台本概要
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タイトル | 魔法屋マホ |
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作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 3人用台本(女2、不問1) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
この世界には、魔法がある。 ある路地裏にカフェのような店が佇んでいる。 だけど、そこは魔法使いが魔法を作る『魔法屋』というお店だった。 ※元々10分6話構成のものを纏めたので、セリフ量にばらつきがありますが、ご了承ください。 305 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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柚 | 女 | 156 | まゆむら ゆず。女子高生。あることから、魔法屋の存在を知り、出入りすることになる。 |
マホ | 不問 | 127 | 魔法屋に住む魔法使い。色に込められた意味を魔法にし、その力を引き出す。魔法屋では、その魔法をお香に混ぜ、渡している。 |
京子 | 女 | 24 | 女子高生。不良グループ所属!夜露死苦!って感じではないけど、気の強い子。セリフ量少なめ。だけど、一番重要な役。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
柚:この世界には魔法がある
0:一人の高校生が路地を裏に抜けて歩いていく
0:路地裏、本来彼女はそんなところに似つかわしくない
0:そして、その顔は笑っていた
マホ:いらっしゃいませ…あぁ、君か
柚:来ちゃいました
マホ:それじゃあ今日の話を
マホ:聞かせてくれるかい?
柚:はい!
柚:(ここは"魔法屋"
柚:表向きはカフェっぽいんだけど
柚:その実、名前の通り"魔法"を売る不思議なお店
柚:私は、このお店のマホさんと仲良くなって
柚:毎日通ってる、そして今日1日の出来事を話す
柚:その間にマホさんは魔法を"作る"…)
0:
柚:それでね!
柚:先生が男子に注意したんだけど
柚:その時、噛んじゃって!もう笑った笑った!
マホ:キミはいつも無邪気に笑うねぇ
マホ:良いことだ
柚:うーん……
柚:それって、褒められてます?
マホ:もちろん
マホ:さて、こっちも出来たよ
柚:わぁ!綺麗な色!
マホ:ターコイズか
マホ:うーん、私がイメージしてたものと少し違うかなぁ…
マホ:まぁ今回は、あの子の話と感情のスパイスが
マホ:そっち寄りだったと考えるべきか
柚:マホさん、また一人でぶつぶつ言ってる
マホ:ん?あぁ、すまない
マホ:これはターコイズ色でね
マホ:効果は" "制圧"
マホ:そうだね…不安とか悩みがある人には良いかもね
マホ:それらを制圧してくれる
柚:へぇ…
マホ:さ、瓶詰めするよ
マホ:手伝うかい?
柚:もちろん!
0:
0:
柚:マホさん
柚:なんで魔法を作る時、私の話を聞くの?
マホ:研究の為、と言ったら冷たいかな?
柚:ちょっとだけ
マホ:いつもの話のお礼として
マホ:今日は私の話をしよう
マホ:私は魔法が使える…
マホ:所謂、魔法使い、魔女と言った類で
マホ:母親の家系がそうだった
マホ:だけど、キミと同じ人間でもある
柚:マホさん格好も普通だもん
マホ:私の母は魔法が使えなかった
マホ:適性が無かったらしい
マホ:だから祖母に習った、だけど
マホ:私が初めて魔法を使ったのは7歳
マホ:祖母が亡くなったのは10歳だったかな
柚:お婆ちゃん、そんなにすぐ亡くなったんですね
柚:魔法とかで不老不死ー!とかできないものなのかな?
マホ:ははっ、まぁ、やろうと思えば
マホ:できるかもしれないね
マホ:でも、その3年の中で
マホ:大切なことも教えてもらった
マホ:昔は魔法が使える家系は
マホ:いくつかあったみたいでね
マホ:力を買われたこともあったけど
マホ:迫害されたこともあったらしい
マホ:結局、残った家系が私たち
マホ:他は多分、残っていないって
柚:なんだか可哀想…ですね
柚:迫害って悪いことしたんですか?魔法で
マホ:いいや、怖かったんだろうね
マホ:自分と違う、自分と同じ形をした生き物が
マホ:そんなことがあって祖母から
マホ:こんな掟を出された
柚:掟、ですか?
マホ:他人に魔法を見せない
マホ:私利私欲の為に魔法は使わない
柚:二つ目はなんで?
マホ:迫害を受けてから
マホ:人間に対して悪意を持つ家系が生まれたけど
マホ:結局のところ、人を呪わば穴二つってわけだ
マホ:では、自分たちの欲を満たそう
マホ:そう考えるん家系がいた
柚:なるほど
柚:人に魔法が使えないなら
柚:自分のためにって思ったのか
マホ:しかし、それもまた破滅の道
マホ:私利私欲は満たせず、死んでいったそうだ
マホ:つまり、魔法は私怨や私欲で使うものじゃない
マホ:使っちゃいけないんだ
柚:それをお婆ちゃんが、教えてくれたってこと?
マホ:そういうこと
マホ:だけど、こうも言っていた
マホ:もし魔法を使うなら
マホ:自分のためじゃなくて
マホ:人のためになる魔法を使いなさい
マホ:ってね
柚:それで始めたのが魔法屋さん?
マホ:そう
マホ:ここには色んな人が来る
マホ:大抵は何か悩みを持った人や
マホ:自分の力でどうにもできない人
マホ:そんな人たちの、一つの手助けとして
マホ:魔法を贈っているんだよ
マホ:瓶の中のお香に、魔法を混ぜてね
柚:そういえばこの前来てた人!
柚:前は死にそうな顔してたのに
柚:凄い爽やかになってた
マホ:助けになったのならいいね
マホ:そして、私が掟を破って
マホ:キミに魔法を見せていることは
マホ:キミは話をする時、漫画やアニメのように
マホ:表情をコロコロと変えて
マホ:話の中にもう一度入り込んでいるみたいだ
柚:え!?…そ、そうですか…?
マホ:感情がスパイスになる、魔法のね
マホ:私もまだ理解しているわけじゃないけど
マホ:魔法とはそういうものでね
マホ:キミは私が思った以上の隠し味
マホ:私一人で作る時より、違う変化が起こるんだ
マホ:だから研究も兼ねて、キミの話を聞きながら
マホ:魔法を作ってみたいと思ったんだ
マホ:出会い方は最あ…
柚:ぁぁぁあ!
柚:そのことは言わないでください!
柚:今でも思い出すだけで恥ずかしいんですから!
マホ:また話を聞かせてくれ
柚:今日はマホさんの話が聞けて嬉しかったです
柚:なんだかまた仲良くなれた気が
マホ:はいはい、それとコレを
柚:青色?のこれは?
マホ:"幸運の青い鳥"
マホ:とも言うだろう?
マホ:幸運が舞い込むといいね
柚:えへへ、ありがとうございます
柚:大事に使いますね!
柚:それじゃ、また来ます
柚:マホさん!
マホ:ああ、気をつけて帰るんだよ、柚
0:柚は、店を後にする
マホ:……ラピスラズリ、邪気払い
マホ:その無邪気な笑顔の中にある
マホ:キミの本当の悩み
マホ:聞かせてくれるといいな
マホ:キミの手助けなら惜しまないから
0:
0:
0:
0:ある夢の話ーー。
京子:そんな格好で帰ったら風邪引くよ
0:
京子:今日、財布忘れちゃってさ
0:
京子:柚ちゃん
京子:授業終わって一人で離れた
京子:トイレに行ってたけど、大丈夫?
0:
京子:ゆーずーちゃん
0:
0:
0:目が醒める、柚
柚:……今の、夢……?
0:
0:魔法屋にて
マホ:ありがとうございました
柚:マホさん、さっきの瓶…
マホ:この前のやつだね
柚:制圧?だっけ
マホ:お客様の情報は話せません
マホ:なので、この話はここでおしまい
柚:はーい
マホ: :さて、一息ついたけど
マホ:そうだ…キミ、甘いモノは好きかな?
柚:え?好き!好きだよ!
マホ: :それは良かった
マホ:では、お茶にしようか
0:
柚:んー!美味しい!
柚:これ、もしかしてマホさん手作り?
マホ:ん、よくわかったね
柚: :それで今は何してるんですか?
マホ:今日はキミの美味しそうな
マホ:表情をスパイスに魔法を作る
マホ:そのまま食べていてくれ
柚:太らせようとしてます?
マホ:ハハ!変なことを気にするね
柚:いや!女子高生ですから!
柚:気にしますから!
0:
マホ:できた
柚:わぁ…これが
柚:私の美味しい表情の魔法…
マホ:違うけど
マホ:何を言っているんだい?
柚:ちょっとボケただけです!
マホ:からかっただけです
柚: :そういうとこだよ!マホさん!
マホ:うーん琥珀…か
マホ:使い辛いかな
柚:話を逸らした!…って、使い辛いんですか?
マホ:琥珀ってパワーストーン知ってるかな?
マホ:アレと同じで生命力とか
マホ:精神安定の効果があるんだけど
マホ:パワーストーンと違って
マホ:こっちは魔法だからね
マホ:使い方とか量を間違えると
マホ:本当に不老不死とか、逆に廃人になったりするかも
柚:え…怖い
柚:強力な魔法なんですか?
マホ:普通なら大丈夫だけど
マホ:やっぱり、キミは思った以上のスパイスだ
柚:喜んでいい…のかな?
マホ:これはキミの力だよ
マホ:キミが今日お菓子を食べて幸せを感じた
マホ:おいしいと表情に出した
マホ:それがここまでの魔法を作り上げた
マホ:キミの笑顔には、それほどの力があるんだよ
柚:そこまで言われると…んー!ダメダメ!
柚:なんか恥ずかしい!ってあれ!?
柚:もうこんな時間!?
柚:ごめん、マホさん!今日早く帰らなきゃだった
マホ:うん、またおいで
柚:それじゃ、マホさん
柚:また来ます!
マホ:あぁ、気をつけて…待って、柚
柚:はい?え、今、名前
マホ:明日は時間あるかい?
柚:え?別に予定はないですよ
マホ:では、明日この店は休みにする
マホ:だから好きな時にきてもらえるかな
柚:わ、わかりました
マホ:ん、じゃあ気をつけて
0:
0:
柚:マホさんなんだったんだろ?
柚:ていうか!名前!
柚:絶対名前呼んだよね!
柚:いっつもキミ、キミしか言わないのに…
柚:……明日何かするのかな
0:翌日
マホ:やぁ、待ってたよ
柚:あの、何かするんですか?
マホ:前に話したこと覚えているかな
マホ:私利私欲のために魔法は使えない
柚:はい、覚えてますけど
マホ:だから、私から何かをする
マホ:というのはやめようと思った
マホ:私は助けを求められてからじゃないと動けないから
マホ:私はね、キミに助けてと言ってほしいんだ
柚:マホさん?
柚:何言ってるの?別に私困って
マホ:私は魔法使いだよ、柚
柚:ッ!
マホ:この店はね
マホ:普通の人は見つけることはできないんだよ
マホ:そういう魔法をかけている
マホ:誰かの手助けが、自分じゃ
マホ:どうにもできない悩みがある人
マホ:そんな人にしかこの店は見えない
柚:それは…
マホ:だからね、柚
マホ:最初からキミに何かあることはわかっていた
マホ:青色の瓶、使ったかい?
柚:はい…
マホ:あれはラピスラズリ
マホ:邪気を祓う効果がある
マホ:さっきから腕を気にしているね?
柚:いや!これは!
マホ:気にしなくていい
マホ:邪気を祓う、私の考えだと
マホ:減った、もしくは、しなくなった
マホ:そうじゃないのかな?
柚:……マホさんのお店に行くようになって
柚:瓶を話のお礼って貰うようになってから
柚:そういう考えが消えて…
マホ:ラピスラズリ以外にも、抑制や安心感
マホ:色々試していたんだけど
マホ:よかった、効いたみたいだ
柚:あの…知ってるんですか
柚:私のこと
マホ:知らないよ
マホ:さっきも言ったけど
マホ:私は言われないと動けない
マホ:だからキミのこと、魔法でなんでも知ってる
マホ:なんてことはない
マホ:何も知らない、何も知らないけど
マホ:何かあることは知っていた
マホ:だから少しだけズルをしていた
柚:じゃあ、あの瓶のおかげで、私は……
マホ:私は感謝しているんだよ
マホ:魔法の研究を手伝ってくれて
マホ:そして何より、キミの話は楽しい
マホ:楽しいからこそ
マホ:その話を本物にしたいんだよ
柚:私が話していること
柚:嘘ってわかったの?
マホ:嘘だけど嘘じゃない
マホ:あれはキミが望む世界の話
マホ:だからキミはあの世界が好きで
マホ:入り込んでいたんだ
マホ:それを嘘じゃなく、夢の世界じゃなく
マホ:現実の世界にしてあげたい
柚:マホさん…
マホ:キミを
マホ:柚を助けることなら
マホ:手は惜しまないよ、私は
柚:マホさん…
柚:………助けて……
0:
0:
0:
柚:(私はどこにでもいる高校生
柚:部活には入ってなかったけど
柚:友達もいたし、何かに困っていることもなかった
柚:ただ、ある時、私の周りに変化が起きた)
0:
柚:(いつもと変わらない日
柚:お昼休みにお弁当を友達と
柚:食べようとしてた時に見ちゃったの)
0:
京子:ねぇ、何遅れてんの?
京子:アンタのせいで昼休み、終わるんだけど?
京子:最悪じゃない?ねぇ?
0:京子の言葉に重ねて文句を言う複数の生徒
柚:(私の友達にね、桜ちゃんっているんだけど
柚:いじめられてた…知らなかった
柚:最初は驚いて何もできなかった
柚:他の友達も見て見ぬふりだった
柚:もし下手に関わったら
柚:次は自分って思ったのかもしれない)
0:
柚:(私も見て見ぬふりをしてしまった
柚:だけど本当に正しいの?これが正解なの?
柚:そう思っちゃって私、声をかけたの)
0:
柚:やめなよ、桜困ってる
京子:は?お前誰だよ
京子:…まぁいいわ、なんか冷めた
京子:ねぇ、屋上行こうよ
京子:鍵はどうせ翔たちが開けてるよ、あはは
0:そう取り巻きたちと話し、その場を去っていく京子
柚:(そんな感じでその場は何事もなかった
柚:けど次の日、桜が転校した
柚:話せなかったけど…多分、ずっと前から
柚:悩んでたんだと思う
柚:そのあとはマホさんなら
柚:もう、わかるよね)
0:
京子:柚ちゃん
京子:ねぇ、ちょっと話そっか
京子:桜がいなくなって、私たち寂しんだよねぇ
京子:だからさ
京子:次は、柚ちゃんが相手してくれるんだよね?
柚:(次の標的は私だった
柚:友達も離れて行った
柚:誰にも相談できなかった
柚:私そんなに弱くないと思ってた
柚:けど無理だった
柚:辛くて悲しくて嫌になって
柚:死んじゃおうと思った
柚:気付いたら自分で自分を、傷つけてた
柚:その時ね、生きてる実感がした
柚:そしたらそれを求めてしまった
柚:やめられなくなってた
柚:学校で虐められて、家に帰って傷つけて安心する
柚:繰り返しだった)
0:
柚:(そんなことになって
柚:誰にも相談できなかった
柚:自分を傷つけた後ろめたさで
柚:両親にも話せなかったの
柚:そんな日が続いてた時にね)
0:
京子:柚ちゃん
京子:私たちさ、お弁当も財布も
京子:忘れちゃって困ってて
京子:お昼代、出してくんない?
柚:え…あ…
京子:早くしろよ!
0:取り巻きの男子生徒から、先生が近づいて来たと言われ
柚:あ、先生…
京子:チッ
京子:柚ちゃん、このことアイツに
京子:チクったらわかってるよね?
柚:言わないよ…
京子:明日、モタモタしてると
京子:どうなるか分かってるよね?
柚:っ…
京子:翔!屋上開けといてよ
京子:最悪、マジで冷めたわ
0:そう言い、去っていく
0:そして、通りかかった先生が話しかけてくる
柚:先生…何でもないです…
0:
0:放課後
京子:ゆーずーちゃん
京子:授業終わって一人で離れた
京子:トイレに行ってたらか何かなぁ?
京子:って思ったけど
京子:中谷のヤツにチクってないよね?
柚:言ってない!私何も言ってない!
京子:あっそ
京子:けどこれは……
0:柚の頭上から水が降りかかる
京子:お昼代出してくれなかった罰ね
京子:今日、雨降ってるし傘いらなくなったね
京子:アハハ!
京子:帰ろ、帰ろ!アハハ!
柚:…………
0:
柚:(その日、トイレで水をかけられて
柚:おまけに傘まで捨てられてた
柚:もうどうでもいいやと思って
柚:そのまま帰ったの
柚:そしたらアナタに出会った)
マホ:傘、忘れたのかな?
柚:え?あ、いや、えっと…
マホ:そんな格好で帰ったら心配される
マホ:よかったら店においで
柚:いや!そんな
柚:悪いです!私が傘忘れただけで
マホ:人の厚意はありがたく受け取るものだよ
マホ:さ、おいで
柚:は、はい
0:
柚:(その日、マホさんがお風呂を貸してくれて
柚:そして少し話しをしたよね)
マホ:コーヒーだけど、飲めたかな?
柚:ありがとうございます
柚:わ、美味しい
マホ:それは良かった
マホ:ん?…キミは…
柚:はい?
マホ:いや、何でもない
マホ:制服は私が乾かしておくよ
マホ:明日学校は休みのはずだから
マホ:取りに来るといい
柚:いやいや!そんなの悪いです!
マホ:よし、わかった
マホ:明日私と少し話をしよう
マホ:それと私の秘密も教えよう
マホ:フフ、何のことかわからない
マホ:と言った顔だね
マホ:けど、きっと驚くよ
柚:いや、わからないですけど
柚:制服は大丈夫ですから
マホ:人の厚意は
柚:あーー!
柚:わかりました!わかりました!
柚:それじゃお願いします
マホ:気をつけて帰るんだよ
0:
柚:(あの時、意味がわからなかった
柚:なんで会ったばかりの人に
柚:そこまで親切にしてくれるのか
柚:それと……)
0:
柚:あ…れ?私、笑ってる?
柚:そっか…人とちゃんと話したの久しぶりだったんだ…
柚:……明日…楽しみだな…
0:
0:次の日
マホ:やぁ、いらっしゃい
マホ:まずは自己紹介を改めて
柚:あ!昨日はありがとうございました
柚:私は眉村 柚です
マホ:うん
マホ:私はマホ、と呼んでくれていい
マホ:職業はカフェの店長
マホ:……と言いたいところだけど
マホ:秘密を教えると言ったからね
マホ:ちゃんとした自己紹介を
0:
マホ:私はここ、魔法屋の店主で
マホ:所謂、魔法使いで
マホ:ここで魔法を作っている者だ
マホ:よろしくね
0:
0:
0:
0:回想が終わり、現在
0:
柚:これが私の本当の話
柚:マホさんと会ってからも
柚:いじめは続いてた
柚:だけど、放課後マホさんと
柚:話ができることを考えたら頑張れて…
マホ:できた
柚:え?
マホ:キミのことはよくわかった
マホ:今までよく頑張った
マホ:そして、よく話してくれたね
マホ:ありがとう
柚:あ、いや…私…私は…
柚:ごめんなさい……嘘ついてて、ごめんなさい
マホ:いいんだよ、柚
マホ:キミは救われるべきだ
マホ:だからこれを
柚:赤色の魔法…?
マホ:これはガーネット
マホ:効果は…いや、これは
マホ:キミをスパイスに作った
マホ:だから普通の魔法とは違う
マホ:だけど、キミの力になる魔法だよ
マホ:ただ、使い方には注意してくれ
柚:使い方?
マホ:キミは自分を傷つけた相手と闘うことになる
マホ:それはとても怖いことだ
マホ:だから、本当にどうしようもない時
マホ:その時に使うんだ
マホ:だけど大丈夫、キミなら絶対に
柚:私…できるかな
マホ:私ができるのはここまで
マホ:魔法と背中を押すことだけ
マホ:話をしてもらって冷たい様だけど
柚:大丈夫です!なんだかスッキリしました
柚:……私、闘ってみます
柚:このお店に来た人たちも、みんなそうした様に
マホ:うん
柚:また…
柚:また来ます!マホさん!
マホ:……待っているよ
0:
柚:ガーネット…私に力をくれる魔法…
柚:怖い…よ
柚:もし上手くいかなかったら?
柚:今よりもっと酷くなったら?
柚:私も桜みたいに…嫌だ、ここを離れたら
柚:もうマホさんとも会えない
柚:次はもう誰も助けてくれない…
0:
0:夢の中
京子:お弁当忘れちゃった
0:
京子:柚ちゃん、そんなに濡れてたら傘いらないじゃん
0:
京子:桜がいなくなって寂しいんだ
0:
0:目が醒める
柚:……夢、怖くなくなってたのって
柚:そっか、マホさんの魔法で…
0:赤い瓶が光っている様に見えた
柚:……行こう
0:
0:学校、柚は京子を呼び出した
京子:はぁ…、昼休みってのに
京子:話って何かなー?柚ちゃん
柚:ッ…あ…
京子:なんか言いたいことでもあるのかな?
京子:っていうか呼び出すとか調子乗ってる?
京子:あ、それともお弁当代持って来た?
京子:アッハハ!自分から渡しに来たってわけ!?
京子:それとも……また濡れて帰る?柚ちゃん
柚:わ、私
柚:(お願い!力を貸してーー
0:ポケットに入れていた赤い瓶を握り締める
マホ:(魔法は私利私欲のために使えない)
柚:っ!
マホ:(大丈夫、キミなら絶対に)
柚:……もう…やめてくれないかな
京子:は?
柚:もう私に構うのはやめて!
柚:もうこれ以上は耐えられない
柚:だから次は私も闘う
柚:何をされても逃げない絶対に
京子:はぁ!?なにそれ、どういう
柚:やれることは全部やる
柚:やめないなら……
柚:今までのことも全部話して
柚:最後まで相手する!
京子:ッ!
京子:……チッ…めんどくさ
京子:ハイハイ、わかりました
京子:じゃ、今からアンタのこと
京子:構わないし、もう何もしない
京子:それでいいんでしょ?空気だと思えば
0:取り巻きからいいのかと声がかかる
京子:マジでめんどくさいし
京子:一々あんなの相手してられないって
京子:それより今日あそこ寄って帰ろ
0:そう、取り巻きたちと話し、帰っていく京子
0:
柚:はぁ…はぁ…
柚:私、魔法を使わないで勝てた…?のかな?
柚:私もう大丈夫なんだよね?
柚:終わったんだよね?
柚:うぅ…うっ…私、わたし…
柚:頑張ったよ…マホさん
0:
0:回想
柚:魔法…使い?なに言ってるんですか?
マホ:宝石や花
マホ:誕生日、生まれた場所
マホ:名前や好きな色
マホ:この世のモノには意味が込められている
マホ:知っているかい?
柚:なんとなく…
柚:占いとか、アクセサリーとかで
柚:時々見ますけど
マホ:私が作っている魔法は『色』
マホ:その色に込められた意味が、魔法の力になる
柚:へぇ…
マホ:おや?信じてくれるのかな
柚:うーん、わからないですけど
柚:なんだか信じれる気がします
マホ:ハハハ!では確信に変えよう
柚:枯れた花?
マホ:アラゴライト
マホ:っていうパワーストーンなんだけど
マホ:これの力を魔法で向上させて
柚:え…
マホ:まぁ、この通り
マホ:花は元気になった
柚:凄い!本当に魔法使いなんだ!
マホ:無邪気に笑うねキミは
柚:あ!…すみません
マホ:柚…か
マホ:素敵な名前だね
柚:え?あ、ありがとうございます
柚:(あの時マホさんに出会って)
マホ:次はキミの話しを聞かせてくれるかな?
マホ:なんでもいいから
柚:え…私の話…?えっと…学校で…
柚:友達とお昼食べてる時に!
柚:(嘘じゃないよね、少し昔の話なだけ)
マホ:今日はありがとう、楽しい話が聞けた
マホ:お礼にこの瓶を
柚: :ありがとうございます!大事に使いますね!
柚:(いつもいつも私の話を最後まで聞いてくれて)
0:
マホ:キミを
マホ:柚を助けることなら
マホ:手は惜しまないよ、私は
柚:(最後まで私を助けてくれた)
0:
柚:会いに行こう、マホさんに
0:
0:走る、走る
0:あなたに会いたいから
0:だから
0:
マホ:柚…
柚:マホさん…私、私ね…
マホ:それじゃあ今日の話を
マホ:聞かせてくれるかい?
0:
柚:(私は今日あった出来事を話した
柚:途中、思い出して泣いてしまった
柚:それでもマホさんは優しく最後まで聞いてくれた)
0:
柚:それでね
柚:その話してる現場を友達が
柚:見てたみたいで、謝ってくれたの
柚:助けられなくてごめん、何もできなくてごめんって
マホ:キミは許したのかい?
柚:許すっていうより
柚:また話してくれたのが嬉しくて
柚:また昔みたいに戻れるかなって
マホ:うん、それがキミの答えなら
マホ:間違ってないだろうね
マホ:また戻れるよ、よく頑張ったね
柚:ありがとう、マホさん
マホ:…キミに
マホ:柚に謝らないといけない
マホ:今度は私の話を聞いてくれるかい?
柚:私に謝る?
柚:そんなマホさんは助けてくれて
マホ:私はキミをけしかけた
マホ:闘うようにと
マホ:それが正解か間違いかわからない
マホ:けど、もしかしたら
マホ:キミが今より酷い状況になったかもしれない
マホ:例え、魔法があったとしても
柚:マホさん…
マホ:私がこの仕事をしてから
マホ:同じ様に何かに悩んでいる人の手助けを
マホ:魔法という力を使って助けてきた
マホ:…いや違うな
マホ:闘うようにけしかけてきた
柚:けど、皆んな何かに悩んでて
柚:一歩を踏み出したかったから
柚:頑張ったんじゃないのかな?
マホ:そうだね、だけど
マホ:結局、解決できるのは本人だけだ
マホ:私が魔法で全てをハッピーに
マホ:……なんてことはできない
マホ:だからいつも怖かった
柚:怖い?
マホ:救われた人もいる
マホ:お礼を言いに来てくれて
マホ:元気になった姿を見ることもあった
マホ:その時は嬉しかった
マホ:けど、そうじゃない人もいた
マホ:全て上手くいく、そんなうまい話があるわけない
柚:だけど変わろうとしないと結局ずっと辛いままだよ
柚:私はマホさんに出会ってマホさんに救われた
柚:闘おうって、今を変えようて
柚:そう思えたのはマホさんがいたから
マホ:キミは優しいね
マホ:だけど、そう思える人も多くない
マホ:もしかしたら、私に恨みを持っている人も
マホ:いるかもしれない
マホ:少しの魔法と、背中を押すこと
マホ:私は、無責任なことしかできない
マホ:だから、柚の背中を押した時、怖かった
柚:マホさん
マホ:だけど、変わらないと始まらない、幸せにはなれない
マホ:私はそう思う
マホ:私たちの一族が変わったように
マホ:人を恨むだけじゃ、自分の欲を満たすだけじゃ
マホ:幸せになれなかったように
マホ:違う一歩を、未来を変える努力を
マホ:自分たちで踏み出さないといけない
柚:私も前のままだったら
柚:結局、自分を傷つけたままだった
柚:だからマホさんがしていることは
柚:間違ってない、私はそう思うよ
マホ:やっぱりキミは
マホ:私が思った以上の人間だ
マホ:キミと出会った頃のこと
マホ:覚えているかな?素敵な名前だと
柚:あ、初めて魔法を見せてもらったときの
マホ:柚、その名前に込められた意味
マホ:その力をキミは純粋に引き出している
マホ:だからキミなら大丈夫だと思ったのかもしれない
柚:意味?
マホ:"汚れなき人"
マホ:無邪気に笑う表情も、純粋な想いも
マホ:全てキミの力だよ
マホ:私はキミに出会えて良かった
マホ:魔法の研究だけじゃない
マホ:キミに出会えて、私も救われたのかもしれない
柚:褒めすぎだよ!
柚:もう!マホさんってそういうとこあるから…
マホ:ありがとう、柚
マホ:キミならこれからも
マホ:何があっても大丈夫
マホ:私はそう信じている
柚:私の方こそ
柚:ありがとう、マホさん!
柚:マホさんにそう言ってもらえたら
柚:本当に大丈夫な気がします
マホ:……柚
マホ:私の話を聞いてくれてありがとう
マホ:最後にもう少しだけ
マホ:私の秘密を教えるよ
柚:え?最後?
マホ:今までありがとう
マホ:今日でお別れだ
0:
0:
柚:お別れ…?
マホ:この店は、誰かの手助けが
マホ:自分じゃどうにもできない悩みがある人
マホ:そんな人にしかこの店は見えない
マホ:そう言ったよね?
柚:うん…
マホ:キミは自分の力で、自分の悩みと闘って勝った
マホ:だからもうキミに、私が手伝える悩みはなくなった
柚:それは…
柚:だけど私、まだマホさんと話したいことあるよ?
柚:やっと嘘じゃない話を
柚:マホさんが背中を押してくれからやっと話せるんだよ?
柚:まだ私、マホさんに話せて…ない…のに…
マホ:ハハ、変なことを気にするね
柚:気にするよ!
柚:もう…そういうとこだよ
マホ:ん?柚…もしかして
マホ:魔法を使わなかったのかい?
柚:もう、すぐ話を逸らす
柚:最後までマホさんのペースだよ
柚:…うん、魔法は使わなかった
柚:だって私利私欲のために魔法は使えないから
マホ:キミも本当に変なことを気にするね
マホ:キミは魔法使いじゃないのに
柚:そうだけど!
柚:そうだけど…マホさんが言ってたこと
柚:急に思い出しちゃって
柚:私も自分の力で頑張ろうって
柚:そう思ったの
マホ:…ハハ、ハハハ!
マホ:キミは、柚は本当に私が思った以上だ!
マホ:うん、その魔法はキミにあげる
柚:え?
マホ:普通は悩みが解決したら
マホ:もう私が何かをすることはない
マホ:だけど、その使わなかった魔法
マホ:それは柚のものだから返さなくていい
柚:けど、いいの?
マホ:キミなら魔法を使わなくても大丈夫だと思うけどね
マホ:あぁ、そうだ、ガーネット
マホ:その魔法の力はね、勝利
柚:え、それじゃあ
柚:もし魔法を使ってたら
マホ:うん、同じ結果かは
マホ:わからないけど勝てたかもしれない
柚:でも、マホさん怖かったんだよね?
柚:勝つってわかってたんじゃ
マホ:魔法の効力が即効性とは限らない
マホ:その勝利がどんな勝利かもわからない
マホ:結果、状況が悪化するかもしれない
マホ:魔法は少し、いい加減なところがあるから
マホ:どんなに凄い魔法を渡しても私は安心しないだろうね
柚:そうなんだ……いい加減…か
マホ:そう
マホ:話を戻すけどこの店は、誰かの手助けが必要な人
マホ:どうにもできない悩みがある人
マホ:そんな人にしかこの店は見えない
マホ:なのに悩みがなくなった今
マホ:この店に来れたのか
柚:あ…たしかに
マホ:ね?いい加減なところがある
マホ:私も何故こうなったかわからない
マホ:だけど、悩みがなくなったあと
マホ:一回だけこの店に来ることができる
マホ:お礼に来る人がいるのはそういうこと
柚:そっか…
柚:それで私の一回が今ってこと?
マホ:そういうこと
マホ:だから今日でお別れだ
マホ:何度も言うが私は感謝している
マホ:キミに出会えたことに
マホ:魔法の研究もキミの話も
マホ:柚という人間と出会えたことに
柚:待って!まだお別れなんて
柚:じゃあ…魔法の研究手伝うとか
柚:魔法屋さんの手伝いとか
柚:ほら!私部活してないし、放課後は予定ないし!
マホ:柚、本来なら
マホ:魔法なんてものはないんだよ
マホ:だからキミは普通の日常に戻るんだ
柚:マホさん……
柚:私、マホさんに出会えて良かった
柚:ありがとうマホさん
柚:また会えるよね?
マホ:柚、私の魔法名を教えよう
柚:魔法名?
マホ:キミに柚という名前があって
マホ:名前に意味があるように
マホ:私たち一族は魔法名という
マホ:意味を持った名前を付けられる
マホ:いいかい?一度だけしか言わない
マホ:最後の私の秘密だ
柚:ずっと覚えておくね
柚:マホさんと話したことも
マホ:私の魔法名は
マホ:"ヴィーダー•ゼーエン"
柚:ヴィーダー…ゼーエン?
マホ:それじゃ柚
マホ:キミならこれから何があっても
マホ:絶対、大丈夫
マホ:私はそう信じているよ
柚:私忘れないから
柚:マホさんのことも魔法のことも
柚:だから…だから
柚:またね!マホさん!
マホ:気をつけて帰るんだよ
マホ:……柚
0:
0:
0:
柚:あれから本当に魔法屋は見えなくなってしまった
柚:だけど魔法はいい加減だ
柚:魔法のことも魔法屋のことも
柚:マホさんのことも記憶から消えることはなかった
0:
柚: :学校での私は前と同じような生活に戻っていった
柚:友達と食べるお昼ご飯、一緒に帰る放課後
柚:当たり前のことが嬉しかった
柚:だから、私はそんな幸せな日々をマホさんに話したかった
柚:また会いたかった
0:
柚:マホさんが話してくれた
柚:色んなものに意味があること
柚:そのことを思い出して……そして、調べた
柚:ガーネットは勝利の他に絆って意味もあるって
柚:ヴィーダー•ゼーエン
柚:マホさんの魔法名
柚:この名前に込められた意味も
柚:そして……魔法はいい加減なこと
柚:だから…
0:
0:
0:
マホ:やぁ、いっらっしゃい
マホ:それじゃ今日の話を
マホ:聞かせてくれるかな?
0:おしまい。
柚:この世界には魔法がある
0:一人の高校生が路地を裏に抜けて歩いていく
0:路地裏、本来彼女はそんなところに似つかわしくない
0:そして、その顔は笑っていた
マホ:いらっしゃいませ…あぁ、君か
柚:来ちゃいました
マホ:それじゃあ今日の話を
マホ:聞かせてくれるかい?
柚:はい!
柚:(ここは"魔法屋"
柚:表向きはカフェっぽいんだけど
柚:その実、名前の通り"魔法"を売る不思議なお店
柚:私は、このお店のマホさんと仲良くなって
柚:毎日通ってる、そして今日1日の出来事を話す
柚:その間にマホさんは魔法を"作る"…)
0:
柚:それでね!
柚:先生が男子に注意したんだけど
柚:その時、噛んじゃって!もう笑った笑った!
マホ:キミはいつも無邪気に笑うねぇ
マホ:良いことだ
柚:うーん……
柚:それって、褒められてます?
マホ:もちろん
マホ:さて、こっちも出来たよ
柚:わぁ!綺麗な色!
マホ:ターコイズか
マホ:うーん、私がイメージしてたものと少し違うかなぁ…
マホ:まぁ今回は、あの子の話と感情のスパイスが
マホ:そっち寄りだったと考えるべきか
柚:マホさん、また一人でぶつぶつ言ってる
マホ:ん?あぁ、すまない
マホ:これはターコイズ色でね
マホ:効果は" "制圧"
マホ:そうだね…不安とか悩みがある人には良いかもね
マホ:それらを制圧してくれる
柚:へぇ…
マホ:さ、瓶詰めするよ
マホ:手伝うかい?
柚:もちろん!
0:
0:
柚:マホさん
柚:なんで魔法を作る時、私の話を聞くの?
マホ:研究の為、と言ったら冷たいかな?
柚:ちょっとだけ
マホ:いつもの話のお礼として
マホ:今日は私の話をしよう
マホ:私は魔法が使える…
マホ:所謂、魔法使い、魔女と言った類で
マホ:母親の家系がそうだった
マホ:だけど、キミと同じ人間でもある
柚:マホさん格好も普通だもん
マホ:私の母は魔法が使えなかった
マホ:適性が無かったらしい
マホ:だから祖母に習った、だけど
マホ:私が初めて魔法を使ったのは7歳
マホ:祖母が亡くなったのは10歳だったかな
柚:お婆ちゃん、そんなにすぐ亡くなったんですね
柚:魔法とかで不老不死ー!とかできないものなのかな?
マホ:ははっ、まぁ、やろうと思えば
マホ:できるかもしれないね
マホ:でも、その3年の中で
マホ:大切なことも教えてもらった
マホ:昔は魔法が使える家系は
マホ:いくつかあったみたいでね
マホ:力を買われたこともあったけど
マホ:迫害されたこともあったらしい
マホ:結局、残った家系が私たち
マホ:他は多分、残っていないって
柚:なんだか可哀想…ですね
柚:迫害って悪いことしたんですか?魔法で
マホ:いいや、怖かったんだろうね
マホ:自分と違う、自分と同じ形をした生き物が
マホ:そんなことがあって祖母から
マホ:こんな掟を出された
柚:掟、ですか?
マホ:他人に魔法を見せない
マホ:私利私欲の為に魔法は使わない
柚:二つ目はなんで?
マホ:迫害を受けてから
マホ:人間に対して悪意を持つ家系が生まれたけど
マホ:結局のところ、人を呪わば穴二つってわけだ
マホ:では、自分たちの欲を満たそう
マホ:そう考えるん家系がいた
柚:なるほど
柚:人に魔法が使えないなら
柚:自分のためにって思ったのか
マホ:しかし、それもまた破滅の道
マホ:私利私欲は満たせず、死んでいったそうだ
マホ:つまり、魔法は私怨や私欲で使うものじゃない
マホ:使っちゃいけないんだ
柚:それをお婆ちゃんが、教えてくれたってこと?
マホ:そういうこと
マホ:だけど、こうも言っていた
マホ:もし魔法を使うなら
マホ:自分のためじゃなくて
マホ:人のためになる魔法を使いなさい
マホ:ってね
柚:それで始めたのが魔法屋さん?
マホ:そう
マホ:ここには色んな人が来る
マホ:大抵は何か悩みを持った人や
マホ:自分の力でどうにもできない人
マホ:そんな人たちの、一つの手助けとして
マホ:魔法を贈っているんだよ
マホ:瓶の中のお香に、魔法を混ぜてね
柚:そういえばこの前来てた人!
柚:前は死にそうな顔してたのに
柚:凄い爽やかになってた
マホ:助けになったのならいいね
マホ:そして、私が掟を破って
マホ:キミに魔法を見せていることは
マホ:キミは話をする時、漫画やアニメのように
マホ:表情をコロコロと変えて
マホ:話の中にもう一度入り込んでいるみたいだ
柚:え!?…そ、そうですか…?
マホ:感情がスパイスになる、魔法のね
マホ:私もまだ理解しているわけじゃないけど
マホ:魔法とはそういうものでね
マホ:キミは私が思った以上の隠し味
マホ:私一人で作る時より、違う変化が起こるんだ
マホ:だから研究も兼ねて、キミの話を聞きながら
マホ:魔法を作ってみたいと思ったんだ
マホ:出会い方は最あ…
柚:ぁぁぁあ!
柚:そのことは言わないでください!
柚:今でも思い出すだけで恥ずかしいんですから!
マホ:また話を聞かせてくれ
柚:今日はマホさんの話が聞けて嬉しかったです
柚:なんだかまた仲良くなれた気が
マホ:はいはい、それとコレを
柚:青色?のこれは?
マホ:"幸運の青い鳥"
マホ:とも言うだろう?
マホ:幸運が舞い込むといいね
柚:えへへ、ありがとうございます
柚:大事に使いますね!
柚:それじゃ、また来ます
柚:マホさん!
マホ:ああ、気をつけて帰るんだよ、柚
0:柚は、店を後にする
マホ:……ラピスラズリ、邪気払い
マホ:その無邪気な笑顔の中にある
マホ:キミの本当の悩み
マホ:聞かせてくれるといいな
マホ:キミの手助けなら惜しまないから
0:
0:
0:
0:ある夢の話ーー。
京子:そんな格好で帰ったら風邪引くよ
0:
京子:今日、財布忘れちゃってさ
0:
京子:柚ちゃん
京子:授業終わって一人で離れた
京子:トイレに行ってたけど、大丈夫?
0:
京子:ゆーずーちゃん
0:
0:
0:目が醒める、柚
柚:……今の、夢……?
0:
0:魔法屋にて
マホ:ありがとうございました
柚:マホさん、さっきの瓶…
マホ:この前のやつだね
柚:制圧?だっけ
マホ:お客様の情報は話せません
マホ:なので、この話はここでおしまい
柚:はーい
マホ: :さて、一息ついたけど
マホ:そうだ…キミ、甘いモノは好きかな?
柚:え?好き!好きだよ!
マホ: :それは良かった
マホ:では、お茶にしようか
0:
柚:んー!美味しい!
柚:これ、もしかしてマホさん手作り?
マホ:ん、よくわかったね
柚: :それで今は何してるんですか?
マホ:今日はキミの美味しそうな
マホ:表情をスパイスに魔法を作る
マホ:そのまま食べていてくれ
柚:太らせようとしてます?
マホ:ハハ!変なことを気にするね
柚:いや!女子高生ですから!
柚:気にしますから!
0:
マホ:できた
柚:わぁ…これが
柚:私の美味しい表情の魔法…
マホ:違うけど
マホ:何を言っているんだい?
柚:ちょっとボケただけです!
マホ:からかっただけです
柚: :そういうとこだよ!マホさん!
マホ:うーん琥珀…か
マホ:使い辛いかな
柚:話を逸らした!…って、使い辛いんですか?
マホ:琥珀ってパワーストーン知ってるかな?
マホ:アレと同じで生命力とか
マホ:精神安定の効果があるんだけど
マホ:パワーストーンと違って
マホ:こっちは魔法だからね
マホ:使い方とか量を間違えると
マホ:本当に不老不死とか、逆に廃人になったりするかも
柚:え…怖い
柚:強力な魔法なんですか?
マホ:普通なら大丈夫だけど
マホ:やっぱり、キミは思った以上のスパイスだ
柚:喜んでいい…のかな?
マホ:これはキミの力だよ
マホ:キミが今日お菓子を食べて幸せを感じた
マホ:おいしいと表情に出した
マホ:それがここまでの魔法を作り上げた
マホ:キミの笑顔には、それほどの力があるんだよ
柚:そこまで言われると…んー!ダメダメ!
柚:なんか恥ずかしい!ってあれ!?
柚:もうこんな時間!?
柚:ごめん、マホさん!今日早く帰らなきゃだった
マホ:うん、またおいで
柚:それじゃ、マホさん
柚:また来ます!
マホ:あぁ、気をつけて…待って、柚
柚:はい?え、今、名前
マホ:明日は時間あるかい?
柚:え?別に予定はないですよ
マホ:では、明日この店は休みにする
マホ:だから好きな時にきてもらえるかな
柚:わ、わかりました
マホ:ん、じゃあ気をつけて
0:
0:
柚:マホさんなんだったんだろ?
柚:ていうか!名前!
柚:絶対名前呼んだよね!
柚:いっつもキミ、キミしか言わないのに…
柚:……明日何かするのかな
0:翌日
マホ:やぁ、待ってたよ
柚:あの、何かするんですか?
マホ:前に話したこと覚えているかな
マホ:私利私欲のために魔法は使えない
柚:はい、覚えてますけど
マホ:だから、私から何かをする
マホ:というのはやめようと思った
マホ:私は助けを求められてからじゃないと動けないから
マホ:私はね、キミに助けてと言ってほしいんだ
柚:マホさん?
柚:何言ってるの?別に私困って
マホ:私は魔法使いだよ、柚
柚:ッ!
マホ:この店はね
マホ:普通の人は見つけることはできないんだよ
マホ:そういう魔法をかけている
マホ:誰かの手助けが、自分じゃ
マホ:どうにもできない悩みがある人
マホ:そんな人にしかこの店は見えない
柚:それは…
マホ:だからね、柚
マホ:最初からキミに何かあることはわかっていた
マホ:青色の瓶、使ったかい?
柚:はい…
マホ:あれはラピスラズリ
マホ:邪気を祓う効果がある
マホ:さっきから腕を気にしているね?
柚:いや!これは!
マホ:気にしなくていい
マホ:邪気を祓う、私の考えだと
マホ:減った、もしくは、しなくなった
マホ:そうじゃないのかな?
柚:……マホさんのお店に行くようになって
柚:瓶を話のお礼って貰うようになってから
柚:そういう考えが消えて…
マホ:ラピスラズリ以外にも、抑制や安心感
マホ:色々試していたんだけど
マホ:よかった、効いたみたいだ
柚:あの…知ってるんですか
柚:私のこと
マホ:知らないよ
マホ:さっきも言ったけど
マホ:私は言われないと動けない
マホ:だからキミのこと、魔法でなんでも知ってる
マホ:なんてことはない
マホ:何も知らない、何も知らないけど
マホ:何かあることは知っていた
マホ:だから少しだけズルをしていた
柚:じゃあ、あの瓶のおかげで、私は……
マホ:私は感謝しているんだよ
マホ:魔法の研究を手伝ってくれて
マホ:そして何より、キミの話は楽しい
マホ:楽しいからこそ
マホ:その話を本物にしたいんだよ
柚:私が話していること
柚:嘘ってわかったの?
マホ:嘘だけど嘘じゃない
マホ:あれはキミが望む世界の話
マホ:だからキミはあの世界が好きで
マホ:入り込んでいたんだ
マホ:それを嘘じゃなく、夢の世界じゃなく
マホ:現実の世界にしてあげたい
柚:マホさん…
マホ:キミを
マホ:柚を助けることなら
マホ:手は惜しまないよ、私は
柚:マホさん…
柚:………助けて……
0:
0:
0:
柚:(私はどこにでもいる高校生
柚:部活には入ってなかったけど
柚:友達もいたし、何かに困っていることもなかった
柚:ただ、ある時、私の周りに変化が起きた)
0:
柚:(いつもと変わらない日
柚:お昼休みにお弁当を友達と
柚:食べようとしてた時に見ちゃったの)
0:
京子:ねぇ、何遅れてんの?
京子:アンタのせいで昼休み、終わるんだけど?
京子:最悪じゃない?ねぇ?
0:京子の言葉に重ねて文句を言う複数の生徒
柚:(私の友達にね、桜ちゃんっているんだけど
柚:いじめられてた…知らなかった
柚:最初は驚いて何もできなかった
柚:他の友達も見て見ぬふりだった
柚:もし下手に関わったら
柚:次は自分って思ったのかもしれない)
0:
柚:(私も見て見ぬふりをしてしまった
柚:だけど本当に正しいの?これが正解なの?
柚:そう思っちゃって私、声をかけたの)
0:
柚:やめなよ、桜困ってる
京子:は?お前誰だよ
京子:…まぁいいわ、なんか冷めた
京子:ねぇ、屋上行こうよ
京子:鍵はどうせ翔たちが開けてるよ、あはは
0:そう取り巻きたちと話し、その場を去っていく京子
柚:(そんな感じでその場は何事もなかった
柚:けど次の日、桜が転校した
柚:話せなかったけど…多分、ずっと前から
柚:悩んでたんだと思う
柚:そのあとはマホさんなら
柚:もう、わかるよね)
0:
京子:柚ちゃん
京子:ねぇ、ちょっと話そっか
京子:桜がいなくなって、私たち寂しんだよねぇ
京子:だからさ
京子:次は、柚ちゃんが相手してくれるんだよね?
柚:(次の標的は私だった
柚:友達も離れて行った
柚:誰にも相談できなかった
柚:私そんなに弱くないと思ってた
柚:けど無理だった
柚:辛くて悲しくて嫌になって
柚:死んじゃおうと思った
柚:気付いたら自分で自分を、傷つけてた
柚:その時ね、生きてる実感がした
柚:そしたらそれを求めてしまった
柚:やめられなくなってた
柚:学校で虐められて、家に帰って傷つけて安心する
柚:繰り返しだった)
0:
柚:(そんなことになって
柚:誰にも相談できなかった
柚:自分を傷つけた後ろめたさで
柚:両親にも話せなかったの
柚:そんな日が続いてた時にね)
0:
京子:柚ちゃん
京子:私たちさ、お弁当も財布も
京子:忘れちゃって困ってて
京子:お昼代、出してくんない?
柚:え…あ…
京子:早くしろよ!
0:取り巻きの男子生徒から、先生が近づいて来たと言われ
柚:あ、先生…
京子:チッ
京子:柚ちゃん、このことアイツに
京子:チクったらわかってるよね?
柚:言わないよ…
京子:明日、モタモタしてると
京子:どうなるか分かってるよね?
柚:っ…
京子:翔!屋上開けといてよ
京子:最悪、マジで冷めたわ
0:そう言い、去っていく
0:そして、通りかかった先生が話しかけてくる
柚:先生…何でもないです…
0:
0:放課後
京子:ゆーずーちゃん
京子:授業終わって一人で離れた
京子:トイレに行ってたらか何かなぁ?
京子:って思ったけど
京子:中谷のヤツにチクってないよね?
柚:言ってない!私何も言ってない!
京子:あっそ
京子:けどこれは……
0:柚の頭上から水が降りかかる
京子:お昼代出してくれなかった罰ね
京子:今日、雨降ってるし傘いらなくなったね
京子:アハハ!
京子:帰ろ、帰ろ!アハハ!
柚:…………
0:
柚:(その日、トイレで水をかけられて
柚:おまけに傘まで捨てられてた
柚:もうどうでもいいやと思って
柚:そのまま帰ったの
柚:そしたらアナタに出会った)
マホ:傘、忘れたのかな?
柚:え?あ、いや、えっと…
マホ:そんな格好で帰ったら心配される
マホ:よかったら店においで
柚:いや!そんな
柚:悪いです!私が傘忘れただけで
マホ:人の厚意はありがたく受け取るものだよ
マホ:さ、おいで
柚:は、はい
0:
柚:(その日、マホさんがお風呂を貸してくれて
柚:そして少し話しをしたよね)
マホ:コーヒーだけど、飲めたかな?
柚:ありがとうございます
柚:わ、美味しい
マホ:それは良かった
マホ:ん?…キミは…
柚:はい?
マホ:いや、何でもない
マホ:制服は私が乾かしておくよ
マホ:明日学校は休みのはずだから
マホ:取りに来るといい
柚:いやいや!そんなの悪いです!
マホ:よし、わかった
マホ:明日私と少し話をしよう
マホ:それと私の秘密も教えよう
マホ:フフ、何のことかわからない
マホ:と言った顔だね
マホ:けど、きっと驚くよ
柚:いや、わからないですけど
柚:制服は大丈夫ですから
マホ:人の厚意は
柚:あーー!
柚:わかりました!わかりました!
柚:それじゃお願いします
マホ:気をつけて帰るんだよ
0:
柚:(あの時、意味がわからなかった
柚:なんで会ったばかりの人に
柚:そこまで親切にしてくれるのか
柚:それと……)
0:
柚:あ…れ?私、笑ってる?
柚:そっか…人とちゃんと話したの久しぶりだったんだ…
柚:……明日…楽しみだな…
0:
0:次の日
マホ:やぁ、いらっしゃい
マホ:まずは自己紹介を改めて
柚:あ!昨日はありがとうございました
柚:私は眉村 柚です
マホ:うん
マホ:私はマホ、と呼んでくれていい
マホ:職業はカフェの店長
マホ:……と言いたいところだけど
マホ:秘密を教えると言ったからね
マホ:ちゃんとした自己紹介を
0:
マホ:私はここ、魔法屋の店主で
マホ:所謂、魔法使いで
マホ:ここで魔法を作っている者だ
マホ:よろしくね
0:
0:
0:
0:回想が終わり、現在
0:
柚:これが私の本当の話
柚:マホさんと会ってからも
柚:いじめは続いてた
柚:だけど、放課後マホさんと
柚:話ができることを考えたら頑張れて…
マホ:できた
柚:え?
マホ:キミのことはよくわかった
マホ:今までよく頑張った
マホ:そして、よく話してくれたね
マホ:ありがとう
柚:あ、いや…私…私は…
柚:ごめんなさい……嘘ついてて、ごめんなさい
マホ:いいんだよ、柚
マホ:キミは救われるべきだ
マホ:だからこれを
柚:赤色の魔法…?
マホ:これはガーネット
マホ:効果は…いや、これは
マホ:キミをスパイスに作った
マホ:だから普通の魔法とは違う
マホ:だけど、キミの力になる魔法だよ
マホ:ただ、使い方には注意してくれ
柚:使い方?
マホ:キミは自分を傷つけた相手と闘うことになる
マホ:それはとても怖いことだ
マホ:だから、本当にどうしようもない時
マホ:その時に使うんだ
マホ:だけど大丈夫、キミなら絶対に
柚:私…できるかな
マホ:私ができるのはここまで
マホ:魔法と背中を押すことだけ
マホ:話をしてもらって冷たい様だけど
柚:大丈夫です!なんだかスッキリしました
柚:……私、闘ってみます
柚:このお店に来た人たちも、みんなそうした様に
マホ:うん
柚:また…
柚:また来ます!マホさん!
マホ:……待っているよ
0:
柚:ガーネット…私に力をくれる魔法…
柚:怖い…よ
柚:もし上手くいかなかったら?
柚:今よりもっと酷くなったら?
柚:私も桜みたいに…嫌だ、ここを離れたら
柚:もうマホさんとも会えない
柚:次はもう誰も助けてくれない…
0:
0:夢の中
京子:お弁当忘れちゃった
0:
京子:柚ちゃん、そんなに濡れてたら傘いらないじゃん
0:
京子:桜がいなくなって寂しいんだ
0:
0:目が醒める
柚:……夢、怖くなくなってたのって
柚:そっか、マホさんの魔法で…
0:赤い瓶が光っている様に見えた
柚:……行こう
0:
0:学校、柚は京子を呼び出した
京子:はぁ…、昼休みってのに
京子:話って何かなー?柚ちゃん
柚:ッ…あ…
京子:なんか言いたいことでもあるのかな?
京子:っていうか呼び出すとか調子乗ってる?
京子:あ、それともお弁当代持って来た?
京子:アッハハ!自分から渡しに来たってわけ!?
京子:それとも……また濡れて帰る?柚ちゃん
柚:わ、私
柚:(お願い!力を貸してーー
0:ポケットに入れていた赤い瓶を握り締める
マホ:(魔法は私利私欲のために使えない)
柚:っ!
マホ:(大丈夫、キミなら絶対に)
柚:……もう…やめてくれないかな
京子:は?
柚:もう私に構うのはやめて!
柚:もうこれ以上は耐えられない
柚:だから次は私も闘う
柚:何をされても逃げない絶対に
京子:はぁ!?なにそれ、どういう
柚:やれることは全部やる
柚:やめないなら……
柚:今までのことも全部話して
柚:最後まで相手する!
京子:ッ!
京子:……チッ…めんどくさ
京子:ハイハイ、わかりました
京子:じゃ、今からアンタのこと
京子:構わないし、もう何もしない
京子:それでいいんでしょ?空気だと思えば
0:取り巻きからいいのかと声がかかる
京子:マジでめんどくさいし
京子:一々あんなの相手してられないって
京子:それより今日あそこ寄って帰ろ
0:そう、取り巻きたちと話し、帰っていく京子
0:
柚:はぁ…はぁ…
柚:私、魔法を使わないで勝てた…?のかな?
柚:私もう大丈夫なんだよね?
柚:終わったんだよね?
柚:うぅ…うっ…私、わたし…
柚:頑張ったよ…マホさん
0:
0:回想
柚:魔法…使い?なに言ってるんですか?
マホ:宝石や花
マホ:誕生日、生まれた場所
マホ:名前や好きな色
マホ:この世のモノには意味が込められている
マホ:知っているかい?
柚:なんとなく…
柚:占いとか、アクセサリーとかで
柚:時々見ますけど
マホ:私が作っている魔法は『色』
マホ:その色に込められた意味が、魔法の力になる
柚:へぇ…
マホ:おや?信じてくれるのかな
柚:うーん、わからないですけど
柚:なんだか信じれる気がします
マホ:ハハハ!では確信に変えよう
柚:枯れた花?
マホ:アラゴライト
マホ:っていうパワーストーンなんだけど
マホ:これの力を魔法で向上させて
柚:え…
マホ:まぁ、この通り
マホ:花は元気になった
柚:凄い!本当に魔法使いなんだ!
マホ:無邪気に笑うねキミは
柚:あ!…すみません
マホ:柚…か
マホ:素敵な名前だね
柚:え?あ、ありがとうございます
柚:(あの時マホさんに出会って)
マホ:次はキミの話しを聞かせてくれるかな?
マホ:なんでもいいから
柚:え…私の話…?えっと…学校で…
柚:友達とお昼食べてる時に!
柚:(嘘じゃないよね、少し昔の話なだけ)
マホ:今日はありがとう、楽しい話が聞けた
マホ:お礼にこの瓶を
柚: :ありがとうございます!大事に使いますね!
柚:(いつもいつも私の話を最後まで聞いてくれて)
0:
マホ:キミを
マホ:柚を助けることなら
マホ:手は惜しまないよ、私は
柚:(最後まで私を助けてくれた)
0:
柚:会いに行こう、マホさんに
0:
0:走る、走る
0:あなたに会いたいから
0:だから
0:
マホ:柚…
柚:マホさん…私、私ね…
マホ:それじゃあ今日の話を
マホ:聞かせてくれるかい?
0:
柚:(私は今日あった出来事を話した
柚:途中、思い出して泣いてしまった
柚:それでもマホさんは優しく最後まで聞いてくれた)
0:
柚:それでね
柚:その話してる現場を友達が
柚:見てたみたいで、謝ってくれたの
柚:助けられなくてごめん、何もできなくてごめんって
マホ:キミは許したのかい?
柚:許すっていうより
柚:また話してくれたのが嬉しくて
柚:また昔みたいに戻れるかなって
マホ:うん、それがキミの答えなら
マホ:間違ってないだろうね
マホ:また戻れるよ、よく頑張ったね
柚:ありがとう、マホさん
マホ:…キミに
マホ:柚に謝らないといけない
マホ:今度は私の話を聞いてくれるかい?
柚:私に謝る?
柚:そんなマホさんは助けてくれて
マホ:私はキミをけしかけた
マホ:闘うようにと
マホ:それが正解か間違いかわからない
マホ:けど、もしかしたら
マホ:キミが今より酷い状況になったかもしれない
マホ:例え、魔法があったとしても
柚:マホさん…
マホ:私がこの仕事をしてから
マホ:同じ様に何かに悩んでいる人の手助けを
マホ:魔法という力を使って助けてきた
マホ:…いや違うな
マホ:闘うようにけしかけてきた
柚:けど、皆んな何かに悩んでて
柚:一歩を踏み出したかったから
柚:頑張ったんじゃないのかな?
マホ:そうだね、だけど
マホ:結局、解決できるのは本人だけだ
マホ:私が魔法で全てをハッピーに
マホ:……なんてことはできない
マホ:だからいつも怖かった
柚:怖い?
マホ:救われた人もいる
マホ:お礼を言いに来てくれて
マホ:元気になった姿を見ることもあった
マホ:その時は嬉しかった
マホ:けど、そうじゃない人もいた
マホ:全て上手くいく、そんなうまい話があるわけない
柚:だけど変わろうとしないと結局ずっと辛いままだよ
柚:私はマホさんに出会ってマホさんに救われた
柚:闘おうって、今を変えようて
柚:そう思えたのはマホさんがいたから
マホ:キミは優しいね
マホ:だけど、そう思える人も多くない
マホ:もしかしたら、私に恨みを持っている人も
マホ:いるかもしれない
マホ:少しの魔法と、背中を押すこと
マホ:私は、無責任なことしかできない
マホ:だから、柚の背中を押した時、怖かった
柚:マホさん
マホ:だけど、変わらないと始まらない、幸せにはなれない
マホ:私はそう思う
マホ:私たちの一族が変わったように
マホ:人を恨むだけじゃ、自分の欲を満たすだけじゃ
マホ:幸せになれなかったように
マホ:違う一歩を、未来を変える努力を
マホ:自分たちで踏み出さないといけない
柚:私も前のままだったら
柚:結局、自分を傷つけたままだった
柚:だからマホさんがしていることは
柚:間違ってない、私はそう思うよ
マホ:やっぱりキミは
マホ:私が思った以上の人間だ
マホ:キミと出会った頃のこと
マホ:覚えているかな?素敵な名前だと
柚:あ、初めて魔法を見せてもらったときの
マホ:柚、その名前に込められた意味
マホ:その力をキミは純粋に引き出している
マホ:だからキミなら大丈夫だと思ったのかもしれない
柚:意味?
マホ:"汚れなき人"
マホ:無邪気に笑う表情も、純粋な想いも
マホ:全てキミの力だよ
マホ:私はキミに出会えて良かった
マホ:魔法の研究だけじゃない
マホ:キミに出会えて、私も救われたのかもしれない
柚:褒めすぎだよ!
柚:もう!マホさんってそういうとこあるから…
マホ:ありがとう、柚
マホ:キミならこれからも
マホ:何があっても大丈夫
マホ:私はそう信じている
柚:私の方こそ
柚:ありがとう、マホさん!
柚:マホさんにそう言ってもらえたら
柚:本当に大丈夫な気がします
マホ:……柚
マホ:私の話を聞いてくれてありがとう
マホ:最後にもう少しだけ
マホ:私の秘密を教えるよ
柚:え?最後?
マホ:今までありがとう
マホ:今日でお別れだ
0:
0:
柚:お別れ…?
マホ:この店は、誰かの手助けが
マホ:自分じゃどうにもできない悩みがある人
マホ:そんな人にしかこの店は見えない
マホ:そう言ったよね?
柚:うん…
マホ:キミは自分の力で、自分の悩みと闘って勝った
マホ:だからもうキミに、私が手伝える悩みはなくなった
柚:それは…
柚:だけど私、まだマホさんと話したいことあるよ?
柚:やっと嘘じゃない話を
柚:マホさんが背中を押してくれからやっと話せるんだよ?
柚:まだ私、マホさんに話せて…ない…のに…
マホ:ハハ、変なことを気にするね
柚:気にするよ!
柚:もう…そういうとこだよ
マホ:ん?柚…もしかして
マホ:魔法を使わなかったのかい?
柚:もう、すぐ話を逸らす
柚:最後までマホさんのペースだよ
柚:…うん、魔法は使わなかった
柚:だって私利私欲のために魔法は使えないから
マホ:キミも本当に変なことを気にするね
マホ:キミは魔法使いじゃないのに
柚:そうだけど!
柚:そうだけど…マホさんが言ってたこと
柚:急に思い出しちゃって
柚:私も自分の力で頑張ろうって
柚:そう思ったの
マホ:…ハハ、ハハハ!
マホ:キミは、柚は本当に私が思った以上だ!
マホ:うん、その魔法はキミにあげる
柚:え?
マホ:普通は悩みが解決したら
マホ:もう私が何かをすることはない
マホ:だけど、その使わなかった魔法
マホ:それは柚のものだから返さなくていい
柚:けど、いいの?
マホ:キミなら魔法を使わなくても大丈夫だと思うけどね
マホ:あぁ、そうだ、ガーネット
マホ:その魔法の力はね、勝利
柚:え、それじゃあ
柚:もし魔法を使ってたら
マホ:うん、同じ結果かは
マホ:わからないけど勝てたかもしれない
柚:でも、マホさん怖かったんだよね?
柚:勝つってわかってたんじゃ
マホ:魔法の効力が即効性とは限らない
マホ:その勝利がどんな勝利かもわからない
マホ:結果、状況が悪化するかもしれない
マホ:魔法は少し、いい加減なところがあるから
マホ:どんなに凄い魔法を渡しても私は安心しないだろうね
柚:そうなんだ……いい加減…か
マホ:そう
マホ:話を戻すけどこの店は、誰かの手助けが必要な人
マホ:どうにもできない悩みがある人
マホ:そんな人にしかこの店は見えない
マホ:なのに悩みがなくなった今
マホ:この店に来れたのか
柚:あ…たしかに
マホ:ね?いい加減なところがある
マホ:私も何故こうなったかわからない
マホ:だけど、悩みがなくなったあと
マホ:一回だけこの店に来ることができる
マホ:お礼に来る人がいるのはそういうこと
柚:そっか…
柚:それで私の一回が今ってこと?
マホ:そういうこと
マホ:だから今日でお別れだ
マホ:何度も言うが私は感謝している
マホ:キミに出会えたことに
マホ:魔法の研究もキミの話も
マホ:柚という人間と出会えたことに
柚:待って!まだお別れなんて
柚:じゃあ…魔法の研究手伝うとか
柚:魔法屋さんの手伝いとか
柚:ほら!私部活してないし、放課後は予定ないし!
マホ:柚、本来なら
マホ:魔法なんてものはないんだよ
マホ:だからキミは普通の日常に戻るんだ
柚:マホさん……
柚:私、マホさんに出会えて良かった
柚:ありがとうマホさん
柚:また会えるよね?
マホ:柚、私の魔法名を教えよう
柚:魔法名?
マホ:キミに柚という名前があって
マホ:名前に意味があるように
マホ:私たち一族は魔法名という
マホ:意味を持った名前を付けられる
マホ:いいかい?一度だけしか言わない
マホ:最後の私の秘密だ
柚:ずっと覚えておくね
柚:マホさんと話したことも
マホ:私の魔法名は
マホ:"ヴィーダー•ゼーエン"
柚:ヴィーダー…ゼーエン?
マホ:それじゃ柚
マホ:キミならこれから何があっても
マホ:絶対、大丈夫
マホ:私はそう信じているよ
柚:私忘れないから
柚:マホさんのことも魔法のことも
柚:だから…だから
柚:またね!マホさん!
マホ:気をつけて帰るんだよ
マホ:……柚
0:
0:
0:
柚:あれから本当に魔法屋は見えなくなってしまった
柚:だけど魔法はいい加減だ
柚:魔法のことも魔法屋のことも
柚:マホさんのことも記憶から消えることはなかった
0:
柚: :学校での私は前と同じような生活に戻っていった
柚:友達と食べるお昼ご飯、一緒に帰る放課後
柚:当たり前のことが嬉しかった
柚:だから、私はそんな幸せな日々をマホさんに話したかった
柚:また会いたかった
0:
柚:マホさんが話してくれた
柚:色んなものに意味があること
柚:そのことを思い出して……そして、調べた
柚:ガーネットは勝利の他に絆って意味もあるって
柚:ヴィーダー•ゼーエン
柚:マホさんの魔法名
柚:この名前に込められた意味も
柚:そして……魔法はいい加減なこと
柚:だから…
0:
0:
0:
マホ:やぁ、いっらっしゃい
マホ:それじゃ今日の話を
マホ:聞かせてくれるかな?
0:おしまい。