台本概要

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タイトル 文字を食べる人魚
作者名 おちり補佐官  (@called_makki)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 倉庫を整理しにきた男が、紙魚(しみ)という虫の這っているのを見つける。美しい光の反射をする肢体をもつ彼女は、彼に捕まり、会話を始める。

男は自分の持っていた本の一部分をどうしても思い出せずにいる。本を見ても紙魚に食べられており、紙魚からその文字を「魚」だと教えてもらう。

紙魚は紙を食べる虫である。彼女の夢は人魚になることで、願かけのひとつとして、成りたい文字だとかを食べる習慣を持っている。
彼女は彼の本にあった魚という文字と彼の自画像を食べた。

彼は紙魚を魚のようだと認識し、また彼は紙魚の生まれ変わりである。しかし、同じ時を同じ場所で過ごしている。過去にあるべき紙魚と現在にある人、かれら二人がいる空間は時を超え、空間そのものが人魚なのである。


注釈として、覚念というお坊さんの逸話がある。
彼はどうしても法華経の三行を覚えられない。老僧に問うとこう答えられる。彼が前世では紙魚であり、法華経に身を包まれて過ごしていた。その紙魚時代に三行を食べたがゆえに、覚えられないのだという。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
38 絵と本が好きだったが、最近はあまり興味を示していなかった。
紙魚 30 美しい銀色の体をもつ。動く様子は水に流れるようで、美しい。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
 :  紙魚:(タイトルコール) 紙魚:『文字を食べる人魚』  :  0:男、イーゼルだとか使わなくなった石油ストーヴを片付けてある、滅多と開かない倉庫で本を探している。  :  男:いやなホコリの匂いがする。 男:しかしどうして倉庫なんかに本を仕舞いこんでしまったんだろう。 男:ええと、どこだったか......。 男:こっちか、いや。 男:もしかしたらこっちか。 0:五六冊積まれた本に目当ての物を見つける。 男:あぁ、これだ。こんな日陰においていたのに、日に焼けた茶色い本。昔に窓辺に放置して、すっかり読むのを放棄していたタッソーに違いない。 男:かっこうをつけて買ったはいいものの、訳すのが面倒になったんだっけなあ。どうしてあのとき、詩なんか読もうとおもったんだろう? 0:数ページめくると、ところどころ、虫が食ったような穴の空いていることに気がつく。 男:おや......、まさかな。穴まみれだ。 男:......しまった。虫に食い荒らされたんだ。 男:こっちも、こっちも、こっちも......。 男:単語が抜け落ちているじゃないか。 男:......。 男:読まないうちに発酵して穴空きチーズみたいになるとは。 0:男、裸電球のひかりにきらめく物をテーブルに見つける。長さ一センチ程の虫である。 男:(驚いて)なんだこいつ! 男:魚!? いや、虫か、待て! 0:咄嗟に、イーゼルに引っかけられていた透明のプラスチックボウルを被せる。 男:そうら! これで逃げられないだろう! 男:にしても、不思議な虫だ。こんなに裸電球の光をを反射するだなんて、まるで鎧でも着ているみたいじゃないか。 0:訝しげに見つめ、虫に語りかける。 男:なるほど、君だな? 鎧を着たお魚くん。僕の見栄に穴を開けたのは? 0:触角をふわふわと動かしながら、虫が喋り出す。 紙魚:左様でございます。おなかがすいていたものでして、つい。 男:(少しうろたえ) 男:ああ、いや。いいんだ。どうせ出しても熱心に読む気もなかったからね。 男:しかし、君、食べるのはいいけれど、どうせなら白い空白を食べてほしかったね。ほら、上下左右、ここいらのどこても構わない。 男:少なくとも、僕にタッソーの詩を流し読みでも見させてくれると嬉しかった。 紙魚:ごめんなさい。とても日に焼けて、こんがりした本でしたので、もう十分に読まれたんだと思って、つい。 紙魚:それに、わたしだって生きているので、どうせ食べるなら美味しいもの、どうせ動くならゲンを担ごう、そう思うのです。 男:ほう。 紙魚:なので、どうせ食べるのならば文字を食べたいのです。それも、美味しい文字を。 男:美味しい文字? そんなものがあるのかい? 紙魚:ありますとも! それに、こんがり日に焼けた本なんかも素敵に思います。こう、ほどよく紙が弱っていて、非常に良い食感になるのでございます。 男:なるほどそれでか。 男:ふむ。たしかに、かえって、なんとなく不味い文字があるようには思える。 紙魚:わかっていただけますか! 男:何があるかな......。竜はあんまり旨そうじゃないな。こう、亀のような臭さがありそうに思える。 0:紙魚、感動して鱗を飛ばさんばかりにぶるりと身を震えさせる。 紙魚:わぁ......! 紙魚:もしかすると、前世は私たち同様に紙魚だったのかもしれませんね。 男:合っているのか。 紙魚:はい、その通りでございます! 紙魚:では、そろそろ解放していただいても? 男:いや、まだもう少しだけ、いいかな。 紙魚:はい。なんでしょう? なにもかも包み隠さずに述べさせていただきます。 0:触角をふわふわさせながら、また身体をぶるりと震わせる。 男:きみが食べたくて仕方のなかった、ここの文字を知りたいんだ。どんなに旨い文字が用意されていたのか、とても気になって。 紙魚:なるほど。 男:それに、ここが詩のよいところになっていると思うと、余計に! 男:だってそれは炊き込みご飯のオコゲだとか、コーンドッグの根元のカリカリしたとこみたいだと思うんだよ。 紙魚:炊き込みご飯もコーンドッグも名称だけしか存じませんが、きっと、そうなのだと思います。昔にそんな文字のそばを通ったとき、書いていたような気も致しますし。 男:で、一体? ここの単語はなんなんだい。 男:この男は魔女の呪文で、何に変貌してしまうんだ? 前後の文から察すると分かるんだが、なぜかしっくりとそうだと思えなくてね。 男:その逸話は知っているけれど、記憶から抜け落ちたように、その簡単な言葉が思い出せないんだ。 紙魚:ここにはですね。 紙魚:「魚」とございました。 紙魚:人が魚へと、変貌していくのです。 男:やっぱり! 男:なるほど、すっきりした。魚だ。魚! 男:さて、君のことはもうそろそろ放してやろうか。 紙魚:ありがとうございます。しかし、ここでもうひとつ謝らねばならないことがございまして。 0:男、なにかを思い出す。 男:あ。きみのいう文字の美味しさは、十二分に理解をできたように思えるのだけれど。 紙魚:けれど? 男:願掛けについて聞くのを忘れていた。 紙魚:はい。実は、謝らねばならぬことというのは、そのことでして。順を追って説明致しましょう。 紙魚:まず、わたしには夢があるのです。 男:夢? 紙魚:はい。 男:なんだい。言ってごらんなさい。 紙魚:人魚になりたいのです。 男:ならまずは人間になる必要があるな。 紙魚:左様でございます。そこで、願掛けが関わってくるのです。わたしは紙を食べることが生き甲斐でして、その他には特になにもございません。 紙魚:また、我慢さえすれば一年間ほどであれば、食べずとも生きてもいけます。 紙魚:それもひとつの信仰で、絶食をして極楽へ行くのだと考える仲間もおりますが、わたしは違うのです。 男:ほう。 紙魚:わたしは、なりたいものを食べる信仰を持っておりましてですね。 男:なるほど。紙魚にも考えの違いがあるのだな。 紙魚:そうでございます。 紙魚:そしてわたしの信仰の元となったお話もございまして、少しお話をしてもよろしいですか? 男:ああ、構わないよ。語ってくださいな。 紙魚:むかしむかしに、覚念(かくねん)というお坊さんが、道心をおこして出家をしたのち、法華経をならい覚えて、朝晩となえていたのです。 男:ふむ。 紙魚:ですが、お経のなかの三行がどうしても忘れてしまうのです。そこで、嘆き悲しみ、三宝(さんぽう)に祈念(きねん)して加護を求めたのです。 紙魚:すると、夢に老僧が現れてこのようなことを告げたのです。 紙魚:覚念の前世はわたしのような紙魚で、法華経のなかで住んでいたおかげで人間の身になりかわったと。 紙魚:ですが、なかにいたとき、三行の文を食べてしまったから、三行の文章が覚えられないのだと。そして、懺悔を熱心にしたことを認められて、三行を覚えることができるようになる。 紙魚:とまぁ、こんな話でございます。 男:なるほど。なかなかに面白い話だな。 紙魚:しかし、わざわざ法華経に巻かれるのも大変ですし、何になりたいかはそれぞれですので、なりたいものを食べることで願うということが定着していったのでございます。 男:そして、今度は? 何を食べたんだい? 紙魚:実は......。あの。そこにイーゼルが閉じて立て掛けられているでしょう? 男:ああ、あるとも。いっとき、絵を描く趣味があったときに譲り受けたものだ。まぁ、すぐに飽きてしまったのだけれど。 紙魚:はい、何をお描きになられましたか? 男:風景を少しと、自画像だったかな。あと、妻の似顔絵は部屋に飾ってある。 紙魚:その......自画像を食べてしまったのです。 男:ふむ。......美味しかったか? 紙魚:不思議なお味が致しました。 男:ともすれば、きみは俺になるのかもしれないな! 男:別に適当に仕舞いこんでいた自画像の一枚や二枚食われたところで構わんさ。その代わり、他の絵には手を出さんでくれよ。 紙魚:ありがとうございます! 0:紙魚はまた身を震わせる。今度はふるふると優しく震わせた。 男:ほら、もうお行きなさい。少ししか本を置いていなけれど、ここのでよかったら、食べていってくれ。 紙魚:いいのですか? 男:ああ、いいとも。 0:プラスチックボウルを外す。 男:僕はあまり本の虫というわけではないんだ。でも、きみは文字通りにそうなんだから、きみが居るべきで食べるべきで願うべきなんだと思ったんだよ。 紙魚:ありがとうございます! 紙魚:では、また! 男:あぁ。さようなら。 0:男、倉庫から出る。 男:ふぅ、倉庫は蒸し暑かった。けれど面白い虫に出会えた。そうだな。本を泳ぐ魚とでも言い得ようか。光線の加減で、身体の大きさが伸び縮みするような、モダンな魚!  :  男:あんな鱗の人魚か。ちょっと憧れるな。  :  0:終  : 

 :  紙魚:(タイトルコール) 紙魚:『文字を食べる人魚』  :  0:男、イーゼルだとか使わなくなった石油ストーヴを片付けてある、滅多と開かない倉庫で本を探している。  :  男:いやなホコリの匂いがする。 男:しかしどうして倉庫なんかに本を仕舞いこんでしまったんだろう。 男:ええと、どこだったか......。 男:こっちか、いや。 男:もしかしたらこっちか。 0:五六冊積まれた本に目当ての物を見つける。 男:あぁ、これだ。こんな日陰においていたのに、日に焼けた茶色い本。昔に窓辺に放置して、すっかり読むのを放棄していたタッソーに違いない。 男:かっこうをつけて買ったはいいものの、訳すのが面倒になったんだっけなあ。どうしてあのとき、詩なんか読もうとおもったんだろう? 0:数ページめくると、ところどころ、虫が食ったような穴の空いていることに気がつく。 男:おや......、まさかな。穴まみれだ。 男:......しまった。虫に食い荒らされたんだ。 男:こっちも、こっちも、こっちも......。 男:単語が抜け落ちているじゃないか。 男:......。 男:読まないうちに発酵して穴空きチーズみたいになるとは。 0:男、裸電球のひかりにきらめく物をテーブルに見つける。長さ一センチ程の虫である。 男:(驚いて)なんだこいつ! 男:魚!? いや、虫か、待て! 0:咄嗟に、イーゼルに引っかけられていた透明のプラスチックボウルを被せる。 男:そうら! これで逃げられないだろう! 男:にしても、不思議な虫だ。こんなに裸電球の光をを反射するだなんて、まるで鎧でも着ているみたいじゃないか。 0:訝しげに見つめ、虫に語りかける。 男:なるほど、君だな? 鎧を着たお魚くん。僕の見栄に穴を開けたのは? 0:触角をふわふわと動かしながら、虫が喋り出す。 紙魚:左様でございます。おなかがすいていたものでして、つい。 男:(少しうろたえ) 男:ああ、いや。いいんだ。どうせ出しても熱心に読む気もなかったからね。 男:しかし、君、食べるのはいいけれど、どうせなら白い空白を食べてほしかったね。ほら、上下左右、ここいらのどこても構わない。 男:少なくとも、僕にタッソーの詩を流し読みでも見させてくれると嬉しかった。 紙魚:ごめんなさい。とても日に焼けて、こんがりした本でしたので、もう十分に読まれたんだと思って、つい。 紙魚:それに、わたしだって生きているので、どうせ食べるなら美味しいもの、どうせ動くならゲンを担ごう、そう思うのです。 男:ほう。 紙魚:なので、どうせ食べるのならば文字を食べたいのです。それも、美味しい文字を。 男:美味しい文字? そんなものがあるのかい? 紙魚:ありますとも! それに、こんがり日に焼けた本なんかも素敵に思います。こう、ほどよく紙が弱っていて、非常に良い食感になるのでございます。 男:なるほどそれでか。 男:ふむ。たしかに、かえって、なんとなく不味い文字があるようには思える。 紙魚:わかっていただけますか! 男:何があるかな......。竜はあんまり旨そうじゃないな。こう、亀のような臭さがありそうに思える。 0:紙魚、感動して鱗を飛ばさんばかりにぶるりと身を震えさせる。 紙魚:わぁ......! 紙魚:もしかすると、前世は私たち同様に紙魚だったのかもしれませんね。 男:合っているのか。 紙魚:はい、その通りでございます! 紙魚:では、そろそろ解放していただいても? 男:いや、まだもう少しだけ、いいかな。 紙魚:はい。なんでしょう? なにもかも包み隠さずに述べさせていただきます。 0:触角をふわふわさせながら、また身体をぶるりと震わせる。 男:きみが食べたくて仕方のなかった、ここの文字を知りたいんだ。どんなに旨い文字が用意されていたのか、とても気になって。 紙魚:なるほど。 男:それに、ここが詩のよいところになっていると思うと、余計に! 男:だってそれは炊き込みご飯のオコゲだとか、コーンドッグの根元のカリカリしたとこみたいだと思うんだよ。 紙魚:炊き込みご飯もコーンドッグも名称だけしか存じませんが、きっと、そうなのだと思います。昔にそんな文字のそばを通ったとき、書いていたような気も致しますし。 男:で、一体? ここの単語はなんなんだい。 男:この男は魔女の呪文で、何に変貌してしまうんだ? 前後の文から察すると分かるんだが、なぜかしっくりとそうだと思えなくてね。 男:その逸話は知っているけれど、記憶から抜け落ちたように、その簡単な言葉が思い出せないんだ。 紙魚:ここにはですね。 紙魚:「魚」とございました。 紙魚:人が魚へと、変貌していくのです。 男:やっぱり! 男:なるほど、すっきりした。魚だ。魚! 男:さて、君のことはもうそろそろ放してやろうか。 紙魚:ありがとうございます。しかし、ここでもうひとつ謝らねばならないことがございまして。 0:男、なにかを思い出す。 男:あ。きみのいう文字の美味しさは、十二分に理解をできたように思えるのだけれど。 紙魚:けれど? 男:願掛けについて聞くのを忘れていた。 紙魚:はい。実は、謝らねばならぬことというのは、そのことでして。順を追って説明致しましょう。 紙魚:まず、わたしには夢があるのです。 男:夢? 紙魚:はい。 男:なんだい。言ってごらんなさい。 紙魚:人魚になりたいのです。 男:ならまずは人間になる必要があるな。 紙魚:左様でございます。そこで、願掛けが関わってくるのです。わたしは紙を食べることが生き甲斐でして、その他には特になにもございません。 紙魚:また、我慢さえすれば一年間ほどであれば、食べずとも生きてもいけます。 紙魚:それもひとつの信仰で、絶食をして極楽へ行くのだと考える仲間もおりますが、わたしは違うのです。 男:ほう。 紙魚:わたしは、なりたいものを食べる信仰を持っておりましてですね。 男:なるほど。紙魚にも考えの違いがあるのだな。 紙魚:そうでございます。 紙魚:そしてわたしの信仰の元となったお話もございまして、少しお話をしてもよろしいですか? 男:ああ、構わないよ。語ってくださいな。 紙魚:むかしむかしに、覚念(かくねん)というお坊さんが、道心をおこして出家をしたのち、法華経をならい覚えて、朝晩となえていたのです。 男:ふむ。 紙魚:ですが、お経のなかの三行がどうしても忘れてしまうのです。そこで、嘆き悲しみ、三宝(さんぽう)に祈念(きねん)して加護を求めたのです。 紙魚:すると、夢に老僧が現れてこのようなことを告げたのです。 紙魚:覚念の前世はわたしのような紙魚で、法華経のなかで住んでいたおかげで人間の身になりかわったと。 紙魚:ですが、なかにいたとき、三行の文を食べてしまったから、三行の文章が覚えられないのだと。そして、懺悔を熱心にしたことを認められて、三行を覚えることができるようになる。 紙魚:とまぁ、こんな話でございます。 男:なるほど。なかなかに面白い話だな。 紙魚:しかし、わざわざ法華経に巻かれるのも大変ですし、何になりたいかはそれぞれですので、なりたいものを食べることで願うということが定着していったのでございます。 男:そして、今度は? 何を食べたんだい? 紙魚:実は......。あの。そこにイーゼルが閉じて立て掛けられているでしょう? 男:ああ、あるとも。いっとき、絵を描く趣味があったときに譲り受けたものだ。まぁ、すぐに飽きてしまったのだけれど。 紙魚:はい、何をお描きになられましたか? 男:風景を少しと、自画像だったかな。あと、妻の似顔絵は部屋に飾ってある。 紙魚:その......自画像を食べてしまったのです。 男:ふむ。......美味しかったか? 紙魚:不思議なお味が致しました。 男:ともすれば、きみは俺になるのかもしれないな! 男:別に適当に仕舞いこんでいた自画像の一枚や二枚食われたところで構わんさ。その代わり、他の絵には手を出さんでくれよ。 紙魚:ありがとうございます! 0:紙魚はまた身を震わせる。今度はふるふると優しく震わせた。 男:ほら、もうお行きなさい。少ししか本を置いていなけれど、ここのでよかったら、食べていってくれ。 紙魚:いいのですか? 男:ああ、いいとも。 0:プラスチックボウルを外す。 男:僕はあまり本の虫というわけではないんだ。でも、きみは文字通りにそうなんだから、きみが居るべきで食べるべきで願うべきなんだと思ったんだよ。 紙魚:ありがとうございます! 紙魚:では、また! 男:あぁ。さようなら。 0:男、倉庫から出る。 男:ふぅ、倉庫は蒸し暑かった。けれど面白い虫に出会えた。そうだな。本を泳ぐ魚とでも言い得ようか。光線の加減で、身体の大きさが伸び縮みするような、モダンな魚!  :  男:あんな鱗の人魚か。ちょっと憧れるな。  :  0:終  :