声劇台本置き場

朔良：こんなにも、誰かを愛することなんて、この先、一生ないだろう 三神：誰かを愛することを、辞めないで 朔良：所詮、俺の人生こんなもん 三神：どうか、どうか 朔良：幸せなんて、クソ喰らえ 三神：誰よりも、幸せに 朔良（タイトルコール）：「桜恋」 0：スロット店。番組収録終了後 朔良：お疲れ様でしたー。…あぁ、はい。すいません。今日は…。はい、是非また今度。 朔良M：スロット雑誌の人気ライター、朔良。それが俺の肩書き。元々特にやりたいことも無かったし、就職する気にもなれない。たまたまセフレだった先輩の紹介で気がついたら、見た目が良かったのもあって、業界に引っ張りだこされるくらいには有名になってた。 朔良：……つまんねー。…ん？はい、もしもし。 秋田：『朔良ちゃんやっほー、久しぶりに呑まない？』 朔良：……あぁ、別に、いいけど。 0：咲良と秋田の行きつけのBARにて 秋田：んー、相変わらず美人だねぇ。 朔良：知ってる。 秋田：あは、その自信満々なとこも相変わらず。今も男取っかえ引っ変えしてんの？ 朔良：その言い方、辞めてくんない？俺は、俺を抱きたい、俺に抱かれたいって奴の相手してやってるだけ。いわばボランティア。ウィン・ウィンの関係。 秋田：はいはい、もう何回も聞いたよ。 朔良：つか、元セフレがマジで何言ってんの。本命ができた瞬間に、この俺をゴミのようにポイッと捨ててくれた秋田真琴君？ 秋田：んもぉ、その話はもう良いでしょ？それとも何？本当は俺の事超好きだったとか？ 朔良：馬鹿言え。俺が誰かのことを好きになるなんて有り得ねーよ。俺が愛してるのは、このカッコよくて可愛くてセクシーな俺だけ。 秋田：あはは！ほんと朔良ちゃんのそういうとこスキー 三神：あれ、アッキー？ 秋田：三神じゃん！こんなとこで何してんの？ 三神：バーで酒呑む以外なにすんのよ。 秋田：んー、ナンパ？あ、朔良ちゃん、紹介するね。こちら三神。俺の職場の同僚。通称ヘタレ犬。んで、こちら朔良ちゃん。俺の元、 朔良：言わんでいい（秋田の頭叩いて） 秋田：いてっ、ひどーい！ 三神：…………。（じっと朔良を見つめる） 朔良：……ども、…俺の顔になんかついてる？ 三神：……ッ、ぁ、いや…その…… 秋田：あれあれあれ？三神ぃ、もしかして朔良ちゃんに惚れちゃったぁ？ 三神：なっ、ばっ…！！ 朔良：……へぇ、アンタこっち側の人間？俺どっちでもイけるから、いつでも連絡して？はい、これ俺の連絡先。 三神：えっ、あ……はぃ… 秋田：んもぉー、朔良ちゃんったら相変わらず息をするようにナンパするんだからぁ。 朔良：じゃ、俺は帰る。ご馳走様。秋ちゃん（頬にキスして颯爽と店を出ていく） 秋田：あー！ちょっとー！本命いるんだからやめてよねー！！……はっ！！ナチュラルに奢らされてる！？今月余裕ないのにー！！ 三神：…あっきー、やばい… 秋田：ん？ 三神：…………どストライク。 三神M：正直こんなことは初めてだ。一目見た瞬間雷が落ちた。あっきーとかにこんなこと言ったら絶対にバカにされるんだろうけど、本当に、全身に電流が走ったんだ。「あぁこの人だ」って…。 秋田：……朔良ちゃんには、本気になっちゃダメだよ。 三神：え？ 秋田：彼を手に入れるってことは、それ相応の覚悟がないと。 三神：…？ 秋田：ま、本気になる前にとっとと諦めることだね。じゃあ、ここの支払いよろしくぅ。 三神：おい、それってどういう意味……ちょ、おい！？ 0：三神の会社 三神：はーい、お疲れ様ー。……んんん、 三神M：俺は、死ぬほど悩んでいる。連絡すべきか辞めとくべきか。俺の直感は「危険だ」と叫ぶ。でも、全細胞が彼を求めている。「運命の人だ」と。正直何言ってんだって思ってる。夢見る夢子か。あの夜、連絡先を貰ってからこの小さな紙と毎夜毎夜、休憩時間、なんなら仕事中もずっと睨めっこしてる。 三神：アッキーも辞めとけって言ってたしなぁ…あー、飲みに行こ。 三神M：この選択が最大の過ち、いや成功？だったんだ 0：三神、BARに入店し、空いてるカウンター席に目配せする 三神：あ。 朔良：…あれ？こないだの。こーんばーんわ。ここ空いてるよ。一緒に呑むか？ 三神M：この朔良という男は、一言で言うと「エロい」。物凄くエロい。フェロモン垂れ流しってのはこういう人のことを言うんだと思う。 三神：あ、あぁ…じゃあ……。 朔良：ん、どーぞ。…連絡、くれなかったね。 三神：いや、その…… 朔良：俺の事、タイプじゃなかった？俺は結構アンタみたいな身長高くてできるサラリーマン、みたいな人タイプだったんだけどな。ざーんね 三神：めちゃくちゃタイプです！ 朔良：へ？ 三神：めちゃくちゃ、タイプ、です 朔良M：そういったアイツの顔は真っ赤で、でも、真っ直ぐに俺の手を取って見つめてきた。その瞬間、俺の全細胞が「危険」だと叫んだ。けど… 朔良：…………ホテル、行く？ 朔良M：全細胞の警告を無視して、俺は無意識に、その言葉を口にしていた。 0：ラブホテル スイートルーム 朔良：めっちゃいい部屋。三神さん、結構稼いでんだ？ 三神：まぁ、…それなりに。 朔良：ふぅん、何？緊張してんの？ 三神：いや、……。 朔良：ははっ、童貞じゃないんでしょ？ 0：朔良、三神に擦り寄りネクタイを掴み引っ張ると荒々しく唇を重ねる。 三神：んッ……、っ…… 0：三神、一瞬腰が引けるが意を決した様な、流されるかのように朔良の腰に腕を回して舌をねじ込む。 朔良：は…、がっつき過ぎ。でも、嫌いじゃない。ね、舐めていい？ 三神：え、シャワー… 朔良：いいよ、もうこんなになってんだからさ。 三神M：天国とはこの事か。正直上手すぎる。俺の息子は大きすぎるとよく引かれるが、ものともせず咥え込み必死に奉仕してくれるその姿が愛おしくて堪らない。 朔良：ね、ベッド行こ。 三神M：誘われるがままにベッドにたどり着くと、彼は徐に服を脱ぎ出し、美しすぎるその裸体をさらけ出した。 朔良：さすがにそのサイズはすぐは入んないから…解してくれる？ 三神M：四つん這いになって突き出されたその蕾に、誘惑されるがままに舌をねじ込む。同時に彼の口から漏れる甘い声に脳が溶けそうになる。気がつけば無我夢中にむしゃぶりつき、指でナカを解していく。段々と蕩けていく彼の喘ぎ声に俺の理性は完全にどこかへとぶっ飛んで行った。 朔良M：一言で言えば、俺たちの体の相性は完璧。こんなに気持ちのいいSEXは何時ぶりだろ。俺のぽっかりと空いたその空白に何かが埋まる感覚がした。 三神M：濃厚な夜を終え、迎えた朝の気だるさの心地良さ…。隣で眠る彼の寝顔は、カーテンの隙間から差す朝日に照らされて、まるで天使のようだと本気で思った。 朔良：……ん、おはよ。 三神：おはよ。 朔良：昨日のSEX、最高だった。良かったらまた相手してよ。 三神：嫌だ 朔良：…あー、そう 三神：俺は、朔良を俺だけの物にしたい。 朔良：…は？ 三神：初めて見た時から、俺、お前のことが… 朔良：待って待って。俺恋人作る気ないから。 三神：俺は！お前が欲しい！大切にするから！ 朔良：……はぁ、だる。 三神M：彼はボソリとそう言って、さっさと服を着ると何事も無かったかのようにホテルを出ていってしまった。 0：その日の夜、BARにて 秋田：朔良ちゃんに告ったぁ！！？？ 三神：ちょ、声でけぇ！ 秋田：バカなの！？俺の忠告聞いてた！？バカ！ほんとにバカ！！！バカって知ってたけどマジでバカ！ 三神：バカバカいいすぎ！ 秋田：はー、俺言ったよね？やめとけって。朔良ちゃんは、ほんっとにやめときなって。 三神：恋人作る気ないっていってた… 秋田：そ。朔良ちゃんは昔から絶対に特定の人はつくんないの。365日中、300日は違う男。気に入られれば定期的にヤらせてもらえる。気が向けば女だって抱く。けれど、彼に本気になった瞬間、捨てられる。 三神：女もいけんの… 秋田：ちなみに俺は朔良ちゃんとのセフレ歴、ヤった回数は絶対トップの自信があるね！ 三神：その情報は要らない。聞きたくない。知りたくなかったクソ野郎。 秋田：ふっふーん、俺SEX上手いから。 三神：（無言で頭叩く） 秋田：いったー！？何すんのさ！！ 三神：なんで恋人作んないんだ？ 秋田：しらなーい。めんどくさいんじゃない？ 三神M：出会ったあの時から、俺の脳の大半は彼のことでいっぱいだった。こんなこと初めてだ。それから毎日俺は彼に連絡して、あのバーに通った。もちろん連絡は返ってこないし、あれ以来あのバーで彼の姿を見ることは無かった。それでも諦めず俺はメールを送り続けた。 0：三神の会社前 朔良：よぉ 三神：…っ！朔良！？朔良…！！ 朔良：ついてこい。 三神M：久し振りに会えた、会いに来てくれたその嬉しさで俺は彼の言われるがままに後をついていった。連れてこられたのは、あの日のホテルだった。 0：ホテル 朔良：お前さ、なんなの？毎日毎日飽きもせず、メール500通に着信100件って…暇なのか、お前は！ 三神：あれ、俺そんなに送ってた？ 朔良：送ってるよ！！働けよサラリーマン！！ 三神：だって…あれで終わりにしたくなくて… 朔良：もう1回。 三神：え？ 朔良：もう1回、SEXしてやる。それで諦めろ。 三神：嫌だ！絶対に諦めない！なんで？なんで恋人作んないの？ 朔良：……はぁ。俺さ、親いないんだよね。理由も覚えてないし、気がついたら1人で、とりあえず男女関係なく声掛けては1晩SEXで食い繋いでたの。ほら、俺この見た目だろ？まぁ釣れる釣れるで生活には困ったことなくて。んで、その内の1人が１回俺を監禁しようとしたんだよね。「愛してる」だのなんだの言って。正直こんな生い立ちだし、愛とかわかんねーし、それで余計に愛って何それ美味しいの？つかそんな気色悪いもんなら要らない、 0：三神、泣いている 朔良：みたいな？え、何泣いてんの？ 三神：っ…さぐら…、お前そんな辛い思いして……っ 朔良：いや別に辛くねーし。不幸だとも思ったこともねーし。 三神：俺が！！！お前に本当の愛ってやつ教えてやる！！ 朔良：……は？ 三神：俺がお前を幸せにする。 朔良：…あー…… 朔良M：こんなに話が通じない奴は初めてだ。というかこんな話をしたのは秋田だけなんだが。どうしたもんか。 朔良：あ。……なぁ、お前ってタチだよな？ 三神：…へ？おう、そうだけど…？ 朔良：じゃあさ、食わせて？ 三神：…え゛？ 朔良：俺にお前の初めてを食わせてくれたら、お前のモンになってやるよ。 三神：…………はぁ！？いやムリムリムリムリ！ 朔良：じゃ、この話は無かったことで。俺のこともすっぱり忘れてもらって。 三神：えぇ！？……っ、 朔良：じゃーな。 三神：〜〜っ、待て！！……いいよ、く、食えよ… 朔良：……まーじで言ってんの？ 三神：ま、まじだ…。 朔良：………… 三神：………… 朔良：……っぷ、あっははは！参った、こーさん。わかったよ。あんたの物になってやる。 三神：…ほんとか！？ 朔良：ん。…初めてって結構痛いけど、なるべくそうならないようにするから。（三神をベッドに押し倒して） 三神：…え？冗談だったのでは…？ 朔良：ん？これは、絶対条件。大丈夫、俺、こっちも上手いから。 0： 0：間 0： 0：情事後、朔良ベッドの端に腰掛け煙草を吸っている 朔良：気持ちよかった？ネコの才能あるんじゃない？ 三神：無くていい！まぁ……、ちょっと、は、よかった（ごにょごにょと） 朔良：へぇ？おかしくなりそう、とか言ってたのに？ 三神：ぐっ……、すっげぇ…よかった…… 朔良：正直者は好きだよ。 三神：……っ、もっかい！もっかい言って 朔良：正直者？ 三神：違う！ 朔良：ははっ……、好きだよ。 三神：…俺も、愛してる。 朔良M：何度思い返しても、この時が俺たちにとって幸せってやつのピークだった気がする。 0： 0：間 0： 朔良：ぽりねしあんせっくすぅ！？ 三神：そう。 朔良：嫌。無理。拒否。 三神：やりたい。 朔良：無理。 三神：ほら、俺ら付き合ってから毎日SEXしてるだろ？マンネリ防止ってやつ。 朔良：1日１SEXないと俺死んじゃう体質なんで。 三神：お前が言うと嘘に聞こえないんだよな…。 朔良：というわけで却下。 三神：なぁ〜1回でいいからァ、お願い… 朔良M：俺たちの付き合いは気がつけば3ヶ月経っていた。あの日から毎日、俺の寝床はアイツの部屋になり、初めてこんな長い期間同じ部屋に帰ってる気がする。大体俺の仕事の方が先に終わるから会社まで迎えに行って、三神の車で帰る。仕事以外どんな時もバカみたいに常に同じ時間を過ごしていた。この3ヶ月の付き合いでわかったが、コイツは大型犬その物だ。俺の顔を見りゃぱぁっと顔を明るくさせて尻尾をブンブン振って飛びついてくる。今のねだる顔だって、無いはずの耳が垂れてるのが見える…。 朔良：はぁ…わかったよ……。 三神：よっしゃ！！じゃあ今日はキスだけな！ 朔良：キス、だけ…… 三神：さーくら、おいで？ 朔良：……ん、 0：お互いに引き寄せられるかのように最初は触れるだけ、徐々に濃厚なキスへと変わっていく。朔良、思わず三神のソレに触れようとする 三神：ん…だぁめ。我慢。（朔良の手を掴み） 朔良：……んんんっ（地団駄踏むような感じで唸る） 三神：かわいい…愛してる。 朔良：……うっせ。 0：またキスの続きをし始める 0：BARにて。 朔良：はー…今日で4日……。無理、セックスしたいセックスしたいセックスしたい 秋田：ちょっと朔良ちゃん。ここバーだよ。てか朔良ちゃんから呑みに誘ってくれるなんて珍しすぎない？ 朔良：三神が今日は残業で遅くなるって言うから。家で一人で居たら頭おかしくなりそうで。 秋田：あっはは！そうだね、あの朔良ちゃんがポリネシアンセックスだなんて拷問だよねぇ 朔良：死ぬ……。 秋田：で？どーですか？三神との生活、初めての恋愛は。 朔良：……どう、とは？ 秋田：ふふ、まぁ聞かなくても伝わってくるけどねぇ。朔良ちゃん、三神に大事にされてんだね。幸せそう。 朔良：しあわせ…っていうのか？これが……。まぁ、大事には…してもらって、る？ 秋田：なんで疑問形なの。ふふっ、……よかった。 朔良：んぁ？なんか言った？ 秋田：なーんも！ほら！のものも！溢れる性欲をお酒で発散するのだ！ 朔良：くっそ……！！ 0：翌日の昼 朔良：三神？どした？ 三神：『朔良ごめん……俺、今日から1週間出張になった…』 朔良：しゅ……っ、ちょう…？ 三神：『すまん！！！』 朔良：はぁああ！？おい！！今日やっとSEXできんだろ！？断れ！！出張断れ！！ 三神：『無茶言うなよ…。帰ってきたらめちゃくちゃ抱いてやるから、ほんとごめん！』 朔良：なっ…あっ！ちょ……くそが…切りやがった…… 0：BARにて 朔良：頭も体もおかしくなりそう…… 朔良M：我慢を強いられて今日で8日目。家でオナニーするものの、ちっともスッキリとしない。収録も早く終わったから今日はバーでヤケ酒してやろうと、1人でバーに立ち寄った。これが、崩壊の始まり。俺が、崩壊させた。 朔良：んぁ…やば……ひさしぶりに、のみすぎた……かえんなきゃ……。っと…、あ、すんません……あーだいじょうぶ… 0：朔良そのまま記憶途切れ、目が覚めるとホテルのベッドの上で横に知らない男が眠っている 朔良：……ん、みかみ…、じゃない！？んっ！！？？…………やばい、なんにも覚えてねぇ……。やらかした……。 朔良M：やらかした。俺のことだからどうせ、飲みすぎた結果、誰か誑かしたか、誘いに乗ったんだろう。性欲が溜まりすぎた俺ならやりかねない。 朔良：とりあえず…逃げよ。 朔良M：こっそりベッドから抜け出し、服を着てホテルから出てくると、そこには、居ては行けないそいつが立っていた。 三神：え……さく、ら？ 朔良：み、かみ……なんで、 三神：出張早く切り上げてきた。今日朔良休みだし少しでも早くと思って始発で。ここ……ラブホ、だよな？ 朔良：……っ、ごめ… 三神：…信じらんねぇ。 朔良：のみ、すぎて……その記憶が… 三神：……とりあえず、帰るぞ 朔良：いった、ちょ、三神、腕痛っ…… 朔良M：三神は、今までに見た事のないくらいに無表情な顔で、俺の腕を痛いほどに掴むと、終始無言で俺を家まで連れ帰った。 三神：酒飲み過ぎて、記憶飛ばして、気づいたらベッドの上だった。 朔良：はい… 三神：…………はー…、ごめん、ちょっと、無理。俺しばらく実家帰る。距離置かせて。この部屋は朔良が使って。 朔良：えっ、ちょ… 0：出張の荷物をそのまま手に、三神荒々しく部屋から出ていく 三神M：脳が沸騰するってこんな感じなのか、と思うくらいに俺は怒りに支配されていた。確かに、彼の性格、これまでの生活を考えれば、少しは予想出来たことだ。だが、それ以上に俺は彼を信頼信用していたし、愛していた。そして、彼もきっと俺の事を愛してくれていると思っていた。自惚れだったのか。裏切られた、その事実が無性に虚しくて悔しくて。距離を置かなければ、俺は彼を監禁してしまいそうだと思った。だから、実家に帰る、という選択を取ったんだ。 0： 0： 0：三神の実家 三神M：久しぶりの実家に帰ると両親は喜び、毎日豪華な手料理を用意してくれた。 三神：ごちそーさま。え、何、2人とも急に改まって。は？見合い……？いやいいよ、別に。いやカノジョ、は……いない、けど…。 三神M：それと同時に、独身男に付きまとう「結婚」の文字。俺は朔良を愛している。しかし、じゃあこの先、一生朔良と居られるのか？……また、裏切られるんじゃないのか？ 三神M：それに、朔良と一緒にいることを選択すれば、両親に孫の顔を見せてやることは出来ない。子供が大好きな両親だ。しかも俺は一人っ子。俺が孫を見せずに、誰がこの人たちに孫を見せてやれるのか。普通に女性と結婚して普通に子供を作って、普通の家族生活……。 三神：見合い…ねぇ。普通の、生活……。…朔良、 0：三神の家 三神：……ただいま。 朔良：っ三神！おかえり、その……ほんと、ごめんなさい。もう二度としないから。誓う。 三神：ん、大丈夫。もう、いいから。 朔良：……そか。……あ、えと…コレ 三神：え？ 朔良：仕事で貰った。一緒に行かね？水族館。仲直り記念、的な？何言ってんだ俺。 三神：水族館… 朔良：あー…、男同士で水族館とかないよな。やっぱいい 三神：（被せて）いいよ、行こ。水族館。 朔良：……うんっ 0：水族館 朔良：すげー…魚いっぱい。三神、見てみて。サメ。すっげーでけぇ 三神：うお、キバとかやば。…あ、朔良、あっちペンギンだって。 朔良：ペンギン！見る。 三神：ふ、かわい。 朔良：うっせ。 0：間 三神：ペンギンって、なんとも言えない歩き方するよな。間抜けというか。 朔良：確かに。あ、知ってる？ペンギンって「理想の夫婦」って言われてんだって。 三神：理想の、夫婦… 朔良：人間みたいに恋愛して、愛を育んで夫婦になるんだと。んで、ペンギン社会も一夫一妻制で、夫婦になると一生を添い遂げるんだって。子作りも、同じ夫婦で繰り返すことが多く、マゼランペンギンなんかは離婚率3％らしい。 三神：朔良、ペンギン詳しすぎだろ。 朔良：いや、ここに書いてる。 三神：なんだよ！ペンギンオタクなのかと思ったじゃん！ 朔良：あはは！悪ぃ。あっ！三神、見て見て。 三神：ん？…おぉ、交尾してる……。 朔良：めっちゃ腰振ってる…俺たちみたいだな(笑) 三神：ぶっ、確かに。…………………でも、子供は出来ないんだよな。（ボソリと） 朔良：ん？なんか言った？ 三神：あ、いや、なんも。 朔良：そ？あ、もうすぐイルカのショー始まる。いこーぜ。 三神：…あぁ。 0：間 朔良：あー、たーのしかったー。キーホルダーもありがと。ペンギンのペアのキーホルダーとか、高校生カップルみたいだけど。 三神：うっせ。滅茶苦茶喜んでたくせに。イルカのショー凄かったな。 朔良：な、どうやって教えんだろ。 三神：つか、イルカが飛んだだけで朔良小さい声で「うわ、うわ」って声出してて可愛かった。 朔良：うっ、しょーがねーだろ、初めて見たんだから。 三神：え？ 朔良：初めて行ったんだよ、水族館。そもそもこういう在り来りなデート、ってのが初めて、ってゆーか。 三神：…まじか。 朔良：悪いかよ 三神：いや、朔良の初めて貰えて嬉しい。 朔良：〜〜っ、ふんっ 三神：…さーくら、（相手の後頭部に手を回して触れるだけのキス） 朔良：ん、……愛してる。 三神：……（微笑む） 三神M：「俺も愛してる」。そう言いたかったのに、喉につっかえた何かが、邪魔をした。愛してるのに、俺は朔良の事を愛してるはずなのに…。俺の脳裏には、今日見た仲睦まじく毛繕いし合うペンギンの夫婦がちらついて、離れなかった。 朔良M：実家から帰ってきてから、三神の様子は明らかにおかしかった。キスもSEXも、いつも通りっちゃいつも通りだけど、どこか上の空。会話の数も減った気がする。特に気になるのは、TVで幸せそうな家族が映ると、直ぐにチャンネルを変えるか消す。実家で何かあったんだろうか。何も言わないアイツに痺れを切らした俺は… 0：三神の家。夕食を食べている。 朔良：なぁ、どしたの三神。最近変だぞ？ 三神：え？そうか？ 朔良：なーんか上の空だし、TVもなんかすぐチャンネル変えるし。 三神：あー。……うん。 朔良：なんか悩み事？俺に言えないこと？ 三神：いや…、…………朔良。 朔良：なに？ 0：少し間 三神：終わりにしよう 朔良：………………え？ 三神：別れよう。 朔良：なに、いって… 三神：ごめん。俺、見合いするんだ。 朔良：み、あい…… 三神：やっぱり俺、両親に孫見せたい。普通に女と結婚して、子供作って…俺一人っ子だからさ。両親の為にも、その方がいい気がして。それに……1回浮気したやつって、絶対もっかいすると思うんだよね。 朔良：……っ 三神：……ごめん、朔良を信じれなくてごめん…。正直離れて住んでた間も、俺が仕事に行ってる間も別の男とヤリまくってんじゃないかなって、毎日毎日気が狂いそうなくらい嫉妬した。 朔良：してない！ずっとこの部屋で三神待ってた！二度としないって言ったじゃねーか！！ 三神：…………信じられない。信じたくても、信じられない。（涙こらえ） 朔良：三神……、そ、だよな。ごめん……俺が、悪い…。出てく。俺のもん全部捨ててくれていいから。あと鍵…。………サヨナラ 0：静かにドアが閉まる 三神：っ……ぅあ……（泣き崩れる） 0：玄関の前でしゃがみこむ朔良。中から三神の泣き声が漏れ聞こえる 朔良：ッ……、（声を押し殺して泣く） 朔良M：こうして、俺たちの 三神M：桜のような 朔良M：淡くて脆い 三神M：恋が終わった。 三神M：テーブルの上には、彼が置いていった鍵についたペンギンがじっと、俺を見つめていた。 0： 0： 0：バーにて 秋田：（無言で思い切り三神の頬を叩く） 三神：いっ……つ… 秋田：……バカ！！だから！！辞めとけって…（ボロボロ涙こぼれる） 三神：……すまん 秋田：あんな、幸せそうな…朔良ちゃん、見たこと無かったのになぁ……ほんと、幸せそうで…っ 三神：…ほんとにそうかな… 秋田：そうだよ！三神が出張の間、毎日俺のとこに電話かけてきてさ！惚気話ずーーっと聞かされてさ！お前が実家に戻ってる間も、「俺のせいだ」って、毎日毎日……っ 三神：………… 秋田：お前は、朔良ちゃんを弄んだんだ。 三神：弄んでなんか！ 秋田：朔良ちゃんがどういう人間かわかっていながら…、確かに、朔良ちゃんがやってしまったことは悪いよ？でも、たった1回の過ちを受け入れずに突き放して捨てた。正直、見損なったよ。 三神：俺、朔良を……弄んだ…？ 秋田：お前は、朔良ちゃんを弄んだという罪を一生背負いながら、普通に結婚して、普通に子供作って、普通に、幸せになりなよ。 三神：……っ、俺、朔良に… 秋田：朔良ちゃんならもう居ないよ。 三神：いない、ってまさか死 秋田：アメリカ行った。カジノで大儲けしてくるってさ。 三神：へ…… 秋田：「誰にも頼らず、1人で生きていくためには金が必要だ」って。 三神：なん、だそれ……。 秋田：とゆーわけで。俺もそろそろ帰る。可愛いハニーが待ってるからさ。あ、結婚式は呼ばないでね。めちゃくちゃにしちゃいそうだから。じゃーねん。 三神：……おう。 三神M：桜のような恋をした 朔良M：1年のたった1週間程度しか満開にならない桜 三神M：願わくば、彼の桜がまた満開になる事を 朔良M：もう二度と、咲かない俺の桜 三神：……愛してたよ。 朔良：（三神へ何かメッセージをお願いします） 0： 0： 0：END