台本概要
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タイトル | God Smack Down:Ep2【Punch Drinker】 |
---|---|
作者名 | やいねん (@oqrbr5gaaul8wf8) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 6人用台本(男5、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
ゴッドスマックダウン:Ep2【パンチドランカー】 謎の眼帯男に捕まってしまった男の子。 そこに救世主かのように現れた悪いおじさん一味の一人、ヒゲもじゃおじさん。 一方、街を守る頼りないお巡りさん二人。 そして、州知事の存在……。 細い糸が徐々に絡み合う中、謎が少しずつ明らかになってゆく。 欲望渦巻くこの街で、ひとつの噂をきっかけに人々が奔走するSFクライム活劇 ご自由にどうぞ 291 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ナット | 男 | 13 | 北米系、十代半ば。『スケーターボーイ』と呼ばれる運び屋。迅速かつ正確に配達を行う。様々な業界で活躍し信頼も厚い。おませな小僧。一人称がオイラ |
イディ | 男 | 29 | アラブ系、40代前半。『ムハリブ・ナビル』のメンバー。ボスのお気に入り。2m超の巨漢。元プロボクサーのヘビー級王者。カニバリズムの癖がある。キレやすい。パンチドランカー。髭がスゴい。 |
ヴィー | 男 | 32 | 年齢不詳。ある組織の指示に従って行動している。身長2メートル超。肌が死人の様に青白い。白いたてがみに白い口髭の屈強な躯体。右目に眼帯を着けた男。タキシード姿。人間を見下している。圧倒的に強い。 |
オーウェン | 男 | 8 | 南米系。40代後半。元軍人。戦後、カウルーン州の復興を成し遂げた実業家であり統治者、州知事。娘がいる。褐色の肌に黒髪ちょび髭オールバック。飄々としているが、時折冷酷さを見せる。 |
マオ | 男 | 39 | 欧米系。カウルーンセキュリティに勤務するベテラン警備員。30代半ば。普段からやる気がない。金髪クセっ毛。たれ目無精髭。細ノッポスーツ。 |
ビリー | 女 | 39 | 欧米系。カウルーンセキュリティに勤務する新人警備員。マオのバディ。20代前半。おしゃべり好き。オカルト好き。刺激求めがち。短髪の茶髪、声でかい、失礼。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
ナット:オイラはまだ子供だ。そんなのわかってるさ。身体も小さいし、よく虐められるよ。立ち向かっても返り討ちに遭うのが落ちだ。じゃあどうしてたかって?
ナット:逃げるんだ。相手が諦めるまで、ただひたすら逃げる。逃げ道なんていくらでもあるんだから。
ナット:そして気が付いた時には、この街の道という道を知り尽くしていたんだ。スゴいでしょ?財布をスッたり、露店でケバブをくすねてもバレやしないし、万が一バレて追っかけられても逃げればいいんだから。
ナット:運び屋はその延長線かな。この街のありとあらゆる最短ルートが頭に叩き込まれてるからね。確実に、迅速にお届けできるよ。完全無欠のスケーターボーイとはオイラの事さ。
ナット:誰もオイラを捕まえる事なんて絶対に出来やしない……はずだったんだけど。今回は過去一番、ヤバいかもしれないんだよねぇ……。
0:
0:
0:サウスエリア、繁華街の裏路地。ナットは腰を抜かしている。
0:イディが対峙する相手は、身長2メートル超。白いたてがみに屈強な躯体。右目に眼帯を着けた男。
イディ:「テメェは何者だ、この眼帯野郎。」
ヴィー:「……邪魔だ、退け。」
ナット:「次から次へと……一体なんだって言うんだぁ……。」
イディ:「このガキを拐おうとしていたな。何が目的なんだ。」
ヴィー:「……」
イディ:「こちとら気が立ってんだ。無理矢理にでも聞き出したっていいんだぞ?」
ヴィー:「……よく喋るな、人間。」
イディ:「あんだと?素人だからって殴られないとか思ってんじゃねぇぞこの野郎。」
ヴィー:「お前と話すことはない。退け。」
イディ:「……テメェに無くてもこっちは大有りなんだよぉ!こいつを拐って何するつもりだったんだぁ、おい!」
ヴィー:「……」
イディ:「聴こえてないってか?じゃあ要らねぇよな、そんな耳は……。」
0:イディ、拳を構える。
ナット:「ああ、ヤバい、イディが拳を構えちゃった……」
ヴィー:「なんのつもりだ?」
イディ:「知ってるか?ボクシングヘビー級世界チャンピオン、二十五回連続防衛記録を持つ『イディ・ハメド』ってボクサーがいてな。そいつの最後の試合。十一ラウンドの時、勝利が見えていたにも関わらず、興奮のあまり相手選手の耳を喰い千切ったんだ。」
ヴィー:「……ほう。」
イディ:「俺はカッとなるとついつい手が出ちまうんだ。男でも女でも関係ねぇ。そんで、ボコした後にゆっくり耳を喰い千切るのが俺の楽しみなんだよ…。」
ヴィー:「……だからどうした。」
イディ:「肝が据わってるな……久々に興奮するぞ!お前の耳、喰い千切ってやるっ!うぉらっ!」
ヴィー:「身の程を知れ、人間……。」
0:渾身のボディブローを見舞うイディ。鈍い音が響く。
0:同時にヴィーの左フックがイディのこめかみを砕いていた。
イディ:「うがぁっ…!」
ナット:「えっ……イディが相討ちになるなんて……」
ヴィー:「フンっ、いいボディブローだった。だが所詮は人間。口程にもない。」
イディ:「テ、テメェ……何者なんだ。」
ヴィー:「言っただろ。話すことはないと。」
イディ:「くそったれ……」
0:ゆっくりと倒れ込むイディ。歩みを進めナットに近付くヴィー。
ナット:「あぁ…こっちに来るな……」
ヴィー:「おい、『GSD』はどこだ。」
ナット:「『GSD』?な、なんの事だかわからないよ!」
ヴィー:「話すつもりはなさそうだな。別にいい。脳味噌を見るまでだ。」
ナット:「脳味噌を見る!?じょ、冗談やめてくれよ!本当に何も知らないんだ!」
ヴィー:「安心しろ。死ぬだけだ。」
0:
0:カウルーンシティの中央に聳え立つセントラルタワーの最上階、州知事の部屋。オーウェンが電話をしている。
オーウェン:「うん、そうそう。やっぱり盗まれたよ。お前が言った通り、奴等の仕業っぽい。うん。……だって、奴等以外に盗めるわけないからな。友達だと思ってたのになぁ。...…いや、別に傷ついてないよ。奴等も仕事でやってるわけだし、仕方ないさ。……捕まえるかって?そんなことしないよ。彼は同じ釜の飯を食った戦友だからね。それに州知事にまで登り詰めた俺にはもう必要のない代物だし、泳がせておいた方が面白そうだ。アレをめぐって欲望のままに奪い合う人々を観察してみたいし。……ああ、悪い。これからリンキーと外食するんだ。外は危ないって?大丈夫だよ。召し使いも連れていくから。もう切らないと。うん、またな、兄弟。」
0:娘のリンキーが食事の時間を知らせにくる。
オーウェン:「お待たせ、リンキー!もう御昼ご飯の時間だなんて、忙しくて気が付かなかったよぉ!早く行かないとブロンディに小言を言われちゃうね。さ、行こうか!」
0:
0:路地裏にて
ナット:「いやだぁ、死にたくないよ……!」
ヴィー:「無作為に人間を殺す趣味はない。持っているのなら寄越せ。でなければ在りかを言え。もし嘘を吐いたら地獄の果てまでも追いかけて、必ずお前を殺す。」
ナット:「そ、そんなぁ……。」
ヴィー:「最後にもう一度問う。『GSD』はどこだ。」
イディ:「ううぅ……ハハ、やっぱり知ってやがったかぁ……」
0:立ち上がるイディ。
ナット:「イディ!」
ヴィー:「フン……立ち上がるか、人間。」
イディ:「てめぇのお目当ては『GSD』って事か。どこの誰だか知らないがなぁ、ありゃあ俺達『ムハリブ・ナビル』のモンだ!」
ヴィー:「貴様らも『GSD』を知っていたのか。。」
イディ:「オカルト好きなウチのボスがご執心なんだ。まさか本当にあるなんてなぁ。」
ヴィー:「貴様らが保有しているのか。」
イディ:「持ってねぇからこんなことになってんだよ!どこにあんのか、俺だって知りてぇ!」
ヴィー:「なら時間の無駄だ。話すことはない。」
イディ:「スカシやがって……っておい、いねぇぞ!」
ヴィー:「なにがだ。」
イディ:「スケーターボーイだよ!てめぇの所為で逃げられちまったじゃねぇか!」
0:辺りを見渡してもナットの姿は何処にもない。
ヴィー:「……сука блять(スーカ・ブリヤット)!」
0:
0:
0:サウスエリアを巡回中のカウルーンセキュリティ、マオとビリーの車中。
ビリー:「……退屈っすね。」
マオ:「……なにが。」
ビリー:「パトロール。」
マオ:「まあ……仕事だしな。」
ビリー:「…つまんな。」
マオ:「そうだな……仕事はつまらんものだからな。」
ビリー:「……なんか面白い話とか聞きたいっす。」
マオ:「聞きたいな。」
ビリー:「いや、マオ先輩が話すんすよ。」
マオ:「俺が?ヤだよめんどくさい。」
ビリー:「何かしらあるでしょ!なんでもいいんすよ、雑談なんすから!」
マオ:「仕方ない後輩だ。なんだろうなぁ……えーっと、さっき犬のフン、踏んじゃった。」
ビリー:「えええっ!じゃあ今、そのままの靴で運転してるんすか!?」
マオ:「もちろん。」
ビリー:「汚いしクサいっす!」
マオ:「ひどいなぁ。ちゃんと地面に擦り付けから大丈夫だよ。」
ビリー:「もう遅いっす!印象拭えないっす!いまから今日一日、マオ先輩は『汚いしクサい男』に決まりっす!」
マオ:「それ意味合い変わって聞こえるんだが。あんまりイジメるなオッサンを。てか、そっちこそなんか話せよ。面白い話。」
ビリー:「聞きたいっすか?面白い話。」
マオ:「いや、あんまり。」
ビリー:「ヒドイ!そこは『ビリー、君のその素敵なお声で楽しいお話を沢山聞かせておくれ。』ってイケボで言って下さいっすよ!」
マオ:「絶対言わない。いいから早く話せ。」
ビリー:「よろしい!では、最近流行り
の都市伝説の話を……」
マオ:「(遮るように)またオカルトかー、やめてくれー」
ビリー:「なんでっすか!」
マオ:「いっつもいっつもそればっかり、お前のオカルト話の所為で耳にタコが出来たわ。」
ビリー:「だって面白いじゃないですか!」
マオ:「はぁ~……聞くだけ聞いてやるよ。」
ビリー:「ごほんっ……この話は三四半世紀まで遡るんすが…」
マオ:「手短にな。」
ビリー:「わかってるっす!三四半世紀前と言えば、ちょうどシンギュラリティが起きた頃っすね。当時、光遺伝学の権威として有名だったニナガワ博士って人がいたんす。」
マオ:「ニナガワ……へぇ~。」
ビリー:「そのニナガワ博士が、当時の技術では到底不可能だとされていた発明品を遺したんす。俗に言うオーパーツってヤツっすね。」
マオ:「あぁ…オカルトだぁ…。」
ビリー:「その名も『ゴッド・スマック・ダウン』。なにやら光遺伝学に基づいて作られたアイテムで、一番最初に起動した人物を光の反射で記録して、それ以降にそのアイテムから放たれた光を目の当たりにした人達は起動者の操り人形になってしまうと言う、世にも恐ろしいアイテムなんすよ~はい~。」
マオ:「その手の話は他にも沢山聞いたぞ。真新しくもないし、つまんね。」
ビリー:「それが!それがですよ!本当に存在するらしいんすよ!」
マオ:「うわ、顔を近づけるな!事故る事故る!」
0:マオ、急ブレーキかける。ダッシュボードに頭をぶつけるビリー。
ビリー:「うがぁっ!あイタたー!ダッシュボードに頭がぁ!頭がぁ!」
マオ:「いや、大袈裟すぎん?」
ビリー:「いま、急ブレーキかける必要なかったすよね!?」
マオ:「うん、ない。頭ぶつけるだろうと思ってやった。」
ビリー:「街中で無意味な急ブレーキ……カウルーンセキュリティが、聞いて呆れるっすよ……。」
マオ:「あはははは。」
0:無線機から連絡が届く。
ビリー:「イタタぁ~……マオ先輩、無線機鳴ってるっすよ。」
マオ:「そうだな、頼んだ。」
ビリー:「痛すぎて無理っす。」
マオ:「はぁ、使えん後輩め……はい、こちらマオ。え?喫茶店で大乱闘?女2人が?あーはい、了解でーす。」
ビリー:「ちょうどいいっすね……コーヒー飲んで落ち着きたいっす。」
マオ:「これ仕事だからな。」
0:
0:レストランにて、オーウェンは娘のリンキーと召し使いのブロンディと食事をしている。考え事をしている。
0:
オーウェン:あの盗まれた代物、報道各社には機密文書とだけ伝えてあるが……感の良いバカ共は気付くだろう。ニナガワ博士のメモ書きが正しければ、起動者である私が死なない限り効力は失われない。残された手段としては、何らかの方法で初期化を行うか、本体を破壊するか。一つ気になるとしたら、あのアイテムに刻まれた暗号のようなもの。有識者を募って解読を試みたこともあったが、結局解らずじまいだった。今となっては大した事ではない。コレクションを一つ失なっただけなんだから。
0:話を無視しているオーウェン娘からたしなめられる
オーウェン:「……え?ああ、勿論聞いていたよ。食事に夢中になっていただけ。パパがリンキーのお話を聞き逃すわけないじゃないか。いや、本当だって!もう~そんなに怒らないでよ~。……ああ、仕事の電話だ。ちょっと失礼するね。ちゃんとブロンディの言うこと聞いてるんだぞ?」
0:
オーウェン:最後に手にする者は一体誰なのだろう。巡り巡って私の元へ帰ってくるのか、それとも……
0:
0:場面は再び路地裏。イディとヴィーが睨みう。
イディ:「よくも邪魔してくれたな、この野郎。ちょっとガタイが良いからって調子に乗んなよ?まあ、俺ほどではないがな。」
ヴィー:「……気が変わった。相手してやろう、人間。」
イディ:「人間、人間って……なんなんだその呼び方!てめぇは中二病かコラァっ!」
ヴィー:「これは事実だ。人類は我々の存在を決して超える事は出来ない。だが、愚かにも抗い健気に立ち向かう様は、嫌いじゃない。さあ来い、貴様の覇気を見せてみろ。」
イディ:「意味わかんねぇ事ばっか抜かしてんじゃあ、ねぇっ!」
0:再度攻撃を仕掛けるイディ。あえて避けずに攻撃を受けるヴィー。イディのフックが顔面に当たるも軽く下がる程度のヴィー。
ヴィー:「……それが全力か?」
イディ:こいつはたまげたな……。手応えはあったぞ。しかもあの角度で顎にヒットしたのに、倒れないなんて。こいつ、マジで人間じゃねぇ。だったら……
イディ:「倒れるまで殴り続ける!」
ヴィー:「フッ、面白い奴だ。」
0:一発、また一発とイディの拳がヴィーの顔面を繰り返し殴り続ける。
イディ:「うぉらっ!うぉらっ!うぉらっ!」
ヴィー:「……違うな。」
イディ:「んだとっ!?」
ヴィー:「相手を殴る時は……フンっ!」
イディ:「ぐあっ!」
0:ヴィーの拳がイディの頬に当たる。その威力で後方に転がり倒れる。
ヴィー:「こうやるんだ。」
イディ:「ぬぅ……まだだぁ……」
ヴィー:「諦めろ。『ホモスペリオール』の前では人間は無力だ。……だがしかし、お前は絶望を前に戦意を失わなかった。」
イディ:「なに言ってやがる、クソがぁ……」
ヴィー:「『GSD』は我々が頂く。もし次に邪魔をする事があれば、その時は必ず殺す。」
イディ:「諦めねぇ…その耳、必ず食い千ぎってやる……」
ヴィー:「フン、全くの愚か者だが、嫌いあじゃない。名前は覚えておいてやる、『イディ・ハメド』。強くなっておけ。」
0:路地裏を立ち去るヴィー。
イディ:「クソ……この俺が一撃でノされるとは。完全に身体が鈍ってやがった……。鍛え直さねぇとな……。」
0:
0:ナット、人目を掻い潜りながらとある場所へ向かっている。
0:
ナット:良かった、なんとか撒いたみたいだ。みんな、俺がブツを盗んだと思い込んでる。なんとかこの誤解を解かないと今後の仕事にも影響が……。そもそも受け渡しの時点で中身が無かったって事は、まだあの人達が持っているってことになる。どうして偽のケースを渡したのか、あの人達に何か思惑があるのか。とにかく、この出来事を伝えないと。あの人達が……サッチモ達が狙われてしまう!
0:
0:レストランのトイレで電話するオーウェン。
0:
オーウェン:「兄弟、そんなに心配するなって。その辺の奴等じゃ使いこなせないし、起動者はこの私なんだから。私の操り人形が増えるだけだ。……ヴィーが動いている?あの『死の目を持つ男』が?流石『アッシュヅ』だ、情報が早い。なるほど、お前が息巻いているのはその所為か。確かに『アッシュヅ』に渡ったら厄介だな。だが、お前がなんとかしてくれるんだろ?なぁ、兄弟。」
0:トイレに男が入ってくる。男は拳銃を取り出しオーウェンに向ける。
オーウェン:「おっと……客人が来てしまった。ああ、例の盗人だ。切るぞ。『アッシュヅ』の方は任せた。」
0:電話を切るオーウェン
オーウェン:「やあ。私を殺しに来たようだな。その判断が正しいかどうか、確かめてみようじゃないか。『レックレス・ラッシュ』……向こう見ずの男。お前に撃てるかな……サッチモ。」
0
0:渇いた銃声が響き渡る
0:
0:喫茶に到着するカウルーンセキュリティの2人
0:
ビリー:「到着したっすね!……ってギャングじゃないっすか、あの人たち!」
マオ:「うわぁ、女同士でめっちゃ殴り合い……いや蹴り合いしてるわ。間合いがプロ格闘家みたいだ。」
ビリー:「早速行くっすよ!」
マオ:「うーん……。」
ビリー:「なにやってるんすか、喧嘩止めに行くっすよ!」
マオ:「頼んだ。」
ビリー:「え!一人で行くの嫌ですよ!」
マオ:「女の喧嘩は女が止めないと。仕方ないじゃん、男が止めに入ったらセクハラで訴えてくるんだから。絶対に。」
ビリー:「面倒だからって適当な理由付けてサボろうとしないでくださいっす!」
マオ:「バレたかぁ。わかったよ。じゃあ、まずこれからだろ。」
0:拡声器で声掛けする
マオ:「ゴホン、えー君達は完全に包囲されているー。大人しく喧嘩は止めて仲良くしなさーい。親が泣くぞー。」
ビリー:「全然効果ありませんよ。包囲ってなんすか?マオ先輩と私しか居ないんすからね。……あ、なんかデカイ髭男が駆け付けて来ましたよ!」
マオ:「え、ウソウソ待ってヤバイ。イディ・ハメドじゃん。」
ビリー:「え、マオ先輩?」
マオ:「超有名ボクサーのイディ・ハメドだって。やべぇどうしようどうしよう。色紙なんてないよなぁ。あ、レシートの裏でもいいか。ビリー、ちょっとペン貸して。」
ビリー:「え、なんで?」
マオ:「サイン貰ってくるから。」
ビリー:「嫌っすよ!仕事して下さいっすよ!」
0:再び拡声器で声掛けするマオ
マオ:「イディー、イディ・ハメドー、俺めっちゃファンなんだよー。ちょっと動かないでそこで待っててー。ねぇちょっと、なに女抱き抱えてるんだよ。おーい逃げるなー。」
0:ジミンを抱き抱え車へ向かうイディ。
ビリー:「逃げるなーじゃなくて!追って下さいっすよ!」
マオ:「いや、やめとこう。」
ビリー:「なんで!」
マオ:「イディはウェストサイドのマフィア組織『ムハリブ・ナビル』のメンバーなんだよ。管轄外。」
ビリー:「こんな目の前にトラブルの種があるのに捕まえないんすか!?」
マオ:「こっちで手柄挙げちゃったらウェストサイドの連中に恨まれるじゃん。これも仕事のうちってこと。」
ビリー:「なんて不真面目な……!」
マオ:「取りあえず、コーヒーでも飲みながら事情聴取でもするか。」
ビリー:「いいっすね!飲みましょ!」
0:
0:ナット、ある建物の扉の前に到着する。
ナット:「(ノック音)サッチモ、居るなら返事して!誰でもいいから出てくれよ!リヒャルト、アユミ、ねぇ誰か居ないの!まさか、もう手遅れだったりして。……えっ?」
0:
ナット:嫌に冷たい鉄の感触が首筋に、恐らく頸動脈辺りに、それはほんの僅かにスライドしていて、屠殺前のニワトリのように、オイラは軽く命を握られていた。きっと世の中には知らない方が幸せだったり、関わらない方がいい出来事があって、今まさにその地雷を踏んでしまっていると、改めて確信した。そして、耳元で囁かれる。『ヒトリメ』だと……。
0:
ナット:オイラはまだ子供だ。そんなのわかってるさ。身体も小さいし、よく虐められるよ。立ち向かっても返り討ちに遭うのが落ちだ。じゃあどうしてたかって?
ナット:逃げるんだ。相手が諦めるまで、ただひたすら逃げる。逃げ道なんていくらでもあるんだから。
ナット:そして気が付いた時には、この街の道という道を知り尽くしていたんだ。スゴいでしょ?財布をスッたり、露店でケバブをくすねてもバレやしないし、万が一バレて追っかけられても逃げればいいんだから。
ナット:運び屋はその延長線かな。この街のありとあらゆる最短ルートが頭に叩き込まれてるからね。確実に、迅速にお届けできるよ。完全無欠のスケーターボーイとはオイラの事さ。
ナット:誰もオイラを捕まえる事なんて絶対に出来やしない……はずだったんだけど。今回は過去一番、ヤバいかもしれないんだよねぇ……。
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0:サウスエリア、繁華街の裏路地。ナットは腰を抜かしている。
0:イディが対峙する相手は、身長2メートル超。白いたてがみに屈強な躯体。右目に眼帯を着けた男。
イディ:「テメェは何者だ、この眼帯野郎。」
ヴィー:「……邪魔だ、退け。」
ナット:「次から次へと……一体なんだって言うんだぁ……。」
イディ:「このガキを拐おうとしていたな。何が目的なんだ。」
ヴィー:「……」
イディ:「こちとら気が立ってんだ。無理矢理にでも聞き出したっていいんだぞ?」
ヴィー:「……よく喋るな、人間。」
イディ:「あんだと?素人だからって殴られないとか思ってんじゃねぇぞこの野郎。」
ヴィー:「お前と話すことはない。退け。」
イディ:「……テメェに無くてもこっちは大有りなんだよぉ!こいつを拐って何するつもりだったんだぁ、おい!」
ヴィー:「……」
イディ:「聴こえてないってか?じゃあ要らねぇよな、そんな耳は……。」
0:イディ、拳を構える。
ナット:「ああ、ヤバい、イディが拳を構えちゃった……」
ヴィー:「なんのつもりだ?」
イディ:「知ってるか?ボクシングヘビー級世界チャンピオン、二十五回連続防衛記録を持つ『イディ・ハメド』ってボクサーがいてな。そいつの最後の試合。十一ラウンドの時、勝利が見えていたにも関わらず、興奮のあまり相手選手の耳を喰い千切ったんだ。」
ヴィー:「……ほう。」
イディ:「俺はカッとなるとついつい手が出ちまうんだ。男でも女でも関係ねぇ。そんで、ボコした後にゆっくり耳を喰い千切るのが俺の楽しみなんだよ…。」
ヴィー:「……だからどうした。」
イディ:「肝が据わってるな……久々に興奮するぞ!お前の耳、喰い千切ってやるっ!うぉらっ!」
ヴィー:「身の程を知れ、人間……。」
0:渾身のボディブローを見舞うイディ。鈍い音が響く。
0:同時にヴィーの左フックがイディのこめかみを砕いていた。
イディ:「うがぁっ…!」
ナット:「えっ……イディが相討ちになるなんて……」
ヴィー:「フンっ、いいボディブローだった。だが所詮は人間。口程にもない。」
イディ:「テ、テメェ……何者なんだ。」
ヴィー:「言っただろ。話すことはないと。」
イディ:「くそったれ……」
0:ゆっくりと倒れ込むイディ。歩みを進めナットに近付くヴィー。
ナット:「あぁ…こっちに来るな……」
ヴィー:「おい、『GSD』はどこだ。」
ナット:「『GSD』?な、なんの事だかわからないよ!」
ヴィー:「話すつもりはなさそうだな。別にいい。脳味噌を見るまでだ。」
ナット:「脳味噌を見る!?じょ、冗談やめてくれよ!本当に何も知らないんだ!」
ヴィー:「安心しろ。死ぬだけだ。」
0:
0:カウルーンシティの中央に聳え立つセントラルタワーの最上階、州知事の部屋。オーウェンが電話をしている。
オーウェン:「うん、そうそう。やっぱり盗まれたよ。お前が言った通り、奴等の仕業っぽい。うん。……だって、奴等以外に盗めるわけないからな。友達だと思ってたのになぁ。...…いや、別に傷ついてないよ。奴等も仕事でやってるわけだし、仕方ないさ。……捕まえるかって?そんなことしないよ。彼は同じ釜の飯を食った戦友だからね。それに州知事にまで登り詰めた俺にはもう必要のない代物だし、泳がせておいた方が面白そうだ。アレをめぐって欲望のままに奪い合う人々を観察してみたいし。……ああ、悪い。これからリンキーと外食するんだ。外は危ないって?大丈夫だよ。召し使いも連れていくから。もう切らないと。うん、またな、兄弟。」
0:娘のリンキーが食事の時間を知らせにくる。
オーウェン:「お待たせ、リンキー!もう御昼ご飯の時間だなんて、忙しくて気が付かなかったよぉ!早く行かないとブロンディに小言を言われちゃうね。さ、行こうか!」
0:
0:路地裏にて
ナット:「いやだぁ、死にたくないよ……!」
ヴィー:「無作為に人間を殺す趣味はない。持っているのなら寄越せ。でなければ在りかを言え。もし嘘を吐いたら地獄の果てまでも追いかけて、必ずお前を殺す。」
ナット:「そ、そんなぁ……。」
ヴィー:「最後にもう一度問う。『GSD』はどこだ。」
イディ:「ううぅ……ハハ、やっぱり知ってやがったかぁ……」
0:立ち上がるイディ。
ナット:「イディ!」
ヴィー:「フン……立ち上がるか、人間。」
イディ:「てめぇのお目当ては『GSD』って事か。どこの誰だか知らないがなぁ、ありゃあ俺達『ムハリブ・ナビル』のモンだ!」
ヴィー:「貴様らも『GSD』を知っていたのか。。」
イディ:「オカルト好きなウチのボスがご執心なんだ。まさか本当にあるなんてなぁ。」
ヴィー:「貴様らが保有しているのか。」
イディ:「持ってねぇからこんなことになってんだよ!どこにあんのか、俺だって知りてぇ!」
ヴィー:「なら時間の無駄だ。話すことはない。」
イディ:「スカシやがって……っておい、いねぇぞ!」
ヴィー:「なにがだ。」
イディ:「スケーターボーイだよ!てめぇの所為で逃げられちまったじゃねぇか!」
0:辺りを見渡してもナットの姿は何処にもない。
ヴィー:「……сука блять(スーカ・ブリヤット)!」
0:
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0:サウスエリアを巡回中のカウルーンセキュリティ、マオとビリーの車中。
ビリー:「……退屈っすね。」
マオ:「……なにが。」
ビリー:「パトロール。」
マオ:「まあ……仕事だしな。」
ビリー:「…つまんな。」
マオ:「そうだな……仕事はつまらんものだからな。」
ビリー:「……なんか面白い話とか聞きたいっす。」
マオ:「聞きたいな。」
ビリー:「いや、マオ先輩が話すんすよ。」
マオ:「俺が?ヤだよめんどくさい。」
ビリー:「何かしらあるでしょ!なんでもいいんすよ、雑談なんすから!」
マオ:「仕方ない後輩だ。なんだろうなぁ……えーっと、さっき犬のフン、踏んじゃった。」
ビリー:「えええっ!じゃあ今、そのままの靴で運転してるんすか!?」
マオ:「もちろん。」
ビリー:「汚いしクサいっす!」
マオ:「ひどいなぁ。ちゃんと地面に擦り付けから大丈夫だよ。」
ビリー:「もう遅いっす!印象拭えないっす!いまから今日一日、マオ先輩は『汚いしクサい男』に決まりっす!」
マオ:「それ意味合い変わって聞こえるんだが。あんまりイジメるなオッサンを。てか、そっちこそなんか話せよ。面白い話。」
ビリー:「聞きたいっすか?面白い話。」
マオ:「いや、あんまり。」
ビリー:「ヒドイ!そこは『ビリー、君のその素敵なお声で楽しいお話を沢山聞かせておくれ。』ってイケボで言って下さいっすよ!」
マオ:「絶対言わない。いいから早く話せ。」
ビリー:「よろしい!では、最近流行り
の都市伝説の話を……」
マオ:「(遮るように)またオカルトかー、やめてくれー」
ビリー:「なんでっすか!」
マオ:「いっつもいっつもそればっかり、お前のオカルト話の所為で耳にタコが出来たわ。」
ビリー:「だって面白いじゃないですか!」
マオ:「はぁ~……聞くだけ聞いてやるよ。」
ビリー:「ごほんっ……この話は三四半世紀まで遡るんすが…」
マオ:「手短にな。」
ビリー:「わかってるっす!三四半世紀前と言えば、ちょうどシンギュラリティが起きた頃っすね。当時、光遺伝学の権威として有名だったニナガワ博士って人がいたんす。」
マオ:「ニナガワ……へぇ~。」
ビリー:「そのニナガワ博士が、当時の技術では到底不可能だとされていた発明品を遺したんす。俗に言うオーパーツってヤツっすね。」
マオ:「あぁ…オカルトだぁ…。」
ビリー:「その名も『ゴッド・スマック・ダウン』。なにやら光遺伝学に基づいて作られたアイテムで、一番最初に起動した人物を光の反射で記録して、それ以降にそのアイテムから放たれた光を目の当たりにした人達は起動者の操り人形になってしまうと言う、世にも恐ろしいアイテムなんすよ~はい~。」
マオ:「その手の話は他にも沢山聞いたぞ。真新しくもないし、つまんね。」
ビリー:「それが!それがですよ!本当に存在するらしいんすよ!」
マオ:「うわ、顔を近づけるな!事故る事故る!」
0:マオ、急ブレーキかける。ダッシュボードに頭をぶつけるビリー。
ビリー:「うがぁっ!あイタたー!ダッシュボードに頭がぁ!頭がぁ!」
マオ:「いや、大袈裟すぎん?」
ビリー:「いま、急ブレーキかける必要なかったすよね!?」
マオ:「うん、ない。頭ぶつけるだろうと思ってやった。」
ビリー:「街中で無意味な急ブレーキ……カウルーンセキュリティが、聞いて呆れるっすよ……。」
マオ:「あはははは。」
0:無線機から連絡が届く。
ビリー:「イタタぁ~……マオ先輩、無線機鳴ってるっすよ。」
マオ:「そうだな、頼んだ。」
ビリー:「痛すぎて無理っす。」
マオ:「はぁ、使えん後輩め……はい、こちらマオ。え?喫茶店で大乱闘?女2人が?あーはい、了解でーす。」
ビリー:「ちょうどいいっすね……コーヒー飲んで落ち着きたいっす。」
マオ:「これ仕事だからな。」
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0:レストランにて、オーウェンは娘のリンキーと召し使いのブロンディと食事をしている。考え事をしている。
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オーウェン:あの盗まれた代物、報道各社には機密文書とだけ伝えてあるが……感の良いバカ共は気付くだろう。ニナガワ博士のメモ書きが正しければ、起動者である私が死なない限り効力は失われない。残された手段としては、何らかの方法で初期化を行うか、本体を破壊するか。一つ気になるとしたら、あのアイテムに刻まれた暗号のようなもの。有識者を募って解読を試みたこともあったが、結局解らずじまいだった。今となっては大した事ではない。コレクションを一つ失なっただけなんだから。
0:話を無視しているオーウェン娘からたしなめられる
オーウェン:「……え?ああ、勿論聞いていたよ。食事に夢中になっていただけ。パパがリンキーのお話を聞き逃すわけないじゃないか。いや、本当だって!もう~そんなに怒らないでよ~。……ああ、仕事の電話だ。ちょっと失礼するね。ちゃんとブロンディの言うこと聞いてるんだぞ?」
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オーウェン:最後に手にする者は一体誰なのだろう。巡り巡って私の元へ帰ってくるのか、それとも……
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0:場面は再び路地裏。イディとヴィーが睨みう。
イディ:「よくも邪魔してくれたな、この野郎。ちょっとガタイが良いからって調子に乗んなよ?まあ、俺ほどではないがな。」
ヴィー:「……気が変わった。相手してやろう、人間。」
イディ:「人間、人間って……なんなんだその呼び方!てめぇは中二病かコラァっ!」
ヴィー:「これは事実だ。人類は我々の存在を決して超える事は出来ない。だが、愚かにも抗い健気に立ち向かう様は、嫌いじゃない。さあ来い、貴様の覇気を見せてみろ。」
イディ:「意味わかんねぇ事ばっか抜かしてんじゃあ、ねぇっ!」
0:再度攻撃を仕掛けるイディ。あえて避けずに攻撃を受けるヴィー。イディのフックが顔面に当たるも軽く下がる程度のヴィー。
ヴィー:「……それが全力か?」
イディ:こいつはたまげたな……。手応えはあったぞ。しかもあの角度で顎にヒットしたのに、倒れないなんて。こいつ、マジで人間じゃねぇ。だったら……
イディ:「倒れるまで殴り続ける!」
ヴィー:「フッ、面白い奴だ。」
0:一発、また一発とイディの拳がヴィーの顔面を繰り返し殴り続ける。
イディ:「うぉらっ!うぉらっ!うぉらっ!」
ヴィー:「……違うな。」
イディ:「んだとっ!?」
ヴィー:「相手を殴る時は……フンっ!」
イディ:「ぐあっ!」
0:ヴィーの拳がイディの頬に当たる。その威力で後方に転がり倒れる。
ヴィー:「こうやるんだ。」
イディ:「ぬぅ……まだだぁ……」
ヴィー:「諦めろ。『ホモスペリオール』の前では人間は無力だ。……だがしかし、お前は絶望を前に戦意を失わなかった。」
イディ:「なに言ってやがる、クソがぁ……」
ヴィー:「『GSD』は我々が頂く。もし次に邪魔をする事があれば、その時は必ず殺す。」
イディ:「諦めねぇ…その耳、必ず食い千ぎってやる……」
ヴィー:「フン、全くの愚か者だが、嫌いあじゃない。名前は覚えておいてやる、『イディ・ハメド』。強くなっておけ。」
0:路地裏を立ち去るヴィー。
イディ:「クソ……この俺が一撃でノされるとは。完全に身体が鈍ってやがった……。鍛え直さねぇとな……。」
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0:ナット、人目を掻い潜りながらとある場所へ向かっている。
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ナット:良かった、なんとか撒いたみたいだ。みんな、俺がブツを盗んだと思い込んでる。なんとかこの誤解を解かないと今後の仕事にも影響が……。そもそも受け渡しの時点で中身が無かったって事は、まだあの人達が持っているってことになる。どうして偽のケースを渡したのか、あの人達に何か思惑があるのか。とにかく、この出来事を伝えないと。あの人達が……サッチモ達が狙われてしまう!
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0:レストランのトイレで電話するオーウェン。
0:
オーウェン:「兄弟、そんなに心配するなって。その辺の奴等じゃ使いこなせないし、起動者はこの私なんだから。私の操り人形が増えるだけだ。……ヴィーが動いている?あの『死の目を持つ男』が?流石『アッシュヅ』だ、情報が早い。なるほど、お前が息巻いているのはその所為か。確かに『アッシュヅ』に渡ったら厄介だな。だが、お前がなんとかしてくれるんだろ?なぁ、兄弟。」
0:トイレに男が入ってくる。男は拳銃を取り出しオーウェンに向ける。
オーウェン:「おっと……客人が来てしまった。ああ、例の盗人だ。切るぞ。『アッシュヅ』の方は任せた。」
0:電話を切るオーウェン
オーウェン:「やあ。私を殺しに来たようだな。その判断が正しいかどうか、確かめてみようじゃないか。『レックレス・ラッシュ』……向こう見ずの男。お前に撃てるかな……サッチモ。」
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0:渇いた銃声が響き渡る
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0:喫茶に到着するカウルーンセキュリティの2人
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ビリー:「到着したっすね!……ってギャングじゃないっすか、あの人たち!」
マオ:「うわぁ、女同士でめっちゃ殴り合い……いや蹴り合いしてるわ。間合いがプロ格闘家みたいだ。」
ビリー:「早速行くっすよ!」
マオ:「うーん……。」
ビリー:「なにやってるんすか、喧嘩止めに行くっすよ!」
マオ:「頼んだ。」
ビリー:「え!一人で行くの嫌ですよ!」
マオ:「女の喧嘩は女が止めないと。仕方ないじゃん、男が止めに入ったらセクハラで訴えてくるんだから。絶対に。」
ビリー:「面倒だからって適当な理由付けてサボろうとしないでくださいっす!」
マオ:「バレたかぁ。わかったよ。じゃあ、まずこれからだろ。」
0:拡声器で声掛けする
マオ:「ゴホン、えー君達は完全に包囲されているー。大人しく喧嘩は止めて仲良くしなさーい。親が泣くぞー。」
ビリー:「全然効果ありませんよ。包囲ってなんすか?マオ先輩と私しか居ないんすからね。……あ、なんかデカイ髭男が駆け付けて来ましたよ!」
マオ:「え、ウソウソ待ってヤバイ。イディ・ハメドじゃん。」
ビリー:「え、マオ先輩?」
マオ:「超有名ボクサーのイディ・ハメドだって。やべぇどうしようどうしよう。色紙なんてないよなぁ。あ、レシートの裏でもいいか。ビリー、ちょっとペン貸して。」
ビリー:「え、なんで?」
マオ:「サイン貰ってくるから。」
ビリー:「嫌っすよ!仕事して下さいっすよ!」
0:再び拡声器で声掛けするマオ
マオ:「イディー、イディ・ハメドー、俺めっちゃファンなんだよー。ちょっと動かないでそこで待っててー。ねぇちょっと、なに女抱き抱えてるんだよ。おーい逃げるなー。」
0:ジミンを抱き抱え車へ向かうイディ。
ビリー:「逃げるなーじゃなくて!追って下さいっすよ!」
マオ:「いや、やめとこう。」
ビリー:「なんで!」
マオ:「イディはウェストサイドのマフィア組織『ムハリブ・ナビル』のメンバーなんだよ。管轄外。」
ビリー:「こんな目の前にトラブルの種があるのに捕まえないんすか!?」
マオ:「こっちで手柄挙げちゃったらウェストサイドの連中に恨まれるじゃん。これも仕事のうちってこと。」
ビリー:「なんて不真面目な……!」
マオ:「取りあえず、コーヒーでも飲みながら事情聴取でもするか。」
ビリー:「いいっすね!飲みましょ!」
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0:ナット、ある建物の扉の前に到着する。
ナット:「(ノック音)サッチモ、居るなら返事して!誰でもいいから出てくれよ!リヒャルト、アユミ、ねぇ誰か居ないの!まさか、もう手遅れだったりして。……えっ?」
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ナット:嫌に冷たい鉄の感触が首筋に、恐らく頸動脈辺りに、それはほんの僅かにスライドしていて、屠殺前のニワトリのように、オイラは軽く命を握られていた。きっと世の中には知らない方が幸せだったり、関わらない方がいい出来事があって、今まさにその地雷を踏んでしまっていると、改めて確信した。そして、耳元で囁かれる。『ヒトリメ』だと……。