台本概要
79 views
タイトル | 毒罪2~グロテスク編~ |
---|---|
作者名 | あかおう (@akaouwaikasuki) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
|°ω°ᔨどくざい。毒は罪か救いか。 【声劇・配信での使用/連絡不要】 ★配信での投げ銭が発生する場合でも連絡不要です。 ★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK) →シナリオタイトル横の「つぶやく」を押してご自身のTwitterでツイートする。 →赤王(@akaouwaikasuki)メンションでご自身のTwitterでツイートする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートにいいねする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートをRT。 →その他思いやりある行動で大切にしてくださったら嬉しいです。 【禁止事項】 ★ライターの呼び捨て表記。 ★盗作・自分が書きましたと言う行為。 ★無断で一部分を切り取っての使用や投稿。 ★上記以外で赤王が非常識と判断した行動・表記。 以上をされた方は即ブロックさせて頂き、以降赤王のシナリオ使用を禁止とさせて頂きます。 ★設定上の男役は女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。 ★設定上の女役はオネェ等にしなければ男性が演じても構いません。 ★アドリブは物語のジャンルを超える程曲げなければいくらでも可。 【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】 連絡必須:許可が下りるまで使用しないでください。 79 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語りべ | 不問 | 14 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
語りべ:毒は作用により、三つの種類に分ける事ができる。
語りべ:「神経毒」「血液毒」「細胞毒」。
語りべ:種類で分けるならば二種類。トリカブトなどの「自然毒」と、クロロホルムなどの「人工毒」。
語りべ:これらの毒は人体になら害があるが、昆虫になら無害だったり。
語りべ:ゆえに、摂取しても「死ぬ」者と「死なない」者が発生する。
語りべ:・・・・さて。今話した、いずれにも属さない毒がある事をご存知だろうか。
語りべ:今日はその毒の話をしよう。
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語りべ:彼女はある日、自分の体の中で毒が作られている事に気が付いた。
語りべ:それは自らを蝕み(むしばみ)、滅ぼし、破滅の道しるべとなる事にも気が付かない。
語りべ:気が付いた時にはもう遅く、脳は思考を停止する。
語りべ:今にも腐り落ちるのではないかと思うほどに曇った目玉は、何かを見つめているようで、何も見つめてはいない。
語りべ:年季の入ったすりガラスに手のひらを当てても、そこから抜け出す事は不可能で。向こう数十年はこのままなのだと、思い知らされるだけなのだ。
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語りべ:彼女は、自分の体の中で作られている毒が、なぜ作られたのかを考えた。
語りべ:それは「弱さ」だ。
語りべ:彼女は常に強くありたいと願う女性だった。
語りべ:しかし強くありたいと願えば願うほどに、自分の弱さに気が付く。
語りべ:嫌気がさす。もう壊れてしまいそうになる。でも、誰も責めたくない。
語りべ:それは自分が「弱い」から。
語りべ:誰も傷つけたくない。強くあらねば。支えねば。
語りべ:しかし彼女はそう思えば思うほど、壊れていく自分に気が付いた。
語りべ:彼女は自分の体の中で作られる毒を飲んだ。
語りべ:つたう涙をぬぐいもせず。夕暮れの道端に立ち尽くし。焦点の合わない視線のまま。
語りべ:彼女は強くなる為に、毒を飲み続けた。
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語りべ:私は、どれだけ孤独だっただろう。
語りべ:周りの人間など信用できるものか。そう毎日思って過ごしていた。
語りべ:ある日私の弱さが限界に達した時、ほとほと疲れた身体は、とうとう限界を超えて倒れこんだ。それでも仕事はやってくる。
語りべ:呆然とパソコンを見つめながら、打つキーボード。感情の無い心温まるメッセージが湯水のように不思議と湧いてくる。
語りべ:こびへつらう自分にも反吐が出そうになった時。
語りべ:あなたは私の目の前にあらわれた。
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語りべ:「吐き出せるなら、吐き出せばいい。毒ごと。」
語りべ:それは天使だったのか悪魔だったのか、今となってはわからない。
語りべ:私はあの人を、心が枯れる度に求め、海水のように返ってくる言葉を飲み続けた。
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語りべ:あの人は私を助けてくれた。こんな弱い私を、救ってくれた。
語りべ:なんて優しい人。恋に落ちるには十分な、そう、彼は私にとっての毒だった。
語りべ:私の中で作られるあなたへの感情。それは全て毒。蝕んで誰も幸せにしない。そう、私すらも。
語りべ:それでも私は「弱い」自分から逃げたかった。
語りべ:逃げられるなら喜んで、あなたにむしゃぶりついた。
語りべ:あなたはむしゃぶり付く私を優しく撫で、益々虜にしていった。
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語りべ:「ああ、愛している。自分の弱さが強さに変わっていく。何でもできる。」
語りべ:甘やかさず、生かさず、殺さず、あなたは私を必要としないように上手にあやしてくれた。
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語りべ:私にとって天国のようなその日々は、ある日突然地獄に変わる。
語りべ:あの人の前に、あの人の興味をそそる人物が現れた。
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語りべ:ああ・・・あの人が離れていく。飲んでも飲んでも喉が渇く海水のようなあなたは、まるで私との事は何もなかったかのように居なくなった。
語りべ:気が狂いそうになりながら探し続け、とうとう見つけたあなたは・・・、興味をそそる人物に骨抜きにされていた。
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語りべ:ああ、あなたの興味をそそるその人は、まるで銀色の月の様に静かな美しい人。
語りべ:私はその月を毎夜見上げる、グロテスクで大きなウジムシ。月の人はなんて美しい。自分ではとても適わない。あなただけでなく、沢山の人間が月の人の虜になっていく。
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語りべ:ウジムシのように、はいずりまわって。それでもあの人の笑顔が欲しくて、ウジムシのままあの人の身体にグルグルと巻き付いて愛を求めた。
語りべ:あの人は私を引きちぎり、地面に叩きつけ。一度もこちらを振り返らず、月の人の元へ今日も行ってしまった。
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語りべ:ああ・・・どうして。あんなに愛していたのに。あの人が憎い。殺してやりたい。
語りべ:いや、殺すだけじゃ足りない。下半身だけ刃物で何度も刺して刺して、月の人を呼ぶ声が出ないように声帯も引きずり出してやりたい。
語りべ:私だけを憎むように、喉と下半身の痛みを感じる度に、私の事ばかり考えるようにしたい。
語りべ:・・・・・でも。できなかった。
語りべ:私を呼ぶあの声。握るとあたたかく、乾いたあの人の手。大切で大切でどうしようもないあの人・・・・。
語りべ:例えもう、私の方を向いてくれなかったとしても。
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語りべ:彼女は、自分のグロテスクな思想を抑え込むために、自分の中で作られる毒を再度飲み。
語りべ:心を殺し。一切の連絡を断ち。いつか月の人のように美しくなりたいと願いながら、一人になれる場所で生きる事にした。
語りべ:・・・彼女が毒を飲んだ日から、彼女を見たものは居ない。
語りべ:生きているのか死んでしまったのか、それすら知る術ももうない。
語りべ:彼女は気が付いていたのだろうか。毒を飲まずとも、あの人を思う気持ちだけは、月の人より美しく気高く輝いていたことに。
語りべ:それに気が付けなかったのは、彼女の弱さなのか優しさなのか、常人には理解し難い深い愛なのか・・・。
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語りべ:さてさて、本日はここまで。
語りべ:次は何の毒罪(どくざい)を重ねる人間の話をしようか。
語りべ:それまでしばし、おいとまを・・・・。
語りべ:毒は作用により、三つの種類に分ける事ができる。
語りべ:「神経毒」「血液毒」「細胞毒」。
語りべ:種類で分けるならば二種類。トリカブトなどの「自然毒」と、クロロホルムなどの「人工毒」。
語りべ:これらの毒は人体になら害があるが、昆虫になら無害だったり。
語りべ:ゆえに、摂取しても「死ぬ」者と「死なない」者が発生する。
語りべ:・・・・さて。今話した、いずれにも属さない毒がある事をご存知だろうか。
語りべ:今日はその毒の話をしよう。
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語りべ:彼女はある日、自分の体の中で毒が作られている事に気が付いた。
語りべ:それは自らを蝕み(むしばみ)、滅ぼし、破滅の道しるべとなる事にも気が付かない。
語りべ:気が付いた時にはもう遅く、脳は思考を停止する。
語りべ:今にも腐り落ちるのではないかと思うほどに曇った目玉は、何かを見つめているようで、何も見つめてはいない。
語りべ:年季の入ったすりガラスに手のひらを当てても、そこから抜け出す事は不可能で。向こう数十年はこのままなのだと、思い知らされるだけなのだ。
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語りべ:彼女は、自分の体の中で作られている毒が、なぜ作られたのかを考えた。
語りべ:それは「弱さ」だ。
語りべ:彼女は常に強くありたいと願う女性だった。
語りべ:しかし強くありたいと願えば願うほどに、自分の弱さに気が付く。
語りべ:嫌気がさす。もう壊れてしまいそうになる。でも、誰も責めたくない。
語りべ:それは自分が「弱い」から。
語りべ:誰も傷つけたくない。強くあらねば。支えねば。
語りべ:しかし彼女はそう思えば思うほど、壊れていく自分に気が付いた。
語りべ:彼女は自分の体の中で作られる毒を飲んだ。
語りべ:つたう涙をぬぐいもせず。夕暮れの道端に立ち尽くし。焦点の合わない視線のまま。
語りべ:彼女は強くなる為に、毒を飲み続けた。
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語りべ:私は、どれだけ孤独だっただろう。
語りべ:周りの人間など信用できるものか。そう毎日思って過ごしていた。
語りべ:ある日私の弱さが限界に達した時、ほとほと疲れた身体は、とうとう限界を超えて倒れこんだ。それでも仕事はやってくる。
語りべ:呆然とパソコンを見つめながら、打つキーボード。感情の無い心温まるメッセージが湯水のように不思議と湧いてくる。
語りべ:こびへつらう自分にも反吐が出そうになった時。
語りべ:あなたは私の目の前にあらわれた。
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語りべ:「吐き出せるなら、吐き出せばいい。毒ごと。」
語りべ:それは天使だったのか悪魔だったのか、今となってはわからない。
語りべ:私はあの人を、心が枯れる度に求め、海水のように返ってくる言葉を飲み続けた。
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語りべ:あの人は私を助けてくれた。こんな弱い私を、救ってくれた。
語りべ:なんて優しい人。恋に落ちるには十分な、そう、彼は私にとっての毒だった。
語りべ:私の中で作られるあなたへの感情。それは全て毒。蝕んで誰も幸せにしない。そう、私すらも。
語りべ:それでも私は「弱い」自分から逃げたかった。
語りべ:逃げられるなら喜んで、あなたにむしゃぶりついた。
語りべ:あなたはむしゃぶり付く私を優しく撫で、益々虜にしていった。
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語りべ:「ああ、愛している。自分の弱さが強さに変わっていく。何でもできる。」
語りべ:甘やかさず、生かさず、殺さず、あなたは私を必要としないように上手にあやしてくれた。
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語りべ:私にとって天国のようなその日々は、ある日突然地獄に変わる。
語りべ:あの人の前に、あの人の興味をそそる人物が現れた。
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語りべ:ああ・・・あの人が離れていく。飲んでも飲んでも喉が渇く海水のようなあなたは、まるで私との事は何もなかったかのように居なくなった。
語りべ:気が狂いそうになりながら探し続け、とうとう見つけたあなたは・・・、興味をそそる人物に骨抜きにされていた。
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語りべ:ああ、あなたの興味をそそるその人は、まるで銀色の月の様に静かな美しい人。
語りべ:私はその月を毎夜見上げる、グロテスクで大きなウジムシ。月の人はなんて美しい。自分ではとても適わない。あなただけでなく、沢山の人間が月の人の虜になっていく。
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語りべ:ウジムシのように、はいずりまわって。それでもあの人の笑顔が欲しくて、ウジムシのままあの人の身体にグルグルと巻き付いて愛を求めた。
語りべ:あの人は私を引きちぎり、地面に叩きつけ。一度もこちらを振り返らず、月の人の元へ今日も行ってしまった。
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語りべ:ああ・・・どうして。あんなに愛していたのに。あの人が憎い。殺してやりたい。
語りべ:いや、殺すだけじゃ足りない。下半身だけ刃物で何度も刺して刺して、月の人を呼ぶ声が出ないように声帯も引きずり出してやりたい。
語りべ:私だけを憎むように、喉と下半身の痛みを感じる度に、私の事ばかり考えるようにしたい。
語りべ:・・・・・でも。できなかった。
語りべ:私を呼ぶあの声。握るとあたたかく、乾いたあの人の手。大切で大切でどうしようもないあの人・・・・。
語りべ:例えもう、私の方を向いてくれなかったとしても。
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語りべ:彼女は、自分のグロテスクな思想を抑え込むために、自分の中で作られる毒を再度飲み。
語りべ:心を殺し。一切の連絡を断ち。いつか月の人のように美しくなりたいと願いながら、一人になれる場所で生きる事にした。
語りべ:・・・彼女が毒を飲んだ日から、彼女を見たものは居ない。
語りべ:生きているのか死んでしまったのか、それすら知る術ももうない。
語りべ:彼女は気が付いていたのだろうか。毒を飲まずとも、あの人を思う気持ちだけは、月の人より美しく気高く輝いていたことに。
語りべ:それに気が付けなかったのは、彼女の弱さなのか優しさなのか、常人には理解し難い深い愛なのか・・・。
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語りべ:さてさて、本日はここまで。
語りべ:次は何の毒罪(どくざい)を重ねる人間の話をしようか。
語りべ:それまでしばし、おいとまを・・・・。