台本概要

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タイトル 殺し、愛。
作者名 ねるひつじ  (@sleep_sheepzzz)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ラブストーリー?ですが。
ほぼ軍事的な感じです。
詳しくはないのでなんかいろいろ間違ってても多めに見てください。

役の性別変更は、男女の組み合わせであれば可とします。(リドが男性で、ジープが女性)
役の性別変更に伴う一人称やその他変更は適宜行ってください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ジープ 173 上司
リド 166 部下
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
: 0:現在 : リドの語り:いいねえ、この感じ。 リドの語り:ひしひしと伝わってくる。 リドの語り:緊張感と、狂気と、それから…殺気。 ジープの語り:この鉄の重みと防音マフの安心感、骨に響く装填の音。 ジープの語り:血が騒がないと言ったら嘘になるだろう。 : : 0:場面転換。過去 0:リドとジープ、基地の小屋にて。 : : リド:ジープ中尉…今は大尉か ジープ:そうだ ジープ:相変わらず敬語の使えなさは軍イチだな、リド少尉 リド:敬語を使わないのはあんたにだけだよ ジープ:それは悲しいな。おじさん泣くぞ? リド:きもいからやめとけ ジープ:うわ辛辣 リド:それはそうと…おかしいな? リド:あんたは軍事事務に異動になったと噂で聞いてたが…所詮、噂は噂だったみてえだ。 リド:あんたが現場から離れていられるわけがなかったか ジープ:いいや。その噂は正しいぜ リド:ほう、じゃあ今は職務放棄ってわけだ? ジープ:バカ言え。俺は仕事を放り出すようないい加減な男か? リド:自覚がないのか? リド:気に食わなかったら知らぬ存ぜぬだろう ジープ:お前は細けぇとこまで俺のこと見てるな リド:細かくねえよ、周知の事実だ ジープ:そうかい、冷てえな リド:…で、なんだ。わざわざ通常任務だけで呼ばれるような奴じゃないだろ、あんたは ジープ:まあ主な職務は特別任務だが ジープ:そのついでに通常任務もやらせてもらうよ リド:それでここにいるってことか リド:それで?特別任務ってのはなんなんだ ジープ:それは話すわけにはいかねえな リド:軍事機密ってか。偉くなったな ジープ:おい、俺は最初っからお前より上の階級のはずだぞ リド:そういうこと言ってんじゃねえよ ジープ:年とりゃ重い責任背負わされる ジープ:ま、自然の摂理みたいなもんだろ リド:うわ、それ聞くと年はとりたくねえと思っちまうな ジープ:ここにも同じことを思ってるやつがいるから、現場に舞い戻ってんだよ リド:でも、偉いから特別任務なんて重要なこと任されてんだろ ジープ:それはちょっと違うな リド:じゃあ少しくらい教えてくれたっていいだろう ジープ:偉くないからダメなんだろ。上が俺の首を飛ばす リド:そりゃ怖い、やめとこう ジープ:お前に話したせいで首が飛んだら生涯呪ってやるよ リド:早々にお祓いしてやるよ ジープ:お前さ、元とはいえ上司の扱いひどくないか? リド:今の上司はちゃんと敬ってる ジープ:ああ、そうかい。ひでぇこった : 0:少し黙る : ジープ:お前さんが軍事学校を卒業したのは何年前だ リド:8年前だよ。もうボケが来たか ジープ:いいや、一応確認だ リド:そうか リド:…兄を追って入隊したはずだったんだがな ジープ:そのことに関しては、お悔やみ申し上げますとしか言えねえな リド:薄情なこった リド:…任務中の事故、とは聞いたが リド:そもそも兄からは、そんな危険な任務だなんて聞いてなかった リド:あんたは何か知らないか。兄の死に関して ジープ:お前の兄の存在は認知してたが、なにせ部隊が違ったからな… ジープ:データを調べたほうが早いんじゃないか リド:調べたよ。該当するデータはなかった リド:ここの軍隊は、死者のデータは残さないらしいな ジープ:そうなのか? ジープ:データ室になんか縁がないもんで リド:脳筋だからな リド:データなんか見た途端、思考回路が停止するだろう ジープ:はは笑…言ってくれるじゃねえか ジープ:でも確かにそうだな。今回の任務だって、俺か相棒かって話で来てたんだが ジープ:事務仕事が性に合わねえもんで、俺が手を挙げたんだ リド:そんなこったろうと思ってたよ リド:無論、お前の相棒はもっぱら事務仕事が向いてるタイプだろうがな ジープ:違いない : 0:リドの通信機が鳴る : ジープ:お、こんな世間話をしてるうちに呼ばれちまったみてえだな リド:ああ、信号が入った。じゃあ、行ってくる ジープ:おう、健闘を祈るよ、リド少尉 リド:ああ、大尉もな : : 0:数日後。基地 : : リド:大尉 ジープ:おう、リド リド:任務の進捗はどうよ ジープ:なかなか進まねえというか…証拠が集まらねえってとこだな リド:あの優秀な大尉が?珍しい ジープ:ターゲットがなかなか手強いもんでな ジープ:接触は可能だが探るのが難しいときた リド:まあ、詳しくは聞けねえから聞かねえけど リド:まあ、なんだ?なんか他のことで手伝えることがあったら声かけてくれよ ジープ:…は?お前いつからそんなに優しい言葉言えるようになったんだよ リド:これが優しいと感じるとは、あんたも寂しいやつだな リド:軍に必要なのは連携だろ。それだけの話だ ジープ:そうだなあ、じゃあ、ちょっとこっち来い リド:なんだ? : 0:ジープ、リドの頭をぽんぽんする : リド:…はあ!?いきなり頭なでるとか…! リド:セクハラか!訴えられてえのか! ジープ:いやね、根詰めて作業してると、ほら、アニマルセラピーが必要になってくるだろ リド:動物といいたい…? ジープ:かわいらしいものを愛でたいって話さ リド:どういうことだよ… ジープ:というわけで、コーヒーもらってきてくれないか? リド:何が、というわけで、だ リド:手伝おうとした私が間違ってたよ、自分で行ってくれ! ジープ:おいおい、拗ねるなよ リド:拗ねてない! : 0:リド、去る : ジープ:頼むからセクハラで訴えてはくれるなよ?笑 : : 0:軍基地食堂にて : : ジープ:おい、リド少尉 リド:なんだ ジープ:さっきはすまなかったよ リド:…(口を開けてぽかん、という感じ) ジープ:なんだその間抜け面 リド:大尉が謝るなんて、月が落ちてくる… ジープ:そんなに珍しくないだろ笑 リド:相棒以外に言ってるの見たことないぞ ジープ:そりゃお前がみたことないだけだろ リド:そうかもしれないが ジープ:で、隣いいか リド:断る理由はない ジープ:ありがとよ リド:…ジープ ジープ:なんだ? リド:その…さっきのことだが ジープ:もう謝ったろう、許してくれよ リド:いや、なんていうんだ…その… ジープ:なんだよ リド:…アニマルセラピーくらいならいつでもするぞ ジープ:…(口を開けてぽかん、という感じ) リド:なんだその間抜け面 ジープ:いや…お前のほうが月落ちてくるだろ リド:月は2個もねえよ ジープ:なんでそこ言及するかね リド:ま、セラピーが不要だってんならならいいが ジープ:そんなことはない。必要になったら呼ぶとしよう リド:そうかよ リド:じゃあ、私は食べ終わったから行くよ ジープ:おう、午後の訓練もがんばれよ リド:あんたもな : : 0:戦地にて : : リド:まさかあんたとタッグを組むとは… ジープ:そんなに意外か? リド:なんだ、あんたは私と組むと思ってたのかよ ジープ:お前は同期と組むには腕が良すぎるだろう リド:そうだな ジープ:お前ほんとに謙遜という言葉を知らねえのな リド:私の拳銃の腕が確かなのは事実だろう? ジープ:まあ反論はできないな リド:それでまあ、あんたは他に組む人がいないと ジープ:ぼっちといいたい? リド:違うのか? ジープ:…まあ、そういうこった リド:おっと無駄話をしてる場合じゃなくなってきたぞ ジープ:そうだな、じゃあ俺はここの岩陰でお前の援護をする リド:ああ、私は対象に一番近いあの木まで移動する リド:信じてるぞ、大尉 ジープ:ああ、俺も… : : ジープの語り:信じたい。少尉、お前のことを : : 0:基地、ジープの自室にて : : リド:なんだ無線で呼びやがって ジープ:いや、ほら、アニマルセラピーだよ リド:ほんとに呼ぶのかよ ジープ:だめなのか? リド:いやそういうわけじゃないが ジープ:いや後から訴えるとかやめてくれよ リド:そんなことはしないが、あんた独身か ジープ:気にしてんのか笑 ジープ:あのなあ、俺みたいに軍に入り浸ってるやつが、家庭を持ってると思うか リド:いや、異動したときにそういう話があってもおかしくはないと思ったからな ジープ:残念ながらそんな話はなかったね リド:その年でいい人もいないのか リド:寂しいやつだな ジープ:そんなこと言わないでくれよ ジープ:俺が愛する人は後にも先にも一人だけだ リド:意外だな。一人はいたのか ジープ:別にまだ死んじゃいねえよ ジープ:ただ手は出せない リド:ほう…人妻か何かか ジープ:まあ人妻ではねえが事情があるのは確かだ ジープ:しばらくしたら会えなくなる リド:気持ちだけでも伝えればいいのに リド:会えなくなってからじゃ後悔するぞ ジープ:相手の邪魔はしたくねえよ、いいおっさんが リド:そのいいおっさんが、アニマルセラピーと称して私を呼んでるのはどういうこった ジープ:それはお前の許可済みだろう リド:過去の私の口を全力でふさぎたい… ジープ:嫌ならなにもしねえよ リド:嫌ではねえが癪だな ジープ:じゃあやめとこう リド:それは助かる ジープ:そういや、お前のほうこそ兄のことは何か分かったのか リド:いいやまったく リド:3年も調べてるってのに手がかり1つ見つけられない ジープ:戦場で死んだってんならだれか一人くらい見てるだろう リド:あの頃は死者も多くて、あまり当事者が残っていなくてな ジープ:なるほど。目撃者も死亡してるってことか? リド:生存者も、あんたみたいに部隊が違う人だったりあまり仲良くない人だったりするし リド:前も言った通りデータは残ってない リド:お手上げだ ジープ:諦めるのか リド:諦めたくはねえよ、ねえけど…諦めるしかないんだよ ジープ:リド、こっち来い 0;頭ぽんぽん リド:は!? ジープ:おっと、つい手が滑っちまった リド:…ありがとう ジープ:…お前の口から礼を聞くとはな? リド:減らず口め… ジープ:3個目の月だな リド:うるさいぞ… ジープ:次訓練がない日も来てくれ、よかったら リド:私にかまってしまう程度には、あんたも弱い男だな ジープ:そうかもしれねえな リド:ま、気が向いたら来ることにするよ : : 0:数日後。ジープの自室 : : リド:ジープ、来てやったぞ リド:…ジープ?いるか? リド:…あれ?いない…入ってもいいか? リド:連絡したんだがな…どこ行ってるんだ… : 0:リド、棚からはみ出てるチェーンを見つける : リド:ん…?これ… ジープ:お前なにしてんだ リド:あっ… ジープ:勝手に人の棚開けるような奴だとは思わなかった リド:すまない。いや、たまたまチェーンが見えたもんでな リド:ジープ… ジープ:なんだ リド:これ…兄のドッグタグだよな? ジープ:… リド:あんた、なんでこれ持ってんだ リド:何で隠してた!? リド:私があんたに聞いた時、あんたは何も知らないって言った!! リド:なんで… ジープ:それは… リド:それに…戦地で死んだと聞いてたが、傷一つないぞ、このドッグタグ… ジープ:はぁ… リド:何を知ってる…? リド:この期に及んで兄について何も知らないとは言わないだろ ジープ:明日にしてくれ リド:今話せよ!! ジープ:出てけ!!!! リド:…っ ジープ:今日は、出ていけ リド:わかった、今日は、出てく リド:だが、本当に明日話してくれるんだな? リド:信じていいんだよな? ジープ:ああ。…お前もそれ相応の覚悟をして来い ジープ:覚悟ができないうちは来るんじゃねえぞ、わかったか リド:覚悟?何の話だ ジープ:覚悟は覚悟だよ ジープ:いいから今日はもう行ってくれ : : 0:次の日 : : リド:ジープ。話を聞きに来た。 ジープ:本当にいいんだな? リド:覚悟はしてきたつもりだよ ジープ:…じゃあ、そこ座れ リド:ああ ジープ:…何から話せばいいのか リド:兄の本当の死因は何だ? ジープ:…暗殺 リド:……は?え?暗殺って ジープ:リド。お前は兄が何だったのか知ってるか リド:中尉だろう ジープ:そうじゃない リド:…?何が言いたい ジープ:お前の兄、ロッド=ガラムは………スパイだった リド:スパイ…? リド:は?え、だって、私は兄を追ってこの部隊に入隊して… ジープ:そうだな ジープ:それから、兄の暗殺を担当したのは… リド:知っているのか!?誰だ!? ジープ:………俺だ リド:……は? ジープ:俺が、命じられたんだ ジープ:上官から、ガラムがスパイだって証拠を突き付けられた リド:嘘だ!!! リド:知らぬ存ぜぬのお前が!何も言わずに従ったのか! ジープ:あの時の俺は、上官が怖くて反論なんかできなかった… リド:情けない ジープ:俺だって抵抗がなかったわけじゃない ジープ:その当時はお前の兄だってことは知らなかったが、ガラムがいいやつで、皆から好かれてることは知ってたからな リド:じゃあなんで… ジープ:だが!従わなければ始末されるのは俺だ ジープ:命の駆け引きなんだよ リド:…軍の仕組みについては無知じゃないからな…何とも言えないが ジープ:それに、ガラムがスパイってことは紛れもない事実だった ジープ:任務遂行の前に俺なりにも調査したが、そりゃもう裏付けのしっかりした証拠ばかりだったよ リド:兄は…何も言わなかったのか ジープ:待ってくれ、俺はスナイパーだぞ リド:ああ、そうか… リド:でも待て、ならなぜドッグタグを持ってる? ジープ:それは、上官に頼んで、引き取らせてもらった リド:ほう…?形見ってか ジープ:形見というより戒めに近いが リド:戒め? ジープ:そのことがあってからだ。知らぬ存ぜぬのスタンスになったのは リド:…なんか情報量が… ジープ:だから覚悟して来いって言っただろ リド:…はあ。でも、はっきりした リド:はっきりしたけど…なんであんたなんだ… ジープ:は? リド:なんで兄を殺したのがあんたなんだ…! ジープ:…あの時はそうするしかなかった ジープ:憎いだろう リド:…ああ ジープ:殺したいか? リド:それは… ジープ:お前が俺を殺したいと思うんだったら、俺は逃げるつもりはない リド:ほんとかよ ジープ:本当だ リド:まあ接近戦なら私のほうが上だがな ジープ:それもそうか ジープ:もう一つ話があったが…また後日のほうがよさそうだな リド:なんだ、話せよ ジープ:いいや、俺が話す気分じゃない : : 0:数日後 : : ジープ:リド! リド:あぁ…こんなすぐ駆けつけるなんて…大尉のくせに暇人かよ ジープ:撃たれたと聞いたもんでな ジープ:まあでも、その喋りを見る限りは大丈夫そうだ ジープ:わざわざ来る必要なんてなかったか リド:うるっせ… ジープ:まさかお前が撃たれるとはな リド:どういう意味だよ…笑 ジープ:お前は視野も広いし警戒心も強いから、まあほとんど見つかることはないだろうと思ってたんだよ リド:仲間がやらかして…応援に入ったら狙われた ジープ:警戒心が緩んだか リド:そんなつもりはなかったんだがな リド:そういやこの間、もう一つ話があると言ってたろ ジープ:ああ… リド:どうせ治るまでは暇だ。聞かせてくれよ ジープ:いや…今するべき話じゃない ジープ:この話を聞きたかったら、怪我を治して、また覚悟をしてくることだな リド:また覚悟かよ リド:…じゃあその話じゃなくていいからなんか聞かせてくれ、あんたも暇だろ ジープ:いうほど暇じゃねえが、弱ってる子猫ちゃんのために話してやろうじゃないか リド:前言撤回…どっかいってくれ… ジープ:おうおう、悪かったよ : : 0:2週間後くらい : : リド:治ったから来たぞ ジープ:おう リド:今度は何の話だ ジープ:…お前、この前なんで撃たれたんだ リド:それはあの時言ったろう。応援に入って… ジープ:なんで仲間に撃たれたんだって聞いてるんだよ リド:は?私は相手の部隊のやつに… ジープ:その相手が、お前の、本来の仲間だろう リド:何の話だ? ジープ:お前も兄と同じスパイだろって話だ ジープ:無論お前は、当時は兄がスパイだってことは知らなかっただろうが リド:… ジープ:狙われたのは、お前が用済みだからだろ リド:私がスパイ?バカ言うなよ リド:軍事学校卒業してそのままここに来たんだぞ リド:あんたが一番よく知ってるだろ ジープ:だからだよ ジープ:だからこの仕事を引き受けた リド:わかんねえな リド:疑ってるから引き受けたんじゃねえのか、悲しいこった ジープ:逆だ。信じたいから、信じてたから、無実をこの手で証明しようとした リド:そうか ジープ:なんでだよ ジープ:何でほんとにスパイなんか… リド:…あんたに隠しても仕方ないか リド:まあ、認めるよ。覚悟はしてきたからな リド:で?どうするんだ リド:兄みたいに殺すか? ジープ:逃げろ リド:は?…あんた、何言って… ジープ:殺すつもりならこのことを本人には言わねえだろ リド:お前の任務はどうなる? ジープ:「知らぬ存ぜぬ」。俺のポリシーだ リド:待ってくれ、報告しないのなら私が逃げる必要は… ジープ:“俺は”報告するつもりはない ジープ:だが、あの上官のことだ、他のやつにも調査依頼をしているだろう リド:時間の問題だってことか ジープ:現状、お前がスパイだっていう確実な証拠を手にしているのは俺だけだが、他のやつらにいつ追いつかれるかもわからん リド:あ?なんでお前だけだってわかるんだよ ジープ:俺は優秀だからな リド:少しは謙虚になれよ ジープ:こんな図々しいやつがこんな時だけ謙虚だったら気持ち悪いだろ リド:確かにな リド:なぁジープ…私は逃げ切れると思うか? ジープ:お前は優秀だ。どうにかなるだろ リド:それもそうか ジープ:少しは謙虚になれよ リド:一つ頼みがある ジープ:なんだ? リド:私から目を離さないでいてもらえるか ジープ:どういうことだ? リド:この先、私はこっちの部隊からもあっちの部隊からも狙われることになるだろ? ジープ:そうだな リド:本当に逃げ切れなくなった時、その時は… ジープ:なんだいきなり弱音か?笑 リド:私はあんたに殺されたい ジープ:っ… リド:ポーカーフェイスでスパイを調べてたんだからこんなことで動揺するなよ ジープ:うるせえ ジープ:…いいんだな? リド:ああ、約束だ リド:…ジープ、いや…大尉 ジープ:どうした、まだなんかあるのか リド:信じてます。それでは : 0:リド、去る : ジープ:リド…? : : 0:基地にて : ジープ:(ほかの隊員に向けて) ジープ:ああ?なんだ? ジープ:リド=ガラム少尉が行方不明? ジープ:昨日会わなかったかって? ジープ:会ったが…特に何もなかったぞ : : 0:基地の外にて : リド:もうそろそろ私の捜索が開始される頃か… リド:少なくとも今は向こうの部隊に近づかないようにしないとな… : : 0:間 : ジープ:ガラムのドッグタグにGPSは仕込んどいたが… ジープ:他のやつらに見つかるか… ジープ:でも今のところは逃げ切れてるみたいだな : 0:間 : リド:くそ…今日は冷えるな… リド:兄さん…助けてくれよ… : 0:間 : ジープ:もう他のやつらが証拠つかんだか… ジープ:リドは…あの位置ならまだ… : 0:間 : リド:さすがにもうどちらからも追われるだろうな リド:っ…あれは…! リド:こちらの部隊の…まずいな… リド:追いつくのが早すぎやしないか…!? : 0:間 : ジープ:あっ…やっぱりGPSに気づいたか ジープ:さてどうやって追うかな : 0:間 : リド:何とか逃げ切れたか リド:GPSは壊したし2日くらいはもつだろう リド:ただもう…あいつにも、見放されたかな… : 0:間 : ジープ:相手の部隊もだいぶあいつに近づいてるって情報が入ってんな… ジープ:もちこたえてほしいが… ジープ:そろそろ俺も行くべきか ジープ:…お、ナイスタイミング : 0:ジープの上官、大佐の部屋 : ジープ:お呼びですか、ランドソン大佐 ジープ:ええ、調査に関しては力が及ばず、申し訳ありません ジープ:…はい。リド=ガラム少尉の処理ですね、了解しました : : 0:ジープ、リドの捜索 : : ジープ:最後のGPSの地点から逃げるとしたら…こちらの方向か : ジープ:くっそ…さすがリドだ、少しの手がかりも残さないなんてな ジープ:まったくわかんねえよ…優秀すぎやしないか笑 : 0:間 : リド:気を抜けない…はあ、何も残してこなかったし… リド:さすがのあいつでも追うのは難しいか…? リド:いつまで逃げればいいんだ、私は… : 0:間 : ジープ:あれは…向こうの部隊のやつらだな ジープ:方向は合ってると見たが…無事でいてくれよ : 0:数発の銃声 : ジープ:…!?…銃声?まさか… : : リド:うっ…はぁ…はぁ… リド:くっそ…腕だからまだいいが… リド:相手はもう…動いてないみたいだな… リド:他のやつらが来る前に遠くに行かないと… : : ジープ:リドが近くにいるのか? ジープ:今の銃声…まさか死んじゃいないだろうな ジープ:お前から言ってきたんだろ、リド ジープ:頼むから、俺が追いつくまではくたばるなよ : 0:数時間後、ジープ、相手部隊の隊員の死体を見つける : ジープ:…これは…あっちの部隊の…もう死んでるのか… ジープ:ん?このチェーンは…!なんだ、メモがついて… : リド:「もしこれを見つけることがあったら、あんたが持っててくれ R」 : ジープ:ロッド=ガラム…お前に似て、ずいぶん強いやつだよ、リドは ジープ:そういえば、妹を頼むと言ってたな ジープ:ガラム、俺がこれからするだろうことを、許してくれるか…? : : 0:翌日、周りの騒がしさで起きるジープ : : ジープ:なんだ…うるさいな… ジープ:ん?なんだ…あっちもこっちも…隊員が増えてないか? ジープ:まさか…! : : リド:まじかよ…見つかった… リド:今度は両部隊か…さすがにきついか…? : リドの語り:とうとう見つかってしまった。 リドの語り:だが、拳銃と手榴弾(しゅりゅうだん)はまだ残っている。 リドの語り:私は、逃げなきゃいけないんだ。 リドの語り:逃げて…逃げて…もしジープがいなかったら? リドの語り:いや、そんなことを考えるのはやめよう。 リドの語り:ずいぶん訓練もしてきたつもりだが、まだまだメンタルは鍛えなきゃな。 : : ジープの語り:激しいとまでは言えないが確かな攻防を遠くに認めることができる。 ジープの語り:俺もあれを追わなければ… ジープの語り:どこか高い建物から、あいつを見守ってやらないと。 : : 0:リド、追っ手に追われて、建物の屋上にて : : リドの語り:意外と逃げれるじゃないか。 リドの語り:人間やればできるものだ。 リドの語り:だが…ミスったな…この建物、反対側の壁にはベランダがないのか… リドの語り:これじゃあ… : : ジープの語り:あいつ…建物になんか上りやがって… ジープの語り:こっちからしたら狙いやすいが…逃げる気がないのか? ジープの語り:追っ手が来てるぞ…どうするつもりだ? : : リドの語り:建物の屋上だ。追っ手はもうじき来るだろう。 リドの語り:ロープも、もうさっき使ってしまった。手元にあるのは弾が2個だけ入った拳銃と、使い物になるか分からない手榴弾(しゅりゅうだん)1つ。 リドの語り:でも不思議と、怖くはないんだ。 : リドの語り:いいねえ、この感じ。 リドの語り:逃げ場なんてない、この感じ。 リドの語り:ひしひしと伝わってくる。いろんな方向からの殺気も。 : : ジープの語り:この鉄の重みと防音マフの安心感。骨に響く装填の音。 ジープの語り:血が騒がないと言ったら嘘になる。 ジープの語り:嘘になるが…今回ばかりは荷が重い。 : : ジープ:すまんな… ジープ:でも、さすがにもう限界だろ… : : ジープの語り:俺はスナイパーライフルのスコープを覗いて、赤い点をリドに向けた。 : : リド:…!? リド:ジープか…?ジープなのか? リド:本当に…目を離さないでいてくれたんだな… : リドの語り:ジープのライフルの焦点は、私の心臓を狙っていた。 リドの語り:さすがにもう逃げきれない。わかっている。 リドの語り:撃つなら撃ってくれと思った。 リドの語り:その瞬間、1ミリも動かなかった赤い点が点滅し始めた。 : : リドの語り:…モールス信号…?ええと… リドの語り:…俺は…嘘をついてた。 リドの語り:…お前の…兄の…最後の…言葉を…知ってる。 リドの語り:…俺からも…同じ…言葉を…贈る…? : : リド:…L…Y…RID.(エル ワイ アールアイディー) : リドの語り:これは… リドの語り:単語のイニシャル… : ジープ:…Love You Rid.(ラブ ユー リド) : リド:それを心臓に打つとは… リド:4個目の月かよ…笑 リド:仕方ないな。5個目の月だ : リドの語り:私はジープがいるであろう方向に向け、信号を送った。 : ジープ:…L…Y…ZEEP.(エル ワイ ゼットイーイーピー) : リド:…Love You Zeep.(ラブ ユー ジープ) : ジープ:あいつ… ジープ:最後まで年上を翻弄しやがって : ジープ:逃げないってことは ジープ:…いいんだよな?リド : ジープ:冥福を祈る : : ジープの語り:俺はリドをまっすぐ見据えたまま ジープの語り:引き金を引いた。 : 0:終わり

: 0:現在 : リドの語り:いいねえ、この感じ。 リドの語り:ひしひしと伝わってくる。 リドの語り:緊張感と、狂気と、それから…殺気。 ジープの語り:この鉄の重みと防音マフの安心感、骨に響く装填の音。 ジープの語り:血が騒がないと言ったら嘘になるだろう。 : : 0:場面転換。過去 0:リドとジープ、基地の小屋にて。 : : リド:ジープ中尉…今は大尉か ジープ:そうだ ジープ:相変わらず敬語の使えなさは軍イチだな、リド少尉 リド:敬語を使わないのはあんたにだけだよ ジープ:それは悲しいな。おじさん泣くぞ? リド:きもいからやめとけ ジープ:うわ辛辣 リド:それはそうと…おかしいな? リド:あんたは軍事事務に異動になったと噂で聞いてたが…所詮、噂は噂だったみてえだ。 リド:あんたが現場から離れていられるわけがなかったか ジープ:いいや。その噂は正しいぜ リド:ほう、じゃあ今は職務放棄ってわけだ? ジープ:バカ言え。俺は仕事を放り出すようないい加減な男か? リド:自覚がないのか? リド:気に食わなかったら知らぬ存ぜぬだろう ジープ:お前は細けぇとこまで俺のこと見てるな リド:細かくねえよ、周知の事実だ ジープ:そうかい、冷てえな リド:…で、なんだ。わざわざ通常任務だけで呼ばれるような奴じゃないだろ、あんたは ジープ:まあ主な職務は特別任務だが ジープ:そのついでに通常任務もやらせてもらうよ リド:それでここにいるってことか リド:それで?特別任務ってのはなんなんだ ジープ:それは話すわけにはいかねえな リド:軍事機密ってか。偉くなったな ジープ:おい、俺は最初っからお前より上の階級のはずだぞ リド:そういうこと言ってんじゃねえよ ジープ:年とりゃ重い責任背負わされる ジープ:ま、自然の摂理みたいなもんだろ リド:うわ、それ聞くと年はとりたくねえと思っちまうな ジープ:ここにも同じことを思ってるやつがいるから、現場に舞い戻ってんだよ リド:でも、偉いから特別任務なんて重要なこと任されてんだろ ジープ:それはちょっと違うな リド:じゃあ少しくらい教えてくれたっていいだろう ジープ:偉くないからダメなんだろ。上が俺の首を飛ばす リド:そりゃ怖い、やめとこう ジープ:お前に話したせいで首が飛んだら生涯呪ってやるよ リド:早々にお祓いしてやるよ ジープ:お前さ、元とはいえ上司の扱いひどくないか? リド:今の上司はちゃんと敬ってる ジープ:ああ、そうかい。ひでぇこった : 0:少し黙る : ジープ:お前さんが軍事学校を卒業したのは何年前だ リド:8年前だよ。もうボケが来たか ジープ:いいや、一応確認だ リド:そうか リド:…兄を追って入隊したはずだったんだがな ジープ:そのことに関しては、お悔やみ申し上げますとしか言えねえな リド:薄情なこった リド:…任務中の事故、とは聞いたが リド:そもそも兄からは、そんな危険な任務だなんて聞いてなかった リド:あんたは何か知らないか。兄の死に関して ジープ:お前の兄の存在は認知してたが、なにせ部隊が違ったからな… ジープ:データを調べたほうが早いんじゃないか リド:調べたよ。該当するデータはなかった リド:ここの軍隊は、死者のデータは残さないらしいな ジープ:そうなのか? ジープ:データ室になんか縁がないもんで リド:脳筋だからな リド:データなんか見た途端、思考回路が停止するだろう ジープ:はは笑…言ってくれるじゃねえか ジープ:でも確かにそうだな。今回の任務だって、俺か相棒かって話で来てたんだが ジープ:事務仕事が性に合わねえもんで、俺が手を挙げたんだ リド:そんなこったろうと思ってたよ リド:無論、お前の相棒はもっぱら事務仕事が向いてるタイプだろうがな ジープ:違いない : 0:リドの通信機が鳴る : ジープ:お、こんな世間話をしてるうちに呼ばれちまったみてえだな リド:ああ、信号が入った。じゃあ、行ってくる ジープ:おう、健闘を祈るよ、リド少尉 リド:ああ、大尉もな : : 0:数日後。基地 : : リド:大尉 ジープ:おう、リド リド:任務の進捗はどうよ ジープ:なかなか進まねえというか…証拠が集まらねえってとこだな リド:あの優秀な大尉が?珍しい ジープ:ターゲットがなかなか手強いもんでな ジープ:接触は可能だが探るのが難しいときた リド:まあ、詳しくは聞けねえから聞かねえけど リド:まあ、なんだ?なんか他のことで手伝えることがあったら声かけてくれよ ジープ:…は?お前いつからそんなに優しい言葉言えるようになったんだよ リド:これが優しいと感じるとは、あんたも寂しいやつだな リド:軍に必要なのは連携だろ。それだけの話だ ジープ:そうだなあ、じゃあ、ちょっとこっち来い リド:なんだ? : 0:ジープ、リドの頭をぽんぽんする : リド:…はあ!?いきなり頭なでるとか…! リド:セクハラか!訴えられてえのか! ジープ:いやね、根詰めて作業してると、ほら、アニマルセラピーが必要になってくるだろ リド:動物といいたい…? ジープ:かわいらしいものを愛でたいって話さ リド:どういうことだよ… ジープ:というわけで、コーヒーもらってきてくれないか? リド:何が、というわけで、だ リド:手伝おうとした私が間違ってたよ、自分で行ってくれ! ジープ:おいおい、拗ねるなよ リド:拗ねてない! : 0:リド、去る : ジープ:頼むからセクハラで訴えてはくれるなよ?笑 : : 0:軍基地食堂にて : : ジープ:おい、リド少尉 リド:なんだ ジープ:さっきはすまなかったよ リド:…(口を開けてぽかん、という感じ) ジープ:なんだその間抜け面 リド:大尉が謝るなんて、月が落ちてくる… ジープ:そんなに珍しくないだろ笑 リド:相棒以外に言ってるの見たことないぞ ジープ:そりゃお前がみたことないだけだろ リド:そうかもしれないが ジープ:で、隣いいか リド:断る理由はない ジープ:ありがとよ リド:…ジープ ジープ:なんだ? リド:その…さっきのことだが ジープ:もう謝ったろう、許してくれよ リド:いや、なんていうんだ…その… ジープ:なんだよ リド:…アニマルセラピーくらいならいつでもするぞ ジープ:…(口を開けてぽかん、という感じ) リド:なんだその間抜け面 ジープ:いや…お前のほうが月落ちてくるだろ リド:月は2個もねえよ ジープ:なんでそこ言及するかね リド:ま、セラピーが不要だってんならならいいが ジープ:そんなことはない。必要になったら呼ぶとしよう リド:そうかよ リド:じゃあ、私は食べ終わったから行くよ ジープ:おう、午後の訓練もがんばれよ リド:あんたもな : : 0:戦地にて : : リド:まさかあんたとタッグを組むとは… ジープ:そんなに意外か? リド:なんだ、あんたは私と組むと思ってたのかよ ジープ:お前は同期と組むには腕が良すぎるだろう リド:そうだな ジープ:お前ほんとに謙遜という言葉を知らねえのな リド:私の拳銃の腕が確かなのは事実だろう? ジープ:まあ反論はできないな リド:それでまあ、あんたは他に組む人がいないと ジープ:ぼっちといいたい? リド:違うのか? ジープ:…まあ、そういうこった リド:おっと無駄話をしてる場合じゃなくなってきたぞ ジープ:そうだな、じゃあ俺はここの岩陰でお前の援護をする リド:ああ、私は対象に一番近いあの木まで移動する リド:信じてるぞ、大尉 ジープ:ああ、俺も… : : ジープの語り:信じたい。少尉、お前のことを : : 0:基地、ジープの自室にて : : リド:なんだ無線で呼びやがって ジープ:いや、ほら、アニマルセラピーだよ リド:ほんとに呼ぶのかよ ジープ:だめなのか? リド:いやそういうわけじゃないが ジープ:いや後から訴えるとかやめてくれよ リド:そんなことはしないが、あんた独身か ジープ:気にしてんのか笑 ジープ:あのなあ、俺みたいに軍に入り浸ってるやつが、家庭を持ってると思うか リド:いや、異動したときにそういう話があってもおかしくはないと思ったからな ジープ:残念ながらそんな話はなかったね リド:その年でいい人もいないのか リド:寂しいやつだな ジープ:そんなこと言わないでくれよ ジープ:俺が愛する人は後にも先にも一人だけだ リド:意外だな。一人はいたのか ジープ:別にまだ死んじゃいねえよ ジープ:ただ手は出せない リド:ほう…人妻か何かか ジープ:まあ人妻ではねえが事情があるのは確かだ ジープ:しばらくしたら会えなくなる リド:気持ちだけでも伝えればいいのに リド:会えなくなってからじゃ後悔するぞ ジープ:相手の邪魔はしたくねえよ、いいおっさんが リド:そのいいおっさんが、アニマルセラピーと称して私を呼んでるのはどういうこった ジープ:それはお前の許可済みだろう リド:過去の私の口を全力でふさぎたい… ジープ:嫌ならなにもしねえよ リド:嫌ではねえが癪だな ジープ:じゃあやめとこう リド:それは助かる ジープ:そういや、お前のほうこそ兄のことは何か分かったのか リド:いいやまったく リド:3年も調べてるってのに手がかり1つ見つけられない ジープ:戦場で死んだってんならだれか一人くらい見てるだろう リド:あの頃は死者も多くて、あまり当事者が残っていなくてな ジープ:なるほど。目撃者も死亡してるってことか? リド:生存者も、あんたみたいに部隊が違う人だったりあまり仲良くない人だったりするし リド:前も言った通りデータは残ってない リド:お手上げだ ジープ:諦めるのか リド:諦めたくはねえよ、ねえけど…諦めるしかないんだよ ジープ:リド、こっち来い 0;頭ぽんぽん リド:は!? ジープ:おっと、つい手が滑っちまった リド:…ありがとう ジープ:…お前の口から礼を聞くとはな? リド:減らず口め… ジープ:3個目の月だな リド:うるさいぞ… ジープ:次訓練がない日も来てくれ、よかったら リド:私にかまってしまう程度には、あんたも弱い男だな ジープ:そうかもしれねえな リド:ま、気が向いたら来ることにするよ : : 0:数日後。ジープの自室 : : リド:ジープ、来てやったぞ リド:…ジープ?いるか? リド:…あれ?いない…入ってもいいか? リド:連絡したんだがな…どこ行ってるんだ… : 0:リド、棚からはみ出てるチェーンを見つける : リド:ん…?これ… ジープ:お前なにしてんだ リド:あっ… ジープ:勝手に人の棚開けるような奴だとは思わなかった リド:すまない。いや、たまたまチェーンが見えたもんでな リド:ジープ… ジープ:なんだ リド:これ…兄のドッグタグだよな? ジープ:… リド:あんた、なんでこれ持ってんだ リド:何で隠してた!? リド:私があんたに聞いた時、あんたは何も知らないって言った!! リド:なんで… ジープ:それは… リド:それに…戦地で死んだと聞いてたが、傷一つないぞ、このドッグタグ… ジープ:はぁ… リド:何を知ってる…? リド:この期に及んで兄について何も知らないとは言わないだろ ジープ:明日にしてくれ リド:今話せよ!! ジープ:出てけ!!!! リド:…っ ジープ:今日は、出ていけ リド:わかった、今日は、出てく リド:だが、本当に明日話してくれるんだな? リド:信じていいんだよな? ジープ:ああ。…お前もそれ相応の覚悟をして来い ジープ:覚悟ができないうちは来るんじゃねえぞ、わかったか リド:覚悟?何の話だ ジープ:覚悟は覚悟だよ ジープ:いいから今日はもう行ってくれ : : 0:次の日 : : リド:ジープ。話を聞きに来た。 ジープ:本当にいいんだな? リド:覚悟はしてきたつもりだよ ジープ:…じゃあ、そこ座れ リド:ああ ジープ:…何から話せばいいのか リド:兄の本当の死因は何だ? ジープ:…暗殺 リド:……は?え?暗殺って ジープ:リド。お前は兄が何だったのか知ってるか リド:中尉だろう ジープ:そうじゃない リド:…?何が言いたい ジープ:お前の兄、ロッド=ガラムは………スパイだった リド:スパイ…? リド:は?え、だって、私は兄を追ってこの部隊に入隊して… ジープ:そうだな ジープ:それから、兄の暗殺を担当したのは… リド:知っているのか!?誰だ!? ジープ:………俺だ リド:……は? ジープ:俺が、命じられたんだ ジープ:上官から、ガラムがスパイだって証拠を突き付けられた リド:嘘だ!!! リド:知らぬ存ぜぬのお前が!何も言わずに従ったのか! ジープ:あの時の俺は、上官が怖くて反論なんかできなかった… リド:情けない ジープ:俺だって抵抗がなかったわけじゃない ジープ:その当時はお前の兄だってことは知らなかったが、ガラムがいいやつで、皆から好かれてることは知ってたからな リド:じゃあなんで… ジープ:だが!従わなければ始末されるのは俺だ ジープ:命の駆け引きなんだよ リド:…軍の仕組みについては無知じゃないからな…何とも言えないが ジープ:それに、ガラムがスパイってことは紛れもない事実だった ジープ:任務遂行の前に俺なりにも調査したが、そりゃもう裏付けのしっかりした証拠ばかりだったよ リド:兄は…何も言わなかったのか ジープ:待ってくれ、俺はスナイパーだぞ リド:ああ、そうか… リド:でも待て、ならなぜドッグタグを持ってる? ジープ:それは、上官に頼んで、引き取らせてもらった リド:ほう…?形見ってか ジープ:形見というより戒めに近いが リド:戒め? ジープ:そのことがあってからだ。知らぬ存ぜぬのスタンスになったのは リド:…なんか情報量が… ジープ:だから覚悟して来いって言っただろ リド:…はあ。でも、はっきりした リド:はっきりしたけど…なんであんたなんだ… ジープ:は? リド:なんで兄を殺したのがあんたなんだ…! ジープ:…あの時はそうするしかなかった ジープ:憎いだろう リド:…ああ ジープ:殺したいか? リド:それは… ジープ:お前が俺を殺したいと思うんだったら、俺は逃げるつもりはない リド:ほんとかよ ジープ:本当だ リド:まあ接近戦なら私のほうが上だがな ジープ:それもそうか ジープ:もう一つ話があったが…また後日のほうがよさそうだな リド:なんだ、話せよ ジープ:いいや、俺が話す気分じゃない : : 0:数日後 : : ジープ:リド! リド:あぁ…こんなすぐ駆けつけるなんて…大尉のくせに暇人かよ ジープ:撃たれたと聞いたもんでな ジープ:まあでも、その喋りを見る限りは大丈夫そうだ ジープ:わざわざ来る必要なんてなかったか リド:うるっせ… ジープ:まさかお前が撃たれるとはな リド:どういう意味だよ…笑 ジープ:お前は視野も広いし警戒心も強いから、まあほとんど見つかることはないだろうと思ってたんだよ リド:仲間がやらかして…応援に入ったら狙われた ジープ:警戒心が緩んだか リド:そんなつもりはなかったんだがな リド:そういやこの間、もう一つ話があると言ってたろ ジープ:ああ… リド:どうせ治るまでは暇だ。聞かせてくれよ ジープ:いや…今するべき話じゃない ジープ:この話を聞きたかったら、怪我を治して、また覚悟をしてくることだな リド:また覚悟かよ リド:…じゃあその話じゃなくていいからなんか聞かせてくれ、あんたも暇だろ ジープ:いうほど暇じゃねえが、弱ってる子猫ちゃんのために話してやろうじゃないか リド:前言撤回…どっかいってくれ… ジープ:おうおう、悪かったよ : : 0:2週間後くらい : : リド:治ったから来たぞ ジープ:おう リド:今度は何の話だ ジープ:…お前、この前なんで撃たれたんだ リド:それはあの時言ったろう。応援に入って… ジープ:なんで仲間に撃たれたんだって聞いてるんだよ リド:は?私は相手の部隊のやつに… ジープ:その相手が、お前の、本来の仲間だろう リド:何の話だ? ジープ:お前も兄と同じスパイだろって話だ ジープ:無論お前は、当時は兄がスパイだってことは知らなかっただろうが リド:… ジープ:狙われたのは、お前が用済みだからだろ リド:私がスパイ?バカ言うなよ リド:軍事学校卒業してそのままここに来たんだぞ リド:あんたが一番よく知ってるだろ ジープ:だからだよ ジープ:だからこの仕事を引き受けた リド:わかんねえな リド:疑ってるから引き受けたんじゃねえのか、悲しいこった ジープ:逆だ。信じたいから、信じてたから、無実をこの手で証明しようとした リド:そうか ジープ:なんでだよ ジープ:何でほんとにスパイなんか… リド:…あんたに隠しても仕方ないか リド:まあ、認めるよ。覚悟はしてきたからな リド:で?どうするんだ リド:兄みたいに殺すか? ジープ:逃げろ リド:は?…あんた、何言って… ジープ:殺すつもりならこのことを本人には言わねえだろ リド:お前の任務はどうなる? ジープ:「知らぬ存ぜぬ」。俺のポリシーだ リド:待ってくれ、報告しないのなら私が逃げる必要は… ジープ:“俺は”報告するつもりはない ジープ:だが、あの上官のことだ、他のやつにも調査依頼をしているだろう リド:時間の問題だってことか ジープ:現状、お前がスパイだっていう確実な証拠を手にしているのは俺だけだが、他のやつらにいつ追いつかれるかもわからん リド:あ?なんでお前だけだってわかるんだよ ジープ:俺は優秀だからな リド:少しは謙虚になれよ ジープ:こんな図々しいやつがこんな時だけ謙虚だったら気持ち悪いだろ リド:確かにな リド:なぁジープ…私は逃げ切れると思うか? ジープ:お前は優秀だ。どうにかなるだろ リド:それもそうか ジープ:少しは謙虚になれよ リド:一つ頼みがある ジープ:なんだ? リド:私から目を離さないでいてもらえるか ジープ:どういうことだ? リド:この先、私はこっちの部隊からもあっちの部隊からも狙われることになるだろ? ジープ:そうだな リド:本当に逃げ切れなくなった時、その時は… ジープ:なんだいきなり弱音か?笑 リド:私はあんたに殺されたい ジープ:っ… リド:ポーカーフェイスでスパイを調べてたんだからこんなことで動揺するなよ ジープ:うるせえ ジープ:…いいんだな? リド:ああ、約束だ リド:…ジープ、いや…大尉 ジープ:どうした、まだなんかあるのか リド:信じてます。それでは : 0:リド、去る : ジープ:リド…? : : 0:基地にて : ジープ:(ほかの隊員に向けて) ジープ:ああ?なんだ? ジープ:リド=ガラム少尉が行方不明? ジープ:昨日会わなかったかって? ジープ:会ったが…特に何もなかったぞ : : 0:基地の外にて : リド:もうそろそろ私の捜索が開始される頃か… リド:少なくとも今は向こうの部隊に近づかないようにしないとな… : : 0:間 : ジープ:ガラムのドッグタグにGPSは仕込んどいたが… ジープ:他のやつらに見つかるか… ジープ:でも今のところは逃げ切れてるみたいだな : 0:間 : リド:くそ…今日は冷えるな… リド:兄さん…助けてくれよ… : 0:間 : ジープ:もう他のやつらが証拠つかんだか… ジープ:リドは…あの位置ならまだ… : 0:間 : リド:さすがにもうどちらからも追われるだろうな リド:っ…あれは…! リド:こちらの部隊の…まずいな… リド:追いつくのが早すぎやしないか…!? : 0:間 : ジープ:あっ…やっぱりGPSに気づいたか ジープ:さてどうやって追うかな : 0:間 : リド:何とか逃げ切れたか リド:GPSは壊したし2日くらいはもつだろう リド:ただもう…あいつにも、見放されたかな… : 0:間 : ジープ:相手の部隊もだいぶあいつに近づいてるって情報が入ってんな… ジープ:もちこたえてほしいが… ジープ:そろそろ俺も行くべきか ジープ:…お、ナイスタイミング : 0:ジープの上官、大佐の部屋 : ジープ:お呼びですか、ランドソン大佐 ジープ:ええ、調査に関しては力が及ばず、申し訳ありません ジープ:…はい。リド=ガラム少尉の処理ですね、了解しました : : 0:ジープ、リドの捜索 : : ジープ:最後のGPSの地点から逃げるとしたら…こちらの方向か : ジープ:くっそ…さすがリドだ、少しの手がかりも残さないなんてな ジープ:まったくわかんねえよ…優秀すぎやしないか笑 : 0:間 : リド:気を抜けない…はあ、何も残してこなかったし… リド:さすがのあいつでも追うのは難しいか…? リド:いつまで逃げればいいんだ、私は… : 0:間 : ジープ:あれは…向こうの部隊のやつらだな ジープ:方向は合ってると見たが…無事でいてくれよ : 0:数発の銃声 : ジープ:…!?…銃声?まさか… : : リド:うっ…はぁ…はぁ… リド:くっそ…腕だからまだいいが… リド:相手はもう…動いてないみたいだな… リド:他のやつらが来る前に遠くに行かないと… : : ジープ:リドが近くにいるのか? ジープ:今の銃声…まさか死んじゃいないだろうな ジープ:お前から言ってきたんだろ、リド ジープ:頼むから、俺が追いつくまではくたばるなよ : 0:数時間後、ジープ、相手部隊の隊員の死体を見つける : ジープ:…これは…あっちの部隊の…もう死んでるのか… ジープ:ん?このチェーンは…!なんだ、メモがついて… : リド:「もしこれを見つけることがあったら、あんたが持っててくれ R」 : ジープ:ロッド=ガラム…お前に似て、ずいぶん強いやつだよ、リドは ジープ:そういえば、妹を頼むと言ってたな ジープ:ガラム、俺がこれからするだろうことを、許してくれるか…? : : 0:翌日、周りの騒がしさで起きるジープ : : ジープ:なんだ…うるさいな… ジープ:ん?なんだ…あっちもこっちも…隊員が増えてないか? ジープ:まさか…! : : リド:まじかよ…見つかった… リド:今度は両部隊か…さすがにきついか…? : リドの語り:とうとう見つかってしまった。 リドの語り:だが、拳銃と手榴弾(しゅりゅうだん)はまだ残っている。 リドの語り:私は、逃げなきゃいけないんだ。 リドの語り:逃げて…逃げて…もしジープがいなかったら? リドの語り:いや、そんなことを考えるのはやめよう。 リドの語り:ずいぶん訓練もしてきたつもりだが、まだまだメンタルは鍛えなきゃな。 : : ジープの語り:激しいとまでは言えないが確かな攻防を遠くに認めることができる。 ジープの語り:俺もあれを追わなければ… ジープの語り:どこか高い建物から、あいつを見守ってやらないと。 : : 0:リド、追っ手に追われて、建物の屋上にて : : リドの語り:意外と逃げれるじゃないか。 リドの語り:人間やればできるものだ。 リドの語り:だが…ミスったな…この建物、反対側の壁にはベランダがないのか… リドの語り:これじゃあ… : : ジープの語り:あいつ…建物になんか上りやがって… ジープの語り:こっちからしたら狙いやすいが…逃げる気がないのか? ジープの語り:追っ手が来てるぞ…どうするつもりだ? : : リドの語り:建物の屋上だ。追っ手はもうじき来るだろう。 リドの語り:ロープも、もうさっき使ってしまった。手元にあるのは弾が2個だけ入った拳銃と、使い物になるか分からない手榴弾(しゅりゅうだん)1つ。 リドの語り:でも不思議と、怖くはないんだ。 : リドの語り:いいねえ、この感じ。 リドの語り:逃げ場なんてない、この感じ。 リドの語り:ひしひしと伝わってくる。いろんな方向からの殺気も。 : : ジープの語り:この鉄の重みと防音マフの安心感。骨に響く装填の音。 ジープの語り:血が騒がないと言ったら嘘になる。 ジープの語り:嘘になるが…今回ばかりは荷が重い。 : : ジープ:すまんな… ジープ:でも、さすがにもう限界だろ… : : ジープの語り:俺はスナイパーライフルのスコープを覗いて、赤い点をリドに向けた。 : : リド:…!? リド:ジープか…?ジープなのか? リド:本当に…目を離さないでいてくれたんだな… : リドの語り:ジープのライフルの焦点は、私の心臓を狙っていた。 リドの語り:さすがにもう逃げきれない。わかっている。 リドの語り:撃つなら撃ってくれと思った。 リドの語り:その瞬間、1ミリも動かなかった赤い点が点滅し始めた。 : : リドの語り:…モールス信号…?ええと… リドの語り:…俺は…嘘をついてた。 リドの語り:…お前の…兄の…最後の…言葉を…知ってる。 リドの語り:…俺からも…同じ…言葉を…贈る…? : : リド:…L…Y…RID.(エル ワイ アールアイディー) : リドの語り:これは… リドの語り:単語のイニシャル… : ジープ:…Love You Rid.(ラブ ユー リド) : リド:それを心臓に打つとは… リド:4個目の月かよ…笑 リド:仕方ないな。5個目の月だ : リドの語り:私はジープがいるであろう方向に向け、信号を送った。 : ジープ:…L…Y…ZEEP.(エル ワイ ゼットイーイーピー) : リド:…Love You Zeep.(ラブ ユー ジープ) : ジープ:あいつ… ジープ:最後まで年上を翻弄しやがって : ジープ:逃げないってことは ジープ:…いいんだよな?リド : ジープ:冥福を祈る : : ジープの語り:俺はリドをまっすぐ見据えたまま ジープの語り:引き金を引いた。 : 0:終わり