台本概要
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タイトル | くもるひと |
---|---|
作者名 | おちり補佐官 (@called_makki) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 1人用台本(女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
10分もかかりません。 男女不問朗読用です。 一部、死を連想させる箇所がでてきますので苦手な方はお気をつけください。 136 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
私 | 女 | 15 | 言われた通りに努力をしてきた人。得るべき地位を手には入れたが、さほど満足することがなかった。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
:
私:危ないところだった。
私:目の前に、蜘蛛の糸があったのだ。
私:けどそれは、
私:建物と塀の間とか、
私:木と葉っぱの間にかかるような
私:蜘蛛の糸ではない。
:
私:空から真っ直ぐに
私:きらきらと一筋に
私:私の目の前に垂れてある。
私:きっと、
私:私のために垂らされたに違いない。
:
私:なんとなく、覚えがある。
私:いつの日だったか、
私:道を歩いていた蜘蛛を踏みそうになって
私:わざわざ踏みたくもなかったから
私:よけたのだ。
:
私:きっと、
私:天から見れば
私:そんなことでも
私:大変良いことだったのだろう。
私:だからきっと、
私:その分の見返りが現れたのだ。
:
私:折角の好意を無駄にするのは
私:きっと良くない。
私:そして、
私:誰か、偉い人がこう言ったに違いない。
私:「こうすれば君は幸せになれる」
私:そう思った。
:
私:だから私は登り始めた。
私:特別からだが強いわけでもないから
私:とても疲れながら、
私:何時間、
私:何日、
私:何ヵ月、
私:もしかすると年単位かもしれないが
私:なんとか登りきった。
:
私:途中で、
私:下の方でうめく人々が
私:沢山連なっていることもあったが
私:どうでもよかったから
私:ほうっておいた。
:
私:さて、
私:とても高いところの暮らしはというと
私:特別よくも感じない。
私:私の住むところは、
私:とてもとても高いところ。
:
私:高いばっかりだったので
私:帰ることに決めた。
私:ここまで登るのは大変だったけれど、
私:無理して続ける必要もない。
:
私:糸の中途には人が沢山いるかもしれない。
私:幸せの努力をしている人に
私:水を差すのは悪趣味だ。
私:
私:ただ降りればいいだけなので
私:見えないところから飛び降りた。
:
私:浮いていると、
私:不思議な気持ちだった。
私:努力が水の泡になったのに
私:清々しく、
私:爽快で、素晴らしかった。
:
私:元々居た世界の空気や、
私:風の素晴らしさに
私:感動をしながら
私:喜びに満ち溢れて
私:涙を空に残して
私:急降下していった。
:
私:しかし、たどり着いたのは
私:元々居た場所ではなかった。
私:どうやら、
私:別のところに来てしまったらしい。
:
私:さっきまで、
私:あれほど天高く居たはずなのに、
私:どうして針山の隣に居るのだろうか。
私:近くに居た男が
私:かすれた声で教えてくれた。
:
私:自殺は大罪らしい。
私:
私:来たときから
私:ずっと真っ暗だけれど、
私:地獄はもう、昼を過ぎた頃だった。
:
:
:おわり。
:
:
私:危ないところだった。
私:目の前に、蜘蛛の糸があったのだ。
私:けどそれは、
私:建物と塀の間とか、
私:木と葉っぱの間にかかるような
私:蜘蛛の糸ではない。
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私:空から真っ直ぐに
私:きらきらと一筋に
私:私の目の前に垂れてある。
私:きっと、
私:私のために垂らされたに違いない。
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私:なんとなく、覚えがある。
私:いつの日だったか、
私:道を歩いていた蜘蛛を踏みそうになって
私:わざわざ踏みたくもなかったから
私:よけたのだ。
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私:きっと、
私:天から見れば
私:そんなことでも
私:大変良いことだったのだろう。
私:だからきっと、
私:その分の見返りが現れたのだ。
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私:折角の好意を無駄にするのは
私:きっと良くない。
私:そして、
私:誰か、偉い人がこう言ったに違いない。
私:「こうすれば君は幸せになれる」
私:そう思った。
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私:だから私は登り始めた。
私:特別からだが強いわけでもないから
私:とても疲れながら、
私:何時間、
私:何日、
私:何ヵ月、
私:もしかすると年単位かもしれないが
私:なんとか登りきった。
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私:途中で、
私:下の方でうめく人々が
私:沢山連なっていることもあったが
私:どうでもよかったから
私:ほうっておいた。
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私:さて、
私:とても高いところの暮らしはというと
私:特別よくも感じない。
私:私の住むところは、
私:とてもとても高いところ。
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私:高いばっかりだったので
私:帰ることに決めた。
私:ここまで登るのは大変だったけれど、
私:無理して続ける必要もない。
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私:糸の中途には人が沢山いるかもしれない。
私:幸せの努力をしている人に
私:水を差すのは悪趣味だ。
私:
私:ただ降りればいいだけなので
私:見えないところから飛び降りた。
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私:浮いていると、
私:不思議な気持ちだった。
私:努力が水の泡になったのに
私:清々しく、
私:爽快で、素晴らしかった。
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私:元々居た世界の空気や、
私:風の素晴らしさに
私:感動をしながら
私:喜びに満ち溢れて
私:涙を空に残して
私:急降下していった。
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私:しかし、たどり着いたのは
私:元々居た場所ではなかった。
私:どうやら、
私:別のところに来てしまったらしい。
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私:さっきまで、
私:あれほど天高く居たはずなのに、
私:どうして針山の隣に居るのだろうか。
私:近くに居た男が
私:かすれた声で教えてくれた。
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私:自殺は大罪らしい。
私:
私:来たときから
私:ずっと真っ暗だけれど、
私:地獄はもう、昼を過ぎた頃だった。
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:おわり。