台本概要
185 views
タイトル | ちゃんと別れます。 |
---|---|
作者名 | よぉげるとサマー (@gerutohoukai) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
女性1人台本ですが、お好きに性別は変更してください。 劇の音声が残るようにしてくれる場合は、ご共有下されば幸いです。是非、聴きたいです。 あと、感想もくれると喜びます。 185 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
菊香 | 女 | 20 | 紅茶が苦手 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
菊香М:先日、同居人と、お別れした。
菊香:……よし。
菊香М:片付けが一区切りついて、部屋を見渡す。
菊香М:あいつの物を取っ払っただけで、少し広く感じる。
菊香М:家具はそのままだし、気分の問題なんだろうけど。
菊香:……おーし、休憩っ。茶でも飲むかぁ。
菊香М:キッチンの棚を漁ると、引き出しの中で、カランと音が鳴った。
菊香:あー……そういや、こんなんもあったなぁ。
菊香М:小さい紅茶の缶。
菊香М:ちょっと高級な茶葉で、とても美味しい。
菊香М:と、置いていった奴が言っていた。
菊香М:あまり紅茶が好きじゃないから、私は飲んだことも、興味も無い。
菊香:持ってけよなぁ……もー。
菊香М:四角い缶を持ち上げると、開封済みのようで。
菊香М:蓋を開けると、半分くらい残ったままの中身から……良い香りがした。
菊香:勿体無いし……飲むか。
菊香М:水を入れたケトルを火にかけて、いつも緑茶とかに使っている急須を取り出す。
菊香:……べっつに、これで良いよねぇ?
菊香М:ただ、日本茶と同じやり方じゃダメだったはず。
菊香М:ダメってほどじゃないんだろうけど。
菊香М:あいつが、専用のティーポットとか言うのを使ってたのを見てた時は、なんか色々と手間をかけていたから。
菊香:……あんま覚えてないけど。
菊香М:ティーポットとやらは、ちゃあんと持っていったみたいで。
菊香:この、やっすい急須で、上手くやるしかないかぁ。
菊香М:ネットで淹れ方を調べると、ジャンピングがうんたらとか、ドロップがかんたらとか……。
菊香:めんどくさぁ……。
菊香М:だから嫌なんだ。面倒くさいから。
菊香М:美味しく無くても良いから、テキトーに茶葉入れて、お湯注いでやろうか。
菊香:んー……。
菊香М:ポコポコと、お湯が湧く音がする。
菊香М:「先にお湯入れておいて、温めておくんだよ」
菊香М:紅茶は別に好きじゃないってのに。
菊香М:「好きな物は、分かち合いたいじゃない」
菊香М:温度まで測りながら、笑顔で紅茶の用意をしていたなぁ、と。泡のように思い出す。
菊香:……せっかくの高級茶葉だしなぁ。
菊香М:重い腰を上げ、お気に入りのティーカップを用意しようとしたが、見つからない。
菊香:えー……あ、そうだ。
菊香М:あれは、プレゼントだったから……もう無いんだった。
菊香М:白くて、青い青い線が引かれた、綺麗な、揃いのティーカップで。
菊香М:紅茶の水色(すいしょく)が、とても綺麗に映えたのを……ずっと覚えていた。
菊香:……ま、このマグカップでいっか。
菊香М:さっき調べた淹れ方に、なるべく従いながら。
菊香М:ドリップパックって偉大だなぁ、なんて思いながら。
菊香М:適当に選んだマグカップへと、紅茶を注ぐ。
菊香М:最後にベスト・ドロップだか言うのも……たぶん、ちゃんと注いで、完成させた。
菊香:いやぁ……疲れたぁ。
菊香М:こんなに気を使わないといけないのか、と。
菊香М:でもきっと、紅茶に限ったことじゃないな、と。
菊香М:ダサいマグカップから香る、不釣り合いな良い香りを感じながら思う。
菊香:……なんかなぁ。
菊香М:色んな未来が、あったんだろうな。
菊香М:誰が、とか、自分が、とか。
菊香М:そういう、何か悪いモノを決めるのは、簡単で。
菊香М:もっと、ゆっくりと。もっと、真剣に。
菊香М:とか、違くて。
菊香:もっと……ちゃんと。向き合えば良かったのに。
菊香М:見つめる先には、紅茶の水面に映る、情けない自分の顔がある。
菊香М:なんだろう、別に、そんな顔する必要なんか無いのに。
菊香М:色んな後悔が、色んな憤りが、色んな幸せが。
菊香М:紅茶の水色に、溶けてしまったみたいだ。
菊香М:マグカップを持ち上げて、紅茶を飲む。
菊香М:温かさが、体へ落ちていく。
菊香:……やっぱり、わかんないや。
菊香М:これが高いのか安いのか、美味しいのか、どうか。
菊香М:あいつが、好きだったのか。
菊香М:中途半端で、なにもわからない。
菊香:……だけど。
菊香М:だけど、この匂いは。
菊香:……好きかも。
菊香М:もしかすると、好きだった、のかもしれない。
菊香М:部屋に、こんな匂いがよくしていた、あの頃から。
菊香М:ちゃんと、ずっと。
菊香:……あーっ、引っ越そーかなぁー!
菊香М:きちんと向き合って、区切りをつけて。
菊香М:ちゃんと。お別れしよう。
菊香М:先日、同居人と、お別れした。
菊香:……よし。
菊香М:片付けが一区切りついて、部屋を見渡す。
菊香М:あいつの物を取っ払っただけで、少し広く感じる。
菊香М:家具はそのままだし、気分の問題なんだろうけど。
菊香:……おーし、休憩っ。茶でも飲むかぁ。
菊香М:キッチンの棚を漁ると、引き出しの中で、カランと音が鳴った。
菊香:あー……そういや、こんなんもあったなぁ。
菊香М:小さい紅茶の缶。
菊香М:ちょっと高級な茶葉で、とても美味しい。
菊香М:と、置いていった奴が言っていた。
菊香М:あまり紅茶が好きじゃないから、私は飲んだことも、興味も無い。
菊香:持ってけよなぁ……もー。
菊香М:四角い缶を持ち上げると、開封済みのようで。
菊香М:蓋を開けると、半分くらい残ったままの中身から……良い香りがした。
菊香:勿体無いし……飲むか。
菊香М:水を入れたケトルを火にかけて、いつも緑茶とかに使っている急須を取り出す。
菊香:……べっつに、これで良いよねぇ?
菊香М:ただ、日本茶と同じやり方じゃダメだったはず。
菊香М:ダメってほどじゃないんだろうけど。
菊香М:あいつが、専用のティーポットとか言うのを使ってたのを見てた時は、なんか色々と手間をかけていたから。
菊香:……あんま覚えてないけど。
菊香М:ティーポットとやらは、ちゃあんと持っていったみたいで。
菊香:この、やっすい急須で、上手くやるしかないかぁ。
菊香М:ネットで淹れ方を調べると、ジャンピングがうんたらとか、ドロップがかんたらとか……。
菊香:めんどくさぁ……。
菊香М:だから嫌なんだ。面倒くさいから。
菊香М:美味しく無くても良いから、テキトーに茶葉入れて、お湯注いでやろうか。
菊香:んー……。
菊香М:ポコポコと、お湯が湧く音がする。
菊香М:「先にお湯入れておいて、温めておくんだよ」
菊香М:紅茶は別に好きじゃないってのに。
菊香М:「好きな物は、分かち合いたいじゃない」
菊香М:温度まで測りながら、笑顔で紅茶の用意をしていたなぁ、と。泡のように思い出す。
菊香:……せっかくの高級茶葉だしなぁ。
菊香М:重い腰を上げ、お気に入りのティーカップを用意しようとしたが、見つからない。
菊香:えー……あ、そうだ。
菊香М:あれは、プレゼントだったから……もう無いんだった。
菊香М:白くて、青い青い線が引かれた、綺麗な、揃いのティーカップで。
菊香М:紅茶の水色(すいしょく)が、とても綺麗に映えたのを……ずっと覚えていた。
菊香:……ま、このマグカップでいっか。
菊香М:さっき調べた淹れ方に、なるべく従いながら。
菊香М:ドリップパックって偉大だなぁ、なんて思いながら。
菊香М:適当に選んだマグカップへと、紅茶を注ぐ。
菊香М:最後にベスト・ドロップだか言うのも……たぶん、ちゃんと注いで、完成させた。
菊香:いやぁ……疲れたぁ。
菊香М:こんなに気を使わないといけないのか、と。
菊香М:でもきっと、紅茶に限ったことじゃないな、と。
菊香М:ダサいマグカップから香る、不釣り合いな良い香りを感じながら思う。
菊香:……なんかなぁ。
菊香М:色んな未来が、あったんだろうな。
菊香М:誰が、とか、自分が、とか。
菊香М:そういう、何か悪いモノを決めるのは、簡単で。
菊香М:もっと、ゆっくりと。もっと、真剣に。
菊香М:とか、違くて。
菊香:もっと……ちゃんと。向き合えば良かったのに。
菊香М:見つめる先には、紅茶の水面に映る、情けない自分の顔がある。
菊香М:なんだろう、別に、そんな顔する必要なんか無いのに。
菊香М:色んな後悔が、色んな憤りが、色んな幸せが。
菊香М:紅茶の水色に、溶けてしまったみたいだ。
菊香М:マグカップを持ち上げて、紅茶を飲む。
菊香М:温かさが、体へ落ちていく。
菊香:……やっぱり、わかんないや。
菊香М:これが高いのか安いのか、美味しいのか、どうか。
菊香М:あいつが、好きだったのか。
菊香М:中途半端で、なにもわからない。
菊香:……だけど。
菊香М:だけど、この匂いは。
菊香:……好きかも。
菊香М:もしかすると、好きだった、のかもしれない。
菊香М:部屋に、こんな匂いがよくしていた、あの頃から。
菊香М:ちゃんと、ずっと。
菊香:……あーっ、引っ越そーかなぁー!
菊香М:きちんと向き合って、区切りをつけて。
菊香М:ちゃんと。お別れしよう。