台本概要
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タイトル | 少女Bは老人に恋をした |
---|---|
作者名 | きいろ* (@kiiro83) |
ジャンル | 童話 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
二人の貧しい少女の話。
134 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語り手 | 不問 | 24 | 物語の語り手。 少女A、少女B、老人、森の自然たちも演じてください。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
語り手:二人の貧しい少女の話。
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語り手:ある遠い国に、少女Aと少女Bがいました。
語り手:二人はお互いのことを知りませんでしたが、とてもよく似ていました。
語り手:二人とも貧しく、汚らしい姿をしていたので、街の人たちに相手にされませんでした。
語り手:彼らは二人の少女の名前すら覚えようとしなかったのです。
語り手:しかし二人はとても優しい心を持っていたので、自然の花や森たちとお友達になることができました。
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語り手:少女Aは恋をしていました。相手はお城にすむコルク王子です。
語り手:王子が馬車で街を通ってお城に戻るとき、一度だけ窓の隙間から王子を見たことがあったのです。
語り手:少女Aはその時、王子に一目ぼれしてしまったのでした。
語り手:この街の女の子はほとんどみんな、コルク王子に恋をしていました。
語り手:王子はとても美しい顔をしていて、優しくて、紳士的だと評判だったからです。
語り手:愛しい気持ちを抑えきれなくなった少女Aは、王子様に会いに行くことを決めました。
語り手:しかしこんなみすぼらしい姿ではお城に入れてもらえません。
語り手:少女Aはまず、川に向かいました。
少女A:こんにちは、美しい川さん
川:おや、どうしたんだい?
少女A:王子様に会いたいのだけど、こんなにみすぼらしい姿の私はどうしたらいいのかしら?
川:ならば私の中にお入りなさい
語り手:少女Aが川の中に入ると、清らかな水の流れが体に付いた泥を落としてくれました。
語り手:ぼさぼさだった髪は風にそよいでこがね色に輝き、茶けた肌は白く透き通りました。
少女A:ありがとう、川さん
語り手:少女Aは嬉しそうに去っていきました。
語り手:少女Aの姿が見えなくなった後、今度は少女Bが川の元を訪れました。
少女B:こんにちは。お願いがあるの
川:君もキレイにしてほしいのかい?
少女B:いいえ。あなたの美味しいお水を分けてほしいの
川:お安いごようさ。好きなだけ持ってお行き
少女B:ありがとう
語り手:少女Bは水筒いっぱいに水を入れていきました。
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語り手:さて、少女Aは次にお花畑に来ていました。
少女A:こんにちは、美しいお花さん。
花:ごきげんよう。何かごよう?
少女A:川さんにキレイにしてもらったの。これなら王子様に会いにいけるかしら?
花:まだ駄目よ。私たちの花をあげるから、髪飾りにしていきなさい
語り手:少女Aは色とりどりの花をもらい、髪につけました。
語り手:それは少女Aにとてもよく似合い、華やかな印象にしてくれました。
少女A:ありがとう、お花さん
語り手:少女Aは嬉しそうに去っていきました。
語り手:すると、今度は少女Bが花の元を訪れました。
少女B:こんにちは。お願いがあるの
花:あなたも花飾りがほしいの?
少女B:いいえ。あなたの実と種を分けてほしいの
花:お安いごようよ。好きなだけ持って行きなさい
少女B:ありがとう
語り手:少女Bは袋いっぱいに花の実と種を入れていきました。
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語り手:さて、少女Aは次に森に架かる虹のところに来ていました。
少女A:こんにちは、美しい虹さん
虹:あら、どうしたの?
少女A:川さんにキレイにしてもらって、花さんに髪飾りをもらったの。これなら王子様に会いにいけるかしら?
虹:最後の仕上げがいるわね。私にまかせて
語り手:虹がそういうと、少女Aの周りを七色の光がとりかこみました。
語り手:その光が消えると、少女Aの着ていた地味な服は七色に輝くドレスに変わっていました。
少女A:ありがとう、虹さん。これで王子様に会いにいけるわ
語り手:少女Aは嬉しそうにお城へと向かっていきました。
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語り手:少女Aはこの街で一番美しい女の子になっていました。
語り手:でも、彼女はもともと美しい娘だったのです。彼女の眩しい笑顔は変わっていません。
語り手:ただみんな気が付かなかっただけなのです。今は誰も少女Aを嫌うものはいませんでした。
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語り手:王子も、少女Aの美しさにひと目で恋におちました。
語り手:二人は結婚し、少女Aはお姫様になり、みんなにクラル姫と呼ばれるようになりました。
語り手:「クラル」、それが少女Aの本当の名前だったのです。
語り手:クラルはようやく街の人たちに名前を覚えてもらえたのでした。
語り手:そして、王子とクラルはお城でいつまでも、仲良く幸せに暮らしました。
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語り手:さて、森に架かる虹の前には、少女Bと一人の老人が立っていました。
語り手:老人はだいぶ弱った様子で、少女Bの手を握っていました。
語り手:少女Bが言いました。
少女B:こんにちは。お願いがあるの
語り手:虹が答えます。
虹:わかっているわ。私を昇っていきなさい
語り手:森に架かっていた虹は、天高く空の彼方まで通じる、七色の架け橋になっていました。
語り手:この老人にとって、今日が天国に旅立たなくてはいけない日なのです。
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語り手:少女Bは老人に、川の水の入った水筒と、花の水と種を入れた袋を渡しました。
少女B:長い旅になるから、途中でお腹がすいたり、のどが渇いたときのために…
語り手:老人はそれを受け取り、柔らかな声で言いました。
老人:ありがとう。何度言っても足りない。
老人:今までこんな老いぼれを愛してくれて、本当にありがとう。そしてさようなら
語り手:少女Bは老人を抱きしめました。
少女B:貧しくて、身寄りのない独りぼっちの私に気づいてくれたのは、あなただけだった。
少女B:何度お礼を言っても足りないのは、私だよ。
少女B:街の女の子はみんな王子様を好きかもしれないけど、私だけはずっと、あなたを愛してる。
語り手:老人は虹の架け橋を渡り、天国までの長い長い旅に出ました。
語り手:少女Bは老人が小さくなるまで、ずっとずっと見ていました。
語り手:小さくなって小さくなって、一点の星の光になるまで見ていました。そして一筋だけ、涙をこぼしてほほえみました。
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語り手:語り継がれた物語の裏に、語り継がれなかった物語があります。
語り手:名を残すことが出来たクラルの陰に、名を残すことが出来なかった少女Bがいます。
語り手:元は同じ貧しい女の子。
語り手:でも、それでいいのです。
語り手:例えクラルのようにみんなに名前を覚えてもらえなくても、星になった老人だけは少女Bのことを覚えています。
語り手:ほら、今日もお空でキラキラ瞬いて、そっと少女Bの本当の名前を呼んでいます。
語り手:私たちには聞こえません。少女Bにだけ聞こえるように、呼んでいます。
語り手:それでいいのです。それだけで、いいのです。
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語り手:二人の貧しい少女の話。
語り手:どっちが幸せ?
語り手:どっちも、幸せ。
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0:おわり
語り手:二人の貧しい少女の話。
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語り手:ある遠い国に、少女Aと少女Bがいました。
語り手:二人はお互いのことを知りませんでしたが、とてもよく似ていました。
語り手:二人とも貧しく、汚らしい姿をしていたので、街の人たちに相手にされませんでした。
語り手:彼らは二人の少女の名前すら覚えようとしなかったのです。
語り手:しかし二人はとても優しい心を持っていたので、自然の花や森たちとお友達になることができました。
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語り手:少女Aは恋をしていました。相手はお城にすむコルク王子です。
語り手:王子が馬車で街を通ってお城に戻るとき、一度だけ窓の隙間から王子を見たことがあったのです。
語り手:少女Aはその時、王子に一目ぼれしてしまったのでした。
語り手:この街の女の子はほとんどみんな、コルク王子に恋をしていました。
語り手:王子はとても美しい顔をしていて、優しくて、紳士的だと評判だったからです。
語り手:愛しい気持ちを抑えきれなくなった少女Aは、王子様に会いに行くことを決めました。
語り手:しかしこんなみすぼらしい姿ではお城に入れてもらえません。
語り手:少女Aはまず、川に向かいました。
少女A:こんにちは、美しい川さん
川:おや、どうしたんだい?
少女A:王子様に会いたいのだけど、こんなにみすぼらしい姿の私はどうしたらいいのかしら?
川:ならば私の中にお入りなさい
語り手:少女Aが川の中に入ると、清らかな水の流れが体に付いた泥を落としてくれました。
語り手:ぼさぼさだった髪は風にそよいでこがね色に輝き、茶けた肌は白く透き通りました。
少女A:ありがとう、川さん
語り手:少女Aは嬉しそうに去っていきました。
語り手:少女Aの姿が見えなくなった後、今度は少女Bが川の元を訪れました。
少女B:こんにちは。お願いがあるの
川:君もキレイにしてほしいのかい?
少女B:いいえ。あなたの美味しいお水を分けてほしいの
川:お安いごようさ。好きなだけ持ってお行き
少女B:ありがとう
語り手:少女Bは水筒いっぱいに水を入れていきました。
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語り手:さて、少女Aは次にお花畑に来ていました。
少女A:こんにちは、美しいお花さん。
花:ごきげんよう。何かごよう?
少女A:川さんにキレイにしてもらったの。これなら王子様に会いにいけるかしら?
花:まだ駄目よ。私たちの花をあげるから、髪飾りにしていきなさい
語り手:少女Aは色とりどりの花をもらい、髪につけました。
語り手:それは少女Aにとてもよく似合い、華やかな印象にしてくれました。
少女A:ありがとう、お花さん
語り手:少女Aは嬉しそうに去っていきました。
語り手:すると、今度は少女Bが花の元を訪れました。
少女B:こんにちは。お願いがあるの
花:あなたも花飾りがほしいの?
少女B:いいえ。あなたの実と種を分けてほしいの
花:お安いごようよ。好きなだけ持って行きなさい
少女B:ありがとう
語り手:少女Bは袋いっぱいに花の実と種を入れていきました。
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語り手:さて、少女Aは次に森に架かる虹のところに来ていました。
少女A:こんにちは、美しい虹さん
虹:あら、どうしたの?
少女A:川さんにキレイにしてもらって、花さんに髪飾りをもらったの。これなら王子様に会いにいけるかしら?
虹:最後の仕上げがいるわね。私にまかせて
語り手:虹がそういうと、少女Aの周りを七色の光がとりかこみました。
語り手:その光が消えると、少女Aの着ていた地味な服は七色に輝くドレスに変わっていました。
少女A:ありがとう、虹さん。これで王子様に会いにいけるわ
語り手:少女Aは嬉しそうにお城へと向かっていきました。
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語り手:少女Aはこの街で一番美しい女の子になっていました。
語り手:でも、彼女はもともと美しい娘だったのです。彼女の眩しい笑顔は変わっていません。
語り手:ただみんな気が付かなかっただけなのです。今は誰も少女Aを嫌うものはいませんでした。
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語り手:王子も、少女Aの美しさにひと目で恋におちました。
語り手:二人は結婚し、少女Aはお姫様になり、みんなにクラル姫と呼ばれるようになりました。
語り手:「クラル」、それが少女Aの本当の名前だったのです。
語り手:クラルはようやく街の人たちに名前を覚えてもらえたのでした。
語り手:そして、王子とクラルはお城でいつまでも、仲良く幸せに暮らしました。
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語り手:さて、森に架かる虹の前には、少女Bと一人の老人が立っていました。
語り手:老人はだいぶ弱った様子で、少女Bの手を握っていました。
語り手:少女Bが言いました。
少女B:こんにちは。お願いがあるの
語り手:虹が答えます。
虹:わかっているわ。私を昇っていきなさい
語り手:森に架かっていた虹は、天高く空の彼方まで通じる、七色の架け橋になっていました。
語り手:この老人にとって、今日が天国に旅立たなくてはいけない日なのです。
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語り手:少女Bは老人に、川の水の入った水筒と、花の水と種を入れた袋を渡しました。
少女B:長い旅になるから、途中でお腹がすいたり、のどが渇いたときのために…
語り手:老人はそれを受け取り、柔らかな声で言いました。
老人:ありがとう。何度言っても足りない。
老人:今までこんな老いぼれを愛してくれて、本当にありがとう。そしてさようなら
語り手:少女Bは老人を抱きしめました。
少女B:貧しくて、身寄りのない独りぼっちの私に気づいてくれたのは、あなただけだった。
少女B:何度お礼を言っても足りないのは、私だよ。
少女B:街の女の子はみんな王子様を好きかもしれないけど、私だけはずっと、あなたを愛してる。
語り手:老人は虹の架け橋を渡り、天国までの長い長い旅に出ました。
語り手:少女Bは老人が小さくなるまで、ずっとずっと見ていました。
語り手:小さくなって小さくなって、一点の星の光になるまで見ていました。そして一筋だけ、涙をこぼしてほほえみました。
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語り手:語り継がれた物語の裏に、語り継がれなかった物語があります。
語り手:名を残すことが出来たクラルの陰に、名を残すことが出来なかった少女Bがいます。
語り手:元は同じ貧しい女の子。
語り手:でも、それでいいのです。
語り手:例えクラルのようにみんなに名前を覚えてもらえなくても、星になった老人だけは少女Bのことを覚えています。
語り手:ほら、今日もお空でキラキラ瞬いて、そっと少女Bの本当の名前を呼んでいます。
語り手:私たちには聞こえません。少女Bにだけ聞こえるように、呼んでいます。
語り手:それでいいのです。それだけで、いいのです。
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語り手:二人の貧しい少女の話。
語り手:どっちが幸せ?
語り手:どっちも、幸せ。
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