台本概要

 402 views 

タイトル 人として
作者名 民代  (@tamiyo_boikone)
ジャンル その他
演者人数 3人用台本(男2、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 これは、獣が人たる事を望んだ話。
何処までも報われぬ、空しい結末。そんなお話し。

 402 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
73 三ノ守峠(みのまもりとうげ)の人喰い狼と呼ばれる人斬り。女子供とても容赦なく斬り伏せる 名前は柊 ※終盤は名前の表記変更あり。男→柊になります。
44 厄を呼ぶとされ、周囲から忌み嫌われている。 名前は牡丹
刺客 31 人斬りを殺す為に仕向けられた刺客。ナレーションと兼役をお願いします
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ナレーション:これは、獣が人たる事を望んだ話。 ナレーション:何処までも報われぬ、空しい結末。そんな話である。 刺客:何故…貴様は刀を執る…? 刺客:確かに私はあの娘を斬った。貴様をかばってあの娘は死んだ 男:……。 刺客:折角永らえた命。あの娘の気概(きがい)を。覚悟を。無駄にするつもりか? 刺客:それに…貴様の腕では、私は斬れん 男:……。 刺客:なればもう一度問おう。 刺客:何故、貴様は私に刀を向けるのか? 男:……俺は 0:間 男:(俺は。生きる為に人を殺した。女も子供も分け隔てなく、殺めた) 男:(何人も何人も何人も。それこそ息を吸うのと変わらない感覚で、斬り捨ててきた) 男:(オレにとっては他人なんぞそんな物で、それだけだ) 男:(そう。俺は、人なんて上等なもんじゃない。ただの、獣にすぎない) 男:(牙を剥き、奪い、生きる為に人を殺す) 男:(そんな、理由なく生きているだけの獣) 男:(行き先は地獄のみ。そんな俺にはなにも無い。無いと信じてた。) 男:(あの娘に会うまでは) 0:間 娘:…っ!…あなたは… 男:すまないが、今からお前はここで死ぬ。俺にその四肢を切り捨てられるのさ 男:…勿論、俺を恨んでくれていい。さて、最後に言いたい事があるなら、聞いてやる 娘:あなたは……あなたは、その刀で、私を殺めてくれるのですね 男:……? 男:そう…だが? 娘:やっと、やっと見つけました 男:女。何をそんなに嬉しそうにしている 娘:私は、生きているだけで、不幸を呼ぶと言われてきました 娘:この赤い髪が、忌(い)み子として生(せい)を受けた証 娘:人々にそう言われながら、周囲に災厄を撒き散らしながら、今まで生き永らえてきました 娘:そう…私は、厄(やく)。生きることを否定された存在なのです 男:……。 娘:お願いです。どうか、何も無い私に。意味を下さい 娘:私はあなたに殺められ、そして糧となる。そのために私はここに来たのです 男:…何を言って… 娘:三ノ守峠(みのまもりとうげ)の人喰い狼。あなたがそうなのでしょう。 娘:この峠を越えようとした者の多くは帰ってこない。 娘:それは峠の狼に食べられてしまったからだと。そんな話を、耳にしました 男:……。 娘:狼さん。お願いします。私を食べてください 娘:そして覚えていてください…赤い髪の女がいたことを 娘:私がここに居たという事を 0:娘は男に縋る 娘:わたしを、殺して下さい 男:……。 0:しかし男は刀を納める 娘:…どうして?何故刀を納めるのですか 男:誰が言ったのか知らないが俺は人など喰わない。 男:殺して奪う、それだけだ。それに 娘:……。 男:厄を斬って、祟られてたまるか。…今すぐここから去れ。娘 娘:……。 男:聞こえなかったのか、今すぐここから…… 娘:去りません 男:何…? 娘:あなたが私を殺すまで、私は貴方の側を離れません 男:ふん…好きにしろ。どうせ直ぐに野垂れ死ぬ 0:間 男:(あいつは俺をかばって死んだ。あんたに斬られて死んだ) 男:(意味の無いあいつが、意味を持って死んだ) 男:(羨ましかった。ただ、羨ましかった) 男:(獣であるはずの俺が、束(つか)の間、そんなことを思った) 0:間 娘:また人を斬ったのですね 男:黙れ 娘:私も殺してください 男:断る 娘:……。 男:去れ。俺はお前を斬らない。此処にお前が居る意味など無い 娘:…嫌です 男:…チッ 娘:意味は見つけました。…あなたには何もない 男:何? 娘:分かります。だって、私も同じだから 男:知ったような口を…!! 娘:私は、あなたの傍(そば)に居ます 男:随分どう強情な女だな、お前は 娘:ふふっ。何を今更 娘:出会った頃から、私は何も変わっておりません 娘:だから、これからも 0:手を握る 娘:貴方のそばに、います 娘:私を殺してくれるまで 男:お前…… 0:間 男:そう。だから…俺も意味が欲しいかった 男:アイツが最期に手にした、生きた証が 男:何も持たぬ獣風情が願うには大層な願いだ 男:それでも。俺はあいつのようになりたいと思った 男:あんたは江戸一の剣客なんだろう?厄を斬った剣客(しかく)さん 刺客:…如何にも 男:俺があんたに勝ったなら、約束してくれ。 男:認めて欲しい。俺が人であったと、その事を 刺客:それが、私に刀を向ける理由か 男:ああ 刺客:愚かな……ッ! 男:そうかもな。だが俺は"それ"に命を賭けると決めたのさ 刺客:いいだろう。万に一つも有り得ぬ話だが、その約定、違わぬと誓おう 男:有難く 刺客:来い。獣。すぐさま斬って捨ててやる 男:はぁッッ!!!! 刺客:破ッ!! 男:ぐうっ!! 男:速いだけじゃない…一撃一撃が、こんなにも重い…!!! 刺客:どうした!獣っ!?人になりたいのだろう?大層なのは口だけかッ!? 男:ハアッ…!ハア…ッ! 刺客:貴様の剣筋は鋭く疾い。大抵の相手ならばそれで勝てたろう。 刺客:だが、所詮は我流。剣に生き、全てを捧げた私に勝てるはずも無し! 男:くっ…! 刺客:だが、素質はあるのは事実 刺客:今からでも遅くは無い。その牙を収め私の元に来い 刺客:そこで人としての道を歩んでみないか?それが、貴様の生きる意味にもなろう 男:断る 刺客:なに…? 男:断るといったんだ 男:…そこに、あいつはいない 刺客:……。 男:もう、いないんだよッッ!!! 男:はぁあああ!!!!! 0:鍔迫り合い 刺客:クッ!!…ふっ、ふはははははははっ!成程!成程成程理解したっ!今のは確かに私が愚かであった! 刺客:獣風情に人の言葉を説いても無駄であったなッ!! 刺客:ならば今すぐ黄泉路(よみじ)に送ってやる! 男:はあっ…!!はあっ…!はあっ…! 男:(何故だ……) 男:(何故ッ!あいつが死んでから、あいつの声が頭の中で響き続けるッ!?) 0:間 0:回想 刺客:獣を庇って死ぬとは…愚かだな 娘:嬉しい…私、意味を見つけ…たよ… 娘:私は…あなたを…守って…死ねる…。うれしい…な… 男:(嗚呼、そうか) 娘:私のこと、わすれないで 男:(ようやく分かった) 娘:わたし…はじめて…人のやくにたてた…あなたの…やくに… 男:(俺は) 娘:ねえ…わたし…ね…あなたのこと…… 男:ただ、哀しかっただけか 刺客:では、獣のまま死んでいけッ!! 男:あああああああああああああああああああッッ!!!! 0:間 男:はぁ…はぁ 刺客:(吐血) 刺客:…見事。だ 男:ぐ…ッッ! 刺客:貴様の…勝ち…だ… 0:剣客はその場に倒れ込む 刺客:私の刀を断ち割るほどの一閃…実に…見事…であった 男:はぁ…はあっ… 刺客:冥土の土産に…教えて…くれ。私を斬った者の…名を 0:間 娘:ねぇ、狼さんの名前はなんていうの? 男:名は無い 娘:それは…名を捨てたという意味ですか? 男:黙れ 娘:昔には、あったのでしょう……? 男:…そんなもの、無い 娘:じゃあ、私がつけてあげます。私が、大好きな木の名前 0:間 男:俺の名は柊(ひいらぎ) 刺客:貴殿の名、しかと…頂戴した……そなたを…人と…認め…… 柊:ぐっ…血を……流しすぎた…か…… 0:柊は倒れ、地に臥す 娘:(ねえ…柊。わたしね……あなたのこと………好き…だったよ…) 娘:(忘れ…ないで…わたしの…なまえは…) 柊:牡丹……俺も…お前の事…が ナレーション:これは、獣が人たる事を望んだ話。獣は最期に人となって、人を愛し、そして幸せになった話。これは、獣の物語ではなく…。人の、お話。 0:了

ナレーション:これは、獣が人たる事を望んだ話。 ナレーション:何処までも報われぬ、空しい結末。そんな話である。 刺客:何故…貴様は刀を執る…? 刺客:確かに私はあの娘を斬った。貴様をかばってあの娘は死んだ 男:……。 刺客:折角永らえた命。あの娘の気概(きがい)を。覚悟を。無駄にするつもりか? 刺客:それに…貴様の腕では、私は斬れん 男:……。 刺客:なればもう一度問おう。 刺客:何故、貴様は私に刀を向けるのか? 男:……俺は 0:間 男:(俺は。生きる為に人を殺した。女も子供も分け隔てなく、殺めた) 男:(何人も何人も何人も。それこそ息を吸うのと変わらない感覚で、斬り捨ててきた) 男:(オレにとっては他人なんぞそんな物で、それだけだ) 男:(そう。俺は、人なんて上等なもんじゃない。ただの、獣にすぎない) 男:(牙を剥き、奪い、生きる為に人を殺す) 男:(そんな、理由なく生きているだけの獣) 男:(行き先は地獄のみ。そんな俺にはなにも無い。無いと信じてた。) 男:(あの娘に会うまでは) 0:間 娘:…っ!…あなたは… 男:すまないが、今からお前はここで死ぬ。俺にその四肢を切り捨てられるのさ 男:…勿論、俺を恨んでくれていい。さて、最後に言いたい事があるなら、聞いてやる 娘:あなたは……あなたは、その刀で、私を殺めてくれるのですね 男:……? 男:そう…だが? 娘:やっと、やっと見つけました 男:女。何をそんなに嬉しそうにしている 娘:私は、生きているだけで、不幸を呼ぶと言われてきました 娘:この赤い髪が、忌(い)み子として生(せい)を受けた証 娘:人々にそう言われながら、周囲に災厄を撒き散らしながら、今まで生き永らえてきました 娘:そう…私は、厄(やく)。生きることを否定された存在なのです 男:……。 娘:お願いです。どうか、何も無い私に。意味を下さい 娘:私はあなたに殺められ、そして糧となる。そのために私はここに来たのです 男:…何を言って… 娘:三ノ守峠(みのまもりとうげ)の人喰い狼。あなたがそうなのでしょう。 娘:この峠を越えようとした者の多くは帰ってこない。 娘:それは峠の狼に食べられてしまったからだと。そんな話を、耳にしました 男:……。 娘:狼さん。お願いします。私を食べてください 娘:そして覚えていてください…赤い髪の女がいたことを 娘:私がここに居たという事を 0:娘は男に縋る 娘:わたしを、殺して下さい 男:……。 0:しかし男は刀を納める 娘:…どうして?何故刀を納めるのですか 男:誰が言ったのか知らないが俺は人など喰わない。 男:殺して奪う、それだけだ。それに 娘:……。 男:厄を斬って、祟られてたまるか。…今すぐここから去れ。娘 娘:……。 男:聞こえなかったのか、今すぐここから…… 娘:去りません 男:何…? 娘:あなたが私を殺すまで、私は貴方の側を離れません 男:ふん…好きにしろ。どうせ直ぐに野垂れ死ぬ 0:間 男:(あいつは俺をかばって死んだ。あんたに斬られて死んだ) 男:(意味の無いあいつが、意味を持って死んだ) 男:(羨ましかった。ただ、羨ましかった) 男:(獣であるはずの俺が、束(つか)の間、そんなことを思った) 0:間 娘:また人を斬ったのですね 男:黙れ 娘:私も殺してください 男:断る 娘:……。 男:去れ。俺はお前を斬らない。此処にお前が居る意味など無い 娘:…嫌です 男:…チッ 娘:意味は見つけました。…あなたには何もない 男:何? 娘:分かります。だって、私も同じだから 男:知ったような口を…!! 娘:私は、あなたの傍(そば)に居ます 男:随分どう強情な女だな、お前は 娘:ふふっ。何を今更 娘:出会った頃から、私は何も変わっておりません 娘:だから、これからも 0:手を握る 娘:貴方のそばに、います 娘:私を殺してくれるまで 男:お前…… 0:間 男:そう。だから…俺も意味が欲しいかった 男:アイツが最期に手にした、生きた証が 男:何も持たぬ獣風情が願うには大層な願いだ 男:それでも。俺はあいつのようになりたいと思った 男:あんたは江戸一の剣客なんだろう?厄を斬った剣客(しかく)さん 刺客:…如何にも 男:俺があんたに勝ったなら、約束してくれ。 男:認めて欲しい。俺が人であったと、その事を 刺客:それが、私に刀を向ける理由か 男:ああ 刺客:愚かな……ッ! 男:そうかもな。だが俺は"それ"に命を賭けると決めたのさ 刺客:いいだろう。万に一つも有り得ぬ話だが、その約定、違わぬと誓おう 男:有難く 刺客:来い。獣。すぐさま斬って捨ててやる 男:はぁッッ!!!! 刺客:破ッ!! 男:ぐうっ!! 男:速いだけじゃない…一撃一撃が、こんなにも重い…!!! 刺客:どうした!獣っ!?人になりたいのだろう?大層なのは口だけかッ!? 男:ハアッ…!ハア…ッ! 刺客:貴様の剣筋は鋭く疾い。大抵の相手ならばそれで勝てたろう。 刺客:だが、所詮は我流。剣に生き、全てを捧げた私に勝てるはずも無し! 男:くっ…! 刺客:だが、素質はあるのは事実 刺客:今からでも遅くは無い。その牙を収め私の元に来い 刺客:そこで人としての道を歩んでみないか?それが、貴様の生きる意味にもなろう 男:断る 刺客:なに…? 男:断るといったんだ 男:…そこに、あいつはいない 刺客:……。 男:もう、いないんだよッッ!!! 男:はぁあああ!!!!! 0:鍔迫り合い 刺客:クッ!!…ふっ、ふはははははははっ!成程!成程成程理解したっ!今のは確かに私が愚かであった! 刺客:獣風情に人の言葉を説いても無駄であったなッ!! 刺客:ならば今すぐ黄泉路(よみじ)に送ってやる! 男:はあっ…!!はあっ…!はあっ…! 男:(何故だ……) 男:(何故ッ!あいつが死んでから、あいつの声が頭の中で響き続けるッ!?) 0:間 0:回想 刺客:獣を庇って死ぬとは…愚かだな 娘:嬉しい…私、意味を見つけ…たよ… 娘:私は…あなたを…守って…死ねる…。うれしい…な… 男:(嗚呼、そうか) 娘:私のこと、わすれないで 男:(ようやく分かった) 娘:わたし…はじめて…人のやくにたてた…あなたの…やくに… 男:(俺は) 娘:ねえ…わたし…ね…あなたのこと…… 男:ただ、哀しかっただけか 刺客:では、獣のまま死んでいけッ!! 男:あああああああああああああああああああッッ!!!! 0:間 男:はぁ…はぁ 刺客:(吐血) 刺客:…見事。だ 男:ぐ…ッッ! 刺客:貴様の…勝ち…だ… 0:剣客はその場に倒れ込む 刺客:私の刀を断ち割るほどの一閃…実に…見事…であった 男:はぁ…はあっ… 刺客:冥土の土産に…教えて…くれ。私を斬った者の…名を 0:間 娘:ねぇ、狼さんの名前はなんていうの? 男:名は無い 娘:それは…名を捨てたという意味ですか? 男:黙れ 娘:昔には、あったのでしょう……? 男:…そんなもの、無い 娘:じゃあ、私がつけてあげます。私が、大好きな木の名前 0:間 男:俺の名は柊(ひいらぎ) 刺客:貴殿の名、しかと…頂戴した……そなたを…人と…認め…… 柊:ぐっ…血を……流しすぎた…か…… 0:柊は倒れ、地に臥す 娘:(ねえ…柊。わたしね……あなたのこと………好き…だったよ…) 娘:(忘れ…ないで…わたしの…なまえは…) 柊:牡丹……俺も…お前の事…が ナレーション:これは、獣が人たる事を望んだ話。獣は最期に人となって、人を愛し、そして幸せになった話。これは、獣の物語ではなく…。人の、お話。 0:了