台本概要

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タイトル 土曜日にデートしよう
作者名 あかおう  (@akaouwaikasuki)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 |°ω°ᔨせつないほっこり

【声劇・配信での使用/連絡不要】
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★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK)
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【禁止事項】
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【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】
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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
理央 126 りお
不問 122 じん(男性ですが、女性が演じてもOK)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
理央:ねぇねぇ、迅。残業終わったの?同期のみんなで土曜日遊ぼうよ。週末の家族旅行、迅だけ行かないんでしょ? 理央:あ、もちろんいつも通りダメ元で聞いてるんだけどね? 理央:可能性がゼロじゃないなら、あきらめないのだ! 迅:あ? 理央:んとね、あのね、なんていうかさ。その、気が向いたらでいいんだけどさ。一緒に居たいですっ! 迅:俺は今のところ、外に出る気分じゃねぇな。 理央:そこをなんとか・・・!えと。迅の好きな所行くとか・・・でもいいよ? 迅:(冷徹に)行かない。 理央:ふむ。わかった!ごめんね無理言って!んじゃ良い週末を! 迅:はぁー。なんだアイツ。毎週毎週。 迅:あ、電話・・・もしもし・・・何、母さん。ああ、土曜日だろ?わかってるよ。ちゃんと検査行くって。・・・今度はサボらないって。わかってる。 0: 理央:(走って止まる)はぁ、はぁ、はぁ・・・・あーーー!今回もダメだったかぁー! 理央:やっぱり手厳しいなぁ。迅てば。マイペースっていうか、一匹狼っていうか・・・。 理央:でも諦めないぞ!私には時間が無いんだから・・・・ 0: 迅:ありがとうございました。失礼します。 迅:もしもし、母さん?検査終わったよ。うん、一応安定はしてた。うん、油断はしないって。 迅:え?会社?心配ないよ。大丈夫、うまくやってるし。切るよ。もう。 迅:・・・はー。めんどくせ。この体・・・・。 迅:(モノローグ)俺は、生まれつき体が弱い。現代医学ならば40歳そこそこ生きられれば長生きな方。 迅:だから「長生き」とか「精一杯生きる」とかに興味が無い。だって、あと10数年しか生きられないんだから。どんなに力入れて生きたって、力入れないで生きたって同じなら、楽な方がいい。 0: 理央:(同時に)いたっ!! 迅:(同時に)うわっ! 理央:いたた・・・ 迅:あ、すみませんお怪我ないですか? 理央:いたた・・・いえ、私も横向きながら走っちゃってたから・・・ 迅:うわ。 理央:おおおお!!じーーんーーーー!!うきゃぁぁ!!むぐっ(迅に口を手でふさがれる) 迅:出入口とはいえ、まだ病院。静かにしろ。 理央:あ、う、うん。その通り。うん。 迅:じゃあな。 理央:ちょいまちぃぃいい!! 迅:あ?うるっせぇな。だから静かにしろ。 理央:あっ。ごめん。 迅:なに。 理央:なんで・・・この病院にいるのかなって・・・あ、私は友達のおばあちゃんが・・・ 迅:あ?プライベートな話だろうが。 理央:ああ、うん!そだよね!ごめんごめん。 迅:帰るぞ。んじゃ。また会社で。 理央:ちょ!ちょ!ちょっとまって!!! 迅:なに!しつけぇな。 理央:あっ・・・ごめ・・ん・・・ 迅:・・・・・何。なんか用事? 理央:あの、その、えと、休日に会えたのがね、その、嬉しすぎて・・・ね?うん。あの、あの、 迅:なんだ。俺は帰るぞ。 理央:(しょんぼりして)うん。ごめんね。引き留めて。 迅:じゃぁな。 理央:うん。またね。 0: 理央:あーあ、行っちゃった・・・せっかく土曜日に会えたのに。引き留める勇気もない・・・ 0: 迅:・・・面倒なやつに会っちまったなぁ・・・。 0: 理央:迅は、人に詮索されたり、深く聞かれる事を極端に嫌う。私は人との距離感バグってるから、人と上手く付き合えなくて、よく失敗する。 理央:そのうち、友達も、会社の人も、家族にも誰とも本音で話せなくなった。 理央:もう、自分のせいで人に嫌な思いさせるの嫌だ。疲れたって時に出会ったのが、同期の迅だった。 理央:迅は、誰に対してもあの態度。だから先月別れた彼女にも振られた。でもケロッと忘れて生きてる。 理央:なのに迅の周りには人が絶えず集まってる。いつも誰にでも本音で話す迅にみんな、強く興味を持つ。 理央:でも、一定のラインを超えると迅は猫みたいに居なくなる。それがわかってるから、誰とも深くつながらない。迅もそれを望んでいない。 理央:平和主義っていったらそうなんだけど。 理央:私は、彼の事が好き。好きだから、何も言えないでいる。いつか、迅には想いを伝えたい。そう思ってはいた。けれどまさかの出来事が、突然やってきた。 0: 迅:おい。これ。 理央:あ、迅。珍しいねどしたの?うちの部署になんか用? 迅:来月退職するから、その書類提出。 理央:えっ・・・・・・・・ 迅:んじゃ、よろしく。 理央:え?迅? 迅:俺今日、午後有給なんだ。じゃあな。 理央:ちょ、ちょっと待ってよ!! 迅:・・・・なに。書類は渡しただろ。他になんかあるのか。 理央:あの、さ。 迅:なに。 理央:わ、私も今日実は午後有給取ってるんだ!一緒にどっかいかない? 迅:・・・別にいいけど。 理央:!!!ほ、ほんと!?ちょ、ちょっと待ってて!急いでバッグ取ってくるから!あわわ・・・痛!!あ!すみません!とおりまーす!!(走っていく) 迅:・・・・慌ただしい奴だな・・・・ま、いっか。どうせあいつともこれが最後だ。一つくらいワガママきいてやるのも悪くねぇか。 理央:・・・はー、はー、ど、どうしよう・・・し、心臓すっごいバクバクしてる・・・ 理央:あ!課長!!私お腹痛いです!!午後有給取っていいですか!いいですよね!! 0: 迅:・・・遅い。 理央:ご、ごめん・・・はぁはぁ・・・おまたせ・・・! 迅:そんな走ってこなくても、バッグ取ってくるだけだろ?何時間かけてんだ。 理央:いや、その、色々、そう!色々あるんだよ女は!! 迅:はぁ・・・色々ねぇ。 理央:(モノローグ)い、今までの人生で最速でメイク直ししたぁぁぁ!!すごい!偉いぞ私!!頑張った!えっと、変な所ないよね?髪とかハネてないよね? 迅:で?どこ行く。とりあえず腹減ったわ。 理央:うん!じゃさ、駅前のバイキングいかない!? 迅:あそこそんなに美味くねぇぞ・・・ 理央:いや、そうなんだけどさ?ほら、初めて同期のみんなで行った思い出あるじゃん。迅、仕事やめるんでしょ?そしたらこの駅前近辺のお店にもあんまりこないわけじゃない。 迅:いや別に・・・来ようと思えばこれる距離だしな・・・ 理央:いいじゃん!!いこいこ!! 迅:あ、おい。・・・まー、考えるのも面倒だからいっか。 理央:うん!行こう! 0: 理央:あ!迅!ここは私が払うよ!迅の退職祝いって事で! 迅:あ?そうか。じゃぁゴチになるか。 理央:ふふー。 迅:なに、気持ち悪いな。 理央:え?だって迅におごれる日が来るとはなーって。 迅:別にまだ会社くるしな。毎日でもおごってくれてかまわねぇぞ? 理央:そ、それは流石に私にもお財布事情ってもんがですね・・・ 迅:冗談だよ。今度会ったら返すし。多分。 理央:多分!? 迅:有給消化入るからな。ほら、在宅勤務も増えてるし。お前にもあと何回会えるかわかんねぇしな。 理央:ああ、うん。 迅:確実性のない事は、俺は言いたくないんだ。 理央:・・・私におごられるの、イヤ? 迅:んー、イヤっていうわけじゃねぇけど、ちょっと気にはする。 理央:ふむ。でも、退職祝いだから。気にしないで! 迅:じゃあ、心おきなく。 理央:うん! 0: 迅:・・・おい。 理央:な、なに。 迅:なんで俺の顔ジッと見てんだよ。 理央:ん?え?いや、その。 迅:なに。 理央:いやその・・・ 迅:あ?そんなに睨みつけてくるんなら、俺も睨みつけ返すぞゴラ。 理央:!! 迅:・・・何、目ぇそらしてんだこら。 理央:ん?なんでも、ないよぉ・・・? 迅:おい。 理央:なにっ。 迅:・・・・いーけど別に・・・。 理央:あ!スイーツコーナー補充された!行ってくる! 迅:はいはい・・・(笑) 0: 理央:あー、なんか緊張してあんまり食べれなかった! 迅:え?お前どっちかっていうと俺より食べてたよな? 理央:え?そう?? 迅:普段どんだけ大食いなんだよ・・・ 理央:ち、違うよ?その、えと・・・ 迅:別にいいけど。 理央:う、うん。 理央:(モノローグ)沢山食べてるつもりなかったんだけどなぁ・・・迅の事、正面から真っすぐ見たの初めてで、ドキドキして、うどんも三杯しかおかわりできなかったし! 迅:そういや、お前、麺類コーナーでうどん三杯おかわりしてたな。 理央:ええ!!なんで知ってるの!!迅がトイレに行ってる隙にこっそり食べたのに!! 迅:いや、普通にうどんについてくる薬味三皿あったしな・・・?あー、三杯食べたんだなーって。小ぶりのドンブリでもねぇのにこいつ食うなぁって感心してた。 理央:そそそそんなことないよ!?え、えっと、そう!最近食欲無くて!うどんくらいしか入らなくて! 迅:お前、スイーツバイキング、全種類制覇してたよな? 理央:なんでー!!なんでそんな事も全部覚えてるのー!? 迅:(笑)いや別に、食いたきゃ食えばいいだろ。 理央:う、うん。 迅:そしてその腹肉を順調に育てていくことだな。 理央:ふぐっ!!!! 迅:なに。 理央:・・・地味にダメージが・・・なんでもない・・・ 迅:じゃ、俺帰るから。 理央:えっ! 迅:なんだよ。 理央:いや、その!えと、駅まで送る! 迅:いや、お前も同じ駅から帰るだろうが。 理央:お、おん・・・ 迅:おん? 理央:いや、その、うん。 迅:変な奴だな。相変わらず。 0: 理央:あ、私あと三つ先の駅で乗り換えだ。 迅:おう。そうか。 理央:この時間、結構電車すいてるね。 迅:そうだな。 理央:・・・ねぇ、迅。 迅:なんだ。 理央:なんで会社辞めちゃうの? 迅:私事(わたくしごと)なんで。 理央:うん・・・そうだよね。わかってる。 迅:詮索は嫌いだ。 理央:うん。知ってる。 迅:・・・この帰りの景色見るのも、あと何回かなぁ。 理央:そうだね。 迅:あ、あそこの店、一度行ってみたかったんだよなぁ。また来るかな。 理央:迅。 迅:うん? 理央:私も、再来月で会社辞めるの。 迅:・・・・ふむ。そうか。 理央:うちね、実家が老舗(しにせ)の旅館だからさ。親がね、決めた人と結婚するっていうの決まっててさ。 理央:どうしても、私が一度でいいから都会のOLしたくて、無理言って出てきたんだけどさ。 理央:もうすぐ20代も終わるじゃない?親が限界だーって。早く帰ってきて結婚しろーって。 迅:・・・・興味ねぇ。 理央:うん。ごめん。 迅:・・・・・お前は? 理央:え? 迅:お前の気持ちはどうなん? 理央:え?べっつにー?適度に都会のOL出来てー、楽しかったしー、私バカだからキャリアアップなんかできそうにないしね? 理央:潮時かなーって、自分でもわかってたし・・・・。 理央:むしろ私のワガママで、守らなきゃいけない家をないがしろにしてきたわけだし・・・ 迅:お前の本当の気持ちじゃねぇだろ。 理央:・・・!!・・・・・・わかってるよ。でも。そう言い聞かせなきゃ、どうにもなんないんだよ・・・ 迅:俺はお前に何もしてやるつもりもねぇけど。そういう、なんつーの。悲劇のヒロインぶってる奴は嫌いだな。 理央:!!迅に・・・何がわかるの。 迅:あ?わかんねぇよ。 理央:何百年も続いてきた旅館だよ?何人も文豪が宿泊もしてて、超有名なんだよ?私そこの長女で・・・大きなリゾート開発の会社の人と、結婚して、このご時世で傾いた実家を立て直さなきゃいけない・・・・ 迅:ははっ・・・政略結婚とか、時代劇みてぇ。 理央:・・・・迅にはわかんないよ!私の気持ちにだって、本当は気が付いてるくせに、いつもいつもデートだって断ってさ・・・ 迅:・・・・なんの話だよ・・・落ち着けよ・・・電車の中だぞ。 理央:・・・・ 迅:・・・・俺さ。40歳まで生きられねぇ。 理央:え・・・? 迅:先天性の病気でな。こないだお前に会った病院あっただろ。あそこで毎週土曜日に診察してもらってたってわけ。 理央:うん。 迅:だから、お前の毎週毎週の誘いも断ってた。 理央:うん。 迅:・・・・俺は、誰も好きにならねぇ。 理央:うん。 迅:自分一人だけでいい。他人なんざどーでもいい。 理央:うん。 迅:・・・・ 理央:・・・・・ 迅:引退した野球選手みたいな顔でお前泣くんだな。 理央:泣くの・・・我慢してるからっ・・・ 迅:おい、落ち着けって・・・ 理央:・・・・迅。 迅:なに。 理央:・・・ひっく・・・迅。 迅:だから何。 理央:・・・・好き。 迅:・・・・知ってた。 理央:・・・・・うん。 迅:・・・・・ 理央:・・・・迅、大好き。 迅:・・・・うん。 理央:好き。 迅:うん、知ってる。 理央:ずっと、好き。一生、迅だけ好き。 迅:そうか。 理央:うん。ダメ? 迅:好きにしたら? 理央:じゃあ、来世で、迅のお嫁さんになる。 迅:俺は来世とかバカバカしいから受け付けないんだが。 理央:来世で迅のお嫁さんになる。 迅:はいはい・・・(笑)子供だなお前。 理央:大人の女だもん・・・・ 迅:・・・・そうだな、大人の女。 理央:・・・・うん。 迅:ほら、乗り換えの駅着いたぞ。 理央:・・・・うん。 0: 理央:(モノローグ)私は、なるべく泣いている事を周りに悟られないように、マスクを上にあげた。 理央:迅が好き。ずっと好きだった。やっと言えた。この想いはかなわないって、わかってた。 理央:でも、ちゃんと言えて良かった。これで良かった。この先の迅の生きる道に、私はいない。必要ない。 理央:それでも迅が好きだった。どうしようもなく好きだった。迅は、誰にも本音を言えなくなっていた私に、唯一本音で接してくれた。 理央:私にとっては、恋人より、家族より、かけがえのない人。その人の生き方を邪魔なんて。私がしたくないから。 0: 迅:それから、10年の月日がたった。俺の病気も医療の進歩と共に、随分と長生きが可能な病気になってきた。 迅:相変わらず俺は一人だ。でも思い出す。毎週土曜日になると、アホ面で子犬みたいに俺のところにやってきたバカを。 迅:しつこくしつこく、俺に食らいついてきたあいつを。 0: 理央:迅、どうしてますか?まだ、生きてますか?私はね、結局実家継がなかった。継げなかった。 理央:あの時世間を騒がせたウイルスのせいで、傾いてた実家は更に傾いて、数百年の歴史に簡単に終止符を打ったの。 理央:でも、家族とまた一から出直すの。家族は私が守る。弱かったあの頃の私はもういないよ。 理央:迅。まだあなたを愛してる。心の底から。土曜日になるといつも思い出す。 理央:乗り換え駅から一つ手前の駅で、あなたが握ってくれた手のぬくもりは、今も私を勇気づけてくれてる・・・。 0: 0: 迅:(同時に)うわっ! 理央:(同時に)いたっ!! 迅:あ、すみませんお怪我ないですか? 理央:いたた・・・いえ、私も横向きながら走っちゃってたから・・・ 迅:うわ。 理央:おおおお!!じーーんーーーー!!うきゃぁぁ!!むぐっ(迅に口を手でふさがれる) 迅:出入口とはいえ、まだ病院。静かにしろ。 理央:あ、う、うん。その通り。うん。 迅:じゃあな。 理央:ちょいまちぃぃいい!! 迅:あ?うるっせぇな。だから静かにしろ。 理央:あっ。ごめん。・・・・えと・・・・迅?迅だよね?おっさんになってるけど・・・ 迅:ああ? 理央:迅・・・!迅だ!!迅だぁ!!! 迅:ちょま!!やめろお前!!抱き着くな!! 理央:迅!迅!迅!!!! 迅:うるっせえ!!お前今年で40だろ!!落ち着けバカ!! 理央:迅も!!40まで生きられないって言ってたのに!!生きてる!!バカ!! 迅:バカって言う方がバカなんだよ!!! 理央:私はずっとバカだもん!! 迅:おーおー、忘れてたわ!!随分老けたなお前も!! 理央:うるさい!! 迅:・・・ 理央:・・・・ 迅:(同時に)あはは・・!あははは・・・ 理央:(同時に)えへへ・・・あははは・・・ 0: 理央:迅、バイキング行こう? 迅:あ?またうどん三杯、俺がトイレ行ってる間に食うのか?ん? 理央:食べるよ!悪いか! 迅:おーおー、年取って恥じらいなくなったなー。あの頃はかわいかっ・・・・・ 理央:え? 迅:・・・・なんでもねぇ。 理央:よく聞こえなかった!なに?ねぇ! 迅:うるせえ!個人情報だ! 理央:あ!まってよ!! 迅:あーあーうるせー! 理央:ねぇ迅! 迅:なに! 理央:好き!! 迅:・・・・知ってる!! 0: 0:笑いあう二人。 0:おわり。

理央:ねぇねぇ、迅。残業終わったの?同期のみんなで土曜日遊ぼうよ。週末の家族旅行、迅だけ行かないんでしょ? 理央:あ、もちろんいつも通りダメ元で聞いてるんだけどね? 理央:可能性がゼロじゃないなら、あきらめないのだ! 迅:あ? 理央:んとね、あのね、なんていうかさ。その、気が向いたらでいいんだけどさ。一緒に居たいですっ! 迅:俺は今のところ、外に出る気分じゃねぇな。 理央:そこをなんとか・・・!えと。迅の好きな所行くとか・・・でもいいよ? 迅:(冷徹に)行かない。 理央:ふむ。わかった!ごめんね無理言って!んじゃ良い週末を! 迅:はぁー。なんだアイツ。毎週毎週。 迅:あ、電話・・・もしもし・・・何、母さん。ああ、土曜日だろ?わかってるよ。ちゃんと検査行くって。・・・今度はサボらないって。わかってる。 0: 理央:(走って止まる)はぁ、はぁ、はぁ・・・・あーーー!今回もダメだったかぁー! 理央:やっぱり手厳しいなぁ。迅てば。マイペースっていうか、一匹狼っていうか・・・。 理央:でも諦めないぞ!私には時間が無いんだから・・・・ 0: 迅:ありがとうございました。失礼します。 迅:もしもし、母さん?検査終わったよ。うん、一応安定はしてた。うん、油断はしないって。 迅:え?会社?心配ないよ。大丈夫、うまくやってるし。切るよ。もう。 迅:・・・はー。めんどくせ。この体・・・・。 迅:(モノローグ)俺は、生まれつき体が弱い。現代医学ならば40歳そこそこ生きられれば長生きな方。 迅:だから「長生き」とか「精一杯生きる」とかに興味が無い。だって、あと10数年しか生きられないんだから。どんなに力入れて生きたって、力入れないで生きたって同じなら、楽な方がいい。 0: 理央:(同時に)いたっ!! 迅:(同時に)うわっ! 理央:いたた・・・ 迅:あ、すみませんお怪我ないですか? 理央:いたた・・・いえ、私も横向きながら走っちゃってたから・・・ 迅:うわ。 理央:おおおお!!じーーんーーーー!!うきゃぁぁ!!むぐっ(迅に口を手でふさがれる) 迅:出入口とはいえ、まだ病院。静かにしろ。 理央:あ、う、うん。その通り。うん。 迅:じゃあな。 理央:ちょいまちぃぃいい!! 迅:あ?うるっせぇな。だから静かにしろ。 理央:あっ。ごめん。 迅:なに。 理央:なんで・・・この病院にいるのかなって・・・あ、私は友達のおばあちゃんが・・・ 迅:あ?プライベートな話だろうが。 理央:ああ、うん!そだよね!ごめんごめん。 迅:帰るぞ。んじゃ。また会社で。 理央:ちょ!ちょ!ちょっとまって!!! 迅:なに!しつけぇな。 理央:あっ・・・ごめ・・ん・・・ 迅:・・・・・何。なんか用事? 理央:あの、その、えと、休日に会えたのがね、その、嬉しすぎて・・・ね?うん。あの、あの、 迅:なんだ。俺は帰るぞ。 理央:(しょんぼりして)うん。ごめんね。引き留めて。 迅:じゃぁな。 理央:うん。またね。 0: 理央:あーあ、行っちゃった・・・せっかく土曜日に会えたのに。引き留める勇気もない・・・ 0: 迅:・・・面倒なやつに会っちまったなぁ・・・。 0: 理央:迅は、人に詮索されたり、深く聞かれる事を極端に嫌う。私は人との距離感バグってるから、人と上手く付き合えなくて、よく失敗する。 理央:そのうち、友達も、会社の人も、家族にも誰とも本音で話せなくなった。 理央:もう、自分のせいで人に嫌な思いさせるの嫌だ。疲れたって時に出会ったのが、同期の迅だった。 理央:迅は、誰に対してもあの態度。だから先月別れた彼女にも振られた。でもケロッと忘れて生きてる。 理央:なのに迅の周りには人が絶えず集まってる。いつも誰にでも本音で話す迅にみんな、強く興味を持つ。 理央:でも、一定のラインを超えると迅は猫みたいに居なくなる。それがわかってるから、誰とも深くつながらない。迅もそれを望んでいない。 理央:平和主義っていったらそうなんだけど。 理央:私は、彼の事が好き。好きだから、何も言えないでいる。いつか、迅には想いを伝えたい。そう思ってはいた。けれどまさかの出来事が、突然やってきた。 0: 迅:おい。これ。 理央:あ、迅。珍しいねどしたの?うちの部署になんか用? 迅:来月退職するから、その書類提出。 理央:えっ・・・・・・・・ 迅:んじゃ、よろしく。 理央:え?迅? 迅:俺今日、午後有給なんだ。じゃあな。 理央:ちょ、ちょっと待ってよ!! 迅:・・・・なに。書類は渡しただろ。他になんかあるのか。 理央:あの、さ。 迅:なに。 理央:わ、私も今日実は午後有給取ってるんだ!一緒にどっかいかない? 迅:・・・別にいいけど。 理央:!!!ほ、ほんと!?ちょ、ちょっと待ってて!急いでバッグ取ってくるから!あわわ・・・痛!!あ!すみません!とおりまーす!!(走っていく) 迅:・・・・慌ただしい奴だな・・・・ま、いっか。どうせあいつともこれが最後だ。一つくらいワガママきいてやるのも悪くねぇか。 理央:・・・はー、はー、ど、どうしよう・・・し、心臓すっごいバクバクしてる・・・ 理央:あ!課長!!私お腹痛いです!!午後有給取っていいですか!いいですよね!! 0: 迅:・・・遅い。 理央:ご、ごめん・・・はぁはぁ・・・おまたせ・・・! 迅:そんな走ってこなくても、バッグ取ってくるだけだろ?何時間かけてんだ。 理央:いや、その、色々、そう!色々あるんだよ女は!! 迅:はぁ・・・色々ねぇ。 理央:(モノローグ)い、今までの人生で最速でメイク直ししたぁぁぁ!!すごい!偉いぞ私!!頑張った!えっと、変な所ないよね?髪とかハネてないよね? 迅:で?どこ行く。とりあえず腹減ったわ。 理央:うん!じゃさ、駅前のバイキングいかない!? 迅:あそこそんなに美味くねぇぞ・・・ 理央:いや、そうなんだけどさ?ほら、初めて同期のみんなで行った思い出あるじゃん。迅、仕事やめるんでしょ?そしたらこの駅前近辺のお店にもあんまりこないわけじゃない。 迅:いや別に・・・来ようと思えばこれる距離だしな・・・ 理央:いいじゃん!!いこいこ!! 迅:あ、おい。・・・まー、考えるのも面倒だからいっか。 理央:うん!行こう! 0: 理央:あ!迅!ここは私が払うよ!迅の退職祝いって事で! 迅:あ?そうか。じゃぁゴチになるか。 理央:ふふー。 迅:なに、気持ち悪いな。 理央:え?だって迅におごれる日が来るとはなーって。 迅:別にまだ会社くるしな。毎日でもおごってくれてかまわねぇぞ? 理央:そ、それは流石に私にもお財布事情ってもんがですね・・・ 迅:冗談だよ。今度会ったら返すし。多分。 理央:多分!? 迅:有給消化入るからな。ほら、在宅勤務も増えてるし。お前にもあと何回会えるかわかんねぇしな。 理央:ああ、うん。 迅:確実性のない事は、俺は言いたくないんだ。 理央:・・・私におごられるの、イヤ? 迅:んー、イヤっていうわけじゃねぇけど、ちょっと気にはする。 理央:ふむ。でも、退職祝いだから。気にしないで! 迅:じゃあ、心おきなく。 理央:うん! 0: 迅:・・・おい。 理央:な、なに。 迅:なんで俺の顔ジッと見てんだよ。 理央:ん?え?いや、その。 迅:なに。 理央:いやその・・・ 迅:あ?そんなに睨みつけてくるんなら、俺も睨みつけ返すぞゴラ。 理央:!! 迅:・・・何、目ぇそらしてんだこら。 理央:ん?なんでも、ないよぉ・・・? 迅:おい。 理央:なにっ。 迅:・・・・いーけど別に・・・。 理央:あ!スイーツコーナー補充された!行ってくる! 迅:はいはい・・・(笑) 0: 理央:あー、なんか緊張してあんまり食べれなかった! 迅:え?お前どっちかっていうと俺より食べてたよな? 理央:え?そう?? 迅:普段どんだけ大食いなんだよ・・・ 理央:ち、違うよ?その、えと・・・ 迅:別にいいけど。 理央:う、うん。 理央:(モノローグ)沢山食べてるつもりなかったんだけどなぁ・・・迅の事、正面から真っすぐ見たの初めてで、ドキドキして、うどんも三杯しかおかわりできなかったし! 迅:そういや、お前、麺類コーナーでうどん三杯おかわりしてたな。 理央:ええ!!なんで知ってるの!!迅がトイレに行ってる隙にこっそり食べたのに!! 迅:いや、普通にうどんについてくる薬味三皿あったしな・・・?あー、三杯食べたんだなーって。小ぶりのドンブリでもねぇのにこいつ食うなぁって感心してた。 理央:そそそそんなことないよ!?え、えっと、そう!最近食欲無くて!うどんくらいしか入らなくて! 迅:お前、スイーツバイキング、全種類制覇してたよな? 理央:なんでー!!なんでそんな事も全部覚えてるのー!? 迅:(笑)いや別に、食いたきゃ食えばいいだろ。 理央:う、うん。 迅:そしてその腹肉を順調に育てていくことだな。 理央:ふぐっ!!!! 迅:なに。 理央:・・・地味にダメージが・・・なんでもない・・・ 迅:じゃ、俺帰るから。 理央:えっ! 迅:なんだよ。 理央:いや、その!えと、駅まで送る! 迅:いや、お前も同じ駅から帰るだろうが。 理央:お、おん・・・ 迅:おん? 理央:いや、その、うん。 迅:変な奴だな。相変わらず。 0: 理央:あ、私あと三つ先の駅で乗り換えだ。 迅:おう。そうか。 理央:この時間、結構電車すいてるね。 迅:そうだな。 理央:・・・ねぇ、迅。 迅:なんだ。 理央:なんで会社辞めちゃうの? 迅:私事(わたくしごと)なんで。 理央:うん・・・そうだよね。わかってる。 迅:詮索は嫌いだ。 理央:うん。知ってる。 迅:・・・この帰りの景色見るのも、あと何回かなぁ。 理央:そうだね。 迅:あ、あそこの店、一度行ってみたかったんだよなぁ。また来るかな。 理央:迅。 迅:うん? 理央:私も、再来月で会社辞めるの。 迅:・・・・ふむ。そうか。 理央:うちね、実家が老舗(しにせ)の旅館だからさ。親がね、決めた人と結婚するっていうの決まっててさ。 理央:どうしても、私が一度でいいから都会のOLしたくて、無理言って出てきたんだけどさ。 理央:もうすぐ20代も終わるじゃない?親が限界だーって。早く帰ってきて結婚しろーって。 迅:・・・・興味ねぇ。 理央:うん。ごめん。 迅:・・・・・お前は? 理央:え? 迅:お前の気持ちはどうなん? 理央:え?べっつにー?適度に都会のOL出来てー、楽しかったしー、私バカだからキャリアアップなんかできそうにないしね? 理央:潮時かなーって、自分でもわかってたし・・・・。 理央:むしろ私のワガママで、守らなきゃいけない家をないがしろにしてきたわけだし・・・ 迅:お前の本当の気持ちじゃねぇだろ。 理央:・・・!!・・・・・・わかってるよ。でも。そう言い聞かせなきゃ、どうにもなんないんだよ・・・ 迅:俺はお前に何もしてやるつもりもねぇけど。そういう、なんつーの。悲劇のヒロインぶってる奴は嫌いだな。 理央:!!迅に・・・何がわかるの。 迅:あ?わかんねぇよ。 理央:何百年も続いてきた旅館だよ?何人も文豪が宿泊もしてて、超有名なんだよ?私そこの長女で・・・大きなリゾート開発の会社の人と、結婚して、このご時世で傾いた実家を立て直さなきゃいけない・・・・ 迅:ははっ・・・政略結婚とか、時代劇みてぇ。 理央:・・・・迅にはわかんないよ!私の気持ちにだって、本当は気が付いてるくせに、いつもいつもデートだって断ってさ・・・ 迅:・・・・なんの話だよ・・・落ち着けよ・・・電車の中だぞ。 理央:・・・・ 迅:・・・・俺さ。40歳まで生きられねぇ。 理央:え・・・? 迅:先天性の病気でな。こないだお前に会った病院あっただろ。あそこで毎週土曜日に診察してもらってたってわけ。 理央:うん。 迅:だから、お前の毎週毎週の誘いも断ってた。 理央:うん。 迅:・・・・俺は、誰も好きにならねぇ。 理央:うん。 迅:自分一人だけでいい。他人なんざどーでもいい。 理央:うん。 迅:・・・・ 理央:・・・・・ 迅:引退した野球選手みたいな顔でお前泣くんだな。 理央:泣くの・・・我慢してるからっ・・・ 迅:おい、落ち着けって・・・ 理央:・・・・迅。 迅:なに。 理央:・・・ひっく・・・迅。 迅:だから何。 理央:・・・・好き。 迅:・・・・知ってた。 理央:・・・・・うん。 迅:・・・・・ 理央:・・・・迅、大好き。 迅:・・・・うん。 理央:好き。 迅:うん、知ってる。 理央:ずっと、好き。一生、迅だけ好き。 迅:そうか。 理央:うん。ダメ? 迅:好きにしたら? 理央:じゃあ、来世で、迅のお嫁さんになる。 迅:俺は来世とかバカバカしいから受け付けないんだが。 理央:来世で迅のお嫁さんになる。 迅:はいはい・・・(笑)子供だなお前。 理央:大人の女だもん・・・・ 迅:・・・・そうだな、大人の女。 理央:・・・・うん。 迅:ほら、乗り換えの駅着いたぞ。 理央:・・・・うん。 0: 理央:(モノローグ)私は、なるべく泣いている事を周りに悟られないように、マスクを上にあげた。 理央:迅が好き。ずっと好きだった。やっと言えた。この想いはかなわないって、わかってた。 理央:でも、ちゃんと言えて良かった。これで良かった。この先の迅の生きる道に、私はいない。必要ない。 理央:それでも迅が好きだった。どうしようもなく好きだった。迅は、誰にも本音を言えなくなっていた私に、唯一本音で接してくれた。 理央:私にとっては、恋人より、家族より、かけがえのない人。その人の生き方を邪魔なんて。私がしたくないから。 0: 迅:それから、10年の月日がたった。俺の病気も医療の進歩と共に、随分と長生きが可能な病気になってきた。 迅:相変わらず俺は一人だ。でも思い出す。毎週土曜日になると、アホ面で子犬みたいに俺のところにやってきたバカを。 迅:しつこくしつこく、俺に食らいついてきたあいつを。 0: 理央:迅、どうしてますか?まだ、生きてますか?私はね、結局実家継がなかった。継げなかった。 理央:あの時世間を騒がせたウイルスのせいで、傾いてた実家は更に傾いて、数百年の歴史に簡単に終止符を打ったの。 理央:でも、家族とまた一から出直すの。家族は私が守る。弱かったあの頃の私はもういないよ。 理央:迅。まだあなたを愛してる。心の底から。土曜日になるといつも思い出す。 理央:乗り換え駅から一つ手前の駅で、あなたが握ってくれた手のぬくもりは、今も私を勇気づけてくれてる・・・。 0: 0: 迅:(同時に)うわっ! 理央:(同時に)いたっ!! 迅:あ、すみませんお怪我ないですか? 理央:いたた・・・いえ、私も横向きながら走っちゃってたから・・・ 迅:うわ。 理央:おおおお!!じーーんーーーー!!うきゃぁぁ!!むぐっ(迅に口を手でふさがれる) 迅:出入口とはいえ、まだ病院。静かにしろ。 理央:あ、う、うん。その通り。うん。 迅:じゃあな。 理央:ちょいまちぃぃいい!! 迅:あ?うるっせぇな。だから静かにしろ。 理央:あっ。ごめん。・・・・えと・・・・迅?迅だよね?おっさんになってるけど・・・ 迅:ああ? 理央:迅・・・!迅だ!!迅だぁ!!! 迅:ちょま!!やめろお前!!抱き着くな!! 理央:迅!迅!迅!!!! 迅:うるっせえ!!お前今年で40だろ!!落ち着けバカ!! 理央:迅も!!40まで生きられないって言ってたのに!!生きてる!!バカ!! 迅:バカって言う方がバカなんだよ!!! 理央:私はずっとバカだもん!! 迅:おーおー、忘れてたわ!!随分老けたなお前も!! 理央:うるさい!! 迅:・・・ 理央:・・・・ 迅:(同時に)あはは・・!あははは・・・ 理央:(同時に)えへへ・・・あははは・・・ 0: 理央:迅、バイキング行こう? 迅:あ?またうどん三杯、俺がトイレ行ってる間に食うのか?ん? 理央:食べるよ!悪いか! 迅:おーおー、年取って恥じらいなくなったなー。あの頃はかわいかっ・・・・・ 理央:え? 迅:・・・・なんでもねぇ。 理央:よく聞こえなかった!なに?ねぇ! 迅:うるせえ!個人情報だ! 理央:あ!まってよ!! 迅:あーあーうるせー! 理央:ねぇ迅! 迅:なに! 理央:好き!! 迅:・・・・知ってる!! 0: 0:笑いあう二人。 0:おわり。