台本概要
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タイトル | いのちのこえ |
---|---|
作者名 | 妹のヒモ |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女1、不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
いのちの電話で繋がった二人の物語
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
未来 | 女 | 38 | 相談者 |
佐藤 | 不問 | 44 | 相談員 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
0:新聞を読む佐藤。
:
:
佐藤M:「世界で年間八十万人、四十秒に一人が自ら命を絶つ現在、死にたい程辛い気持ちに寄り添う人達が居る。」
:
:
佐藤M:「厚生労働省と警察庁の発表によると、二〇二〇年の自殺者は前年より九〇八人、上回る。
佐藤M:およそ二万人。これは二〇二〇年に交通事故で亡くなった約三千人の七倍にもなるといわれている。また、東京の自殺者は二万人……。」
:
:
:
未来:「いのちのこえ」
:
:
:
佐藤M:「自殺者は二〇〇九年のリーマンショック以降毎年減少していたが、十一年のぶりの増加となった。
佐藤M:新型ウイルスによるストレスや経済への不安など、さまざまな事が原因で自殺を考える人が増えているようだ……。」
:
:
佐藤:「このような悩みや不安を抱える人の相談に乗るのが社会福祉法人"いのちの電話"」
:
佐藤M:「"いのちの電話"は全国51か所にある。
佐藤M:いのちの電話の発祥はイギリス。一九五三年に当時自殺率が高かったイギリスでロンドンから始まり、現在五十ヶ国以上に設立されている。」
:
:
0:コーヒーをテーブルに置く。
:
:
佐藤:「そして、自殺は世界でも解決すべき課題となっている、と。」
:
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0:新聞を読み終える佐藤。
:__
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0:間 3秒
:__
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0:場面変更。いのちの電話センター。
:
:
佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
未来:「あの……。」
佐藤:「どうしましたか?」
未来:「あの、生きていても……楽しい事が何一つ起こらない気がして」
佐藤:「うん……。」
佐藤M:「相談員は相手の話に耳を傾ける傾聴(けいちょう)が基本。」
未来:「それでもう……。生きてていいのかな?ってなります」
佐藤:「うん……。うん……。自分もそんな事ばかりです。でも貴方はその上で貴方を理解して。
佐藤:だけど自分は自分を理解出来ないですから……。自分を理解出来る貴方はしっかりと生きていると自分は思います。」
未来:「しっかり……なんて、生きて……ない。今でも、死にたいくらいにはもうボロボロだよ……」
佐藤:「……うん」
未来:「私って何の為に産まれたのかな?って、毎日……毎日…… 考えてる。」
佐藤:「自分も同じです。何の為に産まれたんだろうって……。常に考えてます。
佐藤:でもそれって、多分ですけど、答えは出て来ないですよね。だからこそ、明日を生きてみようかなってなるんです。」
未来:「知った風な事を言わないで!! 私が毎日どんな思いをしているのかもわからないくせに!!」
佐藤:「……うん。なら、教えてください。一人で抱え込まないでください。」
未来:「…学校でイジメに合ってるの。しかも毎日、毎日……。
未来:机には死ねって描かれたり毎日物を隠されたり、持ってきたお弁当を全部捨てられたり。最近では、自殺しろ!とかって言ってくるし……。
未来:もう何が何だかわからないよ。」
佐藤:「辛かったね。お疲れ様。大丈夫。貴方はもう、頑張ったから、逃げてもいいんだよ……。
佐藤:辛かったら、逃げればいい。無理に挑まなくてもいいんだ。だって貴方はもう頑張って来たんだから……。」
未来:「私、頑張った?って?」
佐藤:「その苦しみに耐えてきたんだよね?もう充分じゃない……。」
佐藤M:「いのちの電話は一九七十年代から、日本各地に広がり、現在は五十箇所に拠点がある。
佐藤M:年間の相談件数は約六十三万六千件以上の相談に応じ、多くの人々を支えている。」
未来:「……うん。私、頑張ったんだよね?」
佐藤:「そうです。頑張ったんです。」
未来:「……また電話してもいい?」
:
0:佐藤は微笑む。
:
佐藤:「いつでもどうぞ」
未来:「うん、もう何だか眠い、また明日も掛けるね。おやすみなさい。」
佐藤:「おやすみなさい。」
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:電話が切れる__
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:
佐藤:「一時間二十分……。コーヒーでも飲むか。」
:
:
:自販機の前に立ち、コーヒーのボタンを押す佐藤。
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佐藤:「やべ、間違えて、カフェラテ缶買ってしまった……。ブラック缶が良かったのに」
:
:
:間 3秒
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:
:次の日__
:
:
佐藤M:「いのちの電話はボランティアだ。また、一年半から二年程度の研修を行う。
佐藤M:そして、当然ながらボランティアの為研修費も自費となる。研修費用はおおよそ五万円が掛かる。
佐藤M:それに合宿費用も含まれ、三万円程度かかる。当然これも自腹。交通費も出ないし、食事も補助ナシ。」
:
:
:
佐藤M:「研修ではカウンセリングや切り返しなどを学び、後半はロールプレイングを行う。
佐藤M:……最後の砦と言われているこの場所。だからこそ、自分の発する言葉には責任を持たなければならない。」
:
:
佐藤M:「相手から「辛いんです」と言われたら、「辛いんですね」というようにそのまま返す事で肯定と受け取って貰える。
佐藤M:しかし、この仕事は、基本的に「相手の話を聞く」と言う事がメインになるらしく、アドバイスの方法などはほとんど教わらない。
佐藤M:だって、そうだろう?今まで色んな方法でここまで、頑張って来た人に簡単に「こうしたら?」なんて言える筈が無い。」
:
0:こうして佐藤は約三十回の研修を経て認定を受けた__
:
:
0:電話が鳴る。電話に出る。
:
:
佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
未来:「もう……辛くて……」
佐藤:「辛かったですね」
未来:「生きてる意味なんて…… ないんです」
佐藤:「そうだね。本当に辛い目にあったね。ここまで、本当に頑張ってきたんだよね。」
未来:「いつも、いつも、私が何をしたって言うの?悪い事なんか何一つしていないのに……。いつも嫌な事しか起きない。
未来:本当何で、みんな私をいじめるんだろう?.ねぇ……。私って何なの?」
佐藤:「頑張ってきた人。だよね?自分はそう思うよ。貴方はこんなにも過酷な中一人で頑張って来たんだから、それはもう、凄い事ですよ?!
佐藤:だから今はゆっくりと家で休んでもいいんだよ……。」
未来:「一人で居ると、何だか辛いの」
佐藤:「そしたら、いつでも電話を掛けてきてよ、そしたら辛くないよ。大丈夫。
佐藤:大丈夫だから……。一人じゃない。」
未来:「……一人だよ、一人だもん。」
佐藤:「一人じゃないよ。大丈夫だよ。」
未来:「また、掛けてもいい?」
佐藤:「うん、待ってるね。」
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0:電話が切れる__
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佐藤:「ふぅ~あ~」あくび。
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佐藤:「もう、夜中の3時か……。」
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:間 3秒
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0:場面変更。未来宅。
:
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:
未来M:「私も、何もしなかったわけじゃない。
未来M:周囲に相談をしようとしてもお前が弱いからだろ?とか恥さらしとかで、理解して貰えない事が多かった。
未来M:信頼出来るのが自分しかいないと言う感覚。まるで、自分以外は全部、鬼に見えてしまうような…… そんな感じ」
:
:
:
未来M:「"最後の砦" "藁をもすがる"
未来M:そんな思いで私は、いのちの電話に掛けたんだ。相談窓口の一覧に掲載されている番号に片っ端から掛けて、ようやく繋がった"一本の電話"。
未来M:優しそうな"声"の方が、電話に出てくれた。
未来M:世界中でその方一人だけが、私のこと、私の過去を知ってくれていると感じた。」
:
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:
未来:「死にたい…… 助けて……。もう無理……。」
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0:間 3秒
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0:場面変更。いのちの電話センター。
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佐藤M:「思い悩む人にとっての救いの手となる、相談窓口。だが、しかし、ここにも課題が。
佐藤M:センターでは1人あたり三十~四十分以上電話をしている為、電話が繋がらないと言う声が尽きない。電話を掛けても繋がるのはごく一部。
佐藤M:慢性的に人手不足を多くのボランティア相談員でなんとか乗り切っていると言うのが現状だ。
佐藤M:運営費も寄付や助成金頼みのため規模を拡大する余裕がない。」
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:
佐藤:「そろそろ帰るか……。」
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:___
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:間 3秒
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:___
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0:次の日。
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:
佐藤M:「よく、モチベーションは何だ?と聞かれる事がある。
佐藤M:手堅く言うと、やっぱりボランティアの中で、自分の学びが多いということ。
佐藤M:それから、相談員同士の仲間意識が出来る。それが自分の人生を豊かにさせる。」
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0:電話が鳴る。電話に出る。
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:
未来:「……また掛けちゃった」
佐藤:「辛いの一言でもいいんだ。貴方がまた掛けてくれるなら。」
未来:「ねぇ、貴方は死にたいとかってならないの?」
佐藤:「なる時はなるよ。でもね、この"いのちの電話"でね、色んな人達と話していく中で、得るものがいっぱいあったんだ」
未来:「そうなんだ…… 」
佐藤:「うん」
未来:「学校行かなくてもいいかな?」
佐藤:「行かなくてもいいよ。頑張って、踏ん張って、耐えてしのいだんだから充分。
佐藤:だからね、これからは、誰にも言えない悩みとかをまた打ち明けれる時とかにまた掛けてきてよ」
未来:「うん…… また掛けるね。」
佐藤:「うん……。」
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0:電話が切れる__
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:
佐藤M:「貴方は笑ってくれた。声が少し明るくなったように思う。それが自分がこのボランティアで得たものだ。
佐藤M:こんなにも、この"いのちの電話"は人の為にあり続けている。自分もその一員なんだと。」
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0:間 3秒
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0:次の日。夜中。
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0:場面変更。未来宅。
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未来:「死にたい...」
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未来M:「もう、どうでも良くなった。私に期待をしてくれる人はいない。私に対して微笑み掛けてくれる人もいない。
未来M:たった一本のいのちの電話に繋がるのにも苦労する。何度も、何度も、掛け続ける。
未来M:また、あの人の声が聞きたい。でも繋がらない。繋がらない。」
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未来:「あれ?見放された?もう"死ね"って事なの?」
未来:「繋がってよ……。繋がってってば。」
:
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未来M:「そして、流れて来るのは、冷たい音声ガイダンスで、大変申し訳ありませんが、回線が混み合ってます。と。
未来M:それだけが、私の孤独な部屋を包み込んでいく。」
:
:
未来:「もう、掛けるのやめようかな」
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0:間 3秒
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0:場面変更。いのちの電話センター。
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:
佐藤M:「一九五三年。イギリスの牧師が始めたとされる、いのちの電話。
佐藤M:全国に五十箇所あり、二十四時間、毎日、対応しているのが約二十箇所。」
:
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:
佐藤:「……今日は、どれだけの電話が掛かって来るのかな」
:
:
0:電話を取る。
:
佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
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0:間 3秒
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0:次の日。未来宅。
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未来:「やっぱり、声が聞きたい。一人だと寂しいし、怖くなる。でもまた、繋がらないのかな……?」
:
:
未来M:「二回目、三回目、四回目、五回目、繋がらない度に心が擦り減ってゆく。」
:
:
未来:ODでもしようかな……。もう、嫌だよ。世界が私の存在を消そうとしているようで。
未来:六回目、七回目……。繋がった。」
:
:
佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
未来:「繋がった……。」
佐藤:「もしかして、繋がらなかったのかな?」
未来:「昨日からずっと……。繋がらなくて。」
佐藤:「人手不足で……。ごめんなさい。」
未来:「でもね、また話せるからいいんだ」
佐藤:「今日はなにかあったの?」
未来:「怖くて、寂しくて……。ただそれだけ……。それだと、駄目かな?」
佐藤:「いいんですよ。それだけでも。」
:
佐藤M:「ほんの一言でもいい。ほんの僅かな掛け合いでも救われる命だってあるのだから。だから自分はこのボランティアを……。」
未来:「(さえぎって)もう、学校は休んだ」
佐藤:「ゆっくりと、休んでいいんだよ」
未来:「私、貴方に会ってみたいな……。」
佐藤:「……それは無理だよ。出来ない。だって、もっと、他にも、沢山の人が居る。貴方の事を理解してくれる人が。
佐藤:でも、自分は……。そんなに……。いい人間じゃな……いよ」
:
:
0:少しの間。
:
:
未来:「……そっか、そうだよね。駄目だよね。」
:
:
:
佐藤M:「二十四時間、毎日、眠る事の無い電話。受話器の向こうの相談員に救いを求める人達がいる。
佐藤M:とある一室にその電話は繋がる。年間おおよそ一万五千件の相談を受ける」
:
:
佐藤:「うん……。ごめん...。」
:
:
未来M:「相談は匿名、無料。相談員も名乗らない。それっきりの関係だ。
未来M:でも、貴方の"声"だけは鮮明に覚えていた。」
:
:
未来M:「名前も知らない。優しい声。貴方の声だけは、決して忘れる事はない」
:
:
未来:「……もう、いかなくちゃ」
佐藤:「どこに?」
未来:「内緒」
:
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0:間 3秒
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0:次の日。佐藤宅。
:
:
佐藤M:「テレビを付けると、ニュースが流れた。」
:
:
0:(未来役の方が読んで下さい)
:
ニュース:昨夜、練馬区の西武池袋線、練馬高野台(ねりまたかのだい)駅で、ホームに飛び降りた高校生が、急行電車にはねられ死亡しました。
ニュース:自殺と見られますが、遺書は見つかっておらず、警視庁が詳しい経緯(いきさつ)を調べています。
:
:
佐藤:「……行くか」
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:
0:間 3秒
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:
0:場面変更。いのちの電話センター。
:
:
:
佐藤M:「これからも心と身体が許す限り、自分は、人々の声に向き合って行きます」
:
佐藤M:「たとえそれが、誰かにとっては偽善にしかならなかったとしても」
:
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0:電話が鳴る。電話に出る。
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佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
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0:新聞を読む佐藤。
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佐藤M:「世界で年間八十万人、四十秒に一人が自ら命を絶つ現在、死にたい程辛い気持ちに寄り添う人達が居る。」
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佐藤M:「厚生労働省と警察庁の発表によると、二〇二〇年の自殺者は前年より九〇八人、上回る。
佐藤M:およそ二万人。これは二〇二〇年に交通事故で亡くなった約三千人の七倍にもなるといわれている。また、東京の自殺者は二万人……。」
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未来:「いのちのこえ」
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佐藤M:「自殺者は二〇〇九年のリーマンショック以降毎年減少していたが、十一年のぶりの増加となった。
佐藤M:新型ウイルスによるストレスや経済への不安など、さまざまな事が原因で自殺を考える人が増えているようだ……。」
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佐藤:「このような悩みや不安を抱える人の相談に乗るのが社会福祉法人"いのちの電話"」
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佐藤M:「"いのちの電話"は全国51か所にある。
佐藤M:いのちの電話の発祥はイギリス。一九五三年に当時自殺率が高かったイギリスでロンドンから始まり、現在五十ヶ国以上に設立されている。」
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0:コーヒーをテーブルに置く。
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佐藤:「そして、自殺は世界でも解決すべき課題となっている、と。」
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0:新聞を読み終える佐藤。
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0:間 3秒
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0:場面変更。いのちの電話センター。
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佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
未来:「あの……。」
佐藤:「どうしましたか?」
未来:「あの、生きていても……楽しい事が何一つ起こらない気がして」
佐藤:「うん……。」
佐藤M:「相談員は相手の話に耳を傾ける傾聴(けいちょう)が基本。」
未来:「それでもう……。生きてていいのかな?ってなります」
佐藤:「うん……。うん……。自分もそんな事ばかりです。でも貴方はその上で貴方を理解して。
佐藤:だけど自分は自分を理解出来ないですから……。自分を理解出来る貴方はしっかりと生きていると自分は思います。」
未来:「しっかり……なんて、生きて……ない。今でも、死にたいくらいにはもうボロボロだよ……」
佐藤:「……うん」
未来:「私って何の為に産まれたのかな?って、毎日……毎日…… 考えてる。」
佐藤:「自分も同じです。何の為に産まれたんだろうって……。常に考えてます。
佐藤:でもそれって、多分ですけど、答えは出て来ないですよね。だからこそ、明日を生きてみようかなってなるんです。」
未来:「知った風な事を言わないで!! 私が毎日どんな思いをしているのかもわからないくせに!!」
佐藤:「……うん。なら、教えてください。一人で抱え込まないでください。」
未来:「…学校でイジメに合ってるの。しかも毎日、毎日……。
未来:机には死ねって描かれたり毎日物を隠されたり、持ってきたお弁当を全部捨てられたり。最近では、自殺しろ!とかって言ってくるし……。
未来:もう何が何だかわからないよ。」
佐藤:「辛かったね。お疲れ様。大丈夫。貴方はもう、頑張ったから、逃げてもいいんだよ……。
佐藤:辛かったら、逃げればいい。無理に挑まなくてもいいんだ。だって貴方はもう頑張って来たんだから……。」
未来:「私、頑張った?って?」
佐藤:「その苦しみに耐えてきたんだよね?もう充分じゃない……。」
佐藤M:「いのちの電話は一九七十年代から、日本各地に広がり、現在は五十箇所に拠点がある。
佐藤M:年間の相談件数は約六十三万六千件以上の相談に応じ、多くの人々を支えている。」
未来:「……うん。私、頑張ったんだよね?」
佐藤:「そうです。頑張ったんです。」
未来:「……また電話してもいい?」
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0:佐藤は微笑む。
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佐藤:「いつでもどうぞ」
未来:「うん、もう何だか眠い、また明日も掛けるね。おやすみなさい。」
佐藤:「おやすみなさい。」
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:電話が切れる__
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佐藤:「一時間二十分……。コーヒーでも飲むか。」
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:自販機の前に立ち、コーヒーのボタンを押す佐藤。
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佐藤:「やべ、間違えて、カフェラテ缶買ってしまった……。ブラック缶が良かったのに」
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:間 3秒
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:次の日__
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佐藤M:「いのちの電話はボランティアだ。また、一年半から二年程度の研修を行う。
佐藤M:そして、当然ながらボランティアの為研修費も自費となる。研修費用はおおよそ五万円が掛かる。
佐藤M:それに合宿費用も含まれ、三万円程度かかる。当然これも自腹。交通費も出ないし、食事も補助ナシ。」
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佐藤M:「研修ではカウンセリングや切り返しなどを学び、後半はロールプレイングを行う。
佐藤M:……最後の砦と言われているこの場所。だからこそ、自分の発する言葉には責任を持たなければならない。」
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佐藤M:「相手から「辛いんです」と言われたら、「辛いんですね」というようにそのまま返す事で肯定と受け取って貰える。
佐藤M:しかし、この仕事は、基本的に「相手の話を聞く」と言う事がメインになるらしく、アドバイスの方法などはほとんど教わらない。
佐藤M:だって、そうだろう?今まで色んな方法でここまで、頑張って来た人に簡単に「こうしたら?」なんて言える筈が無い。」
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0:こうして佐藤は約三十回の研修を経て認定を受けた__
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0:電話が鳴る。電話に出る。
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佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
未来:「もう……辛くて……」
佐藤:「辛かったですね」
未来:「生きてる意味なんて…… ないんです」
佐藤:「そうだね。本当に辛い目にあったね。ここまで、本当に頑張ってきたんだよね。」
未来:「いつも、いつも、私が何をしたって言うの?悪い事なんか何一つしていないのに……。いつも嫌な事しか起きない。
未来:本当何で、みんな私をいじめるんだろう?.ねぇ……。私って何なの?」
佐藤:「頑張ってきた人。だよね?自分はそう思うよ。貴方はこんなにも過酷な中一人で頑張って来たんだから、それはもう、凄い事ですよ?!
佐藤:だから今はゆっくりと家で休んでもいいんだよ……。」
未来:「一人で居ると、何だか辛いの」
佐藤:「そしたら、いつでも電話を掛けてきてよ、そしたら辛くないよ。大丈夫。
佐藤:大丈夫だから……。一人じゃない。」
未来:「……一人だよ、一人だもん。」
佐藤:「一人じゃないよ。大丈夫だよ。」
未来:「また、掛けてもいい?」
佐藤:「うん、待ってるね。」
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0:電話が切れる__
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佐藤:「ふぅ~あ~」あくび。
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佐藤:「もう、夜中の3時か……。」
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0:場面変更。未来宅。
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未来M:「私も、何もしなかったわけじゃない。
未来M:周囲に相談をしようとしてもお前が弱いからだろ?とか恥さらしとかで、理解して貰えない事が多かった。
未来M:信頼出来るのが自分しかいないと言う感覚。まるで、自分以外は全部、鬼に見えてしまうような…… そんな感じ」
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未来M:「"最後の砦" "藁をもすがる"
未来M:そんな思いで私は、いのちの電話に掛けたんだ。相談窓口の一覧に掲載されている番号に片っ端から掛けて、ようやく繋がった"一本の電話"。
未来M:優しそうな"声"の方が、電話に出てくれた。
未来M:世界中でその方一人だけが、私のこと、私の過去を知ってくれていると感じた。」
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未来:「死にたい…… 助けて……。もう無理……。」
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0:場面変更。いのちの電話センター。
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佐藤M:「思い悩む人にとっての救いの手となる、相談窓口。だが、しかし、ここにも課題が。
佐藤M:センターでは1人あたり三十~四十分以上電話をしている為、電話が繋がらないと言う声が尽きない。電話を掛けても繋がるのはごく一部。
佐藤M:慢性的に人手不足を多くのボランティア相談員でなんとか乗り切っていると言うのが現状だ。
佐藤M:運営費も寄付や助成金頼みのため規模を拡大する余裕がない。」
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佐藤:「そろそろ帰るか……。」
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:間 3秒
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佐藤M:「よく、モチベーションは何だ?と聞かれる事がある。
佐藤M:手堅く言うと、やっぱりボランティアの中で、自分の学びが多いということ。
佐藤M:それから、相談員同士の仲間意識が出来る。それが自分の人生を豊かにさせる。」
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0:電話が鳴る。電話に出る。
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未来:「……また掛けちゃった」
佐藤:「辛いの一言でもいいんだ。貴方がまた掛けてくれるなら。」
未来:「ねぇ、貴方は死にたいとかってならないの?」
佐藤:「なる時はなるよ。でもね、この"いのちの電話"でね、色んな人達と話していく中で、得るものがいっぱいあったんだ」
未来:「そうなんだ…… 」
佐藤:「うん」
未来:「学校行かなくてもいいかな?」
佐藤:「行かなくてもいいよ。頑張って、踏ん張って、耐えてしのいだんだから充分。
佐藤:だからね、これからは、誰にも言えない悩みとかをまた打ち明けれる時とかにまた掛けてきてよ」
未来:「うん…… また掛けるね。」
佐藤:「うん……。」
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佐藤M:「貴方は笑ってくれた。声が少し明るくなったように思う。それが自分がこのボランティアで得たものだ。
佐藤M:こんなにも、この"いのちの電話"は人の為にあり続けている。自分もその一員なんだと。」
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0:次の日。夜中。
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0:場面変更。未来宅。
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未来:「死にたい...」
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未来M:「もう、どうでも良くなった。私に期待をしてくれる人はいない。私に対して微笑み掛けてくれる人もいない。
未来M:たった一本のいのちの電話に繋がるのにも苦労する。何度も、何度も、掛け続ける。
未来M:また、あの人の声が聞きたい。でも繋がらない。繋がらない。」
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未来:「あれ?見放された?もう"死ね"って事なの?」
未来:「繋がってよ……。繋がってってば。」
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未来M:「そして、流れて来るのは、冷たい音声ガイダンスで、大変申し訳ありませんが、回線が混み合ってます。と。
未来M:それだけが、私の孤独な部屋を包み込んでいく。」
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佐藤M:「一九五三年。イギリスの牧師が始めたとされる、いのちの電話。
佐藤M:全国に五十箇所あり、二十四時間、毎日、対応しているのが約二十箇所。」
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佐藤:「……今日は、どれだけの電話が掛かって来るのかな」
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0:電話を取る。
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佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
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未来:「やっぱり、声が聞きたい。一人だと寂しいし、怖くなる。でもまた、繋がらないのかな……?」
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未来M:「二回目、三回目、四回目、五回目、繋がらない度に心が擦り減ってゆく。」
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未来:ODでもしようかな……。もう、嫌だよ。世界が私の存在を消そうとしているようで。
未来:六回目、七回目……。繋がった。」
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佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
未来:「繋がった……。」
佐藤:「もしかして、繋がらなかったのかな?」
未来:「昨日からずっと……。繋がらなくて。」
佐藤:「人手不足で……。ごめんなさい。」
未来:「でもね、また話せるからいいんだ」
佐藤:「今日はなにかあったの?」
未来:「怖くて、寂しくて……。ただそれだけ……。それだと、駄目かな?」
佐藤:「いいんですよ。それだけでも。」
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佐藤M:「ほんの一言でもいい。ほんの僅かな掛け合いでも救われる命だってあるのだから。だから自分はこのボランティアを……。」
未来:「(さえぎって)もう、学校は休んだ」
佐藤:「ゆっくりと、休んでいいんだよ」
未来:「私、貴方に会ってみたいな……。」
佐藤:「……それは無理だよ。出来ない。だって、もっと、他にも、沢山の人が居る。貴方の事を理解してくれる人が。
佐藤:でも、自分は……。そんなに……。いい人間じゃな……いよ」
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0:少しの間。
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未来:「……そっか、そうだよね。駄目だよね。」
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佐藤M:「二十四時間、毎日、眠る事の無い電話。受話器の向こうの相談員に救いを求める人達がいる。
佐藤M:とある一室にその電話は繋がる。年間おおよそ一万五千件の相談を受ける」
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佐藤:「うん……。ごめん...。」
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未来M:「相談は匿名、無料。相談員も名乗らない。それっきりの関係だ。
未来M:でも、貴方の"声"だけは鮮明に覚えていた。」
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未来M:「名前も知らない。優しい声。貴方の声だけは、決して忘れる事はない」
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未来:「……もう、いかなくちゃ」
佐藤:「どこに?」
未来:「内緒」
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0:次の日。佐藤宅。
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佐藤M:「テレビを付けると、ニュースが流れた。」
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0:(未来役の方が読んで下さい)
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ニュース:昨夜、練馬区の西武池袋線、練馬高野台(ねりまたかのだい)駅で、ホームに飛び降りた高校生が、急行電車にはねられ死亡しました。
ニュース:自殺と見られますが、遺書は見つかっておらず、警視庁が詳しい経緯(いきさつ)を調べています。
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佐藤:「……行くか」
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0:場面変更。いのちの電話センター。
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佐藤M:「これからも心と身体が許す限り、自分は、人々の声に向き合って行きます」
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佐藤M:「たとえそれが、誰かにとっては偽善にしかならなかったとしても」
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0:電話が鳴る。電話に出る。
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佐藤:「はい、こちら、いのちの電話でございます。」
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