台本概要

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タイトル タロベエはたんぽぽたん
作者名 荒木アキラ  (@masakasoreha)
ジャンル 童話
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 とある地域に伝えられる伝承。
真面目な働き者、タロベエの枕元に現れる、不思議な声の正体とは・・・?

上演時には、任意ではありますが、作者Twitter(@masakasoreha)までご連絡いただけると、
喜んで拝聴しに行きます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り、タロベエ、長老、声、A、B、C 不問 - すべてのキャラクターを語りも含めて一人で演じてみませんか。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
語り:昔、ある村にタロベエという若者がおりました。 語り:タロベエは独り者でしたが、飲んだくれることも怠けることもなく、 語り:朝早くに起きて畑仕事に精をだし、 語り:日暮れ時には床(とこ)に着くという生活をしておりました。 語り: 語り:ある夜のことです。暗がりの中で、小さな物音がしました。 語り:タロベエは寝入りばなを起こされて、意識がはっきりしません。 語り:タロベエは小さなことは気にしないたちだったので、 語り:そのまま目を閉じてぐっすり深い眠りへと落ちていきました。 語り: 語り:村の明かりもすっかり消え、 語り:空にはぽっかりと大きなお月さまがあがっていました。 語り:虫の音(ね)だけが、人々の寝息に合わせて鳴り響きます。 語り:すみきった空気が一瞬止まり、 語り:タロベエはまた、小さな音を聞きました。 語り: タロベエ(以下、タ):「・・ん?今何か聞こえたような・・・」 声:「タロベェ~はたんぽぽたん・・」 語り: 語り:それは小さな小さな声でした。 語り:聞えるか聞えないかの小さな声です。 語り: タ:「なんだ、あの声は。」 語り: 語り:タロベエは眠い目をこすりながら、戸口へ向かいました。 語り: タ:「だれかいるのかい」 語り: 語り:タロベエは暗闇にささやきましたが、声は返ってきません。 語り: タ:「おかしいな・・たしかに聞えた気がしたんだが・・・」 語り: 語り:タロベエは再び床につきました。 語り:そしてまた、うとうとし始めた時です。 語り: 声:「タロベェ~はたんぽぽたん」 語り: 語り:今度ははっきりと聞えました。 語り: タ:「だれだ!だれかいるのか!」 語り: 語り:今度はタロベエも大きな声で呼びかけました。 語り:声はまた、ぱたりとやんで、 語り:家の中はしんと静まり返っています。 語り:タロベエは気味悪くなり、 語り:そのまま朝まで眠ることができませんでした。 語り:翌朝、タロベエは恐る恐る戸を開けました。 語り: タ:「あれは、なんだったんだろう・・」 語り: 語り:畑仕事に出かけたタロベエは、 語り:村の仲間に昨夜の不思議な話をしてやりました。 語り: A:「・・お前そりゃ寝ぼけていたんだろ」 B:「お前もそんな冗談を言うようになったか、ははははは」 語り: 語り:仲間は真面目なタロベエをよそに笑うばかりです。 語り: タ:「あぁ・・不思議な夢だったなぁ・・ははは」 語り: 語り:根が単純なタロベエは、言われてみればそんな気がしてきます。 語り:タロベエは力なく笑いながら、 語り:昨夜のことは忘れてしまおうと思いました。 語り: 語り:そして、また夜がやってきました。 語り:昨夜の寝不足でタロベエはいつもより早く床につき、 語り:すぐに眠るつもりでした。 語り:すると…。 語り: 声:「タ~ロベェ~はたんぽぽたん・・」 語り: 語り:あの声がすぐ耳元で聞えてきました。 語り: 語り:飛び上がったタロベエは、すぐに行燈(あんどん)に明かりを灯し、 語り:家の中を注意深く見渡しました。 語り:しかし、やはりなにもいません。 語り:タロベエは明かりをつけたまま、もう一度床につきました。 語り:が、一度気になりだすと、 語り:なかなか眠りにつくことはできません。 語り: 声:「タ~ロベェ~はたんぽぽたん・・」 語り: 語り:タロベエは息をころして様子をうかがいました。 語り:タロベエが黙っていると、声はさらに大きくなりました。 語り: 声:「タロベエ~はたんぽぽたん!」 語り: 語り:ここで相手にしてはいけないと思い、 語り:タロベエはぐっと我慢しました。 語り: 声:「タロベエ~はたんぽぽたん!」 語り: 語り:声は次第に大きくなります。 語り: タ:「い…いい加減にしてくれ!!」 語り: 語り:しびれをきらして布団をはねのけると、 語り:雨戸の向こうで鳥のさえずりが聞こえてきました。 語り:体中汗ぐっしょりで、 語り:夜が明けたことさえ気付かなかったのです。 語り:結局その日も、タロベエは一睡もできませんでした。 語り: 語り: 語り: 語り:タロベエは、日に日に弱っていきました。 語り:口数は減り、畑へ出ても日が高くのぼる頃には、 語り:うつらうつらと居眠りを始めます。 語り:そのうち、話しかけてもぼんやりと気のない返事を返すばかりになり、 語り:そしてとうとう、ある朝、畑へ顔を出さなくなりました。 語り: 語り:さすがにおかしいと思った村の青年たちは、 語り:村はずれの長老へ相談に行きました。 語り: 長老:「ふぅむ・・・そりゃ、あやかしの仕業かもしれん。」 B:「あやかし・・ですか?」 A:「それじゃ、タロベエはどうなるのです?」 長老:「あやかしと言っても、大勢の者があつまって反撃すりゃあ、 長老:もしかしたら正体を現すかもしれんが・・」 語り: 語り:さっそく村へ帰った若者たちは、作戦を考えました。 語り:話を聞いたタロベエも、みなを家に招き入れて 語り:その作戦とやらに加わる決心をしました。 語り: C:「村の若い衆は全員来てくれるとよ!」 B:「しかし、大勢でやり返すといってもなぁ。」 タ:「どうすりゃいいものか。」 A:「俺に、いい考えがある。」 語り: 語り:その夜、タロベエの家に若い衆が集まりました。 語り: B:「こんなに大勢いたんじゃ、やつも出て来ぬかもしれんな・・」 語り: 語り:心配になったひとりがそういうと、 語り:タロベエは小声で静かに言いました。 語り: タ:「いや・・やつはもうそこまで来てる・・・」 語り:男たちの会話が、一瞬途切れたとき、 語り:その声はやってきました。 語り: 声:「・・タロベェ~はたんぽぽたん」 語り:闇の中でみな、目配せし合いました。 語り: A:「よし、ではまずわたしが行こう!」 語り:年長の青年がすっと立ち上がり、 語り:大きな声で言い放ちました。 語り: A:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り: 語り:闇の中からさらに声は続けます。 声:「タロベェ~はたんぽぽたん!」 語り: 語り:次の男が立ち上がって言い返しました。 B:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り: 語り:今度は負けじと声のほうも叫びます。 声:「タ~ロベェ~はた~んぽぽた~ん!」 語り: C:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り:間髪いれずに次の男が応戦します。 語り: 声:「タ~ロベェ~はたんぽ~ぽた~ん!」 語り:相手もむきになってきました。 語り: A:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 声:「タロベエ~は、た~んぽ~ぽた~ん!」 C:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 声:「タァ~ロベェ~は、た~んぽ~ぽたん!」 B:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り: 語り:男たちは入れ替わり立ち替わり、威勢良く声を張り上げます。 語り: 声:「ターロベ~は…た~ん、ぽ~ぽ、た~ん…」 語り: 語り:声のほうはひとりですので、次第に息がきれてきました。 語り: 語り:どのくらい順番がまわったでしょうか。 語り:疲れたものは少し眠り、また元気になってやり返します。 語り: 声:「たろ・・べぇ・・は、た~ん、ぽ~ぽ・・た~ん・・・」 語り: 語り:相手はもはや息も絶え絶えです。 語り: 語り:いつの間にか空は白々と明け始めていました。 語り:タロベエは、これがとどめだと言わんばかりに、 語り:声を限りに叫びました。 語り: タ:「そういう者こそ、たんぽぽたーん!」 語り: 語り:ゴトリ・・と裏口のほうで音がしたかと思うと、 語り:あたりは静けさに包まれました。 語り: 語り:そっと裏口の戸を開けると、そこには大きな狸が一匹、 語り:倒れておりました。 語り:狸は最後にひと声、獣の鳴き声をあげると、 語り:ぱっと煙のごとく消えてしまいました。 語り: 語り:それからというもの、 語り:タロベエのところにあのおかしな声が現れることはなくなりました。 語り:ぐっすりと眠った翌朝は、 語り:元気に鍬(くわ)を抱えて畑へ出かけます。 語り: 語り:ただひとつ変わったことといえば、 語り:タロベエはあの騒ぎのあと、 語り:隣村からかわいいお嫁さんをもらいました。 語り:家に帰ればあたたかな火がタロベエを迎えてくれます。 語り: 語り:独り者のこころの隙間に入り込んだ、 語り:寂しがり屋のあやかしだったのかもしれませんね。 語り: 語り:おしまい・・。

語り:昔、ある村にタロベエという若者がおりました。 語り:タロベエは独り者でしたが、飲んだくれることも怠けることもなく、 語り:朝早くに起きて畑仕事に精をだし、 語り:日暮れ時には床(とこ)に着くという生活をしておりました。 語り: 語り:ある夜のことです。暗がりの中で、小さな物音がしました。 語り:タロベエは寝入りばなを起こされて、意識がはっきりしません。 語り:タロベエは小さなことは気にしないたちだったので、 語り:そのまま目を閉じてぐっすり深い眠りへと落ちていきました。 語り: 語り:村の明かりもすっかり消え、 語り:空にはぽっかりと大きなお月さまがあがっていました。 語り:虫の音(ね)だけが、人々の寝息に合わせて鳴り響きます。 語り:すみきった空気が一瞬止まり、 語り:タロベエはまた、小さな音を聞きました。 語り: タロベエ(以下、タ):「・・ん?今何か聞こえたような・・・」 声:「タロベェ~はたんぽぽたん・・」 語り: 語り:それは小さな小さな声でした。 語り:聞えるか聞えないかの小さな声です。 語り: タ:「なんだ、あの声は。」 語り: 語り:タロベエは眠い目をこすりながら、戸口へ向かいました。 語り: タ:「だれかいるのかい」 語り: 語り:タロベエは暗闇にささやきましたが、声は返ってきません。 語り: タ:「おかしいな・・たしかに聞えた気がしたんだが・・・」 語り: 語り:タロベエは再び床につきました。 語り:そしてまた、うとうとし始めた時です。 語り: 声:「タロベェ~はたんぽぽたん」 語り: 語り:今度ははっきりと聞えました。 語り: タ:「だれだ!だれかいるのか!」 語り: 語り:今度はタロベエも大きな声で呼びかけました。 語り:声はまた、ぱたりとやんで、 語り:家の中はしんと静まり返っています。 語り:タロベエは気味悪くなり、 語り:そのまま朝まで眠ることができませんでした。 語り:翌朝、タロベエは恐る恐る戸を開けました。 語り: タ:「あれは、なんだったんだろう・・」 語り: 語り:畑仕事に出かけたタロベエは、 語り:村の仲間に昨夜の不思議な話をしてやりました。 語り: A:「・・お前そりゃ寝ぼけていたんだろ」 B:「お前もそんな冗談を言うようになったか、ははははは」 語り: 語り:仲間は真面目なタロベエをよそに笑うばかりです。 語り: タ:「あぁ・・不思議な夢だったなぁ・・ははは」 語り: 語り:根が単純なタロベエは、言われてみればそんな気がしてきます。 語り:タロベエは力なく笑いながら、 語り:昨夜のことは忘れてしまおうと思いました。 語り: 語り:そして、また夜がやってきました。 語り:昨夜の寝不足でタロベエはいつもより早く床につき、 語り:すぐに眠るつもりでした。 語り:すると…。 語り: 声:「タ~ロベェ~はたんぽぽたん・・」 語り: 語り:あの声がすぐ耳元で聞えてきました。 語り: 語り:飛び上がったタロベエは、すぐに行燈(あんどん)に明かりを灯し、 語り:家の中を注意深く見渡しました。 語り:しかし、やはりなにもいません。 語り:タロベエは明かりをつけたまま、もう一度床につきました。 語り:が、一度気になりだすと、 語り:なかなか眠りにつくことはできません。 語り: 声:「タ~ロベェ~はたんぽぽたん・・」 語り: 語り:タロベエは息をころして様子をうかがいました。 語り:タロベエが黙っていると、声はさらに大きくなりました。 語り: 声:「タロベエ~はたんぽぽたん!」 語り: 語り:ここで相手にしてはいけないと思い、 語り:タロベエはぐっと我慢しました。 語り: 声:「タロベエ~はたんぽぽたん!」 語り: 語り:声は次第に大きくなります。 語り: タ:「い…いい加減にしてくれ!!」 語り: 語り:しびれをきらして布団をはねのけると、 語り:雨戸の向こうで鳥のさえずりが聞こえてきました。 語り:体中汗ぐっしょりで、 語り:夜が明けたことさえ気付かなかったのです。 語り:結局その日も、タロベエは一睡もできませんでした。 語り: 語り: 語り: 語り:タロベエは、日に日に弱っていきました。 語り:口数は減り、畑へ出ても日が高くのぼる頃には、 語り:うつらうつらと居眠りを始めます。 語り:そのうち、話しかけてもぼんやりと気のない返事を返すばかりになり、 語り:そしてとうとう、ある朝、畑へ顔を出さなくなりました。 語り: 語り:さすがにおかしいと思った村の青年たちは、 語り:村はずれの長老へ相談に行きました。 語り: 長老:「ふぅむ・・・そりゃ、あやかしの仕業かもしれん。」 B:「あやかし・・ですか?」 A:「それじゃ、タロベエはどうなるのです?」 長老:「あやかしと言っても、大勢の者があつまって反撃すりゃあ、 長老:もしかしたら正体を現すかもしれんが・・」 語り: 語り:さっそく村へ帰った若者たちは、作戦を考えました。 語り:話を聞いたタロベエも、みなを家に招き入れて 語り:その作戦とやらに加わる決心をしました。 語り: C:「村の若い衆は全員来てくれるとよ!」 B:「しかし、大勢でやり返すといってもなぁ。」 タ:「どうすりゃいいものか。」 A:「俺に、いい考えがある。」 語り: 語り:その夜、タロベエの家に若い衆が集まりました。 語り: B:「こんなに大勢いたんじゃ、やつも出て来ぬかもしれんな・・」 語り: 語り:心配になったひとりがそういうと、 語り:タロベエは小声で静かに言いました。 語り: タ:「いや・・やつはもうそこまで来てる・・・」 語り:男たちの会話が、一瞬途切れたとき、 語り:その声はやってきました。 語り: 声:「・・タロベェ~はたんぽぽたん」 語り:闇の中でみな、目配せし合いました。 語り: A:「よし、ではまずわたしが行こう!」 語り:年長の青年がすっと立ち上がり、 語り:大きな声で言い放ちました。 語り: A:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り: 語り:闇の中からさらに声は続けます。 声:「タロベェ~はたんぽぽたん!」 語り: 語り:次の男が立ち上がって言い返しました。 B:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り: 語り:今度は負けじと声のほうも叫びます。 声:「タ~ロベェ~はた~んぽぽた~ん!」 語り: C:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り:間髪いれずに次の男が応戦します。 語り: 声:「タ~ロベェ~はたんぽ~ぽた~ん!」 語り:相手もむきになってきました。 語り: A:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 声:「タロベエ~は、た~んぽ~ぽた~ん!」 C:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 声:「タァ~ロベェ~は、た~んぽ~ぽたん!」 B:「そういう者こそ、たんぽぽたん!」 語り: 語り:男たちは入れ替わり立ち替わり、威勢良く声を張り上げます。 語り: 声:「ターロベ~は…た~ん、ぽ~ぽ、た~ん…」 語り: 語り:声のほうはひとりですので、次第に息がきれてきました。 語り: 語り:どのくらい順番がまわったでしょうか。 語り:疲れたものは少し眠り、また元気になってやり返します。 語り: 声:「たろ・・べぇ・・は、た~ん、ぽ~ぽ・・た~ん・・・」 語り: 語り:相手はもはや息も絶え絶えです。 語り: 語り:いつの間にか空は白々と明け始めていました。 語り:タロベエは、これがとどめだと言わんばかりに、 語り:声を限りに叫びました。 語り: タ:「そういう者こそ、たんぽぽたーん!」 語り: 語り:ゴトリ・・と裏口のほうで音がしたかと思うと、 語り:あたりは静けさに包まれました。 語り: 語り:そっと裏口の戸を開けると、そこには大きな狸が一匹、 語り:倒れておりました。 語り:狸は最後にひと声、獣の鳴き声をあげると、 語り:ぱっと煙のごとく消えてしまいました。 語り: 語り:それからというもの、 語り:タロベエのところにあのおかしな声が現れることはなくなりました。 語り:ぐっすりと眠った翌朝は、 語り:元気に鍬(くわ)を抱えて畑へ出かけます。 語り: 語り:ただひとつ変わったことといえば、 語り:タロベエはあの騒ぎのあと、 語り:隣村からかわいいお嫁さんをもらいました。 語り:家に帰ればあたたかな火がタロベエを迎えてくれます。 語り: 語り:独り者のこころの隙間に入り込んだ、 語り:寂しがり屋のあやかしだったのかもしれませんね。 語り: 語り:おしまい・・。