台本概要

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タイトル 【泣ける系】童貞パパ
作者名 ゆる男  (@yuruyurumanno11)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 70 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 当時高校生だった童貞の剛志に対していつもおちょくっていた幼なじみの小夏が大人になってお互いの気持ちを伝え合い
家族以上の絆を深めていくという物語

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
剛志 464 剛志(つよし) 童貞の男。いつも小夏におちょくられてる
小夏 335 小夏(こなつ) 色々な経験をしてきても尚剛志をおちょくっている
れな 146 れな 小夏の子供無邪気な一面もあるがそれにも理由がある
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
れな:ねえパパ 剛志:お前な、何回も言ってるけど俺の事パパって呼ぶな れな:なんで? 剛志:パパじゃねーからだよ れな:でもママと約束したからパパなんだよ 剛志:どういう意味だよ。 れな:ママと約束したんだー!あとママとパパは一緒に住んでたじゃん 剛志:それはお前の母親が押しかけてきたからだ! れな:そうなの? 剛志:そうだ。悪夢再来だったよ全く れな:悪夢って何ー? 剛志:うるせー。自分で調べろ れな:ねえパパ 剛志:……言ったそばから れな:パパって童貞なの? 剛志:お、おま!それどこで覚えてきた!? れな:ママが言ってたよ?パパは童貞だーって 剛志:ろくでもねー親子だな… れな:ねえパパおしっこしたい 剛志:……なんつータイミングだよ! 0:【間】 れな:かぁーたまらん! 剛志:それもあいつの真似かよ!母親の真似ばっかすんな! れな:おしっこしたら元気になったー! 剛志:ったく。子供っていつになったら一人でトイレ出来るようになるんだ? れな:お人形さんで遊ぶー! 剛志:……はぁ れな:パパー!このお人形さん可愛いんだよー! 剛志:……… れな:ほら、髪の毛ピンクになるの。綺麗でしょー!? 剛志:………… れな:ねえー!パパー! 剛志:お前さ れな:……え? 剛志:母親が死んだのに…悲しくねーのかよ れな:……どうして? 剛志:どうしてって…… れな:ママがね、悲しくても笑えって言ってたんだもん 剛志:…… れな:だからね、れなは沢山笑うの! 剛志:………誰に似たんだよ…… 剛志:(M)伊波小夏の葬儀から3日が経った日。そのままの流れで俺はあいつの娘の面倒を見てる 剛志:(M)どうしてかわからないが俺は無性にあいつに腹が立っている 剛志:(M)あいつにはいつも腹が立っている 剛志:(M)中学3年の頃 小夏:ねえ、剛志。あたしとエッチする? 剛志:………は!? 小夏:だから今日家に行ってもいい? 剛志:ばばばば!バカか!何する気だよ! 小夏:何ってー。色んなこと? 剛志:ふぁ!?え、ど、どういう事だよ! 小夏:……ぷっ!にゃっははははは!冗談に決まってんじゃん! 剛志:お、お前なぁ! 小夏:剛志は本当におちょくりがいがあるなー 剛志:ぜってー許さねぇ! 小夏:んでもさ、家に行きたいのは本当なんだよね 剛志:なんでだよ 小夏:いいじゃん。家も近所なんだし、幼なじみの交(よしみ)って事でお願い! 剛志:やだよ 小夏:なんでぇー!? 剛志:腹が立つからだ! 小夏:いけずな男 剛志:なんとでも言え!俺はいつもお前に腹が立ってんだよ 小夏:そこまで言わなくてもいいのにー 小夏:私……家に帰りたくない 剛志:はあ?なんで。おばさん達がいるだろ? 小夏:おばさん達だからだよ 剛志:何がそんなに嫌なんだ? 小夏:……ただいまって言っても…静かなんだもん…… 剛志:……… 小夏:だからさ、今年受験もあるし剛志と勉強したい 剛志:………なんだよそれ 剛志:あー!もう!わかったよ! 小夏:にゃはは!やったー!じゃあ決まりねー! 剛志:……ったく 剛志:(M)俺と小夏はいつもこんな感じだった 剛志:(M)ことある事に俺をからかい、反応を見ては、にゃははと笑っているクソガキだ 剛志:(M)そして現在は れな:パパー? 剛志:だからパパって呼ぶんじゃねーよ。なんだ? れな:お腹すいた 剛志:知らねーよ。さっき食っただろ れな:お腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいた!! 剛志:うるせー!!わめくな! れな:わめくってなにー!? 剛志:何でもかんでも質問すんなよクソガキ! れな:ユーチューブみたーい 剛志:勝手に見てろ れな:パパも見よー? 剛志:俺はパパじゃねーから見ねーよ れな:これだから童貞は 剛志:ああん!?なんか言ったか!? れな:ママがよく言ってた言葉だよー 剛志:ほんとろくな言葉覚えてねーなお前は れな:でも童貞ってなに? 剛志:知らねー言葉使うな! 剛志:(M)あいつの娘はあいつに似ているのかもな 0:高校2年の時の事 剛志:か、彼女が出来た!!ついに念願の彼女だ!! 剛志:ふっふっふ。これで小夏にもバカにされないで済むぞー。俺もついに……童貞卒業だ!! 小夏:え?剛志童貞卒業するの? 剛志:うわあー! 小夏:にゃは!何?その反応 剛志:な、なんでもねーよ! 小夏:童貞卒業がどうとか言ってなかった? 剛志:ああ、まあな。俺、彼女出来たんだよ 小夏:………ふーん 剛志:もっと驚けよ!俺に彼女が出来たんだぞ!? 小夏:おめでとーございまーす 剛志:なんだよその反応。つまんねーな 小夏:じゃあねー 剛志:……はあ? 剛志:なんだあいつの態度 0:しばらく経ったある日のこと 剛志:か、彼女が出来たはいいけど一向に童貞卒業出来ない…なんだか誘い方がわからん 剛志:雰囲気ってどう作ればいいんだ!?わからん… 小夏:あ 剛志:ん? 小夏:おはよー 剛志:おはよう。なんだ?その荷物 小夏:ちょっとねー。友達の家に泊まりに行ってたの 剛志:家帰ってないのか? 小夏:うん。ここ最近はね 剛志:いくらなんでも家に帰らないのは良くないだろ 小夏:大丈夫だよ。おじさんもおばさんも特に連絡してこないし、心配もしてないと思うよ 剛志:でも、帰れる場所があるんだから帰れよ 小夏:なんで剛志にそんなこと言われないといけないの? 剛志:そりゃ、お、幼なじみだから 小夏:だから何?関係ないじゃん 剛志:関係…ない?お前ふざけんなよ。俺がただでお前におちょくられてたとでも思ってるのか? 小夏:あーそうだね。剛志はあの時は童貞だったからおちょくってたけど、もうつまんない 剛志:……は? 小夏:楽しかったよ。でももうあたしも忙しくなったし、剛志にかまってる暇なんてないの 剛志:……… 小夏:嫌いなの。剛志のこと 剛志:……ふざけんなよ! 0:剛志は小夏を突き飛ばす 剛志:……っ!ご、ごめん 小夏:……… 0:小夏が倒れたと同時に紙が10枚ほど散らばる 剛志:おい…お前…なんだよこの金 小夏:……バイトしてるの。1日でこんなに稼げたよ 剛志:………なんのバイトだ? 小夏:……さあね 剛志:お前…落ちぶれたのかよ 小夏:……… 剛志:………そっか。俺のことおちょくってたけど、本当にそういうことする奴だったのか。見損なったぞ…… 小夏:………… 剛志:もう俺に近寄るなよ!クソ(ビッチ) 小夏:っ!(遮るようにビンタする) 剛志:……… 小夏:………ごめん 0:小夏は荷物を持って立ち去る 剛志:おい!小夏!金はどうすんだよ! 0:剛志は散らばったお金を集めて小夏を追いかける 剛志:小夏ー!小夏ー!! 剛志:くそ!ラインも電話も繋がらねぇ 剛志:小夏ー! 剛志:……いた! 0:小夏は道路の外側で佇む 剛志:小夏!! 剛志:(M)俺はこの時の事はあまり覚えていない。頭が真っ白になっていた 剛志:(M)小夏はトラックが来たタイミングで道路に飛び出したんだ 剛志:小夏ー!! 小夏:っ!! 剛志:くっ!! 剛志:(M)あまり覚えてないけど。これだけは覚えている 剛志:(M)俺は小夏を抱きしめ道路の外側に連れ戻した 剛志:小夏! 小夏:……剛志 剛志:……お前、何やってんだよ! 小夏:……離して 剛志:……ご、ごめん 小夏:…………嘘、離れないで 剛志:こ、小夏? 小夏:……にゃはは。あたし死にたくなっちゃった 剛志:何言ってんだよ…死ぬなよ 小夏:生きちゃったね 剛志:死ぬなって言ってんだろ!何考えてんだよ! 小夏:なんかさ…色々わかんなくなっちゃった 剛志:……何が? 小夏:自分は何してんだろうって。自分は何のために生きてるんだろうって。自分の存在はなんなんだろうって 小夏:親も友達も…剛志も…。みんなが私を置いていく 剛志:ばかか。俺は置いていってないだろ 小夏:じゃあさ。剛志。私たち結婚する? 剛志:は、はあ!?す、するわけねぇだろ! 小夏:にゃは!そうだよね。するわけない 剛志:性懲りも無くまたおちょくってんのかよ 小夏:ううん。多分だけどこれで最後かな 剛志:な、なんで? 小夏:帰れる場所があるなら帰れってさっき剛志が言ってくれたでしょ? 剛志:うん 小夏:辛くて、どうしても逃げたい時は剛志の所に帰りたい。 剛志:………別にいいよ、それくらいなら 小夏:にゃは!ありがと!剛志ならそう言ってくれると思ってた 小夏:じゃあねー!またいつか会おうねー! 0:小夏はすぐに立ち去る 剛志:お、おい!どういう意味だよ! 剛志:(M)次の日から、小夏の姿を見ることはなかった 剛志:(M)小夏が住んでいた家の人から聞くと突然いなくなってしまったらしい。小夏の言う通り、小夏のいとこは心配している様子もなかった 剛志:(M)俺は小夏の言葉が頭から離れず、上の空になってしまった。だからすぐに彼女とも別れてしまったのだ 剛志:(M)そして今現在 れな:パパ〜。ジュースこぼしちゃった 剛志:もう何してんだよ。服脱げ れな:にゃはは!びしょびしょー! 剛志:その笑い方も母親譲りだな れな:お洋服脱げないー 剛志:はいはい れな:うんしょ 剛志:……… れな:脱げたー! 剛志:………酷い傷だな れな:んー?なにがー? 剛志:いや、なんでもない れな:うん! 剛志:お前、その傷痛くないのか? れな:これー?痛くないよ。 剛志:何をしたらこんな傷になるんだよ れな:にゃはは。わかんないけどママが言ってたよ。痛いの痛いの飛んでけーって。だから痛くなくなったんだー 剛志:それで痛みが無くなったら苦労しねえよ。まあいいや、早く着替えろ れな:うん! 剛志:(M)れながこの家に来たのは2ヶ月前のことだ 剛志:(M)そして、あいつが急に俺の家に押しかけてきたのも2ヶ月前だ 剛志:(M)嵐のような。それでも台風の目の中に居るような静かな日々だった 剛志:(M)2ヶ月前のこと 剛志:よーし!ペケモン全種類捕まえたー!色違いも全部コンプリート! 剛志:はー疲れたー。ん?もう11時か。夜から初めてこの時間ならいい方だろう 剛志:とりあえず仮眠してまたやるかー 剛志:……昔も、こうやってペケモン捕まえてあいつと交換したりしてたっけなー 剛志:あいつが居なくなってからもう7年は経つか。生きてんのかな? 剛志:よくわかんねーけど、もう会うこともなさそうだ 剛志:………もう、会えねぇのかな 0:剛志の家のインターホンが鳴る 剛志:ん?なんだ?こんな時間から 0:剛志は玄関に向かい 剛志:はーい 剛志:……っ! 小夏:にゃは!こんにちわ! れな:わ! 剛志:……あ、あの、どちら様で? 小夏:久しぶりー! れな:ぶりー! 剛志:だ、だから!どちら様ですか!? 小夏:えー?髪型も髪色も変わってグラサンかけてるけど声でわからない? 剛志:……え? 小夏:にゃはは!わかってないんかい! 剛志:この…笑い方は…… 剛志:小夏!? 小夏:にゃっははははー!!正解ー! 剛志:な、なんでお前がいるんだ!?てかどこに行ってたんだ!?なんだこの子供!?お前なんだその格好!? 小夏:んもう!質問は一つずつお願いします!とりあえず入るね? 剛志:ちょっ!勝手に入んな! れな:おじゃしまーす! 剛志:誰だよこの子供! 小夏:え?あたしの子供 剛志:は!? 小夏:うーわ、きったなー!なんでカップ麺のゴミが布団の上にあるの!?信じられない! 剛志:いきなり押しかけてきて文句言うな! れな:きちゃなーい! 剛志:んだよこのガキ! 剛志:おい小夏!とりあえず事の経緯を教えてくれよ。なんで帰ってきたんだ? 小夏:なんで帰ってきたって約束したじゃん? 剛志:や、約束? 小夏:忘れたの!?サイテー! 剛志:そんな昔のことなんて覚えて……あっ! 小夏:思い出した?あたし言ったよね? 小夏:辛くて、どうしても逃げたい時は剛志の所に帰りたいって。だから… 小夏:ただいま。剛志 剛志:………えーー!!! 0:しばらく時間が経つ 小夏:ふぅー!やっと綺麗になったから座れるー 剛志:ほんと失礼なやつだな 小夏:一人暮らしでこんなに散らかってるってことはー。さては剛志、彼女いないなー? 剛志:ほっとけ! 剛志:お前はどうなんだ?急にどっか行って子供作って帰ってきやがって。今までどこに行ってたんだよ 小夏:ロス 剛志:は?どこだよそこ 小夏:えぇ…?知らないの?ロスアンゼルスだよ 剛志:な、なんでそんなとこに!? 小夏:自分探しのためにねー 剛志:こ、高校は?大学は!? 小夏:高卒の資格は持ってるけど大学とかは行ってない 剛志:ま、まあロスの大学とか未知数だからな… 剛志:………てか!その子供は!? 小夏:あーそうそう、挨拶してー? れな:れなでーす! 小夏:わー!挨拶出来てえらいねー! れな:れなえらーい! 剛志:本当にお前の子供なのか? 小夏:そうだよ。あたしに似て可愛いんだから れな:おじさんの家くさーい 剛志:可愛げが無いのも似てるみたいだな 剛志:そ、その…誰との子なんだよ? 小夏:何想像してんの? 剛志:なんも想像してねーよ!早く答えろ! 小夏:んもーわかったよ。れなはね、ロスで会った男と出来た子だよ 剛志:………そうか 小夏:うん。もう別れたけどね 剛志:そ、そうなのか 小夏:……ほんと、ろくでもない男だったよ 剛志:なんでそんな男と……け、結婚したんだよ! 小夏:決まってんじゃん。あたしの見る目がなかっただけだよー 剛志:そんな軽いノリで言うな! 小夏:なんでよ。過ぎたことなんだから考えてもしょうがないでしょ? 小夏:剛志はまだ童貞なの? 剛志:……っ!!う、うるせー! 小夏:へぇー!やっぱ童貞だったんだー れな:ママー童貞って何ー? 小夏:んー童貞っていうのはー 剛志:やめろ!子供にまで変なこと教えんな! 小夏:ムキになってるー。相変わらずウケるね 剛志:面白くねーわ!ったく!気分わりー!俺は寝るぞ! れな:おじさーん、遊ぼーよー! 剛志:うるせー!帰れ! 小夏:帰る場所なんてありませーん! 剛志:じゃあどっか行けー! 小夏:もう、釣れない男だなー。れな、ママとお出かけしよっか れな:うん! 小夏:日本の街を探索しよー! れな:おー! 0:小夏とれなは外に出る 剛志:ふぅー。これでゆっくり出来る… 剛志:………てか、普通に帰ってきたけどまじで何があったんだ? 剛志:あいつの事だからまたなんかあったんだろうな。全く、面倒なことにならなきゃいいけど 剛志:まあいい。ひとまず寝るとしよう 0:剛志はしばらく眠る 剛志:………っ れな:わー!おじさんが起きたー! 剛志:へ!?今何時?……なんかいい匂いがする れな:ママー!おじさんが起きたよー! 小夏:おはよー 剛志:い、今何時!? 小夏:んー?今は夕方の6時だよ? 剛志:ガーーーン!! 小夏:何のガーンなの? 剛志:貴重な休みを徹夜と昼寝で終わらせてしまった…… 小夏:いつも休みの日どうしてるのー?どうせ起きたらコンビニとかでご飯買うんでしょ? 剛志:そうだよ。悪いか?こうしちゃいられねぇ。コンビニ行かないと! 小夏:ご飯作っといたよ 剛志:……え? 小夏:カレー作っといたよ。れな用だから甘口だけど 剛志:お、俺の分もか!? 小夏:当たり前じゃん。ただで家に押しかけてるわけじゃないんだし。どうする?食べる? 剛志:う、うん! 小夏:じゃあ待っててねー れな:ママー!れなもお腹すいたー! 小夏:はいはーい。いい子に待っててねー。おじさんと遊んでて れな:おじさーん!遊ぼー!! 剛志:な、なんで俺がガキの相手なんかしなきゃいけねーんだよ! れな:一緒にユーチューブ見よー! 剛志:なんだってんだよ… 0:しばらくすると 小夏:はーい、お待たせー れな:ご飯だご飯だー! 小夏:れな、ちゃんとおてて拭いてからね? れな:はーい! 剛志:……… 小夏:食べないの? 剛志:い、いただきます! 小夏:うん 剛志:パクっ。……… 小夏:………ん? 剛志:う、うめー! 小夏:っ!……にゃは! 剛志:うめーよ!人が作った料理がこんな美味く感じるの久しぶりだ! 小夏:にゃはーん! 剛志:おかわりくれー! 小夏:にゃはは! 剛志:さっきから何笑ってんだよ 小夏:ん?なんかねーにゃはは! 剛志:ん? 小夏:自分で作った料理がおいしいって言われるのって嬉しいことなんだなーって思ったの 剛志:……ま、まあ!昔からお前は料理好きだったもんな 小夏:うん。でもおじさんとおばさんは食べてくれなかったけどね 剛志:……そ、そっか。こんなに美味いのにもったいないな 小夏:……ありがと 剛志:(M)いつも無茶苦茶な小夏だが、何故かその笑顔にはズキンと打たれるように胸が激しく動いた 剛志:(M)そして次の日 小夏:いってらっしゃーい。これ、お弁当ね 剛志:お、おう。ここまでしなくてもいいのに 小夏:なんで?これくらいロスに居た時も普通にやってたよ? 剛志:ち、ちげーよ!そ、その……ふ、夫婦みたいじゃないか! 小夏:えー。じゃあ夫婦になる? 剛志:な、ならねーよ!ふざけんな! 小夏:にゃははーん!いってらっしゃーい れな:おじさんいってらっしゃーい! 剛志:うるせー! 0:剛志は外に出る れな:おじさん面白いね 小夏:でしょ? 0:そして夜になる 剛志:ふぅー。今日もあいつらが居るのか…… 0:剛志は玄関を開ける 小夏:おかえりー! れな:おじさんおかえりー! 剛志:た、ただいま 剛志:(M)迷惑だとはいえ、家に帰った時におかえりと言われるのは少しだけ嬉しい気もした 小夏:………れなー? れな:すぅー。すぅー。 小夏:やーっと寝た 剛志:毎日そうやって寝かせてるのか? 小夏:うん。れなの寝顔可愛いでしょ? 剛志:俺の子じゃないから知らねーよ 小夏:なんでそんな言い方しか出来ないの?これだから童貞は 剛志:うるせー!……あっ 小夏:大丈夫。れなは1回寝るとなかなか起きないからね 剛志:そ、そうなのか 小夏:ねぇ、ゲームしてもいい? 剛志:図々しさは変わらねーなー 小夏:いいじゃん。ロスにいた頃はこんなこと出来なかったし。 小夏:…えぇー!ペケモンアメジストのリメイク版持ってるの!?懐かしいー! 剛志:ああ。絵もなかなか綺麗になってて面白いぞ 小夏:データ消して最初からやっていい? 剛志:ふざけんな!ペケモン全種類集めたデータだぞ!?別アカウント作れば出来るからそれでやれ! 小夏:へぇー!そんなこと出来るんだ〜! 剛志:おう。それでやってもいいぞ 小夏:わあー!すごーい! 0:しばらくゲームで遊ぶ 小夏:はあー面白かったー 剛志:俺よりはまだ下手だな 小夏:そりゃそうだよ剛志みたいに休みの前の日に徹夜でゲームなんてする暇ないもん 剛志:それ言われたら何も文句言えねーわ 小夏:ママ歴4年目だからねー 剛志:前の…旦那とは何があったんだ? 小夏:なんで? 剛志:だって、辛くなったら俺のとこに戻ってくるって言う割には7年も経ってるし。何かあったから戻ってきたんだろ? 小夏:うーん。そうだね。こんなこと言ったら怒るかもしれないけど 小夏:……また死にたくなっちゃった 剛志:は、はあ!?おいおい、子供もいるのにそんな簡単に言うなよ 小夏:そんな簡単って? 剛志:……… 小夏:そりゃあれなが起きてるうちは元気で可愛いママで居たいよ。子供は親の姿を見て育つもん 剛志:……ああ。そうだな 小夏:でも、れなが寝た時の夜は一人の人間だからね。色々考えちゃうの 剛志:………何があったんだ? 小夏:………気になる? 剛志:……気になるだろ 小夏:じゃあ、あたしとエッチする? 剛志:………ふ、ふざけんな!! 小夏:あ、ちょっと、そこまで大声出したられなが起きちゃうよ 剛志:お前は俺をおちょくるために帰ってきたのか? 小夏:そ、そんなわけないでしょ。ごめんって 剛志:……はあ 小夏:本気で怒ってる? 剛志:怒るに決まってるだろ。俺はずっとお前を心配してたんだぞ 小夏:………そうだよね。ごめん 剛志:もういい。心配して損した。お前いつまでここにいるつもりだ? 小夏:あ、そこは安心して。ちゃんとあたしも働くし、れなだって保育園に預ける予定だから。 剛志:だから!いつまでいるんだ!? 小夏:え?んーーー。ずっと? 剛志:ふざ!!……ふざけんな。なんでずっといる予定なんだよ! 小夏:ダメなの? 剛志:ダメだろ!倫理的に! 小夏:じゃあ合理的に? 剛志:わけわかんねーこと言うな! 剛志:お前な、これ以上ふざけたこと言うなよ?何も話せないなら俺の所に帰ってくるな 小夏:………そだね。じゃああたしは寝るね 剛志:……… 剛志:(M)小夏はそのままれなと同じ布団で眠る 剛志:(M)普段から本気なのか冗談なのかわからない言動に童貞の俺はどこまでも振り回されていた 0:1週間が経ったある日 小夏:じゃあ病院行ってくるからお留守番よろしくー 剛志:……… れな:ママー!頑張ってねー! 小夏:うん!いい子にしててねー! 0:小夏は外に出る 剛志:…………全然帰る気ねえだろ… れな:おじさん! 剛志:な、なんだよ れな:プイキュアごっこしよー! 剛志:プイキュア?そんなん見たことねえよ れな:やろー!こうやってやるんだよ! 剛志:お、おい、ソファの上に乗るなよ。危ねーだろ れな:いくよー?見ててー?もぎたてフレッシュー!ってやるんだよ 剛志:知らねーよ。降りろ、怪我するぞ? れな:もぎたてフレー!……っ! 剛志:おい! 0:れなはソファから落ちておでこをテーブルにぶつける 剛志:だ、大丈夫か? れな:……… 剛志:や、やべぇちょっと血出てるし腫れてる… れな:にゃはは〜落ちちゃった〜! 剛志:笑ってる場合か!泣かないだけマシだけど 剛志:とりあえずタオルの上に氷当てて冷やせ れな:つめたーい! 剛志:これで泣かないのもすごいよな 0:しばらくすると小夏が帰ってくる 小夏:ただいまー れな:ママー!おかえりー! 小夏:ん?どうした?この傷 剛志:あ、ああ。ごめん。俺が見てたんだけどソファから落ちてテーブルに頭ぶつけちゃったんだ 小夏:れなー?悪さしたの? れな:にゃはは!!お怪我したんだー! 小夏:にゃははじゃないの れな:ごめんなさーい! 小夏:ダメだよー?迷惑かけちゃ 剛志:ご、ごめんな。俺が見てたのに 小夏:大丈夫大丈夫。悪さした代償だよ。 剛志:そういや病院で何しに行ったんだ? 小夏:薬もらってきた 剛志:薬? 小夏:ロスに居た時から寝付きが悪くてさ。薬飲まないと寝れないの 剛志:だ、大丈夫か? 小夏:大丈夫じゃなかったら何かしてくれる? 剛志:いや、何もしないけど 小夏:にゃはっ 0:そしてその日の夜 小夏:ねえ剛志 剛志:ん? 小夏:れなも寝たし、晩酌しない? 0:小夏は袋に入ったビールを剛志に差し出す 剛志:おお…気が利くじゃねーか 小夏:じゃーん!もやしナムルも作りました! 剛志:す、すげーな!こんなのも作れるのか 小夏:意外と簡単だよ? 剛志:食っていいか? 小夏:うん。召し上がれ 剛志:う、うめぇ…… 小夏:にゃはは!相変わらず美味しそうに食べてくれるね!じゃあビールも開けちゃうよ? 0:小夏は剛志の分のビールを開ける 剛志:あ、ありがとう 小夏:うん。じゃあカンパーイ 0:二人は大きな一口でビールを飲む 小夏:かぁー!たまらん! 剛志:オヤジみたいなことすんな 小夏:晩酌ってなんか憧れてたんだよね 剛志:なんで? 小夏:仲良いみたいじゃん? 剛志:……前の旦那とは晩酌したこと無かったのか? 小夏:したことないね 剛志:……そっか 小夏:……それ以上は何も聞いてくれないの? 剛志:…聞かねーよ。前だっておちょくられたし 小夏:それはごめんね。 剛志:許さん 小夏:あ、そうだ。あたし剛志に謝らないといけないことがあったんだ。二つくらい 剛志:なんだ? 小夏:高校生の頃、剛志に色々言われてさ。勢いでビンタしてごめんね 剛志:あ、ああ。そんなこともあったな 小夏:あれはね、カッとなってビンタしたわけじゃなくて、剛志の言葉が怖くなったの 剛志:……俺の…言葉? 小夏:あの頃は確かに落ちぶれてたし、色々悩んでたし、間違ったことばっかしてた。だから剛志に正論言われることが怖くて、これ以上傷つきたくなくてビンタしたの 剛志:まあ、それはいいよ。俺も言い過ぎたし 小夏:あともう一つはねー。急に居なくなったこと。 剛志:……… 小夏:あたしはさ、いつも剛志をからかってたけどね、本当は剛志に彼女が出来たことが寂しかったんだ 剛志:……な、なんでだよ 小夏:にゃは!それ聞くー? 剛志:べ、別に話したくねーならいいよ! 小夏:じゃあ、こういう言い方にするよ。からかってる時はあたしは剛志よりも勝ってる気がしたの 剛志:勝ってるってなんだ? 小夏:なんかね、気持ち的に? 剛志:よくわかんねーよ 小夏:でもそういうことなの。いつも剛志には勝てるって思ってたのに剛志に彼女が出来てなんか負けてる気分になったんだ 小夏:だからあたしは悔しくて、見返したくなったからパパ活して自分の体を汚してまでお金持ちになったら剛志に勝てると思ってた 小夏:……でもさ、そういうことで勝った気になんてなれるわけないよね 剛志:………そりゃあそうだろ。だから落ちぶれたって言ったんだ 小夏:ほんと、その通りだよ。もう剛志に合わせる顔もないと思ってたしね 小夏:ちゃんと高校卒業したけどその後ノリでロス行ったら変な男に捕まって失敗したし。最悪だったよ 剛志:そうだ、なんでロスでそんな男と…… 小夏:なんでだろうね?あたしにもわかんない。地位の高い男と結婚して幸せな家庭でも築けたらまた剛志に勝てるかも。なんて思ってたんだよ 剛志:……よくわかんねーよ 小夏:でも、全部失敗しちゃったの。ロスに行ったことも、ろくでもない男と結婚したのも。 剛志:じゃあ…その男と何があったんだ? 小夏:………見る? 剛志:な、何を? 小夏:ほら 剛志:……… 剛志:(M)小夏の肩には切り傷のような跡があった 小夏:8針縫った跡だよ 剛志:………… 小夏:あと胸に根性焼きの跡もある 剛志:っ! 小夏:あ、さすがに見せないからね? 剛志:あ、当たり前だろ! 小夏:毎日アザが出来てたし、何回も打撲してた 小夏:なんでこうなったのかはわかんないけど、あたしが1番許せないのは……れなにまで手を出した事 剛志:……… 小夏:あたしだけならまだ我慢できた。れなには父親として愛情があると思った。でも……れなにも手を上げて、一生残る傷を付けたの。あたしの大事なれなを傷付けたの 小夏:だからあたしはれなにも強く生きて欲しくてどんなに痛くても悲しいことがあっても泣いちゃダメって教えたんだけど、それも間違いだよね 剛志:………間違い? 小夏:だって、全部我慢させちゃうでしょ?今日怪我した時も泣かなかったんじゃないかな? 剛志:確かに…泣かなかった 小夏:泣きたい時に泣けない子になったら…どうしようって…… 小夏:……これってさ。全部あたしのせいなんじゃないかなって思うんだよね 剛志:………なんで? 小夏:勝手に日本から離れて、海外に行って、見た目だけの男と結婚して、れなを生んで、傷付けた 小夏:あたしの人生、失敗だらけだよ……れなを生んだのも……失敗なのかなって…… 剛志:それは違うだろ 小夏:………え? 剛志:お前は…娘の前では元気で、か、可愛いママで居たいって言ってたじゃねーか。子供のために笑って、子供のために泣ける母親ってだけで…れなは良い母親に恵まれてるんじゃないか? 小夏:………剛志 剛志:そ、それに!お、俺は!童貞だからよ!女の気持ちとかよくわかんねーし、なんて言ったらいいかわかんねーよ…けど、 剛志:辛かっただろうけど…お前が生きて俺の所に戻ってきてくれて……安心したよ 小夏:………うっ、うぅぅ〜〜! 剛志:な、なな!泣くなって!なんで泣いたんだ!?え!?な、なんで!? 小夏:童貞にはわかんないよ 剛志:っ!またおちょくりやがって 小夏:にゃっはははは! 剛志:ったくよ 小夏:剛志が昔とあんまり変わってなくてよかった 剛志:なんで? 小夏:ううん。なんでもないよ。剛志、あたしが仕事はじめて落ち着くまで、れなとここに居たい 剛志:………勝手にしろよ 剛志:(M)小夏はよく笑う。それは自分の娘の前では良い母親でいたいからだ。 剛志:(M)それでも、小夏は俺の前では泣いた。その意味がどういう事だったかはわからない。でも、あんなに辛い思いをしていた小夏が生きて俺の前に居る 剛志:(M)それだけで、俺は7年間のモヤモヤが解消されたようだった 0:1ヶ月が経ったある日 小夏:お願いしますお願いしますお願いしますー! 剛志:だめだ! れな:め! 小夏:一生のお願い! 剛志:一生のお願いは1回限りだろ!?お前の場合、週に2回なんだよ!わかる!? 小夏:わかるー!すごくわかるー! 剛志:わかるなら断れ! れな:ママと一緒がいいー! 剛志:俺だってガキと居たくねーよ! 小夏:二人とも!わがまま言わないの! 剛志:おめーだろ!わがまま言ってるの! 小夏:えー。だってあたし住所とかその他もろもろ決まってない状態だから保育園の手続きややこしくなるんだよー?まだ保育園には入園出来なそうだし 剛志:なら早く住む場所決めろ! 小夏:ん!んんん!! 剛志:な、なんだよ 小夏:これだから童貞は 剛志:ぶち殺すぞ!!その態度でパートやりたいは無しだ! 小夏:にゃははー!でももう面接受かっちゃったんだよねー。英語喋れるから割と高い時給で働けるんだよー? 剛志:だとしても!なんで俺の土日休みをお前の子供の面倒で潰さなきゃいけねーんだ! 小夏:あたし毎日れなの面倒見てるんだけど!? 剛志:ああそうだな!でも俺はこいつの父親じゃねーし俺らは夫婦じゃねー! 小夏:それもそっか。夫婦じゃなかった 剛志:わかったならパートの仕事断れ 小夏:断ったらあたしとれな、ずっとこの家に居ることになるよ? 剛志:うっ。なんて脅し文句だ れな:れなはママと一緒に居るー! 小夏:よしよーし。れなはママが居なくても楽しく遊べるでしょ?おじさんと仲良く遊んでてね? れな:うん!おじさーん!おもちゃであそぼー! 剛志:今じゃねーよ 0:そして1週間が経つ 小夏:じゃあ、初出勤いってきまーす! れな:いってらっしゃーい! 剛志:はあ。なんでこんなことになったんだ れな:おじさんゲームしよー! 剛志:おいおい、お前の母親のデータで遊べよ!? 0:そして夜になる 小夏:ただいまー れな:おかえりー!ママー! 小夏:れなー!いい子にしてたー?今ご飯作るからね れな:ハンバーグ食べたーい! 小夏:じゃあ今日はハンバーグね。 小夏:ただいま、剛志 剛志:ん?ああ。おかえり 小夏:……にゃは! 剛志:な、なんだ? 小夏:にゃはーん!なんだろうね! れな:あー!ママが笑ったー! 小夏:にゃっははー!ママも楽しくなってきちゃったよー 剛志:変なやつだな 0:夜になる れな:………ママ 小夏:ん?どうした? れな:今、幸せなの? 小夏:どうして? れな:ママと……約束したじゃん 小夏:そうだね、約束したね れな:ママが……幸せそうに笑ったとき……んー(寝息) 小夏:……ん?あら、寝ちゃった 剛志:何か言いかけてなかったか? 小夏:そうだね。でももう寝たし、よーし!今日は久しぶりに仕事したから飲むぞー! 剛志:酒好きなのか? 小夏:一本飲むくらいはねー。今日は生ハムユッケだよー 剛志:う、美味そう……小夏の作るツマミは酒が飲みたくなるんだよな 小夏:そりゃああたしチョイスだからねーはいビール 剛志:ありがとう 小夏:じゃあカンパーイ 剛志:カンパーイ 小夏:かぁー!たまらん! 剛志:仕事終わりのオヤジか 小夏:今日は何だか気分がいい! 剛志:なんかあったのか? 小夏:れなの寝顔見て 剛志:ん? 小夏:可愛いでしょ? 剛志:ま、まあ。 小夏:この寝顔が見れるのも、あたしがこうやって生ハムユッケ作るのも、剛志とビールが飲めるのも。なんかいいよね 剛志:そうだな 小夏:最近ね、あたしって何のために生きてるんだろうって、あたしの存在ってなんなんだろうって思うんだよね 剛志:昔もそんなこと言ってなかったか? 小夏:そうだね。でもあの頃はわからなかったけど、今ははっきりわかるよ 剛志:なんだ? 小夏:剛志が教えてくれたじゃん。あたしはれなのために生きてるんだって。 小夏:色々失敗したけど、れなを産んだことは絶対失敗じゃない。あと、もう一つ 小夏:剛志の所に戻ってきたことも、失敗じゃないよ。大成功! 剛志:そ、そりゃよかったよ 小夏:そういうぶっきらぼうなところも、口下手なところも、たまに素直になるところも。剛志と一緒に居ると改めて思うんだよね 剛志:な、何を思うんだよ 小夏:幸せってなんだろうって 剛志:幸せ? 小夏:そう。昔は彼氏が出来たら幸せなのかなーとか結婚したら幸せなのかなーとか、子供が出来たら幸せなのかなーって思ってたけど。今のあたしは多分そうじゃない 小夏:ただいまって言ったら、おかえりって言ってくれる人が居る。ただそれだけで幸せなんだなーって思った 剛志:……そ、それだけか!? 小夏:うん。それだけ 剛志:………… 小夏:ねえ、剛志 剛志:なんだよ 小夏:あたしとエッチする? 剛志:ぶっ!!ふ、ふざけ!……ふさげんな。しねーよ! 小夏:ちゅーくらいならしてもいいけどなー 剛志:し、しねーって! 小夏:しないのー? 剛志:し、しねーよ 小夏:残念だぁー 剛志:相変わらず冗談ばっかだな 小夏:冗談ねー。確かに冗談だけど8割本気だよ? 剛志:………お前、酔ってるな? 小夏:にゃはーん!酔ってるよー 剛志:もういい!俺は寝る!お前明日も仕事だろ? 小夏:うん。あたしも寝るよ 剛志:(M)小夏の幸せは本当に小さなことかもしれない。たったそれだけなら俺でも出来そうなことだけど 剛志:(M)それをすることによって、俺が小夏を幸せにしたいって思ってるみたいで、何故か恥ずかしさがあった 0:そして次の日 れな:おはよーママー! 小夏:おはよーれな。今日もママお仕事だから待っててねー れな:うん。パパとお留守番するー! 剛志:パ、パパ!?何言ってんだお前! れな:パパだもんねー! 小夏:うん。パパとお留守番してな 剛志:お前まで! 小夏:じゃあねー!いってきまーす!れな、パパ 剛志:………あ 剛志:一体何がどうなってやがる れな:パーパ! 剛志:ん? れな:ママと結婚してくれてありがとー! 剛志:は、はあ!?ま、まだ結婚してねーよ れな:まだ結婚してないの? 剛志:まだっていうか、なんというか れな:でもパパだもんねー! 剛志:前のパパはどうなったんだよ? れな:ママの約束だと、パパじゃないのかな? 剛志:なんだ、その約束って れな:パパには内緒ー! 剛志:な!なんだよこいつら! 0:【間】 0:そして小夏が帰ってくる 小夏:ただいまー れな:ママーおかえりー! 小夏:れなー!あなたは相変わらず可愛いねー! れな:ママの方が可愛いー! 小夏:ありがとー!……ん? 剛志:お……お、おかえり! 小夏:……にゃはー! 剛志:……っ! 0:小夏は剛志に抱きつく 小夏:ただいまー! 剛志:お、おい離れろって! 小夏:どうしてー?おかえりのちゅーは? 剛志:は、はあ!?なんでんなこと! 小夏:んー? 剛志:……っ! 剛志:(M)小夏とこんな形で近づくのは高校の時以来だ 剛志:(M)あの頃は小夏は下を向いていた。後ろめたい気持ちで俺を見ていた 剛志:(M)でも今は幸せそうな笑顔で、吸い付くような輝いた丸い瞳で俺を見ている。 剛志:………く 小夏:ほら、早く 剛志:………っ! 0:剛志は勢いよく小夏の唇を重ねた 小夏:んっ 剛志:はあ…はあ……風呂入ってくる! 小夏:にゃは!いってらっしゃい 0:剛志は風呂場に行く 小夏:……にゃはっ。痛いっての。童貞 小夏:今までのちゅーで一番キュンとしちゃった 小夏:先にお風呂入っちゃうし、便座は上げっぱなしだし、部屋は散らかってる 小夏:ほんと、剛志は女の子の気持ち考えられないよねーあの頃となーんにも変わらない 小夏:でも……少しずつ気持ちが変わってくれるなら、あたしはついて行くからね。童貞パパ 0:そして夜になる れな:いけー!頑張れー!プイキュアー! 剛志:今日はやけに元気だなー 小夏:れなに寝て欲しいの? 剛志:うげ! 小夏:お隣失礼 剛志:く、くっつくなって言っただろ? 小夏:これくらい全然くっついてないでしょー?なんか敏感になってない? 剛志:お前のせいだろ! 小夏:あたし何もしてないじゃん。してきたのは剛志の方でしょ?にゃは! 剛志:うるせーな!そういう雰囲気にしてきたのお前だろ! 小夏:もうーあたしのせいにしてー。したかったからちゅーしたって言えばいいのに 剛志:だーから!ハッキリと言うなよ! 小夏:恥ずかしかったんだねー。よちよち 剛志:くそうぜー 小夏:でもさ。よく言うじゃん?恋は駆け引きだって 剛志:なんか聞いたことあるな 小夏:好きになった方が負けとか惚れた方が負けってやつ 剛志:それがどうした? 小夏:ほら、あたしも昔剛志に負けたくないとか言って色々強がってたけど、今の現状を考えたらそれは違うんじゃないかなーって思ったんだ 剛志:ん? 小夏:負けてよかったんだよ。あの時からずっと。あたしは剛志に負けて好きって言うべきだったんだ 剛志:………それは…どういう 小夏:今、あたしが剛志のこと好きになって、れなも一緒に居て、こんなに幸せなんだもん。それなら負けでいい 剛志:……… 小夏:だからさ、剛志 剛志:うるさいぞ 小夏:………え? 剛志:勝ち負けじゃないだろ……人と人ってのはさ 小夏:……うん。例え話だからね 剛志:なんかわかんねーけど、お前が死にたいって言った時、なんでお前が死ななきゃいけないんだって思ったんだよ 小夏:どうして? 剛志:だって、お、お前は料理も上手くて、気が利くし、子供にも優しいし、か、か、可愛いだろ! 小夏:……… 剛志:手だって柔らかいし、体だって折れちゃうんじゃないかってくらい華奢だし、ネイルだってオシャレだろ!金髪の髪でもサラサラしていい匂いするし!お前を見てると……ドキドキすんだよ 剛志:そんなお前が俺のところに来てくれて……おちょくってきてうぜーけど、なんか憎めなくて……そうやって笑ってるお前を見てると…なんか……なんかな…… 剛志:幸せなんだよ 小夏:…………にゃはっ 剛志:だからさ、俺でよかったら……夫婦にならないか? 小夏:…………いいの? 剛志:お、おう 小夏:まだ付き合ってないけどいいの? 剛志:ま、まあそこは段階を踏むかもだけど 小夏:あたし、バツイチだよ? 剛志:うん。いいよ 小夏:パパ活もしてたし、汚れた女だよ? 剛志:うん。別にいい 小夏:子供だっているんだよ? 剛志:お前の目の前にいるやつはなんだ? 小夏:……… 剛志:俺は童貞だぞ?これから迷惑かけるのは明らかに経験が少ない俺の方だ 小夏:……ぷっ!にゃっははははは!!! 剛志:わ、笑うなよ! 小夏:カッコつけてるけど全然かっこよくないよー! 剛志:……あ、おい、れな動画見ながら寝てるぞ 小夏:あ、ほんとだ風邪引いちゃう 剛志:俺達も寝るか 小夏:うん。そうだね。今日は剛志の隣で寝たい 剛志:……わ、わかったよ 小夏:にゃはっ 剛志:(M)俺と小夏は夫婦になる約束をした。まだ付き合ってもないから話が飛びすぎてるかもしれないけど、必然のような気がした 剛志:(M)小夏を好きかと言われればよくわかんない。けどやっぱりあいつを見てると俺は幸せな気分になれる 剛志:(M)なんでか知らんがれなも俺の事パパって呼んでるしちょうどいいのかもしれない 剛志:(M)何もかもが希望に満ちている。きっと3人で幸せな未来が待っていると思っていた。 剛志:(M)次の日のこと 小夏:……よーし れな:ママ?お外でスマホ見てたら危ないよ!め!貸して! 小夏:あー。ごめん。貸すから落とさないでね? れな:お外でスマホ見てたら車に轢かれちゃうよ? 小夏:ごめんねーれな。じゃあ1回止まってもいい? れな:どうしてー? 小夏:んー?パパにお手紙書いてるの れな:なんでお手紙書いてるのー? 小夏:んーとねー。パパのこと大好きだから れな:れなもパパ大好きー! 小夏:にゃはっ!パパはねー。ママが道路に飛び出した時に助けてくれたんだよ れな:すごーい! 小夏:他にもー。前のパパにいじめられたーって言ったらまた助けてくれたの れな:プイキュアみたいだね! 小夏:そうだね!だかられなが助けてーって言ったら、きっと助けてくれるよ れな:やったーー!! れな:……あれ?ママ、ボール 小夏:え?…………ちょっ!! 0:子供の目の前でトラックが大きなクラクションを鳴らす 0:小夏は道路に飛び出した子供を突き飛ばしそのまま…… れな:え?……ママ? れな:………ねえ…ママ? 剛志:(M)小夏はトラックに轢かれた。小夏の細くて華奢な体はその衝撃に耐えられず即死だった 剛志:(M)嵐のような、それでも台風の目の中にいるような静かな日々は、一瞬でいとも簡単に崩れ去ってしまった 剛志:(M)俺は葬儀では泣かなかった。小夏と過ごした日々と夫婦になろうって誓ったばかりなのに死んでいきやがったから。またおちょくられてるようで腹が立っていた 剛志:(M)そして現在では れな:パパー!お洋服お洗濯しないのー? 剛志:ああ、そこ置いといてくれ れな:れなもお洗濯手伝うー! 剛志:触んな!また怪我するぞ? れな:あれ、パパ、ラムネ入れないの? 剛志:ラムネ? れな:これ 剛志:ああ、洗濯ビーズか。こんなん入ってたっけ? 剛志:(M)俺は洗濯ビーズを開ける 剛志:……… れな:パパ? 剛志:……これは入れない れな:えー!入れないのー? 剛志:早く着替えろ、服はどこにあんだ? れな:ここー! 剛志:(M)クローゼットを開ける 剛志:………全部たたまれて収納されてる… 剛志:……これでいいか? れな:うん! 剛志:………あーあ!ペケモンしよ! 剛志:(M)俺はゲームの電源を付ける 剛志:……あいつ、自分のアカウントでやったままじゃねーか…… 剛志:……なんで最初に選んだペケモンの名前がつよしなんだよ…れなも居るし…… 剛志:………はあ 剛志:(M)洗面所、トイレ、風呂場、キッチン、テーブル、布団、テレビ 剛志:(M)たった2ヶ月あいつと暮らしてただけでこんなにも形に残ってしまうものなのか 剛志:(M)あいつが、確かにここに居た証だけが残っている。 剛志:(M)もう戻らないとわかっている。けど何故か実感がない。3日前までは確かにここに居たからだ れな:ねえパパ 剛志:………なんだよ れな:ママからお手紙もらったの? 剛志:………お手紙? れな:ママがスマホに書いてたお手紙 剛志:………スマホに? 剛志:(M)俺は小夏のスマホを手に取る。 剛志:(M)事故が起きた日はれながこのスマホを持っていたらしいから綺麗なままで残っている 剛志:………パスワードわかんねー。誕生日じゃねーのかよ… 剛志:………まさか、ペケモンがヒントじゃねーよな? 剛志:(M)俺は24407を入力する 剛志:………開いた 剛志:(M)ホーム画面は小夏とれなの写真だった。あいつは自分の娘をそれはもう呆れるくらいに愛しすぎてる。いい母親だ 剛志:俺の手紙…… 剛志:(M)俺はラインを開く。そして俺のトーク画面に行くと 剛志:(M)打ち掛けの長い文章がつらつらと書かれていた 小夏:愛しのダーリンへ。なんちゃってー!気が早すぎか!まとまらなくなりそうだからラインで送るね。あ、ちなみに今のところおちょくってるよー。ってふざけてたら読まれないで既読無視とかされそうだからちゃんと書くね。 小夏:あたしね。実はずるい女なの知ってる?多分うざい女だって思われてるだろうけど、剛志があたしの言うことを何でも聞いてくれる取っておきの言い方を見つけたんだー!それを教えるね 小夏:んー例えば童貞の剛志くん、私とエッチする?っていうと剛志はふざけんなって嫌がるんだけど、夫婦になるために愛を確かめたいから剛志とエッチしたいって言うと剛志はエッチしてくれるんじゃないかなー? 小夏:どう?図星だった?そうなんだよ。理由とこうしたいって言い方をすると剛志は言うこと聞いてくれるんだよ。自分じゃ気付かなかったでしょ? 小夏:だからね、本当に叶えて欲しいことは言わないことにしたの。剛志には子供の時から今までで色んなものを沢山貰ったから、高望みなんてしちゃいけないと思って 小夏:でも、あたしが望んでることを剛志から言ってくれた時は本当に嬉しかったなー。夫婦にならないか?だなんて。あたしはこんなに幸せものでいいのかな?えぇー?どうなの?剛志ー 小夏:まあ、あたしだけが幸せなのもちょっとずるいかなーって思ってるんだ。二人だけが幸せなんてずるいよね。あたし達はれなも一緒に3人ででーーっかい!!幸せを作る事が大事なんだよ 小夏:だからさ、高望みでもいいし、ずるい女って言われてもいい。この願いは剛志にしか叶えられないんだから 小夏:でーーっかい!!幸せを作りたいから童貞パパの剛志とあたしとれな、3人で幸せな家族になりたい。 小夏:泣くことを忘れたれなが幸せすぎて泣いちゃうような、そんな家族になりたい 剛志:…………小夏 剛志:う……うぅぅーー!! 剛志:こんな願い掲げといて…なんで死ぬんだよ!! 剛志:お前のこと…もっと知りたかったよ…お前と…もっと思い出を作りたかったよ……まだこれからだっただろ…… 剛志:れなだって居るんだぞ……れなだってきっと寂しがる…… れな:パパ…? 剛志:………れな れな:どうしたの?お腹すいたの? 剛志:………ちげーよ れな:眠くなっちゃったの? 剛志:ちげー れな:おもちゃ無くなっちゃったの? 剛志:ちげーって言ってんだろ!! れな:………え? 剛志:そんな事で俺が泣くわけねぇだろ!お前はそれで泣くのかよ!! れな:……れなは、ママに泣いちゃダメって言われたから 剛志:ふざけんな!自分の母親が死んで悲しくねー子供でどうすんだよ! れな:……… 剛志:お前の母親はな!お前が泣かなくなったことに泣いてたんだぞ!悲しくて悔しくて泣いてたんだ!お前の母親は!お前のために泣いてたんだよ!だからお前も母親のために泣いてみろよ!! れな:………でも、ママが…… 剛志:悲しい時は思い切り泣け!楽しい時は思い切り笑え!お前の母親はそうだったじゃねーか!いつだって感情で動くやつだったよ!! 剛志:俺だって悲しいんだよ!お前よりも俺の方があいつと一緒にいた時間は長かったんだよ!だから俺だって泣いてんだよ!! れな:………パパ…うっ…… 剛志:だから…お前も泣けよ!子供らしくママが居ないと生きていけないって泣いてみろよぉぉ!! れな:……うっ…ううぅ…うえ〜〜〜ん!!ママ〜〜! 0:剛志はれなを抱きしめる 剛志:今は思い切り泣いてもいい。笑うだけが本当の強さじゃねーんだ。泣いた後にそれを乗り越えてお前の母親は……ママは、笑って幸せって言ってくれたんだ れな:うえ〜〜〜ん!!ママに会いたいよ〜〜!! 剛志:だから……俺もれなも…ママが居ない日々を乗り越えるんだよ。ママにはもう会えねー…俺も……小夏に会いてーよ…… 剛志:………小夏…!! 剛志:(M)何をしてもれなは泣かなかった。けど、れなは小夏に会いたくて泣いた 剛志:(M)そんなれなの姿を見たら小夏はなんて言うだろうか?なんて思うのはとんでもなく野暮な事だ 剛志:(M)とにかく今は俺もれなも乗り越えるしかないんだ。辛い日を乗り越えてきた小夏のように れな:……パパ 剛志:ん? れな:お布団行きたい 剛志:ああ、泣くと眠くなってくるだろ? れな:……うん 0:剛志はれなを布団に運ぶ れな:ねえパパ 剛志:なんだ? れな:ママがね、パパに会う前にパパはパパって言ってたよ 剛志:はあ?どういう意味だ? れな:ママと約束したの。ママとれなを幸せにしてくれる人はパパしかいないって。だからパパと一緒に居ようねって 剛志:………当たり前だろ。ママだって言ってたよ。3人ででーっっかい!幸せを作るって。俺とれなでママの分の幸せを作ってやろう れな:………うん! 0:れなは眠りにつく 剛志:………俺、このままだったら一生童貞だな 剛志:でもまあ、それも悪くはねーかな。なんならなってやるよ 剛志:童貞パパに 0:2ヶ月前、小夏とれなが剛志の家に訪れる前の事 小夏:ねえれな。これから会う人のことはおじさんって呼ぶんだよ れな:わかったー!おじさんってどんな人なのー? 小夏:んー?どんな人だったっけなー。ママもちょっと会うの怖いんだよね れな:怖い人なの!? 小夏:ううん。怖くないよ。前のパパみたいな人じゃない。ママが昔好きだった人だしね れな:そうなんだ!今もママは好きなの? 小夏:うん。好きだよ。きっとね、その人は優しいからママとれなのことも幸せにしてくれるよ。ママとれなを幸せにしてくれるのはその人しか居ない れな:えー!じゃあさ!ママが幸せそうに笑ったらおじさんの事パパって呼ぶようにするー! 小夏:パパ!?……ああーパパかー。パパねー れな:パパって呼んだら怒られる? 小夏:いいよ。じゃあママが幸せそうに笑ったらママはその人と結婚してパパになってもらうから、れなはパパって呼んでいいよ れな:やったー!約束ねー! 小夏:うん。約束だよ。あ、でも今はおじさんって呼ぶんだよ? れな:わかったー! 小夏:れなはいい子だねーさすがママの子 れな:楽しみ楽しみー! 小夏:楽しみだね。……いつもツンツンしてるし、怒りっぽいし自分勝手な剛志はなってくれるかなー?……きっとなってくれるよね? 小夏:剛志にしかなれない。童貞パパに

れな:ねえパパ 剛志:お前な、何回も言ってるけど俺の事パパって呼ぶな れな:なんで? 剛志:パパじゃねーからだよ れな:でもママと約束したからパパなんだよ 剛志:どういう意味だよ。 れな:ママと約束したんだー!あとママとパパは一緒に住んでたじゃん 剛志:それはお前の母親が押しかけてきたからだ! れな:そうなの? 剛志:そうだ。悪夢再来だったよ全く れな:悪夢って何ー? 剛志:うるせー。自分で調べろ れな:ねえパパ 剛志:……言ったそばから れな:パパって童貞なの? 剛志:お、おま!それどこで覚えてきた!? れな:ママが言ってたよ?パパは童貞だーって 剛志:ろくでもねー親子だな… れな:ねえパパおしっこしたい 剛志:……なんつータイミングだよ! 0:【間】 れな:かぁーたまらん! 剛志:それもあいつの真似かよ!母親の真似ばっかすんな! れな:おしっこしたら元気になったー! 剛志:ったく。子供っていつになったら一人でトイレ出来るようになるんだ? れな:お人形さんで遊ぶー! 剛志:……はぁ れな:パパー!このお人形さん可愛いんだよー! 剛志:……… れな:ほら、髪の毛ピンクになるの。綺麗でしょー!? 剛志:………… れな:ねえー!パパー! 剛志:お前さ れな:……え? 剛志:母親が死んだのに…悲しくねーのかよ れな:……どうして? 剛志:どうしてって…… れな:ママがね、悲しくても笑えって言ってたんだもん 剛志:…… れな:だからね、れなは沢山笑うの! 剛志:………誰に似たんだよ…… 剛志:(M)伊波小夏の葬儀から3日が経った日。そのままの流れで俺はあいつの娘の面倒を見てる 剛志:(M)どうしてかわからないが俺は無性にあいつに腹が立っている 剛志:(M)あいつにはいつも腹が立っている 剛志:(M)中学3年の頃 小夏:ねえ、剛志。あたしとエッチする? 剛志:………は!? 小夏:だから今日家に行ってもいい? 剛志:ばばばば!バカか!何する気だよ! 小夏:何ってー。色んなこと? 剛志:ふぁ!?え、ど、どういう事だよ! 小夏:……ぷっ!にゃっははははは!冗談に決まってんじゃん! 剛志:お、お前なぁ! 小夏:剛志は本当におちょくりがいがあるなー 剛志:ぜってー許さねぇ! 小夏:んでもさ、家に行きたいのは本当なんだよね 剛志:なんでだよ 小夏:いいじゃん。家も近所なんだし、幼なじみの交(よしみ)って事でお願い! 剛志:やだよ 小夏:なんでぇー!? 剛志:腹が立つからだ! 小夏:いけずな男 剛志:なんとでも言え!俺はいつもお前に腹が立ってんだよ 小夏:そこまで言わなくてもいいのにー 小夏:私……家に帰りたくない 剛志:はあ?なんで。おばさん達がいるだろ? 小夏:おばさん達だからだよ 剛志:何がそんなに嫌なんだ? 小夏:……ただいまって言っても…静かなんだもん…… 剛志:……… 小夏:だからさ、今年受験もあるし剛志と勉強したい 剛志:………なんだよそれ 剛志:あー!もう!わかったよ! 小夏:にゃはは!やったー!じゃあ決まりねー! 剛志:……ったく 剛志:(M)俺と小夏はいつもこんな感じだった 剛志:(M)ことある事に俺をからかい、反応を見ては、にゃははと笑っているクソガキだ 剛志:(M)そして現在は れな:パパー? 剛志:だからパパって呼ぶんじゃねーよ。なんだ? れな:お腹すいた 剛志:知らねーよ。さっき食っただろ れな:お腹すいたお腹すいたお腹すいたお腹すいた!! 剛志:うるせー!!わめくな! れな:わめくってなにー!? 剛志:何でもかんでも質問すんなよクソガキ! れな:ユーチューブみたーい 剛志:勝手に見てろ れな:パパも見よー? 剛志:俺はパパじゃねーから見ねーよ れな:これだから童貞は 剛志:ああん!?なんか言ったか!? れな:ママがよく言ってた言葉だよー 剛志:ほんとろくな言葉覚えてねーなお前は れな:でも童貞ってなに? 剛志:知らねー言葉使うな! 剛志:(M)あいつの娘はあいつに似ているのかもな 0:高校2年の時の事 剛志:か、彼女が出来た!!ついに念願の彼女だ!! 剛志:ふっふっふ。これで小夏にもバカにされないで済むぞー。俺もついに……童貞卒業だ!! 小夏:え?剛志童貞卒業するの? 剛志:うわあー! 小夏:にゃは!何?その反応 剛志:な、なんでもねーよ! 小夏:童貞卒業がどうとか言ってなかった? 剛志:ああ、まあな。俺、彼女出来たんだよ 小夏:………ふーん 剛志:もっと驚けよ!俺に彼女が出来たんだぞ!? 小夏:おめでとーございまーす 剛志:なんだよその反応。つまんねーな 小夏:じゃあねー 剛志:……はあ? 剛志:なんだあいつの態度 0:しばらく経ったある日のこと 剛志:か、彼女が出来たはいいけど一向に童貞卒業出来ない…なんだか誘い方がわからん 剛志:雰囲気ってどう作ればいいんだ!?わからん… 小夏:あ 剛志:ん? 小夏:おはよー 剛志:おはよう。なんだ?その荷物 小夏:ちょっとねー。友達の家に泊まりに行ってたの 剛志:家帰ってないのか? 小夏:うん。ここ最近はね 剛志:いくらなんでも家に帰らないのは良くないだろ 小夏:大丈夫だよ。おじさんもおばさんも特に連絡してこないし、心配もしてないと思うよ 剛志:でも、帰れる場所があるんだから帰れよ 小夏:なんで剛志にそんなこと言われないといけないの? 剛志:そりゃ、お、幼なじみだから 小夏:だから何?関係ないじゃん 剛志:関係…ない?お前ふざけんなよ。俺がただでお前におちょくられてたとでも思ってるのか? 小夏:あーそうだね。剛志はあの時は童貞だったからおちょくってたけど、もうつまんない 剛志:……は? 小夏:楽しかったよ。でももうあたしも忙しくなったし、剛志にかまってる暇なんてないの 剛志:……… 小夏:嫌いなの。剛志のこと 剛志:……ふざけんなよ! 0:剛志は小夏を突き飛ばす 剛志:……っ!ご、ごめん 小夏:……… 0:小夏が倒れたと同時に紙が10枚ほど散らばる 剛志:おい…お前…なんだよこの金 小夏:……バイトしてるの。1日でこんなに稼げたよ 剛志:………なんのバイトだ? 小夏:……さあね 剛志:お前…落ちぶれたのかよ 小夏:……… 剛志:………そっか。俺のことおちょくってたけど、本当にそういうことする奴だったのか。見損なったぞ…… 小夏:………… 剛志:もう俺に近寄るなよ!クソ(ビッチ) 小夏:っ!(遮るようにビンタする) 剛志:……… 小夏:………ごめん 0:小夏は荷物を持って立ち去る 剛志:おい!小夏!金はどうすんだよ! 0:剛志は散らばったお金を集めて小夏を追いかける 剛志:小夏ー!小夏ー!! 剛志:くそ!ラインも電話も繋がらねぇ 剛志:小夏ー! 剛志:……いた! 0:小夏は道路の外側で佇む 剛志:小夏!! 剛志:(M)俺はこの時の事はあまり覚えていない。頭が真っ白になっていた 剛志:(M)小夏はトラックが来たタイミングで道路に飛び出したんだ 剛志:小夏ー!! 小夏:っ!! 剛志:くっ!! 剛志:(M)あまり覚えてないけど。これだけは覚えている 剛志:(M)俺は小夏を抱きしめ道路の外側に連れ戻した 剛志:小夏! 小夏:……剛志 剛志:……お前、何やってんだよ! 小夏:……離して 剛志:……ご、ごめん 小夏:…………嘘、離れないで 剛志:こ、小夏? 小夏:……にゃはは。あたし死にたくなっちゃった 剛志:何言ってんだよ…死ぬなよ 小夏:生きちゃったね 剛志:死ぬなって言ってんだろ!何考えてんだよ! 小夏:なんかさ…色々わかんなくなっちゃった 剛志:……何が? 小夏:自分は何してんだろうって。自分は何のために生きてるんだろうって。自分の存在はなんなんだろうって 小夏:親も友達も…剛志も…。みんなが私を置いていく 剛志:ばかか。俺は置いていってないだろ 小夏:じゃあさ。剛志。私たち結婚する? 剛志:は、はあ!?す、するわけねぇだろ! 小夏:にゃは!そうだよね。するわけない 剛志:性懲りも無くまたおちょくってんのかよ 小夏:ううん。多分だけどこれで最後かな 剛志:な、なんで? 小夏:帰れる場所があるなら帰れってさっき剛志が言ってくれたでしょ? 剛志:うん 小夏:辛くて、どうしても逃げたい時は剛志の所に帰りたい。 剛志:………別にいいよ、それくらいなら 小夏:にゃは!ありがと!剛志ならそう言ってくれると思ってた 小夏:じゃあねー!またいつか会おうねー! 0:小夏はすぐに立ち去る 剛志:お、おい!どういう意味だよ! 剛志:(M)次の日から、小夏の姿を見ることはなかった 剛志:(M)小夏が住んでいた家の人から聞くと突然いなくなってしまったらしい。小夏の言う通り、小夏のいとこは心配している様子もなかった 剛志:(M)俺は小夏の言葉が頭から離れず、上の空になってしまった。だからすぐに彼女とも別れてしまったのだ 剛志:(M)そして今現在 れな:パパ〜。ジュースこぼしちゃった 剛志:もう何してんだよ。服脱げ れな:にゃはは!びしょびしょー! 剛志:その笑い方も母親譲りだな れな:お洋服脱げないー 剛志:はいはい れな:うんしょ 剛志:……… れな:脱げたー! 剛志:………酷い傷だな れな:んー?なにがー? 剛志:いや、なんでもない れな:うん! 剛志:お前、その傷痛くないのか? れな:これー?痛くないよ。 剛志:何をしたらこんな傷になるんだよ れな:にゃはは。わかんないけどママが言ってたよ。痛いの痛いの飛んでけーって。だから痛くなくなったんだー 剛志:それで痛みが無くなったら苦労しねえよ。まあいいや、早く着替えろ れな:うん! 剛志:(M)れながこの家に来たのは2ヶ月前のことだ 剛志:(M)そして、あいつが急に俺の家に押しかけてきたのも2ヶ月前だ 剛志:(M)嵐のような。それでも台風の目の中に居るような静かな日々だった 剛志:(M)2ヶ月前のこと 剛志:よーし!ペケモン全種類捕まえたー!色違いも全部コンプリート! 剛志:はー疲れたー。ん?もう11時か。夜から初めてこの時間ならいい方だろう 剛志:とりあえず仮眠してまたやるかー 剛志:……昔も、こうやってペケモン捕まえてあいつと交換したりしてたっけなー 剛志:あいつが居なくなってからもう7年は経つか。生きてんのかな? 剛志:よくわかんねーけど、もう会うこともなさそうだ 剛志:………もう、会えねぇのかな 0:剛志の家のインターホンが鳴る 剛志:ん?なんだ?こんな時間から 0:剛志は玄関に向かい 剛志:はーい 剛志:……っ! 小夏:にゃは!こんにちわ! れな:わ! 剛志:……あ、あの、どちら様で? 小夏:久しぶりー! れな:ぶりー! 剛志:だ、だから!どちら様ですか!? 小夏:えー?髪型も髪色も変わってグラサンかけてるけど声でわからない? 剛志:……え? 小夏:にゃはは!わかってないんかい! 剛志:この…笑い方は…… 剛志:小夏!? 小夏:にゃっははははー!!正解ー! 剛志:な、なんでお前がいるんだ!?てかどこに行ってたんだ!?なんだこの子供!?お前なんだその格好!? 小夏:んもう!質問は一つずつお願いします!とりあえず入るね? 剛志:ちょっ!勝手に入んな! れな:おじゃしまーす! 剛志:誰だよこの子供! 小夏:え?あたしの子供 剛志:は!? 小夏:うーわ、きったなー!なんでカップ麺のゴミが布団の上にあるの!?信じられない! 剛志:いきなり押しかけてきて文句言うな! れな:きちゃなーい! 剛志:んだよこのガキ! 剛志:おい小夏!とりあえず事の経緯を教えてくれよ。なんで帰ってきたんだ? 小夏:なんで帰ってきたって約束したじゃん? 剛志:や、約束? 小夏:忘れたの!?サイテー! 剛志:そんな昔のことなんて覚えて……あっ! 小夏:思い出した?あたし言ったよね? 小夏:辛くて、どうしても逃げたい時は剛志の所に帰りたいって。だから… 小夏:ただいま。剛志 剛志:………えーー!!! 0:しばらく時間が経つ 小夏:ふぅー!やっと綺麗になったから座れるー 剛志:ほんと失礼なやつだな 小夏:一人暮らしでこんなに散らかってるってことはー。さては剛志、彼女いないなー? 剛志:ほっとけ! 剛志:お前はどうなんだ?急にどっか行って子供作って帰ってきやがって。今までどこに行ってたんだよ 小夏:ロス 剛志:は?どこだよそこ 小夏:えぇ…?知らないの?ロスアンゼルスだよ 剛志:な、なんでそんなとこに!? 小夏:自分探しのためにねー 剛志:こ、高校は?大学は!? 小夏:高卒の資格は持ってるけど大学とかは行ってない 剛志:ま、まあロスの大学とか未知数だからな… 剛志:………てか!その子供は!? 小夏:あーそうそう、挨拶してー? れな:れなでーす! 小夏:わー!挨拶出来てえらいねー! れな:れなえらーい! 剛志:本当にお前の子供なのか? 小夏:そうだよ。あたしに似て可愛いんだから れな:おじさんの家くさーい 剛志:可愛げが無いのも似てるみたいだな 剛志:そ、その…誰との子なんだよ? 小夏:何想像してんの? 剛志:なんも想像してねーよ!早く答えろ! 小夏:んもーわかったよ。れなはね、ロスで会った男と出来た子だよ 剛志:………そうか 小夏:うん。もう別れたけどね 剛志:そ、そうなのか 小夏:……ほんと、ろくでもない男だったよ 剛志:なんでそんな男と……け、結婚したんだよ! 小夏:決まってんじゃん。あたしの見る目がなかっただけだよー 剛志:そんな軽いノリで言うな! 小夏:なんでよ。過ぎたことなんだから考えてもしょうがないでしょ? 小夏:剛志はまだ童貞なの? 剛志:……っ!!う、うるせー! 小夏:へぇー!やっぱ童貞だったんだー れな:ママー童貞って何ー? 小夏:んー童貞っていうのはー 剛志:やめろ!子供にまで変なこと教えんな! 小夏:ムキになってるー。相変わらずウケるね 剛志:面白くねーわ!ったく!気分わりー!俺は寝るぞ! れな:おじさーん、遊ぼーよー! 剛志:うるせー!帰れ! 小夏:帰る場所なんてありませーん! 剛志:じゃあどっか行けー! 小夏:もう、釣れない男だなー。れな、ママとお出かけしよっか れな:うん! 小夏:日本の街を探索しよー! れな:おー! 0:小夏とれなは外に出る 剛志:ふぅー。これでゆっくり出来る… 剛志:………てか、普通に帰ってきたけどまじで何があったんだ? 剛志:あいつの事だからまたなんかあったんだろうな。全く、面倒なことにならなきゃいいけど 剛志:まあいい。ひとまず寝るとしよう 0:剛志はしばらく眠る 剛志:………っ れな:わー!おじさんが起きたー! 剛志:へ!?今何時?……なんかいい匂いがする れな:ママー!おじさんが起きたよー! 小夏:おはよー 剛志:い、今何時!? 小夏:んー?今は夕方の6時だよ? 剛志:ガーーーン!! 小夏:何のガーンなの? 剛志:貴重な休みを徹夜と昼寝で終わらせてしまった…… 小夏:いつも休みの日どうしてるのー?どうせ起きたらコンビニとかでご飯買うんでしょ? 剛志:そうだよ。悪いか?こうしちゃいられねぇ。コンビニ行かないと! 小夏:ご飯作っといたよ 剛志:……え? 小夏:カレー作っといたよ。れな用だから甘口だけど 剛志:お、俺の分もか!? 小夏:当たり前じゃん。ただで家に押しかけてるわけじゃないんだし。どうする?食べる? 剛志:う、うん! 小夏:じゃあ待っててねー れな:ママー!れなもお腹すいたー! 小夏:はいはーい。いい子に待っててねー。おじさんと遊んでて れな:おじさーん!遊ぼー!! 剛志:な、なんで俺がガキの相手なんかしなきゃいけねーんだよ! れな:一緒にユーチューブ見よー! 剛志:なんだってんだよ… 0:しばらくすると 小夏:はーい、お待たせー れな:ご飯だご飯だー! 小夏:れな、ちゃんとおてて拭いてからね? れな:はーい! 剛志:……… 小夏:食べないの? 剛志:い、いただきます! 小夏:うん 剛志:パクっ。……… 小夏:………ん? 剛志:う、うめー! 小夏:っ!……にゃは! 剛志:うめーよ!人が作った料理がこんな美味く感じるの久しぶりだ! 小夏:にゃはーん! 剛志:おかわりくれー! 小夏:にゃはは! 剛志:さっきから何笑ってんだよ 小夏:ん?なんかねーにゃはは! 剛志:ん? 小夏:自分で作った料理がおいしいって言われるのって嬉しいことなんだなーって思ったの 剛志:……ま、まあ!昔からお前は料理好きだったもんな 小夏:うん。でもおじさんとおばさんは食べてくれなかったけどね 剛志:……そ、そっか。こんなに美味いのにもったいないな 小夏:……ありがと 剛志:(M)いつも無茶苦茶な小夏だが、何故かその笑顔にはズキンと打たれるように胸が激しく動いた 剛志:(M)そして次の日 小夏:いってらっしゃーい。これ、お弁当ね 剛志:お、おう。ここまでしなくてもいいのに 小夏:なんで?これくらいロスに居た時も普通にやってたよ? 剛志:ち、ちげーよ!そ、その……ふ、夫婦みたいじゃないか! 小夏:えー。じゃあ夫婦になる? 剛志:な、ならねーよ!ふざけんな! 小夏:にゃははーん!いってらっしゃーい れな:おじさんいってらっしゃーい! 剛志:うるせー! 0:剛志は外に出る れな:おじさん面白いね 小夏:でしょ? 0:そして夜になる 剛志:ふぅー。今日もあいつらが居るのか…… 0:剛志は玄関を開ける 小夏:おかえりー! れな:おじさんおかえりー! 剛志:た、ただいま 剛志:(M)迷惑だとはいえ、家に帰った時におかえりと言われるのは少しだけ嬉しい気もした 小夏:………れなー? れな:すぅー。すぅー。 小夏:やーっと寝た 剛志:毎日そうやって寝かせてるのか? 小夏:うん。れなの寝顔可愛いでしょ? 剛志:俺の子じゃないから知らねーよ 小夏:なんでそんな言い方しか出来ないの?これだから童貞は 剛志:うるせー!……あっ 小夏:大丈夫。れなは1回寝るとなかなか起きないからね 剛志:そ、そうなのか 小夏:ねぇ、ゲームしてもいい? 剛志:図々しさは変わらねーなー 小夏:いいじゃん。ロスにいた頃はこんなこと出来なかったし。 小夏:…えぇー!ペケモンアメジストのリメイク版持ってるの!?懐かしいー! 剛志:ああ。絵もなかなか綺麗になってて面白いぞ 小夏:データ消して最初からやっていい? 剛志:ふざけんな!ペケモン全種類集めたデータだぞ!?別アカウント作れば出来るからそれでやれ! 小夏:へぇー!そんなこと出来るんだ〜! 剛志:おう。それでやってもいいぞ 小夏:わあー!すごーい! 0:しばらくゲームで遊ぶ 小夏:はあー面白かったー 剛志:俺よりはまだ下手だな 小夏:そりゃそうだよ剛志みたいに休みの前の日に徹夜でゲームなんてする暇ないもん 剛志:それ言われたら何も文句言えねーわ 小夏:ママ歴4年目だからねー 剛志:前の…旦那とは何があったんだ? 小夏:なんで? 剛志:だって、辛くなったら俺のとこに戻ってくるって言う割には7年も経ってるし。何かあったから戻ってきたんだろ? 小夏:うーん。そうだね。こんなこと言ったら怒るかもしれないけど 小夏:……また死にたくなっちゃった 剛志:は、はあ!?おいおい、子供もいるのにそんな簡単に言うなよ 小夏:そんな簡単って? 剛志:……… 小夏:そりゃあれなが起きてるうちは元気で可愛いママで居たいよ。子供は親の姿を見て育つもん 剛志:……ああ。そうだな 小夏:でも、れなが寝た時の夜は一人の人間だからね。色々考えちゃうの 剛志:………何があったんだ? 小夏:………気になる? 剛志:……気になるだろ 小夏:じゃあ、あたしとエッチする? 剛志:………ふ、ふざけんな!! 小夏:あ、ちょっと、そこまで大声出したられなが起きちゃうよ 剛志:お前は俺をおちょくるために帰ってきたのか? 小夏:そ、そんなわけないでしょ。ごめんって 剛志:……はあ 小夏:本気で怒ってる? 剛志:怒るに決まってるだろ。俺はずっとお前を心配してたんだぞ 小夏:………そうだよね。ごめん 剛志:もういい。心配して損した。お前いつまでここにいるつもりだ? 小夏:あ、そこは安心して。ちゃんとあたしも働くし、れなだって保育園に預ける予定だから。 剛志:だから!いつまでいるんだ!? 小夏:え?んーーー。ずっと? 剛志:ふざ!!……ふざけんな。なんでずっといる予定なんだよ! 小夏:ダメなの? 剛志:ダメだろ!倫理的に! 小夏:じゃあ合理的に? 剛志:わけわかんねーこと言うな! 剛志:お前な、これ以上ふざけたこと言うなよ?何も話せないなら俺の所に帰ってくるな 小夏:………そだね。じゃああたしは寝るね 剛志:……… 剛志:(M)小夏はそのままれなと同じ布団で眠る 剛志:(M)普段から本気なのか冗談なのかわからない言動に童貞の俺はどこまでも振り回されていた 0:1週間が経ったある日 小夏:じゃあ病院行ってくるからお留守番よろしくー 剛志:……… れな:ママー!頑張ってねー! 小夏:うん!いい子にしててねー! 0:小夏は外に出る 剛志:…………全然帰る気ねえだろ… れな:おじさん! 剛志:な、なんだよ れな:プイキュアごっこしよー! 剛志:プイキュア?そんなん見たことねえよ れな:やろー!こうやってやるんだよ! 剛志:お、おい、ソファの上に乗るなよ。危ねーだろ れな:いくよー?見ててー?もぎたてフレッシュー!ってやるんだよ 剛志:知らねーよ。降りろ、怪我するぞ? れな:もぎたてフレー!……っ! 剛志:おい! 0:れなはソファから落ちておでこをテーブルにぶつける 剛志:だ、大丈夫か? れな:……… 剛志:や、やべぇちょっと血出てるし腫れてる… れな:にゃはは〜落ちちゃった〜! 剛志:笑ってる場合か!泣かないだけマシだけど 剛志:とりあえずタオルの上に氷当てて冷やせ れな:つめたーい! 剛志:これで泣かないのもすごいよな 0:しばらくすると小夏が帰ってくる 小夏:ただいまー れな:ママー!おかえりー! 小夏:ん?どうした?この傷 剛志:あ、ああ。ごめん。俺が見てたんだけどソファから落ちてテーブルに頭ぶつけちゃったんだ 小夏:れなー?悪さしたの? れな:にゃはは!!お怪我したんだー! 小夏:にゃははじゃないの れな:ごめんなさーい! 小夏:ダメだよー?迷惑かけちゃ 剛志:ご、ごめんな。俺が見てたのに 小夏:大丈夫大丈夫。悪さした代償だよ。 剛志:そういや病院で何しに行ったんだ? 小夏:薬もらってきた 剛志:薬? 小夏:ロスに居た時から寝付きが悪くてさ。薬飲まないと寝れないの 剛志:だ、大丈夫か? 小夏:大丈夫じゃなかったら何かしてくれる? 剛志:いや、何もしないけど 小夏:にゃはっ 0:そしてその日の夜 小夏:ねえ剛志 剛志:ん? 小夏:れなも寝たし、晩酌しない? 0:小夏は袋に入ったビールを剛志に差し出す 剛志:おお…気が利くじゃねーか 小夏:じゃーん!もやしナムルも作りました! 剛志:す、すげーな!こんなのも作れるのか 小夏:意外と簡単だよ? 剛志:食っていいか? 小夏:うん。召し上がれ 剛志:う、うめぇ…… 小夏:にゃはは!相変わらず美味しそうに食べてくれるね!じゃあビールも開けちゃうよ? 0:小夏は剛志の分のビールを開ける 剛志:あ、ありがとう 小夏:うん。じゃあカンパーイ 0:二人は大きな一口でビールを飲む 小夏:かぁー!たまらん! 剛志:オヤジみたいなことすんな 小夏:晩酌ってなんか憧れてたんだよね 剛志:なんで? 小夏:仲良いみたいじゃん? 剛志:……前の旦那とは晩酌したこと無かったのか? 小夏:したことないね 剛志:……そっか 小夏:……それ以上は何も聞いてくれないの? 剛志:…聞かねーよ。前だっておちょくられたし 小夏:それはごめんね。 剛志:許さん 小夏:あ、そうだ。あたし剛志に謝らないといけないことがあったんだ。二つくらい 剛志:なんだ? 小夏:高校生の頃、剛志に色々言われてさ。勢いでビンタしてごめんね 剛志:あ、ああ。そんなこともあったな 小夏:あれはね、カッとなってビンタしたわけじゃなくて、剛志の言葉が怖くなったの 剛志:……俺の…言葉? 小夏:あの頃は確かに落ちぶれてたし、色々悩んでたし、間違ったことばっかしてた。だから剛志に正論言われることが怖くて、これ以上傷つきたくなくてビンタしたの 剛志:まあ、それはいいよ。俺も言い過ぎたし 小夏:あともう一つはねー。急に居なくなったこと。 剛志:……… 小夏:あたしはさ、いつも剛志をからかってたけどね、本当は剛志に彼女が出来たことが寂しかったんだ 剛志:……な、なんでだよ 小夏:にゃは!それ聞くー? 剛志:べ、別に話したくねーならいいよ! 小夏:じゃあ、こういう言い方にするよ。からかってる時はあたしは剛志よりも勝ってる気がしたの 剛志:勝ってるってなんだ? 小夏:なんかね、気持ち的に? 剛志:よくわかんねーよ 小夏:でもそういうことなの。いつも剛志には勝てるって思ってたのに剛志に彼女が出来てなんか負けてる気分になったんだ 小夏:だからあたしは悔しくて、見返したくなったからパパ活して自分の体を汚してまでお金持ちになったら剛志に勝てると思ってた 小夏:……でもさ、そういうことで勝った気になんてなれるわけないよね 剛志:………そりゃあそうだろ。だから落ちぶれたって言ったんだ 小夏:ほんと、その通りだよ。もう剛志に合わせる顔もないと思ってたしね 小夏:ちゃんと高校卒業したけどその後ノリでロス行ったら変な男に捕まって失敗したし。最悪だったよ 剛志:そうだ、なんでロスでそんな男と…… 小夏:なんでだろうね?あたしにもわかんない。地位の高い男と結婚して幸せな家庭でも築けたらまた剛志に勝てるかも。なんて思ってたんだよ 剛志:……よくわかんねーよ 小夏:でも、全部失敗しちゃったの。ロスに行ったことも、ろくでもない男と結婚したのも。 剛志:じゃあ…その男と何があったんだ? 小夏:………見る? 剛志:な、何を? 小夏:ほら 剛志:……… 剛志:(M)小夏の肩には切り傷のような跡があった 小夏:8針縫った跡だよ 剛志:………… 小夏:あと胸に根性焼きの跡もある 剛志:っ! 小夏:あ、さすがに見せないからね? 剛志:あ、当たり前だろ! 小夏:毎日アザが出来てたし、何回も打撲してた 小夏:なんでこうなったのかはわかんないけど、あたしが1番許せないのは……れなにまで手を出した事 剛志:……… 小夏:あたしだけならまだ我慢できた。れなには父親として愛情があると思った。でも……れなにも手を上げて、一生残る傷を付けたの。あたしの大事なれなを傷付けたの 小夏:だからあたしはれなにも強く生きて欲しくてどんなに痛くても悲しいことがあっても泣いちゃダメって教えたんだけど、それも間違いだよね 剛志:………間違い? 小夏:だって、全部我慢させちゃうでしょ?今日怪我した時も泣かなかったんじゃないかな? 剛志:確かに…泣かなかった 小夏:泣きたい時に泣けない子になったら…どうしようって…… 小夏:……これってさ。全部あたしのせいなんじゃないかなって思うんだよね 剛志:………なんで? 小夏:勝手に日本から離れて、海外に行って、見た目だけの男と結婚して、れなを生んで、傷付けた 小夏:あたしの人生、失敗だらけだよ……れなを生んだのも……失敗なのかなって…… 剛志:それは違うだろ 小夏:………え? 剛志:お前は…娘の前では元気で、か、可愛いママで居たいって言ってたじゃねーか。子供のために笑って、子供のために泣ける母親ってだけで…れなは良い母親に恵まれてるんじゃないか? 小夏:………剛志 剛志:そ、それに!お、俺は!童貞だからよ!女の気持ちとかよくわかんねーし、なんて言ったらいいかわかんねーよ…けど、 剛志:辛かっただろうけど…お前が生きて俺の所に戻ってきてくれて……安心したよ 小夏:………うっ、うぅぅ〜〜! 剛志:な、なな!泣くなって!なんで泣いたんだ!?え!?な、なんで!? 小夏:童貞にはわかんないよ 剛志:っ!またおちょくりやがって 小夏:にゃっはははは! 剛志:ったくよ 小夏:剛志が昔とあんまり変わってなくてよかった 剛志:なんで? 小夏:ううん。なんでもないよ。剛志、あたしが仕事はじめて落ち着くまで、れなとここに居たい 剛志:………勝手にしろよ 剛志:(M)小夏はよく笑う。それは自分の娘の前では良い母親でいたいからだ。 剛志:(M)それでも、小夏は俺の前では泣いた。その意味がどういう事だったかはわからない。でも、あんなに辛い思いをしていた小夏が生きて俺の前に居る 剛志:(M)それだけで、俺は7年間のモヤモヤが解消されたようだった 0:1ヶ月が経ったある日 小夏:お願いしますお願いしますお願いしますー! 剛志:だめだ! れな:め! 小夏:一生のお願い! 剛志:一生のお願いは1回限りだろ!?お前の場合、週に2回なんだよ!わかる!? 小夏:わかるー!すごくわかるー! 剛志:わかるなら断れ! れな:ママと一緒がいいー! 剛志:俺だってガキと居たくねーよ! 小夏:二人とも!わがまま言わないの! 剛志:おめーだろ!わがまま言ってるの! 小夏:えー。だってあたし住所とかその他もろもろ決まってない状態だから保育園の手続きややこしくなるんだよー?まだ保育園には入園出来なそうだし 剛志:なら早く住む場所決めろ! 小夏:ん!んんん!! 剛志:な、なんだよ 小夏:これだから童貞は 剛志:ぶち殺すぞ!!その態度でパートやりたいは無しだ! 小夏:にゃははー!でももう面接受かっちゃったんだよねー。英語喋れるから割と高い時給で働けるんだよー? 剛志:だとしても!なんで俺の土日休みをお前の子供の面倒で潰さなきゃいけねーんだ! 小夏:あたし毎日れなの面倒見てるんだけど!? 剛志:ああそうだな!でも俺はこいつの父親じゃねーし俺らは夫婦じゃねー! 小夏:それもそっか。夫婦じゃなかった 剛志:わかったならパートの仕事断れ 小夏:断ったらあたしとれな、ずっとこの家に居ることになるよ? 剛志:うっ。なんて脅し文句だ れな:れなはママと一緒に居るー! 小夏:よしよーし。れなはママが居なくても楽しく遊べるでしょ?おじさんと仲良く遊んでてね? れな:うん!おじさーん!おもちゃであそぼー! 剛志:今じゃねーよ 0:そして1週間が経つ 小夏:じゃあ、初出勤いってきまーす! れな:いってらっしゃーい! 剛志:はあ。なんでこんなことになったんだ れな:おじさんゲームしよー! 剛志:おいおい、お前の母親のデータで遊べよ!? 0:そして夜になる 小夏:ただいまー れな:おかえりー!ママー! 小夏:れなー!いい子にしてたー?今ご飯作るからね れな:ハンバーグ食べたーい! 小夏:じゃあ今日はハンバーグね。 小夏:ただいま、剛志 剛志:ん?ああ。おかえり 小夏:……にゃは! 剛志:な、なんだ? 小夏:にゃはーん!なんだろうね! れな:あー!ママが笑ったー! 小夏:にゃっははー!ママも楽しくなってきちゃったよー 剛志:変なやつだな 0:夜になる れな:………ママ 小夏:ん?どうした? れな:今、幸せなの? 小夏:どうして? れな:ママと……約束したじゃん 小夏:そうだね、約束したね れな:ママが……幸せそうに笑ったとき……んー(寝息) 小夏:……ん?あら、寝ちゃった 剛志:何か言いかけてなかったか? 小夏:そうだね。でももう寝たし、よーし!今日は久しぶりに仕事したから飲むぞー! 剛志:酒好きなのか? 小夏:一本飲むくらいはねー。今日は生ハムユッケだよー 剛志:う、美味そう……小夏の作るツマミは酒が飲みたくなるんだよな 小夏:そりゃああたしチョイスだからねーはいビール 剛志:ありがとう 小夏:じゃあカンパーイ 剛志:カンパーイ 小夏:かぁー!たまらん! 剛志:仕事終わりのオヤジか 小夏:今日は何だか気分がいい! 剛志:なんかあったのか? 小夏:れなの寝顔見て 剛志:ん? 小夏:可愛いでしょ? 剛志:ま、まあ。 小夏:この寝顔が見れるのも、あたしがこうやって生ハムユッケ作るのも、剛志とビールが飲めるのも。なんかいいよね 剛志:そうだな 小夏:最近ね、あたしって何のために生きてるんだろうって、あたしの存在ってなんなんだろうって思うんだよね 剛志:昔もそんなこと言ってなかったか? 小夏:そうだね。でもあの頃はわからなかったけど、今ははっきりわかるよ 剛志:なんだ? 小夏:剛志が教えてくれたじゃん。あたしはれなのために生きてるんだって。 小夏:色々失敗したけど、れなを産んだことは絶対失敗じゃない。あと、もう一つ 小夏:剛志の所に戻ってきたことも、失敗じゃないよ。大成功! 剛志:そ、そりゃよかったよ 小夏:そういうぶっきらぼうなところも、口下手なところも、たまに素直になるところも。剛志と一緒に居ると改めて思うんだよね 剛志:な、何を思うんだよ 小夏:幸せってなんだろうって 剛志:幸せ? 小夏:そう。昔は彼氏が出来たら幸せなのかなーとか結婚したら幸せなのかなーとか、子供が出来たら幸せなのかなーって思ってたけど。今のあたしは多分そうじゃない 小夏:ただいまって言ったら、おかえりって言ってくれる人が居る。ただそれだけで幸せなんだなーって思った 剛志:……そ、それだけか!? 小夏:うん。それだけ 剛志:………… 小夏:ねえ、剛志 剛志:なんだよ 小夏:あたしとエッチする? 剛志:ぶっ!!ふ、ふざけ!……ふさげんな。しねーよ! 小夏:ちゅーくらいならしてもいいけどなー 剛志:し、しねーって! 小夏:しないのー? 剛志:し、しねーよ 小夏:残念だぁー 剛志:相変わらず冗談ばっかだな 小夏:冗談ねー。確かに冗談だけど8割本気だよ? 剛志:………お前、酔ってるな? 小夏:にゃはーん!酔ってるよー 剛志:もういい!俺は寝る!お前明日も仕事だろ? 小夏:うん。あたしも寝るよ 剛志:(M)小夏の幸せは本当に小さなことかもしれない。たったそれだけなら俺でも出来そうなことだけど 剛志:(M)それをすることによって、俺が小夏を幸せにしたいって思ってるみたいで、何故か恥ずかしさがあった 0:そして次の日 れな:おはよーママー! 小夏:おはよーれな。今日もママお仕事だから待っててねー れな:うん。パパとお留守番するー! 剛志:パ、パパ!?何言ってんだお前! れな:パパだもんねー! 小夏:うん。パパとお留守番してな 剛志:お前まで! 小夏:じゃあねー!いってきまーす!れな、パパ 剛志:………あ 剛志:一体何がどうなってやがる れな:パーパ! 剛志:ん? れな:ママと結婚してくれてありがとー! 剛志:は、はあ!?ま、まだ結婚してねーよ れな:まだ結婚してないの? 剛志:まだっていうか、なんというか れな:でもパパだもんねー! 剛志:前のパパはどうなったんだよ? れな:ママの約束だと、パパじゃないのかな? 剛志:なんだ、その約束って れな:パパには内緒ー! 剛志:な!なんだよこいつら! 0:【間】 0:そして小夏が帰ってくる 小夏:ただいまー れな:ママーおかえりー! 小夏:れなー!あなたは相変わらず可愛いねー! れな:ママの方が可愛いー! 小夏:ありがとー!……ん? 剛志:お……お、おかえり! 小夏:……にゃはー! 剛志:……っ! 0:小夏は剛志に抱きつく 小夏:ただいまー! 剛志:お、おい離れろって! 小夏:どうしてー?おかえりのちゅーは? 剛志:は、はあ!?なんでんなこと! 小夏:んー? 剛志:……っ! 剛志:(M)小夏とこんな形で近づくのは高校の時以来だ 剛志:(M)あの頃は小夏は下を向いていた。後ろめたい気持ちで俺を見ていた 剛志:(M)でも今は幸せそうな笑顔で、吸い付くような輝いた丸い瞳で俺を見ている。 剛志:………く 小夏:ほら、早く 剛志:………っ! 0:剛志は勢いよく小夏の唇を重ねた 小夏:んっ 剛志:はあ…はあ……風呂入ってくる! 小夏:にゃは!いってらっしゃい 0:剛志は風呂場に行く 小夏:……にゃはっ。痛いっての。童貞 小夏:今までのちゅーで一番キュンとしちゃった 小夏:先にお風呂入っちゃうし、便座は上げっぱなしだし、部屋は散らかってる 小夏:ほんと、剛志は女の子の気持ち考えられないよねーあの頃となーんにも変わらない 小夏:でも……少しずつ気持ちが変わってくれるなら、あたしはついて行くからね。童貞パパ 0:そして夜になる れな:いけー!頑張れー!プイキュアー! 剛志:今日はやけに元気だなー 小夏:れなに寝て欲しいの? 剛志:うげ! 小夏:お隣失礼 剛志:く、くっつくなって言っただろ? 小夏:これくらい全然くっついてないでしょー?なんか敏感になってない? 剛志:お前のせいだろ! 小夏:あたし何もしてないじゃん。してきたのは剛志の方でしょ?にゃは! 剛志:うるせーな!そういう雰囲気にしてきたのお前だろ! 小夏:もうーあたしのせいにしてー。したかったからちゅーしたって言えばいいのに 剛志:だーから!ハッキリと言うなよ! 小夏:恥ずかしかったんだねー。よちよち 剛志:くそうぜー 小夏:でもさ。よく言うじゃん?恋は駆け引きだって 剛志:なんか聞いたことあるな 小夏:好きになった方が負けとか惚れた方が負けってやつ 剛志:それがどうした? 小夏:ほら、あたしも昔剛志に負けたくないとか言って色々強がってたけど、今の現状を考えたらそれは違うんじゃないかなーって思ったんだ 剛志:ん? 小夏:負けてよかったんだよ。あの時からずっと。あたしは剛志に負けて好きって言うべきだったんだ 剛志:………それは…どういう 小夏:今、あたしが剛志のこと好きになって、れなも一緒に居て、こんなに幸せなんだもん。それなら負けでいい 剛志:……… 小夏:だからさ、剛志 剛志:うるさいぞ 小夏:………え? 剛志:勝ち負けじゃないだろ……人と人ってのはさ 小夏:……うん。例え話だからね 剛志:なんかわかんねーけど、お前が死にたいって言った時、なんでお前が死ななきゃいけないんだって思ったんだよ 小夏:どうして? 剛志:だって、お、お前は料理も上手くて、気が利くし、子供にも優しいし、か、か、可愛いだろ! 小夏:……… 剛志:手だって柔らかいし、体だって折れちゃうんじゃないかってくらい華奢だし、ネイルだってオシャレだろ!金髪の髪でもサラサラしていい匂いするし!お前を見てると……ドキドキすんだよ 剛志:そんなお前が俺のところに来てくれて……おちょくってきてうぜーけど、なんか憎めなくて……そうやって笑ってるお前を見てると…なんか……なんかな…… 剛志:幸せなんだよ 小夏:…………にゃはっ 剛志:だからさ、俺でよかったら……夫婦にならないか? 小夏:…………いいの? 剛志:お、おう 小夏:まだ付き合ってないけどいいの? 剛志:ま、まあそこは段階を踏むかもだけど 小夏:あたし、バツイチだよ? 剛志:うん。いいよ 小夏:パパ活もしてたし、汚れた女だよ? 剛志:うん。別にいい 小夏:子供だっているんだよ? 剛志:お前の目の前にいるやつはなんだ? 小夏:……… 剛志:俺は童貞だぞ?これから迷惑かけるのは明らかに経験が少ない俺の方だ 小夏:……ぷっ!にゃっははははは!!! 剛志:わ、笑うなよ! 小夏:カッコつけてるけど全然かっこよくないよー! 剛志:……あ、おい、れな動画見ながら寝てるぞ 小夏:あ、ほんとだ風邪引いちゃう 剛志:俺達も寝るか 小夏:うん。そうだね。今日は剛志の隣で寝たい 剛志:……わ、わかったよ 小夏:にゃはっ 剛志:(M)俺と小夏は夫婦になる約束をした。まだ付き合ってもないから話が飛びすぎてるかもしれないけど、必然のような気がした 剛志:(M)小夏を好きかと言われればよくわかんない。けどやっぱりあいつを見てると俺は幸せな気分になれる 剛志:(M)なんでか知らんがれなも俺の事パパって呼んでるしちょうどいいのかもしれない 剛志:(M)何もかもが希望に満ちている。きっと3人で幸せな未来が待っていると思っていた。 剛志:(M)次の日のこと 小夏:……よーし れな:ママ?お外でスマホ見てたら危ないよ!め!貸して! 小夏:あー。ごめん。貸すから落とさないでね? れな:お外でスマホ見てたら車に轢かれちゃうよ? 小夏:ごめんねーれな。じゃあ1回止まってもいい? れな:どうしてー? 小夏:んー?パパにお手紙書いてるの れな:なんでお手紙書いてるのー? 小夏:んーとねー。パパのこと大好きだから れな:れなもパパ大好きー! 小夏:にゃはっ!パパはねー。ママが道路に飛び出した時に助けてくれたんだよ れな:すごーい! 小夏:他にもー。前のパパにいじめられたーって言ったらまた助けてくれたの れな:プイキュアみたいだね! 小夏:そうだね!だかられなが助けてーって言ったら、きっと助けてくれるよ れな:やったーー!! れな:……あれ?ママ、ボール 小夏:え?…………ちょっ!! 0:子供の目の前でトラックが大きなクラクションを鳴らす 0:小夏は道路に飛び出した子供を突き飛ばしそのまま…… れな:え?……ママ? れな:………ねえ…ママ? 剛志:(M)小夏はトラックに轢かれた。小夏の細くて華奢な体はその衝撃に耐えられず即死だった 剛志:(M)嵐のような、それでも台風の目の中にいるような静かな日々は、一瞬でいとも簡単に崩れ去ってしまった 剛志:(M)俺は葬儀では泣かなかった。小夏と過ごした日々と夫婦になろうって誓ったばかりなのに死んでいきやがったから。またおちょくられてるようで腹が立っていた 剛志:(M)そして現在では れな:パパー!お洋服お洗濯しないのー? 剛志:ああ、そこ置いといてくれ れな:れなもお洗濯手伝うー! 剛志:触んな!また怪我するぞ? れな:あれ、パパ、ラムネ入れないの? 剛志:ラムネ? れな:これ 剛志:ああ、洗濯ビーズか。こんなん入ってたっけ? 剛志:(M)俺は洗濯ビーズを開ける 剛志:……… れな:パパ? 剛志:……これは入れない れな:えー!入れないのー? 剛志:早く着替えろ、服はどこにあんだ? れな:ここー! 剛志:(M)クローゼットを開ける 剛志:………全部たたまれて収納されてる… 剛志:……これでいいか? れな:うん! 剛志:………あーあ!ペケモンしよ! 剛志:(M)俺はゲームの電源を付ける 剛志:……あいつ、自分のアカウントでやったままじゃねーか…… 剛志:……なんで最初に選んだペケモンの名前がつよしなんだよ…れなも居るし…… 剛志:………はあ 剛志:(M)洗面所、トイレ、風呂場、キッチン、テーブル、布団、テレビ 剛志:(M)たった2ヶ月あいつと暮らしてただけでこんなにも形に残ってしまうものなのか 剛志:(M)あいつが、確かにここに居た証だけが残っている。 剛志:(M)もう戻らないとわかっている。けど何故か実感がない。3日前までは確かにここに居たからだ れな:ねえパパ 剛志:………なんだよ れな:ママからお手紙もらったの? 剛志:………お手紙? れな:ママがスマホに書いてたお手紙 剛志:………スマホに? 剛志:(M)俺は小夏のスマホを手に取る。 剛志:(M)事故が起きた日はれながこのスマホを持っていたらしいから綺麗なままで残っている 剛志:………パスワードわかんねー。誕生日じゃねーのかよ… 剛志:………まさか、ペケモンがヒントじゃねーよな? 剛志:(M)俺は24407を入力する 剛志:………開いた 剛志:(M)ホーム画面は小夏とれなの写真だった。あいつは自分の娘をそれはもう呆れるくらいに愛しすぎてる。いい母親だ 剛志:俺の手紙…… 剛志:(M)俺はラインを開く。そして俺のトーク画面に行くと 剛志:(M)打ち掛けの長い文章がつらつらと書かれていた 小夏:愛しのダーリンへ。なんちゃってー!気が早すぎか!まとまらなくなりそうだからラインで送るね。あ、ちなみに今のところおちょくってるよー。ってふざけてたら読まれないで既読無視とかされそうだからちゃんと書くね。 小夏:あたしね。実はずるい女なの知ってる?多分うざい女だって思われてるだろうけど、剛志があたしの言うことを何でも聞いてくれる取っておきの言い方を見つけたんだー!それを教えるね 小夏:んー例えば童貞の剛志くん、私とエッチする?っていうと剛志はふざけんなって嫌がるんだけど、夫婦になるために愛を確かめたいから剛志とエッチしたいって言うと剛志はエッチしてくれるんじゃないかなー? 小夏:どう?図星だった?そうなんだよ。理由とこうしたいって言い方をすると剛志は言うこと聞いてくれるんだよ。自分じゃ気付かなかったでしょ? 小夏:だからね、本当に叶えて欲しいことは言わないことにしたの。剛志には子供の時から今までで色んなものを沢山貰ったから、高望みなんてしちゃいけないと思って 小夏:でも、あたしが望んでることを剛志から言ってくれた時は本当に嬉しかったなー。夫婦にならないか?だなんて。あたしはこんなに幸せものでいいのかな?えぇー?どうなの?剛志ー 小夏:まあ、あたしだけが幸せなのもちょっとずるいかなーって思ってるんだ。二人だけが幸せなんてずるいよね。あたし達はれなも一緒に3人ででーーっかい!!幸せを作る事が大事なんだよ 小夏:だからさ、高望みでもいいし、ずるい女って言われてもいい。この願いは剛志にしか叶えられないんだから 小夏:でーーっかい!!幸せを作りたいから童貞パパの剛志とあたしとれな、3人で幸せな家族になりたい。 小夏:泣くことを忘れたれなが幸せすぎて泣いちゃうような、そんな家族になりたい 剛志:…………小夏 剛志:う……うぅぅーー!! 剛志:こんな願い掲げといて…なんで死ぬんだよ!! 剛志:お前のこと…もっと知りたかったよ…お前と…もっと思い出を作りたかったよ……まだこれからだっただろ…… 剛志:れなだって居るんだぞ……れなだってきっと寂しがる…… れな:パパ…? 剛志:………れな れな:どうしたの?お腹すいたの? 剛志:………ちげーよ れな:眠くなっちゃったの? 剛志:ちげー れな:おもちゃ無くなっちゃったの? 剛志:ちげーって言ってんだろ!! れな:………え? 剛志:そんな事で俺が泣くわけねぇだろ!お前はそれで泣くのかよ!! れな:……れなは、ママに泣いちゃダメって言われたから 剛志:ふざけんな!自分の母親が死んで悲しくねー子供でどうすんだよ! れな:……… 剛志:お前の母親はな!お前が泣かなくなったことに泣いてたんだぞ!悲しくて悔しくて泣いてたんだ!お前の母親は!お前のために泣いてたんだよ!だからお前も母親のために泣いてみろよ!! れな:………でも、ママが…… 剛志:悲しい時は思い切り泣け!楽しい時は思い切り笑え!お前の母親はそうだったじゃねーか!いつだって感情で動くやつだったよ!! 剛志:俺だって悲しいんだよ!お前よりも俺の方があいつと一緒にいた時間は長かったんだよ!だから俺だって泣いてんだよ!! れな:………パパ…うっ…… 剛志:だから…お前も泣けよ!子供らしくママが居ないと生きていけないって泣いてみろよぉぉ!! れな:……うっ…ううぅ…うえ〜〜〜ん!!ママ〜〜! 0:剛志はれなを抱きしめる 剛志:今は思い切り泣いてもいい。笑うだけが本当の強さじゃねーんだ。泣いた後にそれを乗り越えてお前の母親は……ママは、笑って幸せって言ってくれたんだ れな:うえ〜〜〜ん!!ママに会いたいよ〜〜!! 剛志:だから……俺もれなも…ママが居ない日々を乗り越えるんだよ。ママにはもう会えねー…俺も……小夏に会いてーよ…… 剛志:………小夏…!! 剛志:(M)何をしてもれなは泣かなかった。けど、れなは小夏に会いたくて泣いた 剛志:(M)そんなれなの姿を見たら小夏はなんて言うだろうか?なんて思うのはとんでもなく野暮な事だ 剛志:(M)とにかく今は俺もれなも乗り越えるしかないんだ。辛い日を乗り越えてきた小夏のように れな:……パパ 剛志:ん? れな:お布団行きたい 剛志:ああ、泣くと眠くなってくるだろ? れな:……うん 0:剛志はれなを布団に運ぶ れな:ねえパパ 剛志:なんだ? れな:ママがね、パパに会う前にパパはパパって言ってたよ 剛志:はあ?どういう意味だ? れな:ママと約束したの。ママとれなを幸せにしてくれる人はパパしかいないって。だからパパと一緒に居ようねって 剛志:………当たり前だろ。ママだって言ってたよ。3人ででーっっかい!幸せを作るって。俺とれなでママの分の幸せを作ってやろう れな:………うん! 0:れなは眠りにつく 剛志:………俺、このままだったら一生童貞だな 剛志:でもまあ、それも悪くはねーかな。なんならなってやるよ 剛志:童貞パパに 0:2ヶ月前、小夏とれなが剛志の家に訪れる前の事 小夏:ねえれな。これから会う人のことはおじさんって呼ぶんだよ れな:わかったー!おじさんってどんな人なのー? 小夏:んー?どんな人だったっけなー。ママもちょっと会うの怖いんだよね れな:怖い人なの!? 小夏:ううん。怖くないよ。前のパパみたいな人じゃない。ママが昔好きだった人だしね れな:そうなんだ!今もママは好きなの? 小夏:うん。好きだよ。きっとね、その人は優しいからママとれなのことも幸せにしてくれるよ。ママとれなを幸せにしてくれるのはその人しか居ない れな:えー!じゃあさ!ママが幸せそうに笑ったらおじさんの事パパって呼ぶようにするー! 小夏:パパ!?……ああーパパかー。パパねー れな:パパって呼んだら怒られる? 小夏:いいよ。じゃあママが幸せそうに笑ったらママはその人と結婚してパパになってもらうから、れなはパパって呼んでいいよ れな:やったー!約束ねー! 小夏:うん。約束だよ。あ、でも今はおじさんって呼ぶんだよ? れな:わかったー! 小夏:れなはいい子だねーさすがママの子 れな:楽しみ楽しみー! 小夏:楽しみだね。……いつもツンツンしてるし、怒りっぽいし自分勝手な剛志はなってくれるかなー?……きっとなってくれるよね? 小夏:剛志にしかなれない。童貞パパに