台本概要
571 views
タイトル | ゼロ・クロイツ |
---|---|
作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
クリスタル・メモリア という、一つの世界の中のお話。 剣と魔法の世界、ナギア。 神、ラトラが創り出した原初の精霊たちは、自身の国を作り、ヒトを造った。 原初の精霊が作らず、ヒトが造った国の闇の部分。そんな失われた街、ロストで二人は出会う。 571 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ゼロ | 男 | 115 | 自分に関する記憶等が一切ないことから、ゼロと名付けられる。闇の属性に適性を持っていた。 |
レニクス | 男 | 113 | ハーフエルフであるが、人の血が濃く、見た目は人。だが、見た目に反して、歳はとっているらしい。火の属性の適性を持っている。兄貴肌。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:クリスタル・メモリア
0:0の章
0:ゼロ・クロイツ
0:
レニクス:ここがロスト…ね
レニクス:確かに"何も無い"…
レニクス:失われた町としては申し分ないな
0:【レニクスに後ろから誰かがぶつかる】
ゼロ:っ…
レニクス:痛っ…おい、気をつけろ
レニクス:前向いて歩けよ
ゼロ:……
レニクス:待て
ゼロ:ッッ!
レニクス:少し…話そうぜ
0:
レニクス:俺は優しいんだ、分かるか?
レニクス:盗ったもん出してみろ
ゼロ:いつ…
レニクス:ん?
ゼロ:いつ分かったの?
レニクス:ぶつかった時から…最初からだな
レニクス:まぁ、そのままソレはお前にやってよかったが
レニクス:ちょっと気分が変わった
ゼロ:え…なんで?くれようとしたの?
レニクス:お前、親は?
ゼロ:……
レニクス:名前は?
ゼロ:……
レニクス:親も名前も無い…か
レニクス:ははっ!流石ロスト
レニクス:住んでる奴も何もないんだな
ゼロ:思い出も…
レニクス:ん?
ゼロ:僕には何もない
ゼロ:親って人も、名前も、住む場所も
ゼロ:ここに来るまでの思い出も
レニクス:じゃあ俺がお前にやるよ
ゼロ:…え?
レニクス:名前だ
レニクス:お前には何も無い、だから
レニクス:"ゼロ"
ゼロ:ゼロ…
レニクス:ゼロ、一緒に来るか?
レニクス:なにせ俺は今日初めてここに来たんだ
レニクス:どこに何があるかもわからねぇ
レニクス:だから案内しろ、ゼロ
ゼロ:あっ…えっと
レニクス:ん?…あぁ、俺か
レニクス:俺はレニクス、よろしくな
ゼロ:(それが、俺が初めてアイツに出会った思い出
ゼロ:何も無かった俺が、初めて何かを手に入れた思い出)
0:
レニクス:本当にその日暮らしってやつだな
レニクス:ここ奴らは皆んなそうなのか?
ゼロ:大人はお金を持ってる
ゼロ:だから住む場所がある
レニクス:子どものお前はお金がないから
レニクス:住む場所がないって?
ゼロ:お金があれば宿に泊まれる
ゼロ:なかったらそこら辺で寝る
レニクス:お前、歳は?
ゼロ:わからない…
レニクス:ふーん…推定10歳くらいか?
レニクス:いつからここにいるんだ?
ゼロ:多分2、3年前から
レニクス:なるほどな
レニクス:ここが宿だな?
ゼロ:レニクスは余所者だから
ゼロ:お金いっぱい取られるよ
ゼロ:宿って言ってもここはそういう場所だから
レニクス:ははっ!任せとけ
0:
ゼロ:凄い、さっきの何?
レニクス:長く生きてりゃ、色んなものを見るんだよ
レニクス:そんで、さっきのは魔法だ
ゼロ:魔法は知ってる
ゼロ:けど、レニクスの魔法は見たことない
レニクス:ほー、お前、良い目を持ってるな
ゼロ:良い目?
レニクス:普通はどんな魔法であれ、変化はないんだよ
レニクス:それを見たことないと言うお前は
レニクス:普通じゃ見えないものが見えてる
ゼロ:普通じゃ見みえないもの?
レニクス:あぁ、魔力の流れ
レニクス:魔法の真髄だな
ゼロ:だけど僕は魔法得意じゃないし
ゼロ:何もできないよ
レニクス:お前の属性加護は何だ?
ゼロ:わからない…
レニクス:…そうだった、お前には何も無いんだった
レニクス:じゃあ、いつも使う魔法は?
ゼロ:基本の魔法しか使わない
ゼロ:けど全然出来ない
レニクス:基本の魔法?…あぁ、五大属性か
レニクス:じゃあ、こんなのはどうだ?
レニクス:『ダーク』
ゼロ:えっ!?暗くなった!
レニクス:これは闇魔法だ
レニクス:ついでに『ライト』
ゼロ:今度は明るくなった
レニクス:これは光魔法だ
レニクス:これは初歩中の初歩
レニクス:誰にでも使えるが、属性加護が闇と光はほとんどいない
レニクス:本来なら神殿で見てもらうのが早いが
レニクス:ここに居たらそれもできないだろうな
ゼロ:…『ダーク』
レニクス:!?これは…
ゼロ:レニクスの時より…暗い?
レニクス:なるほどな、お前の属性加護は闇だな
ゼロ:闇…
レニクス:この町を案内する代金代わりだ
レニクス:俺がお前に魔法を教えてやる
ゼロ:(それが、俺が初めて魔法を知った思い出)
0:
0:【6年後】
ゼロ:その程度で俺に喧嘩を売ったのか?お前ら
ゼロ:目障りだな、消えろ
ゼロ:『ダークネス・スピア』
0:
レニクス:また喧嘩か?
ゼロ:相手の実力も、自分の実力もわからない奴らだよ
レニクス:俺のおかげで強くなれた奴がよく言うよ
ゼロ:うるせぇ
ゼロ:それで?手かがりは見つけたのかよ?
レニクス:いいや、全然だな
レニクス:ここに6年もいるのに全く謎だ
ゼロ:6年…全然老けないなレニクスは
レニクス:あぁ、言ってなかったか?
レニクス:俺はエルフとのハーフ
レニクス:ハーフエルフだ
レニクス:人間の血を濃く受け継いだから
レニクス:見た目は人間だがな
レニクス:これでも老けと寿命には自信があるぜ
ゼロ:便利な身体だな
レニクス:あぁ、だからこそ6年も無駄にできる
ゼロ:無駄なのかよ
レニクス:無駄じゃ無いかもしれないが
レニクス:ここまで手がかりがないとな
レニクス:けどまぁ、魔原書以外にも色々やってるし
レニクス:そう簡単でもないのはわかっていた
レニクス:10年はかかると見ていたからな
ゼロ:……
ゼロ:本当にこんな所にあるのかよ
ゼロ:その…魔原書ってやつは
レニクス:ある、だから俺がここにいる
ゼロ:そんなモン手に入れてどうすんだよ
レニクス:……いい機会だ
レニクス:お前も触れてこなかった魔原書について
レニクス:教えてやるよ、俺の目的も
ゼロ:目的?
レニクス:五大属性はもう分かるな?
レニクス:火、水、風、雷、土
レニクス:この世界が神によって生み出され
レニクス:その最初の礎になった精霊がいる
レニクス:土が世界を形造り、水が大地を潤し
レニクス:風が世界を平にし、雷が天を創り
レニクス:火が生命を誕生させた
ゼロ:また勉強会か?それは魔法を教えてもらった時
ゼロ:何回も聞いた話だ
レニクス:あぁ、そうだ
レニクス:ここからが本題だ
レニクス:そんな原初の精霊を五大精霊と言う
レニクス:全員が仲良く一つの場所で暮らすことはなかった
レニクス:だから世界が落ち着いた頃
レニクス:この五大精霊は自分たちの国を創った
ゼロ:国?
レニクス:お前は外に興味がなかったから
レニクス:今まで言わなかったが
レニクス:このロストの外には
レニクス:五つの国があった
ゼロ:なるほどな
ゼロ:その精霊たちが創った国に
ゼロ:俺たち以外の誰かがいるわけだ
レニクス:火のシュテンが創ったコクヨウ
レニクス:水のエヴァが創ったルーアン
レニクス:風のヴァーが創ったハルモニア
レニクス:土のオルタが創ったゼルメトア
レニクス:雷のセイクーが創ったトールゥ
ゼロ:聞いたことも無かった
ゼロ:そうか、この外に…
レニクス:だが、神の悪戯か
レニクス:精霊以外の命が生まれた少し後に
レニクス:この五大精霊たちは封印された
ゼロ:神に封印された?
レニクス:あぁ、そうだ
レニクス:神がこの世界で力を付けすぎた精霊を恐れたのか
レニクス:また別の何かか…
レニクス:その封印したものが魔原書
レニクス:五大精霊になぞられ、五大魔原書と言われている
ゼロ:つまり、その魔原書には五大精霊が眠っている?
ゼロ:それを手に入れれば精霊の力を使役して
レニクス:ははっ!察しがいいな
レニクス:その通りだ
レニクス:魔原書に認められれば
レニクス:封印を解くことができる
レニクス:俺はそれをしなくてはいけない
ゼロ:それが目的ってやつか
レニクス:いいや、それはただの前段階
レニクス:俺の目的は
0:
レニクス:世界を壊すことだ
ゼロ:世界を壊す…?
レニクス:あぁ、言っただろ?
レニクス:この外には五つの国があった、と
レニクス:昔は偉大な精霊が創った国を保持し
レニクス:互いに不可侵であり、国独自に発展した
ゼロ:なるほどな
ゼロ:外の世界もここと変わらないわけだ
ゼロ:その後に奪い合いが始まった
レニクス:あぁ、意思ある命は傲慢で強欲だ
レニクス:自分の国に無いものを欲しがり
レニクス:他の国を侵略するようになった
レニクス:だが、中には素晴らしい人間もいた
レニクス:そして創ったんだ
ゼロ:創る?
レニクス:6個目の国
レニクス:人間の創った国、エデンガーデン
ゼロ:人間の国…
レニクス:他の国を侵略するということは戦争だ
レニクス:死者も出れば難民も出た
レニクス:だから、エデンガーデンは全国に対し
レニクス:中立であり不可侵を決め
レニクス:全ての難民を受け入れた
ゼロ:はっ、なんともまぁ素晴らしい話じゃねーか
ゼロ:美しい人間もいるってわけだ
レニクス:ただ、それも昔の話だ
ゼロ:てことは、エデンガーデンも攻めたのか
レニクス:いいや、違う
レニクス:あくまで中立で不可侵だ
レニクス:だが、それで上手くいくとは思えない
レニクス:それでもあの国は発展を続けている
レニクス:難民たちが自国の技術を流したとも
レニクス:言われているが、どうもきな臭い
ゼロ:技術を流してるんだろ?
ゼロ:そこから発展してもおかしくない
ゼロ:難民と言えど全国の人間が集まっているんだ
ゼロ:技術力が高くなったのも納得はいくが?
レニクス:…俺がな、不審に思っているのは
レニクス:此処なんだよ、ゼロ
ゼロ:…ロスト
レニクス:あぁ、もしエデンガーデンが光の国だとすれば
レニクス:ここ、ロストは闇の国だ
レニクス:ゴミ溜め、廃棄場
レニクス:そんな呼ばれ方もしているんだ
ゼロ:確かにここはそう言う場所だ
ゼロ:だが、なぜロストが出てくる
レニクス:ロストを創ったのがエデンガーデンだ
ゼロ:…何?
レニクス:最初は国内で犯罪を犯した者を
レニクス:島流し的にここを創り集めたのが始まり
レニクス:今ではお前みたいな育児放棄のガキや
レニクス:何も持たないモノが集まる国になった
レニクス:エデンガーデンも手が出せないほどに
レニクス:ここは闇に堕ちてしまったんだよ
ゼロ:……
レニクス:世界から断絶された場所、ロスト
レニクス:光の国といえど闇に手を差し伸べる光は
レニクス:もう無いらしい
レニクス:それにこの場所を創った奴らは死に
レニクス:その意思を受け継いだやつらも
レニクス:今やエデンガーデンの奥深く、老人共の巣窟だ
ゼロ:そうか
ゼロ:実権を握っているわけではないが
ゼロ:裏に根付いた何かがあるわけか
レニクス:だからだ
レニクス:戦争だの、ゴミ溜めだの
レニクス:この腐った世界を一度壊す
レニクス:そしてまた作り上げるんだ
レニクス:精霊の国を
ゼロ:その為の魔原書
レニクス:俺の属性加護は火
レニクス:そしてここ、ロストに眠るのが
レニクス:火の魔原書シュテンだ
ゼロ:本当にあるのかよ
ゼロ:6年も何も見つけられないのに
レニクス:ある
ゼロ:たとえ魔原書を見つけてもレニクスだけで
ゼロ:国なんか作れるのかよ
レニクス:俺だけじゃない
レニクス:俺の他にも魔原書を探している
レニクス:俺たちは世界を壊す者だ
ゼロ:明日
レニクス:ん?
ゼロ:明日から俺も手伝う
ゼロ:いいだろ?
レニクス:魔原書はやらんぞ
ゼロ:はっ、この国では取ったモン勝ちなんだよ
レニクス:ははっ!だったら俺も本気にならないとな
0:
0:【共に探し始めて数日経った頃】
ゼロ:と言っても6年も探した場所だ
ゼロ:そう簡単には見つからないよな
ゼロ:今日はここまでか
ゼロ:…?…なんだ?
レニクス:どうしたゼロ?
ゼロ:呼んでいる…?
ゼロ:…ッ!レニクス!
レニクス:何か見つけたか?
ゼロ:見えるぞ、魔力の流れが
レニクス:…何?
レニクス:俺には全く見えないな
ゼロ:俺だけに見える流れ…?
ゼロ:辿ろう
0:
ゼロ:ここで途切れている…
ゼロ:なんだ?何もないぞ
レニクス:ははっ!なるほどな
レニクス:ここからは俺の番だな
ゼロ:何をするんだ?
レニクス:超高等隠蔽魔法だな
レニクス:"ここにある"と言われない限り
レニクス:見つけるのは無理だ
レニクス:だが、あるのがわかれば一瞬だ
ゼロ:ッ…これは、地下迷宮?
レニクス:いいじゃねーか
レニクス:魔原書がある場所に相応しい
レニクス:いくぞ、ゼロ
ゼロ:あぁ
ゼロ:(それから俺たちはこの迷宮を歩いた
ゼロ:不思議な魔力に満ちたその場所は
ゼロ:色んな感覚を狂わせた…
ゼロ:もう何年も歩いたような錯覚
ゼロ:道中には魔物も襲いかかる)
レニクス:『フレア・ガンマ』
レニクス:…気を抜くなよゼロ
ゼロ:『ダークネス・アロー』
ゼロ:段々強くなってきているな…
レニクス:近い証拠かもな…行くぞ
ゼロ:はぁ…はぁ…
レニクス:体力ないな、お前
ゼロ:感覚が狂うんだよ、目が良い分
ゼロ:酔った気もする
レニクス:高濃度の魔力がそこら中に充満している
レニクス:自分の魔力を合わせて中和しろ
ゼロ:軽く言いやがって…
レニクス:ははっ!まだまだだな
0:
レニクス:ここが最下層っぽいな
ゼロ:分かるのか?…いや、この質問は不要だな
レニクス:お前も解るようになってきたな
レニクス:この地下迷宮、お前の特訓には役に立ったな
レニクス:噂には聞いていたが、ここが
レニクス:"ラトラ"を冠する迷宮か
ゼロ:ラトラ?
レニクス:ラトラはこの世界を創った神だ
レニクス:つまりは五大精霊を封印した本人だな
レニクス:そして、ラトラの名を冠する迷宮、塔、遺跡
レニクス:そんなモノがどこかにあるらしい、という話は聞いていた
レニクス:もちろんその中にあるであろう宝も
レニクス:神的な力を持つ…とな
ゼロ:蓋を開けてみたら五大精霊ってわけだな
レニクス:あぁ、報酬は魔原書
レニクス:申し分ない
ゼロ:神が創ったものでも
ゼロ:レニクスには敵わないってか?
レニクス:普通の奴らならそこらで死んでるさ
レニクス:俺は魔原書の為に鍛えてるからな
ゼロ:認めさせる…だったか
レニクス:あぁ、手に入れただけじゃ使えない
レニクス:魔原書に認められるほどの力がいる
レニクス:それに俺には時間はあるからな
ゼロ:ハーフエルフってのも便利な身体だな
レニクス:そうでもないさ
レニクス:…ここが最後の扉だ
レニクス:いいか、ゼロ
レニクス:ここからは助けられない
ゼロ:余裕なしって感じだな
レニクス:死んだらそれで終わりだ
ゼロ:死ぬわけないだろ
ゼロ:俺にだってやりたいことはある
レニクス:へぇ…何も無いお前にやりたいことね
ゼロ:行くぞ
レニクス:後でじっくり聞かせてもらうかな
0:
ゼロ:(くっ…そ…魔導ゴーレムに高レベルの魔獣…
ゼロ:それに今まで以上の高濃度の魔力…
ゼロ:感覚が狂うどころの話じゃねぇ…)
レニクス:素晴らしいな
レニクス:ここを突破できなければ
レニクス:そもそも魔原書にすら触れられない…か
レニクス:ゼロの奴は…ま、大丈夫だろ
レニクス:『メテオ・デルタ』
レニクス:さぁ、デク共!誰から死にたい?
ゼロ:魔力で中和…それを意識すれば戦闘が遅れる
ゼロ:実力が足りねぇ…この濃度の中でアイツは戦ってる…
ゼロ:いつも以上の強さでッッ!
ゼロ:(越えられないほどに高い壁…それでも)
ゼロ:俺は強くならなきゃいけねぇんだよ!
ゼロ:『アビス・ランス』
0:
ゼロ:(ダメだ…もう魔力を維持できない…)
ゼロ:く…そっ…
レニクス:はっ、ははっ、
レニクス:ハハハハハ!!
レニクス:ここまで追い詰められたのはいつぶりだ?
レニクス:…なぁ、魔原書
レニクス:俺はお前を従える器か?
レニクス:お前は俺を満足させられるのか?
ゼロ:レニクス…あいつ…
レニクス:見せてみろよ
レニクス:代償ならいくらでも払ってやる
レニクス:…全てを0(ゼロ)に
レニクス:『炎獄・イフリート』
ゼロ:なっ…一瞬で…!
ゼロ:なんだ…この得体の知れない魔力は
レニクス:ははっ!これが魔原書か!
ゼロ:魔力の流れが異質すぎる…
ゼロ:これが五大精霊の魔力…
レニクス:…ん?
レニクス:そうか…なるほどな…
レニクス:よく生きてたな、ゼロ
ゼロ:なんとかな
ゼロ:それが魔原書の力か
レニクス:いいや
レニクス:どうやら面白いヤツみたいだなシュテンは
レニクス:俺を完全には認めていない
レニクス:使えた力はほんの一部だ
ゼロ:そうか
レニクス:早い者の取ったモン勝ち
レニクス:魔原書は俺のモノだな
ゼロ:嫌と言うほどわかった
ゼロ:俺にはまだ力が足りない
レニクス:そんなお前にプレゼントだ
ゼロ:っ…これは
レニクス:属性加護が闇のお前が
レニクス:シュテンの声を聞くなんてありえない
レニクス:お前を呼んだのはコイツだな
ゼロ:これは…魔原書…?
レニクス:五大精霊の後に生まれた精霊
レニクス:それらも同じく力をもっていたが
レニクス:国は作らず何処かに消えたと言われていた
レニクス:二極精霊だ
ゼロ:二極精霊…?
レニクス:闇と光の精霊
レニクス:光のクウォンと闇の
ゼロ:クロイツ
レニクス:知ってたのか?
ゼロ:いや、教えてくれた
レニクス:…なるほどな
レニクス:まさか同じ場所に二冊あるとはな
レニクス:ま、五大魔原書とまでは言われないが
レニクス:それも原初の精霊を宿している
レニクス:認められるほどに強くなれよ
ゼロ:レニクス…俺は
レニクス:じゃあな、ゼロ
レニクス:目的も果たした、俺は戻る
ゼロ:ッ…、あぁ
レニクス:お前も目的ができたんだろ?
ゼロ:…あぁ
レニクス:それだけ聞いといてやるよ
ゼロ:(俺も一緒に連れて行って欲しい…なんて
ゼロ:子どもだった俺ならそう答えていただろう
ゼロ:俺には何も無いから)
ゼロ:俺は外を知る必要がある
ゼロ:それを見て俺は、俺の存在する理由を見つける
レニクス:それが目的か?
ゼロ:今は…な
レニクス:だったら仲間を見つけろ
レニクス:お前に賛同し、ともに歩んでいける仲間
レニクス:お前には何もない、昔も、今も
ゼロ:はっ、今はお前との思い出と、力はあるぜ?
レニクス:いいや、それは俺の思い出だ、俺が貸した力だ
レニクス:お前のモノじゃない
レニクス:これは俺の物語なんだよ、ゼロ
レニクス:気まぐれで窃盗をしたガキを拾い
レニクス:気まぐれで戦い方、生き方を教え
レニクス:自分が欲していた物を手に入れる
レニクス:そしてこれからも物語は続いていく
ゼロ:…なんだよ、それ
レニクス:お前は、ただ俺に言われた通り動き
レニクス:俺の目的の手助けをするように
レニクス:俺の物語の一部になってたんだよ
ゼロ:じゃあ!この感情も、思い出も
ゼロ:全部嘘なのかよ!
レニクス:だから、これからはお前の物語だ
レニクス:俺がいなくなった後、自分で描け
レニクス:ゼロ、何も無い者
レニクス:何も無いなら詰め込め
レニクス:0を満たせ
ゼロ:……
レニクス:何も無いから見えるものもあるだろ
レニクス:もし、お前の物語が、これから歩む道が
レニクス:また俺と重なったなら…見せてみろよ
ゼロ:…あぁ、期待しとけよ
ゼロ:お前を越える存在として
ゼロ:目の前に来てやるよ
レニクス:ははっ!それは楽しみだな
0:【2年後】
ゼロ:これから俺たちは世界を知る
ゼロ:ここに居るお前らは俺の仲間だ、家族だ
ゼロ:お前たちもそうだろ?
ゼロ:家族に手ェ出すヤツには容赦はしねぇ
ゼロ:家族が困ってるなら手を貸す
ゼロ:このゴミ溜めから俺たちは外へ行く
ゼロ:この世界を見極めろ
0:
ゼロ:『深淵・ロストオーバー』
ゼロ:……本当に腐ってんだな、世界は
ゼロ:ロストだけじゃねぇ
ゼロ:どの国もゴミ溜めだ…
ゼロ:昔は犯罪者の国か
ゼロ:だが、今はどうだ?あの場所は
ゼロ:俺たちは…何か世界に仇なしたのか?
ゼロ:だったら俺は…俺たちは
レニクス:よぉ
レニクス:俺は世界を壊す者
レニクス:五大魔原書を従える、黙示録の従者が一人
レニクス:炎獄のレニクスだ
レニクス:お前は?
ゼロ:俺は…
ゼロ:(俺には何も無い…だが、目的はできた)
ゼロ:俺はゼロ
ゼロ:この世界を…解放する者だ
0:第0章ゼロ・クロイツ 完
0:クリスタル・メモリア
0:0の章
0:ゼロ・クロイツ
0:
レニクス:ここがロスト…ね
レニクス:確かに"何も無い"…
レニクス:失われた町としては申し分ないな
0:【レニクスに後ろから誰かがぶつかる】
ゼロ:っ…
レニクス:痛っ…おい、気をつけろ
レニクス:前向いて歩けよ
ゼロ:……
レニクス:待て
ゼロ:ッッ!
レニクス:少し…話そうぜ
0:
レニクス:俺は優しいんだ、分かるか?
レニクス:盗ったもん出してみろ
ゼロ:いつ…
レニクス:ん?
ゼロ:いつ分かったの?
レニクス:ぶつかった時から…最初からだな
レニクス:まぁ、そのままソレはお前にやってよかったが
レニクス:ちょっと気分が変わった
ゼロ:え…なんで?くれようとしたの?
レニクス:お前、親は?
ゼロ:……
レニクス:名前は?
ゼロ:……
レニクス:親も名前も無い…か
レニクス:ははっ!流石ロスト
レニクス:住んでる奴も何もないんだな
ゼロ:思い出も…
レニクス:ん?
ゼロ:僕には何もない
ゼロ:親って人も、名前も、住む場所も
ゼロ:ここに来るまでの思い出も
レニクス:じゃあ俺がお前にやるよ
ゼロ:…え?
レニクス:名前だ
レニクス:お前には何も無い、だから
レニクス:"ゼロ"
ゼロ:ゼロ…
レニクス:ゼロ、一緒に来るか?
レニクス:なにせ俺は今日初めてここに来たんだ
レニクス:どこに何があるかもわからねぇ
レニクス:だから案内しろ、ゼロ
ゼロ:あっ…えっと
レニクス:ん?…あぁ、俺か
レニクス:俺はレニクス、よろしくな
ゼロ:(それが、俺が初めてアイツに出会った思い出
ゼロ:何も無かった俺が、初めて何かを手に入れた思い出)
0:
レニクス:本当にその日暮らしってやつだな
レニクス:ここ奴らは皆んなそうなのか?
ゼロ:大人はお金を持ってる
ゼロ:だから住む場所がある
レニクス:子どものお前はお金がないから
レニクス:住む場所がないって?
ゼロ:お金があれば宿に泊まれる
ゼロ:なかったらそこら辺で寝る
レニクス:お前、歳は?
ゼロ:わからない…
レニクス:ふーん…推定10歳くらいか?
レニクス:いつからここにいるんだ?
ゼロ:多分2、3年前から
レニクス:なるほどな
レニクス:ここが宿だな?
ゼロ:レニクスは余所者だから
ゼロ:お金いっぱい取られるよ
ゼロ:宿って言ってもここはそういう場所だから
レニクス:ははっ!任せとけ
0:
ゼロ:凄い、さっきの何?
レニクス:長く生きてりゃ、色んなものを見るんだよ
レニクス:そんで、さっきのは魔法だ
ゼロ:魔法は知ってる
ゼロ:けど、レニクスの魔法は見たことない
レニクス:ほー、お前、良い目を持ってるな
ゼロ:良い目?
レニクス:普通はどんな魔法であれ、変化はないんだよ
レニクス:それを見たことないと言うお前は
レニクス:普通じゃ見えないものが見えてる
ゼロ:普通じゃ見みえないもの?
レニクス:あぁ、魔力の流れ
レニクス:魔法の真髄だな
ゼロ:だけど僕は魔法得意じゃないし
ゼロ:何もできないよ
レニクス:お前の属性加護は何だ?
ゼロ:わからない…
レニクス:…そうだった、お前には何も無いんだった
レニクス:じゃあ、いつも使う魔法は?
ゼロ:基本の魔法しか使わない
ゼロ:けど全然出来ない
レニクス:基本の魔法?…あぁ、五大属性か
レニクス:じゃあ、こんなのはどうだ?
レニクス:『ダーク』
ゼロ:えっ!?暗くなった!
レニクス:これは闇魔法だ
レニクス:ついでに『ライト』
ゼロ:今度は明るくなった
レニクス:これは光魔法だ
レニクス:これは初歩中の初歩
レニクス:誰にでも使えるが、属性加護が闇と光はほとんどいない
レニクス:本来なら神殿で見てもらうのが早いが
レニクス:ここに居たらそれもできないだろうな
ゼロ:…『ダーク』
レニクス:!?これは…
ゼロ:レニクスの時より…暗い?
レニクス:なるほどな、お前の属性加護は闇だな
ゼロ:闇…
レニクス:この町を案内する代金代わりだ
レニクス:俺がお前に魔法を教えてやる
ゼロ:(それが、俺が初めて魔法を知った思い出)
0:
0:【6年後】
ゼロ:その程度で俺に喧嘩を売ったのか?お前ら
ゼロ:目障りだな、消えろ
ゼロ:『ダークネス・スピア』
0:
レニクス:また喧嘩か?
ゼロ:相手の実力も、自分の実力もわからない奴らだよ
レニクス:俺のおかげで強くなれた奴がよく言うよ
ゼロ:うるせぇ
ゼロ:それで?手かがりは見つけたのかよ?
レニクス:いいや、全然だな
レニクス:ここに6年もいるのに全く謎だ
ゼロ:6年…全然老けないなレニクスは
レニクス:あぁ、言ってなかったか?
レニクス:俺はエルフとのハーフ
レニクス:ハーフエルフだ
レニクス:人間の血を濃く受け継いだから
レニクス:見た目は人間だがな
レニクス:これでも老けと寿命には自信があるぜ
ゼロ:便利な身体だな
レニクス:あぁ、だからこそ6年も無駄にできる
ゼロ:無駄なのかよ
レニクス:無駄じゃ無いかもしれないが
レニクス:ここまで手がかりがないとな
レニクス:けどまぁ、魔原書以外にも色々やってるし
レニクス:そう簡単でもないのはわかっていた
レニクス:10年はかかると見ていたからな
ゼロ:……
ゼロ:本当にこんな所にあるのかよ
ゼロ:その…魔原書ってやつは
レニクス:ある、だから俺がここにいる
ゼロ:そんなモン手に入れてどうすんだよ
レニクス:……いい機会だ
レニクス:お前も触れてこなかった魔原書について
レニクス:教えてやるよ、俺の目的も
ゼロ:目的?
レニクス:五大属性はもう分かるな?
レニクス:火、水、風、雷、土
レニクス:この世界が神によって生み出され
レニクス:その最初の礎になった精霊がいる
レニクス:土が世界を形造り、水が大地を潤し
レニクス:風が世界を平にし、雷が天を創り
レニクス:火が生命を誕生させた
ゼロ:また勉強会か?それは魔法を教えてもらった時
ゼロ:何回も聞いた話だ
レニクス:あぁ、そうだ
レニクス:ここからが本題だ
レニクス:そんな原初の精霊を五大精霊と言う
レニクス:全員が仲良く一つの場所で暮らすことはなかった
レニクス:だから世界が落ち着いた頃
レニクス:この五大精霊は自分たちの国を創った
ゼロ:国?
レニクス:お前は外に興味がなかったから
レニクス:今まで言わなかったが
レニクス:このロストの外には
レニクス:五つの国があった
ゼロ:なるほどな
ゼロ:その精霊たちが創った国に
ゼロ:俺たち以外の誰かがいるわけだ
レニクス:火のシュテンが創ったコクヨウ
レニクス:水のエヴァが創ったルーアン
レニクス:風のヴァーが創ったハルモニア
レニクス:土のオルタが創ったゼルメトア
レニクス:雷のセイクーが創ったトールゥ
ゼロ:聞いたことも無かった
ゼロ:そうか、この外に…
レニクス:だが、神の悪戯か
レニクス:精霊以外の命が生まれた少し後に
レニクス:この五大精霊たちは封印された
ゼロ:神に封印された?
レニクス:あぁ、そうだ
レニクス:神がこの世界で力を付けすぎた精霊を恐れたのか
レニクス:また別の何かか…
レニクス:その封印したものが魔原書
レニクス:五大精霊になぞられ、五大魔原書と言われている
ゼロ:つまり、その魔原書には五大精霊が眠っている?
ゼロ:それを手に入れれば精霊の力を使役して
レニクス:ははっ!察しがいいな
レニクス:その通りだ
レニクス:魔原書に認められれば
レニクス:封印を解くことができる
レニクス:俺はそれをしなくてはいけない
ゼロ:それが目的ってやつか
レニクス:いいや、それはただの前段階
レニクス:俺の目的は
0:
レニクス:世界を壊すことだ
ゼロ:世界を壊す…?
レニクス:あぁ、言っただろ?
レニクス:この外には五つの国があった、と
レニクス:昔は偉大な精霊が創った国を保持し
レニクス:互いに不可侵であり、国独自に発展した
ゼロ:なるほどな
ゼロ:外の世界もここと変わらないわけだ
ゼロ:その後に奪い合いが始まった
レニクス:あぁ、意思ある命は傲慢で強欲だ
レニクス:自分の国に無いものを欲しがり
レニクス:他の国を侵略するようになった
レニクス:だが、中には素晴らしい人間もいた
レニクス:そして創ったんだ
ゼロ:創る?
レニクス:6個目の国
レニクス:人間の創った国、エデンガーデン
ゼロ:人間の国…
レニクス:他の国を侵略するということは戦争だ
レニクス:死者も出れば難民も出た
レニクス:だから、エデンガーデンは全国に対し
レニクス:中立であり不可侵を決め
レニクス:全ての難民を受け入れた
ゼロ:はっ、なんともまぁ素晴らしい話じゃねーか
ゼロ:美しい人間もいるってわけだ
レニクス:ただ、それも昔の話だ
ゼロ:てことは、エデンガーデンも攻めたのか
レニクス:いいや、違う
レニクス:あくまで中立で不可侵だ
レニクス:だが、それで上手くいくとは思えない
レニクス:それでもあの国は発展を続けている
レニクス:難民たちが自国の技術を流したとも
レニクス:言われているが、どうもきな臭い
ゼロ:技術を流してるんだろ?
ゼロ:そこから発展してもおかしくない
ゼロ:難民と言えど全国の人間が集まっているんだ
ゼロ:技術力が高くなったのも納得はいくが?
レニクス:…俺がな、不審に思っているのは
レニクス:此処なんだよ、ゼロ
ゼロ:…ロスト
レニクス:あぁ、もしエデンガーデンが光の国だとすれば
レニクス:ここ、ロストは闇の国だ
レニクス:ゴミ溜め、廃棄場
レニクス:そんな呼ばれ方もしているんだ
ゼロ:確かにここはそう言う場所だ
ゼロ:だが、なぜロストが出てくる
レニクス:ロストを創ったのがエデンガーデンだ
ゼロ:…何?
レニクス:最初は国内で犯罪を犯した者を
レニクス:島流し的にここを創り集めたのが始まり
レニクス:今ではお前みたいな育児放棄のガキや
レニクス:何も持たないモノが集まる国になった
レニクス:エデンガーデンも手が出せないほどに
レニクス:ここは闇に堕ちてしまったんだよ
ゼロ:……
レニクス:世界から断絶された場所、ロスト
レニクス:光の国といえど闇に手を差し伸べる光は
レニクス:もう無いらしい
レニクス:それにこの場所を創った奴らは死に
レニクス:その意思を受け継いだやつらも
レニクス:今やエデンガーデンの奥深く、老人共の巣窟だ
ゼロ:そうか
ゼロ:実権を握っているわけではないが
ゼロ:裏に根付いた何かがあるわけか
レニクス:だからだ
レニクス:戦争だの、ゴミ溜めだの
レニクス:この腐った世界を一度壊す
レニクス:そしてまた作り上げるんだ
レニクス:精霊の国を
ゼロ:その為の魔原書
レニクス:俺の属性加護は火
レニクス:そしてここ、ロストに眠るのが
レニクス:火の魔原書シュテンだ
ゼロ:本当にあるのかよ
ゼロ:6年も何も見つけられないのに
レニクス:ある
ゼロ:たとえ魔原書を見つけてもレニクスだけで
ゼロ:国なんか作れるのかよ
レニクス:俺だけじゃない
レニクス:俺の他にも魔原書を探している
レニクス:俺たちは世界を壊す者だ
ゼロ:明日
レニクス:ん?
ゼロ:明日から俺も手伝う
ゼロ:いいだろ?
レニクス:魔原書はやらんぞ
ゼロ:はっ、この国では取ったモン勝ちなんだよ
レニクス:ははっ!だったら俺も本気にならないとな
0:
0:【共に探し始めて数日経った頃】
ゼロ:と言っても6年も探した場所だ
ゼロ:そう簡単には見つからないよな
ゼロ:今日はここまでか
ゼロ:…?…なんだ?
レニクス:どうしたゼロ?
ゼロ:呼んでいる…?
ゼロ:…ッ!レニクス!
レニクス:何か見つけたか?
ゼロ:見えるぞ、魔力の流れが
レニクス:…何?
レニクス:俺には全く見えないな
ゼロ:俺だけに見える流れ…?
ゼロ:辿ろう
0:
ゼロ:ここで途切れている…
ゼロ:なんだ?何もないぞ
レニクス:ははっ!なるほどな
レニクス:ここからは俺の番だな
ゼロ:何をするんだ?
レニクス:超高等隠蔽魔法だな
レニクス:"ここにある"と言われない限り
レニクス:見つけるのは無理だ
レニクス:だが、あるのがわかれば一瞬だ
ゼロ:ッ…これは、地下迷宮?
レニクス:いいじゃねーか
レニクス:魔原書がある場所に相応しい
レニクス:いくぞ、ゼロ
ゼロ:あぁ
ゼロ:(それから俺たちはこの迷宮を歩いた
ゼロ:不思議な魔力に満ちたその場所は
ゼロ:色んな感覚を狂わせた…
ゼロ:もう何年も歩いたような錯覚
ゼロ:道中には魔物も襲いかかる)
レニクス:『フレア・ガンマ』
レニクス:…気を抜くなよゼロ
ゼロ:『ダークネス・アロー』
ゼロ:段々強くなってきているな…
レニクス:近い証拠かもな…行くぞ
ゼロ:はぁ…はぁ…
レニクス:体力ないな、お前
ゼロ:感覚が狂うんだよ、目が良い分
ゼロ:酔った気もする
レニクス:高濃度の魔力がそこら中に充満している
レニクス:自分の魔力を合わせて中和しろ
ゼロ:軽く言いやがって…
レニクス:ははっ!まだまだだな
0:
レニクス:ここが最下層っぽいな
ゼロ:分かるのか?…いや、この質問は不要だな
レニクス:お前も解るようになってきたな
レニクス:この地下迷宮、お前の特訓には役に立ったな
レニクス:噂には聞いていたが、ここが
レニクス:"ラトラ"を冠する迷宮か
ゼロ:ラトラ?
レニクス:ラトラはこの世界を創った神だ
レニクス:つまりは五大精霊を封印した本人だな
レニクス:そして、ラトラの名を冠する迷宮、塔、遺跡
レニクス:そんなモノがどこかにあるらしい、という話は聞いていた
レニクス:もちろんその中にあるであろう宝も
レニクス:神的な力を持つ…とな
ゼロ:蓋を開けてみたら五大精霊ってわけだな
レニクス:あぁ、報酬は魔原書
レニクス:申し分ない
ゼロ:神が創ったものでも
ゼロ:レニクスには敵わないってか?
レニクス:普通の奴らならそこらで死んでるさ
レニクス:俺は魔原書の為に鍛えてるからな
ゼロ:認めさせる…だったか
レニクス:あぁ、手に入れただけじゃ使えない
レニクス:魔原書に認められるほどの力がいる
レニクス:それに俺には時間はあるからな
ゼロ:ハーフエルフってのも便利な身体だな
レニクス:そうでもないさ
レニクス:…ここが最後の扉だ
レニクス:いいか、ゼロ
レニクス:ここからは助けられない
ゼロ:余裕なしって感じだな
レニクス:死んだらそれで終わりだ
ゼロ:死ぬわけないだろ
ゼロ:俺にだってやりたいことはある
レニクス:へぇ…何も無いお前にやりたいことね
ゼロ:行くぞ
レニクス:後でじっくり聞かせてもらうかな
0:
ゼロ:(くっ…そ…魔導ゴーレムに高レベルの魔獣…
ゼロ:それに今まで以上の高濃度の魔力…
ゼロ:感覚が狂うどころの話じゃねぇ…)
レニクス:素晴らしいな
レニクス:ここを突破できなければ
レニクス:そもそも魔原書にすら触れられない…か
レニクス:ゼロの奴は…ま、大丈夫だろ
レニクス:『メテオ・デルタ』
レニクス:さぁ、デク共!誰から死にたい?
ゼロ:魔力で中和…それを意識すれば戦闘が遅れる
ゼロ:実力が足りねぇ…この濃度の中でアイツは戦ってる…
ゼロ:いつも以上の強さでッッ!
ゼロ:(越えられないほどに高い壁…それでも)
ゼロ:俺は強くならなきゃいけねぇんだよ!
ゼロ:『アビス・ランス』
0:
ゼロ:(ダメだ…もう魔力を維持できない…)
ゼロ:く…そっ…
レニクス:はっ、ははっ、
レニクス:ハハハハハ!!
レニクス:ここまで追い詰められたのはいつぶりだ?
レニクス:…なぁ、魔原書
レニクス:俺はお前を従える器か?
レニクス:お前は俺を満足させられるのか?
ゼロ:レニクス…あいつ…
レニクス:見せてみろよ
レニクス:代償ならいくらでも払ってやる
レニクス:…全てを0(ゼロ)に
レニクス:『炎獄・イフリート』
ゼロ:なっ…一瞬で…!
ゼロ:なんだ…この得体の知れない魔力は
レニクス:ははっ!これが魔原書か!
ゼロ:魔力の流れが異質すぎる…
ゼロ:これが五大精霊の魔力…
レニクス:…ん?
レニクス:そうか…なるほどな…
レニクス:よく生きてたな、ゼロ
ゼロ:なんとかな
ゼロ:それが魔原書の力か
レニクス:いいや
レニクス:どうやら面白いヤツみたいだなシュテンは
レニクス:俺を完全には認めていない
レニクス:使えた力はほんの一部だ
ゼロ:そうか
レニクス:早い者の取ったモン勝ち
レニクス:魔原書は俺のモノだな
ゼロ:嫌と言うほどわかった
ゼロ:俺にはまだ力が足りない
レニクス:そんなお前にプレゼントだ
ゼロ:っ…これは
レニクス:属性加護が闇のお前が
レニクス:シュテンの声を聞くなんてありえない
レニクス:お前を呼んだのはコイツだな
ゼロ:これは…魔原書…?
レニクス:五大精霊の後に生まれた精霊
レニクス:それらも同じく力をもっていたが
レニクス:国は作らず何処かに消えたと言われていた
レニクス:二極精霊だ
ゼロ:二極精霊…?
レニクス:闇と光の精霊
レニクス:光のクウォンと闇の
ゼロ:クロイツ
レニクス:知ってたのか?
ゼロ:いや、教えてくれた
レニクス:…なるほどな
レニクス:まさか同じ場所に二冊あるとはな
レニクス:ま、五大魔原書とまでは言われないが
レニクス:それも原初の精霊を宿している
レニクス:認められるほどに強くなれよ
ゼロ:レニクス…俺は
レニクス:じゃあな、ゼロ
レニクス:目的も果たした、俺は戻る
ゼロ:ッ…、あぁ
レニクス:お前も目的ができたんだろ?
ゼロ:…あぁ
レニクス:それだけ聞いといてやるよ
ゼロ:(俺も一緒に連れて行って欲しい…なんて
ゼロ:子どもだった俺ならそう答えていただろう
ゼロ:俺には何も無いから)
ゼロ:俺は外を知る必要がある
ゼロ:それを見て俺は、俺の存在する理由を見つける
レニクス:それが目的か?
ゼロ:今は…な
レニクス:だったら仲間を見つけろ
レニクス:お前に賛同し、ともに歩んでいける仲間
レニクス:お前には何もない、昔も、今も
ゼロ:はっ、今はお前との思い出と、力はあるぜ?
レニクス:いいや、それは俺の思い出だ、俺が貸した力だ
レニクス:お前のモノじゃない
レニクス:これは俺の物語なんだよ、ゼロ
レニクス:気まぐれで窃盗をしたガキを拾い
レニクス:気まぐれで戦い方、生き方を教え
レニクス:自分が欲していた物を手に入れる
レニクス:そしてこれからも物語は続いていく
ゼロ:…なんだよ、それ
レニクス:お前は、ただ俺に言われた通り動き
レニクス:俺の目的の手助けをするように
レニクス:俺の物語の一部になってたんだよ
ゼロ:じゃあ!この感情も、思い出も
ゼロ:全部嘘なのかよ!
レニクス:だから、これからはお前の物語だ
レニクス:俺がいなくなった後、自分で描け
レニクス:ゼロ、何も無い者
レニクス:何も無いなら詰め込め
レニクス:0を満たせ
ゼロ:……
レニクス:何も無いから見えるものもあるだろ
レニクス:もし、お前の物語が、これから歩む道が
レニクス:また俺と重なったなら…見せてみろよ
ゼロ:…あぁ、期待しとけよ
ゼロ:お前を越える存在として
ゼロ:目の前に来てやるよ
レニクス:ははっ!それは楽しみだな
0:【2年後】
ゼロ:これから俺たちは世界を知る
ゼロ:ここに居るお前らは俺の仲間だ、家族だ
ゼロ:お前たちもそうだろ?
ゼロ:家族に手ェ出すヤツには容赦はしねぇ
ゼロ:家族が困ってるなら手を貸す
ゼロ:このゴミ溜めから俺たちは外へ行く
ゼロ:この世界を見極めろ
0:
ゼロ:『深淵・ロストオーバー』
ゼロ:……本当に腐ってんだな、世界は
ゼロ:ロストだけじゃねぇ
ゼロ:どの国もゴミ溜めだ…
ゼロ:昔は犯罪者の国か
ゼロ:だが、今はどうだ?あの場所は
ゼロ:俺たちは…何か世界に仇なしたのか?
ゼロ:だったら俺は…俺たちは
レニクス:よぉ
レニクス:俺は世界を壊す者
レニクス:五大魔原書を従える、黙示録の従者が一人
レニクス:炎獄のレニクスだ
レニクス:お前は?
ゼロ:俺は…
ゼロ:(俺には何も無い…だが、目的はできた)
ゼロ:俺はゼロ
ゼロ:この世界を…解放する者だ
0:第0章ゼロ・クロイツ 完