台本概要

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タイトル 【青春系】モノクロと二つの音
作者名 ゆる男  (@yuruyurumanno11)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(女2)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ピアノで繋がる物語
臆病者の冬華と男勝りな紅衣が奏でるピアノでモノクロの世界を変えていく

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
冬華 216 冬華(ふゆか) 弱気な小心者。悪気ないタイプの天然発言が特徴的
紅衣 204 紅衣(くい) 強気な正直者娘。鋭いツッコミが特徴的
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:7年前、冬華が小学3年生の頃 冬華:ん? :【♪♪♪〜♪〜♪】 冬華:綺麗な音・・・ピアノかな? 冬華:・・・ピアノかぁ〜 :【♪〜♪♪〜♪】 冬華:あはは!楽しそうに弾いてる 冬華:私も・・・弾きたい 0:冬華は毎日ピアノの音が聞こえる家を通る 冬華:あそこのおうちか〜あんまり見えない 冬華:あのピアノを弾いてる人と仲良くなれたらいいな! 0:それから冬華も毎日ピアノを弾くようになった 0:しかし2ヶ月が経った頃 冬華:あれ? 0:ピアノの音は聞こえてこなくなった 0:そして月日は経ち冬華は中学生になった :【♪♪〜♪〜♪♪】 0:冬華は朝からショパンのバラード4番を弾いている 冬華:よし! 0:朝からピアノを弾くことが日課になってる 0:学校に着くと 冬華:んーなんか噂に聞くと今日は転校生が来るらしい 冬華:怖い人じゃないといいな 0:教室で先生が噂通り転校生を呼んだ 0:女子生徒が教室に入る 紅衣:鬼頭紅衣です。よろしく 0:金髪の生徒だった 冬華:あがっ!あがががが!! 冬華:めちゃくちゃヤンキーだぁぁぁ 0:その紅衣は偶然にも冬華の隣の席になった 冬華:や、やばい・・・何か挨拶しないと 冬華:あ、アニマート〜♪ 0:アニマート=元気に、生き生きと 紅衣:・・・? 冬華:そ、そうだよねー!ピアノ用語なんて知るはずないよねぇー! 冬華:今のは無しです!ボコボコにするのだけはやめてください! 紅衣:あんた、ピアノやってんの? 冬華:え? 紅衣:・・・いや、なんでもない 冬華:そ、そう? 0:放課後になると冬華は毎日教室でピアノを弾いていた 冬華:ふー。今日もいい感じに弾けたなー 0:そして教室を出る時 冬華:ひっ! 0:教室の外には紅衣が居た 冬華:か、加藤さん、帰らないの? 紅衣:鬼頭だよ 0:そう言い残して紅衣は帰って行った 0:そして次の日の放課後も教室の外には紅衣が居た 冬華:き、き、木村さん!帰らないの? 紅衣:鬼頭だって! 0:そして次の日の放課後 冬華:中島さん帰らないの? 紅衣:なんで全部リセットされてんだよ!鬼頭だって! 冬華:ご、ごめん! 紅衣:全く失礼な奴だ 冬華:あ、体育館に呼び出してボコボコにするのだけはやめてください! 紅衣:しないわ!いつの時代のヤンキーだよ! 冬華:ヤンキーじゃないの? 紅衣:違うわ! 冬華:じゃあギャルなの? 紅衣:違うっての!どんな印象持ってんだよ! 冬華:だって金髪じゃん!金髪はヤンキーの象徴でしょ? 紅衣:これ地毛だよ 冬華:・・・え? 紅衣:見てわかんないの?あたしハーフなの 冬華:ハーフ?ヤンキーとギャルの? 紅衣:ぶっ飛ばすぞ?日本とドイツのハーフだ。転校したのもドイツから日本に戻ってきたからだ 冬華:えぇー!日本とドイツなんだ!すごいね 冬華:あ、ドイツってピアノ有名だよね!ピアノやってるの? 紅衣:・・・うん、やってるよ 冬華:じゃあ一緒にピアノ弾こ? 紅衣:・・・わかった 0:紅衣はピアノの椅子に座る 0:紅衣がピアノを弾いた瞬間 冬華:・・・え 0:紅衣が弾いたのはシューマンの飛翔という曲 冬華:なんだろうこの独特なテンポ、この曲は羽ばたく鳥のイメージだったけど 冬華:やっと解放されて自由に踊ってるような、そんな感覚 紅衣:ふぅー 冬華:鬼頭さんすごいよ! 紅衣:紅衣でいいよ 冬華:く、くくく、くぃ!! 紅衣:はいはい、焦らずゆっくり行こうね 紅衣:あんたの名前は? 冬華:私は冬華 紅衣:長い!言いにくい!ふーかって呼ぶわ 冬華:3文字って長いの!? 紅衣:まあ、何はともあれ久しぶりにピアノ弾いたなー 冬華:そうなの? 紅衣:うん、1年ぶりくらい 冬華:なのにそんなに上手いんだ!何歳からピアノ弾いてるの? 紅衣:3歳の頃からだよ 冬華:す、すごい・・・ 紅衣:ううん、でも、ふーかのおかげで色々思い出せた気がする 紅衣:ありがとー! 冬華:・・・うん! 0:冬華と紅衣のモノクロの世界が始まった 0:時が経ちある日のこと 冬華:あ、来た来た。紅衣〜アニマート〜! 紅衣:あ、アニマート〜本当にここふーかの家? 冬華:うん、そうだよ 紅衣:でかすぎだよ!広すぎて逆に緊張するわ! 冬華:広いのかな? 紅衣:おい、その感覚後々大変だぞ? 冬華:ねえねえ、紅衣!今日は何弾く?私の家防音室もあるから好きな時に好きなだけピアノ弾けるよ! 紅衣:防音室まで・・・とんでもないお嬢様なんだな 冬華:何が? 紅衣:なんでもない 冬華:紅衣が私の家に来るなんて気分はクレッシェンドー! 0:クレッシェンド=段々強く :♪♪〜♪〜♪♪〜 0:しばらくはピアノを引き続ける 冬華:紅衣は本当にピアノ上手だよね 紅衣:そう? 冬華:うん!なんかコンクールとか出てたの? 紅衣:んーまあ一応?ドイツに居た時にちょっと 冬華:えー!凄いじゃん! 紅衣:凄くないよ、なんの賞も貰ったことないしやっぱ本場はレベルが違う 冬華:そっか、紅衣でもそうなんだ 紅衣:・・・だから、また1歩進みたいんだ 紅衣:だからふーか、中学の文化祭でピアノの演奏会やろうよ! 冬華:え!演奏会!?無理無理!私出ないよ!? 紅衣:なんでだよ 冬華:ほら、紅衣は知らないかもだけど中学の文化祭って高校と違って体育館使えないんだよ? 冬華:今年はフリーマーケットやってるみたいな話してたし 紅衣:じゃあ高校でいいよ、あたしと同じ高校に行こう 冬華:無理でしょ!紅衣ドイツから日本に来たばっかでしょ!?頭悪いよね!? 紅衣:頭悪そうなお前が言うな!5教科見せてみろ! 冬華:258点! 紅衣:431点! 冬華:ま、参りました〜 紅衣:雑魚が 0:高校受験のため勉強をする 冬華:まいねーむいずざぺん! 紅衣:お前今までどんな教育受けてきたんだよ! 冬華:薔薇って漢字は書けるんだけどテスト出てくるかな? 紅衣:一点張り過ぎだろ!出てこねーよ! 0:そんなこんなで高校生になった 0:冬華と紅衣は一緒に登校する 冬華:ひぃぃ電車怖い 紅衣:なに怖がってんだよ、電車乗らないのか? 冬華:人が苦手な私が自ら進んで人混みの中に入ると思いますか!? 紅衣:ドヤ顔で言うなよ。早く乗れ 0:そして学校に着く 紅衣:ふーか、クラス表見てきて 冬華:私が!? 紅衣:ふーかの方が背大きいでしょ? 冬華:そうだけど人混みが 紅衣:人混み克服だ!行け! 冬華:無理! :ゴスっ! 冬華:暴力はやめようよ 紅衣:なんかムカついた! 0:結局クラス表は紅衣が見に行った 紅衣:おーい!ふーか!同じクラスだったよ!! 冬華:ほんとに!?やったー! 紅衣:じゃあ教室の場所どこにあるか聞いてきて 冬華:無理です 紅衣:どこまでコミュ障なんだよ、あたしとは話せたくせに 冬華:紅衣はピアノ友達だから 紅衣:いいから聞きに行け! 冬華:あいたっ!もう・・・ 0:1分経過 冬華:どうしよ、なんて話しかけよ 0:2分経過 冬華:まともに地図も読めない馬鹿だと思われるー! 0:3分経過 冬華:紅衣〜助けて〜 紅衣:小心者が!! 冬華:わ、私は小心者じゃないよ!ちょっと人見知りなだけ!えいえい!ポカポカポカっ 紅衣:人に話しかけるのに3分以上かかるやつのどこが小心者じゃないんだよ! 紅衣:お前は正真正銘の小心者だ!噛まずに言えたあたしを褒めやがれこのやろー!おらおら!:ボコボコボコ!! 0:勝者・紅衣 冬華:い、一発が重い 紅衣:あたしに勝てると思うなよ? 0:結局教室も紅衣が聞いた 紅衣:全くーなんでそんなに人が苦手なんだよ 冬華:色々あったの!むかしからこうだから気にしないで 紅衣:ふーん、まあ文化祭が来るまで特訓だな 冬華:ほんとに出るつもりなんだ・・・ 紅衣:当たり前だろ、お前も出んの 冬華:私も!?気が進まない 紅衣:絶対連れ出すからな 冬華:んーーまあねー 0:思い切り誤魔化す冬華 0:そして月日が経つ 0:冬華と紅衣は冬華の家で毎日ピアノを弾いていた 冬華:紅衣の家ってピアノあるの? 紅衣:一応あるよ、もう何年も弾いてないけど 冬華:そうなんだ!今度紅衣の家に行ってもいい? 紅衣:んーーまあふーかならいいか、 冬華:やったー!興奮がメゾフォルテ! 0:メゾフォルテ=やや強く 0:冬華と紅衣は紅衣の家に向かう 冬華:紅衣の家って自由の女神あるの? 紅衣:は?なんで? 冬華:ドイツにちなんで! 紅衣:自由の女神はニューヨークだぞ? 冬華:そうなの?じゃあエッフェル塔は? 紅衣:それはパリ 冬華:万里の長城は? 紅衣:中国 冬華:モアイ像 紅衣:イースター島 冬華:ドイツって何も無いの? 紅衣:お前がバカなだけだろ! 0:紅衣の家に着く 紅衣:アパートだからふーかの家より何倍もせまいよ? 冬華:全然いいよ 0:中に入る 冬華:わぁー!大きいピアノ! 紅衣:バカ!でかい声出すな! 冬華:なんで? 紅衣:猫飼ってるの。臆病だからすぐ逃げる 冬華:可愛いじゃん、猫ちゃんの名前は? 紅衣:リベ 冬華:リベちゃんかー仲良くなれるといいなー 冬華:あ、紅衣のピアノ弾いてもいい? 紅衣:・・・うん 0:冬華は椅子に座る 冬華:え!これベヒシュタインじゃん!ドイツの! 紅衣:そうだよ、ドイツに居た時パパに買ってもらったんだ 冬華:すっごいね!高級ピアノだ 冬華:紅衣のお父さんは今どこにいるの? 紅衣:・・・死んだよ 冬華:・・・え? 紅衣:ドイツで事故死したの 冬華:・・・ごめん、聞いちゃダメだった? 紅衣:全然?ふーかには何も隠さないからね 冬華:・・・ありがとう 紅衣:んじゃピアノ弾こ 冬華:うん!じゃあリベちゃんが来るように猫踏んじゃったでも弾こうかな 紅衣:縁起悪すぎだ!どけ、猫のワルツ弾く 0:紅衣はショパンの猫のワルツを弾いた 0:この曲は猫が自由に散歩している様子を表した曲で紅衣も軽快な表情で弾いていた :にゃーん 紅衣:お?リベ!初対面の人が居るのに出てくるの珍しいじゃん!初めてかな? 冬華:リベちゃんモノクロ柄なんだ、私に懐いたの? 紅衣:同じまぬけ同士だからかな? 冬華:悪口フォルテッシモ! 0:フォルテッシモ=凄く強い 紅衣:でも、どこかふーかのピアノは惹き付けられるよなー 紅衣:ピアニストになるにふさわしいな 冬華:え?ピアニスト? 紅衣:ん? 冬華:私、ピアニストになるつもりなんてないよ? 紅衣:・・・え? 紅衣:な、なんで?こんなにピアノ好きならてっきりピアニストになるもんだと思ってたけど 冬華:そんなの言ったことないでしょ。人前に出るの苦手だし 紅衣:なんで・・・じゃあ本当に文化祭出ないの? 冬華:出ないよ。最初から言ったじゃん 紅衣:・・・ 紅衣:・・・わかったよ、ふーかの気持ちはそんなもんだったんだな 紅衣:見損なったよ。ふーかの口からピアニストになりたくないなんて聞きたくなかった 冬華:でも、勝手に紅衣が決めつけたことでしょ!?やりたくないものはやらないよ 紅衣:勝手にしろよ、あたし一人でも文化祭出るよ 冬華:うん。そうして 0:お互い気まずい雰囲気になるが学校ではいつも一緒だった 冬華:紅衣ー?アニマートー 紅衣:うん 冬華:ど、どうしたの?その顔 紅衣:・・・昨日、ずっとふーかのこと考えてた 冬華:・・・え、告白? 紅衣:ちげーよ 冬華:じゃあどうして? 紅衣:・・・ふーかがピアニストになりたくないってどういうこと? 冬華:そのままの意味だよ。ピアノは好きだけどピアニストにはならない 紅衣:どうして! 冬華:だって・・・ピアノは趣味だし、そこまでなろうと思ってない 紅衣:あたしは、ふーかと一緒にピアニストになりたかったんだよ なんで…1人でピアノ頑張らないといけないんだ 冬華:しょうがないよ・・・お父さんの・・・娘なんだもん 紅衣:・・・は?どういう事だよ 冬華:っ! 紅衣:ふ、ふーか? 冬華:つ、ついてこないでください! 紅衣:・・・ 冬華:・・・ご、ごめん 紅衣:・・・こっちこそごめん、あたし一人で帰るわ 0:そしてある日 紅衣:ふーか、一緒に帰ろ 冬華:うん 紅衣:雨降ってんのか、傘持ってないや 冬華:私持ってるよ、中入る? 紅衣:ありがと 0:しばらく歩くと 紅衣:あたし今日バイトだからここまででいいよ 冬華:そうなの?バイト先まで送ろうか? 紅衣:すぐ近くだからいいよ 紅衣:・・・ねえ、ふーか 冬華:ん? 紅衣:文化祭本当に出ない? 冬華:うん、出ないよ 紅衣:・・・わかった 冬華:うん、じゃあね 0:冬華は家に着く 冬華:はぁ、紅衣のあんな悲しそうな顔初めて見たな 冬華:でもどうしても人前には立ちたくない 冬華:昔のことを思い出すのは嫌なんだ :♪♪〜♪♪〜 0:冬華はピアノを弾く 冬華:この音だけが私の嫌な思い出を消してくれる :ピーンポーン 0:冬華の家のインターホンが鳴る 冬華:誰だろ? 0:冬華が家の玄関を開けると 冬華:・・・紅衣!? 紅衣:・・・ 冬華:どうしたの!?びしょびしょじゃん、バイトは!? 紅衣:休んできた 冬華:なんで!? 紅衣:やっぱ納得出来ないんだよ 0:紅衣は冬華の胸ぐらを掴んで玄関の外に出す 冬華:あ、あぶな! 紅衣:教えてよ、ふーかのこと、文化祭に出たくない理由とピアニストになりたくない理由 冬華:・・・紅衣に迷惑かかるし 紅衣:迷惑!?お前何考えてんだよ!いつも迷惑ばっかかけてんだろ!慣れてんだよこっちは! 紅衣:こういう時ばっか迷惑がかかる?ふざけんな!最後まであたしに甘えろよ! 冬華:・・・紅衣 紅衣:お前の気持ちはどこにあんだよ!ぶつけてよ!あたしに!友達だろ! 紅衣:親友だろ!! 冬華:・・・うん 0:冬華は紅衣を抱きしめる 冬華:・・・うん、ありがと、私のこと教えるね 紅衣:ふーか 冬華:夢咲来夢って知ってる? 紅衣:うん、日本で1番有名なピアニストでしょ?ドイツでも有名だったぞ 冬華:そうだよね 冬華:・・・私のお父さんなんだ 紅衣:・・・え!? 紅衣:えー!ふーかのパパ夢咲来夢だったの!? 紅衣:お前よくもそんなこと今までかくし・・・へっくしゅん! 冬華:寒いよね?中に入って 紅衣:うん、ふーかの服でよだれ拭くわ 冬華:ねえ!汚い! 0:紅衣は髪と服を乾かしながら冬華に聞く 紅衣:んで、気になり過ぎる続き聞かせて 冬華:うん、物心がつく前かな?防音室でピアノを弾くお父さんの姿は覚えてる 冬華:けど、顔ははっきりとは覚えてないの 紅衣:結構昔から有名だったもんね 冬華:うん、有名人だからやっぱ取材に来る人が多かったの 冬華:小学生の頃にマイクとカメラを向けられて大人の人がいっぱい来る 冬華:そんな日々がほぼ毎日続いてさ、だからそれ以来人混みも嫌いだし人前に経つことも苦手だった 冬華:だからピアノのコンクールも出たことないし人前でピアノを弾いた事は無い 紅衣:でも、そんなトラウマがあるならなんでピアノを始めたんだ? 冬華:家の近くでね、楽しそうなピアノの音が聞こえたの 紅衣:それだけ? 冬華:それだけ、でもそのピアノに心動かされて私はピアノ始めたんだ 紅衣:そっか、まあピアニストになりたくない理由も文化祭に出たくない理由もわかった 紅衣:子供の頃のトラウマは残るのはあたしにもよくわかるよ 紅衣:だからさ、ふーかがピアノ始めるきっかけになった場所に連れてってよ 冬華:今はピアノの音聞こえないよ? 紅衣:いいから、早く! 冬華:行動力アレグロ! 0:アレグロ=急速に 0:2人は冬華のピアノを始めるきっかけの場所に行く 冬華:ここだよ 紅衣:ここって・・・ 冬華:うん、この壁の奥の家からピアノの音が聞こえたの 紅衣:・・・ふふっ 冬華:ん?どしたの? 紅衣:やっぱふーかとピアノ弾きたくなった! 紅衣:今度はあたしの番ね! 冬華:え!ちょっと! 0:紅衣は冬華の手を引っ張り紅衣の家に向かった 冬華:どうしたの?いきなり 紅衣:やっぱあたしはふーかとピアノを弾くべきだと思った! 0:紅衣の家の中に入ると 紅衣:おー!リベ、早速ふーかに慣れたんだなー 冬華:もうお友達だもんね :にゃん? 紅衣:友達ではないみたいだぞ 冬華:ひどいー! 紅衣:まあいいや、今度はあたしの話するから座って 冬華:うん 紅衣:あたしの話ってよりはリベの話だな 冬華:リベちゃん? 紅衣:うん、リベはね、ドイツで拾ってきた捨て猫なんだ 冬華:そうだったんだ 紅衣:あと、あたしのミドルネームも教えてあげる 冬華:そんなのもあるんだ、なんて名前なの? 紅衣:エリーゼ 冬華:・・・エリーゼ 紅衣:あたしのパパもピアノ好きだったんだ、だからあたしは日本でもコンクールに出てたし、小学生の頃から賞取ってたんだ 紅衣:でもね、ドイツに行ってからは全然コンクールで賞は取れなかった 紅衣:だから諦めたんだコンクールもピアノも。そんなことしてたらパパは事故で亡くなったの 紅衣:亡くなる前、野良猫のリベとパパは仲良しだったみたいで、リベが道路に飛び出したところにトラックが走ってきて 紅衣:リベを庇ったパパが代わりに死んだんだよ 紅衣:それだけならリベなんて飼ったりしない。けど、パパは毎日このモノクロの猫になんて話しかけてたと思う? 冬華:・・・何? 紅衣:エリーゼがコンクールで最優秀賞取れますようにだってさ 紅衣:そんな願い込められたら、もうリベを飼うしかないじゃん 紅衣:だから、リベの為に、パパのために、またピアノを始めようと思ったんだ 紅衣:そのきっかけがふーかだよ 冬華:わ、私!? 紅衣:そうだよ、ふーかのピアノはやっぱ人の心を惹き付ける力がある! 紅衣:あんなに綺麗な音色聞いたことないんだよ、だからあたしもそうなりたいと思ってた 紅衣:あたしはふーかのピアノに救われたんだよ! 冬華:・・・紅衣 冬華:昔ね、顔は覚えてないけどお父さんが言ってた言葉は鮮明に覚えてる 紅衣:何? 冬華:人の心はモノクロであるべきだって 紅衣:モノクロの心? 冬華:うん、何色にも染まる心の白と何色にも染まらない心の黒 冬華:人の意見を素直に受け入れる心の白と、自分の意思を強く持つ心の黒があれば美しい旋律のように素敵な人になれるって 紅衣:なんか偉大な人の言葉って感じだな 冬華:だからさ!紅衣が私のピアノで救われたって言ってくれるなら受け入れようと思う 冬華:人を素直に受け入れる心の白で 紅衣:・・・ふーか 冬華:一緒に出よ!文化祭! 紅衣:・・・うん!出よう! 0:それから2人は文化祭に向けて練習を重ねた 0:いや、練習というよりはお互いの音を楽しんでいただけだった 紅衣:綺麗な音だな、ふーかのピアノは 冬華:ううん、紅衣の音も喜んでる気がする 冬華:楽しいね! 0:そして文化祭当日 0:紅衣は冬華の家に行く 紅衣:ふーか?アニマート。起きてるかー? 冬華:ばい。おびべばぶ。 紅衣:今からそんな緊張してどうすんだよ 冬華:だって〜!ミスしたら全部終わりじゃん!! 紅衣:ミスしなきゃいいんだよ 冬華:あなたにはわからないでしょうね!! 紅衣:うるさい!小心者! 0:当日でも変わらない2人であった 0:そしていよいよ本番前になる 紅衣:あれ?ふーか?あんま緊張してないの? 冬華:うん、全然余裕 紅衣:へぇー本番前になると緊張しなくなるのか 冬華:そうみたいだね、このままピアガガガガガガ!!! 紅衣:ええええー!!壊れた!? 冬華:ワタシ、キオクガ、ナクナリマシタ 紅衣:ダメだこりゃ 0:冬華と紅衣はステージに呼ばれる 紅衣:ほら、行くぞ 冬華:無理だよー!人がいっぱいいるなんて無理無理! 紅衣:今更駄々こねんな!もう幕上がるぞ! 冬華:無理だよー!人がいっぱいいるなんて無理無理! 紅衣:2回も同じこと言うな!! 冬華:無理だよー!人がいっぱいいるなんて無理無理! 紅衣:まだ壊れてんのかよ!! 冬華:緊張なくなる方法ない? 紅衣:んー人っていう字を手のひらに3回書いて飲み込むと良いらしいよ 冬華:わかったやってみる。人。人。 冬華:・・・ぎゃあああーー!!!人ーーー!!! 紅衣:めんどくせーなお前!! 冬華:もう、どうやっても緊張取れないよ 紅衣:はぁ、まったく 紅衣:ふーか、面白い話しようか? 冬華:何? 紅衣:ふーかがピアノを始めるきっかけになったピアノの音の場所、何かわかる? 冬華:わかんないよ、あそこは壁の裏側だもん 紅衣:あそこは、あたしがドイツに行く前に住んでた家だよ 冬華:・・・えーー!! 紅衣:ね!面白いでしょ? 冬華:面白い通り越して当たり前みたいだよ 紅衣:そう!ふーかのピアノを聞いたあたしはまたピアノを始めた、そしてふーかはあたしのピアノを聞いてピアノを始めた 紅衣:あたし達はお互いのピアノで繋がってたんだよ! 冬華:・・・最高だよ!あのピアノの音は紅衣だったんだ! 0:紅衣は冬華を抱きしめる 紅衣:前にモノクロの心を持つって言ってたろ? 冬華:うん 紅衣:確かにモノクロであるべきだと思うけどあたしは違うと思う 紅衣:モノクロの心を赤にも青にも黄色にも、ピアノを奏れば人の心を色付かせれるんだよ 紅衣:色付かせて、モノクロの世界を変えるんだ 紅衣:あたしとふーかが、お互いのピアノで世界が変わったように! 冬華:・・・うん!私と紅衣はここから始まるんだね! 0:幕が上がる 0:冬華と紅衣が弾いたのは連弾曲と言われる1台のピアノを2人で弾くものだった 0:ブラームスのワルツOp39-15という曲 0:愛をテーマにしたこの曲は今の冬華と紅衣にはぴったりだった 冬華:紅衣の音がする 紅衣:ふーかの音がする 冬華:紅衣の音がまた 紅衣:モノクロの世界を色付かせる 冬華:ふわりと暖かい音色が赤に染まる 紅衣:飛んで交わった音色が青に染まる 冬華:人の心に弾んだ音色が黄色に染まる 紅衣:地面に転がる音色が緑に染まる 冬華:歪んではなじむ音色が紫に染まる 紅衣:ゆっくり揺れる音色がオレンジに染まる 冬華:紅衣の音色が私のモノクロを染める 紅衣:ふーかの音色があたしのモノクロを染める 冬華:二つの音で 紅衣:モノクロの世界を変えていく 0:冬華と紅衣の演奏が終わると盛大な拍手が送られる 0:ステージを出ると 紅衣:ふーか! 冬華:紅衣! 0:二人は抱き合う 紅衣:ふーか、今日の演奏楽しかった? 冬華:うん、楽しかったよ!本当に楽しかった 紅衣:よかった、あたし、本当は不安だったんだ 冬華:どうして? 紅衣:ふーかが緊張するのはわかってた、これで失敗してトラウマになるんじゃないかと思ってた 紅衣:でも、ふーかは楽しめたんだよね? 冬華:うん、楽しかったよ!紅衣とピアノ弾けて楽しかった 冬華:紅衣とピアノで繋がれてるって幸せな事なんだって思った 冬華:紅衣がドイツから戻ってきてくれてよかったよ! 紅衣:そんなのあたしだって、日本に戻ってきてふーかに会えてよかったよ 冬華:紅衣とピアノ出来るなら、このまま続けたい 冬華:紅衣と二人なら乗り越えられるよ! 紅衣:当たり前だよ、あたしだってふーかのピアノじゃないとダメだ 冬華:うん、だから、親友としてずっとピアノ弾こうね 紅衣:うん! 0:モノクロと二つの音 0:〜END〜

0:7年前、冬華が小学3年生の頃 冬華:ん? :【♪♪♪〜♪〜♪】 冬華:綺麗な音・・・ピアノかな? 冬華:・・・ピアノかぁ〜 :【♪〜♪♪〜♪】 冬華:あはは!楽しそうに弾いてる 冬華:私も・・・弾きたい 0:冬華は毎日ピアノの音が聞こえる家を通る 冬華:あそこのおうちか〜あんまり見えない 冬華:あのピアノを弾いてる人と仲良くなれたらいいな! 0:それから冬華も毎日ピアノを弾くようになった 0:しかし2ヶ月が経った頃 冬華:あれ? 0:ピアノの音は聞こえてこなくなった 0:そして月日は経ち冬華は中学生になった :【♪♪〜♪〜♪♪】 0:冬華は朝からショパンのバラード4番を弾いている 冬華:よし! 0:朝からピアノを弾くことが日課になってる 0:学校に着くと 冬華:んーなんか噂に聞くと今日は転校生が来るらしい 冬華:怖い人じゃないといいな 0:教室で先生が噂通り転校生を呼んだ 0:女子生徒が教室に入る 紅衣:鬼頭紅衣です。よろしく 0:金髪の生徒だった 冬華:あがっ!あがががが!! 冬華:めちゃくちゃヤンキーだぁぁぁ 0:その紅衣は偶然にも冬華の隣の席になった 冬華:や、やばい・・・何か挨拶しないと 冬華:あ、アニマート〜♪ 0:アニマート=元気に、生き生きと 紅衣:・・・? 冬華:そ、そうだよねー!ピアノ用語なんて知るはずないよねぇー! 冬華:今のは無しです!ボコボコにするのだけはやめてください! 紅衣:あんた、ピアノやってんの? 冬華:え? 紅衣:・・・いや、なんでもない 冬華:そ、そう? 0:放課後になると冬華は毎日教室でピアノを弾いていた 冬華:ふー。今日もいい感じに弾けたなー 0:そして教室を出る時 冬華:ひっ! 0:教室の外には紅衣が居た 冬華:か、加藤さん、帰らないの? 紅衣:鬼頭だよ 0:そう言い残して紅衣は帰って行った 0:そして次の日の放課後も教室の外には紅衣が居た 冬華:き、き、木村さん!帰らないの? 紅衣:鬼頭だって! 0:そして次の日の放課後 冬華:中島さん帰らないの? 紅衣:なんで全部リセットされてんだよ!鬼頭だって! 冬華:ご、ごめん! 紅衣:全く失礼な奴だ 冬華:あ、体育館に呼び出してボコボコにするのだけはやめてください! 紅衣:しないわ!いつの時代のヤンキーだよ! 冬華:ヤンキーじゃないの? 紅衣:違うわ! 冬華:じゃあギャルなの? 紅衣:違うっての!どんな印象持ってんだよ! 冬華:だって金髪じゃん!金髪はヤンキーの象徴でしょ? 紅衣:これ地毛だよ 冬華:・・・え? 紅衣:見てわかんないの?あたしハーフなの 冬華:ハーフ?ヤンキーとギャルの? 紅衣:ぶっ飛ばすぞ?日本とドイツのハーフだ。転校したのもドイツから日本に戻ってきたからだ 冬華:えぇー!日本とドイツなんだ!すごいね 冬華:あ、ドイツってピアノ有名だよね!ピアノやってるの? 紅衣:・・・うん、やってるよ 冬華:じゃあ一緒にピアノ弾こ? 紅衣:・・・わかった 0:紅衣はピアノの椅子に座る 0:紅衣がピアノを弾いた瞬間 冬華:・・・え 0:紅衣が弾いたのはシューマンの飛翔という曲 冬華:なんだろうこの独特なテンポ、この曲は羽ばたく鳥のイメージだったけど 冬華:やっと解放されて自由に踊ってるような、そんな感覚 紅衣:ふぅー 冬華:鬼頭さんすごいよ! 紅衣:紅衣でいいよ 冬華:く、くくく、くぃ!! 紅衣:はいはい、焦らずゆっくり行こうね 紅衣:あんたの名前は? 冬華:私は冬華 紅衣:長い!言いにくい!ふーかって呼ぶわ 冬華:3文字って長いの!? 紅衣:まあ、何はともあれ久しぶりにピアノ弾いたなー 冬華:そうなの? 紅衣:うん、1年ぶりくらい 冬華:なのにそんなに上手いんだ!何歳からピアノ弾いてるの? 紅衣:3歳の頃からだよ 冬華:す、すごい・・・ 紅衣:ううん、でも、ふーかのおかげで色々思い出せた気がする 紅衣:ありがとー! 冬華:・・・うん! 0:冬華と紅衣のモノクロの世界が始まった 0:時が経ちある日のこと 冬華:あ、来た来た。紅衣〜アニマート〜! 紅衣:あ、アニマート〜本当にここふーかの家? 冬華:うん、そうだよ 紅衣:でかすぎだよ!広すぎて逆に緊張するわ! 冬華:広いのかな? 紅衣:おい、その感覚後々大変だぞ? 冬華:ねえねえ、紅衣!今日は何弾く?私の家防音室もあるから好きな時に好きなだけピアノ弾けるよ! 紅衣:防音室まで・・・とんでもないお嬢様なんだな 冬華:何が? 紅衣:なんでもない 冬華:紅衣が私の家に来るなんて気分はクレッシェンドー! 0:クレッシェンド=段々強く :♪♪〜♪〜♪♪〜 0:しばらくはピアノを引き続ける 冬華:紅衣は本当にピアノ上手だよね 紅衣:そう? 冬華:うん!なんかコンクールとか出てたの? 紅衣:んーまあ一応?ドイツに居た時にちょっと 冬華:えー!凄いじゃん! 紅衣:凄くないよ、なんの賞も貰ったことないしやっぱ本場はレベルが違う 冬華:そっか、紅衣でもそうなんだ 紅衣:・・・だから、また1歩進みたいんだ 紅衣:だからふーか、中学の文化祭でピアノの演奏会やろうよ! 冬華:え!演奏会!?無理無理!私出ないよ!? 紅衣:なんでだよ 冬華:ほら、紅衣は知らないかもだけど中学の文化祭って高校と違って体育館使えないんだよ? 冬華:今年はフリーマーケットやってるみたいな話してたし 紅衣:じゃあ高校でいいよ、あたしと同じ高校に行こう 冬華:無理でしょ!紅衣ドイツから日本に来たばっかでしょ!?頭悪いよね!? 紅衣:頭悪そうなお前が言うな!5教科見せてみろ! 冬華:258点! 紅衣:431点! 冬華:ま、参りました〜 紅衣:雑魚が 0:高校受験のため勉強をする 冬華:まいねーむいずざぺん! 紅衣:お前今までどんな教育受けてきたんだよ! 冬華:薔薇って漢字は書けるんだけどテスト出てくるかな? 紅衣:一点張り過ぎだろ!出てこねーよ! 0:そんなこんなで高校生になった 0:冬華と紅衣は一緒に登校する 冬華:ひぃぃ電車怖い 紅衣:なに怖がってんだよ、電車乗らないのか? 冬華:人が苦手な私が自ら進んで人混みの中に入ると思いますか!? 紅衣:ドヤ顔で言うなよ。早く乗れ 0:そして学校に着く 紅衣:ふーか、クラス表見てきて 冬華:私が!? 紅衣:ふーかの方が背大きいでしょ? 冬華:そうだけど人混みが 紅衣:人混み克服だ!行け! 冬華:無理! :ゴスっ! 冬華:暴力はやめようよ 紅衣:なんかムカついた! 0:結局クラス表は紅衣が見に行った 紅衣:おーい!ふーか!同じクラスだったよ!! 冬華:ほんとに!?やったー! 紅衣:じゃあ教室の場所どこにあるか聞いてきて 冬華:無理です 紅衣:どこまでコミュ障なんだよ、あたしとは話せたくせに 冬華:紅衣はピアノ友達だから 紅衣:いいから聞きに行け! 冬華:あいたっ!もう・・・ 0:1分経過 冬華:どうしよ、なんて話しかけよ 0:2分経過 冬華:まともに地図も読めない馬鹿だと思われるー! 0:3分経過 冬華:紅衣〜助けて〜 紅衣:小心者が!! 冬華:わ、私は小心者じゃないよ!ちょっと人見知りなだけ!えいえい!ポカポカポカっ 紅衣:人に話しかけるのに3分以上かかるやつのどこが小心者じゃないんだよ! 紅衣:お前は正真正銘の小心者だ!噛まずに言えたあたしを褒めやがれこのやろー!おらおら!:ボコボコボコ!! 0:勝者・紅衣 冬華:い、一発が重い 紅衣:あたしに勝てると思うなよ? 0:結局教室も紅衣が聞いた 紅衣:全くーなんでそんなに人が苦手なんだよ 冬華:色々あったの!むかしからこうだから気にしないで 紅衣:ふーん、まあ文化祭が来るまで特訓だな 冬華:ほんとに出るつもりなんだ・・・ 紅衣:当たり前だろ、お前も出んの 冬華:私も!?気が進まない 紅衣:絶対連れ出すからな 冬華:んーーまあねー 0:思い切り誤魔化す冬華 0:そして月日が経つ 0:冬華と紅衣は冬華の家で毎日ピアノを弾いていた 冬華:紅衣の家ってピアノあるの? 紅衣:一応あるよ、もう何年も弾いてないけど 冬華:そうなんだ!今度紅衣の家に行ってもいい? 紅衣:んーーまあふーかならいいか、 冬華:やったー!興奮がメゾフォルテ! 0:メゾフォルテ=やや強く 0:冬華と紅衣は紅衣の家に向かう 冬華:紅衣の家って自由の女神あるの? 紅衣:は?なんで? 冬華:ドイツにちなんで! 紅衣:自由の女神はニューヨークだぞ? 冬華:そうなの?じゃあエッフェル塔は? 紅衣:それはパリ 冬華:万里の長城は? 紅衣:中国 冬華:モアイ像 紅衣:イースター島 冬華:ドイツって何も無いの? 紅衣:お前がバカなだけだろ! 0:紅衣の家に着く 紅衣:アパートだからふーかの家より何倍もせまいよ? 冬華:全然いいよ 0:中に入る 冬華:わぁー!大きいピアノ! 紅衣:バカ!でかい声出すな! 冬華:なんで? 紅衣:猫飼ってるの。臆病だからすぐ逃げる 冬華:可愛いじゃん、猫ちゃんの名前は? 紅衣:リベ 冬華:リベちゃんかー仲良くなれるといいなー 冬華:あ、紅衣のピアノ弾いてもいい? 紅衣:・・・うん 0:冬華は椅子に座る 冬華:え!これベヒシュタインじゃん!ドイツの! 紅衣:そうだよ、ドイツに居た時パパに買ってもらったんだ 冬華:すっごいね!高級ピアノだ 冬華:紅衣のお父さんは今どこにいるの? 紅衣:・・・死んだよ 冬華:・・・え? 紅衣:ドイツで事故死したの 冬華:・・・ごめん、聞いちゃダメだった? 紅衣:全然?ふーかには何も隠さないからね 冬華:・・・ありがとう 紅衣:んじゃピアノ弾こ 冬華:うん!じゃあリベちゃんが来るように猫踏んじゃったでも弾こうかな 紅衣:縁起悪すぎだ!どけ、猫のワルツ弾く 0:紅衣はショパンの猫のワルツを弾いた 0:この曲は猫が自由に散歩している様子を表した曲で紅衣も軽快な表情で弾いていた :にゃーん 紅衣:お?リベ!初対面の人が居るのに出てくるの珍しいじゃん!初めてかな? 冬華:リベちゃんモノクロ柄なんだ、私に懐いたの? 紅衣:同じまぬけ同士だからかな? 冬華:悪口フォルテッシモ! 0:フォルテッシモ=凄く強い 紅衣:でも、どこかふーかのピアノは惹き付けられるよなー 紅衣:ピアニストになるにふさわしいな 冬華:え?ピアニスト? 紅衣:ん? 冬華:私、ピアニストになるつもりなんてないよ? 紅衣:・・・え? 紅衣:な、なんで?こんなにピアノ好きならてっきりピアニストになるもんだと思ってたけど 冬華:そんなの言ったことないでしょ。人前に出るの苦手だし 紅衣:なんで・・・じゃあ本当に文化祭出ないの? 冬華:出ないよ。最初から言ったじゃん 紅衣:・・・ 紅衣:・・・わかったよ、ふーかの気持ちはそんなもんだったんだな 紅衣:見損なったよ。ふーかの口からピアニストになりたくないなんて聞きたくなかった 冬華:でも、勝手に紅衣が決めつけたことでしょ!?やりたくないものはやらないよ 紅衣:勝手にしろよ、あたし一人でも文化祭出るよ 冬華:うん。そうして 0:お互い気まずい雰囲気になるが学校ではいつも一緒だった 冬華:紅衣ー?アニマートー 紅衣:うん 冬華:ど、どうしたの?その顔 紅衣:・・・昨日、ずっとふーかのこと考えてた 冬華:・・・え、告白? 紅衣:ちげーよ 冬華:じゃあどうして? 紅衣:・・・ふーかがピアニストになりたくないってどういうこと? 冬華:そのままの意味だよ。ピアノは好きだけどピアニストにはならない 紅衣:どうして! 冬華:だって・・・ピアノは趣味だし、そこまでなろうと思ってない 紅衣:あたしは、ふーかと一緒にピアニストになりたかったんだよ なんで…1人でピアノ頑張らないといけないんだ 冬華:しょうがないよ・・・お父さんの・・・娘なんだもん 紅衣:・・・は?どういう事だよ 冬華:っ! 紅衣:ふ、ふーか? 冬華:つ、ついてこないでください! 紅衣:・・・ 冬華:・・・ご、ごめん 紅衣:・・・こっちこそごめん、あたし一人で帰るわ 0:そしてある日 紅衣:ふーか、一緒に帰ろ 冬華:うん 紅衣:雨降ってんのか、傘持ってないや 冬華:私持ってるよ、中入る? 紅衣:ありがと 0:しばらく歩くと 紅衣:あたし今日バイトだからここまででいいよ 冬華:そうなの?バイト先まで送ろうか? 紅衣:すぐ近くだからいいよ 紅衣:・・・ねえ、ふーか 冬華:ん? 紅衣:文化祭本当に出ない? 冬華:うん、出ないよ 紅衣:・・・わかった 冬華:うん、じゃあね 0:冬華は家に着く 冬華:はぁ、紅衣のあんな悲しそうな顔初めて見たな 冬華:でもどうしても人前には立ちたくない 冬華:昔のことを思い出すのは嫌なんだ :♪♪〜♪♪〜 0:冬華はピアノを弾く 冬華:この音だけが私の嫌な思い出を消してくれる :ピーンポーン 0:冬華の家のインターホンが鳴る 冬華:誰だろ? 0:冬華が家の玄関を開けると 冬華:・・・紅衣!? 紅衣:・・・ 冬華:どうしたの!?びしょびしょじゃん、バイトは!? 紅衣:休んできた 冬華:なんで!? 紅衣:やっぱ納得出来ないんだよ 0:紅衣は冬華の胸ぐらを掴んで玄関の外に出す 冬華:あ、あぶな! 紅衣:教えてよ、ふーかのこと、文化祭に出たくない理由とピアニストになりたくない理由 冬華:・・・紅衣に迷惑かかるし 紅衣:迷惑!?お前何考えてんだよ!いつも迷惑ばっかかけてんだろ!慣れてんだよこっちは! 紅衣:こういう時ばっか迷惑がかかる?ふざけんな!最後まであたしに甘えろよ! 冬華:・・・紅衣 紅衣:お前の気持ちはどこにあんだよ!ぶつけてよ!あたしに!友達だろ! 紅衣:親友だろ!! 冬華:・・・うん 0:冬華は紅衣を抱きしめる 冬華:・・・うん、ありがと、私のこと教えるね 紅衣:ふーか 冬華:夢咲来夢って知ってる? 紅衣:うん、日本で1番有名なピアニストでしょ?ドイツでも有名だったぞ 冬華:そうだよね 冬華:・・・私のお父さんなんだ 紅衣:・・・え!? 紅衣:えー!ふーかのパパ夢咲来夢だったの!? 紅衣:お前よくもそんなこと今までかくし・・・へっくしゅん! 冬華:寒いよね?中に入って 紅衣:うん、ふーかの服でよだれ拭くわ 冬華:ねえ!汚い! 0:紅衣は髪と服を乾かしながら冬華に聞く 紅衣:んで、気になり過ぎる続き聞かせて 冬華:うん、物心がつく前かな?防音室でピアノを弾くお父さんの姿は覚えてる 冬華:けど、顔ははっきりとは覚えてないの 紅衣:結構昔から有名だったもんね 冬華:うん、有名人だからやっぱ取材に来る人が多かったの 冬華:小学生の頃にマイクとカメラを向けられて大人の人がいっぱい来る 冬華:そんな日々がほぼ毎日続いてさ、だからそれ以来人混みも嫌いだし人前に経つことも苦手だった 冬華:だからピアノのコンクールも出たことないし人前でピアノを弾いた事は無い 紅衣:でも、そんなトラウマがあるならなんでピアノを始めたんだ? 冬華:家の近くでね、楽しそうなピアノの音が聞こえたの 紅衣:それだけ? 冬華:それだけ、でもそのピアノに心動かされて私はピアノ始めたんだ 紅衣:そっか、まあピアニストになりたくない理由も文化祭に出たくない理由もわかった 紅衣:子供の頃のトラウマは残るのはあたしにもよくわかるよ 紅衣:だからさ、ふーかがピアノ始めるきっかけになった場所に連れてってよ 冬華:今はピアノの音聞こえないよ? 紅衣:いいから、早く! 冬華:行動力アレグロ! 0:アレグロ=急速に 0:2人は冬華のピアノを始めるきっかけの場所に行く 冬華:ここだよ 紅衣:ここって・・・ 冬華:うん、この壁の奥の家からピアノの音が聞こえたの 紅衣:・・・ふふっ 冬華:ん?どしたの? 紅衣:やっぱふーかとピアノ弾きたくなった! 紅衣:今度はあたしの番ね! 冬華:え!ちょっと! 0:紅衣は冬華の手を引っ張り紅衣の家に向かった 冬華:どうしたの?いきなり 紅衣:やっぱあたしはふーかとピアノを弾くべきだと思った! 0:紅衣の家の中に入ると 紅衣:おー!リベ、早速ふーかに慣れたんだなー 冬華:もうお友達だもんね :にゃん? 紅衣:友達ではないみたいだぞ 冬華:ひどいー! 紅衣:まあいいや、今度はあたしの話するから座って 冬華:うん 紅衣:あたしの話ってよりはリベの話だな 冬華:リベちゃん? 紅衣:うん、リベはね、ドイツで拾ってきた捨て猫なんだ 冬華:そうだったんだ 紅衣:あと、あたしのミドルネームも教えてあげる 冬華:そんなのもあるんだ、なんて名前なの? 紅衣:エリーゼ 冬華:・・・エリーゼ 紅衣:あたしのパパもピアノ好きだったんだ、だからあたしは日本でもコンクールに出てたし、小学生の頃から賞取ってたんだ 紅衣:でもね、ドイツに行ってからは全然コンクールで賞は取れなかった 紅衣:だから諦めたんだコンクールもピアノも。そんなことしてたらパパは事故で亡くなったの 紅衣:亡くなる前、野良猫のリベとパパは仲良しだったみたいで、リベが道路に飛び出したところにトラックが走ってきて 紅衣:リベを庇ったパパが代わりに死んだんだよ 紅衣:それだけならリベなんて飼ったりしない。けど、パパは毎日このモノクロの猫になんて話しかけてたと思う? 冬華:・・・何? 紅衣:エリーゼがコンクールで最優秀賞取れますようにだってさ 紅衣:そんな願い込められたら、もうリベを飼うしかないじゃん 紅衣:だから、リベの為に、パパのために、またピアノを始めようと思ったんだ 紅衣:そのきっかけがふーかだよ 冬華:わ、私!? 紅衣:そうだよ、ふーかのピアノはやっぱ人の心を惹き付ける力がある! 紅衣:あんなに綺麗な音色聞いたことないんだよ、だからあたしもそうなりたいと思ってた 紅衣:あたしはふーかのピアノに救われたんだよ! 冬華:・・・紅衣 冬華:昔ね、顔は覚えてないけどお父さんが言ってた言葉は鮮明に覚えてる 紅衣:何? 冬華:人の心はモノクロであるべきだって 紅衣:モノクロの心? 冬華:うん、何色にも染まる心の白と何色にも染まらない心の黒 冬華:人の意見を素直に受け入れる心の白と、自分の意思を強く持つ心の黒があれば美しい旋律のように素敵な人になれるって 紅衣:なんか偉大な人の言葉って感じだな 冬華:だからさ!紅衣が私のピアノで救われたって言ってくれるなら受け入れようと思う 冬華:人を素直に受け入れる心の白で 紅衣:・・・ふーか 冬華:一緒に出よ!文化祭! 紅衣:・・・うん!出よう! 0:それから2人は文化祭に向けて練習を重ねた 0:いや、練習というよりはお互いの音を楽しんでいただけだった 紅衣:綺麗な音だな、ふーかのピアノは 冬華:ううん、紅衣の音も喜んでる気がする 冬華:楽しいね! 0:そして文化祭当日 0:紅衣は冬華の家に行く 紅衣:ふーか?アニマート。起きてるかー? 冬華:ばい。おびべばぶ。 紅衣:今からそんな緊張してどうすんだよ 冬華:だって〜!ミスしたら全部終わりじゃん!! 紅衣:ミスしなきゃいいんだよ 冬華:あなたにはわからないでしょうね!! 紅衣:うるさい!小心者! 0:当日でも変わらない2人であった 0:そしていよいよ本番前になる 紅衣:あれ?ふーか?あんま緊張してないの? 冬華:うん、全然余裕 紅衣:へぇー本番前になると緊張しなくなるのか 冬華:そうみたいだね、このままピアガガガガガガ!!! 紅衣:ええええー!!壊れた!? 冬華:ワタシ、キオクガ、ナクナリマシタ 紅衣:ダメだこりゃ 0:冬華と紅衣はステージに呼ばれる 紅衣:ほら、行くぞ 冬華:無理だよー!人がいっぱいいるなんて無理無理! 紅衣:今更駄々こねんな!もう幕上がるぞ! 冬華:無理だよー!人がいっぱいいるなんて無理無理! 紅衣:2回も同じこと言うな!! 冬華:無理だよー!人がいっぱいいるなんて無理無理! 紅衣:まだ壊れてんのかよ!! 冬華:緊張なくなる方法ない? 紅衣:んー人っていう字を手のひらに3回書いて飲み込むと良いらしいよ 冬華:わかったやってみる。人。人。 冬華:・・・ぎゃあああーー!!!人ーーー!!! 紅衣:めんどくせーなお前!! 冬華:もう、どうやっても緊張取れないよ 紅衣:はぁ、まったく 紅衣:ふーか、面白い話しようか? 冬華:何? 紅衣:ふーかがピアノを始めるきっかけになったピアノの音の場所、何かわかる? 冬華:わかんないよ、あそこは壁の裏側だもん 紅衣:あそこは、あたしがドイツに行く前に住んでた家だよ 冬華:・・・えーー!! 紅衣:ね!面白いでしょ? 冬華:面白い通り越して当たり前みたいだよ 紅衣:そう!ふーかのピアノを聞いたあたしはまたピアノを始めた、そしてふーかはあたしのピアノを聞いてピアノを始めた 紅衣:あたし達はお互いのピアノで繋がってたんだよ! 冬華:・・・最高だよ!あのピアノの音は紅衣だったんだ! 0:紅衣は冬華を抱きしめる 紅衣:前にモノクロの心を持つって言ってたろ? 冬華:うん 紅衣:確かにモノクロであるべきだと思うけどあたしは違うと思う 紅衣:モノクロの心を赤にも青にも黄色にも、ピアノを奏れば人の心を色付かせれるんだよ 紅衣:色付かせて、モノクロの世界を変えるんだ 紅衣:あたしとふーかが、お互いのピアノで世界が変わったように! 冬華:・・・うん!私と紅衣はここから始まるんだね! 0:幕が上がる 0:冬華と紅衣が弾いたのは連弾曲と言われる1台のピアノを2人で弾くものだった 0:ブラームスのワルツOp39-15という曲 0:愛をテーマにしたこの曲は今の冬華と紅衣にはぴったりだった 冬華:紅衣の音がする 紅衣:ふーかの音がする 冬華:紅衣の音がまた 紅衣:モノクロの世界を色付かせる 冬華:ふわりと暖かい音色が赤に染まる 紅衣:飛んで交わった音色が青に染まる 冬華:人の心に弾んだ音色が黄色に染まる 紅衣:地面に転がる音色が緑に染まる 冬華:歪んではなじむ音色が紫に染まる 紅衣:ゆっくり揺れる音色がオレンジに染まる 冬華:紅衣の音色が私のモノクロを染める 紅衣:ふーかの音色があたしのモノクロを染める 冬華:二つの音で 紅衣:モノクロの世界を変えていく 0:冬華と紅衣の演奏が終わると盛大な拍手が送られる 0:ステージを出ると 紅衣:ふーか! 冬華:紅衣! 0:二人は抱き合う 紅衣:ふーか、今日の演奏楽しかった? 冬華:うん、楽しかったよ!本当に楽しかった 紅衣:よかった、あたし、本当は不安だったんだ 冬華:どうして? 紅衣:ふーかが緊張するのはわかってた、これで失敗してトラウマになるんじゃないかと思ってた 紅衣:でも、ふーかは楽しめたんだよね? 冬華:うん、楽しかったよ!紅衣とピアノ弾けて楽しかった 冬華:紅衣とピアノで繋がれてるって幸せな事なんだって思った 冬華:紅衣がドイツから戻ってきてくれてよかったよ! 紅衣:そんなのあたしだって、日本に戻ってきてふーかに会えてよかったよ 冬華:紅衣とピアノ出来るなら、このまま続けたい 冬華:紅衣と二人なら乗り越えられるよ! 紅衣:当たり前だよ、あたしだってふーかのピアノじゃないとダメだ 冬華:うん、だから、親友としてずっとピアノ弾こうね 紅衣:うん! 0:モノクロと二つの音 0:〜END〜