台本概要

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タイトル ザ ダストフル ウィッチ オブ ルージュ
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男1、女1、不問3) ※兼役あり
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 スケアクロウが出会った正体不明の殺し屋、“ロミオ”。
一切情報が得られないその正体を探るため、スケアクロウが所属するチームは動き出していた。
これは、“深淵”アビスと関りがあった“鮮血の魔女”ルージュとその仲間たちの話。

「仲間というのは、信じるものよ?」


【アビスシリーズ】第三話

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ルージュ 97 チームのリーダーで、元マフィア【ジュリアス】の富豪。 マフィアの頃は組織の№3で、“鮮血の左腕”という異名で恐れられており、 現在は“鮮血の魔女”という異名で通っている。 リーダーシップはあるが人を纏めるのが苦手で、すぐに人を裏切りがち。 …だったが、組織がなくなってからはその傾向が消えている。
オズワルド 不問 53 ローブを目深にかぶる元マフィアの情報屋。 マフィアだった頃も情報を担当しており、一切姿を見せずに巧みに情報を操ることから“ジュリアスの魔法使い”の異名がついた。 だが、その実はあまり人前に出るのが得意ではなく、自己肯定感が低い少し陰のある性格。だが、やるときはやる性格で、本番に強い。
スケアクロウ 68 ラフな格好をした元マフィアの青年。 人の脳みそが好き、という異常性癖を抱えており、“脳みそ蒐集家”、“ブレインキラー”などの異名もある。 また、戦闘の際にノコギリを使う変人でもある。
ウッドマン 不問 85 斧のネックレスをした元マフィアで、ルージュ大好きマン。 また、ウッドマンも人の心臓が食べたくなる、という異常性癖を抱えているため、着いたあだ名が“心臓喰い”。 この五人の中で最も戦闘が得意であるが、天然ボケをよくかます変人。
ライオン 不問 68 武器売買をする会社、『LCTT』の社長。 ルージュのチームの一員ではあるが社長であるため忙しく、 この話でも一か月間南アフリカに仕事をしに行っている。 あだ名は“黒き獅子”で、これは頭がよく勇ましいということだけでなく、武器商人の才に隠れて戦闘狂であることからつけられている。
マキューシオ 不問 25 ロミオと関係があるという情報屋。 あだ名は“イーグル・アイ”で、情報統制を敷くことすらできる凄腕。 そんなマキューシオも、どうやら誰かの下についているようで…? オズワルド役が兼ね役。
マフィア 不問 7 モブ。一番最初に出てくる。スケアクロウに頭をギコギコされる可哀想な人。 被害者であるため凄い叫ぶ。 スケアクロウ、ルージュ役以外が兼ね役。
ロミオ 不問 1 一台詞だけ回想で出てくる。 少し前、スケアクロウが出会った殺し屋。 ライオン役が兼ね役。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:とあるマフィアの詰所。そこは今、死体と鮮血に塗れていた。 ルージュ:ねぇ…、本当に知らないのぉ? マフィア:しっ、知らないっ!本当だ! 0:手首と足首を縛られたマフィア。その前には血塗れのノコギリを持った青年と、椅子に座り頬杖をつく女性が一人。 ルージュ:“ロミオ”、“ビショップ”、“ドードー鳥”、“R”…。こんなに名前があるのに、全部聞いたことがないの? マフィア:そうだ、全部知らないっ!全て初めて聞いた名前だ!! スケアクロウ:“チキータ・マーキュリー”、“ジュリエット”もかい? マフィア:知らない…っ!そいつらは一体誰なんだっ!? ルージュ:あぁ、そう…。ここもハズレって訳ね…。わかったわ。協力ありがと…♪ マフィア:し、質問には答えたんだ、たすけてくれ、頼むっ! ルージュ:うふふ。ごめんなさいね、私たちには既に用済みのマフィアを生かすメリットがないの。 マフィア:ぁ…。 ルージュ:じゃ、そういう訳だから。やっちゃっていいわよ、スケアクロウ。豪快にカチ割ってやって。 スケアクロウ:オーケイ!じゃ、そういう訳だから…。綺麗な脳みそを見せてね! マフィア:や、やめろ、いやまって、まってください!! ルージュ:うふふ…。 0:部屋を後にし、部屋のドアを閉めるルージュ。 マフィア:嫌だ、嫌、ぐあ゛ア゛あ゛ぁぁァァァッッ!! 0:場面転換。 0:詰所の前に止まる車の後部座席に乗り込むルージュ。 0:すると、奥に座っていたローブを深くかぶった人物が話しかける。 オズワルド:ど、どうだった…、“鮮血”(せんけつ)。 ルージュ:ハズレ。誰一人として“ロミオ”の名前を知る者はいなかったわ。 0: ロミオ:(回想)俺たちは必ずお前たちを殺しに行く! 0: ルージュ:(N)少し前にスケアクロウがとある依頼で接触したという謎の殺し屋“ロミオ”。それが今後脅威になりうると判断した私たちは、“ロミオ”の情報を集めていた、のだけど…。 オズワルド:…ご、ごめん。もう何件も回ってるのに、全部だめで…。 ルージュ:仕方ないわよ。あなたの情報の正確性には何度も助けられてきた。なのに足取りが今も掴めないってことは、あちら側が情報統制を敷いているということ。だから、あなたの腕が悪いわけじゃないわ。落ち込まないで。 オズワルド:あ、ありがとう…。 ルージュ:…やっぱり、一か八か“深淵”(しんえん)に連絡を取ったほうが良いのかしら……。 0:そして運転席のドアが開く。 0:乗ってきたのは服を返り血で汚した人物。斧のネックレスが印象的だ。 ウッドマン:後始末してきましたよっと―。 ルージュ:あぁ…、お疲れさま、“木こり”。助かるわ。 オズワルド:…えっと、“案山子”(かかし)は、また…? ウッドマン:そう。今日も頭ほじくってる。 ルージュ:飽きないわよねぇ、スケアクロウも。 ウッドマン:本当ですよ、案山子(かかし)くんは悪趣味だと俺も思います! オズワルド:……。 ルージュ:ふふ。オズに目で訴えられてるわよ、ウッドマン。「あんたがそれを言うのか」って。 ウッドマン:えぇー?そんな変なことしてるかな…。 ルージュ:そもそも肩書きが“心臓喰い”の時点でなかなかヤバいわよ、あなた。 ウッドマン:でも心臓って「美味しい」ですよ? ルージュ:…うん、そういうことを言っているわけではなくてね…。 0:そんな中クーラーボックスを持ったスケアクロウが車に乗って来る。 スケアクロウ:ただいまー! ルージュ:おかえり、案山子(かかし)。なんだか上機嫌ね。 ウッドマン:今回は何個獲れたの? スケアクロウ:いい形のは一個だけ!でもね、その獲れた一個、カタチが本っ当に綺麗なんだ!もう、本当に僕のコレクションの中で一、二を争う綺麗さでさ! ルージュ:あら、良かったじゃない。そんなに気に入ったのなら、ベッドの横にでも飾ったらどう? スケアクロウ:あぁぁ、それもいいね。どうしようかなぁ…! オズワルド:…いつも思うけど、会話が異次元だ……。 0:場面転換。 0:四人が乗った車が走っている。 ウッドマン:それで、ルージュさん。ここもハズレだったわけですけど、この後どうします? ルージュ:どうするもこうするもないわよ。アジトに戻って、またオズに情報を集めてもらって、手当たり次第に潰す。…それ以外方法がないわ。 スケアクロウ:にしても、本当にびっくりするね。あの“ジュリアスの魔法使い”の情報ネットワークを駆使して、未だに尻尾が掴めないなんてさ。 オズワルド:…や、役に立てなくて―――。 ルージュ:(台詞を待たず)謝らなくていいって言ったでしょ、オズ。仕方ないことよ。これからもその調子で頑張って頂戴。 オズワルド:う、うん…。 スケアクロウ:フフ…。きっとこれからはもっと外に出る仕事が多くなるだろうから、頑張ってね! ウッドマン:そうだね。助言だけど、今のうちに体力をつけといたほうが良いよ。結構体力使うからね。 オズワルド:が、頑張る…っ。 ルージュ:…さて、本当にこれからどうしたものかしら―――。 0:その時、携帯電話が鳴る。 スケアクロウ:おや、電話だよ。どうぞボス。 ルージュ:ありがとう。(応答する)もしもし?…!うふふ…。お疲れさま。こっちは不作だったから、良い報告が聞けてとても嬉しいわ。…えぇ、えぇ…。わかった。今ちょうど全員いるから、すぐに向かうわ。それまでコーヒーでも飲んでブレイクしていて頂戴。…えぇ、それじゃあまた。(電話が切れる) ウッドマン:“黒獅子”(くろじし)からですか? ルージュ:あら、よくわかったわね。 ウッドマン:そりゃあ、いつも見てますからね! ルージュ:女性にその発言はキモいわよ。…まあいいわ。目的地変更よ、ウッドマン。いつもの空港に向かって。 ウッドマン:承知しましたァー! スケアクロウ:お、ということは彼(彼女)、ようやく帰ってきたのかい? ルージュ:えぇ。皆で我らが大黒柱をお出迎えしに行くわよ。 0:場面転換。 0:空港。その中に備え付けられているファストフードチェーン。 0:サングラスの人物がハンバーガーを食べている。 ライオン:…ン。たまにはこういうジャンキィな食事も良いな。まったく、商談の度に高級なモン食ってると舌が肥えちまって仕方がねえ。 ライオン:……はぁ~、最近は交渉仕事(ネゴシエート)のし過ぎで疲れた。たまにはオレだって前線に立ちたいんだがね…。それで…?これからお嬢たちと情報の擦り合わせ、部下への連絡、次の商談相手とのコンタクト…、あぁ、PHE社の新商品の性能調査とあの鳥頭どもがやらかしたことの揉み消しもか……。それに今日は「まだやりたいこと」も残ってる……、ハァ~~~……。 0:テーブルにだらりと倒れ込むライオン。 オズワルド:さ、三人とも…!“黒獅子”(くろじし)見つけたよ…!…なんか、ぐったりしてる、けど…。 ルージュ:あら…。だいぶお疲れみたいね、“アルフレッド”。 ライオン:ン…?あぁ、お嬢に“魔法使い”…。思ったより早い到着だったな…。あとこういう場所では俺のことは“ライオン”か“黒獅子”(くろじし)で通してくれ。本名は小恥ずかしい。 ルージュ:うふふ、ごめんなさい、ついうっかり。オズ、ウッドマンとスケアクロウを呼んできてくれるかしら。 オズワルド:…わかった。(二人を呼びに行く) ライオン:…ファストフード店は提供スピードも味も値段も文句なしだが、煙草が吸えないってのが玉に瑕だな。ストレスだ。 ルージュ:喫煙所ならすぐそこにあるわよ? ライオン:いや、いい…。あとで吸う。ところでもうすぐ19時を回るが、お嬢はなんか食ったのか?せっかくだ、ここで食べていったらどうだい。 ルージュ:ここで?今日はあなたの商談の成功祝いに良いレストランでも行こうと―――。 ライオン:(台詞を待たずに)そいつは勘弁してくれ…。それに、ご覧の通り空腹に耐えかねてもう食っちまっててな。生憎と小食なもんでこれ以上の飯が入る気しないんだ。ここで飯を食いながら話せば移動の手間も省ける。 ルージュ:そ、そう…?じゃあ、ここで済ませようかしら。 0:そこに三人が戻って来る。 オズワルド:連れてきたよ。 スケアクロウ:フフ、見るからに疲れてるね、“黒獅子”(くろじし)。久しぶり、そしてお疲れ様。 ウッドマン:南アへの遠征、ご苦労さまですー。 ライオン:よぉ、“案山子”(かかし)に“木こり”。この二週間、そっちも大変だったらしいな。 スケアクロウ:まあ、結構点々と潰して回ったからね。でも、君ほどじゃないだろうさ。 ライオン:ハハ、悪いがそれはその通りだろうな。まあ座れよ。 ルージュ:あ、申し訳ないけれどウッドマンは注文行ってきてくれる?私たち四人分。今日はここで夕食にするわ。 ウッドマン:おっと、俺をパシリに使いますか…。良いけど、あとでご褒美として頭撫でてくださいね。 ルージュ:は? ウッドマン:冷たい反応いただきましたァー!あざぁす! ルージュ:黙って行ってこい♡♡♡ スケアクロウ:あ、僕シェイクも飲みたいな。お願いできる? ウッドマン:はいよォー! 0:スキップしながらオーダーをしに行くウッドマン。そして席に着く三人。 ライオン:なんだ、お嬢。今日は一段とファンサービスが激しいな。 ルージュ:私はそのつもり一切ないわよ…。 ライオン:ハハ。まあしかし、久々にお前たちの顔が見れて嬉しいよ。こうして全員集まるのはいつぶりだ? スケアクロウ:えーと、“黒獅子”(くろじし)の商売が忙しくなった頃から会えてなかったから…、一か月とちょっとかな? オズワルド:結構間空いてるんだね…。 ルージュ:仕方ないわよ。ライオンの仕事が急に忙しくなってしまったのだから。あぁ、電話で少し聞いたけれど、今回の成果はどうだったの? ライオン:パーフェクトだよ。最新鋭の戦闘機と戦車を売りつけ、さらに良い印象も植え付けてきた。近いうちにデカい金が入るぜ。 スケアクロウ:本当お疲れ様だよ、“黒獅子”(くろじし)。それにしても、帰りが二週間も遅れるほどのトラブルって、一体何があったんだい? オズワルド:あ、そっか…。確か、当初は二週間程度で帰ってくるはずだったんだよね…? ライオン:そうだ。…本当に色々あった…。ヒットマンには狙われる、他の企業が漁夫の利を狙ってくる、取引先は至急の追加発注をしてくる。挙句、俺の部下が二人同時に重大なミスをやらかしやがった。…それを全部リカバーしてたら気づけば二週間なんてとっくに過ぎ去っててな。心身ともに疲労困憊だ。帰ったらマッサージを頼みたいくらいだね。 ルージュ:ふふ、それは疲れるわね。お疲れ様。帰ったらゆっくり休んで頂戴。 ライオン:そうさせて貰う…、と、言いたいとこだが。それは「今日の仕事」が終わってから、だな…。 オズワルド:…今日の仕事? ウッドマン:―――お待たせー、買ってきたぞォー! 0:そこにウッドマンが戻って来る。両手で持つトレイの上にはジャンクフードのセットが四人分乗っている。今にも食べ物がトレイからこぼれそうだ。 スケアクロウ:…なんで一つのトレイに全員分乗せて持ってきたのさ、どうやって食べるのこれ? ウッドマン:え?だって同時に二つも三つも持てないじゃん? ルージュ:いやいや、一人で持ってこようとせずに私たちを呼べばよかったじゃない…。 ライオン:分けて運ぶって手もあったろう。 ウッドマン:あぁ…。あぁ? オズワルド:なんで納得してない顔…っ!? ウッドマン:いや、だってさ―――? オズワルド:(台詞を待たず)と、とりあえずそれ置いて、すぐ!怖いから…! ウッドマン:あ、はい。 0:トレイを置き席に座るウッドマン。 ライオン:…やれやれ。そういやお前さんは天然ボケ気質だったな…。 スケアクロウ:フフ。三枚トレイ貰ってくるね。 ルージュ:えぇ、お願い…。 0: 0: 0: ウッドマン:んんー!やっぱここのバーガーは格別だぁ。 オズワルド:おいしい…。 ライオン:そういや聞いたぜ“案山子”(かかし)。例の“ロミオ”と接触した場に“深淵”(しんえん)が居たんだって?お嬢からずっと話を聞かされて気になってたんだ。どんな奴だった? スケアクロウ:まさに“深淵”さ。外見や仕草は紛うことなく子供なのに、いざ話せば考えていることが全然わからないし、瞳を見たら吸い込まれそうになる…。ルージュの言っていた通りだった。 ライオン:へぇ…。 オズワルド:そう考えると、そんなヤバい奴と半年もタッグを組んでた“鮮血”って、すごい、よね…。 ルージュ:まあ、一緒に行動はしてなかったけどね。私が悪知恵を働かせて作戦を練り、“深淵”がその戦闘能力で敵を狩る。なかなか統率のとれたコンビだったとは思うわ。実際その半年間は一切しくじらなかったし。 ウッドマン:そりゃあ、そんなの向かう所敵なしでしょ…。 スケアクロウ:そういえばずっと聞くの忘れてたけど、なんで“深淵”とのコンビすぐ解消しちゃったんだい? ウッドマン:あ、それ俺も気になってたやつ! ルージュ:それは簡単。あっちが【ジュリアス】との関係を急に切ったから。 ウッドマン:ありゃ、それはなんでです? ライオン:それも簡単だ。マフィアに付くよりも金がもらえて、より楽しく仕事ができる場所を見つけたから。まあそっから二年と経たずにマフィア組織【ジュリアス】は壊滅するわけだから、引き際は完璧だったと言えるだろうな。“深淵”がそれを見越していたのか偶然だったのかは知らんが。 スケアクロウ:なるほどー。そしてその新しく見つけた場所が…、 オズワルド:…うん。大富豪、“ダイヤのクイーン”の組織だね…。確か、当時彼女の側近をしていた腕利きの殺し屋が突然失踪して、その穴を埋めるように入った…、って経緯だったはず…。 ウッドマン:なるほどぉ…。気まぐれな“深淵”が今もそこに留まっているのを見ると、だいぶ楽しいんだろうなぁ、その組織。 ライオン:いや、どうだかねぇ…。商売相手として何度かあの女王サマとは舌戦を繰り広げたことがあるが、ありゃなかなかのクセモノだ。相当に頭がキレる上、金も無尽蔵なんじゃないかと思わせるほどに蓄えている。アレの下で働くとなったら相当ストレスが溜まるだろうな。オレだったら。 オズワルド:それは“黒獅子”が商売相手として苦手意識があるからなんじゃないかな…? ライオン:それもあるかもしれん。が、根本的にあの女とは合わない気がする。直感だが。 オズワルド:…なら合わないだろうね。 スケアクロウ:フフフッ…。でも確か、あの時“深淵”と一緒に居た“帽子屋”さんからも少し気が強いって聞いたね。その女王様。 ライオン:ん?“帽子屋”?そんなやつ聞いたことがねえが。 ルージュ:そりゃないわよ。あなたが南アに行ってる間に加わった新参者だもの。 ライオン:へぇ。そいつは賑やかになったな。…因みにもう一つ確認だが。“イモムシ”が殺されたってのはマジか。 オズワルド:残念ながら大マジです…。 ライオン:なら“チェシャ猫”は? ウッドマン:まさに今話してた“ダイヤのクイーン”のチームに拾われましたね。 ライオン:…なるほど。あのクソ猫の行き着く場所としちゃあ納得だ。そうか、この一か月の間にあの女のチームに二人も腕利きが入っていたか。 ルージュ:これであちらのチームの数はボスを含めて五人。少数精鋭ね。 スケアクロウ:あれ、そんなことを言ったら僕らも人数同じじゃない? ウッドマン:同じだけどこっちの方があっちより数は多いんじゃないかな。だってほら、俺たちには『LCTT』社がいるじゃん。 ライオン:オレの会社を頭数に数えるな。あれはただの後ろ盾。たまにこのチームのために部下を動かすのもお嬢に投資してもらってるからだ。基本はこのチームと会社は切り離してくれ。 ルージュ:後ろ盾にあるだけでも相当助かってるわ。これからもどうぞよろしくね。 ライオン:あぁ。もう無理を言われるのはゴメンだけどな。 ルージュ:うふふ…。 オズワルド:…でも、例え『LCTT』が傍にいてくれるとしても、“黄金の怪物”は脅威だよ。 ウッドマン:それは良くない考え方だぜオズくん。あの人に対抗しようとしちゃいけない。できる限り目を付けられないように争わない姿勢を貫かなきゃ。ねぇ。 スケアクロウ:そうそう。触らぬ神に祟りなし、ってやつだよ。 ライオン:…まぁ、あのジョーカーが“ダイヤのクイーン”のチームにいる限り、少なくともオレは関わらないといけないわけなんだがな。憂鬱だ。 オズワルド:そ、そうなるならもういっそ、“鮮血”が“深淵”にコンタクトを取って、協力関係を構築するのは…? ルージュ:私もそうしたいのは山々よ。もしうまいこと協力できたら百人力だし、さらなる資金を調達できるかもしれない。…でも、ねぇ…。きっと私が半年間で“深淵”に与えた印象、最悪なのよね…。 スケアクロウ:具体的には? ルージュ:組織の金を横領して部下に罪を擦り付けたり、優しいボスにねだってお金たくさんもらったり…、あと当時の私、組織の三番手だったから、ボスと“右腕”を潰す計画を考えて話してみたりね…。まぁ、それは説得されて止められて、私が潰すよりも早くボスと“右腕”は失踪してしまったけど。 ウッドマン:俺にねだってもらったらお金いっぱいあげちゃいますよルージュさん!臓器売買も肝臓までならします! ルージュ:気持ち悪いから今すぐ口を閉じて貰っていいかしら。 ウッドマン:えー、俺お喋りだからなぁ…。あっ!じゃあルージュさんのその食べかけのハンバーガーを俺の口に放り込んでくれれば喋れなくなりますよ!ほら、あーーーーーぁ、ちょっと待ゥヴオァッ………。 0:オズワルドがハンバーガーが入っていた紙の箱をウッドマンの喉の奥に勢い良く突っ込む。オズワルドは無表情だ。 ウッドマン:(次のオズワルドの台詞が終わるまでは呻いている) オズワルド:これで喋れないよね…?…呻き声うるさいな、なら窒息させちゃえばいいね…。 スケアクロウ:フ、アハハハッ!いいぞー、“魔法使い”!もっとやっちゃえー! ライオン:今のは殺されても仕方ないなァ、“木こり”。…しっかし、怖えなオズワルド。いつもはなよっちいのによ…。もしやこのチームのサイコ担当は三人だったか…?(小声) ルージュ:…まったく。やめなさい、オズワルド。こんなバカみたいなセクハラで私の手を汚すわけにはいかないわ。 オズワルド:“鮮血”が言うなら…。 0:オズワルドはハンバーガーの箱を引き抜く。 ウッドマン:ゴぇっ…、はぁ、はぁ、はぁぁ……。 スケアクロウ:お疲れさま、“木こり”。辛いとこ悪いんだけど速いとこナプキンで涎(よだれ)を拭いてほしいな。 ウッドマン:はっ、はぃ…。 ルージュ:……話を戻すけれど、まあそういうことよ。多分“深淵”が持ってる私の印象は最悪だろうし、今あちらと交渉はするべきでないと考えるわ。 オズワルド:…そっか。“ロミオ”と唯一あったことのある“帽子屋”もいるから、いい考えだと思ったんだけど…。それなら仕方ないな…。 ライオン:あ。…そうだった。しまった忘れていた。 スケアクロウ:どうしたの“黒獅子”。 ライオン:お前たち、今日はまだやれるか? ルージュ:…急ね。私は平気だけど。 スケアクロウ:僕も。何をやるのかは知らないけど、体力は残ってるよ。 オズワルド:ぼ、僕も。 ウッドマン:俺は、はぁ…。ちょっとキツイかな―――。 ライオン:(台詞を遮って)良し、全員平気だな。 ウッドマン:ちょ―――。 ルージュ:(ウッドマンの台詞なんて無いように)それにしても、どこに行くの? ライオン:あぁ、実はアフリカで思わぬ収穫があってな。少し潰したい場所がある。 スケアクロウ:へぇ。それは? ライオン:…とある情報屋とその護衛が利用している仮宿。 0:場面転換。 0:武装した五人。が車に乗っており、道を走っている。 0:既に日は落ちている。 ライオン:んじゃまあ、“魔法使い”。おさらいのために今分かっている“ロミオ”の情報を説明してくれ。 オズワルド:う、うん。正体不明の殺し屋、“ロミオ”。正確にはそもそも殺し屋なのかも不明。わかっていることは三つ…。一つ、“ロミオ”はどこかの組織に潜伏していて、“ダイヤのクイーン”の諜報をしていたこと。二つ、ただの一般人だった女性、“チキータ・マーキュリー”を殺しの道に堕とすほどのカリスマ性があること。…三つ、どんな組織なのか、戦闘力はどれくらいなのか、全てが不明だということ…。 ウッドマン:本当、ヤバい連中だなあそれだけ聞くと。 ライオン:だがしかし、この情報の争奪戦が常に巻き起こっている裏のセカイでそれほどまでに完璧な情報統制を敷けているというのが何よりのヒントだ。 ルージュ:なるほど。膨大な情報を操ることのできる何者かがバックにいる、って考えね。 スケアクロウ:でもさ、今日潰しに行くことはないんじゃないかな?別に明日や明後日だっていいわけでしょ、僕新作のゲームやりたかったんだけどー。 ライオン:悪いがそれはオレが駄目なんだ。明日は新商品の見学と部下のやらかしの揉み消し作業、明後日からは四日ほど英国に飛んでまた大きな商談がある。だから今日じゃないとまた一週間全員揃わない。…ま、このすべてをお前さんが代わってくれるってんなら明日や明後日でもいいぜ? スケアクロウ:…ゴメンナサイ。 ライオン:分かれば良い。そんなわけだお嬢。明日からも最低五日外す、悪いな。LCTTの連中をつけておくからそれで許してくれ。 ルージュ:大丈夫よ。今日も忙しいでしょうに、ごめんなさいね。 ライオン:問題ない。 ウッドマン:それで“黒獅子”さん。ここまでの話を繋げると、さっき言っていたとある情報屋が“ロミオ”側についていて、そいつが情報統制を敷いていると考えているってことでいいんですかね? ライオン:その通りだ。今から其処に奇襲をかけりゃあ、確実に情報を引き出せるだろう。 オズワルド:(悲しげな声で)そ、それに…、“怪物”が“ロミオ”の情報をまだ持ってなかったら、協力関係を結ぶいい交渉材料になるかもしれない、ね…。 スケアクロウ:おぉー、そりゃ僥倖(ぎょうこう)。だけど、なんでそんなに悲しそうなんだいオズ? ルージュ:(耳打ちするように)多分自分が情報担当なのにライオンに情報持ってこられて、しかも高確率でアタリだから自己嫌悪なのよ。…ほら、オズって結構ネガティヴシンキングなとこあるから…。 スケアクロウ:あぁ……。ま、まぁ!勿論オズの調べた情報も役に立ってるよ!ライオンがいろいろやり過ぎて立場なくなって「僕って本当に要るのかな、“黒獅子”が全部やればいいんじゃないかな…。」なんて思う必要ないさ! オズワルド:う、うぅぅー……。ごめん、なさいぃ……。 ルージュ:…コイツ。 ウッドマン:ハハハ。大丈夫だよオズくん。確かにライオンは情報入手も、君ができない戦闘も指揮も完璧なまでにできてしまうが、君には君の良さがある! オズワルド:……(ぶつぶつぶつ…)。 ウッドマン:あれ、オズくーん!?ルージュさん、今運転中につき後方確認できないんですけどオズくんどうなってます? ルージュ:念仏の如くネガティヴなこと言い続けてるわよ。 ライオン:ったく、これから戦闘だってのに重要な情報担当に精神的なトドメ刺してどうするんだ。 ウッドマン:えぇ、そんなつもりないんだけどな。俺はただ事実をォごぉっ!! 0:助手席のライオンからグーパンチを喰らうウッドマン。 ライオン:黙ってろ。今日はもう口を開くのは戦闘の時だけでいいからな。 ウッドマン:…ハイ。 ライオン:あー、いいか“魔法使い”。確かにお前さんはまだ未熟だが、逆に言えばそれは伸びしろ、可能性を大きく秘めているということだ。わかるか? オズワルド:……。 ライオン:オレたちとの実力差はお前さんが組織にいた頃ずっと引きこもってたことに起因する。それに“魔法使い”、お前はこのチームの中で一つ抜けて年下だ。オレから言わせりゃその年でマフィア組織の核ともいえる情報を担っていたのは誰にだって誇れることだし、まだ成長すると考えると危機感すら感じるレベルだ。もし何かの間違いでお前さんと敵対してしまったら、この上なくヤバい、とな。そこの人の心がない“木こり”と脳なしの“案山子”は知らんが、オレとお嬢はお前を信頼している。 オズワルド:…本当、に? ライオン:あぁ。そこの馬鹿どもがきっと本心でお前さんに対する不安を漏らしただろうからオレも本心を口に出している。もしもオレたちの才能が羨ましいというのなら学ぶといい。お前さんの才能ならきっと、五年もすりゃあ素晴らしい情報屋になっているだろうからな。 オズワルド:あ、ありがとう、“黒獅子”…。うん、期待を裏切らないように僕、頑張るね…っ!! ルージュ:…ふふふ。さあ、もうじき到着するわ。各員、すぐに状況を開始できるように準備。 スケアクロウ:了解ー。 0:場面転換。 0:情報屋の親衛隊基地の近くに車を止めた一行。 ウッドマン:はぁー、ああいう感じかあ。思ってたより立派だった。あの建物なんかちょっとお高目のホテルみたいだし。 ルージュ:確認だけど、今回の作戦はあの中にある“ロミオ”とそれに通じている情報屋のデータを持って帰ることなのよね? ライオン:そうだ。作戦の組み立てはオレの領分じゃないから任せるぜ、戦闘隊長さんよ。 ウッドマン:うぅ、こういう重要任務の時のプレッシャーやべぇんだよないつも…。 オズワルド:…そう言いつついつも完璧にこなすじゃん、“木こり”は…。 ウッドマン:それは君たち四人のおかげ。いつも危なっかしい場面があるのにみんながちゃんと冷静に対処してくれるおかげで、結果的に完璧になることがここ最近多いだけだぜ? スケアクロウ:フフ。本当、“木こり”ってセクハラ発言と天然ボケさえなければ完璧だよね。 ルージュ:うふふ、そうね。本当にやめてくれないかしら。 オズワルド:でも、それはそれで何か嫌だな…。アイデンティティの消失、というかなんというか…。“木こり”じゃなくなっちゃうというか…。 スケアクロウ:えぇ?それはあれかいオズ。「この人からセクハラと天然ボケ取ったらただの完璧超人が生まれちゃって面白くないだろ」って話? ライオン:はっ、しかしそいつは同意見だな。そっちの方が気持ち悪いと思うぜ。 ルージュ:うふふ…。“木こり”、言われてるわよ。 ウッドマン:へ?なんですか、ごめん聞いてなかった。 オズワルド:駄目だ、この人…。 0: 0: 0: ウッドマン:では、状況を開始するとしようじゃないか!各員、気を引き締めて怪我とかしないか細心の注意を払うように! スケアクロウ:はーい。 オズワルド:…ん。 ウッドマン:“案山子”くん、俺と共に前線で暴れ散らかす。オズくんはルージュさんと共に車で離れて待機し、情報伝達。もしも俺たちが手こずるようであれば狙撃場所(スナイピング・ポイント)に移動。ルージュさんがSRを持ちオズくんが観測手を務め、援護してくれ。 ルージュ:了解。 ウッドマン:そして“黒獅子”さん。俺たちと共に暴れ散らかすのは同じなんだけど、あなたはあまり目立たないように別ルートで侵入、俺たちが敵を引き付けている間に“ロミオ”につながるデータをかき集めてください。もしそちらが見つかり数で押し切られそうなときは離脱も視野に入れつつで! ライオン:OKだ。だが、大丈夫だろう。お前らはいつも派手にやってくれる。久々にサイココンビと共に戦場に立てて嬉しい限りだよ。 ウッドマン:なっ、サイコじゃありませんよ俺ー!?心臓を見るとちょーっとキュート・アグレッションに似た感情を覚えるだけで! スケアクロウ:僕もただ脳みそフェチなだけで! ライオン:はいはい。ほら、時間もねえんだから早く作戦開始の合図を出せ。 ウッドマン:ハイ。では最後に、建物の造形上小回りが利かないフィールドとなるので、昔やった抗争とは勝手が違うことを覚えておくように!…では全員、行動開始ィー! 0:場面転換。ルージュとオズワルドが車の中にいる。 オズワルド:…完璧な情報統制が敷けるほどの情報屋、か。 ルージュ:またそういうこと考えて。駄目よ? オズワルド:違うよ、ルージュ。…もし僕が成長してそいつみたいに情報を隠すことができるようになったら、絶対『LCTT』社も鮮血も動きやすくなるから、その…。さっき言われたみたいに、頑張って学ばなきゃ、って…。 ルージュ:…うふふふ。その意気よ、オズ。まあ、まずは何より場数を踏むことよ。応援してるわ。 オズワルド:うん…!…でも、今回の制圧作戦、ちょっと不安。あの建物は例の情報屋の仮宿なんでしょ…?なら、僕たちが奇襲を仕掛けることすら予見できているかもしれないし、そんな奴がわかりやすく情報を建物の中に置いているとは思えない。 ルージュ:そうね。相手はなかなかに厄介な相手。だけど大丈夫よオズ。…あの三人は、確実に情報を持って帰って来る。それに、仲間というのは信じるものよ。 オズワルド:…!そう、だね。ごめん。 ルージュ:うふふ。…さあて。あとどれくらいで連絡が来るかしら―――。 0:場面転換。 0:スケアクロウとウッドマンが建物の中で情報屋の護衛たちと戦闘している。 0:スケアクロウはノコギリ、ウッドマンはアサルトライフルを使っている。 ウッドマン:おらおらー、“心臓喰い”様のお通りじゃーい!道を開けろー!そして後でお前たちの心臓を焼いて食わせろォー! スケアクロウ:よい、しょっ、と!あはは!僕のホラー映画さながらのノコギリ捌きを見るがいいっ!鈍い痛みを感じて逝け! ウッドマン:くっ、案外人数多いなぁ!それに、予想はしてたけど速えぇっ!(物陰に身体を隠しつつ撃つ)よし、これで三人っ! スケアクロウ:ちょっと“木こり”!?ヘッドショットしたでしょ今!いい形の奴だったらっ、どうするのさっ! ウッドマン:仕方ないじゃんこいつら結構強いんだから!趣味嗜好より命大事にだぞ! スケアクロウ:まったく…、もうっ!!(敵に急接近し、ノコギリを首に当て大動脈を引き裂く)八つ当たりだっ!(その勢いでさらに周りにいた敵の首を薙ぐ) ウッドマン:え、なに今の!?魅せプ?! スケアクロウ:そんなつもりはない!…ほら、これでこの階の敵はラストっぽいから、早く上行くよ! ウッドマン:いやぁ、チョーサへーダンかと思ったぁ…。 0:さらに場面転換。単独行動中のライオン。 0:手には消音機付きのアサルトライフル。銃声が遠くから聞こえる。 ライオン:おうおう、派手にやってるねぇ。さて…。(手当たり次第に建物内の部屋に入っていく)どうやらここらは全部兵隊どもの部屋のようだな。…ま、入り込みやすい一階に重要な情報なんぞ隠してるわけないか。ん?……チッ。(耳につけている無線機に触れて)あー、こちら“黒獅子”。応答できるか“案山子”? スケアクロウ:はい、こちら“案山子”!何かあった? ライオン:あぁ。どうやらオレの裏口からの侵入はバレていたらしい。足音がこちらに向かってくる。数は三から五人。 スケアクロウ:マジか。やっぱりやるなあ、その情報屋。 ライオン:流石は“イーグル・アイ”と言ったところだな。という訳で少し上の階に行くのが遅れる。それだけだ。 スケアクロウ:あれ、増援寄こせとかそういう話じゃないの!? ライオン:どっかの馬鹿と違って俺は使いやすい武器を使ってるからな。五人くらい余裕でやれる。お前たちはさっさと上に行ってオレが情報を集めやすいようになるべく掃討しろ。伏兵が残らないようにな。 スケアクロウ:僕は馬鹿じゃな―――って、ごめん“黒獅子”。こっちにもいっぱい敵来たから応答できないかも! ライオン:こっちもそろそろ捕捉する。無事を祈るぜ。ソウ使い。 スケアクロウ:もう、あとで飽きるほどノコギリの良さ語ってやr(ライオンが通信を切り途中で台詞が切れる) ライオン:…しっかし、なんでオレの動きがバレたんだ?取引先の話じゃあ監視カメラやセンサーは機能していないと聞いていたんだが…。 0:部屋の死角に隠れるライオン。 ライオン:…フッ。なるほど。どうやら今日は大当たりのようだな。…さあて、久々の戦闘。できる限り楽しく、静かに派手に暴れるとするか!!さあ、オレの仕事疲れを吹っ飛ばしてくれッ!! 0:場面転換。再びスケアクロウとウッドマンのシーン。 0:殲滅してどんどん上のフロアへ上がる二人。今は敵の姿は見えない。 ウッドマン:“案山子”くん、“黒獅子”さん何階建てって言ってたっけココ! スケアクロウ:えー、覚えてないなぁ。でも、外見そこまで高くはなかったから五階建てくらいじゃないかな。 ウッドマン:よし、なら終わりは見えてるも同然だ、多分ここ四階だし!それに上に行くにつれてエネミーも減ってきたしな! スケアクロウ:うんうん。…でも、さっきから妙だよね。なんだかこちらの動きが読めているかのように兵が配置されている気がする。 ウッドマン:それは俺も気づいてた。全部何とかなってるからいいけど。もしかしたら例の情報屋さんがこの上で指示出してたりするのかもしんねえな。 スケアクロウ:なるほど。なら、さっさと身柄抑えないと、ぅぐっ…! 0:右肩を撃たれるスケアクロウ。後ろからの銃撃だ。 ウッドマン:ッ、伏兵か、くそっ…! 0:後ろに潜んでいた敵を蜂の巣にするウッドマン。 スケアクロウ:“木こり”、前からも来たよ! ウッドマン:マジかぁ!? スケアクロウ:…仕方ない、僕がかく乱する!その間に君は“鮮血”たちに連絡を! ウッドマン:頼んだ!くっ、なるほど一時的にエネミーが減ったのは油断を誘う為か!小癪な! 0:前からの敵を銃撃するウッドマン。敵は死角に隠れており当たらない。 ウッドマン:あぁもう面倒くせえ…!(無線機を使い)オズくん、ルージュさん、“黒獅子”さん聞こえます!?“案山子”くん右肩抜かれました!ちょっとまずいかもなんで応答求みまぁーすっ! ライオン:こちら“黒獅子”!悪いがこっちも手が離せん、人数は少ないが動きが洗練されてる、あちらさんの精鋭部隊のようだ!殺しきるのは容易だろうが時間がかかる! ウッドマン:マジでか!本当なかなかやるなアイツら…! ルージュ:こちらは“鮮血”!状況は把握したわ、どうするのが最善かしら! ウッドマン:…あんまりしてもらいたくないんですけど、ルージュさん、急いでSMを持ってこちらに乗り込み、“黒獅子”さんを援護したのちこちらに合流できますか!ちょっと増援が欲しいです! ルージュ:了解。 オズワルド:ぼ、僕は何か役立てないかな!なんでも、頑張るからっ! ウッドマン:お…、ハハ!ありがとうオズくん!そしたら、車でルージュさんを送った後、君は狙撃場所(ポイント)に移動、もし狙えそうならSRでの狙撃をお願いできるかな?確か、少し前からルージュさんにSRの練習をしてもらってるはずだから撃てるとは思うんだけど羨ましい! ルージュ:ちょっと、なんであの時は二人きりだったはずなのにどうしてあなた知ってるのよ!?…まあいいわ。オズ。お願いできる? オズワルド:う、うん…。頑張ります! ウッドマン:サンキューです!それじゃあまたすぐに会いましょう!ご武運を!(通信が切れる) 0:視点がルージュとオズワルドに移る。 ルージュ:よし。車出すわよ! オズワルド:りょ、了解…。 ルージュ:ふふ。オズの狙撃が後ろにあるなら、私も久々に好き勝手暴れられそうね。 オズワルド:そんな、僕教えてもらったばっかりだよ…? ルージュ:それでもあなた、飲みこみよかったじゃない。観測手がいないから大変だろうけど、あなたなら大丈夫。頼りにしてるわ。 オズワルド:う、うん…! 0:再び場面は変わりウッドマンとスケアクロウ。 0:未だ撃ち合いが続く。 スケアクロウ:あぁー、やっぱりいっつもイロモノな武器持ってると普通の武器使うとき変な気分になるな! ウッドマン:色物な自覚はあるんだ。予備のHGあってよかったね、ホントにっ…! スケアクロウ:そりゃあ扱いやすさで言えばナイフの方がはるかに上でしょー。 ウッドマン:ハハ!それを気付いたうえでノコギリ使ってるんだからホンット変人だよな!というか、俺のコードネーム“木こり”なのに、君の方がよっぽど木を切ってるような武器使ってんの面白くない!? スケアクロウ:その話もう五回目だよ聞くの…っ! ウッドマン:あれ、そうだっけぇ!? 0:その時、敵からの銃撃が止む。 スケアクロウ:…え、銃声止んだ…? 0:そして敵の方からこちらに歩いてくる影が二人。 ライオン:よぉ、待たせたな。 ウッドマン:“黒獅子”さんにルージュさん!いや、マジで助かります、会いたかったでーす!そしてルージュさん、俺頑張ったのでハグをしてよしよしを―――。 ライオン:(遮って)集中しような?隊長。 ウッドマン:ひぇ。 スケアクロウ:凄い。いつ“木こり”の顎に銃突きつけたの?見えなかった。 ルージュ:うふふ…。でも、今回はちゃんと頑張ってたから、帰ったら少しだけ甘やかしてあげる。 ウッドマン:マジでェーッ!?っしゃぁ、こんな死亡フラグへし折るくらいやったんぞォー! ライオン:んじゃ、オレはデータを集めるためにまた別行動だ。お嬢はそいつらについていってやれ。…そしてお前ら、気をつけろ。最上階にいるであろう情報屋はきっと銃の扱いにも長けている。 ウッドマン:その心は? ライオン:お前たちも気づいてたと思うが敵部隊の動きが妙に洗練され過ぎてた。それは戦況を見て的確な指示を出せる人間がいる証拠だ。オレたちの武器の性能も分かっているようだったしな。 ルージュ:なるほど。なら、余計に注意を払わなくてはね。 ライオン:じゃあオレはいろいろ漁って来る。最後にお嬢、あんまりその変態を甘やかすなよ。すぐ調子乗るからな。 ルージュ:うふふ、了解。そっちも伏兵に気を付けてね。 ライオン:はいはい。 スケアクロウ:それじゃあ、僕たちは最上階へ!“イーグル・アイ”とのご対面と行こう! 0:場面転換。社長室のような部屋で立っている人物が一人。 0:スマホを耳に当て、誰かと話しているようだ。 マキューシオ:うん、どうやら襲撃されたっぽい。まさかライオンが帰ってくる日に行動を起こすとは思ってなかったなあ。ホント参っちゃうよ。護衛も多分もうじき全滅しちゃうだろうし…。真面目にごめんね。 0:その部屋の扉を開け、銃を構える人物が一人。ルージュだ。 ルージュ:その携帯電話を捨ててもらおうかしら、情報屋さん。 マキューシオ:……聞こえてた?ごめんね、そういうことだから。うん。じゃあね、元気で…。(通話を切り、携帯を机の上に置く)やあ、“鮮血”!初めまして!まずはおめでとう、よく僕まで辿り着けたね! ルージュ:えぇ、優秀な仲間のおかげでね。 マキューシオ:“黒き獅子”。本名アルフレッド・ノワール、フランス人。武器売買会社『LCTT』のCEOで、【ジュリアス】が崩壊してから君と出会い、チームに参入。いや、本当あの人凄いよね。銃撃戦は強い、情報収集もできる、商いの才もある、味方の士気も上げられる…。逆に何ができないの?ってゆーやつ? ルージュ:…どうやら全部知っているようね。 マキューシオ:勿論。“ロミオ”がスケアクロウに接触した日の三日後には割れてたよ、君たち全員の素性。情報は命だってのにそんなんじゃ、命がいくつあっても足りないゾ? ルージュ:余計なお世話ね。そんなことを言ったら、あなたの情報統制にもかなり大きな抜け穴があったようだけど。“イーグル・アイ”、というのは名ばかりなのかしら? マキューシオ:あー、それについては言い訳させてほしい!いやさ。ライオンが南アで交渉をした人、ついこの間僕が情報を提供したトコだったんだよぉ。そしてその時、ちょうど護衛を雇ってる暇がなくて“ロミオ”についてもらってて、それでバレちゃったって話だね。まあ言い訳というか情報戦に負けた負け惜しみってやつだけどサ! ルージュ:ふふ。素直ね。 マキューシオ:それが売りだもの。因みに一応聞くけど、今ここにいないお仲間さんは他フロアにいたり残党処理してる感じ? ルージュ:だから私が直々にあなたと話しているのよ、“イーグル・アイ”。 マキューシオ:そうかぁ…。ハハ。なるほど。こりゃお手上げだね。そして君はきっとこう言うだろう。「死にたくなければ情報を吐け。」どう、合ってるかな? ルージュ:この状況でそれ以外の言葉が出てくると思う? マキューシオ:だーよねぇ。いやぁ、脅しのテンプレートみたいな言葉だ。良いよ。僕に拒否権はない。答えようじゃないか、いろいろと。まずはどんな情報をご所望だい? ルージュ:そうね。じゃあまず、あなたの名前を名乗ってもらおうかしら。 マキューシオ:ジョン・マケナリー。嘘でーす。昔は“フロイド”って名乗ってたんだけど…、今は“マキューシオ”って呼んで欲しいな。いかにも人物名って感じで呼びやすいでしょ? ルージュ:…あら。ならキャピュレットの甥もいるのかしら? マキューシオ:おぉー!お目が高いね、その通り。いるよ。 ルージュ:あなたたちはどんな組織なの? マキューシオ:神を信じつつ背き、隣人を死を持って救う集団。…ま、カッコよく言ってるけど要は殺し屋さ。 ルージュ:へぇ…。スケアクロウの話じゃ、一般人のお嬢さんを殺しの道に落としたって聞いたけど。 マキューシオ:はいはい、最近“ロミオ”が連れ帰ってきた子のことね。そうだなあ。…あいつは謂わば、“狂気”なんだよ。近くにいるだけで人が狂う。近くの人間が全部狂ってる“深淵”と似たような話だね。 ルージュ:なるほど。“ロミオ”はなぜそのお嬢さんを? マキューシオ:簡単な話、一目惚れしちゃったんだって。だから狂気に堕とした。それだけだってさ。 スケアクロウ:掃討終わったよー。 0:部屋にウッドマンとスケアクロウが入って来る。 ウッドマン:ルージュさん、お怪我などはありませんか…? ルージュ:大丈夫よ、ありがとう。 マキューシオ:こんばんは、ウッドマンにスケアクロウ。情報はかねがね。 スケアクロウ:…君が、“イーグル・アイ”。 マキューシオ:マキューシオでいいよ。僕の護衛、全部やられちゃった? ウッドマン:このフロアにいる奴と目についたやつは全員殺しきったけど。 マキューシオ:あぁ、そう?了解。それでルージュ。まだ聞きたいことはあるかい? ルージュ:…あなたたちの組織名は? マキューシオ:それは―――。っと。どうやら時間みたいだ、質問はここまで。そろそろお別れの時間だヨ。 スケアクロウ:お別れ、だって? マキューシオ:ああ。君たちは全員ここで死ぬ。 ウッドマン:何を言って―――。 0:そこに無線が入る。 ライオン:おいお前ら!!応答はいらない、今すぐこの建物から逃げろ!!この建物、全体に爆弾が積まれてやがる!!起爆スイッチはきっと“イーグル・アイ”が持ってる、早くしねえと全員爆死する!! ルージュ:なんですって!? マキューシオ:あはは!どうやらアルフレッドくんが今更気づいたかな?でも無駄だ、今から逃げてももう遅い!! 0:マキューシオがポケットから爆破スイッチを取り出す。 ウッドマン:あれを破壊するか打ち落とせ! マキューシオ:もう遅いってば!全員ここで死ぬんだヨ! スケアクロウ:くそっ!! 0:爆破スイッチが押されてしまう、その時だった。 マキューシオ:グぁッ!? 0:窓が割れ、一発の弾丸が起爆装置を持つマキューシオの腕を貫く。その衝撃でマキューシオはその装置を落としてしまう。 マキューシオ:ス、スナイパー、だって…!?まさか! 0: ライオン:…どうだ。 オズワルド:…アームショット、ヒット。 ライオン:っ…。ハハ…。マジで肝を冷やしたぜ。一歩間違えりゃお陀仏の状況でその機転、お手柄だよ“魔法使い”! 0: マキューシオ:あの陰気な情報屋が…!? ルージュ:うふふ…!ここまでね、マキューシオ!! ウッドマン:全員、射撃準備!間違っても殺すなよ! マキューシオ:っ、なんてこった、リサーチ不足だっ…!! 0:そう言ってマキューシオは割れた窓を開ける。 スケアクロウ:なっ、窓に…、まさか、飛び降りる気かい!? マキューシオ:あはは…。ホント完敗だ!爆破するつもりだったからこの建物には僕らの情報が沢山残ってる!調べるといい!だけど…、次は負けない!我ら、【セクト】の名に懸けて! 0:そう言ってマキューシオは窓から飛び降りる。 スケアクロウ:と、飛び降りちゃった。死んだ、のかな…? ルージュ:…いや、多分生きてるんじゃない。「次は負けない」、とか言ってたし。…【セクト】にマキューシオ。覚えたわよ。 スケアクロウ:というか、“ロミオ”と似た文句言って消えてったけど彼らは捨て台詞が好きなのかな…? ウッドマン:すげえ皮肉だね“案山子”くん。…はぁ。なんでだろ、めっちゃ疲れたな。 ルージュ:取り敢えず情報を集め次第すぐに帰って今日はもう休みましょうか…。私もカロリー消費えげつないわ。これじゃあガリガリになっちゃう。 ウッドマン:ルージュさんはどんな体系でも最っ高だから心配ないです! スケアクロウ:キモい。 ウッドマン:おぉぅ、疲れてるからかなんかショック…。 0:場面転換。 0:帰りの車。 ルージュ:みんな、今日は本当にお疲れ様!全員完璧な仕事ぶりだったわ! スケアクロウ:今回僕は逆に足引っ張った側だけどね…。負傷したの僕だけだし…。 ライオン:ハハ、まあいいじゃねえか。次から頑張れば。幸い全員命が繋がったんだからな。本当にお手柄だぜ、オズ。お前さんがあの時外していたらオレたちは爆発四散してた。 ウッドマン:そうだよ!あんな超精密な射撃土壇場でできるのマジですごい!これからも伸ばしていこうぜオズくん! オズワルド:う、うん…!でも、みんな、本当に無事でよかった…! ルージュ:うふふ。帰ったらご褒美の膝枕してあげましょうか、オズ。 オズワルド:ひざっ…?! ウッドマン:あれ、俺を甘やかすって話じゃなかったんですか!? ルージュ:気が変わったわ。 ウッドマン:えぇーーーー………。 ライオン:ハハ。だがやめておけお嬢。お前さんもだいぶ疲れてるだろ。全員がゆっくりと休むのが先決だ。…まあオレは休めないんだが、な。ハハハ。 スケアクロウ:眼が死んでる…。社畜だね、“黒獅子”も。 ライオン:こうでもしねえと裏のセカイで企業は生き残れねえんだよ…。ハァ。 オズワルド:じゃあ、せめて五日後までに【セクト】の情報をまとめて話ができるようにしておくよ…! ライオン:あぁ、是非に頼む。しっかし、帰ってきてすぐ行動してよかったぜ。おかげでこんなにも情報が手に入った。…これを使って“クイーン”と交渉する目途もついたしな。 ルージュ:そうね。…よし、次の作戦は“ダイヤのクイーン”との交渉になると予想されるわ!それまでに各員、休息を取ったりやるべきことをやっておくように! ウッドマン:はい!!(パワフルボイス) スケアクロウ:まだそんなデカい声出せる元気残ってたか、凄いなあ。 0: 0: ルージュ:(N)誇りを持った魔女は、今日も仲間と悪巧みをする。 ルージュ:(N)少女(ドロシー)がいなくても、私はきっと、鮮血に染まるの。 0: ルージュ:(N)ここでもマーダー、遊びましょう? 0: 0: 0:ルージュの艶やかな笑い声が響いている…。 0: 0: 0:―――Dusty Gate was not opened…?

0:とあるマフィアの詰所。そこは今、死体と鮮血に塗れていた。 ルージュ:ねぇ…、本当に知らないのぉ? マフィア:しっ、知らないっ!本当だ! 0:手首と足首を縛られたマフィア。その前には血塗れのノコギリを持った青年と、椅子に座り頬杖をつく女性が一人。 ルージュ:“ロミオ”、“ビショップ”、“ドードー鳥”、“R”…。こんなに名前があるのに、全部聞いたことがないの? マフィア:そうだ、全部知らないっ!全て初めて聞いた名前だ!! スケアクロウ:“チキータ・マーキュリー”、“ジュリエット”もかい? マフィア:知らない…っ!そいつらは一体誰なんだっ!? ルージュ:あぁ、そう…。ここもハズレって訳ね…。わかったわ。協力ありがと…♪ マフィア:し、質問には答えたんだ、たすけてくれ、頼むっ! ルージュ:うふふ。ごめんなさいね、私たちには既に用済みのマフィアを生かすメリットがないの。 マフィア:ぁ…。 ルージュ:じゃ、そういう訳だから。やっちゃっていいわよ、スケアクロウ。豪快にカチ割ってやって。 スケアクロウ:オーケイ!じゃ、そういう訳だから…。綺麗な脳みそを見せてね! マフィア:や、やめろ、いやまって、まってください!! ルージュ:うふふ…。 0:部屋を後にし、部屋のドアを閉めるルージュ。 マフィア:嫌だ、嫌、ぐあ゛ア゛あ゛ぁぁァァァッッ!! 0:場面転換。 0:詰所の前に止まる車の後部座席に乗り込むルージュ。 0:すると、奥に座っていたローブを深くかぶった人物が話しかける。 オズワルド:ど、どうだった…、“鮮血”(せんけつ)。 ルージュ:ハズレ。誰一人として“ロミオ”の名前を知る者はいなかったわ。 0: ロミオ:(回想)俺たちは必ずお前たちを殺しに行く! 0: ルージュ:(N)少し前にスケアクロウがとある依頼で接触したという謎の殺し屋“ロミオ”。それが今後脅威になりうると判断した私たちは、“ロミオ”の情報を集めていた、のだけど…。 オズワルド:…ご、ごめん。もう何件も回ってるのに、全部だめで…。 ルージュ:仕方ないわよ。あなたの情報の正確性には何度も助けられてきた。なのに足取りが今も掴めないってことは、あちら側が情報統制を敷いているということ。だから、あなたの腕が悪いわけじゃないわ。落ち込まないで。 オズワルド:あ、ありがとう…。 ルージュ:…やっぱり、一か八か“深淵”(しんえん)に連絡を取ったほうが良いのかしら……。 0:そして運転席のドアが開く。 0:乗ってきたのは服を返り血で汚した人物。斧のネックレスが印象的だ。 ウッドマン:後始末してきましたよっと―。 ルージュ:あぁ…、お疲れさま、“木こり”。助かるわ。 オズワルド:…えっと、“案山子”(かかし)は、また…? ウッドマン:そう。今日も頭ほじくってる。 ルージュ:飽きないわよねぇ、スケアクロウも。 ウッドマン:本当ですよ、案山子(かかし)くんは悪趣味だと俺も思います! オズワルド:……。 ルージュ:ふふ。オズに目で訴えられてるわよ、ウッドマン。「あんたがそれを言うのか」って。 ウッドマン:えぇー?そんな変なことしてるかな…。 ルージュ:そもそも肩書きが“心臓喰い”の時点でなかなかヤバいわよ、あなた。 ウッドマン:でも心臓って「美味しい」ですよ? ルージュ:…うん、そういうことを言っているわけではなくてね…。 0:そんな中クーラーボックスを持ったスケアクロウが車に乗って来る。 スケアクロウ:ただいまー! ルージュ:おかえり、案山子(かかし)。なんだか上機嫌ね。 ウッドマン:今回は何個獲れたの? スケアクロウ:いい形のは一個だけ!でもね、その獲れた一個、カタチが本っ当に綺麗なんだ!もう、本当に僕のコレクションの中で一、二を争う綺麗さでさ! ルージュ:あら、良かったじゃない。そんなに気に入ったのなら、ベッドの横にでも飾ったらどう? スケアクロウ:あぁぁ、それもいいね。どうしようかなぁ…! オズワルド:…いつも思うけど、会話が異次元だ……。 0:場面転換。 0:四人が乗った車が走っている。 ウッドマン:それで、ルージュさん。ここもハズレだったわけですけど、この後どうします? ルージュ:どうするもこうするもないわよ。アジトに戻って、またオズに情報を集めてもらって、手当たり次第に潰す。…それ以外方法がないわ。 スケアクロウ:にしても、本当にびっくりするね。あの“ジュリアスの魔法使い”の情報ネットワークを駆使して、未だに尻尾が掴めないなんてさ。 オズワルド:…や、役に立てなくて―――。 ルージュ:(台詞を待たず)謝らなくていいって言ったでしょ、オズ。仕方ないことよ。これからもその調子で頑張って頂戴。 オズワルド:う、うん…。 スケアクロウ:フフ…。きっとこれからはもっと外に出る仕事が多くなるだろうから、頑張ってね! ウッドマン:そうだね。助言だけど、今のうちに体力をつけといたほうが良いよ。結構体力使うからね。 オズワルド:が、頑張る…っ。 ルージュ:…さて、本当にこれからどうしたものかしら―――。 0:その時、携帯電話が鳴る。 スケアクロウ:おや、電話だよ。どうぞボス。 ルージュ:ありがとう。(応答する)もしもし?…!うふふ…。お疲れさま。こっちは不作だったから、良い報告が聞けてとても嬉しいわ。…えぇ、えぇ…。わかった。今ちょうど全員いるから、すぐに向かうわ。それまでコーヒーでも飲んでブレイクしていて頂戴。…えぇ、それじゃあまた。(電話が切れる) ウッドマン:“黒獅子”(くろじし)からですか? ルージュ:あら、よくわかったわね。 ウッドマン:そりゃあ、いつも見てますからね! ルージュ:女性にその発言はキモいわよ。…まあいいわ。目的地変更よ、ウッドマン。いつもの空港に向かって。 ウッドマン:承知しましたァー! スケアクロウ:お、ということは彼(彼女)、ようやく帰ってきたのかい? ルージュ:えぇ。皆で我らが大黒柱をお出迎えしに行くわよ。 0:場面転換。 0:空港。その中に備え付けられているファストフードチェーン。 0:サングラスの人物がハンバーガーを食べている。 ライオン:…ン。たまにはこういうジャンキィな食事も良いな。まったく、商談の度に高級なモン食ってると舌が肥えちまって仕方がねえ。 ライオン:……はぁ~、最近は交渉仕事(ネゴシエート)のし過ぎで疲れた。たまにはオレだって前線に立ちたいんだがね…。それで…?これからお嬢たちと情報の擦り合わせ、部下への連絡、次の商談相手とのコンタクト…、あぁ、PHE社の新商品の性能調査とあの鳥頭どもがやらかしたことの揉み消しもか……。それに今日は「まだやりたいこと」も残ってる……、ハァ~~~……。 0:テーブルにだらりと倒れ込むライオン。 オズワルド:さ、三人とも…!“黒獅子”(くろじし)見つけたよ…!…なんか、ぐったりしてる、けど…。 ルージュ:あら…。だいぶお疲れみたいね、“アルフレッド”。 ライオン:ン…?あぁ、お嬢に“魔法使い”…。思ったより早い到着だったな…。あとこういう場所では俺のことは“ライオン”か“黒獅子”(くろじし)で通してくれ。本名は小恥ずかしい。 ルージュ:うふふ、ごめんなさい、ついうっかり。オズ、ウッドマンとスケアクロウを呼んできてくれるかしら。 オズワルド:…わかった。(二人を呼びに行く) ライオン:…ファストフード店は提供スピードも味も値段も文句なしだが、煙草が吸えないってのが玉に瑕だな。ストレスだ。 ルージュ:喫煙所ならすぐそこにあるわよ? ライオン:いや、いい…。あとで吸う。ところでもうすぐ19時を回るが、お嬢はなんか食ったのか?せっかくだ、ここで食べていったらどうだい。 ルージュ:ここで?今日はあなたの商談の成功祝いに良いレストランでも行こうと―――。 ライオン:(台詞を待たずに)そいつは勘弁してくれ…。それに、ご覧の通り空腹に耐えかねてもう食っちまっててな。生憎と小食なもんでこれ以上の飯が入る気しないんだ。ここで飯を食いながら話せば移動の手間も省ける。 ルージュ:そ、そう…?じゃあ、ここで済ませようかしら。 0:そこに三人が戻って来る。 オズワルド:連れてきたよ。 スケアクロウ:フフ、見るからに疲れてるね、“黒獅子”(くろじし)。久しぶり、そしてお疲れ様。 ウッドマン:南アへの遠征、ご苦労さまですー。 ライオン:よぉ、“案山子”(かかし)に“木こり”。この二週間、そっちも大変だったらしいな。 スケアクロウ:まあ、結構点々と潰して回ったからね。でも、君ほどじゃないだろうさ。 ライオン:ハハ、悪いがそれはその通りだろうな。まあ座れよ。 ルージュ:あ、申し訳ないけれどウッドマンは注文行ってきてくれる?私たち四人分。今日はここで夕食にするわ。 ウッドマン:おっと、俺をパシリに使いますか…。良いけど、あとでご褒美として頭撫でてくださいね。 ルージュ:は? ウッドマン:冷たい反応いただきましたァー!あざぁす! ルージュ:黙って行ってこい♡♡♡ スケアクロウ:あ、僕シェイクも飲みたいな。お願いできる? ウッドマン:はいよォー! 0:スキップしながらオーダーをしに行くウッドマン。そして席に着く三人。 ライオン:なんだ、お嬢。今日は一段とファンサービスが激しいな。 ルージュ:私はそのつもり一切ないわよ…。 ライオン:ハハ。まあしかし、久々にお前たちの顔が見れて嬉しいよ。こうして全員集まるのはいつぶりだ? スケアクロウ:えーと、“黒獅子”(くろじし)の商売が忙しくなった頃から会えてなかったから…、一か月とちょっとかな? オズワルド:結構間空いてるんだね…。 ルージュ:仕方ないわよ。ライオンの仕事が急に忙しくなってしまったのだから。あぁ、電話で少し聞いたけれど、今回の成果はどうだったの? ライオン:パーフェクトだよ。最新鋭の戦闘機と戦車を売りつけ、さらに良い印象も植え付けてきた。近いうちにデカい金が入るぜ。 スケアクロウ:本当お疲れ様だよ、“黒獅子”(くろじし)。それにしても、帰りが二週間も遅れるほどのトラブルって、一体何があったんだい? オズワルド:あ、そっか…。確か、当初は二週間程度で帰ってくるはずだったんだよね…? ライオン:そうだ。…本当に色々あった…。ヒットマンには狙われる、他の企業が漁夫の利を狙ってくる、取引先は至急の追加発注をしてくる。挙句、俺の部下が二人同時に重大なミスをやらかしやがった。…それを全部リカバーしてたら気づけば二週間なんてとっくに過ぎ去っててな。心身ともに疲労困憊だ。帰ったらマッサージを頼みたいくらいだね。 ルージュ:ふふ、それは疲れるわね。お疲れ様。帰ったらゆっくり休んで頂戴。 ライオン:そうさせて貰う…、と、言いたいとこだが。それは「今日の仕事」が終わってから、だな…。 オズワルド:…今日の仕事? ウッドマン:―――お待たせー、買ってきたぞォー! 0:そこにウッドマンが戻って来る。両手で持つトレイの上にはジャンクフードのセットが四人分乗っている。今にも食べ物がトレイからこぼれそうだ。 スケアクロウ:…なんで一つのトレイに全員分乗せて持ってきたのさ、どうやって食べるのこれ? ウッドマン:え?だって同時に二つも三つも持てないじゃん? ルージュ:いやいや、一人で持ってこようとせずに私たちを呼べばよかったじゃない…。 ライオン:分けて運ぶって手もあったろう。 ウッドマン:あぁ…。あぁ? オズワルド:なんで納得してない顔…っ!? ウッドマン:いや、だってさ―――? オズワルド:(台詞を待たず)と、とりあえずそれ置いて、すぐ!怖いから…! ウッドマン:あ、はい。 0:トレイを置き席に座るウッドマン。 ライオン:…やれやれ。そういやお前さんは天然ボケ気質だったな…。 スケアクロウ:フフ。三枚トレイ貰ってくるね。 ルージュ:えぇ、お願い…。 0: 0: 0: ウッドマン:んんー!やっぱここのバーガーは格別だぁ。 オズワルド:おいしい…。 ライオン:そういや聞いたぜ“案山子”(かかし)。例の“ロミオ”と接触した場に“深淵”(しんえん)が居たんだって?お嬢からずっと話を聞かされて気になってたんだ。どんな奴だった? スケアクロウ:まさに“深淵”さ。外見や仕草は紛うことなく子供なのに、いざ話せば考えていることが全然わからないし、瞳を見たら吸い込まれそうになる…。ルージュの言っていた通りだった。 ライオン:へぇ…。 オズワルド:そう考えると、そんなヤバい奴と半年もタッグを組んでた“鮮血”って、すごい、よね…。 ルージュ:まあ、一緒に行動はしてなかったけどね。私が悪知恵を働かせて作戦を練り、“深淵”がその戦闘能力で敵を狩る。なかなか統率のとれたコンビだったとは思うわ。実際その半年間は一切しくじらなかったし。 ウッドマン:そりゃあ、そんなの向かう所敵なしでしょ…。 スケアクロウ:そういえばずっと聞くの忘れてたけど、なんで“深淵”とのコンビすぐ解消しちゃったんだい? ウッドマン:あ、それ俺も気になってたやつ! ルージュ:それは簡単。あっちが【ジュリアス】との関係を急に切ったから。 ウッドマン:ありゃ、それはなんでです? ライオン:それも簡単だ。マフィアに付くよりも金がもらえて、より楽しく仕事ができる場所を見つけたから。まあそっから二年と経たずにマフィア組織【ジュリアス】は壊滅するわけだから、引き際は完璧だったと言えるだろうな。“深淵”がそれを見越していたのか偶然だったのかは知らんが。 スケアクロウ:なるほどー。そしてその新しく見つけた場所が…、 オズワルド:…うん。大富豪、“ダイヤのクイーン”の組織だね…。確か、当時彼女の側近をしていた腕利きの殺し屋が突然失踪して、その穴を埋めるように入った…、って経緯だったはず…。 ウッドマン:なるほどぉ…。気まぐれな“深淵”が今もそこに留まっているのを見ると、だいぶ楽しいんだろうなぁ、その組織。 ライオン:いや、どうだかねぇ…。商売相手として何度かあの女王サマとは舌戦を繰り広げたことがあるが、ありゃなかなかのクセモノだ。相当に頭がキレる上、金も無尽蔵なんじゃないかと思わせるほどに蓄えている。アレの下で働くとなったら相当ストレスが溜まるだろうな。オレだったら。 オズワルド:それは“黒獅子”が商売相手として苦手意識があるからなんじゃないかな…? ライオン:それもあるかもしれん。が、根本的にあの女とは合わない気がする。直感だが。 オズワルド:…なら合わないだろうね。 スケアクロウ:フフフッ…。でも確か、あの時“深淵”と一緒に居た“帽子屋”さんからも少し気が強いって聞いたね。その女王様。 ライオン:ん?“帽子屋”?そんなやつ聞いたことがねえが。 ルージュ:そりゃないわよ。あなたが南アに行ってる間に加わった新参者だもの。 ライオン:へぇ。そいつは賑やかになったな。…因みにもう一つ確認だが。“イモムシ”が殺されたってのはマジか。 オズワルド:残念ながら大マジです…。 ライオン:なら“チェシャ猫”は? ウッドマン:まさに今話してた“ダイヤのクイーン”のチームに拾われましたね。 ライオン:…なるほど。あのクソ猫の行き着く場所としちゃあ納得だ。そうか、この一か月の間にあの女のチームに二人も腕利きが入っていたか。 ルージュ:これであちらのチームの数はボスを含めて五人。少数精鋭ね。 スケアクロウ:あれ、そんなことを言ったら僕らも人数同じじゃない? ウッドマン:同じだけどこっちの方があっちより数は多いんじゃないかな。だってほら、俺たちには『LCTT』社がいるじゃん。 ライオン:オレの会社を頭数に数えるな。あれはただの後ろ盾。たまにこのチームのために部下を動かすのもお嬢に投資してもらってるからだ。基本はこのチームと会社は切り離してくれ。 ルージュ:後ろ盾にあるだけでも相当助かってるわ。これからもどうぞよろしくね。 ライオン:あぁ。もう無理を言われるのはゴメンだけどな。 ルージュ:うふふ…。 オズワルド:…でも、例え『LCTT』が傍にいてくれるとしても、“黄金の怪物”は脅威だよ。 ウッドマン:それは良くない考え方だぜオズくん。あの人に対抗しようとしちゃいけない。できる限り目を付けられないように争わない姿勢を貫かなきゃ。ねぇ。 スケアクロウ:そうそう。触らぬ神に祟りなし、ってやつだよ。 ライオン:…まぁ、あのジョーカーが“ダイヤのクイーン”のチームにいる限り、少なくともオレは関わらないといけないわけなんだがな。憂鬱だ。 オズワルド:そ、そうなるならもういっそ、“鮮血”が“深淵”にコンタクトを取って、協力関係を構築するのは…? ルージュ:私もそうしたいのは山々よ。もしうまいこと協力できたら百人力だし、さらなる資金を調達できるかもしれない。…でも、ねぇ…。きっと私が半年間で“深淵”に与えた印象、最悪なのよね…。 スケアクロウ:具体的には? ルージュ:組織の金を横領して部下に罪を擦り付けたり、優しいボスにねだってお金たくさんもらったり…、あと当時の私、組織の三番手だったから、ボスと“右腕”を潰す計画を考えて話してみたりね…。まぁ、それは説得されて止められて、私が潰すよりも早くボスと“右腕”は失踪してしまったけど。 ウッドマン:俺にねだってもらったらお金いっぱいあげちゃいますよルージュさん!臓器売買も肝臓までならします! ルージュ:気持ち悪いから今すぐ口を閉じて貰っていいかしら。 ウッドマン:えー、俺お喋りだからなぁ…。あっ!じゃあルージュさんのその食べかけのハンバーガーを俺の口に放り込んでくれれば喋れなくなりますよ!ほら、あーーーーーぁ、ちょっと待ゥヴオァッ………。 0:オズワルドがハンバーガーが入っていた紙の箱をウッドマンの喉の奥に勢い良く突っ込む。オズワルドは無表情だ。 ウッドマン:(次のオズワルドの台詞が終わるまでは呻いている) オズワルド:これで喋れないよね…?…呻き声うるさいな、なら窒息させちゃえばいいね…。 スケアクロウ:フ、アハハハッ!いいぞー、“魔法使い”!もっとやっちゃえー! ライオン:今のは殺されても仕方ないなァ、“木こり”。…しっかし、怖えなオズワルド。いつもはなよっちいのによ…。もしやこのチームのサイコ担当は三人だったか…?(小声) ルージュ:…まったく。やめなさい、オズワルド。こんなバカみたいなセクハラで私の手を汚すわけにはいかないわ。 オズワルド:“鮮血”が言うなら…。 0:オズワルドはハンバーガーの箱を引き抜く。 ウッドマン:ゴぇっ…、はぁ、はぁ、はぁぁ……。 スケアクロウ:お疲れさま、“木こり”。辛いとこ悪いんだけど速いとこナプキンで涎(よだれ)を拭いてほしいな。 ウッドマン:はっ、はぃ…。 ルージュ:……話を戻すけれど、まあそういうことよ。多分“深淵”が持ってる私の印象は最悪だろうし、今あちらと交渉はするべきでないと考えるわ。 オズワルド:…そっか。“ロミオ”と唯一あったことのある“帽子屋”もいるから、いい考えだと思ったんだけど…。それなら仕方ないな…。 ライオン:あ。…そうだった。しまった忘れていた。 スケアクロウ:どうしたの“黒獅子”。 ライオン:お前たち、今日はまだやれるか? ルージュ:…急ね。私は平気だけど。 スケアクロウ:僕も。何をやるのかは知らないけど、体力は残ってるよ。 オズワルド:ぼ、僕も。 ウッドマン:俺は、はぁ…。ちょっとキツイかな―――。 ライオン:(台詞を遮って)良し、全員平気だな。 ウッドマン:ちょ―――。 ルージュ:(ウッドマンの台詞なんて無いように)それにしても、どこに行くの? ライオン:あぁ、実はアフリカで思わぬ収穫があってな。少し潰したい場所がある。 スケアクロウ:へぇ。それは? ライオン:…とある情報屋とその護衛が利用している仮宿。 0:場面転換。 0:武装した五人。が車に乗っており、道を走っている。 0:既に日は落ちている。 ライオン:んじゃまあ、“魔法使い”。おさらいのために今分かっている“ロミオ”の情報を説明してくれ。 オズワルド:う、うん。正体不明の殺し屋、“ロミオ”。正確にはそもそも殺し屋なのかも不明。わかっていることは三つ…。一つ、“ロミオ”はどこかの組織に潜伏していて、“ダイヤのクイーン”の諜報をしていたこと。二つ、ただの一般人だった女性、“チキータ・マーキュリー”を殺しの道に堕とすほどのカリスマ性があること。…三つ、どんな組織なのか、戦闘力はどれくらいなのか、全てが不明だということ…。 ウッドマン:本当、ヤバい連中だなあそれだけ聞くと。 ライオン:だがしかし、この情報の争奪戦が常に巻き起こっている裏のセカイでそれほどまでに完璧な情報統制を敷けているというのが何よりのヒントだ。 ルージュ:なるほど。膨大な情報を操ることのできる何者かがバックにいる、って考えね。 スケアクロウ:でもさ、今日潰しに行くことはないんじゃないかな?別に明日や明後日だっていいわけでしょ、僕新作のゲームやりたかったんだけどー。 ライオン:悪いがそれはオレが駄目なんだ。明日は新商品の見学と部下のやらかしの揉み消し作業、明後日からは四日ほど英国に飛んでまた大きな商談がある。だから今日じゃないとまた一週間全員揃わない。…ま、このすべてをお前さんが代わってくれるってんなら明日や明後日でもいいぜ? スケアクロウ:…ゴメンナサイ。 ライオン:分かれば良い。そんなわけだお嬢。明日からも最低五日外す、悪いな。LCTTの連中をつけておくからそれで許してくれ。 ルージュ:大丈夫よ。今日も忙しいでしょうに、ごめんなさいね。 ライオン:問題ない。 ウッドマン:それで“黒獅子”さん。ここまでの話を繋げると、さっき言っていたとある情報屋が“ロミオ”側についていて、そいつが情報統制を敷いていると考えているってことでいいんですかね? ライオン:その通りだ。今から其処に奇襲をかけりゃあ、確実に情報を引き出せるだろう。 オズワルド:(悲しげな声で)そ、それに…、“怪物”が“ロミオ”の情報をまだ持ってなかったら、協力関係を結ぶいい交渉材料になるかもしれない、ね…。 スケアクロウ:おぉー、そりゃ僥倖(ぎょうこう)。だけど、なんでそんなに悲しそうなんだいオズ? ルージュ:(耳打ちするように)多分自分が情報担当なのにライオンに情報持ってこられて、しかも高確率でアタリだから自己嫌悪なのよ。…ほら、オズって結構ネガティヴシンキングなとこあるから…。 スケアクロウ:あぁ……。ま、まぁ!勿論オズの調べた情報も役に立ってるよ!ライオンがいろいろやり過ぎて立場なくなって「僕って本当に要るのかな、“黒獅子”が全部やればいいんじゃないかな…。」なんて思う必要ないさ! オズワルド:う、うぅぅー……。ごめん、なさいぃ……。 ルージュ:…コイツ。 ウッドマン:ハハハ。大丈夫だよオズくん。確かにライオンは情報入手も、君ができない戦闘も指揮も完璧なまでにできてしまうが、君には君の良さがある! オズワルド:……(ぶつぶつぶつ…)。 ウッドマン:あれ、オズくーん!?ルージュさん、今運転中につき後方確認できないんですけどオズくんどうなってます? ルージュ:念仏の如くネガティヴなこと言い続けてるわよ。 ライオン:ったく、これから戦闘だってのに重要な情報担当に精神的なトドメ刺してどうするんだ。 ウッドマン:えぇ、そんなつもりないんだけどな。俺はただ事実をォごぉっ!! 0:助手席のライオンからグーパンチを喰らうウッドマン。 ライオン:黙ってろ。今日はもう口を開くのは戦闘の時だけでいいからな。 ウッドマン:…ハイ。 ライオン:あー、いいか“魔法使い”。確かにお前さんはまだ未熟だが、逆に言えばそれは伸びしろ、可能性を大きく秘めているということだ。わかるか? オズワルド:……。 ライオン:オレたちとの実力差はお前さんが組織にいた頃ずっと引きこもってたことに起因する。それに“魔法使い”、お前はこのチームの中で一つ抜けて年下だ。オレから言わせりゃその年でマフィア組織の核ともいえる情報を担っていたのは誰にだって誇れることだし、まだ成長すると考えると危機感すら感じるレベルだ。もし何かの間違いでお前さんと敵対してしまったら、この上なくヤバい、とな。そこの人の心がない“木こり”と脳なしの“案山子”は知らんが、オレとお嬢はお前を信頼している。 オズワルド:…本当、に? ライオン:あぁ。そこの馬鹿どもがきっと本心でお前さんに対する不安を漏らしただろうからオレも本心を口に出している。もしもオレたちの才能が羨ましいというのなら学ぶといい。お前さんの才能ならきっと、五年もすりゃあ素晴らしい情報屋になっているだろうからな。 オズワルド:あ、ありがとう、“黒獅子”…。うん、期待を裏切らないように僕、頑張るね…っ!! ルージュ:…ふふふ。さあ、もうじき到着するわ。各員、すぐに状況を開始できるように準備。 スケアクロウ:了解ー。 0:場面転換。 0:情報屋の親衛隊基地の近くに車を止めた一行。 ウッドマン:はぁー、ああいう感じかあ。思ってたより立派だった。あの建物なんかちょっとお高目のホテルみたいだし。 ルージュ:確認だけど、今回の作戦はあの中にある“ロミオ”とそれに通じている情報屋のデータを持って帰ることなのよね? ライオン:そうだ。作戦の組み立てはオレの領分じゃないから任せるぜ、戦闘隊長さんよ。 ウッドマン:うぅ、こういう重要任務の時のプレッシャーやべぇんだよないつも…。 オズワルド:…そう言いつついつも完璧にこなすじゃん、“木こり”は…。 ウッドマン:それは君たち四人のおかげ。いつも危なっかしい場面があるのにみんながちゃんと冷静に対処してくれるおかげで、結果的に完璧になることがここ最近多いだけだぜ? スケアクロウ:フフ。本当、“木こり”ってセクハラ発言と天然ボケさえなければ完璧だよね。 ルージュ:うふふ、そうね。本当にやめてくれないかしら。 オズワルド:でも、それはそれで何か嫌だな…。アイデンティティの消失、というかなんというか…。“木こり”じゃなくなっちゃうというか…。 スケアクロウ:えぇ?それはあれかいオズ。「この人からセクハラと天然ボケ取ったらただの完璧超人が生まれちゃって面白くないだろ」って話? ライオン:はっ、しかしそいつは同意見だな。そっちの方が気持ち悪いと思うぜ。 ルージュ:うふふ…。“木こり”、言われてるわよ。 ウッドマン:へ?なんですか、ごめん聞いてなかった。 オズワルド:駄目だ、この人…。 0: 0: 0: ウッドマン:では、状況を開始するとしようじゃないか!各員、気を引き締めて怪我とかしないか細心の注意を払うように! スケアクロウ:はーい。 オズワルド:…ん。 ウッドマン:“案山子”くん、俺と共に前線で暴れ散らかす。オズくんはルージュさんと共に車で離れて待機し、情報伝達。もしも俺たちが手こずるようであれば狙撃場所(スナイピング・ポイント)に移動。ルージュさんがSRを持ちオズくんが観測手を務め、援護してくれ。 ルージュ:了解。 ウッドマン:そして“黒獅子”さん。俺たちと共に暴れ散らかすのは同じなんだけど、あなたはあまり目立たないように別ルートで侵入、俺たちが敵を引き付けている間に“ロミオ”につながるデータをかき集めてください。もしそちらが見つかり数で押し切られそうなときは離脱も視野に入れつつで! ライオン:OKだ。だが、大丈夫だろう。お前らはいつも派手にやってくれる。久々にサイココンビと共に戦場に立てて嬉しい限りだよ。 ウッドマン:なっ、サイコじゃありませんよ俺ー!?心臓を見るとちょーっとキュート・アグレッションに似た感情を覚えるだけで! スケアクロウ:僕もただ脳みそフェチなだけで! ライオン:はいはい。ほら、時間もねえんだから早く作戦開始の合図を出せ。 ウッドマン:ハイ。では最後に、建物の造形上小回りが利かないフィールドとなるので、昔やった抗争とは勝手が違うことを覚えておくように!…では全員、行動開始ィー! 0:場面転換。ルージュとオズワルドが車の中にいる。 オズワルド:…完璧な情報統制が敷けるほどの情報屋、か。 ルージュ:またそういうこと考えて。駄目よ? オズワルド:違うよ、ルージュ。…もし僕が成長してそいつみたいに情報を隠すことができるようになったら、絶対『LCTT』社も鮮血も動きやすくなるから、その…。さっき言われたみたいに、頑張って学ばなきゃ、って…。 ルージュ:…うふふふ。その意気よ、オズ。まあ、まずは何より場数を踏むことよ。応援してるわ。 オズワルド:うん…!…でも、今回の制圧作戦、ちょっと不安。あの建物は例の情報屋の仮宿なんでしょ…?なら、僕たちが奇襲を仕掛けることすら予見できているかもしれないし、そんな奴がわかりやすく情報を建物の中に置いているとは思えない。 ルージュ:そうね。相手はなかなかに厄介な相手。だけど大丈夫よオズ。…あの三人は、確実に情報を持って帰って来る。それに、仲間というのは信じるものよ。 オズワルド:…!そう、だね。ごめん。 ルージュ:うふふ。…さあて。あとどれくらいで連絡が来るかしら―――。 0:場面転換。 0:スケアクロウとウッドマンが建物の中で情報屋の護衛たちと戦闘している。 0:スケアクロウはノコギリ、ウッドマンはアサルトライフルを使っている。 ウッドマン:おらおらー、“心臓喰い”様のお通りじゃーい!道を開けろー!そして後でお前たちの心臓を焼いて食わせろォー! スケアクロウ:よい、しょっ、と!あはは!僕のホラー映画さながらのノコギリ捌きを見るがいいっ!鈍い痛みを感じて逝け! ウッドマン:くっ、案外人数多いなぁ!それに、予想はしてたけど速えぇっ!(物陰に身体を隠しつつ撃つ)よし、これで三人っ! スケアクロウ:ちょっと“木こり”!?ヘッドショットしたでしょ今!いい形の奴だったらっ、どうするのさっ! ウッドマン:仕方ないじゃんこいつら結構強いんだから!趣味嗜好より命大事にだぞ! スケアクロウ:まったく…、もうっ!!(敵に急接近し、ノコギリを首に当て大動脈を引き裂く)八つ当たりだっ!(その勢いでさらに周りにいた敵の首を薙ぐ) ウッドマン:え、なに今の!?魅せプ?! スケアクロウ:そんなつもりはない!…ほら、これでこの階の敵はラストっぽいから、早く上行くよ! ウッドマン:いやぁ、チョーサへーダンかと思ったぁ…。 0:さらに場面転換。単独行動中のライオン。 0:手には消音機付きのアサルトライフル。銃声が遠くから聞こえる。 ライオン:おうおう、派手にやってるねぇ。さて…。(手当たり次第に建物内の部屋に入っていく)どうやらここらは全部兵隊どもの部屋のようだな。…ま、入り込みやすい一階に重要な情報なんぞ隠してるわけないか。ん?……チッ。(耳につけている無線機に触れて)あー、こちら“黒獅子”。応答できるか“案山子”? スケアクロウ:はい、こちら“案山子”!何かあった? ライオン:あぁ。どうやらオレの裏口からの侵入はバレていたらしい。足音がこちらに向かってくる。数は三から五人。 スケアクロウ:マジか。やっぱりやるなあ、その情報屋。 ライオン:流石は“イーグル・アイ”と言ったところだな。という訳で少し上の階に行くのが遅れる。それだけだ。 スケアクロウ:あれ、増援寄こせとかそういう話じゃないの!? ライオン:どっかの馬鹿と違って俺は使いやすい武器を使ってるからな。五人くらい余裕でやれる。お前たちはさっさと上に行ってオレが情報を集めやすいようになるべく掃討しろ。伏兵が残らないようにな。 スケアクロウ:僕は馬鹿じゃな―――って、ごめん“黒獅子”。こっちにもいっぱい敵来たから応答できないかも! ライオン:こっちもそろそろ捕捉する。無事を祈るぜ。ソウ使い。 スケアクロウ:もう、あとで飽きるほどノコギリの良さ語ってやr(ライオンが通信を切り途中で台詞が切れる) ライオン:…しっかし、なんでオレの動きがバレたんだ?取引先の話じゃあ監視カメラやセンサーは機能していないと聞いていたんだが…。 0:部屋の死角に隠れるライオン。 ライオン:…フッ。なるほど。どうやら今日は大当たりのようだな。…さあて、久々の戦闘。できる限り楽しく、静かに派手に暴れるとするか!!さあ、オレの仕事疲れを吹っ飛ばしてくれッ!! 0:場面転換。再びスケアクロウとウッドマンのシーン。 0:殲滅してどんどん上のフロアへ上がる二人。今は敵の姿は見えない。 ウッドマン:“案山子”くん、“黒獅子”さん何階建てって言ってたっけココ! スケアクロウ:えー、覚えてないなぁ。でも、外見そこまで高くはなかったから五階建てくらいじゃないかな。 ウッドマン:よし、なら終わりは見えてるも同然だ、多分ここ四階だし!それに上に行くにつれてエネミーも減ってきたしな! スケアクロウ:うんうん。…でも、さっきから妙だよね。なんだかこちらの動きが読めているかのように兵が配置されている気がする。 ウッドマン:それは俺も気づいてた。全部何とかなってるからいいけど。もしかしたら例の情報屋さんがこの上で指示出してたりするのかもしんねえな。 スケアクロウ:なるほど。なら、さっさと身柄抑えないと、ぅぐっ…! 0:右肩を撃たれるスケアクロウ。後ろからの銃撃だ。 ウッドマン:ッ、伏兵か、くそっ…! 0:後ろに潜んでいた敵を蜂の巣にするウッドマン。 スケアクロウ:“木こり”、前からも来たよ! ウッドマン:マジかぁ!? スケアクロウ:…仕方ない、僕がかく乱する!その間に君は“鮮血”たちに連絡を! ウッドマン:頼んだ!くっ、なるほど一時的にエネミーが減ったのは油断を誘う為か!小癪な! 0:前からの敵を銃撃するウッドマン。敵は死角に隠れており当たらない。 ウッドマン:あぁもう面倒くせえ…!(無線機を使い)オズくん、ルージュさん、“黒獅子”さん聞こえます!?“案山子”くん右肩抜かれました!ちょっとまずいかもなんで応答求みまぁーすっ! ライオン:こちら“黒獅子”!悪いがこっちも手が離せん、人数は少ないが動きが洗練されてる、あちらさんの精鋭部隊のようだ!殺しきるのは容易だろうが時間がかかる! ウッドマン:マジでか!本当なかなかやるなアイツら…! ルージュ:こちらは“鮮血”!状況は把握したわ、どうするのが最善かしら! ウッドマン:…あんまりしてもらいたくないんですけど、ルージュさん、急いでSMを持ってこちらに乗り込み、“黒獅子”さんを援護したのちこちらに合流できますか!ちょっと増援が欲しいです! ルージュ:了解。 オズワルド:ぼ、僕は何か役立てないかな!なんでも、頑張るからっ! ウッドマン:お…、ハハ!ありがとうオズくん!そしたら、車でルージュさんを送った後、君は狙撃場所(ポイント)に移動、もし狙えそうならSRでの狙撃をお願いできるかな?確か、少し前からルージュさんにSRの練習をしてもらってるはずだから撃てるとは思うんだけど羨ましい! ルージュ:ちょっと、なんであの時は二人きりだったはずなのにどうしてあなた知ってるのよ!?…まあいいわ。オズ。お願いできる? オズワルド:う、うん…。頑張ります! ウッドマン:サンキューです!それじゃあまたすぐに会いましょう!ご武運を!(通信が切れる) 0:視点がルージュとオズワルドに移る。 ルージュ:よし。車出すわよ! オズワルド:りょ、了解…。 ルージュ:ふふ。オズの狙撃が後ろにあるなら、私も久々に好き勝手暴れられそうね。 オズワルド:そんな、僕教えてもらったばっかりだよ…? ルージュ:それでもあなた、飲みこみよかったじゃない。観測手がいないから大変だろうけど、あなたなら大丈夫。頼りにしてるわ。 オズワルド:う、うん…! 0:再び場面は変わりウッドマンとスケアクロウ。 0:未だ撃ち合いが続く。 スケアクロウ:あぁー、やっぱりいっつもイロモノな武器持ってると普通の武器使うとき変な気分になるな! ウッドマン:色物な自覚はあるんだ。予備のHGあってよかったね、ホントにっ…! スケアクロウ:そりゃあ扱いやすさで言えばナイフの方がはるかに上でしょー。 ウッドマン:ハハ!それを気付いたうえでノコギリ使ってるんだからホンット変人だよな!というか、俺のコードネーム“木こり”なのに、君の方がよっぽど木を切ってるような武器使ってんの面白くない!? スケアクロウ:その話もう五回目だよ聞くの…っ! ウッドマン:あれ、そうだっけぇ!? 0:その時、敵からの銃撃が止む。 スケアクロウ:…え、銃声止んだ…? 0:そして敵の方からこちらに歩いてくる影が二人。 ライオン:よぉ、待たせたな。 ウッドマン:“黒獅子”さんにルージュさん!いや、マジで助かります、会いたかったでーす!そしてルージュさん、俺頑張ったのでハグをしてよしよしを―――。 ライオン:(遮って)集中しような?隊長。 ウッドマン:ひぇ。 スケアクロウ:凄い。いつ“木こり”の顎に銃突きつけたの?見えなかった。 ルージュ:うふふ…。でも、今回はちゃんと頑張ってたから、帰ったら少しだけ甘やかしてあげる。 ウッドマン:マジでェーッ!?っしゃぁ、こんな死亡フラグへし折るくらいやったんぞォー! ライオン:んじゃ、オレはデータを集めるためにまた別行動だ。お嬢はそいつらについていってやれ。…そしてお前ら、気をつけろ。最上階にいるであろう情報屋はきっと銃の扱いにも長けている。 ウッドマン:その心は? ライオン:お前たちも気づいてたと思うが敵部隊の動きが妙に洗練され過ぎてた。それは戦況を見て的確な指示を出せる人間がいる証拠だ。オレたちの武器の性能も分かっているようだったしな。 ルージュ:なるほど。なら、余計に注意を払わなくてはね。 ライオン:じゃあオレはいろいろ漁って来る。最後にお嬢、あんまりその変態を甘やかすなよ。すぐ調子乗るからな。 ルージュ:うふふ、了解。そっちも伏兵に気を付けてね。 ライオン:はいはい。 スケアクロウ:それじゃあ、僕たちは最上階へ!“イーグル・アイ”とのご対面と行こう! 0:場面転換。社長室のような部屋で立っている人物が一人。 0:スマホを耳に当て、誰かと話しているようだ。 マキューシオ:うん、どうやら襲撃されたっぽい。まさかライオンが帰ってくる日に行動を起こすとは思ってなかったなあ。ホント参っちゃうよ。護衛も多分もうじき全滅しちゃうだろうし…。真面目にごめんね。 0:その部屋の扉を開け、銃を構える人物が一人。ルージュだ。 ルージュ:その携帯電話を捨ててもらおうかしら、情報屋さん。 マキューシオ:……聞こえてた?ごめんね、そういうことだから。うん。じゃあね、元気で…。(通話を切り、携帯を机の上に置く)やあ、“鮮血”!初めまして!まずはおめでとう、よく僕まで辿り着けたね! ルージュ:えぇ、優秀な仲間のおかげでね。 マキューシオ:“黒き獅子”。本名アルフレッド・ノワール、フランス人。武器売買会社『LCTT』のCEOで、【ジュリアス】が崩壊してから君と出会い、チームに参入。いや、本当あの人凄いよね。銃撃戦は強い、情報収集もできる、商いの才もある、味方の士気も上げられる…。逆に何ができないの?ってゆーやつ? ルージュ:…どうやら全部知っているようね。 マキューシオ:勿論。“ロミオ”がスケアクロウに接触した日の三日後には割れてたよ、君たち全員の素性。情報は命だってのにそんなんじゃ、命がいくつあっても足りないゾ? ルージュ:余計なお世話ね。そんなことを言ったら、あなたの情報統制にもかなり大きな抜け穴があったようだけど。“イーグル・アイ”、というのは名ばかりなのかしら? マキューシオ:あー、それについては言い訳させてほしい!いやさ。ライオンが南アで交渉をした人、ついこの間僕が情報を提供したトコだったんだよぉ。そしてその時、ちょうど護衛を雇ってる暇がなくて“ロミオ”についてもらってて、それでバレちゃったって話だね。まあ言い訳というか情報戦に負けた負け惜しみってやつだけどサ! ルージュ:ふふ。素直ね。 マキューシオ:それが売りだもの。因みに一応聞くけど、今ここにいないお仲間さんは他フロアにいたり残党処理してる感じ? ルージュ:だから私が直々にあなたと話しているのよ、“イーグル・アイ”。 マキューシオ:そうかぁ…。ハハ。なるほど。こりゃお手上げだね。そして君はきっとこう言うだろう。「死にたくなければ情報を吐け。」どう、合ってるかな? ルージュ:この状況でそれ以外の言葉が出てくると思う? マキューシオ:だーよねぇ。いやぁ、脅しのテンプレートみたいな言葉だ。良いよ。僕に拒否権はない。答えようじゃないか、いろいろと。まずはどんな情報をご所望だい? ルージュ:そうね。じゃあまず、あなたの名前を名乗ってもらおうかしら。 マキューシオ:ジョン・マケナリー。嘘でーす。昔は“フロイド”って名乗ってたんだけど…、今は“マキューシオ”って呼んで欲しいな。いかにも人物名って感じで呼びやすいでしょ? ルージュ:…あら。ならキャピュレットの甥もいるのかしら? マキューシオ:おぉー!お目が高いね、その通り。いるよ。 ルージュ:あなたたちはどんな組織なの? マキューシオ:神を信じつつ背き、隣人を死を持って救う集団。…ま、カッコよく言ってるけど要は殺し屋さ。 ルージュ:へぇ…。スケアクロウの話じゃ、一般人のお嬢さんを殺しの道に落としたって聞いたけど。 マキューシオ:はいはい、最近“ロミオ”が連れ帰ってきた子のことね。そうだなあ。…あいつは謂わば、“狂気”なんだよ。近くにいるだけで人が狂う。近くの人間が全部狂ってる“深淵”と似たような話だね。 ルージュ:なるほど。“ロミオ”はなぜそのお嬢さんを? マキューシオ:簡単な話、一目惚れしちゃったんだって。だから狂気に堕とした。それだけだってさ。 スケアクロウ:掃討終わったよー。 0:部屋にウッドマンとスケアクロウが入って来る。 ウッドマン:ルージュさん、お怪我などはありませんか…? ルージュ:大丈夫よ、ありがとう。 マキューシオ:こんばんは、ウッドマンにスケアクロウ。情報はかねがね。 スケアクロウ:…君が、“イーグル・アイ”。 マキューシオ:マキューシオでいいよ。僕の護衛、全部やられちゃった? ウッドマン:このフロアにいる奴と目についたやつは全員殺しきったけど。 マキューシオ:あぁ、そう?了解。それでルージュ。まだ聞きたいことはあるかい? ルージュ:…あなたたちの組織名は? マキューシオ:それは―――。っと。どうやら時間みたいだ、質問はここまで。そろそろお別れの時間だヨ。 スケアクロウ:お別れ、だって? マキューシオ:ああ。君たちは全員ここで死ぬ。 ウッドマン:何を言って―――。 0:そこに無線が入る。 ライオン:おいお前ら!!応答はいらない、今すぐこの建物から逃げろ!!この建物、全体に爆弾が積まれてやがる!!起爆スイッチはきっと“イーグル・アイ”が持ってる、早くしねえと全員爆死する!! ルージュ:なんですって!? マキューシオ:あはは!どうやらアルフレッドくんが今更気づいたかな?でも無駄だ、今から逃げてももう遅い!! 0:マキューシオがポケットから爆破スイッチを取り出す。 ウッドマン:あれを破壊するか打ち落とせ! マキューシオ:もう遅いってば!全員ここで死ぬんだヨ! スケアクロウ:くそっ!! 0:爆破スイッチが押されてしまう、その時だった。 マキューシオ:グぁッ!? 0:窓が割れ、一発の弾丸が起爆装置を持つマキューシオの腕を貫く。その衝撃でマキューシオはその装置を落としてしまう。 マキューシオ:ス、スナイパー、だって…!?まさか! 0: ライオン:…どうだ。 オズワルド:…アームショット、ヒット。 ライオン:っ…。ハハ…。マジで肝を冷やしたぜ。一歩間違えりゃお陀仏の状況でその機転、お手柄だよ“魔法使い”! 0: マキューシオ:あの陰気な情報屋が…!? ルージュ:うふふ…!ここまでね、マキューシオ!! ウッドマン:全員、射撃準備!間違っても殺すなよ! マキューシオ:っ、なんてこった、リサーチ不足だっ…!! 0:そう言ってマキューシオは割れた窓を開ける。 スケアクロウ:なっ、窓に…、まさか、飛び降りる気かい!? マキューシオ:あはは…。ホント完敗だ!爆破するつもりだったからこの建物には僕らの情報が沢山残ってる!調べるといい!だけど…、次は負けない!我ら、【セクト】の名に懸けて! 0:そう言ってマキューシオは窓から飛び降りる。 スケアクロウ:と、飛び降りちゃった。死んだ、のかな…? ルージュ:…いや、多分生きてるんじゃない。「次は負けない」、とか言ってたし。…【セクト】にマキューシオ。覚えたわよ。 スケアクロウ:というか、“ロミオ”と似た文句言って消えてったけど彼らは捨て台詞が好きなのかな…? ウッドマン:すげえ皮肉だね“案山子”くん。…はぁ。なんでだろ、めっちゃ疲れたな。 ルージュ:取り敢えず情報を集め次第すぐに帰って今日はもう休みましょうか…。私もカロリー消費えげつないわ。これじゃあガリガリになっちゃう。 ウッドマン:ルージュさんはどんな体系でも最っ高だから心配ないです! スケアクロウ:キモい。 ウッドマン:おぉぅ、疲れてるからかなんかショック…。 0:場面転換。 0:帰りの車。 ルージュ:みんな、今日は本当にお疲れ様!全員完璧な仕事ぶりだったわ! スケアクロウ:今回僕は逆に足引っ張った側だけどね…。負傷したの僕だけだし…。 ライオン:ハハ、まあいいじゃねえか。次から頑張れば。幸い全員命が繋がったんだからな。本当にお手柄だぜ、オズ。お前さんがあの時外していたらオレたちは爆発四散してた。 ウッドマン:そうだよ!あんな超精密な射撃土壇場でできるのマジですごい!これからも伸ばしていこうぜオズくん! オズワルド:う、うん…!でも、みんな、本当に無事でよかった…! ルージュ:うふふ。帰ったらご褒美の膝枕してあげましょうか、オズ。 オズワルド:ひざっ…?! ウッドマン:あれ、俺を甘やかすって話じゃなかったんですか!? ルージュ:気が変わったわ。 ウッドマン:えぇーーーー………。 ライオン:ハハ。だがやめておけお嬢。お前さんもだいぶ疲れてるだろ。全員がゆっくりと休むのが先決だ。…まあオレは休めないんだが、な。ハハハ。 スケアクロウ:眼が死んでる…。社畜だね、“黒獅子”も。 ライオン:こうでもしねえと裏のセカイで企業は生き残れねえんだよ…。ハァ。 オズワルド:じゃあ、せめて五日後までに【セクト】の情報をまとめて話ができるようにしておくよ…! ライオン:あぁ、是非に頼む。しっかし、帰ってきてすぐ行動してよかったぜ。おかげでこんなにも情報が手に入った。…これを使って“クイーン”と交渉する目途もついたしな。 ルージュ:そうね。…よし、次の作戦は“ダイヤのクイーン”との交渉になると予想されるわ!それまでに各員、休息を取ったりやるべきことをやっておくように! ウッドマン:はい!!(パワフルボイス) スケアクロウ:まだそんなデカい声出せる元気残ってたか、凄いなあ。 0: 0: ルージュ:(N)誇りを持った魔女は、今日も仲間と悪巧みをする。 ルージュ:(N)少女(ドロシー)がいなくても、私はきっと、鮮血に染まるの。 0: ルージュ:(N)ここでもマーダー、遊びましょう? 0: 0: 0:ルージュの艶やかな笑い声が響いている…。 0: 0: 0:―――Dusty Gate was not opened…?