台本概要

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タイトル 朗読:雨上がりの紅茶
作者名 あかおう  (@akaouwaikasuki)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 |°ω°ᔨ

【声劇・配信での使用/連絡不要】
★配信での投げ銭が発生する場合でも連絡不要です。
★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK)
→シナリオタイトル横の「つぶやく」を押してご自身のTwitterでツイートする。
→赤王(@akaouwaikasuki)メンションでご自身のTwitterでツイートする。
→赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートにいいねする。
→赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートをRT。
→その他思いやりある行動で大切にしてくださったら嬉しいです。

【禁止事項】
★ライターの呼び捨て表記。
★盗作・自分が書きましたと言う行為。
★無断で一部分を切り取っての使用や投稿。
★上記以外で赤王が非常識と判断した行動・表記。
以上をされた方は即ブロックさせて頂き、以降赤王のシナリオ使用を禁止とさせて頂きます。
★設定上の男役は女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。
★設定上の女役はオネェ等にしなければ男性が演じても構いません。
★アドリブは物語のジャンルを超える程曲げなければいくらでも可。

【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】
連絡必須:許可が下りるまで使用しないでください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語りべ 不問 20
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
語りべ:「あの人が死んだら、あんたと一緒になれると思ったんだ!!」 語りべ:少し季節外れの”からみ織(おり)”の着物を、少し乱して女は叫んだ。 語りべ:”しん”と静まり返った喫茶店に響いた声は、まばらに座った他の客の注目を集めるのに十分だった。 語りべ:しかしそこは大都会。次の瞬間には、”我関せず”とばかりに、時がゆったりと流れ始めた。 0: 0: 語りべ:「ねえさん、座ってよ。」 語りべ:真っ赤な顔をした女とは裏腹に、穏やかな声の男は、目線を外へやりながらつぶやいた。 語りべ:女は座る。さて、この二人は巷(ちまた)でよくある不貞(ふてい)の仲であり、今その修羅場なのか。 語りべ:やや暇を持て余した老人が、男と女の行く末を横目で見つめている。 語りべ:しかし途端に、きつく睨んだ女の目線に慄き(おののき)、持っていた新聞紙の内側へあえなく逃げ込んだ。 0: 0: 語りべ:女はコーヒーをを”こくり”と一口味わうとつぶやいた。 語りべ:「おいしい。やっとココのコーヒーが飲めた。」 語りべ:「でも私はコーヒーよりも紅茶の方が好きなのよね。」 語りべ:「ねぇ知ってる?紅茶ってね、万病に効く東洋の秘薬って言われていたのよ。」 語りべ:独り言ではなかったのに、全く返事が返ってこないものだから、女は少しムッとして、目の前の男の目線を追った。 語りべ:男は鼻から深く息を吸い、口をすぼめて吐き出した。 語りべ:「最初から分かった上でお互い惹かれあったんだ。何も変わっていませんよ。」 語りべ:穏やかに微笑み、男は自分のコーヒーに口を付ける。 0: 0: 語りべ:先程女に睨まれて、あえなく新聞紙の内側へ避難した老人は、再び男女の行く末に聞き耳を立てていた。 語りべ:しかし男と女はそれ以降言葉を交わさず、夕暮れが連れてきた雨雲が来ても、席を立とうとはしなかった。 語りべ:夕げ(ゆうげ)の時間だとばかりに喫茶店の客が引いていく。 語りべ:暗くなった店内のテーブルひとつひとつに、店主がキャンドルを置いていく。 語りべ:窓に穏やかに打ち付ける雨を、男と女は見つめている。 語りべ:時折お互いに目が合うと、口角を上げて微笑む。ただそれだけの時間が過ぎて行った。 0: 0: 語りべ:女は帯揚げ(おびあげ)を少し摘まんで直し、うつむき加減に口を開いた。 語りべ:「まさかね、あの人がこんなに早く逝ってしまうとは思わなかった。」 語りべ:「夫婦は共に白髪まで。なんてね。バカバカしい。苦労続きで嫁いだハナから白髪だらけだったわよ。」 語りべ:少し伏し目がちになりながら、女は悲しそうに笑った。 語りべ:男は持っていた本の栞(しおり)を抜き取り、女に渡した。 語りべ:「ねえさん。僕は出会った頃からずっとねえさんを好きだったよ。」 語りべ:「でもねえさんも好きだったけど、にいさんも好きだった。どっちにも幸せでいて欲しかったんだ。それは嘘じゃない。」 語りべ:口から出るとんでもない話だが、男は終始(しゅうし)穏やかに続ける。 語りべ:「にいさんを出し抜いて、ねえさんを攫って(さらって)しまおうなんて、若かったからね、何度も考えたさ。」 語りべ:「でもまだ学生だった僕に何が出来るんだ。跡取りでもない、顔も良くない、金もないって毎日嘆いていた僕に、ねえさんに何が出来るんだって。」 0: 0: 語りべ:男は懐かしそうに、時々恥ずかしそうに語った。 語りべ:女は窓につたう雨粒を指でなぞりながら口を開く。 語りべ:「じゃあ、すぐにでも攫って(さらって)くれたら良かったじゃない。あんな地獄に生きるより、若くて真っ白なあんたに攫われ(さらわれ)たかった。何なら今でも・・・・!」 語りべ:女は少し悔しそうに下唇を噛んだ。 語りべ:男は栞(しおり)を女の手に優しく握らせた。 語りべ:「ねえさん。」 語りべ:男の手のぬくもりに、女は咄嗟(とっさ)に手を引っ込めた。 語りべ:「・・・面白かった?この本。全く、いつ返してくれるのかと思っていたら、まさか戦地にまで持っていくなんてね。」 語りべ:女は引っ込めた手を戻し、栞(しおり)を受け取った。 語りべ:くるくると栞(しおり)を、手遊びのように回して恥ずかしそうにする女。 0: 語りべ:男は少し頬(ほほ)を赤くし、得意げに本を撫でた。 語りべ:「この本はまだ最後まで読んでいませんから、返すわけにはいきませんね。衛生兵(えいせいへい)の忙しさを舐めてはいけませんよ?」 語りべ:「朝から晩まで野戦病院やら最前線やら。ひっきりなしに走り回って。ああ思い出したくもない思い出ばかりだ。」 0: 語りべ:「・・・でも。どんなにひもじくても、怖くても、腹に入れたこの本が支えてくれていた。」 語りべ:男は目を潤ませ(うるませ)、本をテーブルの上に置いた。 0: 語りべ:女はとっさに本の上に置いた男の手を、両方のてのひらで包んだ。 語りべ:「・・・私の事、忘れていなかったんでしょう?」 語りべ:女は既に泣いていた。男はもう片方のてのひらを女のてのひらの上に乗せ、ゆっくりと口をひらく。 0: 語りべ:「この地球上のどこかで、ねえさんも生きていると、ずっと思っていたよ。僕が生きる理由は、ねえさんが生きている事。それだけで十分だったんだ。」 0: 語りべ:女はてのひらをそのままに、声を殺して泣いた。 語りべ:「でも・・・だからってこうなった今・・・私を迎えに来てくれたわけではないのね・・・?」 語りべ:「また私を独りぼっちにするの?酷いじゃない。何年待っていたと思っているの・・・・?」 0: 語りべ:絞り出すような声は、時々雨音にかき消されていた。 語りべ:男は手のひらをほどき、そっと女の頭をなでた。 0: 語りべ:「ねえさん、どうかお元気で。」 0: 語りべ:まるで心臓が握りつぶされるような心の痛みを抑えて、男は柔らかく笑った。 0: 語りべ:男はゆっくり動き、喫茶店の入口へ移動した。 語りべ:店主がそれに気が付き、男に声をかけた。男は慣れた話しぶりで店主にこう返事をした。 0: 語りべ:「すみません。まだ車椅子に慣れていなくて。」 0: 語りべ:まるで学生のようにあどけない笑顔で、男は得意げに笑って見せた。 語りべ:男の両足はふとももから消えている。 語りべ:しかしこの時代、木製の車椅子は富裕層にしか使えぬ高級品ゆえ、男は得意げなのだ。 0: 語りべ:店主は残された女のテーブルへ行き、男のコーヒーカップをさげた。 語りべ:しばらくしてメニューには無いはずの温かい紅茶が女の目の前に運ばれてきた。 語りべ:店主はそっと女の耳元に話しかけた。 0: 0: 語りべ:女は”ぐい”と紅茶を飲み干し、店主に礼を言うと店を飛び出していった。 語りべ:濡れた道にくっきりと付いた車椅子の溝を辿り、女は裾(すそ)の泥汚れも気にせず走った。 語りべ:やがて格好悪く泥濘(ぬかるみ)に車輪を取られている男を見つけると、女は憎たらしく口を開いた。 0: 語りべ:「あら、どうやらお困りの様子ね。こんな雨上がりの夜なんて、誰も助けに来やしませんよ。せいぜい駄賃(だちん)目当ての家無しか。」 語りべ:気の強そうないつもの女の声に、男は溢れる涙をこらえ切れなかった。 語りべ:「ねえさん・・・、僕は・・・・僕は。」 語りべ:男が言い切らない内に、女は男を抱きしめ、背中をさすった。 語りべ:「私は何もいりませんよ。もうこんな年ですもの。本なんて薄っぺらい物を後生(ごしょう)大切になんてしないでください。」 語りべ:「さっき聞いていなかったようだから、もう一度言ってあげる。紅茶はね万病に効く東洋の秘薬なのよ!」 語りべ:男は訳も分からずポカンとしていた。女はとびきりの笑顔で続けた。 語りべ:「縁側(えんがわ)で日向ぼっこをしながら紅茶を飲みましょう?ずっとずっと。」 語りべ:泣きじゃくりながら、男は女の腕にしがみついた。 語りべ:女はあどけなく笑うと、男の車椅子を押した。 語りべ:いつの間にか大きな月が道を照らしている。 語りべ:鈴虫の鳴き声は静かに二人を見送っていった。 0: 0: 0:(おわり)

語りべ:「あの人が死んだら、あんたと一緒になれると思ったんだ!!」 語りべ:少し季節外れの”からみ織(おり)”の着物を、少し乱して女は叫んだ。 語りべ:”しん”と静まり返った喫茶店に響いた声は、まばらに座った他の客の注目を集めるのに十分だった。 語りべ:しかしそこは大都会。次の瞬間には、”我関せず”とばかりに、時がゆったりと流れ始めた。 0: 0: 語りべ:「ねえさん、座ってよ。」 語りべ:真っ赤な顔をした女とは裏腹に、穏やかな声の男は、目線を外へやりながらつぶやいた。 語りべ:女は座る。さて、この二人は巷(ちまた)でよくある不貞(ふてい)の仲であり、今その修羅場なのか。 語りべ:やや暇を持て余した老人が、男と女の行く末を横目で見つめている。 語りべ:しかし途端に、きつく睨んだ女の目線に慄き(おののき)、持っていた新聞紙の内側へあえなく逃げ込んだ。 0: 0: 語りべ:女はコーヒーをを”こくり”と一口味わうとつぶやいた。 語りべ:「おいしい。やっとココのコーヒーが飲めた。」 語りべ:「でも私はコーヒーよりも紅茶の方が好きなのよね。」 語りべ:「ねぇ知ってる?紅茶ってね、万病に効く東洋の秘薬って言われていたのよ。」 語りべ:独り言ではなかったのに、全く返事が返ってこないものだから、女は少しムッとして、目の前の男の目線を追った。 語りべ:男は鼻から深く息を吸い、口をすぼめて吐き出した。 語りべ:「最初から分かった上でお互い惹かれあったんだ。何も変わっていませんよ。」 語りべ:穏やかに微笑み、男は自分のコーヒーに口を付ける。 0: 0: 語りべ:先程女に睨まれて、あえなく新聞紙の内側へ避難した老人は、再び男女の行く末に聞き耳を立てていた。 語りべ:しかし男と女はそれ以降言葉を交わさず、夕暮れが連れてきた雨雲が来ても、席を立とうとはしなかった。 語りべ:夕げ(ゆうげ)の時間だとばかりに喫茶店の客が引いていく。 語りべ:暗くなった店内のテーブルひとつひとつに、店主がキャンドルを置いていく。 語りべ:窓に穏やかに打ち付ける雨を、男と女は見つめている。 語りべ:時折お互いに目が合うと、口角を上げて微笑む。ただそれだけの時間が過ぎて行った。 0: 0: 語りべ:女は帯揚げ(おびあげ)を少し摘まんで直し、うつむき加減に口を開いた。 語りべ:「まさかね、あの人がこんなに早く逝ってしまうとは思わなかった。」 語りべ:「夫婦は共に白髪まで。なんてね。バカバカしい。苦労続きで嫁いだハナから白髪だらけだったわよ。」 語りべ:少し伏し目がちになりながら、女は悲しそうに笑った。 語りべ:男は持っていた本の栞(しおり)を抜き取り、女に渡した。 語りべ:「ねえさん。僕は出会った頃からずっとねえさんを好きだったよ。」 語りべ:「でもねえさんも好きだったけど、にいさんも好きだった。どっちにも幸せでいて欲しかったんだ。それは嘘じゃない。」 語りべ:口から出るとんでもない話だが、男は終始(しゅうし)穏やかに続ける。 語りべ:「にいさんを出し抜いて、ねえさんを攫って(さらって)しまおうなんて、若かったからね、何度も考えたさ。」 語りべ:「でもまだ学生だった僕に何が出来るんだ。跡取りでもない、顔も良くない、金もないって毎日嘆いていた僕に、ねえさんに何が出来るんだって。」 0: 0: 語りべ:男は懐かしそうに、時々恥ずかしそうに語った。 語りべ:女は窓につたう雨粒を指でなぞりながら口を開く。 語りべ:「じゃあ、すぐにでも攫って(さらって)くれたら良かったじゃない。あんな地獄に生きるより、若くて真っ白なあんたに攫われ(さらわれ)たかった。何なら今でも・・・・!」 語りべ:女は少し悔しそうに下唇を噛んだ。 語りべ:男は栞(しおり)を女の手に優しく握らせた。 語りべ:「ねえさん。」 語りべ:男の手のぬくもりに、女は咄嗟(とっさ)に手を引っ込めた。 語りべ:「・・・面白かった?この本。全く、いつ返してくれるのかと思っていたら、まさか戦地にまで持っていくなんてね。」 語りべ:女は引っ込めた手を戻し、栞(しおり)を受け取った。 語りべ:くるくると栞(しおり)を、手遊びのように回して恥ずかしそうにする女。 0: 語りべ:男は少し頬(ほほ)を赤くし、得意げに本を撫でた。 語りべ:「この本はまだ最後まで読んでいませんから、返すわけにはいきませんね。衛生兵(えいせいへい)の忙しさを舐めてはいけませんよ?」 語りべ:「朝から晩まで野戦病院やら最前線やら。ひっきりなしに走り回って。ああ思い出したくもない思い出ばかりだ。」 0: 語りべ:「・・・でも。どんなにひもじくても、怖くても、腹に入れたこの本が支えてくれていた。」 語りべ:男は目を潤ませ(うるませ)、本をテーブルの上に置いた。 0: 語りべ:女はとっさに本の上に置いた男の手を、両方のてのひらで包んだ。 語りべ:「・・・私の事、忘れていなかったんでしょう?」 語りべ:女は既に泣いていた。男はもう片方のてのひらを女のてのひらの上に乗せ、ゆっくりと口をひらく。 0: 語りべ:「この地球上のどこかで、ねえさんも生きていると、ずっと思っていたよ。僕が生きる理由は、ねえさんが生きている事。それだけで十分だったんだ。」 0: 語りべ:女はてのひらをそのままに、声を殺して泣いた。 語りべ:「でも・・・だからってこうなった今・・・私を迎えに来てくれたわけではないのね・・・?」 語りべ:「また私を独りぼっちにするの?酷いじゃない。何年待っていたと思っているの・・・・?」 0: 語りべ:絞り出すような声は、時々雨音にかき消されていた。 語りべ:男は手のひらをほどき、そっと女の頭をなでた。 0: 語りべ:「ねえさん、どうかお元気で。」 0: 語りべ:まるで心臓が握りつぶされるような心の痛みを抑えて、男は柔らかく笑った。 0: 語りべ:男はゆっくり動き、喫茶店の入口へ移動した。 語りべ:店主がそれに気が付き、男に声をかけた。男は慣れた話しぶりで店主にこう返事をした。 0: 語りべ:「すみません。まだ車椅子に慣れていなくて。」 0: 語りべ:まるで学生のようにあどけない笑顔で、男は得意げに笑って見せた。 語りべ:男の両足はふとももから消えている。 語りべ:しかしこの時代、木製の車椅子は富裕層にしか使えぬ高級品ゆえ、男は得意げなのだ。 0: 語りべ:店主は残された女のテーブルへ行き、男のコーヒーカップをさげた。 語りべ:しばらくしてメニューには無いはずの温かい紅茶が女の目の前に運ばれてきた。 語りべ:店主はそっと女の耳元に話しかけた。 0: 0: 語りべ:女は”ぐい”と紅茶を飲み干し、店主に礼を言うと店を飛び出していった。 語りべ:濡れた道にくっきりと付いた車椅子の溝を辿り、女は裾(すそ)の泥汚れも気にせず走った。 語りべ:やがて格好悪く泥濘(ぬかるみ)に車輪を取られている男を見つけると、女は憎たらしく口を開いた。 0: 語りべ:「あら、どうやらお困りの様子ね。こんな雨上がりの夜なんて、誰も助けに来やしませんよ。せいぜい駄賃(だちん)目当ての家無しか。」 語りべ:気の強そうないつもの女の声に、男は溢れる涙をこらえ切れなかった。 語りべ:「ねえさん・・・、僕は・・・・僕は。」 語りべ:男が言い切らない内に、女は男を抱きしめ、背中をさすった。 語りべ:「私は何もいりませんよ。もうこんな年ですもの。本なんて薄っぺらい物を後生(ごしょう)大切になんてしないでください。」 語りべ:「さっき聞いていなかったようだから、もう一度言ってあげる。紅茶はね万病に効く東洋の秘薬なのよ!」 語りべ:男は訳も分からずポカンとしていた。女はとびきりの笑顔で続けた。 語りべ:「縁側(えんがわ)で日向ぼっこをしながら紅茶を飲みましょう?ずっとずっと。」 語りべ:泣きじゃくりながら、男は女の腕にしがみついた。 語りべ:女はあどけなく笑うと、男の車椅子を押した。 語りべ:いつの間にか大きな月が道を照らしている。 語りべ:鈴虫の鳴き声は静かに二人を見送っていった。 0: 0: 0:(おわり)