台本概要

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タイトル 『コンビニエント・コミュニケーション』#2
作者名 sazanka  (@sazankasarasara)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 とあるコンビニチェーン。オレンジの看板、「ManyDAY(メニーデイ)」。国道沿い某店舗。
胡乱な店員や客たちの、取るに足らない会話の断片。
―2021年11月5日17時24分―

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
綿巣 32 「綿巣 明(わたす あかり)」。23歳。有名理系大学院生。シフト:週2〜3
樫本 30 「樫本 譲治(かしもと じょうじ)」。34歳。映画マニア。シフト:週3〜5
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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綿巣:いらっしゃいマセぇーっ。 0:客の入店。自動ドアの明るい電子音。 樫本:っしゃいませェ。 樫本:(小声で)ひゅゥ……。おいでなすったぜ……。 綿巣:……、 0:飲料の購入、及び電話料金の支払い。諸々の手続き。 綿巣:ありがとうございマシたァーっ。 樫本:ましたァーっ。 0:退店。店内、客はゼロ。 樫本:……へへっ。手こずらせてくれやがるぜ、子猫ちゃん……。 樫本:だが、俺たちバディの手に掛かりゃ……、 綿巣:(意を決し)樫本さん。 樫本:ンン? 悪いがお嬢ちゃん、俺の事は「ジョージ」、もしくは「K・J」とでも呼んでくれと、 綿巣:(遮り)樫本譲治(かしもとじょうじ)さん。 樫本:ひゅゥ。 樫本:……何だい、週末のダンスのお相手をお探しなら、生憎だが他を当たってもらう他ないな、 綿巣:一旦お客様もハケた事デスし。かねてよりの不可解にアプローチしたいと思うのデスが。 綿巣:質問しても? 樫本:厄介事か。ひゅゥ……。 樫本:OK、こんな擦れっ枯らしの木偶の坊でも、お役に立てるなら何なりと、 綿巣:(遮り)何なんデスか、ソレ。 0:刹那、沈黙。 樫本:ンン……? 綿巣:何故(なにゆえ)、いつもその……、端的に言いマスと海外の映画の、日本語吹替えの方のようにお話をされるんデスかっ? 気になって業務に支障をきたしマスっ! 樫本:……、 綿巣:他の、新人のバイトの人からもっ。アレはどういう意図の何なのかと質問を受けた際、答えに窮してしまいっ。 綿巣:当のご本人に尋ねるより他は、といった次第で実際っ、 樫本:OK、OK。わァかった、わかったよ……。 樫本:ひゅゥ、まいったな、 綿巣:それデスっ、まさしく! あとそのお芝居がかったジェスチャーもっ、 樫本:冷静に。クールに、お嬢ちゃん。 綿巣:クールかつ冷静デス、至ってっ! そしてその呼び方はシンプルにやめてほしいデスっ。 樫本:了解、了解……、前向きに善処しますよ、軍曹殿? 綿巣:ぎィっ! マジのマジでヤメてほしいデスっ! 性分として、理路も文脈も判然としない不条理に曝され続けると脳がストライキを起こしマスっ! 樫本:落ち着きなよ、お転婆娘……。何も俺だって、ココがスラムの路地裏や、戦場だと勘違いしてくっちゃべってる訳じゃァ無い、 綿巣:当たり前デス。それタダのヤバい人デス。 樫本:ただ俺の中のクソッタレな傷跡が……、ココを戦場に変えちまうダケのコトさァ……。 綿巣:ヤバい人だコレ……。 綿巣:ずっと何言ってんデスか……。 樫本:へへ、気になっちまうかい? 危険な男の、危険な過去ってヤツが……、 綿巣:ある意味キケンな男なのは間違い無いデスが……。 綿巣:過去、傷跡、差し支えなければ以前は何を、 樫本:クソったれな職場さ。 樫本:鉄と、油と、煤にまみれて這いつくばってたよ。 綿巣:鉄と油……? 何やら物騒な、 樫本:ガソリンスタンドだ。 綿巣:ガソスタかいっっ!! 樫本:フリーランスの野良犬さ。その前はファミレス、その前はスーパーのレジ打ち……。タフで厄怪な鉄火場を転げ回った挙げ句、ココへ拾われたって寸法だ。 綿巣:「紛争地域を転々と」みたいな感じで言ってるけどタダのフリーターデスそれっ! 樫本:俺に取っちゃ、 樫本:(溜めて) 樫本:同じようなモンさァ……。 綿巣:全然カッコ良くないデスからソレ……。 樫本:ま、要するにだお嬢ちゃ、(言い止め) 樫本:……失礼、そう睨みなさんな。 樫本:言いたいのは、このスタイルを貫いて、俺はドコでだってやって来たんだ、って事さ。伊達や酔狂じゃァなくな……。 綿巣:ファミレスやスーパーでも……? イケたんデスかソレ……、 樫本:尤も、俺の危険な匂いにアテられて、ヤツらの方が2週間と持たなかったようだがなァ。 綿巣:いやクビになっとる……。そのスタイル接客に向いてないデス絶対……。 樫本:ま、入ったばかりのヒヨッ子ちゃんを戸惑わせちまってるんなら、俺も不本意だな……。 樫本:そこんトコ、宜しく言っといてくれよ。 綿巣:戸惑ってるのはわたしも同じデスっ。 綿巣:何なんデスか、ヤンチャな、怖そうな感じの人が来たらピタっとヤメるのに……。明らかに相手を選んでやってマス! 樫本:へへっ。なァ知ってるかい? 樫本:ビビる事を知らない、勇ましい奴ってのはタフ・ガイだが……、 綿巣:はあ。 樫本:(決めに決めて) 樫本:タフ・ガイは、みんな死んだぜ。 綿巣:うるさいデスっ!! 綿巣:ずーーーーーっと世界観がうるさくて1対1だとキツ過ぎマスっ!! 結局何の為のヤツなのかも分かんないし……、 樫本:守る為さ。 綿巣:……っ、 綿巣:まも、る……? 樫本:(ニヒルな空気を醸しつつ) 樫本:臆病でちっぽけな、あの頃の自分をな……。 樫本:思えば昔の俺は、人と触れ合う事に心底恐れをなして、縮み上がってた。 樫本:そんな自分を守る為に、俺は今の俺を創り上げた、ってトコかな。 綿巣:……、人と、円滑にコミュニケーションを取る為のフィルターとして……、極端なキャラクターを演じている、という事デスか……? 樫本:ご明察。流石だ。 樫本:ま、スムーズ且つご機嫌に、シャバを渡って行く為の処世術、とでも言っておこうかな……。 綿巣:あのォー、それ……、 樫本:昔の俺を心配して、事ある毎に「辛かったら帰って来い」とうるさかった親父やお袋や妹も、この新しい俺の姿を見せてやった今じゃァ、 綿巣:お、 樫本:「もう心配無いから親戚の集まりとかには帰って来なくて良いよ」って、 綿巣:イヤ出禁食らってるじゃないデスか家からっ! 綿巣:あのそれ、大変申し上げにくいのデスが、 樫本:とにかく、そういう事だァ。 樫本:ご納得頂けたかな? 綿巣:いえ、 樫本:さァて、煙草煙草、魂のお洗濯、っと……。 綿巣:ちょっとっ、 0:ジョージはハードボイルドに一時退出。 0:レジ内、1人。 綿巣:……イヤ全然納得は行かないし……、 綿巣:……明らかに、やり方を間違えてマス……。 0:【終】

綿巣:いらっしゃいマセぇーっ。 0:客の入店。自動ドアの明るい電子音。 樫本:っしゃいませェ。 樫本:(小声で)ひゅゥ……。おいでなすったぜ……。 綿巣:……、 0:飲料の購入、及び電話料金の支払い。諸々の手続き。 綿巣:ありがとうございマシたァーっ。 樫本:ましたァーっ。 0:退店。店内、客はゼロ。 樫本:……へへっ。手こずらせてくれやがるぜ、子猫ちゃん……。 樫本:だが、俺たちバディの手に掛かりゃ……、 綿巣:(意を決し)樫本さん。 樫本:ンン? 悪いがお嬢ちゃん、俺の事は「ジョージ」、もしくは「K・J」とでも呼んでくれと、 綿巣:(遮り)樫本譲治(かしもとじょうじ)さん。 樫本:ひゅゥ。 樫本:……何だい、週末のダンスのお相手をお探しなら、生憎だが他を当たってもらう他ないな、 綿巣:一旦お客様もハケた事デスし。かねてよりの不可解にアプローチしたいと思うのデスが。 綿巣:質問しても? 樫本:厄介事か。ひゅゥ……。 樫本:OK、こんな擦れっ枯らしの木偶の坊でも、お役に立てるなら何なりと、 綿巣:(遮り)何なんデスか、ソレ。 0:刹那、沈黙。 樫本:ンン……? 綿巣:何故(なにゆえ)、いつもその……、端的に言いマスと海外の映画の、日本語吹替えの方のようにお話をされるんデスかっ? 気になって業務に支障をきたしマスっ! 樫本:……、 綿巣:他の、新人のバイトの人からもっ。アレはどういう意図の何なのかと質問を受けた際、答えに窮してしまいっ。 綿巣:当のご本人に尋ねるより他は、といった次第で実際っ、 樫本:OK、OK。わァかった、わかったよ……。 樫本:ひゅゥ、まいったな、 綿巣:それデスっ、まさしく! あとそのお芝居がかったジェスチャーもっ、 樫本:冷静に。クールに、お嬢ちゃん。 綿巣:クールかつ冷静デス、至ってっ! そしてその呼び方はシンプルにやめてほしいデスっ。 樫本:了解、了解……、前向きに善処しますよ、軍曹殿? 綿巣:ぎィっ! マジのマジでヤメてほしいデスっ! 性分として、理路も文脈も判然としない不条理に曝され続けると脳がストライキを起こしマスっ! 樫本:落ち着きなよ、お転婆娘……。何も俺だって、ココがスラムの路地裏や、戦場だと勘違いしてくっちゃべってる訳じゃァ無い、 綿巣:当たり前デス。それタダのヤバい人デス。 樫本:ただ俺の中のクソッタレな傷跡が……、ココを戦場に変えちまうダケのコトさァ……。 綿巣:ヤバい人だコレ……。 綿巣:ずっと何言ってんデスか……。 樫本:へへ、気になっちまうかい? 危険な男の、危険な過去ってヤツが……、 綿巣:ある意味キケンな男なのは間違い無いデスが……。 綿巣:過去、傷跡、差し支えなければ以前は何を、 樫本:クソったれな職場さ。 樫本:鉄と、油と、煤にまみれて這いつくばってたよ。 綿巣:鉄と油……? 何やら物騒な、 樫本:ガソリンスタンドだ。 綿巣:ガソスタかいっっ!! 樫本:フリーランスの野良犬さ。その前はファミレス、その前はスーパーのレジ打ち……。タフで厄怪な鉄火場を転げ回った挙げ句、ココへ拾われたって寸法だ。 綿巣:「紛争地域を転々と」みたいな感じで言ってるけどタダのフリーターデスそれっ! 樫本:俺に取っちゃ、 樫本:(溜めて) 樫本:同じようなモンさァ……。 綿巣:全然カッコ良くないデスからソレ……。 樫本:ま、要するにだお嬢ちゃ、(言い止め) 樫本:……失礼、そう睨みなさんな。 樫本:言いたいのは、このスタイルを貫いて、俺はドコでだってやって来たんだ、って事さ。伊達や酔狂じゃァなくな……。 綿巣:ファミレスやスーパーでも……? イケたんデスかソレ……、 樫本:尤も、俺の危険な匂いにアテられて、ヤツらの方が2週間と持たなかったようだがなァ。 綿巣:いやクビになっとる……。そのスタイル接客に向いてないデス絶対……。 樫本:ま、入ったばかりのヒヨッ子ちゃんを戸惑わせちまってるんなら、俺も不本意だな……。 樫本:そこんトコ、宜しく言っといてくれよ。 綿巣:戸惑ってるのはわたしも同じデスっ。 綿巣:何なんデスか、ヤンチャな、怖そうな感じの人が来たらピタっとヤメるのに……。明らかに相手を選んでやってマス! 樫本:へへっ。なァ知ってるかい? 樫本:ビビる事を知らない、勇ましい奴ってのはタフ・ガイだが……、 綿巣:はあ。 樫本:(決めに決めて) 樫本:タフ・ガイは、みんな死んだぜ。 綿巣:うるさいデスっ!! 綿巣:ずーーーーーっと世界観がうるさくて1対1だとキツ過ぎマスっ!! 結局何の為のヤツなのかも分かんないし……、 樫本:守る為さ。 綿巣:……っ、 綿巣:まも、る……? 樫本:(ニヒルな空気を醸しつつ) 樫本:臆病でちっぽけな、あの頃の自分をな……。 樫本:思えば昔の俺は、人と触れ合う事に心底恐れをなして、縮み上がってた。 樫本:そんな自分を守る為に、俺は今の俺を創り上げた、ってトコかな。 綿巣:……、人と、円滑にコミュニケーションを取る為のフィルターとして……、極端なキャラクターを演じている、という事デスか……? 樫本:ご明察。流石だ。 樫本:ま、スムーズ且つご機嫌に、シャバを渡って行く為の処世術、とでも言っておこうかな……。 綿巣:あのォー、それ……、 樫本:昔の俺を心配して、事ある毎に「辛かったら帰って来い」とうるさかった親父やお袋や妹も、この新しい俺の姿を見せてやった今じゃァ、 綿巣:お、 樫本:「もう心配無いから親戚の集まりとかには帰って来なくて良いよ」って、 綿巣:イヤ出禁食らってるじゃないデスか家からっ! 綿巣:あのそれ、大変申し上げにくいのデスが、 樫本:とにかく、そういう事だァ。 樫本:ご納得頂けたかな? 綿巣:いえ、 樫本:さァて、煙草煙草、魂のお洗濯、っと……。 綿巣:ちょっとっ、 0:ジョージはハードボイルドに一時退出。 0:レジ内、1人。 綿巣:……イヤ全然納得は行かないし……、 綿巣:……明らかに、やり方を間違えてマス……。 0:【終】