台本概要
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タイトル | タイムトレインジャック~凶器と狂気と驚喜~ |
---|---|
作者名 | あかおう (@akaouwaikasuki) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
|°ω°ᔨシリアスでセリフ量多くて大変です。電車でタイムリープし続けて、会社の先輩を助けたい人のお話。 【声劇・配信での使用/連絡不要】 ★配信での投げ銭が発生する場合でも連絡不要です。 ★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK) →シナリオタイトル横の「つぶやく」を押してご自身のTwitterでツイートする。 →赤王(@akaouwaikasuki)メンションでご自身のTwitterでツイートする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートにいいねする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートをRT。 →その他思いやりある行動で大切にしてくださったら嬉しいです。 【禁止事項】 ★ライターの呼び捨て表記。 ★盗作・自分が書きましたと言う行為。 ★無断で一部分を切り取っての使用や投稿。 ★上記以外で赤王が非常識と判断した行動・表記。 以上をされた方は即ブロックさせて頂き、以降赤王のシナリオ使用を禁止とさせて頂きます。 【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】 連絡必須:許可が下りるまで使用しないでください。 124 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
後輩 | 男 | 124 | 設定上は男ですが女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。 |
先輩 | 男 | 111 | 設定上は男ですが女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:<登場人物>
後輩:主人公。真面目。社畜。会社辞めたい。疲弊。(Mはモノローグです。)
先輩:会社の先輩。底抜けにお人好しで楽天家。面倒見が良い。最近奥さんのお腹に新しい命が。
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0:<プロローグ>
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後輩:(M)その日僕は、二年半勤めた会社を辞める為だけに、その電車に乗っていた。その、はずだったんだ。
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後輩:(狂ったように)ああああああああああああああああああ!!!!!(電車の扉をバンバン叩く)
後輩:もう嫌だ!!!もう嫌だあああああ!!!!何回!?何回やったんだ?何回やったんだ??七千回は繰り返したぞ!?
後輩:(電車のドアをバンバン叩き続ける音)もうやめてくれ!!電車を!!電車を止めてくれ!!!
後輩:このままじゃ、このままじゃダメなんだよぉ!!止めてくれ!!止めてくれよおおおお!!!!
後輩:おっ・・・おっ・・・おっ・・・・・(言葉にならなくなり、息が詰まる)
後輩:俺が何したって言うんだよ!!何でもしただろ!?なのに何でだよ!?なんで!!!!この世界は変わらないんだよぉおお!?
後輩:俺のせいなのか!?俺のせいなのかよ!!変えられない俺のせいなのかよ!!一体何なんだよ!!なんなんだよぉぉおおおお!!!!!!
後輩:(嗚咽して泣き崩れていく)頼む・・・頼む・・・(弱々しくなっていく)・・・もう・・・疲れたんだ・・・・
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0:
後輩:(M)まさか自分が、都会の電車ではよく見かける。意味不明な事を叫んでいる、酔っ払いか何かのような厄介な人間になる日が来るとは思わなかった。
後輩:でも、叫ばずにはいられなかった。なぜなら僕は、二千〇〇年〇月〇日(今日の日付を入れてください)、七時十六分、北夕陽丘(きたゆうひがおか)駅始発、東京行き各駅停車。
後輩:この電車に乗るのは、「今日」で七千六百八十五回目だったからだ・・・・・・。
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先輩:よっ!おはよ。乗ってすぐ居眠りかぁオイ。大丈夫か。今日も顔色ワリィなぁオイ(笑)隣いいか?
後輩:あ、先輩・・・おはようございます・・・。どうぞ・・・。
後輩:もう南夕陽丘(みなみゆうひがおか)駅か・・・早いな・・・。
先輩:まぁ、お前の最寄り駅の三つ隣だからな。
先輩:何だ何だ?いつにも増してボーっとしてんなぁ??(茶化すように)とうとうウチの会社辞める決心着いたのか?
後輩:・・・・っ。
先輩:お?お??おぉ・・・?(小声)・・・んまぁ、そっか・・・。よく決心したな。とうとう、お前もかー。
後輩:先輩・・・止めないんすか。
先輩:ん?俺は前から辞めろって言ってたしなぁ。それにお前が決心しなきゃいけない事だし。
後輩:・・・今日、課長に言います。
先輩:そっか。・・・・ウチの会社、ブラックだからなー。しゃーねぇっつったらそれまでっていうか。ま、会社なんて都会には山ほどあるんだ。気楽にやめちまえ(笑)
後輩:・・・・先輩は・・・今年勤続五年目ですよね?どうして辞めないんですか?ウチの会社本当にブラック企業なのに。
先輩:んー・・・、辞めようとは、いつも思ってる。でも・・・さ。そんな簡単に辞められない事情がなー。我が家には出来ちまったからな。
後輩:え?・・・あ!!!もしかして・・・??
先輩:いっひっひ・・・新しい命って奴だぜ。
後輩:(大声)お!おめでとうございます!
先輩:シー!!バカ、電車の中だぞ!
後輩:あっ・・・。(小声)先輩、パパになるんですね。そっか。そりゃ簡単には会社辞められない。か。
先輩:そうだぞー?家庭を持っちまったからな。まぁ、俺はそんなに真面目でもないし、適当に会社とは付き合っていける方だからさ。
先輩:・・・真面目なお前にはさ、結構キツイ会社だろうなとは、前から思ってた。
後輩:・・・僕、やっぱりダメな人間なんですよね・・・先輩みたいに上手く人とも喋れないし。営業成績最下位だし。
先輩:そんな事ねぇよ!!たまたまウチの会社との相性が悪すぎただけだ。お前自身が悪いんじゃない。んー、そんな深く考えずにさ。人生の夏休みーって感じでさ、しばらくゆっくりすればいいじゃん?
後輩:先輩・・・・
先輩:そんでさ、俺がちょっとやべーぞってなったら呼び出すからな?容赦なく。そしたら夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋集合な?
後輩:あはは、お安い御用です。
先輩:・・・そっかー。辞めるのか。・・・さみしくなるなぁ。
後輩:そんな事言ってくれるの、ウチの会社できっと先輩だけですよ。
先輩:いーじゃん!俺一人いるんだからよ?それとも何か?俺では不満だっていうのか?ん?
後輩:あはは、いや、そんなわけないじゃないですか・・・
後輩:俺が怒られる度に、声掛けてくれたの・・・先輩だけだったじゃないですか・・・
先輩:そっかぁ?経理部のほら、あの可愛い女の子いたじゃん。
後輩:ああ、髪の長い。
先輩:あの子もお前の事気にしてたな・・・。いやー、あの子は本当によく気が利いて可愛くて可愛くてな。
後輩:・・・・・・先輩?。
先輩:ん?
後輩:その経理部の可愛い女の子って、先輩と同じ苗字ですよね?
先輩:そうだなぁ。
後輩:ご夫婦揃って、僕の事いつも色々な意味で可愛がってくれて。
先輩:あはは、ウチの嫁も大概お前の事いじってたもんなぁ。
後輩:・・・・二年半も続けてこられたのは、先輩方ご夫婦のおかげです。・・・本当に、ありがとうございます。
先輩:おう。まぁ、あれだ。次の会社ではさ・・・ん?
後輩:・・・先輩?
先輩:・・・?なんだ?隣の車両騒がしいな?
後輩:あ、あれじゃないですか?都会ではよく見かける、変な事朝から叫んでる酔っ払いとか。
先輩:いや・・なんかおかしくねぇか?
後輩:え?
先輩:うわ、なんか悲鳴すごくね?
後輩:ヤバそうですね・・・
先輩:こっちの車両来ないといいけど。
後輩:一度次の駅で降りて様子見ましょうよ。
先輩:大丈夫だろ。誰かが車掌に連絡するかして、すぐおさまるだろ。
後輩:だといいですけ・・・うわ!!!!
先輩:うわ、なんだ・・・アイツ・・・!?刃物・・・刃物持ってねぇ・・・か?
後輩:ちょ、マジでヤバくないですか?
先輩:この車両一両目だよな?逃げ場ねぇな!?
後輩:あ!でも運転手さんに言って緊急停止を!
先輩:うわ!!ちょ、こっちの車両来たぞ!!!おい!!あんたらも!!!逃げろ!!!出来るだけ前の方に!!!!
後輩:先輩!???
先輩:いいから!!俺今日実はさ、電車乗る前に週刊誌買ったんだ!
後輩:何言ってるんですかこんな非常時に!!
先輩:腹に雑誌入れときゃ、やられてもイケる気がする!
後輩:こんな時にバカな事言わないでください!!!先輩も前の方に逃げて!!
先輩:いいからいいから!!お前出来るだけ前の方に逃げろ!!
後輩:嫌です!!俺もカバンに入ったPCしかないですけど!!
先輩:おーお!!貸与物(たいよぶつ)破損は始末書だぞー?
後輩:仕方がないです!!!それにどうせ辞めるんで!!
先輩:あのさ!俺さ!
後輩:なんですか!!
先輩:剣道でインターハイ行ったから多分強い!!
後輩:バカですか!!柔道とかならいざ知らず!!
先輩:いや、気合でなんとかいけ・・・・あ!あぶねぇ!!!!後ろ!!!
後輩:えっ・・・・
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後輩:(M)スローモーションのように、今でも思い出す。
後輩:いつもの悪ふざけのように喋っていた先輩が、とてつもない間合いで俺の後ろに回ったかと思うと。
後輩:・・・先輩は・・・刃物を持った男の目の前に立って。
後輩:・・・・・・・背中を刺されるはずだった俺の代わりに、雑誌を詰めた腹を避けて、心臓を刃物で一突きにされた。
後輩:まるで映画のワンシーンのように、嘘みたいな世界。ゆっくりと目を閉じて倒れる先輩。
後輩:間もなく駅に到着し、駅員と警備員に抑えつけられる犯人。
後輩:・・・嘘だ・・・嘘だ・・・・・先輩には奥さんがいて、子供も出来て。会社に必要とされていて。
後輩:俺みたいに二年半で会社から逃げる奴の代わりに死んでイイ人なんかじゃない。
後輩:電車の中は血の海。立ち上がれない僕。動かない先輩に近づく事すらできず、震えと涙だけが止まらない。
後輩:駅員なのか警備員なのかわからない、何か言っているけど動けない。動けるはずがない。
後輩:嘘だ。嘘だ。さっきまで笑ってた人が。こんな現実あるのか?あるわけがない。あってたまるか!!!
後輩:あああああああああああああああああああああ!!!!!
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先輩:よっ!おはよ。乗ってすぐ居眠りかぁオイ。大丈夫か。今日も顔色ワリィなぁオイ(笑)隣いいか?
後輩:・・・え?
先輩:まぁ、お前の最寄り駅の三つ隣だからな。
先輩:何だ何だ?いつにも増してボーっとしてんなぁ??(茶化すように)とうとうウチの会社辞める決心着いたのか?
後輩:・・・・っ。
先輩:お?お??おぉ・・・?(小声)・・・んまぁ、そっか・・・。よく決心したな。とうとう、お前もかー。
後輩:せん・・・ぱい?
先輩:ん?俺は前から辞めろって言ってたしなぁ。それにお前が決心しなきゃいけない事だし。
後輩:・・・あの、せんぱ・・・(堪えきれず泣きだす)せんぱ・・うっ・・・うっ・・・・
先輩:そっか。・・・・ウチの会社、ブラックだからなー。しゃーねぇっつったらそれまでっていうか。ま、会社なんて都会には山ほどあるんだ。気楽にやめちまえ(笑)
後輩:・・・・・?先輩?
先輩:んー・・・、辞めようとは、いつも思ってる。でも・・・さ。そんな簡単に辞められない事情がなー。我が家には出来ちまったからな。
後輩:・・・・・っ?
先輩:いっひっひ・・・新しい命って奴だぜ。
後輩:・・・・・・っっ???
先輩:シー!!バカ、電車の中だぞ!
後輩:せん・・・ぱい・・・・?
先輩:そうだぞー?家庭を持っちまったからな。まぁ、俺はそんなに真面目でもないし、適当に会社とは付き合っていける方だからさ。
先輩:・・・真面目なお前にはさ、結構キツイ会社だろうなとは、前から思ってた。
後輩:せんぱい・・・先輩・・・・?
先輩:そんな事ねぇよ!!たまたまウチの会社との相性が悪すぎただけだ。お前自身が悪いんじゃない。んー、そんな深く考えずにさ。人生の夏休みーって感じでさ、しばらくゆっくりすればいいじゃん?
後輩:先輩・・・・
先輩:そんでさ、俺がちょっとやべーぞってなったら呼び出すからな?容赦なく。そしたら夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋集合な?
後輩:・・・・っ・・・うっ・・・うっ・・・(泣き出す)
先輩:・・・そっかー。辞めるのか。・・・さみしくなるなぁ。
後輩:なんなんだ・・・これ・・・・なんなんだ!?
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後輩:(M)先輩と・・・会話が嚙み合わない・・・・どういう・・・事だ・・・・?
後輩:最初はわからなかった。でもすぐにわかった。
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後輩:・・・先輩?
先輩:・・・?なんだ?隣の車両騒がしいな?
後輩:・・・・・
先輩:いや・・なんかおかしくねぇか?
後輩:・・・・・
先輩:うわ、なんか悲鳴すごくね?
後輩:・・・・・
先輩:こっちの車両来ないといいけど。
後輩:・・・・・
先輩:大丈夫だろ。誰かが車掌に連絡するかして、すぐおさまるだろ。
後輩:・・・・・
先輩:うわ、なんだ・・・アイツ・・・!?刃物・・・刃物持ってねぇ・・・か?
後輩:・・・・・
先輩:この車両一両目だよな?逃げ場ねぇな!?
後輩:・・・・・
先輩:うわ!!ちょ、こっちの車両来たぞ!!!おい!!あんたらも!!!逃げろ!!!出来るだけ前の方に!!!!
後輩:・・・・・
先輩:いいから!!俺今日実はさ、電車乗る前に週刊誌買ったんだ!
後輩:・・・・・
先輩:腹に雑誌入れときゃ、やられてもイケる気がする!
後輩:・・・・・
先輩:いいからいいから!!お前出来るだけ前の方に逃げろ!!
後輩:・・・・・
先輩:おーお!!貸与物(たいよぶつ)破損は始末書だぞー?
後輩:・・・・・
先輩:あのさ!俺さ!
後輩:・・・・・
先輩:剣道でインターハイ行ったから多分強い!!
後輩:・・・・・
先輩:いや、気合でなんとかいけ・・・・あ!あぶねぇ!!!!後ろ!!!
後輩:・・・・・
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後輩:(M)これはきっと、何か悪い夢を見てるんだ・・・・いや、そう思いたかった。
後輩:でも夢なんかじゃない。なぜなら。ここから俺は、七千六百八十五回目、同じ光景を無限ループで経験するのだから。
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後輩:あ!先輩!おはようございます!!
先輩:んあ?まだ五時だぞお前・・・どした電話なんて珍しい。なんかあったのか?
後輩:あの!!あの!!!
先輩:おお、どうした。
後輩:今日、今日ですね・・・
先輩:おう?
後輩:先輩、有給使って休んで貰えませんか!?
先輩:・・・はぁ??何言ってんだお前。今日社長出席の会議あんだろ?休めるわけねぇだろ。
後輩:ウチの会社が有給とは名ばかりの、休日出勤が暗黙の了解なブラック企業だって事はわかってます!
先輩:まぁなぁ。本当はダメなんだけどな。(笑)
後輩:だけど!!今日だけは!!お願いです!!
先輩:だからなんで?
後輩:・・・・信じてもらえないかもしれないけど、今日乗る電車に刃物を持った男が出るんです・・・だから・・・
先輩:はぁ!??お前・・・大丈夫か本当・・・お前の方が休んだ方がいんじゃね・・・?ふあ~(あくび)
後輩:先輩!!お願いです!!信じてください!!そこで先輩、その刃物を持った男に・・・刺されるんです・・・・
先輩:・・・・・お前、寝ぼけてんのかぁ?
後輩:僕は大真面目です!!
先輩:・・・・はぁ。んー、そうだな。もし本当にそうだとしてもさ、きっと何とかなるよ。
後輩:え?何言ってんですか!!!
先輩:ほら、俺ハンターランク歴代カンストしてるし?
後輩:ゲームの話じゃないんです・・・!!!ああもう!!!
先輩:わかったわかった。今日昼休みに詳しく聞くから。
後輩:それじゃ遅いんですってば!!
先輩:わかったわかった・・・あと・・・ひと眠りは出来そうだ・・・か・・ら・・・
後輩:先輩!?先輩!!???
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後輩:(M)当然、この日も先輩は還らぬ人となった。俺のせいだ。俺がもっと本気で止めなかったからだ。
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後輩:おはようございます!!お迎えにあがりました!!
先輩:ええ??なんでお前いんの??約束とかしたっけ??
後輩:先輩!今日はタクシーで会社行きませんか??僕おごりますんで!!
先輩:はぁ???何言ってんだお前。
後輩:り、臨時収入があったんですよ!それをパーッと無駄に使いたいなぁ~なんて!!
先輩:バーカ、何言ってんだよ。電車で行くぞ。
後輩:いやその、先輩!!ダメです!!じゃあこうしましょう!!カーシェアリングで行きましょう!!!
先輩:・・・・俺もお前も、運転免許持ってねぇだろ・・・。
後輩:あっ・・・・。じゃあヒッチハイクで!!!
先輩:はー・・・・。お前どうしたんだよ??わけわかんねぇ。ほら、駅行くぞ!
後輩:ダメ!ダメです!!ダメダメダメダメ!!!
先輩:・・・・・うわ、なんだよ!!腕掴むなって!!
後輩:今日先輩、電車で刃物を持った男に刺されて死んじゃうんです!!!
先輩:・・・・お前。
後輩:・・・はい。
先輩:・・・・大丈夫か?俺のベッドで良ければ・・・寝てくか?今日は・・・休め?
後輩:違うんです!!違うんです!!!
先輩:(家の中に居る嫁に)おーい、お前今日在宅勤務だよな?なんかコイツすげー疲れてるみたいだから休ませるからさ。ちょっと看病してやってくんない?いい?
後輩:ちょ、先輩!!!
先輩:おー、俺の嫁は握力その辺の男より強いから振りほどけねぇぞ~?ま、ゆっくりやすめ??
後輩:ダメ!ダメです!!行かないでください!!お、奥さんも腕離してください!そんな黙ってニコニコしてないで!!先輩の事止めて!!
先輩:そいつ頼んだぞぉ~じゃぁいってきまーす。
後輩:先輩いいいい!!!!!
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後輩:(M)・・・どうしたらいいんだ。もうこうなったら、犯人を直接俺が捕まえるしか・・・・!!!
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後輩:(M)・・・・まだ何もしていない犯人に飛び掛かってしまった。犯人の代わりに、俺が駅長室に連れていかれた・・・・。
後輩:そして、同じように先輩は刺されてしまった。
後輩:変えられない・・・何をしても変えられない・・・・
後輩:・・・どうしたら・・・もうどうしたらいいんだよ・・・・・
後輩:何をどうしたら、先輩は助かるんだああああああああ・・・・!?
後輩:もう・・・もう・・・いやだ・・・俺じゃ・・・俺じゃやっぱりなんにもできない。何の役にも立たない!!!
後輩:(狂ったように)ああああああああああああああああああ!!!!!(電車の扉をバンバン叩く)
後輩:もう嫌だ!!!もう嫌だあああああ!!!!何回!?何回やったんだ?何回やったんだ??七千回は繰り返したぞ!?
後輩:(電車のドアをバンバン叩き続ける音)もうやめてくれ!!電車を!!電車を止めてくれ!!!
後輩:このままじゃ、このままじゃダメなんだよぉ!!止めてくれ!!止めてくれよおおおお!!!!
後輩:おっ・・・おっ・・・おっ・・・・・(言葉にならなくなり、息が詰まる)
後輩:俺が何したって言うんだよ!!何でもしただろ!?なのに何でだよ!?なんで!!!!この世界は変わらないんだよぉおお!?
後輩:俺のせいなのか!?俺のせいなのかよ!!変えられない俺のせいなのかよ!!一体何なんだよ!!なんなんだよぉぉおおおお!!!!!!
後輩:(嗚咽して泣き崩れていく)頼む・・・頼む・・・(弱々しくなっていく)・・・もう・・・疲れたんだ・・・・
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先輩:・・・おい!どうした???!!!
後輩:・・・・・?せん・・・ぱい・・・・・??
先輩:あ、すみません、俺の会社の後輩です。ええ?電車の車内でですか・・・・。ええ、実は最近すごくメンタル弱ってて・・・。身元ですか、はい、えっとちょっとまってくださいね。
後輩:(M)俺は、駅のホームで駅員と警備員に囲まれていた。
後輩:電車の中で狂い叫び、近くに居た人が身の危険を感じて緊急停止ボタンを押して、最寄り駅で電車内から引きずり降ろされた。電車は俺のせいで止まって遅延。
後輩:やっと動いた次の電車で、先輩は駅員に囲まれている俺を見つけてくれたらしい。
後輩:あ!!先輩!!
先輩:おお、どした?急に起き上がって大丈夫か?
後輩:刃物を!!刃物を持った男は!???
先輩:は・・?お前、大丈夫か?
後輩:(M)その時、薄ら笑いを浮かべた刃物を持った男が俺を見つめていた。
後輩:もうそこからは無我夢中だった。駅員と警備員を振り切り、刃物男の腰にタックルし。
後輩:・・・・剥き出しの刃物がその男のカバンから出てきた。
後輩:そこからは、あれよあれよと警察がやってきて、そのシーンもまた映画みたいで。僕は呆然としていた。
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先輩:いやぁ、おつかれおつかれ!!
後輩:先輩・・・
先輩:お手柄っていうのかな?こういう時は。おてがら~ふぅ~~~!!
後輩:・・・茶化さないでください・・・
先輩:どうした?ドッと疲れた顔してんなぁ?
後輩:そりゃあ・・・・七千六百八十五回目、あんな事があれば・・・
先輩:へ?何の話だ???
後輩:・・・・・いえ。何でもないです。へへっ。
先輩:なんだぁ?気持ち悪ぃなぁ。
後輩:あ、先輩。
先輩:ん?
後輩:おめでとうございます。
先輩:んん??
後輩:先輩ならきっと、良いパパになれますねー。
先輩:ん?あれ?俺まだ誰にもソレ言って・・・言ったか?
後輩:・・・・はい。こないだ夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋行ったときに。覚えてないんですか?
先輩:まーじかーー!!!安定期入るまでは・・・内緒な?
後輩:はい。
先輩:人生何があるかわかんねぇからよ。
後輩:・・・そうですね。
先輩:あれ?
後輩:・・・・どうかしましたか?
先輩:お前、そんなたくましいっていうか・・・りりし・・かった・・・っけ・・・?あれ???どうした??
後輩:・・・さぁ?どうしたんでしょうねぇ・・・・。
先輩:・・・?ま、いっか。
後輩:はい。いいんです。なんでも。
先輩:さーて。今日も元気に社畜しに行きますかなー。
後輩:はい。適当に行きますか。
先輩:・・・やっぱなんか・・・
後輩:なんですか?
先輩:・・・社会人デビュー?
後輩:違います。
先輩:大型アップデート?
後輩:僕はゲームじゃありませんて(笑)
先輩:よし、今日帰り夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋集合な!
後輩:またですかぁ??
先輩:いいだろ!!死ぬほど働いて、帰りにお前と死ぬほど愚痴言うとさ、俺結構救われてんだぜ?
後輩:そうなんですか?
先輩:んまぁ、ほら。嫁の前ではカッコ良くいたい・・・っつーかさ?
後輩:あはは!!
先輩:なんだよこら!わかるだろお前も男なら!
後輩:わかりません!
先輩:なんだよおいこら!!絶対今日飲むぞ!!!いいな??
後輩:はい!楽しみにしてます!
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後輩:(M)あの無限ループが、疲れすぎた僕の見た夢だったのか。だとしたらどこまでが夢で。どこまでが現実だったのかわからない。
後輩:それでも何でもいい。大事な人を、あんな情けない形だけど守れたんなら。なんでもいい。そう。なんでもいいんだ。
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0:終了
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0:<登場人物>
後輩:主人公。真面目。社畜。会社辞めたい。疲弊。(Mはモノローグです。)
先輩:会社の先輩。底抜けにお人好しで楽天家。面倒見が良い。最近奥さんのお腹に新しい命が。
0:
0:
0:<プロローグ>
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0:
後輩:(M)その日僕は、二年半勤めた会社を辞める為だけに、その電車に乗っていた。その、はずだったんだ。
0:
0:間
0:
後輩:(狂ったように)ああああああああああああああああああ!!!!!(電車の扉をバンバン叩く)
後輩:もう嫌だ!!!もう嫌だあああああ!!!!何回!?何回やったんだ?何回やったんだ??七千回は繰り返したぞ!?
後輩:(電車のドアをバンバン叩き続ける音)もうやめてくれ!!電車を!!電車を止めてくれ!!!
後輩:このままじゃ、このままじゃダメなんだよぉ!!止めてくれ!!止めてくれよおおおお!!!!
後輩:おっ・・・おっ・・・おっ・・・・・(言葉にならなくなり、息が詰まる)
後輩:俺が何したって言うんだよ!!何でもしただろ!?なのに何でだよ!?なんで!!!!この世界は変わらないんだよぉおお!?
後輩:俺のせいなのか!?俺のせいなのかよ!!変えられない俺のせいなのかよ!!一体何なんだよ!!なんなんだよぉぉおおおお!!!!!!
後輩:(嗚咽して泣き崩れていく)頼む・・・頼む・・・(弱々しくなっていく)・・・もう・・・疲れたんだ・・・・
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0:間
0:
後輩:(M)まさか自分が、都会の電車ではよく見かける。意味不明な事を叫んでいる、酔っ払いか何かのような厄介な人間になる日が来るとは思わなかった。
後輩:でも、叫ばずにはいられなかった。なぜなら僕は、二千〇〇年〇月〇日(今日の日付を入れてください)、七時十六分、北夕陽丘(きたゆうひがおか)駅始発、東京行き各駅停車。
後輩:この電車に乗るのは、「今日」で七千六百八十五回目だったからだ・・・・・・。
0:
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先輩:よっ!おはよ。乗ってすぐ居眠りかぁオイ。大丈夫か。今日も顔色ワリィなぁオイ(笑)隣いいか?
後輩:あ、先輩・・・おはようございます・・・。どうぞ・・・。
後輩:もう南夕陽丘(みなみゆうひがおか)駅か・・・早いな・・・。
先輩:まぁ、お前の最寄り駅の三つ隣だからな。
先輩:何だ何だ?いつにも増してボーっとしてんなぁ??(茶化すように)とうとうウチの会社辞める決心着いたのか?
後輩:・・・・っ。
先輩:お?お??おぉ・・・?(小声)・・・んまぁ、そっか・・・。よく決心したな。とうとう、お前もかー。
後輩:先輩・・・止めないんすか。
先輩:ん?俺は前から辞めろって言ってたしなぁ。それにお前が決心しなきゃいけない事だし。
後輩:・・・今日、課長に言います。
先輩:そっか。・・・・ウチの会社、ブラックだからなー。しゃーねぇっつったらそれまでっていうか。ま、会社なんて都会には山ほどあるんだ。気楽にやめちまえ(笑)
後輩:・・・・先輩は・・・今年勤続五年目ですよね?どうして辞めないんですか?ウチの会社本当にブラック企業なのに。
先輩:んー・・・、辞めようとは、いつも思ってる。でも・・・さ。そんな簡単に辞められない事情がなー。我が家には出来ちまったからな。
後輩:え?・・・あ!!!もしかして・・・??
先輩:いっひっひ・・・新しい命って奴だぜ。
後輩:(大声)お!おめでとうございます!
先輩:シー!!バカ、電車の中だぞ!
後輩:あっ・・・。(小声)先輩、パパになるんですね。そっか。そりゃ簡単には会社辞められない。か。
先輩:そうだぞー?家庭を持っちまったからな。まぁ、俺はそんなに真面目でもないし、適当に会社とは付き合っていける方だからさ。
先輩:・・・真面目なお前にはさ、結構キツイ会社だろうなとは、前から思ってた。
後輩:・・・僕、やっぱりダメな人間なんですよね・・・先輩みたいに上手く人とも喋れないし。営業成績最下位だし。
先輩:そんな事ねぇよ!!たまたまウチの会社との相性が悪すぎただけだ。お前自身が悪いんじゃない。んー、そんな深く考えずにさ。人生の夏休みーって感じでさ、しばらくゆっくりすればいいじゃん?
後輩:先輩・・・・
先輩:そんでさ、俺がちょっとやべーぞってなったら呼び出すからな?容赦なく。そしたら夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋集合な?
後輩:あはは、お安い御用です。
先輩:・・・そっかー。辞めるのか。・・・さみしくなるなぁ。
後輩:そんな事言ってくれるの、ウチの会社できっと先輩だけですよ。
先輩:いーじゃん!俺一人いるんだからよ?それとも何か?俺では不満だっていうのか?ん?
後輩:あはは、いや、そんなわけないじゃないですか・・・
後輩:俺が怒られる度に、声掛けてくれたの・・・先輩だけだったじゃないですか・・・
先輩:そっかぁ?経理部のほら、あの可愛い女の子いたじゃん。
後輩:ああ、髪の長い。
先輩:あの子もお前の事気にしてたな・・・。いやー、あの子は本当によく気が利いて可愛くて可愛くてな。
後輩:・・・・・・先輩?。
先輩:ん?
後輩:その経理部の可愛い女の子って、先輩と同じ苗字ですよね?
先輩:そうだなぁ。
後輩:ご夫婦揃って、僕の事いつも色々な意味で可愛がってくれて。
先輩:あはは、ウチの嫁も大概お前の事いじってたもんなぁ。
後輩:・・・・二年半も続けてこられたのは、先輩方ご夫婦のおかげです。・・・本当に、ありがとうございます。
先輩:おう。まぁ、あれだ。次の会社ではさ・・・ん?
後輩:・・・先輩?
先輩:・・・?なんだ?隣の車両騒がしいな?
後輩:あ、あれじゃないですか?都会ではよく見かける、変な事朝から叫んでる酔っ払いとか。
先輩:いや・・なんかおかしくねぇか?
後輩:え?
先輩:うわ、なんか悲鳴すごくね?
後輩:ヤバそうですね・・・
先輩:こっちの車両来ないといいけど。
後輩:一度次の駅で降りて様子見ましょうよ。
先輩:大丈夫だろ。誰かが車掌に連絡するかして、すぐおさまるだろ。
後輩:だといいですけ・・・うわ!!!!
先輩:うわ、なんだ・・・アイツ・・・!?刃物・・・刃物持ってねぇ・・・か?
後輩:ちょ、マジでヤバくないですか?
先輩:この車両一両目だよな?逃げ場ねぇな!?
後輩:あ!でも運転手さんに言って緊急停止を!
先輩:うわ!!ちょ、こっちの車両来たぞ!!!おい!!あんたらも!!!逃げろ!!!出来るだけ前の方に!!!!
後輩:先輩!???
先輩:いいから!!俺今日実はさ、電車乗る前に週刊誌買ったんだ!
後輩:何言ってるんですかこんな非常時に!!
先輩:腹に雑誌入れときゃ、やられてもイケる気がする!
後輩:こんな時にバカな事言わないでください!!!先輩も前の方に逃げて!!
先輩:いいからいいから!!お前出来るだけ前の方に逃げろ!!
後輩:嫌です!!俺もカバンに入ったPCしかないですけど!!
先輩:おーお!!貸与物(たいよぶつ)破損は始末書だぞー?
後輩:仕方がないです!!!それにどうせ辞めるんで!!
先輩:あのさ!俺さ!
後輩:なんですか!!
先輩:剣道でインターハイ行ったから多分強い!!
後輩:バカですか!!柔道とかならいざ知らず!!
先輩:いや、気合でなんとかいけ・・・・あ!あぶねぇ!!!!後ろ!!!
後輩:えっ・・・・
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後輩:(M)スローモーションのように、今でも思い出す。
後輩:いつもの悪ふざけのように喋っていた先輩が、とてつもない間合いで俺の後ろに回ったかと思うと。
後輩:・・・先輩は・・・刃物を持った男の目の前に立って。
後輩:・・・・・・・背中を刺されるはずだった俺の代わりに、雑誌を詰めた腹を避けて、心臓を刃物で一突きにされた。
後輩:まるで映画のワンシーンのように、嘘みたいな世界。ゆっくりと目を閉じて倒れる先輩。
後輩:間もなく駅に到着し、駅員と警備員に抑えつけられる犯人。
後輩:・・・嘘だ・・・嘘だ・・・・・先輩には奥さんがいて、子供も出来て。会社に必要とされていて。
後輩:俺みたいに二年半で会社から逃げる奴の代わりに死んでイイ人なんかじゃない。
後輩:電車の中は血の海。立ち上がれない僕。動かない先輩に近づく事すらできず、震えと涙だけが止まらない。
後輩:駅員なのか警備員なのかわからない、何か言っているけど動けない。動けるはずがない。
後輩:嘘だ。嘘だ。さっきまで笑ってた人が。こんな現実あるのか?あるわけがない。あってたまるか!!!
後輩:あああああああああああああああああああああ!!!!!
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先輩:よっ!おはよ。乗ってすぐ居眠りかぁオイ。大丈夫か。今日も顔色ワリィなぁオイ(笑)隣いいか?
後輩:・・・え?
先輩:まぁ、お前の最寄り駅の三つ隣だからな。
先輩:何だ何だ?いつにも増してボーっとしてんなぁ??(茶化すように)とうとうウチの会社辞める決心着いたのか?
後輩:・・・・っ。
先輩:お?お??おぉ・・・?(小声)・・・んまぁ、そっか・・・。よく決心したな。とうとう、お前もかー。
後輩:せん・・・ぱい?
先輩:ん?俺は前から辞めろって言ってたしなぁ。それにお前が決心しなきゃいけない事だし。
後輩:・・・あの、せんぱ・・・(堪えきれず泣きだす)せんぱ・・うっ・・・うっ・・・・
先輩:そっか。・・・・ウチの会社、ブラックだからなー。しゃーねぇっつったらそれまでっていうか。ま、会社なんて都会には山ほどあるんだ。気楽にやめちまえ(笑)
後輩:・・・・・?先輩?
先輩:んー・・・、辞めようとは、いつも思ってる。でも・・・さ。そんな簡単に辞められない事情がなー。我が家には出来ちまったからな。
後輩:・・・・・っ?
先輩:いっひっひ・・・新しい命って奴だぜ。
後輩:・・・・・・っっ???
先輩:シー!!バカ、電車の中だぞ!
後輩:せん・・・ぱい・・・・?
先輩:そうだぞー?家庭を持っちまったからな。まぁ、俺はそんなに真面目でもないし、適当に会社とは付き合っていける方だからさ。
先輩:・・・真面目なお前にはさ、結構キツイ会社だろうなとは、前から思ってた。
後輩:せんぱい・・・先輩・・・・?
先輩:そんな事ねぇよ!!たまたまウチの会社との相性が悪すぎただけだ。お前自身が悪いんじゃない。んー、そんな深く考えずにさ。人生の夏休みーって感じでさ、しばらくゆっくりすればいいじゃん?
後輩:先輩・・・・
先輩:そんでさ、俺がちょっとやべーぞってなったら呼び出すからな?容赦なく。そしたら夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋集合な?
後輩:・・・・っ・・・うっ・・・うっ・・・(泣き出す)
先輩:・・・そっかー。辞めるのか。・・・さみしくなるなぁ。
後輩:なんなんだ・・・これ・・・・なんなんだ!?
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後輩:(M)先輩と・・・会話が嚙み合わない・・・・どういう・・・事だ・・・・?
後輩:最初はわからなかった。でもすぐにわかった。
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後輩:・・・先輩?
先輩:・・・?なんだ?隣の車両騒がしいな?
後輩:・・・・・
先輩:いや・・なんかおかしくねぇか?
後輩:・・・・・
先輩:うわ、なんか悲鳴すごくね?
後輩:・・・・・
先輩:こっちの車両来ないといいけど。
後輩:・・・・・
先輩:大丈夫だろ。誰かが車掌に連絡するかして、すぐおさまるだろ。
後輩:・・・・・
先輩:うわ、なんだ・・・アイツ・・・!?刃物・・・刃物持ってねぇ・・・か?
後輩:・・・・・
先輩:この車両一両目だよな?逃げ場ねぇな!?
後輩:・・・・・
先輩:うわ!!ちょ、こっちの車両来たぞ!!!おい!!あんたらも!!!逃げろ!!!出来るだけ前の方に!!!!
後輩:・・・・・
先輩:いいから!!俺今日実はさ、電車乗る前に週刊誌買ったんだ!
後輩:・・・・・
先輩:腹に雑誌入れときゃ、やられてもイケる気がする!
後輩:・・・・・
先輩:いいからいいから!!お前出来るだけ前の方に逃げろ!!
後輩:・・・・・
先輩:おーお!!貸与物(たいよぶつ)破損は始末書だぞー?
後輩:・・・・・
先輩:あのさ!俺さ!
後輩:・・・・・
先輩:剣道でインターハイ行ったから多分強い!!
後輩:・・・・・
先輩:いや、気合でなんとかいけ・・・・あ!あぶねぇ!!!!後ろ!!!
後輩:・・・・・
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後輩:(M)これはきっと、何か悪い夢を見てるんだ・・・・いや、そう思いたかった。
後輩:でも夢なんかじゃない。なぜなら。ここから俺は、七千六百八十五回目、同じ光景を無限ループで経験するのだから。
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後輩:あ!先輩!おはようございます!!
先輩:んあ?まだ五時だぞお前・・・どした電話なんて珍しい。なんかあったのか?
後輩:あの!!あの!!!
先輩:おお、どうした。
後輩:今日、今日ですね・・・
先輩:おう?
後輩:先輩、有給使って休んで貰えませんか!?
先輩:・・・はぁ??何言ってんだお前。今日社長出席の会議あんだろ?休めるわけねぇだろ。
後輩:ウチの会社が有給とは名ばかりの、休日出勤が暗黙の了解なブラック企業だって事はわかってます!
先輩:まぁなぁ。本当はダメなんだけどな。(笑)
後輩:だけど!!今日だけは!!お願いです!!
先輩:だからなんで?
後輩:・・・・信じてもらえないかもしれないけど、今日乗る電車に刃物を持った男が出るんです・・・だから・・・
先輩:はぁ!??お前・・・大丈夫か本当・・・お前の方が休んだ方がいんじゃね・・・?ふあ~(あくび)
後輩:先輩!!お願いです!!信じてください!!そこで先輩、その刃物を持った男に・・・刺されるんです・・・・
先輩:・・・・・お前、寝ぼけてんのかぁ?
後輩:僕は大真面目です!!
先輩:・・・・はぁ。んー、そうだな。もし本当にそうだとしてもさ、きっと何とかなるよ。
後輩:え?何言ってんですか!!!
先輩:ほら、俺ハンターランク歴代カンストしてるし?
後輩:ゲームの話じゃないんです・・・!!!ああもう!!!
先輩:わかったわかった。今日昼休みに詳しく聞くから。
後輩:それじゃ遅いんですってば!!
先輩:わかったわかった・・・あと・・・ひと眠りは出来そうだ・・・か・・ら・・・
後輩:先輩!?先輩!!???
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後輩:(M)当然、この日も先輩は還らぬ人となった。俺のせいだ。俺がもっと本気で止めなかったからだ。
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後輩:おはようございます!!お迎えにあがりました!!
先輩:ええ??なんでお前いんの??約束とかしたっけ??
後輩:先輩!今日はタクシーで会社行きませんか??僕おごりますんで!!
先輩:はぁ???何言ってんだお前。
後輩:り、臨時収入があったんですよ!それをパーッと無駄に使いたいなぁ~なんて!!
先輩:バーカ、何言ってんだよ。電車で行くぞ。
後輩:いやその、先輩!!ダメです!!じゃあこうしましょう!!カーシェアリングで行きましょう!!!
先輩:・・・・俺もお前も、運転免許持ってねぇだろ・・・。
後輩:あっ・・・・。じゃあヒッチハイクで!!!
先輩:はー・・・・。お前どうしたんだよ??わけわかんねぇ。ほら、駅行くぞ!
後輩:ダメ!ダメです!!ダメダメダメダメ!!!
先輩:・・・・・うわ、なんだよ!!腕掴むなって!!
後輩:今日先輩、電車で刃物を持った男に刺されて死んじゃうんです!!!
先輩:・・・・お前。
後輩:・・・はい。
先輩:・・・・大丈夫か?俺のベッドで良ければ・・・寝てくか?今日は・・・休め?
後輩:違うんです!!違うんです!!!
先輩:(家の中に居る嫁に)おーい、お前今日在宅勤務だよな?なんかコイツすげー疲れてるみたいだから休ませるからさ。ちょっと看病してやってくんない?いい?
後輩:ちょ、先輩!!!
先輩:おー、俺の嫁は握力その辺の男より強いから振りほどけねぇぞ~?ま、ゆっくりやすめ??
後輩:ダメ!ダメです!!行かないでください!!お、奥さんも腕離してください!そんな黙ってニコニコしてないで!!先輩の事止めて!!
先輩:そいつ頼んだぞぉ~じゃぁいってきまーす。
後輩:先輩いいいい!!!!!
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後輩:(M)・・・どうしたらいいんだ。もうこうなったら、犯人を直接俺が捕まえるしか・・・・!!!
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後輩:(M)・・・・まだ何もしていない犯人に飛び掛かってしまった。犯人の代わりに、俺が駅長室に連れていかれた・・・・。
後輩:そして、同じように先輩は刺されてしまった。
後輩:変えられない・・・何をしても変えられない・・・・
後輩:・・・どうしたら・・・もうどうしたらいいんだよ・・・・・
後輩:何をどうしたら、先輩は助かるんだああああああああ・・・・!?
後輩:もう・・・もう・・・いやだ・・・俺じゃ・・・俺じゃやっぱりなんにもできない。何の役にも立たない!!!
後輩:(狂ったように)ああああああああああああああああああ!!!!!(電車の扉をバンバン叩く)
後輩:もう嫌だ!!!もう嫌だあああああ!!!!何回!?何回やったんだ?何回やったんだ??七千回は繰り返したぞ!?
後輩:(電車のドアをバンバン叩き続ける音)もうやめてくれ!!電車を!!電車を止めてくれ!!!
後輩:このままじゃ、このままじゃダメなんだよぉ!!止めてくれ!!止めてくれよおおおお!!!!
後輩:おっ・・・おっ・・・おっ・・・・・(言葉にならなくなり、息が詰まる)
後輩:俺が何したって言うんだよ!!何でもしただろ!?なのに何でだよ!?なんで!!!!この世界は変わらないんだよぉおお!?
後輩:俺のせいなのか!?俺のせいなのかよ!!変えられない俺のせいなのかよ!!一体何なんだよ!!なんなんだよぉぉおおおお!!!!!!
後輩:(嗚咽して泣き崩れていく)頼む・・・頼む・・・(弱々しくなっていく)・・・もう・・・疲れたんだ・・・・
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先輩:・・・おい!どうした???!!!
後輩:・・・・・?せん・・・ぱい・・・・・??
先輩:あ、すみません、俺の会社の後輩です。ええ?電車の車内でですか・・・・。ええ、実は最近すごくメンタル弱ってて・・・。身元ですか、はい、えっとちょっとまってくださいね。
後輩:(M)俺は、駅のホームで駅員と警備員に囲まれていた。
後輩:電車の中で狂い叫び、近くに居た人が身の危険を感じて緊急停止ボタンを押して、最寄り駅で電車内から引きずり降ろされた。電車は俺のせいで止まって遅延。
後輩:やっと動いた次の電車で、先輩は駅員に囲まれている俺を見つけてくれたらしい。
後輩:あ!!先輩!!
先輩:おお、どした?急に起き上がって大丈夫か?
後輩:刃物を!!刃物を持った男は!???
先輩:は・・?お前、大丈夫か?
後輩:(M)その時、薄ら笑いを浮かべた刃物を持った男が俺を見つめていた。
後輩:もうそこからは無我夢中だった。駅員と警備員を振り切り、刃物男の腰にタックルし。
後輩:・・・・剥き出しの刃物がその男のカバンから出てきた。
後輩:そこからは、あれよあれよと警察がやってきて、そのシーンもまた映画みたいで。僕は呆然としていた。
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先輩:いやぁ、おつかれおつかれ!!
後輩:先輩・・・
先輩:お手柄っていうのかな?こういう時は。おてがら~ふぅ~~~!!
後輩:・・・茶化さないでください・・・
先輩:どうした?ドッと疲れた顔してんなぁ?
後輩:そりゃあ・・・・七千六百八十五回目、あんな事があれば・・・
先輩:へ?何の話だ???
後輩:・・・・・いえ。何でもないです。へへっ。
先輩:なんだぁ?気持ち悪ぃなぁ。
後輩:あ、先輩。
先輩:ん?
後輩:おめでとうございます。
先輩:んん??
後輩:先輩ならきっと、良いパパになれますねー。
先輩:ん?あれ?俺まだ誰にもソレ言って・・・言ったか?
後輩:・・・・はい。こないだ夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋行ったときに。覚えてないんですか?
先輩:まーじかーー!!!安定期入るまでは・・・内緒な?
後輩:はい。
先輩:人生何があるかわかんねぇからよ。
後輩:・・・そうですね。
先輩:あれ?
後輩:・・・・どうかしましたか?
先輩:お前、そんなたくましいっていうか・・・りりし・・かった・・・っけ・・・?あれ???どうした??
後輩:・・・さぁ?どうしたんでしょうねぇ・・・・。
先輩:・・・?ま、いっか。
後輩:はい。いいんです。なんでも。
先輩:さーて。今日も元気に社畜しに行きますかなー。
後輩:はい。適当に行きますか。
先輩:・・・やっぱなんか・・・
後輩:なんですか?
先輩:・・・社会人デビュー?
後輩:違います。
先輩:大型アップデート?
後輩:僕はゲームじゃありませんて(笑)
先輩:よし、今日帰り夕陽丘(ゆうひがおか)駅前の居酒屋集合な!
後輩:またですかぁ??
先輩:いいだろ!!死ぬほど働いて、帰りにお前と死ぬほど愚痴言うとさ、俺結構救われてんだぜ?
後輩:そうなんですか?
先輩:んまぁ、ほら。嫁の前ではカッコ良くいたい・・・っつーかさ?
後輩:あはは!!
先輩:なんだよこら!わかるだろお前も男なら!
後輩:わかりません!
先輩:なんだよおいこら!!絶対今日飲むぞ!!!いいな??
後輩:はい!楽しみにしてます!
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後輩:(M)あの無限ループが、疲れすぎた僕の見た夢だったのか。だとしたらどこまでが夢で。どこまでが現実だったのかわからない。
後輩:それでも何でもいい。大事な人を、あんな情けない形だけど守れたんなら。なんでもいい。そう。なんでもいいんだ。
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