台本概要
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タイトル | 尊しといわれるもの |
---|---|
作者名 | Kei (@kei20_) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(不問2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
動けなくした生餌を助けに来る者を狩る戦場での常套手段。もう勝敗が決まっている戦争中の一コマ。狙撃手のかみ合わない価値観の結末。 ト書きは読んでも読まなくても構いません。 最新版・利用についてはこちら:https://note.com/kei20_/ 135 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
A | 不問 | 26 | 傭兵狙撃手。生まれた時から戦場に身を置いている。 |
B | 不問 | 25 | 軍人狙撃手。軍学校を出て狙撃手になった。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
A:さて、ショーの始まりだ。存分にハンティングに励んで楽しもう。
B:……悪趣味ですね。
A:そうかね?基本だよ。餌を用意して、寄ってきた獲物を狩る。
B:何が基本ですか。私はこんな事をするのには――
A:それ以上は口にするな。物事は効率よく、口は災いのもと、時は金なり、だ。傭兵にとってはな。
B:私は傭兵じゃない。軍人だ。どうしてそんなに割り切れるんですか。何も子供を餌にすることはないじゃないですか。
A:戦争で一番厄介なのは何か知っているか?
B:何でも厄介でしょうよ。戦場では何もかもが命に関わる。
A:いいや、女子供が一番厄介なんだ。女は子供を産む。敵に育てられた子供は敵に育つ。
B:……でも餌は人形を抱いたただの罪もない子供だ。
A:誰が罪だと決める?
B:神が。
A:異教徒でもか。
B:異教は不完全な宗教なだけだ。我々の神こそが本当の神であることには変わりはない。
A:なるほど、信心深いんだな。お前は聖職者に向いている。お前があの子を育てるか?
B:引退したら孤児院にでも勤めますよ。ああ、それがいい。
A:ここでは引き金一つで敵を撃つお仕事を教えるのが孤児院だ。育てるのが敵か、味方に変わるだけだ。孤児の人生に大した違いはない。
B:戦争が終わると信じていないんですか。
A:いつから戦争が続いている?俺が物心ついた時に言葉より先に覚えさせられたのは、警報がなったときに静かにすることだった。お前は本土の出だったか。
B:ええ、本土で軍学校を出ました。
A:どうしてこの仕事を選んだ?
B:この国を、大切な人たちを守るためです。
A:国を守る、人を守るというのは敵を倒すことに他ならない。どんなに綺麗事を並べようとな。
B:だからと言ってどんな手を使ってもいいはずがない。国際条約でも決められている。こんな非人道的な――
A:ああ、そうだ。だが、そのルール上であれば非人道的ではないんだよ。
B:詭弁だ。
A:みんな何故そのルールに従うと思う?それは自分達よりはるかに大きい力に潰されないためだ。だが、ルールに従っているうちは本当の戦いじゃない。
B:戦争に本当も何もないでしょう。
A:いいや。本当の戦争というのは相手の正義に服従するか己の正義の勝利かの二択でしかない。
B:では服従を選ぶでしょう。もうここは私達が勝つことはわかっている。
A:それでは困るんだよ。捻じ曲げた正義など時間がたてば燻りだす。火種は残さず皆始末するのが禍根なく綺麗に物事が片付くんだ。……そら、また獲物が餌を助けに来たぞ。
B:こんなむごい事、許されるはずがない。……くそっ。地獄に堕ちるだろうな。あなたも。
A:地獄に酒と女がないのは勘弁して欲しいな。
B:煉獄に焼かれるチャンスすらもないでしょうよ。
A:火炙りがお好みか?白い鳩が飛ぶかもしれないぞ。お前は信心深いからな。
B:聖女を馬鹿にするのは止めてください。
A:そうしたのは信者だよ。神様は慈悲深いかもしれないぞ。聖人を殺しながらも皆罪を許されたんだろう?
B:時代が違う。皆追い詰められていた。
A:追い詰められた人間っていうのは何をするかわからない。窮鼠猫を噛む。
B:何ですか、それ?
A:追い詰められたネズミは猫にも噛みつくっていう東洋の格言だそうだ。
B:だとしてもこちらの優勢は変わらない。こんなことに意味があるとは思えない。
A:ネズミが冷静でいると思うか?落ち着いているのはショーを遠くから眺めている奴らだけだよ。
B:あなたには守るべき人はいないんですか。
A:まずは俺を守るべきだな。だから戦っているんだ。今日も旨い飯が食えるのが楽しみだよ。
B:あなたには誇りがないんですか。
A:少なくとも略奪や強姦はしていないさ。正規軍と違ってな。飢えた獣はよほど余裕があると見える。
B:そんなことをしているはずがない!
A:所詮は見えるところでやっているのはごっこ遊びに過ぎないのさ。新聞のエース達は見栄えもいい。ヒーローは汚れちゃいけないのさ。我々は正義の味方だからな。そのお仕事はヒーローの後始末だ。さて、もう終りか。
B:そして我々は敵にとってのヴィランですか。もう終わりなら、私はあの子を開放してきます。
A:ご自由に。言い忘れていたが。我々にとってのヴィランは我々の中からしか生まれない。お前のようなものをヴィランというんだよ。そして俺は正義の味方。では、さよならだ。
0:その時、人形を抱いた子供が爆風と共にかき消えた。
0:―――爆風と共に子供を抱き上げた兵士の姿がかき消えた。
0:――焦げ付いたメモより抜粋――
0:無垢が善であるならば。
0:教えが善であるならば。
0:赤子が無垢であるならば。
0:赤子は善であり。
0:赤子に教えは要らず。
0:無垢こそが教えとなる。
0:赤子さえも罪深いのであれば。
0:その罪は何処から来たものなのか。
0:贖う罪さえわからず。
0:どう償うというのか。
A:さて、ショーの始まりだ。存分にハンティングに励んで楽しもう。
B:……悪趣味ですね。
A:そうかね?基本だよ。餌を用意して、寄ってきた獲物を狩る。
B:何が基本ですか。私はこんな事をするのには――
A:それ以上は口にするな。物事は効率よく、口は災いのもと、時は金なり、だ。傭兵にとってはな。
B:私は傭兵じゃない。軍人だ。どうしてそんなに割り切れるんですか。何も子供を餌にすることはないじゃないですか。
A:戦争で一番厄介なのは何か知っているか?
B:何でも厄介でしょうよ。戦場では何もかもが命に関わる。
A:いいや、女子供が一番厄介なんだ。女は子供を産む。敵に育てられた子供は敵に育つ。
B:……でも餌は人形を抱いたただの罪もない子供だ。
A:誰が罪だと決める?
B:神が。
A:異教徒でもか。
B:異教は不完全な宗教なだけだ。我々の神こそが本当の神であることには変わりはない。
A:なるほど、信心深いんだな。お前は聖職者に向いている。お前があの子を育てるか?
B:引退したら孤児院にでも勤めますよ。ああ、それがいい。
A:ここでは引き金一つで敵を撃つお仕事を教えるのが孤児院だ。育てるのが敵か、味方に変わるだけだ。孤児の人生に大した違いはない。
B:戦争が終わると信じていないんですか。
A:いつから戦争が続いている?俺が物心ついた時に言葉より先に覚えさせられたのは、警報がなったときに静かにすることだった。お前は本土の出だったか。
B:ええ、本土で軍学校を出ました。
A:どうしてこの仕事を選んだ?
B:この国を、大切な人たちを守るためです。
A:国を守る、人を守るというのは敵を倒すことに他ならない。どんなに綺麗事を並べようとな。
B:だからと言ってどんな手を使ってもいいはずがない。国際条約でも決められている。こんな非人道的な――
A:ああ、そうだ。だが、そのルール上であれば非人道的ではないんだよ。
B:詭弁だ。
A:みんな何故そのルールに従うと思う?それは自分達よりはるかに大きい力に潰されないためだ。だが、ルールに従っているうちは本当の戦いじゃない。
B:戦争に本当も何もないでしょう。
A:いいや。本当の戦争というのは相手の正義に服従するか己の正義の勝利かの二択でしかない。
B:では服従を選ぶでしょう。もうここは私達が勝つことはわかっている。
A:それでは困るんだよ。捻じ曲げた正義など時間がたてば燻りだす。火種は残さず皆始末するのが禍根なく綺麗に物事が片付くんだ。……そら、また獲物が餌を助けに来たぞ。
B:こんなむごい事、許されるはずがない。……くそっ。地獄に堕ちるだろうな。あなたも。
A:地獄に酒と女がないのは勘弁して欲しいな。
B:煉獄に焼かれるチャンスすらもないでしょうよ。
A:火炙りがお好みか?白い鳩が飛ぶかもしれないぞ。お前は信心深いからな。
B:聖女を馬鹿にするのは止めてください。
A:そうしたのは信者だよ。神様は慈悲深いかもしれないぞ。聖人を殺しながらも皆罪を許されたんだろう?
B:時代が違う。皆追い詰められていた。
A:追い詰められた人間っていうのは何をするかわからない。窮鼠猫を噛む。
B:何ですか、それ?
A:追い詰められたネズミは猫にも噛みつくっていう東洋の格言だそうだ。
B:だとしてもこちらの優勢は変わらない。こんなことに意味があるとは思えない。
A:ネズミが冷静でいると思うか?落ち着いているのはショーを遠くから眺めている奴らだけだよ。
B:あなたには守るべき人はいないんですか。
A:まずは俺を守るべきだな。だから戦っているんだ。今日も旨い飯が食えるのが楽しみだよ。
B:あなたには誇りがないんですか。
A:少なくとも略奪や強姦はしていないさ。正規軍と違ってな。飢えた獣はよほど余裕があると見える。
B:そんなことをしているはずがない!
A:所詮は見えるところでやっているのはごっこ遊びに過ぎないのさ。新聞のエース達は見栄えもいい。ヒーローは汚れちゃいけないのさ。我々は正義の味方だからな。そのお仕事はヒーローの後始末だ。さて、もう終りか。
B:そして我々は敵にとってのヴィランですか。もう終わりなら、私はあの子を開放してきます。
A:ご自由に。言い忘れていたが。我々にとってのヴィランは我々の中からしか生まれない。お前のようなものをヴィランというんだよ。そして俺は正義の味方。では、さよならだ。
0:その時、人形を抱いた子供が爆風と共にかき消えた。
0:―――爆風と共に子供を抱き上げた兵士の姿がかき消えた。
0:――焦げ付いたメモより抜粋――
0:無垢が善であるならば。
0:教えが善であるならば。
0:赤子が無垢であるならば。
0:赤子は善であり。
0:赤子に教えは要らず。
0:無垢こそが教えとなる。
0:赤子さえも罪深いのであれば。
0:その罪は何処から来たものなのか。
0:贖う罪さえわからず。
0:どう償うというのか。