台本概要

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タイトル ちゃんと別れます。
作者名 よぉげるとサマー  (@gerutohoukai)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 女性1人台本ですが、お好きに性別は変更してください。
劇の音声が残るようにしてくれる場合は、ご共有下されば幸いです。是非、聴きたいです。
あと、感想もくれると喜びます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
菊香 20 紅茶が苦手
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
菊香М:先日、同居人と、お別れした。 菊香:……よし。 菊香М:片付けが一区切りついて、部屋を見渡す。 菊香М:あいつの物を取っ払っただけで、少し広く感じる。 菊香М:家具はそのままだし、気分の問題なんだろうけど。 菊香:……おーし、休憩っ。茶でも飲むかぁ。 菊香М:キッチンの棚を漁ると、引き出しの中で、カランと音が鳴った。 菊香:あー……そういや、こんなんもあったなぁ。 菊香М:小さい紅茶の缶。 菊香М:ちょっと高級な茶葉で、とても美味しい。 菊香М:と、置いていった奴が言っていた。 菊香М:あまり紅茶が好きじゃないから、私は飲んだことも、興味も無い。 菊香:持ってけよなぁ……もー。 菊香М:四角い缶を持ち上げると、開封済みのようで。 菊香М:蓋を開けると、半分くらい残ったままの中身から……良い香りがした。 菊香:勿体無いし……飲むか。 菊香М:水を入れたケトルを火にかけて、いつも緑茶とかに使っている急須を取り出す。 菊香:……べっつに、これで良いよねぇ? 菊香М:ただ、日本茶と同じやり方じゃダメだったはず。 菊香М:ダメってほどじゃないんだろうけど。 菊香М:あいつが、専用のティーポットとか言うのを使ってたのを見てた時は、なんか色々と手間をかけていたから。 菊香:……あんま覚えてないけど。 菊香М:ティーポットとやらは、ちゃあんと持っていったみたいで。 菊香:この、やっすい急須で、上手くやるしかないかぁ。 菊香М:ネットで淹れ方を調べると、ジャンピングがうんたらとか、ドロップがかんたらとか……。 菊香:めんどくさぁ……。 菊香М:だから嫌なんだ。面倒くさいから。 菊香М:美味しく無くても良いから、テキトーに茶葉入れて、お湯注いでやろうか。 菊香:んー……。 菊香М:ポコポコと、お湯が湧く音がする。 菊香М:「先にお湯入れておいて、温めておくんだよ」 菊香М:紅茶は別に好きじゃないってのに。 菊香М:「好きな物は、分かち合いたいじゃない」 菊香М:温度まで測りながら、笑顔で紅茶の用意をしていたなぁ、と。泡のように思い出す。 菊香:……せっかくの高級茶葉だしなぁ。 菊香М:重い腰を上げ、お気に入りのティーカップを用意しようとしたが、見つからない。 菊香:えー……あ、そうだ。 菊香М:あれは、プレゼントだったから……もう無いんだった。 菊香М:白くて、青い青い線が引かれた、綺麗な、揃いのティーカップで。 菊香М:紅茶の水色(すいしょく)が、とても綺麗に映えたのを……ずっと覚えていた。 菊香:……ま、このマグカップでいっか。 菊香М:さっき調べた淹れ方に、なるべく従いながら。 菊香М:ドリップパックって偉大だなぁ、なんて思いながら。 菊香М:適当に選んだマグカップへと、紅茶を注ぐ。 菊香М:最後にベスト・ドロップだか言うのも……たぶん、ちゃんと注いで、完成させた。 菊香:いやぁ……疲れたぁ。 菊香М:こんなに気を使わないといけないのか、と。 菊香М:でもきっと、紅茶に限ったことじゃないな、と。 菊香М:ダサいマグカップから香る、不釣り合いな良い香りを感じながら思う。 菊香:……なんかなぁ。 菊香М:色んな未来が、あったんだろうな。 菊香М:誰が、とか、自分が、とか。 菊香М:そういう、何か悪いモノを決めるのは、簡単で。 菊香М:もっと、ゆっくりと。もっと、真剣に。 菊香М:とか、違くて。 菊香:もっと……ちゃんと。向き合えば良かったのに。 菊香М:見つめる先には、紅茶の水面に映る、情けない自分の顔がある。 菊香М:なんだろう、別に、そんな顔する必要なんか無いのに。 菊香М:色んな後悔が、色んな憤りが、色んな幸せが。 菊香М:紅茶の水色に、溶けてしまったみたいだ。 菊香М:マグカップを持ち上げて、紅茶を飲む。 菊香М:温かさが、体へ落ちていく。 菊香:……やっぱり、わかんないや。 菊香М:これが高いのか安いのか、美味しいのか、どうか。 菊香М:あいつが、好きだったのか。 菊香М:中途半端で、なにもわからない。 菊香:……だけど。 菊香М:だけど、この匂いは。 菊香:……好きかも。 菊香М:もしかすると、好きだった、のかもしれない。 菊香М:部屋に、こんな匂いがよくしていた、あの頃から。 菊香М:ちゃんと、ずっと。 菊香:……あーっ、引っ越そーかなぁー! 菊香М:きちんと向き合って、区切りをつけて。 菊香М:ちゃんと。お別れしよう。

菊香М:先日、同居人と、お別れした。 菊香:……よし。 菊香М:片付けが一区切りついて、部屋を見渡す。 菊香М:あいつの物を取っ払っただけで、少し広く感じる。 菊香М:家具はそのままだし、気分の問題なんだろうけど。 菊香:……おーし、休憩っ。茶でも飲むかぁ。 菊香М:キッチンの棚を漁ると、引き出しの中で、カランと音が鳴った。 菊香:あー……そういや、こんなんもあったなぁ。 菊香М:小さい紅茶の缶。 菊香М:ちょっと高級な茶葉で、とても美味しい。 菊香М:と、置いていった奴が言っていた。 菊香М:あまり紅茶が好きじゃないから、私は飲んだことも、興味も無い。 菊香:持ってけよなぁ……もー。 菊香М:四角い缶を持ち上げると、開封済みのようで。 菊香М:蓋を開けると、半分くらい残ったままの中身から……良い香りがした。 菊香:勿体無いし……飲むか。 菊香М:水を入れたケトルを火にかけて、いつも緑茶とかに使っている急須を取り出す。 菊香:……べっつに、これで良いよねぇ? 菊香М:ただ、日本茶と同じやり方じゃダメだったはず。 菊香М:ダメってほどじゃないんだろうけど。 菊香М:あいつが、専用のティーポットとか言うのを使ってたのを見てた時は、なんか色々と手間をかけていたから。 菊香:……あんま覚えてないけど。 菊香М:ティーポットとやらは、ちゃあんと持っていったみたいで。 菊香:この、やっすい急須で、上手くやるしかないかぁ。 菊香М:ネットで淹れ方を調べると、ジャンピングがうんたらとか、ドロップがかんたらとか……。 菊香:めんどくさぁ……。 菊香М:だから嫌なんだ。面倒くさいから。 菊香М:美味しく無くても良いから、テキトーに茶葉入れて、お湯注いでやろうか。 菊香:んー……。 菊香М:ポコポコと、お湯が湧く音がする。 菊香М:「先にお湯入れておいて、温めておくんだよ」 菊香М:紅茶は別に好きじゃないってのに。 菊香М:「好きな物は、分かち合いたいじゃない」 菊香М:温度まで測りながら、笑顔で紅茶の用意をしていたなぁ、と。泡のように思い出す。 菊香:……せっかくの高級茶葉だしなぁ。 菊香М:重い腰を上げ、お気に入りのティーカップを用意しようとしたが、見つからない。 菊香:えー……あ、そうだ。 菊香М:あれは、プレゼントだったから……もう無いんだった。 菊香М:白くて、青い青い線が引かれた、綺麗な、揃いのティーカップで。 菊香М:紅茶の水色(すいしょく)が、とても綺麗に映えたのを……ずっと覚えていた。 菊香:……ま、このマグカップでいっか。 菊香М:さっき調べた淹れ方に、なるべく従いながら。 菊香М:ドリップパックって偉大だなぁ、なんて思いながら。 菊香М:適当に選んだマグカップへと、紅茶を注ぐ。 菊香М:最後にベスト・ドロップだか言うのも……たぶん、ちゃんと注いで、完成させた。 菊香:いやぁ……疲れたぁ。 菊香М:こんなに気を使わないといけないのか、と。 菊香М:でもきっと、紅茶に限ったことじゃないな、と。 菊香М:ダサいマグカップから香る、不釣り合いな良い香りを感じながら思う。 菊香:……なんかなぁ。 菊香М:色んな未来が、あったんだろうな。 菊香М:誰が、とか、自分が、とか。 菊香М:そういう、何か悪いモノを決めるのは、簡単で。 菊香М:もっと、ゆっくりと。もっと、真剣に。 菊香М:とか、違くて。 菊香:もっと……ちゃんと。向き合えば良かったのに。 菊香М:見つめる先には、紅茶の水面に映る、情けない自分の顔がある。 菊香М:なんだろう、別に、そんな顔する必要なんか無いのに。 菊香М:色んな後悔が、色んな憤りが、色んな幸せが。 菊香М:紅茶の水色に、溶けてしまったみたいだ。 菊香М:マグカップを持ち上げて、紅茶を飲む。 菊香М:温かさが、体へ落ちていく。 菊香:……やっぱり、わかんないや。 菊香М:これが高いのか安いのか、美味しいのか、どうか。 菊香М:あいつが、好きだったのか。 菊香М:中途半端で、なにもわからない。 菊香:……だけど。 菊香М:だけど、この匂いは。 菊香:……好きかも。 菊香М:もしかすると、好きだった、のかもしれない。 菊香М:部屋に、こんな匂いがよくしていた、あの頃から。 菊香М:ちゃんと、ずっと。 菊香:……あーっ、引っ越そーかなぁー! 菊香М:きちんと向き合って、区切りをつけて。 菊香М:ちゃんと。お別れしよう。