台本概要

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タイトル 魔王と勇者の無限牢獄。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(男2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 魔王と勇者が繰り広げる最終決戦系ハイテンション茶番劇。
笑いあり、詠唱(中二病)あり、一応オチもある作品となっております。
なお、戦闘描写はほぼありません。

多くの方に楽しんで貰えるよう振り仮名(ふりがな)を多めに配置しています。逆に読みにくいかも知れませんが。ふりがなの箇所は感覚ですので、痒(かゆ)いところに手が届かないなんて事態も儘ありますがご了承くださいませ。
文字数4,000字弱なので10~20分程度です。

〈あらすじ〉
強いけどやべぇ勇者と、追い詰められた瀕死のツッコミ魔王。残された力を振り絞り戦おうとする魔王に、勇者は「こいつ自爆するつもりじゃね?」という疑いをかかける。否定する魔王、しかしついに勇者が、それを完封するため詠唱を始め、封印の奥義『無限牢獄』を発動する。開かれた次元の穴に吸い込まれ始める魔王。しかし勇者は魔王が未だ自爆しようとしている疑惑を抱いたまま、こうなれば道連れにするしか無いと、諸共に穴に飛び込み伝説となる覚悟をするのだった。

※注意
読み方とかアドリブはお任せします。楽しく演じていただければ幸いです。
性別・キャラの名前も変えて良しです。魔王とか勇者っていう表記なので、好きに名前つけてくれても良いかもですね。
詠唱は要練習のことお願いいたします。めっちゃ詰まると思うので。

作中、一応仲間の面々がいる体で話していますが、本作の配役は勇者、魔王の二人芝居となっております。
気が向いたら仲間ON_ver.も上げてます。続きの話も一応存在してはいます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
魔王 39 比較的マトモな魔王。
勇者 34 比較的ヤバい勇者。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
魔王と勇者が繰り広げる最終決戦系ハイテンション茶番劇。 笑いあり、詠唱(中二病)あり、一応オチもある作品となっております。 なお、戦闘描写はほぼありません。 多くの方に楽しんで貰えるよう振り仮名(ふりがな)を多めに配置しています。逆に読みにくいかも知れませんが。ふりがなの箇所は感覚ですので、痒(かゆ)いところに手が届かないなんて事態も儘ありますがご了承くださいませ。 〈あらすじ〉 強いけどやべぇ勇者と、追い詰められた瀕死のツッコミ魔王。残された力を振り絞り戦おうとする魔王に、勇者は「こいつ自爆するつもりじゃね?」という疑いをかかける。否定する魔王、しかしついに勇者が、それを完封するため詠唱を始め、封印の奥義『無限牢獄』を発動する。開かれた次元の穴に吸い込まれ始める魔王。しかし勇者は魔王が未だ自爆しようとしている疑惑を抱いたまま、こうなれば道連れにするしか無いと、諸共に穴に飛び込み伝説となる覚悟をするのだった。 ※注意 読み方とかアドリブはお任せします。楽しく演じていただければ幸いです。 性別・キャラの名前も変えて良しです。魔王とか勇者っていう表記なので、好きに名前つけてくれても良いかもですね。 詠唱は要練習のことお願いいたします。めっちゃ詰まると思うので。 作中、一応仲間の面々がいる体で話していますが、本作の配役は勇者、魔王の二人芝居となっております。 気が向いたら仲間ON_ver.も上げてます。続きの話も一応存在してはいます。 0:※台詞中にト書き(キャラの動き等演出)を〈 〉で示しているヶ所があります。 0:また( )のヶ所はふりがなです。わりと多めになっております。 0: 0:満身創痍(まんしんそうい)の魔王に剣を向ける勇者一行。 勇者:お前の野望もこれで終わりだ! 観念しろ、魔王! 魔王:くはは、もはやこれまでか。流石は彼の勇者の末裔と言ったところか。だが、我は魔王。絶望をその身で体現せし恐怖と破壊の根源にして、世界を力で統べる者。この程度で、屈しはしない。貴様とてそうであろう? 勇者よ。貴様の力、しかと見定めた。残る力の全てを使い尽くし我が身果てるまで踊り明かそうではないか! くははははは! もう小細工は必要な―― 勇者:――みんな下がれ! 魔王が何かする気だ! 魔王:いや、小細工は―― 勇者:ダメだ! きっと自爆するつもりだ! 魔王:いや、しないが! 勇者:おのれ卑怯な魔王め! 何があっても僕達を帰さないつもりだな? 魔王:え? いやいや、違うぞ? 正々堂々真っ向からこの身が果てるまで闘い尽くすと……え、そう言ったよな? 勇者:耳を貸すなみんな! きっと時間稼ぎだ! 魔王:そんな姑息なことはせん! 勇者:感じるぞ、その魔力の高まり、空間が震えている。きっと全ての魔力を吐き出してこの城諸共吹っ飛ばすつもりなんだ。もしそうなったら、多分勇者である僕はなんとか生き残るが、みんなは……、木っ端微塵(こっぱみじん)の肉塊になって、誰が誰とも分からない姿を故郷に待たせている大切な人たちに持ち帰る頃にはきっとぐずぐずに腐り、その名誉や尊厳さえも奪い去ろうと言うんだお前は! くっ! 勝てないと見るや僕達に最期まで傷跡を残そうとする! くっそぉ! この卑劣漢! 鬼畜! 外道! トロールのクソ! だからお前は魔王なんて呼ばれるんだ! このゴキブリ野郎!  魔王:えーめっちゃ罵(ののし)られてる……。あとゴキブリとか、トロールのクソ呼ばわりは結構真面目に傷つくぞ。あのさ、散々な言われようだが、そこまでする魔力は流石に残ってないぞ。 勇者:嘘だ! お前は第七形態まであるとさっき倒した側近が言ってたぞ! あいつが嘘を言っていたというのか! 魔王:それ、あいつが言ってるだけだから。あと我、変身とかできないタイプの魔王だし。プロパガンダってやつ? 魔族的に変身って燃える要素の一つだから。でも貴様、なんであいつのことは信用するのに我のことは頑(かたく)なに信じないの? ちなみに第七形態どころか変身一つも見せてないのに自爆する必要ある? それで闘えるじゃん☆ 勇者:そんな言葉に惑わされるか! みんなは絶対僕が守る! 魔王:あ、ダメだこいつ。人の話聞かないタイプのやつ。 勇者:っく、こうなったら切り札を使うしか無い! 魔王:え、お前まだなんか使えるの? もう正直嫌なのだが貴様の相手するの、魔王だけど逃げちゃおっかな……。あーでも絶対追いかけてくるよなこいつ。瞬間移動とかしてたし。魔王の我が言うのもなんだが人間やめてるわマジ。 勇者:みんな! 僕はこいつを次元の牢獄に封印する! 魔王:おま……そんなことできんの? 引くわ。 勇者:僕諸共にこいつを封印する! 魔王:そのリスク負う必要ある? 腰の聖剣飾りか? 勇者:ある! 魔王:初めてちゃんと問いに答えたな貴様。いやでも、剣振った方が絶た― 勇者:我は緑青(ろくしょう)、寄辺(よるべ)なき彼岸揺蕩(ひがんたゆた)う安寧(あんねい)なる時の神クロニアに誓願(せいがん)す―― 魔王:あ、なんか詠唱(えいしょう)始まった。しかも千年近く生きてきて全く聞いたことねぇやつ。なんだと! その技は! すら言わして貰えないやつ。こいつどこまでも魔王殺しだわ。勇者だけに。あ、今の上手くね? 勇者:絶え間なく流るる砂海の一握(いちあく)、無垢(むく)の連星墜つるは宵(よい)の調べ、眺むるは月の色を知らぬ魚、今生を謳歌(おうか)せし座して待つ死人、煌(きら)めき、囁(ささや)き、屯(たむろ)する、無為の骸に願わぬ白日(はくじつ)を瞳に宿らす農夫、移ろわぬ黄金(こがね)の饗宴(うたげ)に尽きぬ真紅の神酒(みき)を注(つ)ぎ、杯(さかずき)持って願い奉(たてまつ)る漆黒の乙女の白き指を携える深遠なる紺碧(こんぺき)の獅子(しし)、番(つが)い求むる隻腕(せきわん)の影法師(かげぼうし)に抱かれ、染め上げられし終焉(しゅうえん)を彩る松明(たいまつ)の産声に涙を湛(たた)えず、白銀(しろがね)の鼓(つづみ)を打つ鋼の蛇の尾を締め上げて―― 魔王:なっが。まだ? 勇者:鳴り止まぬ鼻唄こだまする石庭(せきてい)に浮かぶ無情の蜉蝣(かげろう)、無償の愛を知らぬ毛糸玉、無常の歓喜を語り継ぐ連綿(れんめん)たる木枯(こが)らし、流転(るてん)、前足を欠いた犬に見初(みそ)められ、片端を不実と契(ちぎ)る紫煙(しえん)の蔓(つた)、前人未踏を掲げるは愚者の塔、誘う半身木陰の土に根を下ろし、困窮(こんきゅう)する黒猫、置配(おきはい)を薦(すす)める密林、赤き乳に浮かぶデンプン質の蛙(かわず)の卵、長蛇の列を作りて悩ましめる人々を救う―― 魔王:ん? 勇者:無限牢獄《タピオ・カミル・クーテ》! 魔王:そんな必殺技があるか! 0:魔王の背後に穴が出現。 0:「ずぞぞぞ」というような音が響く。 魔王:っく、ぬおぉ! 吸い込まれる……? 勇者:それは次元の穴だ、吸い込まれると二度と出てくることは出来ない。どんな魔法を使おうが無駄だ! 魔王、お前の悪あがきもこれで終わりだ! 魔王:なんだかすごく疑わしいが、成る程、嫌な気配がしおる! 流石勇者の秘奥(ひおう)と言ったところか。まぁ、その腰の聖剣振り抜いた方が百倍速く片付いたと思うが。 勇者:何を訳の分からないことを言っている魔王め! この期に及んでまだみんなを惑わせる気か! 腐っても魔王、悪徳の王め! 魔王:訳分からんのも惑わせてるのも腐ってるのも貴様の方では……? っく、だが、ああ、体が、引き寄せられてい、くっ! もはや、本当にここまでだな。ああ、魔王たる者、もっと、ちゃんとした形で、例えば激闘の果てに勇者に打ち倒されるとかそういう感じで、やられ、たかった。しかし、まぁ、これはこれで、魔王っぽい、のか? っふ。 勇者:みんなさがれ! 魔王:え? 勇者:魔王がどうしても自爆したいらしい。 魔王:いや、え? なわけないだろ? 勇者:僕がこの身を犠牲にしてでも食い止める! 魔王:いや、いらんいらん。ほっといても普通に「ずぞっ!」って吸い込まれるよ、我。というか多分爆風ごと吸い込まれるから、無駄に爆散するだけだし。 勇者:みんな! 惑わされちゃいけない! 僕らを油断させてから、纏めて葬り去るつもりなんだ。 魔王:お前の中の我ちょっと姑息(こそく)すぎない? しないよ? 勇者:やはり、ここは僕が抑えるしかない! 僕があいつと一緒に飛び込んで永遠に封印するしか無いんだ。 魔王:いらん、来んな。 勇者:戦士! 賢者! 巫女! みんな、今までありがとう。 魔王:あ、なんか始まったわ。 勇者:戦士、君は誰よりも明るくてすごく良いやつだ。君というやつが居てくれる旅は本当に心強かった。みんなが挫けそうな時も絶対最期まで諦めない、バフはかからないけどみんなを励まして、奮(ふる)い立たせてくれたから賢者の回復魔法のおかげでまた立ち上がれた。君は本当に誰よりも心だけは強い男だ。この旅でそれを僕は感じた、ありがとう。 魔王:さりげにディスってない? 勇者:賢者、君はなんかよく分からないけどたぶん良いやつだ。あんまり喋らないし、一切戦闘には参加せず、いつでもにこにこしてるから癒やし担当なんだと思う。実際何度も君の回復魔法には助けられてきた。戦士が。君がいなかったら戦士は死んでたと思うし、蘇生されすぎて顔とか人格とかちょっと別人になってる気がするけど。とにかく、君がいないと僕らはここに立つことが出来なかった。あとちょっとエロい。ありがとう。 魔王:最低か、貴様。というか我はいつまでこうして吸われていれば良いんだ。 勇者:巫女、きみはマジで可愛いくてエロいから良いやつだ。他に言うことはない。あ、でも――愛してる。 魔王:貴様と貴様のパーティクソだな。 勇者:みんな、ごめんよ。一緒に帰るって約束したのに、僕はここまでみたいだ。でもどうか忘れないで欲しい僕という『勇者』がいたことを。僕がこの身を挺(てい)して、魔王を次元の狭間(はざま)に閉じ込め、この世界を守ったということを。君達の命を守ったということを、この聖剣を持ち帰り、みんなに伝えて欲しい。僕がいかに勇敢で格好良くて良いやつだったかということを、頼む。これは僕の最期の願いだ。伝説を語り継ぐのは君達とその子々孫々(ししそんそん)だ。 0:勇者、聖剣を仲間に預ける。 魔王:お前頭湧(わ)いてんのか? あ『ゆうしゃ』ってそういう? 頭、湧いてる者で『湧者』なの? お前、要(よう)は伝説になりたいだけかよ。 勇者:待たせたな魔王。 魔王:それな。 勇者:決着をつけよう。 魔王:おまいう。 勇者:僕はみんなの期待を背負ってここに立っているんだ。世界と仲間のために僕はここでお前と一緒に散る! 魔王:あくしろよ。 勇者:みんな、僕に勇気と名声を。 魔王:本音もれてんぞ。 0:勇者、魔王に向かって走り出す。 勇者:うおおおおおおおおおおおおお! 魔王:……はぁ。絶対回避《ファントム・オー》。 0:魔王、勇者の突進をひらりと躱す。 勇者:え? 魔王:あばよ。 0:魔王、勇者の背中を蹴飛ばし、次元の穴に落とす。 0:勇者を吸い込む「ずぞっ!」っという音。 魔王:ああ、清々したわ。 0:間。 魔王:何見てんだよ。…………安心しろ、行くよ。くっそ腹立つけどな。〈次元の穴に入ろうとして〉ああ、待て。一つだけ言っておく。貴様らが歴史の生き証人(しょうにん)だ。今ここで起きたことをどう語り継ぐかは貴様達次第。死人に口無し。あいつはもういない、俺ももうすぐここを去る。ならば、この顛末(てんまつ)を何とする? 賢明(けんめい)にして懸命(けんめい)なる人間共よ! 我は魔王、彼の者の絶望をその身で体現せし恐怖と破壊の根源にして、世界を言葉で統べる者。にっくき勇者に一矢(いっし)報(むく)いる一世一代最期の嫌がらせを賜(たまわ)るぞ。心して聞くがよい――。 0:間。 魔王:「なぁ、お前達。『英雄』に、なりたくはないか?」 0:間 魔王:あとは……分かるな? ふはははははははははははははは。さらばだ。 0:魔王の高笑いと仲間達を残して「ずぞっ!」という音。 0:  《幕》

魔王と勇者が繰り広げる最終決戦系ハイテンション茶番劇。 笑いあり、詠唱(中二病)あり、一応オチもある作品となっております。 なお、戦闘描写はほぼありません。 多くの方に楽しんで貰えるよう振り仮名(ふりがな)を多めに配置しています。逆に読みにくいかも知れませんが。ふりがなの箇所は感覚ですので、痒(かゆ)いところに手が届かないなんて事態も儘ありますがご了承くださいませ。 〈あらすじ〉 強いけどやべぇ勇者と、追い詰められた瀕死のツッコミ魔王。残された力を振り絞り戦おうとする魔王に、勇者は「こいつ自爆するつもりじゃね?」という疑いをかかける。否定する魔王、しかしついに勇者が、それを完封するため詠唱を始め、封印の奥義『無限牢獄』を発動する。開かれた次元の穴に吸い込まれ始める魔王。しかし勇者は魔王が未だ自爆しようとしている疑惑を抱いたまま、こうなれば道連れにするしか無いと、諸共に穴に飛び込み伝説となる覚悟をするのだった。 ※注意 読み方とかアドリブはお任せします。楽しく演じていただければ幸いです。 性別・キャラの名前も変えて良しです。魔王とか勇者っていう表記なので、好きに名前つけてくれても良いかもですね。 詠唱は要練習のことお願いいたします。めっちゃ詰まると思うので。 作中、一応仲間の面々がいる体で話していますが、本作の配役は勇者、魔王の二人芝居となっております。 気が向いたら仲間ON_ver.も上げてます。続きの話も一応存在してはいます。 0:※台詞中にト書き(キャラの動き等演出)を〈 〉で示しているヶ所があります。 0:また( )のヶ所はふりがなです。わりと多めになっております。 0: 0:満身創痍(まんしんそうい)の魔王に剣を向ける勇者一行。 勇者:お前の野望もこれで終わりだ! 観念しろ、魔王! 魔王:くはは、もはやこれまでか。流石は彼の勇者の末裔と言ったところか。だが、我は魔王。絶望をその身で体現せし恐怖と破壊の根源にして、世界を力で統べる者。この程度で、屈しはしない。貴様とてそうであろう? 勇者よ。貴様の力、しかと見定めた。残る力の全てを使い尽くし我が身果てるまで踊り明かそうではないか! くははははは! もう小細工は必要な―― 勇者:――みんな下がれ! 魔王が何かする気だ! 魔王:いや、小細工は―― 勇者:ダメだ! きっと自爆するつもりだ! 魔王:いや、しないが! 勇者:おのれ卑怯な魔王め! 何があっても僕達を帰さないつもりだな? 魔王:え? いやいや、違うぞ? 正々堂々真っ向からこの身が果てるまで闘い尽くすと……え、そう言ったよな? 勇者:耳を貸すなみんな! きっと時間稼ぎだ! 魔王:そんな姑息なことはせん! 勇者:感じるぞ、その魔力の高まり、空間が震えている。きっと全ての魔力を吐き出してこの城諸共吹っ飛ばすつもりなんだ。もしそうなったら、多分勇者である僕はなんとか生き残るが、みんなは……、木っ端微塵(こっぱみじん)の肉塊になって、誰が誰とも分からない姿を故郷に待たせている大切な人たちに持ち帰る頃にはきっとぐずぐずに腐り、その名誉や尊厳さえも奪い去ろうと言うんだお前は! くっ! 勝てないと見るや僕達に最期まで傷跡を残そうとする! くっそぉ! この卑劣漢! 鬼畜! 外道! トロールのクソ! だからお前は魔王なんて呼ばれるんだ! このゴキブリ野郎!  魔王:えーめっちゃ罵(ののし)られてる……。あとゴキブリとか、トロールのクソ呼ばわりは結構真面目に傷つくぞ。あのさ、散々な言われようだが、そこまでする魔力は流石に残ってないぞ。 勇者:嘘だ! お前は第七形態まであるとさっき倒した側近が言ってたぞ! あいつが嘘を言っていたというのか! 魔王:それ、あいつが言ってるだけだから。あと我、変身とかできないタイプの魔王だし。プロパガンダってやつ? 魔族的に変身って燃える要素の一つだから。でも貴様、なんであいつのことは信用するのに我のことは頑(かたく)なに信じないの? ちなみに第七形態どころか変身一つも見せてないのに自爆する必要ある? それで闘えるじゃん☆ 勇者:そんな言葉に惑わされるか! みんなは絶対僕が守る! 魔王:あ、ダメだこいつ。人の話聞かないタイプのやつ。 勇者:っく、こうなったら切り札を使うしか無い! 魔王:え、お前まだなんか使えるの? もう正直嫌なのだが貴様の相手するの、魔王だけど逃げちゃおっかな……。あーでも絶対追いかけてくるよなこいつ。瞬間移動とかしてたし。魔王の我が言うのもなんだが人間やめてるわマジ。 勇者:みんな! 僕はこいつを次元の牢獄に封印する! 魔王:おま……そんなことできんの? 引くわ。 勇者:僕諸共にこいつを封印する! 魔王:そのリスク負う必要ある? 腰の聖剣飾りか? 勇者:ある! 魔王:初めてちゃんと問いに答えたな貴様。いやでも、剣振った方が絶た― 勇者:我は緑青(ろくしょう)、寄辺(よるべ)なき彼岸揺蕩(ひがんたゆた)う安寧(あんねい)なる時の神クロニアに誓願(せいがん)す―― 魔王:あ、なんか詠唱(えいしょう)始まった。しかも千年近く生きてきて全く聞いたことねぇやつ。なんだと! その技は! すら言わして貰えないやつ。こいつどこまでも魔王殺しだわ。勇者だけに。あ、今の上手くね? 勇者:絶え間なく流るる砂海の一握(いちあく)、無垢(むく)の連星墜つるは宵(よい)の調べ、眺むるは月の色を知らぬ魚、今生を謳歌(おうか)せし座して待つ死人、煌(きら)めき、囁(ささや)き、屯(たむろ)する、無為の骸に願わぬ白日(はくじつ)を瞳に宿らす農夫、移ろわぬ黄金(こがね)の饗宴(うたげ)に尽きぬ真紅の神酒(みき)を注(つ)ぎ、杯(さかずき)持って願い奉(たてまつ)る漆黒の乙女の白き指を携える深遠なる紺碧(こんぺき)の獅子(しし)、番(つが)い求むる隻腕(せきわん)の影法師(かげぼうし)に抱かれ、染め上げられし終焉(しゅうえん)を彩る松明(たいまつ)の産声に涙を湛(たた)えず、白銀(しろがね)の鼓(つづみ)を打つ鋼の蛇の尾を締め上げて―― 魔王:なっが。まだ? 勇者:鳴り止まぬ鼻唄こだまする石庭(せきてい)に浮かぶ無情の蜉蝣(かげろう)、無償の愛を知らぬ毛糸玉、無常の歓喜を語り継ぐ連綿(れんめん)たる木枯(こが)らし、流転(るてん)、前足を欠いた犬に見初(みそ)められ、片端を不実と契(ちぎ)る紫煙(しえん)の蔓(つた)、前人未踏を掲げるは愚者の塔、誘う半身木陰の土に根を下ろし、困窮(こんきゅう)する黒猫、置配(おきはい)を薦(すす)める密林、赤き乳に浮かぶデンプン質の蛙(かわず)の卵、長蛇の列を作りて悩ましめる人々を救う―― 魔王:ん? 勇者:無限牢獄《タピオ・カミル・クーテ》! 魔王:そんな必殺技があるか! 0:魔王の背後に穴が出現。 0:「ずぞぞぞ」というような音が響く。 魔王:っく、ぬおぉ! 吸い込まれる……? 勇者:それは次元の穴だ、吸い込まれると二度と出てくることは出来ない。どんな魔法を使おうが無駄だ! 魔王、お前の悪あがきもこれで終わりだ! 魔王:なんだかすごく疑わしいが、成る程、嫌な気配がしおる! 流石勇者の秘奥(ひおう)と言ったところか。まぁ、その腰の聖剣振り抜いた方が百倍速く片付いたと思うが。 勇者:何を訳の分からないことを言っている魔王め! この期に及んでまだみんなを惑わせる気か! 腐っても魔王、悪徳の王め! 魔王:訳分からんのも惑わせてるのも腐ってるのも貴様の方では……? っく、だが、ああ、体が、引き寄せられてい、くっ! もはや、本当にここまでだな。ああ、魔王たる者、もっと、ちゃんとした形で、例えば激闘の果てに勇者に打ち倒されるとかそういう感じで、やられ、たかった。しかし、まぁ、これはこれで、魔王っぽい、のか? っふ。 勇者:みんなさがれ! 魔王:え? 勇者:魔王がどうしても自爆したいらしい。 魔王:いや、え? なわけないだろ? 勇者:僕がこの身を犠牲にしてでも食い止める! 魔王:いや、いらんいらん。ほっといても普通に「ずぞっ!」って吸い込まれるよ、我。というか多分爆風ごと吸い込まれるから、無駄に爆散するだけだし。 勇者:みんな! 惑わされちゃいけない! 僕らを油断させてから、纏めて葬り去るつもりなんだ。 魔王:お前の中の我ちょっと姑息(こそく)すぎない? しないよ? 勇者:やはり、ここは僕が抑えるしかない! 僕があいつと一緒に飛び込んで永遠に封印するしか無いんだ。 魔王:いらん、来んな。 勇者:戦士! 賢者! 巫女! みんな、今までありがとう。 魔王:あ、なんか始まったわ。 勇者:戦士、君は誰よりも明るくてすごく良いやつだ。君というやつが居てくれる旅は本当に心強かった。みんなが挫けそうな時も絶対最期まで諦めない、バフはかからないけどみんなを励まして、奮(ふる)い立たせてくれたから賢者の回復魔法のおかげでまた立ち上がれた。君は本当に誰よりも心だけは強い男だ。この旅でそれを僕は感じた、ありがとう。 魔王:さりげにディスってない? 勇者:賢者、君はなんかよく分からないけどたぶん良いやつだ。あんまり喋らないし、一切戦闘には参加せず、いつでもにこにこしてるから癒やし担当なんだと思う。実際何度も君の回復魔法には助けられてきた。戦士が。君がいなかったら戦士は死んでたと思うし、蘇生されすぎて顔とか人格とかちょっと別人になってる気がするけど。とにかく、君がいないと僕らはここに立つことが出来なかった。あとちょっとエロい。ありがとう。 魔王:最低か、貴様。というか我はいつまでこうして吸われていれば良いんだ。 勇者:巫女、きみはマジで可愛いくてエロいから良いやつだ。他に言うことはない。あ、でも――愛してる。 魔王:貴様と貴様のパーティクソだな。 勇者:みんな、ごめんよ。一緒に帰るって約束したのに、僕はここまでみたいだ。でもどうか忘れないで欲しい僕という『勇者』がいたことを。僕がこの身を挺(てい)して、魔王を次元の狭間(はざま)に閉じ込め、この世界を守ったということを。君達の命を守ったということを、この聖剣を持ち帰り、みんなに伝えて欲しい。僕がいかに勇敢で格好良くて良いやつだったかということを、頼む。これは僕の最期の願いだ。伝説を語り継ぐのは君達とその子々孫々(ししそんそん)だ。 0:勇者、聖剣を仲間に預ける。 魔王:お前頭湧(わ)いてんのか? あ『ゆうしゃ』ってそういう? 頭、湧いてる者で『湧者』なの? お前、要(よう)は伝説になりたいだけかよ。 勇者:待たせたな魔王。 魔王:それな。 勇者:決着をつけよう。 魔王:おまいう。 勇者:僕はみんなの期待を背負ってここに立っているんだ。世界と仲間のために僕はここでお前と一緒に散る! 魔王:あくしろよ。 勇者:みんな、僕に勇気と名声を。 魔王:本音もれてんぞ。 0:勇者、魔王に向かって走り出す。 勇者:うおおおおおおおおおおおおお! 魔王:……はぁ。絶対回避《ファントム・オー》。 0:魔王、勇者の突進をひらりと躱す。 勇者:え? 魔王:あばよ。 0:魔王、勇者の背中を蹴飛ばし、次元の穴に落とす。 0:勇者を吸い込む「ずぞっ!」っという音。 魔王:ああ、清々したわ。 0:間。 魔王:何見てんだよ。…………安心しろ、行くよ。くっそ腹立つけどな。〈次元の穴に入ろうとして〉ああ、待て。一つだけ言っておく。貴様らが歴史の生き証人(しょうにん)だ。今ここで起きたことをどう語り継ぐかは貴様達次第。死人に口無し。あいつはもういない、俺ももうすぐここを去る。ならば、この顛末(てんまつ)を何とする? 賢明(けんめい)にして懸命(けんめい)なる人間共よ! 我は魔王、彼の者の絶望をその身で体現せし恐怖と破壊の根源にして、世界を言葉で統べる者。にっくき勇者に一矢(いっし)報(むく)いる一世一代最期の嫌がらせを賜(たまわ)るぞ。心して聞くがよい――。 0:間。 魔王:「なぁ、お前達。『英雄』に、なりたくはないか?」 0:間 魔王:あとは……分かるな? ふはははははははははははははは。さらばだ。 0:魔王の高笑いと仲間達を残して「ずぞっ!」という音。 0:  《幕》