台本概要

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タイトル 私の元カレは、プレゼントが苦手。
作者名 あ~るさん。  (@Rbeats4250)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男2、女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 『これは、私の元カレのエピソードトークです。』
10分~15分の男女2:1台本になります。
ラブストーリー、兼ミステリー風でもあります。ミステリーかどうかは分かりませんが、正統系ラブストーリーではないような気がします。

あまりしっかりと校閲してないのになんかあれば教えてください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
15 けい。優しい好青年、が不器用。 店員。
由梨 25 ゆり。恋愛経験がなく、圭との出会いでふさぎがちな自分が少しずつ変わっていった。 今回の利用者。
陽人 34 はると。緩い性格で典型的コミュ好き陽キャ。圭の友人であり、由梨に圭を紹介した。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
由梨:『私の彼氏は、プレゼントが苦手だった。 由梨:大学在学中に付き合い始め、約2年程経つけれど 由梨:彼からプレゼントらしきものを貰ったことがない。 由梨:私からプレゼントを渡そうとするけど、色々な理由をつけて、受け取った試しがない。 0: 圭:「マフラー?ごめん…母親が大量に作ってて、使わないともったいないってキレるのよ…」 圭:「チョコ?ごめん…俺、甘いものきつい体質でさ…」 圭:「花?ごめん…実家猫飼ってて、食うと危ないからさ…」 0: 由梨:他に女がいるんじゃないかとか、色々疑ったけど別にそういう訳じゃない。 由梨:理由を聞いても、それらしいことを言ってごまかしている。 由梨:ごまかしているのは分かっているけど、別にそれ以上問い詰めることはしなかった。 由梨:プレゼントを渡す以上に、私の事を愛してくれていたから。』 0: 由梨:ねぇ、来週バレンタインでしょ? 由梨:今年はどこ行く? 圭:んー…去年は夢の国行ったから… 圭:今年は温泉なんてどう?就活も近いしさ。ゆっくりしようよ。 0: 由梨:『誕生日だって、何かのイベントの日だって 由梨:何かしらのプレゼントではなく、どこか旅行に行ったり、デートをすることで楽しんでいた。 由梨:私には今まで恋愛経験がなくて、とても充実した日々だった。 由梨:彼とは大学も違うし、夢や目標も違う。 由梨:けど色々なことで支えてくれた。辛い就活も、バイトだって何でも頑張れるような気がした。 由梨:二年位経ったある日から、私たちは同棲を始めた。彼からの提案で、「防犯が気になって」なんて理由をつけて。 由梨:電話の時、デートの時の彼は優しいけれど、意外と不器用だった。料理も苦手で、家事も苦手で。今考えれば、「防犯が気になって」とか…苦し紛れにもほどがある。鈍感な私でもわかるあの照れ具合は、今でも少し笑える。 由梨:でも、彼が一緒にいるだけで、彼の失敗も大きな思い出になっていった。そんな生活が楽しかった。』 由梨:…ねぇ、これ見てくれません? 陽人:…なにこれ…カレー? 由梨:圭君が作ったシチューです。 陽人:うーわ。それ消しとけって。見つかったら怒られるぜ。 由梨:そうですかね…でも、面白くって… 由梨:『時折彼氏の相談に乗ってくれる友人さんがいる。小学生時代からの親友だそうで、色々なことを教えてくれる。好きな食べ物とか、癖とか。 由梨:そして、この友人さんの紹介があって、こうして彼氏と付き合うことが出来た。』 陽人:分かる。あいつ、イケメンで勉強できるくせにマジで家事系のことできねぇからさ。 陽人:でもさ、俺ほっとしてるよ…由梨ちゃんみたいな、可愛くて家事できる良い彼女ができてさー…悪い奴じゃないのよ?でも、ほら…なんか変なこだわりあるから。あいつ。 由梨:そんな……でも、不器用なのは分かります。いまだにプレゼントとかも渡されたことないですから… 陽人:大丈夫。渡す気概はあるのよ。色々相談も受けたしさ…結局決めきれなくて、渡せてないだけ。 由梨:そうなんですね…私、てっきり… 陽人:大丈夫だって。今こうして相談受けてるみたいに、あいつからも相談受けてんだから。今後どうしようとか、色々さ。 陽人:…俺付き合ってるわけでもねぇのに、労力大きくね? 由梨:あはは…本当に、お世話になってます。 由梨:『そうして色々上手くやりながら、日々は過ぎていった。毎日が新しくて、楽しい日々が。 由梨:どんどん日が過ぎて行って…そんなある日。 由梨:いつも帰ってくる時間になっても、帰ってこない。ラインをしても、電話をかけても、返事がなかった。 由梨:こんな事は初めてで、怖かった。そわそわして、じっと出来なかった。 由梨:夜中になって、握りしめていた携帯から着信音が鳴った。そこに書いてあった文字は、その友人さんだった。』 陽人:もしもし?今、家? 由梨:はいっ…あ、あの…圭君が返ってこなくて… 陽人:…はー…あの馬鹿…いつもの下手くそなごまかしだとは思ったけど、こういうことだったとはな… 由梨:え…? 陽人:由梨ちゃん、今から会えるかな?こんなことだろうと思ってさ…丁度近くにいるんだ。 由梨:は、はい… 由梨:『しばらくした後、友人さんは家にやってきた』 陽人:ごめんね。こんな夜遅くにね… 由梨:あ、あの…その…陽人君、圭君は…? 陽人:…マジで言ってないんだな… 陽人:…なぁ、これ読んでくれない? 由梨:…これは…手紙、ですか? 陽人:ああ。今日、あいつから預かってほしいって貰ったのさ。 由梨:圭君から…!? 由梨:『友人さんから渡された、彼氏からの手紙を開いた。綺麗に並べられた文字は、数か所濡れていたかのように滲んでいた。』 圭:「拝啓 圭:まず、黙って出てしまってごめん。 圭:僕は元々恋愛とか、そういったことが苦手で…何より、失うことが怖かった。 圭:でも、紹介を受けて君にあった時、その気持ちが揺らいだんだ。 圭:君と付き合えたら、きっと素敵な毎日になるだろうって。 圭:それは嘘じゃなくて、デートするときも通話するときも凄く楽しかった。 圭:けれど、君にいってないことが一つあったんだ。 圭:実は付き合い始めたあの日、アメリカへの留学が決まったんだ。 圭:2年もすれば、離れ離れになってしまう…だから、僕は決めたんだ。 圭:何も残さないように、君の前から去ろうって。 圭:君にプレゼントを渡さなかった理由も、貰わなかった理由もそれなんだ。お互いが、お互いのことを思い出さないように。 圭:僕は、この素敵な日々を忘れない。でも君には引きずってほしくない。前を向いてほしい。 圭:でも、ごめんね?最後に欲が出ちゃって同棲なんか提案しちゃったんだ。これじゃあ、忘れようにも忘れにくいよね。 圭:君と付き合えたこの2年は、本当に幸せだった。 圭:これからの君の人生が、幸せでありますように。 圭:敬具」 陽人:…と、いうわけなんだ。 由梨:それじゃあ…圭君は…アメリカに? 陽人:今日の昼、出てったよ。…あいつ、我儘ばっかで、俺にも言わず出ていきやがった。…多分、俺がそのこと知ったら由梨ちゃんに連絡すると思ったんだろうな。 由梨:そんな…私、…私っ…(涙ぐんで) 陽人:分かってくれよ。不器用なあいつなりに考えたんだろうよ。 陽人:…俺だって悲しいんだ。 由梨:陽人君…… 陽人:…昔からそうなんだよ、あいつは。何でも自己完結して、悩んで、迷って… 陽人:でも、悪い奴じゃない。だからこうして友達として付き合ってきた。 陽人:それによ。あいつ、今までで一番幸せそうだったんだぜ?由梨ちゃんだって…楽しかったろ? 由梨:『友人さんから言われた言葉通り、私も幸せだった。 由梨:でも、どうしても急にアメリカにいくなんて…その一文がどうしても納得いかなかった。 由梨:けれど、手紙のもう一文、何も残さずに去るというのはその通りだった。 由梨:彼から貰ったものもなく、彼がいた形跡だけが消えたように、振り返った部屋の中は綺麗だった。 由梨:これも、彼の優しさだと思う。思い出さないように、前を向けるように…』 陽人:…後、これ。手紙と一緒に受け取ったんだ。 由梨:…圭君から… 由梨:…これは、箱? 陽人:ずっと悩んでたんだがさ。きっと、今の彼女に必要だろうって。 陽人:開けてみなよ。あいつからの、最初で最後のプレゼント。 由梨:圭君、からの…プレゼント… 0:(箱の中を開ける) 由梨:…これは… 由梨:【ピンクのハンカチ】? 由梨: 0:(陽人が大きく手をたたく) 陽人:はい、終了。 陽人:お疲れさまでした。 由梨:……え、?あ、ぇ……あ… 陽人:ん、と…大丈夫かな?もしもーし、由梨さーん? 陽人:…オッケー。さてさて。少し携帯拝借しますよー… 由梨:…あ、れ、…私、…え…?(混乱) 陽人:結構撮ったなー…ちゃんと消しとけっていったのに。まぁ、気持ちはわかるんだけどさ…よし、削除。 陽人:後は連絡先も、通話履歴もー………あぁ、ついでに聞いといてくださいね。 陽人:貴方の口座からお金が少なくなっているのは、気分転換のために旅行を繰り返したりしたから。 陽人:そして、彼氏はアメリカへ行ったきり音信不通。前を向くという彼の言葉を叶えるために写真や連絡先はすべて削除。 陽人:間違いはないね? 由梨:…は、い…間違いないです… 陽人:よーし。…あぁ、安心して?その催眠もあと1時間したら馴染むからさ。 陽人:さてと。連絡先消して、写真消してー…忘れ物ー… 陽人:あ。あいつ…ヤルならゴミを持ち帰れっつったのに。おえ… 陽人:まぁ、これで契約は満了ということで…それじゃあ。 陽人:ご利用、ありがとうございました。 0:(陽人が車に戻って) 陽人:おいこの馬鹿野郎。 圭:帰ってきて即罵倒かよ。とりあえずお疲れ。 陽人:お疲れじゃねぇよ。おい、これ。 圭:あ、わりぃ。忘れてたわ。 陽人:てめぇちゃっかり最終日前に頂いてんじゃねぇよ。 圭:しょうがねぇだろ。契約内容だったんだからさ。 陽人:えーと、なんだっけ。 陽人:ご要望は「恋愛経験がないので作りたい」「元カレとのエピソードを作りたい」「彼氏とはやむを得ない形で別れたという過去を作りたい」 圭:「遊園地デート、温泉デートをしたい」そして、「処女卒業」。催眠状態を解除する合言葉は「ピンクのハンカチ」。 陽人:全部達成したの? 圭:おう。催眠や矛盾を思い出さないようにプレゼントもお土産も無し。 陽人:てか、改めてすげーシステムだよな。 陽人: 陽人:催眠を施し、それまでの過去を改ざんし、新たな過去を作り上げる。 陽人: 圭:あの由梨って子は俺と2年付き合ってるって思いこんでるだろうが、現実は同棲した1か月だけだもんな。 陽人:あの子どうだった? 圭:めっちゃいい子よ。マジで。そのまま付き合いたかったもん。 陽人:仕事だからしょうがないだろー?てかお前ラッキーじゃん。俺なんて3人連続微妙だったんだぜ? 圭:それは流石にドンマイだわw 圭:…ほんと、この仕事しててさ。ちゃんと彼女のプレゼントしっかりしようって思うもん。 陽人:あ、それ分かる。物の思い出って、しっかり心に残るものって思うもんな。 圭:そうそう。ほら、この前の事件。「この人、浮気してるんです!」ってイカれたストーカーの人が叫んでたやつ。 陽人:あぁ、あれ元利用者さんとクビになった先輩だろ? 圭:それ。ほんと気をつけないとな…もし尋問でもされても、絶対この仕組みについてはいうなよ。 陽人:言うかよ。何されるかわかったもんじゃねぇ。 圭:それなら良いんだ。 圭:さて。そろそろ俺らも店に戻ろうか。 陽人:そうだな。 0: 陽人:…店の名前は「グラジオラス」。 圭:花言葉は、「思い出」…そして、「忘却」。

由梨:『私の彼氏は、プレゼントが苦手だった。 由梨:大学在学中に付き合い始め、約2年程経つけれど 由梨:彼からプレゼントらしきものを貰ったことがない。 由梨:私からプレゼントを渡そうとするけど、色々な理由をつけて、受け取った試しがない。 0: 圭:「マフラー?ごめん…母親が大量に作ってて、使わないともったいないってキレるのよ…」 圭:「チョコ?ごめん…俺、甘いものきつい体質でさ…」 圭:「花?ごめん…実家猫飼ってて、食うと危ないからさ…」 0: 由梨:他に女がいるんじゃないかとか、色々疑ったけど別にそういう訳じゃない。 由梨:理由を聞いても、それらしいことを言ってごまかしている。 由梨:ごまかしているのは分かっているけど、別にそれ以上問い詰めることはしなかった。 由梨:プレゼントを渡す以上に、私の事を愛してくれていたから。』 0: 由梨:ねぇ、来週バレンタインでしょ? 由梨:今年はどこ行く? 圭:んー…去年は夢の国行ったから… 圭:今年は温泉なんてどう?就活も近いしさ。ゆっくりしようよ。 0: 由梨:『誕生日だって、何かのイベントの日だって 由梨:何かしらのプレゼントではなく、どこか旅行に行ったり、デートをすることで楽しんでいた。 由梨:私には今まで恋愛経験がなくて、とても充実した日々だった。 由梨:彼とは大学も違うし、夢や目標も違う。 由梨:けど色々なことで支えてくれた。辛い就活も、バイトだって何でも頑張れるような気がした。 由梨:二年位経ったある日から、私たちは同棲を始めた。彼からの提案で、「防犯が気になって」なんて理由をつけて。 由梨:電話の時、デートの時の彼は優しいけれど、意外と不器用だった。料理も苦手で、家事も苦手で。今考えれば、「防犯が気になって」とか…苦し紛れにもほどがある。鈍感な私でもわかるあの照れ具合は、今でも少し笑える。 由梨:でも、彼が一緒にいるだけで、彼の失敗も大きな思い出になっていった。そんな生活が楽しかった。』 由梨:…ねぇ、これ見てくれません? 陽人:…なにこれ…カレー? 由梨:圭君が作ったシチューです。 陽人:うーわ。それ消しとけって。見つかったら怒られるぜ。 由梨:そうですかね…でも、面白くって… 由梨:『時折彼氏の相談に乗ってくれる友人さんがいる。小学生時代からの親友だそうで、色々なことを教えてくれる。好きな食べ物とか、癖とか。 由梨:そして、この友人さんの紹介があって、こうして彼氏と付き合うことが出来た。』 陽人:分かる。あいつ、イケメンで勉強できるくせにマジで家事系のことできねぇからさ。 陽人:でもさ、俺ほっとしてるよ…由梨ちゃんみたいな、可愛くて家事できる良い彼女ができてさー…悪い奴じゃないのよ?でも、ほら…なんか変なこだわりあるから。あいつ。 由梨:そんな……でも、不器用なのは分かります。いまだにプレゼントとかも渡されたことないですから… 陽人:大丈夫。渡す気概はあるのよ。色々相談も受けたしさ…結局決めきれなくて、渡せてないだけ。 由梨:そうなんですね…私、てっきり… 陽人:大丈夫だって。今こうして相談受けてるみたいに、あいつからも相談受けてんだから。今後どうしようとか、色々さ。 陽人:…俺付き合ってるわけでもねぇのに、労力大きくね? 由梨:あはは…本当に、お世話になってます。 由梨:『そうして色々上手くやりながら、日々は過ぎていった。毎日が新しくて、楽しい日々が。 由梨:どんどん日が過ぎて行って…そんなある日。 由梨:いつも帰ってくる時間になっても、帰ってこない。ラインをしても、電話をかけても、返事がなかった。 由梨:こんな事は初めてで、怖かった。そわそわして、じっと出来なかった。 由梨:夜中になって、握りしめていた携帯から着信音が鳴った。そこに書いてあった文字は、その友人さんだった。』 陽人:もしもし?今、家? 由梨:はいっ…あ、あの…圭君が返ってこなくて… 陽人:…はー…あの馬鹿…いつもの下手くそなごまかしだとは思ったけど、こういうことだったとはな… 由梨:え…? 陽人:由梨ちゃん、今から会えるかな?こんなことだろうと思ってさ…丁度近くにいるんだ。 由梨:は、はい… 由梨:『しばらくした後、友人さんは家にやってきた』 陽人:ごめんね。こんな夜遅くにね… 由梨:あ、あの…その…陽人君、圭君は…? 陽人:…マジで言ってないんだな… 陽人:…なぁ、これ読んでくれない? 由梨:…これは…手紙、ですか? 陽人:ああ。今日、あいつから預かってほしいって貰ったのさ。 由梨:圭君から…!? 由梨:『友人さんから渡された、彼氏からの手紙を開いた。綺麗に並べられた文字は、数か所濡れていたかのように滲んでいた。』 圭:「拝啓 圭:まず、黙って出てしまってごめん。 圭:僕は元々恋愛とか、そういったことが苦手で…何より、失うことが怖かった。 圭:でも、紹介を受けて君にあった時、その気持ちが揺らいだんだ。 圭:君と付き合えたら、きっと素敵な毎日になるだろうって。 圭:それは嘘じゃなくて、デートするときも通話するときも凄く楽しかった。 圭:けれど、君にいってないことが一つあったんだ。 圭:実は付き合い始めたあの日、アメリカへの留学が決まったんだ。 圭:2年もすれば、離れ離れになってしまう…だから、僕は決めたんだ。 圭:何も残さないように、君の前から去ろうって。 圭:君にプレゼントを渡さなかった理由も、貰わなかった理由もそれなんだ。お互いが、お互いのことを思い出さないように。 圭:僕は、この素敵な日々を忘れない。でも君には引きずってほしくない。前を向いてほしい。 圭:でも、ごめんね?最後に欲が出ちゃって同棲なんか提案しちゃったんだ。これじゃあ、忘れようにも忘れにくいよね。 圭:君と付き合えたこの2年は、本当に幸せだった。 圭:これからの君の人生が、幸せでありますように。 圭:敬具」 陽人:…と、いうわけなんだ。 由梨:それじゃあ…圭君は…アメリカに? 陽人:今日の昼、出てったよ。…あいつ、我儘ばっかで、俺にも言わず出ていきやがった。…多分、俺がそのこと知ったら由梨ちゃんに連絡すると思ったんだろうな。 由梨:そんな…私、…私っ…(涙ぐんで) 陽人:分かってくれよ。不器用なあいつなりに考えたんだろうよ。 陽人:…俺だって悲しいんだ。 由梨:陽人君…… 陽人:…昔からそうなんだよ、あいつは。何でも自己完結して、悩んで、迷って… 陽人:でも、悪い奴じゃない。だからこうして友達として付き合ってきた。 陽人:それによ。あいつ、今までで一番幸せそうだったんだぜ?由梨ちゃんだって…楽しかったろ? 由梨:『友人さんから言われた言葉通り、私も幸せだった。 由梨:でも、どうしても急にアメリカにいくなんて…その一文がどうしても納得いかなかった。 由梨:けれど、手紙のもう一文、何も残さずに去るというのはその通りだった。 由梨:彼から貰ったものもなく、彼がいた形跡だけが消えたように、振り返った部屋の中は綺麗だった。 由梨:これも、彼の優しさだと思う。思い出さないように、前を向けるように…』 陽人:…後、これ。手紙と一緒に受け取ったんだ。 由梨:…圭君から… 由梨:…これは、箱? 陽人:ずっと悩んでたんだがさ。きっと、今の彼女に必要だろうって。 陽人:開けてみなよ。あいつからの、最初で最後のプレゼント。 由梨:圭君、からの…プレゼント… 0:(箱の中を開ける) 由梨:…これは… 由梨:【ピンクのハンカチ】? 由梨: 0:(陽人が大きく手をたたく) 陽人:はい、終了。 陽人:お疲れさまでした。 由梨:……え、?あ、ぇ……あ… 陽人:ん、と…大丈夫かな?もしもーし、由梨さーん? 陽人:…オッケー。さてさて。少し携帯拝借しますよー… 由梨:…あ、れ、…私、…え…?(混乱) 陽人:結構撮ったなー…ちゃんと消しとけっていったのに。まぁ、気持ちはわかるんだけどさ…よし、削除。 陽人:後は連絡先も、通話履歴もー………あぁ、ついでに聞いといてくださいね。 陽人:貴方の口座からお金が少なくなっているのは、気分転換のために旅行を繰り返したりしたから。 陽人:そして、彼氏はアメリカへ行ったきり音信不通。前を向くという彼の言葉を叶えるために写真や連絡先はすべて削除。 陽人:間違いはないね? 由梨:…は、い…間違いないです… 陽人:よーし。…あぁ、安心して?その催眠もあと1時間したら馴染むからさ。 陽人:さてと。連絡先消して、写真消してー…忘れ物ー… 陽人:あ。あいつ…ヤルならゴミを持ち帰れっつったのに。おえ… 陽人:まぁ、これで契約は満了ということで…それじゃあ。 陽人:ご利用、ありがとうございました。 0:(陽人が車に戻って) 陽人:おいこの馬鹿野郎。 圭:帰ってきて即罵倒かよ。とりあえずお疲れ。 陽人:お疲れじゃねぇよ。おい、これ。 圭:あ、わりぃ。忘れてたわ。 陽人:てめぇちゃっかり最終日前に頂いてんじゃねぇよ。 圭:しょうがねぇだろ。契約内容だったんだからさ。 陽人:えーと、なんだっけ。 陽人:ご要望は「恋愛経験がないので作りたい」「元カレとのエピソードを作りたい」「彼氏とはやむを得ない形で別れたという過去を作りたい」 圭:「遊園地デート、温泉デートをしたい」そして、「処女卒業」。催眠状態を解除する合言葉は「ピンクのハンカチ」。 陽人:全部達成したの? 圭:おう。催眠や矛盾を思い出さないようにプレゼントもお土産も無し。 陽人:てか、改めてすげーシステムだよな。 陽人: 陽人:催眠を施し、それまでの過去を改ざんし、新たな過去を作り上げる。 陽人: 圭:あの由梨って子は俺と2年付き合ってるって思いこんでるだろうが、現実は同棲した1か月だけだもんな。 陽人:あの子どうだった? 圭:めっちゃいい子よ。マジで。そのまま付き合いたかったもん。 陽人:仕事だからしょうがないだろー?てかお前ラッキーじゃん。俺なんて3人連続微妙だったんだぜ? 圭:それは流石にドンマイだわw 圭:…ほんと、この仕事しててさ。ちゃんと彼女のプレゼントしっかりしようって思うもん。 陽人:あ、それ分かる。物の思い出って、しっかり心に残るものって思うもんな。 圭:そうそう。ほら、この前の事件。「この人、浮気してるんです!」ってイカれたストーカーの人が叫んでたやつ。 陽人:あぁ、あれ元利用者さんとクビになった先輩だろ? 圭:それ。ほんと気をつけないとな…もし尋問でもされても、絶対この仕組みについてはいうなよ。 陽人:言うかよ。何されるかわかったもんじゃねぇ。 圭:それなら良いんだ。 圭:さて。そろそろ俺らも店に戻ろうか。 陽人:そうだな。 0: 陽人:…店の名前は「グラジオラス」。 圭:花言葉は、「思い出」…そして、「忘却」。