台本概要
88 views
タイトル | 毒罪1~痛み編~ |
---|---|
作者名 | あかおう (@akaouwaikasuki) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
|°ω°ᔨどくざい。毒は罪か救いか。 【声劇・配信での使用/連絡不要】 ★配信での投げ銭が発生する場合でも連絡不要です。 ★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK) →シナリオタイトル横の「つぶやく」を押してご自身のTwitterでツイートする。 →赤王(@akaouwaikasuki)メンションでご自身のTwitterでツイートする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートにいいねする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートをRT。 →その他思いやりある行動で大切にしてくださったら嬉しいです。 【禁止事項】 ★ライターの呼び捨て表記。 ★盗作・自分が書きましたと言う行為。 ★無断で一部分を切り取っての使用や投稿。 ★上記以外で赤王が非常識と判断した行動・表記。 以上をされた方は即ブロックさせて頂き、以降赤王のシナリオ使用を禁止とさせて頂きます。 ★設定上の男役は女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。 ★設定上の女役はオネェ等にしなければ男性が演じても構いません。 ★アドリブは物語のジャンルを超える程曲げなければいくらでも可。 【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】 連絡必須:許可が下りるまで使用しないでください。 88 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語りべ | 不問 | 12 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
語りべ:毒は作用により、三つの種類に分ける事ができる。
語りべ:「神経毒」「血液毒」「細胞毒」。
語りべ:種類で分けるならば二種類。トリカブトなどの「自然毒」と、クロロホルムなどの「人工毒」。
語りべ:これらの毒は人体になら害があるが、昆虫になら無害だったり。
語りべ:ゆえに、摂取しても「死ぬ」者と「死なない」者が発生する。
語りべ:・・・・さて。今話した、いずれにも属さない毒がある事をご存知だろうか。
語りべ:今日はその毒の話をしよう。
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語りべ:彼女はある日、自分の体の中で毒が作られている事に気が付いた。
語りべ:それは自らを蝕み(むしばみ)、滅ぼし、破滅の道しるべとなる事にも気が付かない。
語りべ:気が付いた時にはもう遅く、脳は思考を停止する。
語りべ:今にも腐り落ちるのではないかと思うほどに曇った目玉は、何かを見つめているようで、何も見つめてはいない。
語りべ:年季の入ったすりガラスに手のひらを当てても、そこから抜け出す事は不可能で。向こう数十年はこのままなのだと、思い知らされるだけなのだ。
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語りべ:彼女は、自分の体の中で作られている毒が、なぜ作られたのかを考えた。
語りべ:それは「痛み」だ。
語りべ:彼女は痛みから逃れるため、毒を体の中で生成し、そのまま摂取した。
語りべ:ゆっくりと毒を摂取すれば死なない。「痛み」から逃れて生きながらえるのではと。本能でわかっていたからだ。
語りべ:はたから見たら「なんてバカな女だ」と思われる行為だっただろう。
語りべ:しかしそうしてでも彼女は、ただただ、生きたかったのだ。
語りべ:やがて朽ち果てるとわかっていても。今この瞬間の激痛から逃れられるのなら・・・・と。
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語りべ:彼女の「痛み」のひとつは、「諦める」という彼女の悪い癖から始まる。
語りべ:他人の放った何気ない言葉を鵜呑みにし、自分の中で薄っぺらい板に張り付けていく。
語りべ:そうするとどうだろう。
語りべ:振り返れば、どうでもいい板キレが並ぶ虚ろ(うつろ)な空間。
語りべ:彼女は満たされず、置かれた板と板の隙間に座ってみる。
語りべ:ひたすらに積み重なっていく板。
語りべ:矢先から放たれる他人の言葉は、彼女をまた、虚ろ(うつろ)な空間へねじ込んでいく。
語りべ:その空間に逃げたはずなのに、板に埋もれて呼吸が出来なくなる。
語りべ:彼女は・・・・その場で毒を飲む決意をするしかなくなる。
語りべ:「諦め」て「痛み」から逃れていこうと。決意せざるを得なくなる。
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語りべ:彼女は、ただただ幸せでいたかった。
語りべ:しかし幸せは年月が経過すれば形を変えたりもする。
語りべ:彼女はその変わっていく形に付いていけなかったのだ。
語りべ:関わる人を変え、別の何かで幸せを作ろうとするも・・・もう同じ形にはならないのだと、思い知るだけだった。
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語りべ:彼女は、毒を飲んだ。
語りべ:毒は胃袋から小腸を通過し、細胞壁から血液へ周り、脳神経を目指す。
語りべ:その頃には全身にまんべんなく行き渡り、彼女を痛みから解放していく。
語りべ:・・・同時に、ただただ生きているだけの肉の塊(かたまり)になっているとも知らず。
語りべ:それほどに、彼女はこれまで幸せだったのだ。
語りべ:この先も、これまでどおり幸せでいられると信じて疑わなかったのだ。
語りべ:それほどに彼女は繊細だった。
語りべ:繊細と言えば聞こえは良いが、ただただ・・・弱かっただけなのだ。
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語りべ:毒には、少しずつ摂取すると死なないものがある。
語りべ:彼女は上手に毒を摂取し、生きる事だけを選んだ。
語りべ:結果・・・・、彼女は強くなった。あんなに弱く繊細だった彼女が、今では笑いながら毒を吐く。
語りべ:どんな毒にも順応し、どんな痛みも受け入れ、どんな諦めも出来る。
語りべ:それは人が強くなるという事ではなく。
語りべ:ただただ、罪を重ねていく事だとも知らず・・・・。
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語りべ:繊細だった頃の彼女のままだと思い、守ろうとする人もいたが、その頃にはもうそれは必要なく。
語りべ:毒を作り、毒を飲む事を繰り返し、彼女は大人になり。
語りべ:・・・・やがて老いていった。
語りべ:本当に欲しかった幸せがすぐそばにあるにも関わらず、現実を直視せず、恐れ、向き合わない事で、アイデンティティーを保っていたのだ。
語りべ:そんな日々もやがて、終わりがくる。
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語りべ:何気ない言葉を言い放って、彼女に毒を飲ませるキッカケを作ってきた相手からの、それは笑顔だった。
語りべ:その頃には彼女はシワクチャの老婆になっており、しかし心は、あの虚ろ(うつろ)な空間に居た少女のままだった。
語りべ:相手は自分が、彼女に毒を飲ませるほど痛みを与えていたなどと気が付くはずもなく。
語りべ:繊細な彼女だけが、ただひたすら数十年に渡って毒を飲んでいる事も知らず。
語りべ:彼女の手を握り、笑顔で「君と出会えて、いい人生だった」と。笑って逝ってしまった。
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語りべ:物が無く、豊かではなかった時代の話でもなく。
語りべ:今ほど、自分らしく生きる事がまかり通らない時代の話でもなく。
語りべ:分かり合いたかった人と、分かり合う事の難しさの先に、逃げるでもなく、ぶつかるでもなく。
語りべ:ただ毒を飲んで罪を重ねた「毒罪(どくざい)」を選んだ女の話。
語りべ:どこにでもこういった類(たぐい)の人間は存在し、強く見えたり幸せそうに見えたりする。
語りべ:その実(じつ)、酷く繊細で脆く(もろく)、本当に辛い時には誰も傷つけず。
語りべ:自らに毒を仕込むのだ。
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語りべ:人が毒を自ら飲むという事。
語りべ:それは一体どうしてなのか。
語りべ:なぜそれを選ぶのか。
語りべ:彼女なりの人生の答えは、相手の笑顔に罪悪感を残し、後悔の影を落とし。
語りべ:もう毒は飲むものかと。
語りべ:決意するのである。
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語りべ:さてさて、本日はここまで。
語りべ:次は何の毒罪(どくざい)を重ねる人間の話をしようか。
語りべ:それまでしばし、おいとまを・・・・。
語りべ:毒は作用により、三つの種類に分ける事ができる。
語りべ:「神経毒」「血液毒」「細胞毒」。
語りべ:種類で分けるならば二種類。トリカブトなどの「自然毒」と、クロロホルムなどの「人工毒」。
語りべ:これらの毒は人体になら害があるが、昆虫になら無害だったり。
語りべ:ゆえに、摂取しても「死ぬ」者と「死なない」者が発生する。
語りべ:・・・・さて。今話した、いずれにも属さない毒がある事をご存知だろうか。
語りべ:今日はその毒の話をしよう。
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語りべ:彼女はある日、自分の体の中で毒が作られている事に気が付いた。
語りべ:それは自らを蝕み(むしばみ)、滅ぼし、破滅の道しるべとなる事にも気が付かない。
語りべ:気が付いた時にはもう遅く、脳は思考を停止する。
語りべ:今にも腐り落ちるのではないかと思うほどに曇った目玉は、何かを見つめているようで、何も見つめてはいない。
語りべ:年季の入ったすりガラスに手のひらを当てても、そこから抜け出す事は不可能で。向こう数十年はこのままなのだと、思い知らされるだけなのだ。
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語りべ:彼女は、自分の体の中で作られている毒が、なぜ作られたのかを考えた。
語りべ:それは「痛み」だ。
語りべ:彼女は痛みから逃れるため、毒を体の中で生成し、そのまま摂取した。
語りべ:ゆっくりと毒を摂取すれば死なない。「痛み」から逃れて生きながらえるのではと。本能でわかっていたからだ。
語りべ:はたから見たら「なんてバカな女だ」と思われる行為だっただろう。
語りべ:しかしそうしてでも彼女は、ただただ、生きたかったのだ。
語りべ:やがて朽ち果てるとわかっていても。今この瞬間の激痛から逃れられるのなら・・・・と。
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語りべ:彼女の「痛み」のひとつは、「諦める」という彼女の悪い癖から始まる。
語りべ:他人の放った何気ない言葉を鵜呑みにし、自分の中で薄っぺらい板に張り付けていく。
語りべ:そうするとどうだろう。
語りべ:振り返れば、どうでもいい板キレが並ぶ虚ろ(うつろ)な空間。
語りべ:彼女は満たされず、置かれた板と板の隙間に座ってみる。
語りべ:ひたすらに積み重なっていく板。
語りべ:矢先から放たれる他人の言葉は、彼女をまた、虚ろ(うつろ)な空間へねじ込んでいく。
語りべ:その空間に逃げたはずなのに、板に埋もれて呼吸が出来なくなる。
語りべ:彼女は・・・・その場で毒を飲む決意をするしかなくなる。
語りべ:「諦め」て「痛み」から逃れていこうと。決意せざるを得なくなる。
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語りべ:彼女は、ただただ幸せでいたかった。
語りべ:しかし幸せは年月が経過すれば形を変えたりもする。
語りべ:彼女はその変わっていく形に付いていけなかったのだ。
語りべ:関わる人を変え、別の何かで幸せを作ろうとするも・・・もう同じ形にはならないのだと、思い知るだけだった。
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語りべ:彼女は、毒を飲んだ。
語りべ:毒は胃袋から小腸を通過し、細胞壁から血液へ周り、脳神経を目指す。
語りべ:その頃には全身にまんべんなく行き渡り、彼女を痛みから解放していく。
語りべ:・・・同時に、ただただ生きているだけの肉の塊(かたまり)になっているとも知らず。
語りべ:それほどに、彼女はこれまで幸せだったのだ。
語りべ:この先も、これまでどおり幸せでいられると信じて疑わなかったのだ。
語りべ:それほどに彼女は繊細だった。
語りべ:繊細と言えば聞こえは良いが、ただただ・・・弱かっただけなのだ。
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語りべ:毒には、少しずつ摂取すると死なないものがある。
語りべ:彼女は上手に毒を摂取し、生きる事だけを選んだ。
語りべ:結果・・・・、彼女は強くなった。あんなに弱く繊細だった彼女が、今では笑いながら毒を吐く。
語りべ:どんな毒にも順応し、どんな痛みも受け入れ、どんな諦めも出来る。
語りべ:それは人が強くなるという事ではなく。
語りべ:ただただ、罪を重ねていく事だとも知らず・・・・。
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語りべ:繊細だった頃の彼女のままだと思い、守ろうとする人もいたが、その頃にはもうそれは必要なく。
語りべ:毒を作り、毒を飲む事を繰り返し、彼女は大人になり。
語りべ:・・・・やがて老いていった。
語りべ:本当に欲しかった幸せがすぐそばにあるにも関わらず、現実を直視せず、恐れ、向き合わない事で、アイデンティティーを保っていたのだ。
語りべ:そんな日々もやがて、終わりがくる。
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語りべ:何気ない言葉を言い放って、彼女に毒を飲ませるキッカケを作ってきた相手からの、それは笑顔だった。
語りべ:その頃には彼女はシワクチャの老婆になっており、しかし心は、あの虚ろ(うつろ)な空間に居た少女のままだった。
語りべ:相手は自分が、彼女に毒を飲ませるほど痛みを与えていたなどと気が付くはずもなく。
語りべ:繊細な彼女だけが、ただひたすら数十年に渡って毒を飲んでいる事も知らず。
語りべ:彼女の手を握り、笑顔で「君と出会えて、いい人生だった」と。笑って逝ってしまった。
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語りべ:物が無く、豊かではなかった時代の話でもなく。
語りべ:今ほど、自分らしく生きる事がまかり通らない時代の話でもなく。
語りべ:分かり合いたかった人と、分かり合う事の難しさの先に、逃げるでもなく、ぶつかるでもなく。
語りべ:ただ毒を飲んで罪を重ねた「毒罪(どくざい)」を選んだ女の話。
語りべ:どこにでもこういった類(たぐい)の人間は存在し、強く見えたり幸せそうに見えたりする。
語りべ:その実(じつ)、酷く繊細で脆く(もろく)、本当に辛い時には誰も傷つけず。
語りべ:自らに毒を仕込むのだ。
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語りべ:人が毒を自ら飲むという事。
語りべ:それは一体どうしてなのか。
語りべ:なぜそれを選ぶのか。
語りべ:彼女なりの人生の答えは、相手の笑顔に罪悪感を残し、後悔の影を落とし。
語りべ:もう毒は飲むものかと。
語りべ:決意するのである。
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語りべ:さてさて、本日はここまで。
語りべ:次は何の毒罪(どくざい)を重ねる人間の話をしようか。
語りべ:それまでしばし、おいとまを・・・・。