台本概要
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タイトル | 『私立まごころ保育園、第1職員室、午後9時』 |
---|---|
作者名 | sazanka (@sazankasarasara) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
職場ではヤンチャさを隠し気味の保育士、「真奈子(マナコ)」さんが、イヴの夜に残業をするお話。 ―2021年12月24日― 或いは、『コドモ共和国』オトナside、M&E編その1 或いは『茶話会にティフィン・タイガーを』【ボーナス・トラック2】 181 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
真奈子 | 女 | 48 | まなこ。保育士。学生時代は派手グループ。 |
笑満 | 女 | 45 | えま。保育士。学生時代は清楚グループ。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
【モノローグ】(笑満):クリスマス・イヴに特別な思い出は無い。
【モノローグ】(笑満):小さい頃に連れられて行ったミサでも、遠くアメリカの地の七色に煌(きら)めくイヴでも、私の心はどこか逸(はぐ)れて、地に足が着かない心地だったけれど。
【モノローグ】(笑満):聖夜の浮ついたイルミネーションを抜けて、薄ぼけた蛍光灯の下、誰かの為に手を動かしているだろうあの人の元へ、車を飛ばす。
【モノローグ】(笑満):何かをしてあげたいと思う気持ちは、わたしには蜂蜜の味がする。
0:タイトルコール。
真奈子:『私立まごころ保育園、第1職員室、午後9時』
0:【間】
【モノローグ】(真奈子):保育士には聖夜もイヴもありゃしネー。
【モノローグ】(真奈子):……盆と正月は、ある時はあるケド。
【モノローグ】(真奈子):むしろ年末はゲロい。
【モノローグ】(真奈子):「師走なんだから先生は走らなきゃ」、って、ウチが新任の頃に言いやがった主任のおばはんは、リウマチが痛ェとかで先に帰った。
【モノローグ】(真奈子):てか、帰ってもらった。
【モノローグ】(真奈子):いっつも無理しすぎるあの人には、明日のクリスマス会でがっつりサンタかましてもらわにゃダシ。
【モノローグ】(真奈子):てか何でだよ、おばはんサンタ。
真奈子:やば……。マジで終わんのコレ……。
【モノローグ】(真奈子):全員分のサンタ帽と、デカい靴下に名前付け。
【モノローグ】(真奈子):しかも刺繍で!
【モノローグ】(真奈子):最終ツリーに取り付けなきゃだから家でもやれネー。
【モノローグ】(真奈子):人の居ない保育園の、職員室は寒かった。
真奈子:うゥ……っ、ミルクティーがぶ飲みしてトイレ近ェ……っ。
真奈子:もーヤだマジ……。
【モノローグ】(真奈子):夜の保育園のトイレはマジで怖ェ。
【モノローグ】(真奈子):子どもの描いた壁の絵もまるでバケモンだし。
【モノローグ】(真奈子):直んねー癖の貧乏揺すりが始まった辺りで、
【モノローグ】(真奈子):する筈のナイ声がした。
笑満:(しゃがれた作り声)
笑満:遊勢(ゆぜ)先生、順調ですかぁ。
真奈子:(手が止まり、ビクリと身を起こし)
真奈子:はァ!?
真奈子:えっ、あ、へっ?
真奈子:(努めて上品な声にセッティングし)
真奈子:は、はぁい。何とか間に合いそうですぅ。
真奈子:しゅ、主任……?
笑満:ふっふっふ……。
笑満:そーです。主任ですぅ……。
真奈子:…………。
真奈子:おいコラ、スザキ。
笑満:……えへ。
笑満:バレちゃいましたぁ。
【モノローグ】(真奈子):おばはんボイスはいつもの甘ったるい声に変わって。
【モノローグ】(真奈子):ドアの影から、ピンクのダウンコートを着た、ゆるふわパーマの女が現れた。
【モノローグ】(真奈子):同じクラス担任の、洲崎(すざき)。
【モノローグ】(真奈子):ウチの頭痛のタネだ。マジで、ガチの方のヤツ。
笑満:もぉ、二人の時は笑満(エマ)って呼ぶ約束でしょぉ。
真奈子:一回もしたトキねェわ、んな約束!
【モノローグ】(真奈子):同期採用の、1個上の女。
【モノローグ】(真奈子):男子&パパ共大喜び、女子&ママさん&女性保育士ピリ付くド天然。
【モノローグ】(真奈子):常にフワフワ、何考えてっかワカンネーゆるカワ先生。
【モノローグ】(真奈子):……だと、思ってた。
笑満:エマはマストとしてぇ。
笑満:わたしもこの機会に、マナって呼んでいい?
笑満:だいぶ譲歩して、二人の時でも真奈子ちゃんに留めて来たけど、もうこの際、
真奈子:呼ばねーから!
真奈子:んだよこの機会にって。あんたマジで距離感オカシーからな。
【モノローグ】(真奈子):コイツ最初の頃はまだ、猫カブってる方だった。
【モノローグ】(真奈子):いやウチも大概だけど!
【モノローグ】(真奈子):1回、変な流れで宅飲み(しかもサシ飲み!)してから、前にも増してネチャネチャ絡んで来やがる。
【モノローグ】(真奈子):初めからイタい女だと思ってたケド。
【モノローグ】(真奈子):甘かった。
【モノローグ】(真奈子):洲崎笑満(すざきえま)は、
【モノローグ】(真奈子):ヤバい女だ。
真奈子:何なんマジで……。
笑満:あぁ、最近二人になれなかったから、マナちゃんのその感じ久しぶりぃ。
笑満:ね、ね、もっと言ってぇ。
真奈子:ヤメロやマジでそのノリ。倍疲れっから。
笑満:えぇ〜。
真奈子:てか何しに来たん? 冷やかしなら帰って、マジで。
笑満:ツレないですねぇ、先生。
真奈子:コッチは朝から動きっぱなワケ。ブッ通しで準備だし。
笑満:わたしも準備やったもんっ。
真奈子:わかってっケド。
真奈子:天使様カードの色塗りはどーなってんのさ。
笑満:あぁ、アレ?
笑満:お家でやったらすぐだったぁ。
笑満:集中出来ると早いの、わたしっ。
真奈子:あっそ。ソレはマジでおつかれ。
真奈子:んじゃとっと明日に備えて、
笑満:エラいでしょぉ、えへへ。
笑満:撫でても良いよ、はいっ。
0:「どうぞ」、とばかりに頭が差し出され。
真奈子:…………。
真奈子:引っ込めなきゃマチ針刺す。
笑満:きゃ、酷ぉい。
真奈子:……はァーーーっ。
真奈子:マジで遊びに来たんなら帰れって。
真奈子:大人コドモの世話してる余裕ネーから、ガチで。
笑満:チガうよぉーだ。
笑満:なんとなんと、独り頑張ってる真奈子先生の、助っ人アンド陣中見舞いに来たのでしたぁ。
笑満:ほーら。じゃじゃぁーん。
0:携えてきたバスケットと魔法瓶を差し出す笑満。
真奈子:……ナンか場違いなカゴ持ってんなーとは思ってたケド。
真奈子:ピクニックじゃネーから。
笑満:えっとねーっ。
笑満:最初は寒いからスパイスカレーにしようと思ったんだけど。
笑満:最近凝ってるって言ったよね? 「ギリィカ」っていう海外のメーカーのオールスパイスが、
真奈子:クリスマス当日に職員室エスニック感漂ってたらヤベーだろが。
笑満:と思って、シュリンプフライのサンドウィッチにしてみましたぁ。
笑満:たまたま冷凍室に海老が余ってから、ちょうど良くて、
真奈子:海老カツサンドだろ、要は。
真奈子:ていうかたまたま冷凍庫に海老入ってんのかよコワっ。
笑満:お料理好きだもぉんっ。
笑満:マナちゃんこそ、冷凍チャーハンとチャンポン麺ばっかり食べてるんでしょぉ。
笑満:絶対ダメ。今度お家に行った時に冷蔵庫、
真奈子:入れねーからな絶対っ!!
真奈子:デカい世話だしマジ。
笑満:お野菜摂ってないでしょー。
真奈子:「鬼○(おにまる)チャンポン」の野菜タップリ具合知らねーのかよ。
真奈子:だし給食子どもら一緒に食ってるし、野菜ジュースも飲むようにしてるし、
笑満:意味無いんだよ、アレって糖分ばっかり、
真奈子:イイってもう!
真奈子:食べるからソレ!
真奈子:ありがたくよォ!!
笑満:ほんと? やったぁっ。
笑満:えへへぇ。
【モノローグ】(真奈子):マジで疲れる。
【モノローグ】(真奈子):サシ飲み以来、二人の時はこんな調子だし。
【モノローグ】(真奈子):出来るだけ二人切りになりたくネー。
【モノローグ】(真奈子):……海老カツサンドは美味かった。マジで。
:
0:休憩。食後のひととき。
笑満:(魔法瓶から、持参したティーカップに紅茶を注ぎつつ)
笑満:コポコポコポ……、ほわぁ〜っ。
真奈子:擬音クチで言うのヤメて、マジで……。
笑満:あっ……。出ちゃってた?
笑満:えへへ、昔から無意識にやっちゃうの。
笑満:「フザケてるのか」、って怒られるから、気を付けてるんだけど、つい……。
真奈子:……癖みたいなもん?
笑満:うぅん。どうかな。
笑満:両親にも、変だから直しなさい、って、いつもねぇ。
真奈子:…………。
真奈子:(ズ、とカップの紅茶を飲み)
真奈子:じゃ、イイよ。
笑満:えっ?
真奈子:ワザとやってんじゃナイなら。
真奈子:ウチとの時は別に、
真奈子:……やってイイとかじゃナイけど、出てもナンも言わない。
笑満:…………っ。
真奈子:いや、ウチも貧乏揺すり治んないしさ。
真奈子:気ィ付けよーって頑張ってんなら尚更、
笑満:(感じ入り)
笑満:……マナ……っ!!
真奈子:ドサクサで縮めんなや!
真奈子:呼び方から入ったって距離は詰まんねーから!
笑満:もう大好きっ!
笑満:そういう所がっ!
0:ガバっ、と距離を詰める。
真奈子:ちょ、ちょ、おぅわっ!
真奈子:熱い茶ァ持ってるトキにホタエんなテメー!
笑満:(頬を擦り寄せ)
笑満:えへへ、えへへぇ。
真奈子:……子犬か、アンタは……。
真奈子:……せっかく後ちょっとの靴下にかかるだろーが。
笑満:ふっふっふぅ。
笑満:かなり進んだね。やっぱり1人より2人っ。
真奈子:どのクチ案件だし。いっつも単独プレーしてくれてよォ、
真奈子:……今日のコレは、借りだけどさ。
笑満:わたしとマナちゃんの間に、そんな水臭い言葉はありませぇん。
真奈子:むしろナンも無いから。無だから。単なる同僚だし。
【モノローグ】(真奈子):マジの本音だ。
【モノローグ】(真奈子):ま……、仕事の面ではチカゴロ、前よりちょっとだけ、動きやすくはなったケド。
笑満:「同僚」と書いてぇ……、
笑満:「パートナー」、でしょっ!
笑満:きゃぁっ、エマ大胆(だいたぁん)っ。
【モノローグ】(真奈子):…………ウチが慣れただけだな、絶対。
:
真奈子:……っしゃ、最後の1個っ!!
笑満:おおっ!
0:きゅ、と、拙いが丁寧な玉結び。
0:靴下と、赤い帽子たちは誇らしげ。
真奈子:…………っだァーーーっ。
真奈子:終わったぞマジで見たかコラァーーーーっ!!
笑満:おつかれさまぁーっ。ぱふぱふぱふーっ。
真奈子:あーーーーーー。
真奈子:もうマジで眼も指も肘も疲れたし……。
真奈子:一生裁縫やりたくネーーーー。
笑満:後は、イベント室のツリーに……、
真奈子:引っ掛けるだけだから後はヨユー。
真奈子:はァーーっ。
真奈子:ガチで地獄の入り口見たわ。終わんねーかと思った。
笑満:うっふふ。
笑満:ほんとに、おつかれさま。
0:湯気立つ紅茶を差し出す。
真奈子:(受け取りつつ)
真奈子:ん……、ごめん、ありがと。
0:2人、紅茶を啜り、同時に白い息を吐く。
真奈子:……マジで助かった。
真奈子:何かで返すから。
笑満:いいってばぁ。
笑満:ペアなんだから、
真奈子:や、返す。
真奈子:自分の受け持ちの仕事だし。
笑満:(やおら興奮し)
笑満:じゃ、じゃ、じゃあっ、お正月休みに二人で温泉っ、
真奈子:(遮って)物で返すからっ!!
真奈子:それかメシ奢るか!
笑満:(唇を尖らせ)
笑満:……ちぇーーーーっ。
笑満:あ、でもぉ、じゃ、ルーチェにちょっと前に入ったトコ、一緒に行ってくれる?
笑満:ラム肉に甘いソースがかかってるんだってぇ、
真奈子:……ナンでもイイよ。
真奈子:地獄の年末抜けたらな。
笑満:きゃぁ! やったぁ。
真奈子:クリスマス以降のギチギチヤバいわマジ……。
真奈子:休園式もスグだし。
笑満:ねーっ。
笑満:師走だし、先生は走らなきゃ、だね。
真奈子:……アンタも言われたんだ。
笑満:え?
真奈子:何でもネー。
真奈子:(立ち上がり)
真奈子:っさ、ちゃっちゃと靴下吊るして帰るべー。
笑満:(次いで立ち上がり)
笑満:あっ、あのね、終わってから言おうと思ってたんだけど、
真奈子:んんー? 何スかァ。
0:す、と、真奈子をまっすぐに見据え。
笑満:イベント室で、一回だけ連弾、合わせませんか。
真奈子:……、…………。
真奈子:……思い出さネーようにしてたのに。
【モノローグ】(真奈子):クリスマス会の恒例行事。
【モノローグ】(真奈子):担任2人の、連弾で合唱。
【モノローグ】(真奈子):マジの、マジで、
【モノローグ】(真奈子):クソのクソのクソっ!!
笑満:こないだの特訓でだいぶ、その、マシ、って言っても良いかなぁっていうぐらいにはなったから、大丈夫だと思うけど。
笑満:本番のピアノでやっておけると、不安も少しは……、
真奈子:ていうかさーーーーー。
真奈子:ウチは弾かなくてイイだろマジでっ。
真奈子:伝統かナンか知んないケドさーーーーっ。
真奈子:創立からそんな経ってネーだろこの園ーーーっ。
笑満:あんなに頑張って練習したんだから……、
真奈子:うるせェーーーーーもォ指動かねーーーー明日休むからマジーーーーっ。
笑満:もぉ、コドモみたいなこと言わないのっ。
真奈子:んぬおォォーーーーーーっ。
0:悶る声が遠ざかり、緩やかにフェードアウト。
0:薄く湯気立つカップが2客残され。
0:暗転。
【モノローグ】(笑満):救いの御子を気取るつもりは無いけれど。
【モノローグ】(笑満):諸人こぞりて。
【モノローグ】(笑満):明日はクリスマス。
0:【終】
【モノローグ】(笑満):クリスマス・イヴに特別な思い出は無い。
【モノローグ】(笑満):小さい頃に連れられて行ったミサでも、遠くアメリカの地の七色に煌(きら)めくイヴでも、私の心はどこか逸(はぐ)れて、地に足が着かない心地だったけれど。
【モノローグ】(笑満):聖夜の浮ついたイルミネーションを抜けて、薄ぼけた蛍光灯の下、誰かの為に手を動かしているだろうあの人の元へ、車を飛ばす。
【モノローグ】(笑満):何かをしてあげたいと思う気持ちは、わたしには蜂蜜の味がする。
0:タイトルコール。
真奈子:『私立まごころ保育園、第1職員室、午後9時』
0:【間】
【モノローグ】(真奈子):保育士には聖夜もイヴもありゃしネー。
【モノローグ】(真奈子):……盆と正月は、ある時はあるケド。
【モノローグ】(真奈子):むしろ年末はゲロい。
【モノローグ】(真奈子):「師走なんだから先生は走らなきゃ」、って、ウチが新任の頃に言いやがった主任のおばはんは、リウマチが痛ェとかで先に帰った。
【モノローグ】(真奈子):てか、帰ってもらった。
【モノローグ】(真奈子):いっつも無理しすぎるあの人には、明日のクリスマス会でがっつりサンタかましてもらわにゃダシ。
【モノローグ】(真奈子):てか何でだよ、おばはんサンタ。
真奈子:やば……。マジで終わんのコレ……。
【モノローグ】(真奈子):全員分のサンタ帽と、デカい靴下に名前付け。
【モノローグ】(真奈子):しかも刺繍で!
【モノローグ】(真奈子):最終ツリーに取り付けなきゃだから家でもやれネー。
【モノローグ】(真奈子):人の居ない保育園の、職員室は寒かった。
真奈子:うゥ……っ、ミルクティーがぶ飲みしてトイレ近ェ……っ。
真奈子:もーヤだマジ……。
【モノローグ】(真奈子):夜の保育園のトイレはマジで怖ェ。
【モノローグ】(真奈子):子どもの描いた壁の絵もまるでバケモンだし。
【モノローグ】(真奈子):直んねー癖の貧乏揺すりが始まった辺りで、
【モノローグ】(真奈子):する筈のナイ声がした。
笑満:(しゃがれた作り声)
笑満:遊勢(ゆぜ)先生、順調ですかぁ。
真奈子:(手が止まり、ビクリと身を起こし)
真奈子:はァ!?
真奈子:えっ、あ、へっ?
真奈子:(努めて上品な声にセッティングし)
真奈子:は、はぁい。何とか間に合いそうですぅ。
真奈子:しゅ、主任……?
笑満:ふっふっふ……。
笑満:そーです。主任ですぅ……。
真奈子:…………。
真奈子:おいコラ、スザキ。
笑満:……えへ。
笑満:バレちゃいましたぁ。
【モノローグ】(真奈子):おばはんボイスはいつもの甘ったるい声に変わって。
【モノローグ】(真奈子):ドアの影から、ピンクのダウンコートを着た、ゆるふわパーマの女が現れた。
【モノローグ】(真奈子):同じクラス担任の、洲崎(すざき)。
【モノローグ】(真奈子):ウチの頭痛のタネだ。マジで、ガチの方のヤツ。
笑満:もぉ、二人の時は笑満(エマ)って呼ぶ約束でしょぉ。
真奈子:一回もしたトキねェわ、んな約束!
【モノローグ】(真奈子):同期採用の、1個上の女。
【モノローグ】(真奈子):男子&パパ共大喜び、女子&ママさん&女性保育士ピリ付くド天然。
【モノローグ】(真奈子):常にフワフワ、何考えてっかワカンネーゆるカワ先生。
【モノローグ】(真奈子):……だと、思ってた。
笑満:エマはマストとしてぇ。
笑満:わたしもこの機会に、マナって呼んでいい?
笑満:だいぶ譲歩して、二人の時でも真奈子ちゃんに留めて来たけど、もうこの際、
真奈子:呼ばねーから!
真奈子:んだよこの機会にって。あんたマジで距離感オカシーからな。
【モノローグ】(真奈子):コイツ最初の頃はまだ、猫カブってる方だった。
【モノローグ】(真奈子):いやウチも大概だけど!
【モノローグ】(真奈子):1回、変な流れで宅飲み(しかもサシ飲み!)してから、前にも増してネチャネチャ絡んで来やがる。
【モノローグ】(真奈子):初めからイタい女だと思ってたケド。
【モノローグ】(真奈子):甘かった。
【モノローグ】(真奈子):洲崎笑満(すざきえま)は、
【モノローグ】(真奈子):ヤバい女だ。
真奈子:何なんマジで……。
笑満:あぁ、最近二人になれなかったから、マナちゃんのその感じ久しぶりぃ。
笑満:ね、ね、もっと言ってぇ。
真奈子:ヤメロやマジでそのノリ。倍疲れっから。
笑満:えぇ〜。
真奈子:てか何しに来たん? 冷やかしなら帰って、マジで。
笑満:ツレないですねぇ、先生。
真奈子:コッチは朝から動きっぱなワケ。ブッ通しで準備だし。
笑満:わたしも準備やったもんっ。
真奈子:わかってっケド。
真奈子:天使様カードの色塗りはどーなってんのさ。
笑満:あぁ、アレ?
笑満:お家でやったらすぐだったぁ。
笑満:集中出来ると早いの、わたしっ。
真奈子:あっそ。ソレはマジでおつかれ。
真奈子:んじゃとっと明日に備えて、
笑満:エラいでしょぉ、えへへ。
笑満:撫でても良いよ、はいっ。
0:「どうぞ」、とばかりに頭が差し出され。
真奈子:…………。
真奈子:引っ込めなきゃマチ針刺す。
笑満:きゃ、酷ぉい。
真奈子:……はァーーーっ。
真奈子:マジで遊びに来たんなら帰れって。
真奈子:大人コドモの世話してる余裕ネーから、ガチで。
笑満:チガうよぉーだ。
笑満:なんとなんと、独り頑張ってる真奈子先生の、助っ人アンド陣中見舞いに来たのでしたぁ。
笑満:ほーら。じゃじゃぁーん。
0:携えてきたバスケットと魔法瓶を差し出す笑満。
真奈子:……ナンか場違いなカゴ持ってんなーとは思ってたケド。
真奈子:ピクニックじゃネーから。
笑満:えっとねーっ。
笑満:最初は寒いからスパイスカレーにしようと思ったんだけど。
笑満:最近凝ってるって言ったよね? 「ギリィカ」っていう海外のメーカーのオールスパイスが、
真奈子:クリスマス当日に職員室エスニック感漂ってたらヤベーだろが。
笑満:と思って、シュリンプフライのサンドウィッチにしてみましたぁ。
笑満:たまたま冷凍室に海老が余ってから、ちょうど良くて、
真奈子:海老カツサンドだろ、要は。
真奈子:ていうかたまたま冷凍庫に海老入ってんのかよコワっ。
笑満:お料理好きだもぉんっ。
笑満:マナちゃんこそ、冷凍チャーハンとチャンポン麺ばっかり食べてるんでしょぉ。
笑満:絶対ダメ。今度お家に行った時に冷蔵庫、
真奈子:入れねーからな絶対っ!!
真奈子:デカい世話だしマジ。
笑満:お野菜摂ってないでしょー。
真奈子:「鬼○(おにまる)チャンポン」の野菜タップリ具合知らねーのかよ。
真奈子:だし給食子どもら一緒に食ってるし、野菜ジュースも飲むようにしてるし、
笑満:意味無いんだよ、アレって糖分ばっかり、
真奈子:イイってもう!
真奈子:食べるからソレ!
真奈子:ありがたくよォ!!
笑満:ほんと? やったぁっ。
笑満:えへへぇ。
【モノローグ】(真奈子):マジで疲れる。
【モノローグ】(真奈子):サシ飲み以来、二人の時はこんな調子だし。
【モノローグ】(真奈子):出来るだけ二人切りになりたくネー。
【モノローグ】(真奈子):……海老カツサンドは美味かった。マジで。
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0:休憩。食後のひととき。
笑満:(魔法瓶から、持参したティーカップに紅茶を注ぎつつ)
笑満:コポコポコポ……、ほわぁ〜っ。
真奈子:擬音クチで言うのヤメて、マジで……。
笑満:あっ……。出ちゃってた?
笑満:えへへ、昔から無意識にやっちゃうの。
笑満:「フザケてるのか」、って怒られるから、気を付けてるんだけど、つい……。
真奈子:……癖みたいなもん?
笑満:うぅん。どうかな。
笑満:両親にも、変だから直しなさい、って、いつもねぇ。
真奈子:…………。
真奈子:(ズ、とカップの紅茶を飲み)
真奈子:じゃ、イイよ。
笑満:えっ?
真奈子:ワザとやってんじゃナイなら。
真奈子:ウチとの時は別に、
真奈子:……やってイイとかじゃナイけど、出てもナンも言わない。
笑満:…………っ。
真奈子:いや、ウチも貧乏揺すり治んないしさ。
真奈子:気ィ付けよーって頑張ってんなら尚更、
笑満:(感じ入り)
笑満:……マナ……っ!!
真奈子:ドサクサで縮めんなや!
真奈子:呼び方から入ったって距離は詰まんねーから!
笑満:もう大好きっ!
笑満:そういう所がっ!
0:ガバっ、と距離を詰める。
真奈子:ちょ、ちょ、おぅわっ!
真奈子:熱い茶ァ持ってるトキにホタエんなテメー!
笑満:(頬を擦り寄せ)
笑満:えへへ、えへへぇ。
真奈子:……子犬か、アンタは……。
真奈子:……せっかく後ちょっとの靴下にかかるだろーが。
笑満:ふっふっふぅ。
笑満:かなり進んだね。やっぱり1人より2人っ。
真奈子:どのクチ案件だし。いっつも単独プレーしてくれてよォ、
真奈子:……今日のコレは、借りだけどさ。
笑満:わたしとマナちゃんの間に、そんな水臭い言葉はありませぇん。
真奈子:むしろナンも無いから。無だから。単なる同僚だし。
【モノローグ】(真奈子):マジの本音だ。
【モノローグ】(真奈子):ま……、仕事の面ではチカゴロ、前よりちょっとだけ、動きやすくはなったケド。
笑満:「同僚」と書いてぇ……、
笑満:「パートナー」、でしょっ!
笑満:きゃぁっ、エマ大胆(だいたぁん)っ。
【モノローグ】(真奈子):…………ウチが慣れただけだな、絶対。
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真奈子:……っしゃ、最後の1個っ!!
笑満:おおっ!
0:きゅ、と、拙いが丁寧な玉結び。
0:靴下と、赤い帽子たちは誇らしげ。
真奈子:…………っだァーーーっ。
真奈子:終わったぞマジで見たかコラァーーーーっ!!
笑満:おつかれさまぁーっ。ぱふぱふぱふーっ。
真奈子:あーーーーーー。
真奈子:もうマジで眼も指も肘も疲れたし……。
真奈子:一生裁縫やりたくネーーーー。
笑満:後は、イベント室のツリーに……、
真奈子:引っ掛けるだけだから後はヨユー。
真奈子:はァーーっ。
真奈子:ガチで地獄の入り口見たわ。終わんねーかと思った。
笑満:うっふふ。
笑満:ほんとに、おつかれさま。
0:湯気立つ紅茶を差し出す。
真奈子:(受け取りつつ)
真奈子:ん……、ごめん、ありがと。
0:2人、紅茶を啜り、同時に白い息を吐く。
真奈子:……マジで助かった。
真奈子:何かで返すから。
笑満:いいってばぁ。
笑満:ペアなんだから、
真奈子:や、返す。
真奈子:自分の受け持ちの仕事だし。
笑満:(やおら興奮し)
笑満:じゃ、じゃ、じゃあっ、お正月休みに二人で温泉っ、
真奈子:(遮って)物で返すからっ!!
真奈子:それかメシ奢るか!
笑満:(唇を尖らせ)
笑満:……ちぇーーーーっ。
笑満:あ、でもぉ、じゃ、ルーチェにちょっと前に入ったトコ、一緒に行ってくれる?
笑満:ラム肉に甘いソースがかかってるんだってぇ、
真奈子:……ナンでもイイよ。
真奈子:地獄の年末抜けたらな。
笑満:きゃぁ! やったぁ。
真奈子:クリスマス以降のギチギチヤバいわマジ……。
真奈子:休園式もスグだし。
笑満:ねーっ。
笑満:師走だし、先生は走らなきゃ、だね。
真奈子:……アンタも言われたんだ。
笑満:え?
真奈子:何でもネー。
真奈子:(立ち上がり)
真奈子:っさ、ちゃっちゃと靴下吊るして帰るべー。
笑満:(次いで立ち上がり)
笑満:あっ、あのね、終わってから言おうと思ってたんだけど、
真奈子:んんー? 何スかァ。
0:す、と、真奈子をまっすぐに見据え。
笑満:イベント室で、一回だけ連弾、合わせませんか。
真奈子:……、…………。
真奈子:……思い出さネーようにしてたのに。
【モノローグ】(真奈子):クリスマス会の恒例行事。
【モノローグ】(真奈子):担任2人の、連弾で合唱。
【モノローグ】(真奈子):マジの、マジで、
【モノローグ】(真奈子):クソのクソのクソっ!!
笑満:こないだの特訓でだいぶ、その、マシ、って言っても良いかなぁっていうぐらいにはなったから、大丈夫だと思うけど。
笑満:本番のピアノでやっておけると、不安も少しは……、
真奈子:ていうかさーーーーー。
真奈子:ウチは弾かなくてイイだろマジでっ。
真奈子:伝統かナンか知んないケドさーーーーっ。
真奈子:創立からそんな経ってネーだろこの園ーーーっ。
笑満:あんなに頑張って練習したんだから……、
真奈子:うるせェーーーーーもォ指動かねーーーー明日休むからマジーーーーっ。
笑満:もぉ、コドモみたいなこと言わないのっ。
真奈子:んぬおォォーーーーーーっ。
0:悶る声が遠ざかり、緩やかにフェードアウト。
0:薄く湯気立つカップが2客残され。
0:暗転。
【モノローグ】(笑満):救いの御子を気取るつもりは無いけれど。
【モノローグ】(笑満):諸人こぞりて。
【モノローグ】(笑満):明日はクリスマス。
0:【終】