よし、改めて言うと恥ずかしいから終わり!
彪子:はいはい、終わりね
0:
桜子:ここだよ
彪子:うわぁー…桜って感じの店
桜子:なにそれ
桜子:…まぁ、確かにストリート系ばっかりだけどさ
彪子:こういうの初めてだから新鮮
桜子:虎、スカジャンこっち
彪子:え!?こんな種類あるの?
桜子:まぁね、これはほら、アニメのキャラクターのやつ
桜子:こっちは…結構男っぽいやつ
桜子:あとは……
彪子:あ
桜子:?どうした?
彪子:私、これがいい
桜子:……これ?
彪子:うん!
桜子:じゃあ、それにしよう
0:
彪子:あ!えっと着て帰ります!
桜子:え?マジ?
彪子:よいしょっ…と
彪子:あははー、今の服には似合わないかな?
桜子:ううん、大丈夫
桜子:かっこいいよ、虎
彪子:そう?かっこいい?
桜子:うん
彪子:あ、そだ
彪子:写真撮ってもらっていいですか?
桜子:撮るの?
彪子:記念でしょ?
彪子:スカジャンデビュー!
桜子:あはは、そうだね
0:写真を撮ってもらう
彪子:おおー!
彪子:なんかエモい!
桜子:なるほど、これがエモいか
桜子:…私が虎で、虎が桜のスカジャンか
彪子:双子コーデってやつ?
彪子:それとも、お互いの名前を交換した…
彪子:うーん、名刺交換コーデとか!
桜子:ぷっ、何そのネーミング!
彪子:あはは!いいじゃん!
0:笑い合う二人
桜子:…うん、エモい
彪子:ありがとう、桜
桜子:うん、また行こう
彪子:……うん!桜!
0:
0:
0:
0:
桜子:『街を歩く
桜子:そこには、行列のできた店や
桜子:写真映えを気にしたメニューや
桜子:外観、雰囲気を纏った店が、そこら中に並んでいる
桜子:それを"表"だとする
桜子:そんな表から少し外れて"裏"に行く
桜子:そこには、映えを気にしない店がある
桜子:あるのは、『こだわり』
桜子:マスターこだわりの珈琲だったり
桜子:こだわりのアンティークだったり
桜子:そんな場所は、ゆっくりと時間が流れる
桜子:私は、それが好きだ
桜子:だから、私はこの店に行く』
桜子:こんちは
彪子:あ!いらっしゃいませ!
桜子:『だけど、最近私の目的は変わった
桜子:私は、彼女に会いに行く
桜子:この気持ちは友情が、恋か
桜子:そんなものは、どうでもいい
桜子:ただーー』
彪子:いつもの?
桜子:…ううん、今日はブラック
桜子:アイスで
彪子:意外!何で?
桜子:うーん…まぁ、チャレンジってやつ?
彪子:あはは!わかった、ブラックね
桜子:『ただ、ゆっくりと流れる時間の中に
桜子:少しだけ、写真映えのような彩ができたのだ』
桜子:……ねぇ、虎
彪子:んー?何ー?
桜子:明日
桜子:桜、見に行かない?
0:終