台本概要

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タイトル 放課後はっけよい。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ◆あらすじ◇
元気系の清水が放課後の校舎裏に控えめな浅川を呼び出す。少し調子外れな清水だが、浅川は「まぁきっとそういうことだろう」と察しつつ話は進んでいく。しかし、清水には意外な目的があり……。

文字数約5,000字

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
浅川 134 浅川 歌澄〈あさかわ かすみ〉 物静かであまり人と絡まない。放課後の校舎裏に呼び出された。
清水 130 清水 湧太〈しみず ゆうた〉 やかましくて少し浮いてる。放課後の校舎裏に呼び出した。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:◇登場人物◆ : 浅川:浅川 歌澄〈あさかわ かすみ〉 浅川:物静かであまり人と絡まない。放課後の校舎裏に呼び出された。 清水:清水 湧太〈しみず ゆうた〉 清水:やかましくて少し浮いてる。放課後の校舎裏に呼び出した。 : 0:◆あらすじ◇ : 元気系の清水が放課後の校舎裏に控えめな浅川を呼び出す。少し調子外れな清水だが、浅川は「まぁきっとそういうことだろう」と察しつつ話は進んでいく。しかし、清水には意外な目的があり……。 : 0:◇◆◆◇ : 0:放課後の校舎裏。 0:背を向けて立つ清水と、紙を手に現れた浅川。 0:浅川、清水に声をかける。 : 浅川:話って、何? 清水:あ、浅川。(振り返る) 浅川:清水君。 清水:あ、いや、えっと……。その……。 浅川:……用が無いなら帰るけど。 清水:待って! あ、その……浅川。 浅川:……何? 清水:あ、あのさ、浅川。 浅川:何? 清水:浅川。 浅川:何? 清水:浅川! 浅川:いや、何? 清水:浅川ぁ!! 浅川:え、ちょ、 清水:浅川ぁぁぁ!!! 浅川:怖い怖い! 何なの!? 清水:浅川! 来てくれてありがとう! 浅川:…………いや良いけど、あの……何なの? 清水:実は俺、浅川にずっと言いたいことがあって、その、なんていうか、そう、言いたいことがあったんだけど、緊張しちゃって、ははは、大きな声出しちゃってごめん。俺、緊張するとでかい声出る癖があるんだ。 浅川:登山者に遭遇した熊かよ。いや、どういう反応なのそれ。……まぁいいけど言いたいことって何? 清水:ああ、実はその……こんなところに呼び出したってことは、その、もう薄々気付いてるかも知れないんだけどさ。 浅川:こんなところって、校舎裏? まぁ、……そう、だね。で、何の用? だいたい分かるけど。言いたいことあるんじゃなかった? 清水:ごめん。いや、こういう言い方は卑怯、だったよな。うん、ちゃんと言う。 浅川:そう。 清水:実は俺、浅川のこと、一年の頃からずっと気になってたんだ。 浅川:…………。 清水:浅川ってさ、あんまり人と話さないじゃん。俺もこうして浅川と直接話したことほとんど無かったし、今、たぶん過去イチ話してて、今まで話した分より今話してる時間のが長いまであるなって思うんだけどさ、いや、そんな状況で呼び出して、来てくれるなんて、なんていうか、すごい感動したんだよ、俺。うん、感動した。 浅川:……は? いや、えっと……結局、何が言いたいの? 清水:うーん……感動した? 浅川:はぁ……。帰って良い? 清水:いや、待って! まだ終わってないから! お願い! 浅川:いや、早く終わらせてよ。いつ終わるの? 清水:いやいや、今これから始まるとこなんだよ! 浅川:正直、いつになったら始まるんだよって感じなんだけど。 清水:ここからが良いところなんだ! 浅川:すごいハードルあげるね。……まぁ何でも良いけど、早くしてくれない? 少なくとも今までのやり取りに良いところは無かったし。 清水:まぁ、でも、人生これからだから! 浅川:……生命保険? 清水:え? 浅川:……なんでも。 清水:あ、えっと、それでさ。浅川ってあんまりクラスのやつとも話してるとこ見かけなくてすっごい根暗なのかと思ってた。 浅川:……ディスってる? 清水:ごめん、最初はそう思ってた。でも浅川、めっちゃ勉強できて賢くて、なんていうか、むしろ孤高って感じで格好良いなって思ったんだ。 浅川:…………。 清水:先生に当てられても、即座にぱりっと答えて、話すときも切り口やたらスマートで、あと地味に歌とか上手いし、ていうかめっちゃ声綺麗だよな浅川。 浅川:え?! い、いや、そうかな……。 清水:そうなんだよ、うん、すごい良い。 浅川:そ、そう……。 清水:秋の風が吹くみたいに凛としてて大人びてるようで、それでいてワシミミズクみたいに愛嬌があって、 浅川:ワシミミズク……。 清水:俺ずっと浅川のこと気になってたんだ。見かける度に自然と目で追ってて、声が聴こえたら耳澄ましてた。 浅川:梟かよ。 清水:ずっと、ずっと気になってたんだ。けど俺、浅川になかなか声かけれなかったんだ。浅川って、人付き合い避けてるように見えてたし、浅川のこと人嫌いだって言ってる声も聴こえてきてた。 浅川:ああそう。 清水:でも、違うんだよな。 浅川:え? 清水:浅川、優しいんだよな。周りのことすごいよく見てて、困ってるやついたら人知れずフォローしてるの知ってる。クラス会とか、グループのやつで話纏まらなさそうだったら、言い難い意見とか忌憚無く出して流れ変えられるのも強い。だからキツく見られがちだったりするんだけど、それってめっちゃすげぇって思う。それだけじゃなくて、掃除とか片付けとか、あと図書室のPOPとか壁新聞とか作ってて、これがまた興味引くっていうか、絶妙に心掴むの上手いよな。 浅川:……ただ暇だっただけだけから。 清水:そんなこと無いよ、細かいことも率先してやるし、浅川ってすごいんだよ。 浅川:……清水君。 清水:俺実は浅川見てて、すごい勇気出た。かっこいいなって。 浅川:そうなの……? 清水:うん、ほら俺って浮いてるじゃん? 浅川:…………そうだね。 清水:でも、友達と上手くやれてるかより、自分がどう在るかなんだなって、俺、浅川見て思ったんだ。 浅川:…………。 清水:それで俺、決心した。多分、浅川は俺のことなんて見て無いだろうけどさ、 浅川:……そんなことは。 清水:だから一方的だけどさ、浅川は俺にとっての憧れで、恩人で、それで……だから、このままちゃんと言わないんじゃたぶん後悔する。 浅川:清水君。 清水:フラれるのは怖い。けど、浅川。聞いて欲しい、俺の想いを。……あのさ、浅川! 浅川:……何? 清水:俺、 浅川:うん、 清水:俺、ずっと前から浅川のことが好きでした! 浅川:清水君……。 清水:だから、俺と……俺と、 浅川:…………。 清水:浅川歌澄! 俺とコンビになろう! 浅川:いいよ。 : 0:間。 : 清水:ほんとに!? 浅川:……ん? って、ちょっと待って、あれ、なんかニュアンス……。あの、それって付き合うって―― 清水:やったーー!! 祝! 浅川とコンビ結成! 目指せM1優勝!! 浅川:いや付き合うんじゃねぇのかよ! 清水:は? 浅川:は? : 0:間。 : 浅川:ちょっと待って。 清水:よし、待とう。 浅川:あの、清水君。 清水:清水で良いよ、清水君なんて水くさいじゃあ無いか、清水だけに。 浅川:いったん黙れ清水。 清水:はい。 浅川:……あの、なんかおかしくない? 清水:おかしい? どこが? 浅川:いや、流れ。 清水:流れ? ……あ、もしかしてさっそく笑いどころの研究か? 浅川:何言ってんだお前? 清水:おいおい流石浅川だぜ! 浅川:何が流石なの?! 清水:いやぁ惚れちまうな! 浅川:真っ当に惚れろよ! ていうか、すでに惚れたみたいな話してたんじゃ無かったっけ? 清水:え? 何が? 浅川:何がって、え? これ……こ、告白じゃないの? 清水:うん、告白だけど。え、そう言わなかった? 浅川:言ったよね、うん、好きって聞こえたもん。 清水:良かった、ちゃんと想いが届いて。 浅川:良かった、合ってるよねビックリした。いきなりコンビなんて言うから身構えたよ。 清水:コンビ? 浅川:一緒にいたいって意味であってるよね? 清水:うん? ああ! 一緒に頑張ろうな! 浅川:うん? 清水:いやぁ、それにしても俺、すっごいドキドキしたよ! 浅川:ドキドキ? 清水:浅川にフラれちゃったらどうしようって! 浅川:そ、そっか。 清水:いやぁーでも、浅川意外に乗り気というか、正直俺じゃ駄目かなって思ってたんだけど、安心した。 浅川:ううん、清水君が……清水が私のことそんなに見てくれてたなんて思わなかったから、その、嬉しい。私のことなんて見てる人居ないと思ったけど、あ、あんなに褒められたの初めてで、その、ちょっと、恥ずかしい。 清水:俺だって恥ずかしかったよ! あんなこと言ったの初めてだし。 浅川:意外。清水はクラスでも水素の次くらいに軽い感じだから、口説き慣れてるのかと思った。 清水:うわ、ひっど! そんなこと無いって! いや確かに浮いてるけど希ガスだからどうせ誰とも反応しない……って誰がヘリウムやねーん! 浅川:あははは! 清水:浅川の笑った顔、初めて見たかも。 浅川:え、いや見ないでよ……! 清水:浅川は笑顔も可愛いな。アサカワイイだな! 浅川:なにそれ! やめてよ~! 清水:それに、めっちゃ話してくれるじゃん。なんか嬉しいなぁ。 浅川:あ、わ、私も……! 清水:うん? 浅川:嬉しいよ、清水と、つ、付き合えて。 清水:そ、そういう言い方されると照れるな。 浅川:私も照れてるんだからね! 清水:あはは、ごめんごめん。 浅川:もう……! でも良かった。聞き間違いで。 清水:あはは。……聞き間違い? 何が? 浅川:何がって、清水がM1がどうとか言ってた気がしたから、私勘違いしちゃって。そんなわけ無いのにさ。 清水:あー確かに、M1はまだ早いよね。 浅川:そうそう、私達まだ付き合ったばかりだし……ってお笑い芸人じゃ無いか……ら。ん? 清水:そうだよなぁ。まだ、コンビ結成間もないし、まずは学園祭の漫才ステージからだよな! 浅川! 浅川:……漫才ステージ? どういうこと清水、ねぇ? 清水:俺達が輝く為の足掛かりさ! 浅川:ちょっと待ってよ清水! 清水:よし、待とう。 : 0:間。 : 浅川:それ出るの? 清水:うん。 浅川:私と清水で。 清水:うん。 浅川:コンビ組んで? 清水:うん。 浅川:コンビ名は? 清水:『ハッ清い!?』 浅川:ハッ清い?! ダサ! 清水:世界狙えると思うんだ。SUMOUにあやかって。 浅川:狙えるか! 絶対相撲関係ないだろ! 清水:いや! 浅川:いや? 清水:……無いね! 浅川:だろうね! 清水:うん、考えたけど無かったわ! 浅川:あっそ! もう、清水とコンビ組むのも無い! 清水:え?! 浅川:はしゃいでた私が馬鹿みたい! 清水:と、突然どうしたんだよ浅川!? 浅川:やっぱり勘違いだったんだ! 清水:勘違い? 浅川:清水のことちょっと良いなって思った。 清水:え、嬉しい。 浅川:でもそれは勘違い。 清水:え? 浅川:だって清水は、馬鹿で浮いてて声大きくて顔も微妙で距離感おかしくて人の話聞かなくて変なやつだもん、なんで一瞬でも好きだなんて思ってしまったんだろ? そんなの絶対勘違い! 清水:そ、そこまで言うこと無くない? 浅川:あそこまで思わせぶりなこと言っといて?! 清水:思わせぶり? 何がだよ浅川。 浅川:あんなに褒めて口説いたのは、何だったの? 清水:それは…… 浅川:どうせ全部根暗な私を馬鹿にするためだったんでしょ! 清水:な、何言ってんだよ浅川、誤解だって! 浅川:そう、誤解してた。清水が、清水が私のこと好きなんだって! 清水:浅川……。 浅川:でもあんまりじゃない? 期待させて、それを笑って済ませようなんて。M1? 出るわけ無いじゃん! 私のどこにお笑いの要素があるの? こんな、地味で根暗で、少し褒められたくらいで舞い上がる私に。ねぇ私で笑いを取ってなんになるの? 分かってる分かってる、放課後の校舎裏なんてベタな場所に呼び出されて期待してるようなヤツ、おかしくて仕方ないよね。満足した? このネタ引っ提げてM1でも、漫才ステージでも相撲でも出れば良いんじゃない。私はそんなの一ミリも興味ないけど。 : 0:間。 : 浅川:私、お笑いも、清水も、嫌い。 清水:浅川……。 浅川:……嘘吐き。 清水:待って! あ、その……浅川! 浅川:……何? あなたの顔なんて見たくない。 清水:あ、あのさ、浅川。 浅川:何? 清水:浅川。 浅川:何? 清水:浅川! 浅川:何なんだよ! 清水:浅川ぁ!! 浅川:うるさい!、 清水:浅川ぁぁぁ!!! 浅川:何なのもう、やめてよ! そうやって私のこと馬鹿にするの! 清水:大好きだぁぁぁぁ! 浅川:は? 清水:浅川! 俺は嘘なんてついてない! 俺は浅川のこと大好きだ! 浅川:何、今更?! そんなこと言ったって、信じられない! 清水:誤解させるようなこと言ってごめん! 俺は浅川にコンビになって欲しかったんだ。 浅川:その為に、ありもしない気持ち伝えて口説いてきたの? 今も。最低。 清水:違うよ! そんなこと無い! 俺は浅川と一緒に頑張りたいって本気で思ったんだ! 浅川:一緒に? それもどうせ、いつでもネタが引き出せるコンビニくらいにしか思ってなかったんじゃないの? どうせ私のことなんて見てなかったんじゃないの? 清水:なんで今ちょっと上手いこと言おうとしたの浅川!? そんなんじゃ無いって! 浅川:もうほっといてよ! 清水:ほっとけるわけ無いよ! 浅川:どうして! 清水:言っただろ! 目で追っちゃうんだよ! 浅川のこと! 耳澄ましちゃうんだよ、その綺麗な声に! 浅川:それは! 清水:口から出任せなんかじゃ無い、心から浅川のこと、す、好き、なんだよ。ずっとずっと好きなんだ。 浅川:だったら、普通に告白してよ……! : 0:間。 : 浅川:コンビになってくれとかそんな引っかけみたいなことしないでよ……! 清水:ごめん、でも……。 浅川:でも……? 清水:今はお笑いに集中したいから。 浅川:……プロか! まだ始まってすらいないでしょ! ふざけてるの? 清水:ふざけてなんか無い。でも、言っただろ? 浅川:何を。 清水:今これから始まるとこなんだ。って。 浅川:なにそれ……。 清水:ここからが良いところなんだ! 浅川:分かんないよ。 清水:一緒に始めよう。 浅川:分かんない。 清水:浅川。 浅川:清水。私は私が分かんない。 清水:俺は浅川のこと分かってる。 浅川:私は清水にとって何なの? 清水:決まってる。 浅川:何が? 清水:格好良くて可愛くて綺麗で素敵で、いつだって俺のことを笑顔にしてくれる人。 浅川:そんな覚え無いんだけど。 清水:じゃあ、覚えて欲しい。 浅川:みんなを笑わせるネタを? 清水:それも素敵だけど、浅川がどれだけ俺に勇気を与えてくれたかってこと。 浅川:……わけ分かんない。私なんかとコンビ組んで勝てる? お笑いのことなんて全然分からないよ? 清水:今はまだ始まったばかりだから良いさ。少しずつ、少しずつ、行こうよ。 浅川:少しずつ? 清水:うん。二人で少しずつ。 浅川:でも、 清水:心配すんなって。俺達のコンビ名覚えてる? 浅川:『ハッ清い!?』 清水:そうそう。 浅川:どういう意味なの? 清水の清いなのは分かるけど、 清水:うん。それと、浅川の心の清らかさ。 浅川:っちょ! 清水:相撲の「ハッケヨイ」をかけて、俺達綺麗だろ? まだまだ勝負は分からないぞっていう。意味を込めたんだ。 浅川:意味分かんないね。 清水:でしょ? ははは。 浅川:……ふふふ。 : 0:二人、笑い合う。 : 浅川:清水。 清水:うん? 浅川:コンビ、組むよ。 清水:ありがとう。 浅川:それで、あの……。 清水:何? 浅川:コンビじゃ無くて、お付き合いの方なんだけど……。 清水:お付き合い? ……あ、え、っと。 浅川:どうなるのかな……? 清水:それは……『ハッ清い!?』って感じで。 浅川:……解散。 清水:待ってよ!? 浅川! : 0:《幕》

0:◇登場人物◆ : 浅川:浅川 歌澄〈あさかわ かすみ〉 浅川:物静かであまり人と絡まない。放課後の校舎裏に呼び出された。 清水:清水 湧太〈しみず ゆうた〉 清水:やかましくて少し浮いてる。放課後の校舎裏に呼び出した。 : 0:◆あらすじ◇ : 元気系の清水が放課後の校舎裏に控えめな浅川を呼び出す。少し調子外れな清水だが、浅川は「まぁきっとそういうことだろう」と察しつつ話は進んでいく。しかし、清水には意外な目的があり……。 : 0:◇◆◆◇ : 0:放課後の校舎裏。 0:背を向けて立つ清水と、紙を手に現れた浅川。 0:浅川、清水に声をかける。 : 浅川:話って、何? 清水:あ、浅川。(振り返る) 浅川:清水君。 清水:あ、いや、えっと……。その……。 浅川:……用が無いなら帰るけど。 清水:待って! あ、その……浅川。 浅川:……何? 清水:あ、あのさ、浅川。 浅川:何? 清水:浅川。 浅川:何? 清水:浅川! 浅川:いや、何? 清水:浅川ぁ!! 浅川:え、ちょ、 清水:浅川ぁぁぁ!!! 浅川:怖い怖い! 何なの!? 清水:浅川! 来てくれてありがとう! 浅川:…………いや良いけど、あの……何なの? 清水:実は俺、浅川にずっと言いたいことがあって、その、なんていうか、そう、言いたいことがあったんだけど、緊張しちゃって、ははは、大きな声出しちゃってごめん。俺、緊張するとでかい声出る癖があるんだ。 浅川:登山者に遭遇した熊かよ。いや、どういう反応なのそれ。……まぁいいけど言いたいことって何? 清水:ああ、実はその……こんなところに呼び出したってことは、その、もう薄々気付いてるかも知れないんだけどさ。 浅川:こんなところって、校舎裏? まぁ、……そう、だね。で、何の用? だいたい分かるけど。言いたいことあるんじゃなかった? 清水:ごめん。いや、こういう言い方は卑怯、だったよな。うん、ちゃんと言う。 浅川:そう。 清水:実は俺、浅川のこと、一年の頃からずっと気になってたんだ。 浅川:…………。 清水:浅川ってさ、あんまり人と話さないじゃん。俺もこうして浅川と直接話したことほとんど無かったし、今、たぶん過去イチ話してて、今まで話した分より今話してる時間のが長いまであるなって思うんだけどさ、いや、そんな状況で呼び出して、来てくれるなんて、なんていうか、すごい感動したんだよ、俺。うん、感動した。 浅川:……は? いや、えっと……結局、何が言いたいの? 清水:うーん……感動した? 浅川:はぁ……。帰って良い? 清水:いや、待って! まだ終わってないから! お願い! 浅川:いや、早く終わらせてよ。いつ終わるの? 清水:いやいや、今これから始まるとこなんだよ! 浅川:正直、いつになったら始まるんだよって感じなんだけど。 清水:ここからが良いところなんだ! 浅川:すごいハードルあげるね。……まぁ何でも良いけど、早くしてくれない? 少なくとも今までのやり取りに良いところは無かったし。 清水:まぁ、でも、人生これからだから! 浅川:……生命保険? 清水:え? 浅川:……なんでも。 清水:あ、えっと、それでさ。浅川ってあんまりクラスのやつとも話してるとこ見かけなくてすっごい根暗なのかと思ってた。 浅川:……ディスってる? 清水:ごめん、最初はそう思ってた。でも浅川、めっちゃ勉強できて賢くて、なんていうか、むしろ孤高って感じで格好良いなって思ったんだ。 浅川:…………。 清水:先生に当てられても、即座にぱりっと答えて、話すときも切り口やたらスマートで、あと地味に歌とか上手いし、ていうかめっちゃ声綺麗だよな浅川。 浅川:え?! い、いや、そうかな……。 清水:そうなんだよ、うん、すごい良い。 浅川:そ、そう……。 清水:秋の風が吹くみたいに凛としてて大人びてるようで、それでいてワシミミズクみたいに愛嬌があって、 浅川:ワシミミズク……。 清水:俺ずっと浅川のこと気になってたんだ。見かける度に自然と目で追ってて、声が聴こえたら耳澄ましてた。 浅川:梟かよ。 清水:ずっと、ずっと気になってたんだ。けど俺、浅川になかなか声かけれなかったんだ。浅川って、人付き合い避けてるように見えてたし、浅川のこと人嫌いだって言ってる声も聴こえてきてた。 浅川:ああそう。 清水:でも、違うんだよな。 浅川:え? 清水:浅川、優しいんだよな。周りのことすごいよく見てて、困ってるやついたら人知れずフォローしてるの知ってる。クラス会とか、グループのやつで話纏まらなさそうだったら、言い難い意見とか忌憚無く出して流れ変えられるのも強い。だからキツく見られがちだったりするんだけど、それってめっちゃすげぇって思う。それだけじゃなくて、掃除とか片付けとか、あと図書室のPOPとか壁新聞とか作ってて、これがまた興味引くっていうか、絶妙に心掴むの上手いよな。 浅川:……ただ暇だっただけだけから。 清水:そんなこと無いよ、細かいことも率先してやるし、浅川ってすごいんだよ。 浅川:……清水君。 清水:俺実は浅川見てて、すごい勇気出た。かっこいいなって。 浅川:そうなの……? 清水:うん、ほら俺って浮いてるじゃん? 浅川:…………そうだね。 清水:でも、友達と上手くやれてるかより、自分がどう在るかなんだなって、俺、浅川見て思ったんだ。 浅川:…………。 清水:それで俺、決心した。多分、浅川は俺のことなんて見て無いだろうけどさ、 浅川:……そんなことは。 清水:だから一方的だけどさ、浅川は俺にとっての憧れで、恩人で、それで……だから、このままちゃんと言わないんじゃたぶん後悔する。 浅川:清水君。 清水:フラれるのは怖い。けど、浅川。聞いて欲しい、俺の想いを。……あのさ、浅川! 浅川:……何? 清水:俺、 浅川:うん、 清水:俺、ずっと前から浅川のことが好きでした! 浅川:清水君……。 清水:だから、俺と……俺と、 浅川:…………。 清水:浅川歌澄! 俺とコンビになろう! 浅川:いいよ。 : 0:間。 : 清水:ほんとに!? 浅川:……ん? って、ちょっと待って、あれ、なんかニュアンス……。あの、それって付き合うって―― 清水:やったーー!! 祝! 浅川とコンビ結成! 目指せM1優勝!! 浅川:いや付き合うんじゃねぇのかよ! 清水:は? 浅川:は? : 0:間。 : 浅川:ちょっと待って。 清水:よし、待とう。 浅川:あの、清水君。 清水:清水で良いよ、清水君なんて水くさいじゃあ無いか、清水だけに。 浅川:いったん黙れ清水。 清水:はい。 浅川:……あの、なんかおかしくない? 清水:おかしい? どこが? 浅川:いや、流れ。 清水:流れ? ……あ、もしかしてさっそく笑いどころの研究か? 浅川:何言ってんだお前? 清水:おいおい流石浅川だぜ! 浅川:何が流石なの?! 清水:いやぁ惚れちまうな! 浅川:真っ当に惚れろよ! ていうか、すでに惚れたみたいな話してたんじゃ無かったっけ? 清水:え? 何が? 浅川:何がって、え? これ……こ、告白じゃないの? 清水:うん、告白だけど。え、そう言わなかった? 浅川:言ったよね、うん、好きって聞こえたもん。 清水:良かった、ちゃんと想いが届いて。 浅川:良かった、合ってるよねビックリした。いきなりコンビなんて言うから身構えたよ。 清水:コンビ? 浅川:一緒にいたいって意味であってるよね? 清水:うん? ああ! 一緒に頑張ろうな! 浅川:うん? 清水:いやぁ、それにしても俺、すっごいドキドキしたよ! 浅川:ドキドキ? 清水:浅川にフラれちゃったらどうしようって! 浅川:そ、そっか。 清水:いやぁーでも、浅川意外に乗り気というか、正直俺じゃ駄目かなって思ってたんだけど、安心した。 浅川:ううん、清水君が……清水が私のことそんなに見てくれてたなんて思わなかったから、その、嬉しい。私のことなんて見てる人居ないと思ったけど、あ、あんなに褒められたの初めてで、その、ちょっと、恥ずかしい。 清水:俺だって恥ずかしかったよ! あんなこと言ったの初めてだし。 浅川:意外。清水はクラスでも水素の次くらいに軽い感じだから、口説き慣れてるのかと思った。 清水:うわ、ひっど! そんなこと無いって! いや確かに浮いてるけど希ガスだからどうせ誰とも反応しない……って誰がヘリウムやねーん! 浅川:あははは! 清水:浅川の笑った顔、初めて見たかも。 浅川:え、いや見ないでよ……! 清水:浅川は笑顔も可愛いな。アサカワイイだな! 浅川:なにそれ! やめてよ~! 清水:それに、めっちゃ話してくれるじゃん。なんか嬉しいなぁ。 浅川:あ、わ、私も……! 清水:うん? 浅川:嬉しいよ、清水と、つ、付き合えて。 清水:そ、そういう言い方されると照れるな。 浅川:私も照れてるんだからね! 清水:あはは、ごめんごめん。 浅川:もう……! でも良かった。聞き間違いで。 清水:あはは。……聞き間違い? 何が? 浅川:何がって、清水がM1がどうとか言ってた気がしたから、私勘違いしちゃって。そんなわけ無いのにさ。 清水:あー確かに、M1はまだ早いよね。 浅川:そうそう、私達まだ付き合ったばかりだし……ってお笑い芸人じゃ無いか……ら。ん? 清水:そうだよなぁ。まだ、コンビ結成間もないし、まずは学園祭の漫才ステージからだよな! 浅川! 浅川:……漫才ステージ? どういうこと清水、ねぇ? 清水:俺達が輝く為の足掛かりさ! 浅川:ちょっと待ってよ清水! 清水:よし、待とう。 : 0:間。 : 浅川:それ出るの? 清水:うん。 浅川:私と清水で。 清水:うん。 浅川:コンビ組んで? 清水:うん。 浅川:コンビ名は? 清水:『ハッ清い!?』 浅川:ハッ清い?! ダサ! 清水:世界狙えると思うんだ。SUMOUにあやかって。 浅川:狙えるか! 絶対相撲関係ないだろ! 清水:いや! 浅川:いや? 清水:……無いね! 浅川:だろうね! 清水:うん、考えたけど無かったわ! 浅川:あっそ! もう、清水とコンビ組むのも無い! 清水:え?! 浅川:はしゃいでた私が馬鹿みたい! 清水:と、突然どうしたんだよ浅川!? 浅川:やっぱり勘違いだったんだ! 清水:勘違い? 浅川:清水のことちょっと良いなって思った。 清水:え、嬉しい。 浅川:でもそれは勘違い。 清水:え? 浅川:だって清水は、馬鹿で浮いてて声大きくて顔も微妙で距離感おかしくて人の話聞かなくて変なやつだもん、なんで一瞬でも好きだなんて思ってしまったんだろ? そんなの絶対勘違い! 清水:そ、そこまで言うこと無くない? 浅川:あそこまで思わせぶりなこと言っといて?! 清水:思わせぶり? 何がだよ浅川。 浅川:あんなに褒めて口説いたのは、何だったの? 清水:それは…… 浅川:どうせ全部根暗な私を馬鹿にするためだったんでしょ! 清水:な、何言ってんだよ浅川、誤解だって! 浅川:そう、誤解してた。清水が、清水が私のこと好きなんだって! 清水:浅川……。 浅川:でもあんまりじゃない? 期待させて、それを笑って済ませようなんて。M1? 出るわけ無いじゃん! 私のどこにお笑いの要素があるの? こんな、地味で根暗で、少し褒められたくらいで舞い上がる私に。ねぇ私で笑いを取ってなんになるの? 分かってる分かってる、放課後の校舎裏なんてベタな場所に呼び出されて期待してるようなヤツ、おかしくて仕方ないよね。満足した? このネタ引っ提げてM1でも、漫才ステージでも相撲でも出れば良いんじゃない。私はそんなの一ミリも興味ないけど。 : 0:間。 : 浅川:私、お笑いも、清水も、嫌い。 清水:浅川……。 浅川:……嘘吐き。 清水:待って! あ、その……浅川! 浅川:……何? あなたの顔なんて見たくない。 清水:あ、あのさ、浅川。 浅川:何? 清水:浅川。 浅川:何? 清水:浅川! 浅川:何なんだよ! 清水:浅川ぁ!! 浅川:うるさい!、 清水:浅川ぁぁぁ!!! 浅川:何なのもう、やめてよ! そうやって私のこと馬鹿にするの! 清水:大好きだぁぁぁぁ! 浅川:は? 清水:浅川! 俺は嘘なんてついてない! 俺は浅川のこと大好きだ! 浅川:何、今更?! そんなこと言ったって、信じられない! 清水:誤解させるようなこと言ってごめん! 俺は浅川にコンビになって欲しかったんだ。 浅川:その為に、ありもしない気持ち伝えて口説いてきたの? 今も。最低。 清水:違うよ! そんなこと無い! 俺は浅川と一緒に頑張りたいって本気で思ったんだ! 浅川:一緒に? それもどうせ、いつでもネタが引き出せるコンビニくらいにしか思ってなかったんじゃないの? どうせ私のことなんて見てなかったんじゃないの? 清水:なんで今ちょっと上手いこと言おうとしたの浅川!? そんなんじゃ無いって! 浅川:もうほっといてよ! 清水:ほっとけるわけ無いよ! 浅川:どうして! 清水:言っただろ! 目で追っちゃうんだよ! 浅川のこと! 耳澄ましちゃうんだよ、その綺麗な声に! 浅川:それは! 清水:口から出任せなんかじゃ無い、心から浅川のこと、す、好き、なんだよ。ずっとずっと好きなんだ。 浅川:だったら、普通に告白してよ……! : 0:間。 : 浅川:コンビになってくれとかそんな引っかけみたいなことしないでよ……! 清水:ごめん、でも……。 浅川:でも……? 清水:今はお笑いに集中したいから。 浅川:……プロか! まだ始まってすらいないでしょ! ふざけてるの? 清水:ふざけてなんか無い。でも、言っただろ? 浅川:何を。 清水:今これから始まるとこなんだ。って。 浅川:なにそれ……。 清水:ここからが良いところなんだ! 浅川:分かんないよ。 清水:一緒に始めよう。 浅川:分かんない。 清水:浅川。 浅川:清水。私は私が分かんない。 清水:俺は浅川のこと分かってる。 浅川:私は清水にとって何なの? 清水:決まってる。 浅川:何が? 清水:格好良くて可愛くて綺麗で素敵で、いつだって俺のことを笑顔にしてくれる人。 浅川:そんな覚え無いんだけど。 清水:じゃあ、覚えて欲しい。 浅川:みんなを笑わせるネタを? 清水:それも素敵だけど、浅川がどれだけ俺に勇気を与えてくれたかってこと。 浅川:……わけ分かんない。私なんかとコンビ組んで勝てる? お笑いのことなんて全然分からないよ? 清水:今はまだ始まったばかりだから良いさ。少しずつ、少しずつ、行こうよ。 浅川:少しずつ? 清水:うん。二人で少しずつ。 浅川:でも、 清水:心配すんなって。俺達のコンビ名覚えてる? 浅川:『ハッ清い!?』 清水:そうそう。 浅川:どういう意味なの? 清水の清いなのは分かるけど、 清水:うん。それと、浅川の心の清らかさ。 浅川:っちょ! 清水:相撲の「ハッケヨイ」をかけて、俺達綺麗だろ? まだまだ勝負は分からないぞっていう。意味を込めたんだ。 浅川:意味分かんないね。 清水:でしょ? ははは。 浅川:……ふふふ。 : 0:二人、笑い合う。 : 浅川:清水。 清水:うん? 浅川:コンビ、組むよ。 清水:ありがとう。 浅川:それで、あの……。 清水:何? 浅川:コンビじゃ無くて、お付き合いの方なんだけど……。 清水:お付き合い? ……あ、え、っと。 浅川:どうなるのかな……? 清水:それは……『ハッ清い!?』って感じで。 浅川:……解散。 清水:待ってよ!? 浅川! : 0:《幕》